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複数の合併症を持つ高齢者にガイドライン通り処方しても効果のある薬剤とは:BMJ誌

Association between guideline recommended drugs and death in older adults with multiple chronic conditions: population based cohort study
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h4984 (Published 02 October 2015)
Mary E Tinetti


目的:複数の慢性疾患を抱える高齢者において,ガイドラインで推奨されている薬剤と死亡率との関連を評価

デザイン;一般住民対象コホート研究

セッティング:米国の65歳以上対象のコホート

参加者:2種類以上の慢性疾患(心房細動,冠動脈疾患,慢性腎臓病,うつ,糖尿病,心不全,脂質異常症,高血圧,血栓塞栓症)を持つ8578人を2011年から追跡

介入:ベータ遮断薬,カルシウム拮抗薬,クロピドグレル,メトホルミン,RAS系阻害薬,SSRI,SNRI,スタチン,サイアザイド,ワルファリン

主要アウトカム:ガイドライン推奨薬の服用者の死亡ハザード比(対非服用者),主要4種の合併症あり

結果:
1)50%以上の参加者が合併疾患に関係なく各ガイドラインの推薬を服用していた

2)全死亡率15%(3年以内)

3)死亡率減少薬:β遮断薬;(ハザード比0.59=心房細動合併,0.68=心不全合併),カルシウム拮抗薬,RAS阻害薬,スタチン

4)上記薬のハザード比は主要4種疾患の合併例でも同等

5)死亡率変化なし:クロピドグレル,メトホルミン,SSRI,SNRI

6)ワルファリンは心房細動例(ハザード比0,65),血栓塞栓症例(0.44)の死亡率を減少

7)合併症の組み合わせによってはワルファリンの死亡リスク減少は低下

結論:心血管系薬の平均的な効果はそれらが関わったRCTの結果と合致していたが,合併疾患によってはいくつかの薬で異なる結果となった。合併疾患のある場合の薬剤効果を決定する因子は,複数合併例への実際の処方のガイドとなるかもしれない。

### 対象の平均年齢は77.4歳。80歳以上が36%。心房細動19%,冠動脈疾患39%,うつ26%,糖尿病40%,心不全20%,脂質異常症77%,高血圧92%,慢性腎臓病12%,血栓塞栓症5.5%でした。

この論文の結果で「死亡率減少」という意味は,β遮断薬を例に取ると,高血圧,脂質異常症,心房細動,冠動脈疾患,うつ,心不全などを単独で持っている例での予後改善効果はこれまでRCTでも認められていて,この研究でもそれが証明されていますが,上記疾患を4つ合併した場合(組み合わせ4種)でもやはり死亡率改善効果があるということです(組み合わせによっては統計学的に95%CIが1をまたぐものもあるが)。

クロピドグレル,SSRI/SNRI,サイアザイドは4種合併症例となると効果がなくなり,メトホルミンも惜しいですが,全て1をまたいでいます。

もちろん選択バイアスがあり一概に結論付けることはできません。しかし各種薬剤のそれぞれのRCTは上記疾患を4種以上も合併す平均77歳のひとなどあまり対象にはなっていないのです。かたや現実世界は80歳以上合併疾患7つ,8つなどザラなわけで,そういう症例への外的妥当性はかなり心もとないというか,エビデンスがないのが実情と思われます。

ですので,こうした研究は非常にありがたいです。高齢者に対するポリファーマシー時,中断か継続かを考える上でも参考になるかもしれません。

$$$ ここ,午前中はやっていないのでしょうか
複数の合併症を持つ高齢者にガイドライン通り処方しても効果のある薬剤とは:BMJ誌_a0119856_2215529.jpg

by dobashinaika | 2015-10-05 22:03 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

ワルファリンを適正に管理すれば85歳以上でも安全かつ有効:J-RHYTHMレジストリーサブ解析

Use of Warfarin in Elderly Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation – Subanalysis of the J-RHYTHM Registry –
Eitaro Kodani et al
Circulation Journal Article ID: CJ-15-0621


