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心房細動と認知症の関係に関するエキスパートコンセンサス;Europace誌


欧州,米国,アジア太平洋,ラテンアメリカの各不整脈学会による「不整脈と認知症」に関する合同ステートメントが出ています。要点をまとめます。

【心房細動と認知症】
●心房細動と認知機能低下/認知症との関係に関するメタ解析
・横断研究及び前向き研究についての2つのメタ解析では,いずれも心房細動群が非心房細動群に比べ認知症/認知機能低下のリスクは高い(1.7-3.46,倍または2.倍)
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・心房細動のタイプと認知症との関連は明らかではない

●心房細動の治療と認知機能の関係
・心房細動治療と認知症予防との関係に関するRCTなし

・フラミンガム試験では過去30年間で心房細動患者の認知症発症率は低下した

・抗凝固薬及びリスク因子の治療効果と推測される

●心房細動と認知症の関係についてのメカニズム
・脳の形態学的変化(海馬の萎縮,白質の更新号,前頭葉中部萎縮)が指摘されている

●心房細動における認知症予防
・現在抗凝固薬,抗不整脈薬と認知症予防に関する9つの前向き試験が走っている

・一般的なリスク因子(高血圧,糖尿病など)の管理

・心房細動患者の認知症発症予測因子としては,年齢,パーキンソン病,抗凝固薬なし(ハザード比2.08),アルコール中毒が挙げられた。Friberg L, Rosenqvist M. Less dementia with oral anticoagulation in atrial fibrillation. Eur Heart J 2017;39:453–60.

・TTR管理良好は認知症リスク低下に関係した,ワルファリン使用患者のほうが認知症リスクが低下したなどの観察研究があるが,交絡因子も多い。相反する結果の論文もある

・NOACがワルファリンにくらべ脳内相出血を減らすとの報告はあるが,認知機能低下を改善させるかどうかは未だに不明

●心房細動患者における認知機能低下予防のための推奨(いずれも推奨度は‘May do this’ )
・適切な抗凝固療法と脳卒中リスク因子の軽減

・VKAよりもNOACを選択

・VKAの場合はよりよいTTRを目指す

・一般的なリスク因子(喫煙,高血圧,肥満,糖尿病,睡眠時無呼吸)などの管理を行う

・脳血管認知症,アルツハイマー型認知症双方に有効

・認知機能低下を疑わせる心房細動患者には認知機能評価を勧める


### 心房細動患者で認知症リスクが増えることは明らか。抗凝固療法をしないことがリスクを高めることも知られている。しかしながら抗凝固療法が認知機能低下を改善させるか否かについてエビデンスでベルの高いものは今のところない。したがって脳梗塞そのもののリスクを低下させるように背景因子管理や抗凝固療法を適切に行うべき。というメッセージです。

こうしたまとめは大変ありがたいです。

$$$ 日向ぼっこ
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by dobashinaika | 2018-03-25 22:36 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心房細動は認知機能低下に関連する:米国の長期追跡大規模コホート研究より


概要:
・認知機能低下と心房細動の関係を,これまでにない長期的で大規模なコホートで評価しようとした意義深い論文

方法:
・米国の代表的コホート研究であるARIC-NCS:ARIC Neurocognitive Studyの登録12,515人対象
・AF発症と認知症発症を定期的に評価
・AFは定期的なカルテ検索と心電図検査
・認知症は数年ごとに検査

結果
・認知機能スコア:AFがある人はない人に比べ低下した
・AF発症:認知症リスクの増加に関連(ハザード比:1.23、95%CI:1.04~1.45
)。虚血性脳卒中等の心血管リスクで補正後も同様
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結論:
心房細動は,虚血性脳卒中とは独立に認知機能低下に大きく関連。心房細動治療への介入が認知機能低下を遅らせる可能性あり

### 心房細動が,認知機能低下のリスク因子であることがかなり大きなコホートでも明らかに証明されました。ただ心房細動予防と言っても難しい面があります。心房細動予防は結局生活習慣の改善しかないので,従来からのお題目を並べるに過ぎなくなります。心房細動を早期に発見してアブレーションすれば認知機能低下の抑制に寄与するのか。このあたりが今後のポイントです。

関連のレビューはこちら

$$$ 庭先に目白が突然の来訪。もう春です。
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by dobashinaika | 2018-03-15 21:59 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

抗凝固薬は心房細動患者の認知症リスクを低下させる可能性:EHJより


疑問:抗凝固薬は認知症リスクを減らすか?

