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薬を飲むことの意思決定は。常に理性と感情のせめぎあい

最近あまり取り上げなかったNOAC関連の話題を2題
ひとつはダビガトランの中和薬;idarucizumabがヨーロッパで迅速審査が進み承認されそうだというニュースです。
http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2015/09/news_detail_002399.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1

もう一つはイグザレルトが深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症(PE)の治療と再発抑制に対する適応追加承認を取得したとのことです。
http://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/index.php

NOACもだいぶ市場に出回り落ち着きを見せ,今後は中和薬,新しい適応取得などへと話題が移ってくるようですね。
いっぽうで,やはり当初思っていたほどには一般医家に普及していないようにも思われます。

抗凝固薬の本質は「(塞栓症予防という)ベネフィットが見えず,(出血)リスクがよく見える」です。
一方降圧薬,スタチンなどは「ベネフィットが見えて(数値が下がる),リスクは見えにくい(少ない)」薬です。

抗凝固薬はそもそも「一般に普及しにくい」という特性を生来背負っている,ある意味因果な薬剤といえると思われます。

患者さんにとっても医師にとっても,抗凝固薬の出血という有害事象は,目に見え,ある意味感情に左右される短期的なリスクです。これと比べて,抗凝固薬の本来の目的である塞栓症予防というのは,目に見えない長期的なリスクの回避であり,一時の感情というより論理的な思考が要求されます。この両者をどう考えるか。薬剤,特に抗凝固薬は後者のリスクに対する理性的判断が培えない限り,なかなか処方されることも服薬されることも広く普及しないように思われます。

ある意味感情と理性(システム1とシステム2)のせめぎあいですね,抗凝固薬にかぎらずすべての薬剤を服用すること,いや引いては全ての人間がなす意思決定は,つまりは本能的な反応や感情と理性的な論理思考のバランスでなされます。そういう意味では抗凝固薬の普及は人類の永遠のテーマを象徴しているとも言えるように思われます。

それでも少しずつ今回のような情報が共有され,各種の知恵と工夫により少しでも恩恵をこうむる人が増えるてくればいいですね。

$$$今日のにゃんこ。探してください。
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by dobashinaika | 2015-09-29 22:41 | 抗凝固療法:凝固系基礎知識 | Comments(0)

国際血栓止血学会から「NOACではなくDOACと呼ぼう」との推奨が出ています:JTH誌

Recommendation on the nomenclature for oral anticoagulants: communication from the SSC of the ISTH
G. D. Barnes et al
Journal of Thrombosis and HaemostasisVolume 13, Issue 6, pages 1154–1156, June 2015


・これまでnovel/new oral anticoagulants (NOACs), direct oral anticoagulants (DOACs), and target-specific oral anticoagulants (TSOACs)などの用語が使用されてきた
・NOACは ‘non-VKA oral antagonists’ と略語を変換された
・このままではややこしい
・‘non-VKA oral antagonists’ というのは薬剤特性の表現という意味でその特徴を表していない
・カルテに‘non-VKA oral antagonists’とかくと‘No AntiCoagulation,’=「抗凝固薬でない」という意味に取られ、患者が治療を受けないことも考えられる

・2014年9月、北米と欧州の血栓、止血、抗凝固、血管医学の16団体のリーダー150人にウェブ上でサーベイを行い、51%の参加が得られた。
・89.6%と多数の人が用語の統一の必要性を感じていた
・NOACという用語の安全性に関する賛同は低かった:54.7%の人がこの用語の使用は限定的であるべきと考えた
・DOAC [direct oral anticoagulant], NOAC [non-VKA oral anticoagulant], NOAC [novel oral anticoagulant], ODI [oral direct inhibitor], SODA [specific oral direct anticoagulant], TSOAC [target specific oral anticoagulant], and Otherのうち上位3つを上げてもらった結果:
1位:DOAC 29.9%
2位:NOAC 28.6%
3位:TSOAC 23.4%
・1つのみの投票の結果
1位:DOAC 58.4%
2位:TSOAC 49.4%
3位:NOAC 39.0%

<経口抗凝固薬の用語とNOAC(という語)に関する害についてのコンセンサスに基づく推奨>
1.直接IIa及びXa阻害薬の記述に関し単一の用語を用いる
2.VKAとは違う生来のメカニズムと臨床的特性を有する単一の言葉を用いる
3.NAOCという語は使わない

<DOAC使用の推奨>
1.DOACという語を単一の標的を直接と抑制し同じような臨床特性を有する経口抗凝固薬の一種に対して用いる
2.多様なDOAC間の区別が重要な際に薬剤の特異的な作用機序(直接Xa阻害あるいは直接トロンビン阻害)が使用されるべきである