背景:非弁膜症性心房細動の超高齢者におけるワルファリンの効果を,Jリズム研究から明らかにする

方法:
・日本の158施設の連続登録症例,7937例
・7406例,2年間追跡,男70.8%,平均69.8歳
・70歳未満,70〜84歳,85歳以上の3群に分類
・INR別に5群に分類:<1.6, 1.6–1.99, 2.0–2.59, 2.6–2.99, and ≥3.0

結果:
1)女性,永続性,高血圧,冠動脈疾患,心不全,虚血性脳卒中/全身性塞栓症はより高齢者群で多い

2)85歳以上群は:ワルファリン服用率79.7%,TTR67.1%(目標1.6〜2.6)

3)血栓塞栓症:70歳未満,70〜84歳群では非ワルファリン群に対する服薬群のイベント率は低い(P=0.027 and P<0.001, respectively)

4)85歳以上群ではINR1.6-2.59の群で血栓塞栓症+大出血イベントは低い

結論:INRを1.6〜2.59に保てば,超高齢者でもワルファリンの効果はある

### これは参考になります。85歳以上群では血栓塞栓症および大出血イベントそれぞれではワルファリン群と非ワルファリン群の有意差はなかったものの,INR良好群ではそれらは少なく,また生命予後や心血管死は有意にワルファリン群で少なかったとのことです。

特に目を引くのはINR1.6-1.99 であれば血栓塞栓症も大出血も2年間でゼロだったというグラフです。

Nが263例と低く,また大病院での例ですので,認知症や要介護度の高い人は少ないと思われます。またINRの数字も確かワンポイントだけのものだと思いました。それでもINRが良好な人であれば85歳以上でもワルファリンを考えて良いというプッシュになると思われます。

$$$ 今日は我が家のにゃんこ@AM5:00
ワルファリンを適正に管理すれば85歳以上でも安全かつ有効:J-RHYTHMレジストリーサブ解析_a0119856_2138315.jpg

by dobashinaika | 2015-09-03 21:40 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(1)

高齢者における抗血栓療法10か条:EHJ誌のまとめ

以前EHJからでました「高齢者における抗血栓療法に関するエキスパートの意見」をさらに10個のキーポイントにまとめたものがACCのサイトからでていますので,参考にします。
なお高齢者とは65〜75歳以上

Antithrombotic therapy in the elderly
Barnes GD
(http://www.acc.org)

1.高齢者では血栓性疾患(急性冠症候群,心房細動,静脈血栓塞栓症VTE)のリスクが増加する。同時に抗血小板薬,抗凝固薬による出血リスクも増加する

2.高齢者においては,高齢というだけで生命保護のための抗血栓療法を否定されるべきではない。リスクベネフィットに基づく個別の評価が必要である

3.年齢に関連した臓器の変化は薬物動態に影響する。たとえば,脂溶性薬物での分布量は増加し(半減期による),水溶性薬物では減少する(血中度濃度による)

4.高齢者における抗血小板療法はすべて許容される。用量は以下のように考慮される
・急性冠症候群およびPCI後におけるクロピドグレル75mg/日。75歳以上のST上昇型心筋梗塞で血栓溶解薬が投与された場合は300mgの初期ローディングは不要
・急性冠症候群およびPCI後におけるプラスグレル減量投与(5mg/日)
・心筋梗塞後及び末梢動脈疾患ではvatapaxar2.5mg/日を注意深く使用

5.高齢者における抗凝固療法は以下の様な用量で許容される
・VKA(ワルファリンなど)はさまざまな制約があるが,低容量で良く使われる。頻回のモニタリングが良い
・ダビガトランは80歳以上の心房細動では110mgが使用されるべきで,75−79歳でも考慮。VTEでも可
・アピキサバンは80歳以上,60kg以下,クレアチニン1.5以上であれば2.5mgx2使用すべき。心房細動,VTEで可