方法:
・スウェーデンの観察研究
・退院時診断が心房細動,以前からの認知症診断なしの患者対象
・プロペンシティースコアマッチ,TT解析

結果:
1)444,106例

2)ワルファリン42.9%,DOAC2.9%,抗凝固薬なし54.3%

3)認知症リスク:抗凝固薬群1.14vs. 非抗凝固薬群1.79。ハザード比0.71 ,相対危険減少29%

4)ワルファリンとDOACで有意差なし。
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結論:認知症リスクは,抗凝固療法非施行例では,施行例より高い。

### なんと,抗凝固薬が認知症リスクを低下させる可能性があるそうです!
JAHAの総説を読むと,抗凝固薬と認知症との関係は一定しないようでしたが,この論文はnも多く,スコアマッチの手続きも踏んでいます。

メカ二ズムが不明であり,ま他絶対リスクは0.65%しか減っていないので,臨床上のインパクトにはまだ欠けるように思います。
前向き試験が志納中ですので,期待したいです。

$$$ 運慶展。中学の頃,仏像が好きで好きで仕方がない変わった青年だったのですが,亡父が京都奈良に突然連れて行ってくれて,運慶の無著世親像を見ていたく感動したのを思い出しました。非常なる計算と技術を背景に持ちながら,それが全面に出ることなく,またそれがために深い精神性をたたえることになる,それこそがほんまもんの美というものなのかと思わされました。
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by dobashinaika | 2017-11-06 23:28 | 抗凝固療法:全般 | Comments(1)

「第6回どばし健康カフェ:認知症についてなんでも語りあいましょう」開催いたしました。

10月31日は,当院待合室において「第6回どばし健康カフェ:認知症についてなんでも語りあいましょう」を開催いたしました。

今回も約20人の方にお集まりいただきました。
20代の方から80代の方までで,うち半分は初参加の方でした。医療従事者,医療関係の方が半数程度で,半分が当院の患者さんまたはネットやチラシを見て申し込まれた方です。

まず認知症に関するドラマ形式のビデオと,簡単なミニレクチャーのあと,前半セッションとして
「認知症の人の世界をイメージしてみて下さい」という設問を投げかけてみました。「今まで思い出せていたことが、思い出せなくなってきたら?
時間や場所、人の見当がつかないとしたら?」
そうなる事を想像したことがあるか,そうなった時のことをあなたはどう考えるか,周りの人はどう考えるか。」
について3グループに分かれて自由に語り合っていただきました。

当日出てきた各参加者の言葉を列挙してみます。

「自分が認知症になることをどう考えるか」
・怖い
・知らず知らずなってしまう,自分で気が付かないことが怖い
・違う世界に行ってしまう不安
・昔のことが思い出せなくなるのが不安
・友達,家族の名前が思い出せなくなる(恐怖心がある)
・子供の頃の記憶しかなくなってしまう
・仕事をやめなくてはならない
・経済的な面の不安
・想像できない
・わからない,想像できない
・他人ごとでなくもっと自分のこと,身近なこととして考える必要がある
・考えないようにしている
・自分には関係ない,それよりひとと対話してたくさんお話するのが良い
・冬にパジャのまま歩き回っていたひとを見たことがある。「別の世界にいる」と感じた
・寂しい,孤立感
・なるべく妄想などを起こさないように気をつけている
・今まで心のなかにあった感情が(そのまま)出てしまうのではないか
・なってしまったら自分は困らない
・そばで誰かがいてほしいと思う
・今まで出来たことができなくなる
・外出したり暴れたりしてしまうのではないか
・家族に迷惑がかかる
・地域の人の目が気になる
・好きなことをやるのが良い
・病院には行きたくない
・周囲に知られたくない
・周囲の目が不安→その周囲のことすらわからないのでは
・一人暮らしだと全部自分でしなければならない(のにできなくなる)
・施設があるのは安心
・感情は残っていると思うので,言葉遣いが大切,相手を信用する関係を
・秘密を話し出してしまうのはないか(と不安)
・他人が怖くなり引きこもってしまう