### 国際血栓止血学会(ISTH:International Society on Thrombosis and Haemostasis)の抗凝固管理症委員会からの推奨です。
正式に"NOAC”はやめて”DOAC"を使おうという宣言です。

NOACの’N’がネガティブなイメージを引き起こし患者が引いてしまうという感覚は、日本人にはうっすらしか理解できない感じですが。略語に薬剤のメカニズムを盛り込もうという意図も、欧米式という印象です。

日本でこれからは”ドアック”でしょうか。私、一瞬DOALA(中日ドラゴンズのマスコット)を連想してしまいました(笑)

$$$ 今日のにゃんこ。ちょっと遠かった。
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by dobashinaika | 2015-06-03 21:44 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

75歳以上の心房細動、静脈血栓にNOACとワルファリンはどちらが良いのか:メタ解析:Circ誌

Efficacy and Harms of Direct Oral Anticoagulants in the Elderly for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation and Secondary Prevention of Venous Thromboembolism: Systematic Review and Meta-Analysis
Manuj Sharma et al
Circulation Published online before print May 20, 2015


疑問:一般に合併症、ポリファーマシー、薬物動態変動が多いとされる高齢者におけるNOAC(DOAC)のエビデンス、特に出血に関してリスクはどうか?

方法:
・DOACのRCT(心房細動及び深部静脈血栓症)のうち75歳以上の人の効果と出血アウトカムにつきメタ解析

結果:
1)19試験あり。高齢者データありは11試験

2)血栓症管理効果:DOACはVKA(ワルファリン)と同等もしくは有効

3)大出血:
ダビガトラン150x2は高リスクの傾向(オッズ比1.18、95%CI0/97-1.44)。110x2にはその傾向なし
アピキサバン(0.63, 0.51-0.77)、エドキサバン60 (0.81, 0.67-0.98)、エドキサバン30 (0.46, 0.38-0.57)は有意に低リスク
リバーロキサバンは同等

4)消化管出血:ダビガトランで高リスク:150mg (1.78, 1.35-2.35)、110mg(1.40,1.04−1.90)

5)頭蓋内出血:ダビガトランで低リスク:150mg (0.43, 0.26-0.72)、110mg(0.36,0.22−0.61)

結論:高齢者においてはDOACの血栓管理リスクはVKAと同等。しかしながら出血については明らかに差異有り。特にダビガトランは消化管出血リスクがVKAより大きい。その他のNOACはデータ不十分でさらなる試験必要

### ついにまとまった高齢者のNOAC vs. ワルファリンのメタ解析がでましたね。ただ結果はこれまで発表された結果から、自明となっていたものかと思われます。ダビガトランの75歳で分けた消化管出血の数値はRELY試験でのサブグループ解析とほぼ同じものです。

先日のBMJでのリアル・ワールドデータと合わせると、75歳以上で消化管出血の既往がある例などでのダビガトラン使用は出しにくいと思われます。リバーロキサバンもこのメタ解析からは微妙かもしれません。アピキサバンは有望のような印象ですが、リアル・ワールドデータがほとんど出ていません。

ということで、以前にも書きましたように高齢者については第一選択ワルファリンで、もう出きる限り丁寧にPT-INR管理をしてTTR高値を目指す→それでPT−INRが暴れるようであればNOACということにしています。たとえば1.6〜2.6の上限または下限ギリギリの際はワルファリン0.25mg単位で使う。野菜の摂取量を一定に保つなどの指導などで、こまめに管理します。今更またこれ言って恐縮ですが、細かいワルファリン管理は循環器内科医の醍醐味ではあるんですねー。未だに

$$$ ご近所で新発見!。このネーミングといえば。。。ここはM県S市杜王町か?
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by dobashinaika | 2015-05-24 23:25 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

新規経口抗凝固薬は臓器によって出血パターンに違いがある;T/H誌

Thromb Haemost 2014; 112
Organ-specific bleeding patterns of anticoagulant therapy: lessons from clinical trials
Thomas Vanassche et al


Thromb Haemostのオンライン版に、NOACの臓器別の出血についての差異に関するレビューが掲載されてます。
マクマスター大学のグループからです。

勉強になるので、簡単にまとめます。

【臓器特異的な出血パターン】
・4NOAC全体で大出血は23%減らした:相対危険0.77
・詳細に見ると2つの対照的な臓器特異的出血パターンが明らかになる
・第一に、頭蓋内出血について、NOACは一様に減少させる
相対危険減少60%、平均相対危険0.42
・第二に、消化管出血について、NOACごとに違いあり
リバーロキサバンとダビガトラン150、エドキサバン60は増加
アピキサバンとダビガトラン110は同等
エドキサバン30は減少