6.非経口抗凝固薬も以下の用量で許容される
・低分子ヘパリンは様々な適応があるが,75歳上では減量使用(0.75-1.0mg/kg,1日2回)。血栓溶解療法時は30mgのボーラス使用

7.血栓溶解約は用量を考慮して使用されうる
・TenecteplaseがST上昇型心筋梗塞や肺塞栓症で使われる。75歳以上のSTEMIでは半量

8.抗凝固療法下での出血予防は重要。3者併用療法はできるだけしないあるいは短縮すべき。この間外科手術は避けるべき。PCIは大腿よりも撓骨動脈アプローチ。DAPT患者にはPPI 。NSAIDやステロイド使用は避ける

9.小出血や小手術(皮膚,経皮,歯科,内視鏡)は抗血栓薬中止の理由とはならない

10. 頭蓋内出血の抗血栓薬再開は細心の注意のもとに行われるべき。心房細動であれば左房閉鎖術が合理的

### 元のサイトはこのブログで取り上げましたが,これをまとめたというよりは,この著者の視点がかなり入っているように思われます。しかし主張としては妥当と思います。抗凝固薬はワルファリン,ダビガトラン110mg,アピキサバンが挙げられているようです。

また出血,小手術で中止しないというのも改めて患者さんと共有すべきポイントですね。導入時と出血したと着,手術施行時にその都度十分確認したいです。

$$$ 本日久々に朝光がさしました。きのうまで長袖だった散歩着も半袖にしました。まだ夏の残り香をちょっとだけ味わいたいですね。
高齢者における抗血栓療法10か条:EHJ誌のまとめ_a0119856_1914561.jpg

by dobashinaika | 2015-09-01 19:02 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

80歳以上のどの程度の「フレイル」に抗凝固薬を使用するか(カナダ)」CJC誌

The Effect of Bleeding Risk and Frailty Status on Anticoagulation Patterns in Octogenarians With Atrial Fibrillation: The FRAIL-AF Study.
Lefebvre et al
Can J Cardiol. 2015 May 27; . PMID:26277091



目的:80歳以上の人の抗凝固療法の安全性,有効性とフレイルについて比較検討

方法:
・モントリオーにおける80歳以上の心房細動または粗動による入院患者682名のクロスセクション分析
・Clinical Frailty Scale (CFS:臨床フレイルスコア)をカルテから算定

結果:
1)抗凝固薬使用率:70%

2)抗凝固薬使用の促進因子:
・高CHADS2スコア:3点のオッズ比(1点に比べて)=3.58
・フレイルなし:CFS7点未満のオッズ比:3.41

3)抗凝固薬使用の抑制因子:
・HASBLEDスコア:3点以上のオッズ比:0.33

結論:私たちの研究では従来の報告に比べて80歳以上の人に適切な抗凝固薬が使用されていることが示唆された.さらなる研究必要

### こちらのサイトを見ますとCFS6点は「中等度フレイル」すなわち「外出時や家事全般の見守り必要および入浴介助,着替えの見守り」程度となっています,要介護2程度かと思われます.
http://geriatricresearch.medicine.dal.ca/clinical_frailty_scale.htm

これくらいの方であればカナダの病院では積極的に抗凝固薬を出しているようです.反対に7点ですと「6ヶ月以上,寝たきりまでは行かないが生活全般のケアが必要の場合」となります.
要介護3くらいでしょうか.実臨床の感覚として要介護2と3の間付近が抗凝固薬を出す出さないの分かれ目と言うのは理解できます.

カナダではこのような観点からすれば80歳以上の人の70%は抗凝固薬が使用されています.もちろん病院入院の方なので,比較はできませんが,日本の登録研究などでは50%弱の投与率だと思いますので,積極的に出すコホートだと言うことができるかと思います.