あるグループでは自分が認知症になることを考えたことのある人が6人中4人でした。

こうしたことを踏まえ,後半では「家の人,親しい友人が認知症になったら,あなたはどんなふうに接すると思いますか?どんなふうに接したら良いと思いますか?家族や職場,地域でどのように取り組んだら良いと思いますか?」といった内容で話し合いました。

・どう対処していいのかもわからない
・子どもたちがもっと認知症につてい知る機会を作る
・地域で支える必要がある
・適切な施設がないので,地域で支えることを考える
・会社の理解が必要:配置転換,仕事が続けられる環境
・周りに迷惑がかからないような環境,社会
・認知症の人に優しく接することはできるか→ずーっとはできない。介護サービスを利用しよう!
・親が認知症になったら受け入れられるか?→介護する家族をフォローしてくれる場所がほしい
・認知症になる前と同じように接したい(接してほしい)
・幼児のように接してほしくない
・高齢者と子供,地域などの交流の場の充実:資源回収,芋煮会,運動会
・被災地にあるお茶飲み会のような,気軽に相談できる場を作る
・かかりつけ医や地域での勉強会があるといい
・施設の充実
・国は予算を削らないでほしい
・家族はショックを受け,信じたくないと思う
・元気な時を知っているだけに諦めきれない
・治るのではないかと思ってしまう
・本人に治ることを要求してしまう
・本人に対し怒ってしまうのではないか
・(家族がかかってしまったという)現実を認めたくない

今回,認知症という,「今そこにある」非常に身近でかつ切実な問題だけに,各グループでも話は尽きることなく,これまでにもまして熱かったように思います。また新聞社や雑誌の取材もありました。

多くの市民の方が「不安」「恐怖」「恥ずかしい」」「どうにもならない」というネガティブな感情を抱いている一方で,その対策として,家族を始め地域,町内会,子ども会などの周囲からのサポートの大切さを強調する方が多く見受けられました。

また,勉強の機会や,気軽に相談できる環境を望む声も多く聞かれました。

今回浮き彫りになった色々視点を整理して,今後共より深く掘り下げたテーマで当カフェでも扱っていこうと思いました。
そして,当院としても認知症に対する不安,恐怖感,絶望感を少しでも緩和できるような,場や地域のスペースづくりを進めていきたいと思います。

参加された皆様,アンケートも含めてご協力ありがとうございました。
次回は来年1月16日を予定しております。詳細が決まり次第お知らせ申しあげます。
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by dobashinaika | 2015-11-01 21:22 | 土橋内科医院 | Comments(0)

10月31日どばし健康カフェ「認知症について,何でも語り合いましょう」です。

いよいよ1週間後に迫りました第6回どばし健康カフェ,まだお席に余裕がありますので,再度ご案内いたします。

今回のテーマは「認知症について,何でも語り合いましょう」

日時:10月31日(土)15:00〜(約2時間)
場所:土橋内科医院待合室(仙台市青葉区八幡2−11−8)


市民と医療従事者が垣根を超えて,健康・医療・福祉について気軽に語り合うカフェです。
以下のサイトから申し込み可能です。
どなたでも気軽に参加できます。お待ちしております!

http://www.kokuchpro.com/event/0a90026194db0958d496cf6857ccfcef/

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by dobashinaika | 2015-10-24 08:17 | 土橋内科医院 | Comments(0)

10月31日,第6回どばし健康カフェ「認知症について,何でも語り合いましょう」を開催いたします。

10月31日開催予定の第6回どばし健康カフェ,まだお席に余裕がありますので,再度ご案内いたします。

今回のテーマは「認知症について,何でも語り合いましょう」

日時:10月31日(土)15:00〜(約2時間)
場所:土橋内科医院待合室(仙台市青葉区八幡2−11−8)


市民と医療従事者が垣根を超えて,健康・医療・福祉について気軽に語り合うカフェです。
以下のサイトから申し込み可能です。
どなたでも気軽に参加できます。お待ちしております!

http://www.kokuchpro.com/event/0a90026194db0958d496cf6857ccfcef/

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by dobashinaika | 2015-10-15 22:07 | 土橋内科医院 | Comments(0)

比較的若年層ほど,心房細動が認知症発症により強く関与:JAMA-N誌

Association Between Atrial Fibrillation and Dementia in the General Population.
de Bruijn RF et al
JAMA Neurol. Published online September 21, 2015.doi:10.1001/jamaneurol.2015.2161