【その考えられる理由】
<頭蓋内出血 (ICH)>
・多くの大出血はINRが治療治範囲内の時に起こる
最近の研究ではワルファリン服用者260名中、INR2.5~3.0が78%、3.0以上は13.5%
・NOACのワルファリンに対する優位は、INR管理が良好な施設でも、管理不良な施設でも同等
・2つのメカニズムを想定
1)NOACとVKAの異なる作用 2)脳のユニークな生理

1)薬剤関連因子
・血管壁が破綻すると組織因子 (TF)が参集し、凝固系が活性化され血栓が形成される
・VKAは、ビタミンK代謝を阻害することで、4つのビタミンK依存性凝固因子の集積を弱める
・NOACは、その分子量に当量の阻害作用を有し、Xaあるいはトロンビンという個々の凝固タンパクを選択的に阻害する
・臨床的な血中濃度では、NOACは、TFが関与するような凝固活性の上昇に関連したXaやトロンビンの生成の局所集中を抑制する作用は、VKAより弱いかもしれない
・TFは、脳血管床の破綻部位の流血に暴露される
・中和を免れたXaとトロンビン分子は、局所的により多くのトロンビンを生成し出血の進展を抑制し、結果として臨床的出血を防ぐ

2)脳特異的な止血制御
・脳の毛細血管の内皮細胞はpericyteやastrocyteで囲まれていて、それらはTF豊富で特殊な内皮細胞下の基底膜を形成する
・この膜は自発的は頭蓋内血腫形成を阻止する方向に働く
・出血リスク低減のさらなるメカニズムとして、この組織因子径路の抑制が低いことがある

・剖検や画像により、非対称性の脳毛細血管出血は60歳以上の5〜10%に見られる
・この微小出血の年令による有病率は、高血圧やアミロイドアンギオパチー同様ICHのリスクである
・生理的な止血が妨げられると、抗凝固療法がこの臨床的には問題にならない微小出血を引き起こし、臨床的に明らかな大出血へと変化する
・VKA服用者ではこの微小出血の存在が明らかにICHのリスクを高めることが報告されている

・NOACがワルファリンよりICHが少ないのは、この2つのメカニズムによると考えられる
・NOACの効果は標的となる高濃度の血栓酵素の圧倒的増加と、その高濃度血栓酵素が脳血管微小出血においてTFが高濃度になることにより局所的に増加することによる
・こうした仮説は動物実験で指示されている
・ネズミの実験で、ダビガトランとリバーロキサバンが脳の血腫を縮小することが報告されている
・NOACの静脈血栓塞栓症のトライアルでも、ICHが70%減ることが知られている

### まとめ
1)NOACのワルファリンに比べた出血パターンは臓器別に2つある。①頭蓋内出血は全NOACで減少 ②消化管出血はまちまち
2)NOACがICHを減らす作用は2つある。①TFが非常に多い時には、ワルファリンより局所でのトロンビン抑制作用が弱い ②脳毛細血管の破綻部位ではTFが豊富で、微小出血の際ワルファリンが止血を抑制する

これまで言われていたことのまとめですね。消化管出血についての記事もまとまっていますが、それは後日に。
by dobashinaika | 2014-09-09 22:37 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

NOACは”新規経口抗凝固薬”ではなく、”非ビタミンK阻害経口抗凝固薬”の略語に変更の提言:T/H誌

日本循環器学会の最中に、ESCからNOACの略し方についての変更声明がでたようです。

Non-vitamin K antagonist oral anticoagulants (NOACs): No longer new or novelThrombosis and Haemostasis 
http://dx.doi.org/10.1160/TH14-03-0228


もう市販後2,3年たっているし今後ずっと"New""Novel"と言い続けるわけにも行かない、しかしながらNOAC以外の略し方に変更すると混乱する。
というわけで"Non-vitamin K antagonist oral anticoagulants"の略であるとしようとの提言のようです。

なるほどですが、日本語に訳すとなると「非ビタミンK阻害経口抗凝固薬」となるでしょうか。ちょっと長い感じですね。

それにしても、今回の循環器学会。NOACのセッションはどこも満員。ランチョンセミナーも3日とも一番大きな会場にも関わらず、満杯の大盛況でした。
それだけ、「出さなければいけないんだけど、よくわからない事が多い薬」というように多くの医師が認識しているというのと同時に、業界的に重要なターゲットであるということもあると思います。

さすがにあの場にいますと、NOAC,もうお腹いっぱいという感じになります。
で、なんかもうNOACじゃなければダメ、みたいな空気が醸成されているのを今回感じました。

前のブログでも触れましたが、RCTの外的妥当性の不備を補完する観察研究が不十分である現時点では、諸手を上げてNOAC礼賛という状況ではまだないわけですね。これまで幾多の薬で、RCTでわからなかった害が観察研究から出てきたことか。

今一度、この時点でよく思い起こす必要があるかもしれません。
by dobashinaika | 2014-03-23 23:40 | 抗凝固療法:全般 | Comments(1)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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