日本では実際は要介護2でも出さない医師も多いのではと思われます.

$$$ 蔵王の緑陰にひっそり佇む美術館。ここは日本画の宝庫です。そう遠くないところにこんな静逸な空間がある幸せ。
80歳以上のどの程度の「フレイル」に抗凝固薬を使用するか(カナダ)」CJC誌_a0119856_20444563.jpg

by dobashinaika | 2015-08-19 20:46 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

ケアネット連載:「 75歳以上の心房細動、静脈血栓にNOACとワルファリンはどちらが良いのか」更新しました

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は
第33回「75歳以上の心房細動、静脈血栓にNOACとワルファリンはどちらが良いのか(メタ解析)」
です。

ご参照ください
http://www.carenet.com/series/afjournal/cg001089_0033.html?keiro=index
(要無料登録)
ケアネット連載:「 75歳以上の心房細動、静脈血栓にNOACとワルファリンはどちらが良いのか」更新しました_a0119856_21553785.png


$$$ お盆休みをいただいており、連載の更新など告知のみであまりブログは更新しないようにしておりました。明日からまたたまった論文でも読んでいきましょうか。

と思っているうちに、もうこの辺りは早朝は早くも秋の気配が漂っています。夜、虫の声に秋を知ることが多いのですが、早起きしていると「秋はつとめてから忍び寄る」ことに気付かされます。空気が違うんですね。
ケアネット連載:「 75歳以上の心房細動、静脈血栓にNOACとワルファリンはどちらが良いのか」更新しました_a0119856_21562847.jpg

by dobashinaika | 2015-08-16 21:58 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

ケアネット連載:「 高齢者における抗血栓療法に関するエキスパートの意見」更新しました

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は
第32回「高齢者における抗血栓療法に関するエキスパートの意見」
です。

ご参照ください
http://www.carenet.com/series/afjournal/cg001089_0032.html
(要無料登録)
 ケアネット連載:「 高齢者における抗血栓療法に関するエキスパートの意見」更新しました_a0119856_18243087.png

by dobashinaika | 2015-07-30 18:25 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本の85歳以上心房細動患者の脳卒中発症率は85歳未満より高いが大出血率は同じ:Chest誌

Clinical characteristics and outcomes in extreme elderly (age ≥85) Japanesepatients with atrial fibrillation: The Fushimi AF Registry
Yugo Yamashita et al
Chest. 2015 Jul 16. doi: 10.1378/chest.15-1095.


背景:85歳以上の超高齢者への抗凝固療法はチャレンジングである

方法:
・FUSHIMI AFレジストリー:2011年3月〜2014年7月。3304例
・同レジストリーでの85歳以上の超高齢者(479例、14.5%)の特徴とアウトカムを比較

結果:
1)超高齢者は合併症、高リスクスコア例が多いが、抗凝固療法例は少ない

2)平均追跡期間2.0年

3)全死亡17.6、脳卒中/全身性塞栓症5.1、大出血2.0/100人年

4)超高齢者のハザード比:脳卒中/全身性塞栓症+全死亡3.20、脳卒中/全身性塞栓症2.57、死亡率3.48

5)大出血は85歳以上と未満で同じ

結論:今回のコホートでは、日本の超高齢者心房細動患者の脳卒中発症は高頻度、大出血は若年者と変わらない。

### 非常に貴重なデータです。日本人の超高齢者心房細動患者のデータはおそらく初ではないでしょうか。

本文を見ますと、85歳上のコホートは平均CHADS2スコア2.8点。抗凝固率41.3%(ワルファリン38.3%、ダビが途端2.5%、イグザレルト0.2%、アピキサバン0.0%)です。

85歳以上の人はそれ未満に比べて、脳卒中/全身性塞栓症は2.6倍、大出血は同じということです。

有名なSingerらのネットクリニカルベネフィットは高齢者ほどベネフィットが大きく、その根拠はやはり高齢者ほど脳卒中が多く出血は年齢に散れてそれほど増えないためとされています。最近のアジアの大規模コホート研究でも、高齢になるに連れ脳卒中/全身性塞栓症リスクは増加しますが大出血リスクは年齢との相関はないことが明らかになっています。
http://dobashin.exblog.jp/19554092/