P:オランダ,ロッテルダムの認知症でないひと6514名,1989→2010年まで約20年間追跡

E:ベースラインで心房細動あり:4.9%

C:心房細動なし

O:認知症新規発症

結果:
1)心房細動群の認知症発症率:15.3%

2)非心房細動例に対するハザード比:1.33(1.02〜1.73)

3)非心房細動群の心房細動発症率:11.7%

4)非心房細動群の認知症発症率:15.0%

5)より若い層で認知症発症との関連性がある:67歳未満ハザード比1.81,76歳以上1.12。交互作用P=0.02

6)若年者においては認知症発症リスクは心房細動罹患期間と強く相関,高齢者においては相関弱い

結論:心房細動は脳卒中とは別に,認知症発症に関連していた。この関連性はより若い層で強かった。将来の検討が必要

### 認知症と心房細動発症の関連論文は多いですが,本論文は横断研究ではなく,長期追跡によりアウトカムを示した点で貴重なものと思われます。

しかも高齢者よりは67歳未満の症例で,より心房細動が認知症の原因として寄与していた可能性が示唆されていて,おそらく高齢になるほど,他のファクターが入り込むためと思われます。早期に心房細動を発症することのリスクをやはり考える必要があるように思われます。

そこに抗凝固薬がどう関与するかも興味深いところ。

以前のブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/21526867/

###今日のにゃんこ 最近気候がさわやかなためか,朝にゃんこによく出会います,楽しい限り。
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by dobashinaika | 2015-09-24 22:14 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

認知症と心房細動の関連に関する総説:JAHA誌

Cognitive Function: Is There More to Anticoagulation in Atrial Fibrillation Than Stroke?
J Am Heart Assoc.2015; 4: e001573
http://jaha.ahajournals.org/content/4/8/e001573.full.pdf

JAHAから認知症と心房細動に関する総説が掲載されています。

結論だけまとめると
・多くの研究が、脳梗塞の既往のない例において、心房細動は認知機能低下に独立してして関連することを示している

・認知機の低下は、脳卒中や無症候性脳梗塞と関連している

・心房細動患者は、心房細動のない患者に比べて無症候性脳梗塞を高率に有する

・無症候性脳梗塞に対する抗凝固療法のインパクトは不明である

・認知機の低下は重要な公衆衛生上の問題である

・心房細動患者の認知機低下における。抗凝固薬の効果を評価するために臨床試験が必要である

心房細動が認知機能低下に関連するメカニズムとしては
・微小脳出血

・脳の血液灌流の低下:拡張期の脳灌流低下。脈不整による前負荷や心拍出量への影響

・炎症マーカーの上昇
等が挙げられています

抗凝固薬の認知機能低下に対する効果は
・良いという報告と影響なしという報告あり

・NOACは、期待できる可能性あり

・現在研究が進行中とのことです

脳梗塞の既往がなくても、認知機能低下予防という観点から抗凝固薬が見直されるようになるかもしれません。

認知症と心房細動関連ブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/21454183/
http://dobashin.exblog.jp/17915041/

$$$ 朝5:30の散歩道。気温26度。このころしか外で活動できる時間はない感じです、最近
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by dobashinaika | 2015-08-07 22:28 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

アジア人でも心房細動と認知症発症は関連がある:IJC誌

Risk and prediction of dementia in patients with atrial fibrillation — A nationwide population-based cohort study
Jo-Nan Liao et al
Int J Cardiol Published Online: July 06, 2015


E:認知症のない心房細動。台湾の33万人余に及び国内健康保険リサーチデータベース。心房細動なし群対照

C:心房細動なし。認知症無し。年齢、性別マッチング

O:認知症発症。CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアの有効性の検討

結果:
1)認知症発症:心房細動群=年2.12% vs. 非心房細動群1.50%:ハザード比1.420

2)CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアスコアは認知症発症の予測因子
1点増加ごとの認知症増加:CHADS2スコア1.520、 CHA2DS2-VAScスコア1.497

3)C統計量:CHA2DS2-VAScスコア0611 vs.CHADS2スコア0.589、p<0.001

結論:台湾の国内コホート研究では、心房細動は認知症高リスクに関係。CHA2DS2-VAScスコアは心房細動の認知症発症評価に有用

### 以前の認知症x心房細動関連ブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/17915041/

アジア人の大規模コホートでも関連ありのようです。両者に共通なリスク因子はたくさんありそうですね。

$$$ 先週末は所用で名古屋に行きました。空から富士山
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by dobashinaika | 2015-07-16 21:28 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