こうしてみると各種エビデンスからは、高齢者でもしっかりと抗凝固を行って脳梗塞を予防するという方向性が示されていると言っても良いと思われます。

町医者としては、こうした超高齢の認知症の程度、転倒リスク、服薬管理者、アドヒアランス、抗凝固療法を行っていない場合の理由など、よりナラティブな実情も知りたいところです。

$$$ 好物のロマネスコと自家製ミニトマト、それにもずく。健康的な夕食^^
日本の85歳以上心房細動患者の脳卒中発症率は85歳未満より高いが大出血率は同じ:Chest誌_a0119856_21262286.jpg

by dobashinaika | 2015-07-23 21:27 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

高齢者における抗血栓症法に関するエキスパートの意見:EHJ誌

Antithrombotic therapy in the elderly: expert position paper of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis
Felicita Andreotti et al on behalf of the ESC Thrombosis Working Group
European Heart Journal doi:10.1093/eurheartj/ehv304


ESCから高齢者の抗血栓療法のエキスパ−トポジションペーパーがでています。
抗凝固療法のところを簡約します。

<イントロ>
・75歳以上を'elderly'とよぶ
・各種データベースやリスクスコアは65歳で切っている

<虚血と出血のリスクに関する年齢のまとめ>
・CHA2DS-VAScスコア1−2の人も3点以上の人も、HAS-BLEDスコアの高い人も低い人も年々イベントリスクは増加
・抗凝固療法はそれらイベントリスクを全て下げる

<抗凝固薬>
【ビタミンK阻害薬】

・年齢とともに出血は増加
・米国の高齢者の薬物相互作用による救急入院99,628例のうちワルファリン関連は3分の1
・RCTでのワルファリン大出血率は75歳未満で1.7−3.0%、75歳以上で4.2−5.2%
・同じINRのに到達するのに若年者より低用量で良い
・上昇したINRを正常化させるには時間が必要
・75歳上のNVAF対象のBAFTA試験では、アスピリンより脳卒中/全身性塞栓症予防効果ぬ優れ、出血は同じ
・静脈血栓塞栓症でも適応あり。禁忌なし
・若年者よリ、低用量でタイトな管理が必要

【直接トロンビン阻害薬:ダビガトラン】
・RE-LY での脳卒中/全身性塞栓症予防:150x2では年齢に関係なし
・頭蓋外出血;110x2で顕著に減らすが75歳以上でなその傾向はない。150x2では75歳以上で明らかに増える
・頭蓋内出血:年齢にかかわらず減る
・消化管出血:150x2で増える
・腎機能低下:CrCL30未満→米国では75x2。欧州では80歳以上では110x2
・年齢だけではダビガトランの使用禁忌にはならないが、血中濃度、引いては虚血や出血に影響する
・150x2に変わって110x2を考慮するときは年齢75〜79であり、欧州では80歳以上で推奨される

【直接Xa阻害薬:リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン】
・ROCKET-AF試験
・44%は75歳以上
・脳卒中/全身性塞栓症;ワルファリンに非劣性
・大出血:ワルファリンと同等
・頭蓋内出血、致死的大出血は減少
・消化管出血は増やす
・上記の関係に関し年令による交互作用なし

・ARISTOTOLE
・31%が75歳以上
・脳卒中/全身性塞栓症、大出血、頭蓋内出血、死亡率共ワルファリンに勝る
・80歳以上の13%にも同様の結果
・消化管出血はワルファリンとくらべてコモンではない

・ENGEGE AF-TIMI48
・40%が75歳以上
・脳卒中/全身性塞栓症は減らす
・大出血、頭蓋内出血減らす
・消化管出血は60mgでより多い
・30mgは虚血性脳卒中を増やすが、死亡率、消化管出血は減らす
・これらの結果は異なる年齢のサブグループでも同じ

・CrCL15超の例では、我々はワルファリンよりも直接Xa阻害薬を勧める
・頭蓋内出血は少ない、全体の有効性、安全性が良い。モニターの必要がない
・薬剤相互作用、消化管出血の可能性、腎機能低下例における減量には注意


### 75歳以上についての言説ととらえましょう。ダビガトランについては明確なことは言っていないようです。
その他のXa阻害薬は、本試験と75歳以上の結果がほぼ変わりないことから、概ね75歳以上でもNOACを推奨のようです。
ただ85歳以上となると各RCTでも数%しかエントリーされておらず、しかしながら実臨床では大変多くなってきており、この論文を読んだとしても悩むところです。

また高齢の方では、認知機能と転倒リスクが常に問題となるので、そのことについても言及して欲しかった気がします。

個人的には、要するにエビデンス的にはXa阻害薬でも良いが、85歳以上、認知症、高転倒リスクについては一律な解答はない。そうしたComplicatedなケースでない場合はNOACで良い、というスタンスを取って行きたいと思います。

$$$ ブラタモリで紹介された、当院すぐ裏手の四ツ谷用水の洗い場あと。見事に階段上になっています。
高齢者における抗血栓症法に関するエキスパートの意見:EHJ誌_a0119856_2291771.jpg

そして今日のにゃんこ
高齢者における抗血栓症法に関するエキスパートの意見:EHJ誌_a0119856_2295880.jpg

by dobashinaika | 2015-07-14 22:11 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

75歳以上の心房細動、静脈血栓にNOACとワルファリンはどちらが良いのか:メタ解析:Circ誌

Efficacy and Harms of Direct Oral Anticoagulants in the Elderly for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation and Secondary Prevention of Venous Thromboembolism: Systematic Review and Meta-Analysis
Manuj Sharma et al
Circulation Published online before print May 20, 2015


疑問:一般に合併症、ポリファーマシー、薬物動態変動が多いとされる高齢者におけるNOAC(DOAC)のエビデンス、特に出血に関してリスクはどうか?

方法:
・DOACのRCT(心房細動及び深部静脈血栓症)のうち75歳以上の人の効果と出血アウトカムにつきメタ解析

結果:
1)19試験あり。高齢者データありは11試験

2)血栓症管理効果:DOACはVKA(ワルファリン)と同等もしくは有効

3)大出血:
ダビガトラン150x2は高リスクの傾向(オッズ比1.18、95%CI0/97-1.44)。110x2にはその傾向なし
アピキサバン(0.63, 0.51-0.77)、エドキサバン60 (0.81, 0.67-0.98)、エドキサバン30 (0.46, 0.38-0.57)は有意に低リスク
リバーロキサバンは同等

4)消化管出血:ダビガトランで高リスク:150mg (1.78, 1.35-2.35)、110mg(1.40,1.04−1.90)

5)頭蓋内出血:ダビガトランで低リスク:150mg (0.43, 0.26-0.72)、110mg(0.36,0.22−0.61)

結論:高齢者においてはDOACの血栓管理リスクはVKAと同等。しかしながら出血については明らかに差異有り。特にダビガトランは消化管出血リスクがVKAより大きい。その他のNOACはデータ不十分でさらなる試験必要

### ついにまとまった高齢者のNOAC vs. ワルファリンのメタ解析がでましたね。ただ結果はこれまで発表された結果から、自明となっていたものかと思われます。ダビガトランの75歳で分けた消化管出血の数値はRELY試験でのサブグループ解析とほぼ同じものです。

先日のBMJでのリアル・ワールドデータと合わせると、75歳以上で消化管出血の既往がある例などでのダビガトラン使用は出しにくいと思われます。リバーロキサバンもこのメタ解析からは微妙かもしれません。アピキサバンは有望のような印象ですが、リアル・ワールドデータがほとんど出ていません。

ということで、以前にも書きましたように高齢者については第一選択ワルファリンで、もう出きる限り丁寧にPT-INR管理をしてTTR高値を目指す→それでPT−INRが暴れるようであればNOACということにしています。たとえば1.6〜2.6の上限または下限ギリギリの際はワルファリン0.25mg単位で使う。野菜の摂取量を一定に保つなどの指導などで、こまめに管理します。今更またこれ言って恐縮ですが、細かいワルファリン管理は循環器内科医の醍醐味ではあるんですねー。未だに

$$$ ご近所で新発見!。このネーミングといえば。。。ここはM県S市杜王町か?
75歳以上の心房細動、静脈血栓にNOACとワルファリンはどちらが良いのか:メタ解析:Circ誌_a0119856_23215446.jpg

by dobashinaika | 2015-05-24 23:25 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

老人ホーム入居中の超高齢者への抗凝固療法:J Am Geriatr Soc誌

Underuse of Oral Anticoagulation for Individuals with Atrial Fibrillation in a Nursing Home Setting in France: Comparisons of Resident Characteristics and Physician AttitudeAuthors
Oarda Bahri et al
J Am Geriatr Soc 1月17日


目的:老人ホームに入居中の高齢者において抗凝固療法適応にもかかわらず処方されていない人の特徴、処方されない理由につき検討

デザイン:クロスセクショナル

セッティング:老人ホーム

参加者;老人ホーム入居者、心房細動、1085人

測定;多変量解析、医師へのアンケート

結果:
1)心房細動の既往;1085人(入居者の10.1%)、平均87歳、CHA2DS-VAScスコア平均5.1±1,4

2)抗凝固薬非投与率:544例50.1%

3)非投与の理由(オッズ比);繰り返す転倒4.9、出血の既往3.62、発作性心房細動3.5、高齢1.1

4)繰り返す転倒(47%)、認知機能低下(22,6%)、高齢(16.4%)が抗凝固薬を出さない主な要因

結論;老人ホーム入居中の超高齢者コホートでの心房細動有望率は10%。抗凝固薬処方率は高リスクにもかかわらず50%未満。老年症候群、特に転倒、認知機能低下が抗凝固適応外の主な要因。老人ホームの医師は発作性においてはを持続性よりイベントリスクが低いと考える傾向があることが、発作性に対しての低い処方率の理由。

### 極めて興味深い論文です。フランスの104のナーシングホーム入居中の75歳以上の超高齢者心房細動患さんを対象とした抗凝固療法の横断研究です。

心房細動の診断が問題ですが、カルテで確認かつ24ヶ月以内の心電図記録がある人とのことです。

これまでの超高齢者への抗凝固療法実態調査は例えば以下の英国のものでは、80代のワルファリン開始率は30%でした。
http://dobashin.exblog.jp/18287577/

一方80歳以上の人のワルファリンのネットクリニカルベネフィットは良好との結果も出ています。
http://dobashin.exblog.jp/19554092/

転倒リスクをどう考えるかというのは大きな問題で、高齢者の転倒による大出血は少ないとのデータも有ります。
http://dobashin.exblog.jp/15885017/
今日の論文では最近3ヶ月以内に2回以上転倒したひとを「繰り返す転倒」と定義していて、登録患者の20%であったとしていますが、これは実際もっと多いだろうと思います。目撃されていないだけではないでしょうか。他にも転倒リスクよりも塞栓症リスクのほうが高いとする論文はあるのですが、一方目の前で皮下出血を作っている患者さんを診ている医師が抗凝固薬をどう考えるか。エビデンズだけで割り切れない問題と言えます。

論文世界とは、また別の論理が超高齢者の診療には厳然と存在することをこの論文は知らせてくれます。

$$$ 散歩中に見かけたビルの玄関にあった看板。これだけ見るとなんかコワイ。
老人ホーム入居中の超高齢者への抗凝固療法:J Am Geriatr Soc誌_a0119856_22175661.jpg

by dobashinaika | 2015-01-23 22:20 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

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