シロスタゾールと認知症の関係についての患者さん説明用パンフレットを作りました。

20日のTV番組(NHKスペシャル)でシロスタゾールやインスリン点鼻薬の認知症予防効果について取り上げられました。

期待を持って見ておられた方も多数おられると思いますが、今後問い合わせが多くなることも予想されるため、現時点でこの点に関し患者さんに質問された場合に当院で使うパンフレット(シロスタゾール編)を作ってみました。ご批評いただければ幸いです。

多少、冗長で難しい感じになってしまったかもしれません。使ってみた上で、改定していきたいと思います。

今後、当院で使用している患者さんとの合意をつくる上での資料を各疾患ごとに順次公開していきたいと思いますので、ご批評を仰げれば幸いと思います。

###########################################
シロスタゾールは認知症に効果があるのでしょうか?

Q1.NHKの番組で「シロスタゾール」が認知症に効果のあるお薬として紹介されていましたが、シロスタゾールとはどんな薬なのでしょうか?

A1.シロスタゾール(商品名プレタール他)は、血液が血管の中で固まり、血栓(血の塊)ができるのを抑える薬です。動脈の壁に血栓ができるときには、そこにたくさんの血小板が集まってきます。シロスタゾールは、この血小板の働きを弱めることで、血栓をできにくくし(血液をサラサラにし)、主に脳の血管が詰まる脳梗塞の再発を予防する薬として、現在使われています。

Q2.もともとは血液をサラサラにする薬であるシロスタゾールが、どうして認知症に効くと言われるようになったのでしょうか?

A2.日本の病院から発表された論文が根拠になっています。この論文は、過去約17年間、洲本伊月病院の外来に通った患者さんで、認知症の薬のドネペジル(商品名アリセプトなど)を飲んでいた人のカルテを見なおして、その人たちをシロスタゾールを飲んでいたひとと飲まなかったひととに区別し、認知機能や記憶力の検査であるミニメンタルステート検査の結果を比べたものです。

Q3.結果はどうだったのですか?

A3.ミニメンタルステート検査は1年以上の間隔で2回行いました。30点満点で22点未満の、中くらいから重い人を対象にした場合は、シロスタゾールを飲んだひとも飲まないひとと同じくらい認知機能が下がりました。

 一方、点数が22点から26点の比較的認知症が軽いひとでは、シロスタゾールを飲まないひと36人の点数は30ヶ月の間に平均2.2点下がったのに対し、シロスタゾールを飲んだひと34人の点数は平均0.5点しか下がりませんでした。

Q4.ということは、やはりシロスタゾールが認知症の進行を防いだと考えて良いのではないでしょうか?

A4.認知症の程度が軽いひとについては、その可能性はあるといえるかもしれません。ただし、こうした研究を考える場合、必ず「バイアス(偏り)」がどのくらいかかっているかを考える必要があります。

 たとえば、この研究の場合、シロスタゾールを処方した理由が明らかにされていません。医師がこの人は脳梗塞の再発の危険性があるからなどの理由で処方することが多いため、シロスタゾールを飲んだひとのほうが脳梗塞のリスクの高い可能性が考えられます。この研究では、シロスタゾールを飲んだひとのほうが、脳のMRI(画像)で、記憶をつかさどる海馬というところが小さく萎縮している傾向が認められています。

 あとから振り返ってカルテを見なおしたこのような研究では、比較の対象となる患者さんのもともとの病気の重さや、合併している病気などが違うため、公平な薬の効果判定ができないことがよくあります。

 また、この研究では、対象となった人数が30人台と少ないことも、偶然などが入り込む可能性があると思われます。

Q5.そうすると、患者としてはどう考えればよいのでしょうか?

A5.シロスタゾールが、軽い認知症の進行を遅くする可能性が示された点は、大変明るい材料だと思います。

 ただし、まだ全面的に今回の研究結果を信頼して、シロスタゾールを服用することにはやや時期が早いかもしれません。
 
 ちなみに、まだシロスタゾールには、認知症の人に処方して良いという医療保険の適用がなく、認知症というだけで処方することはできません。また、副作用も少なからずあります。

 本当に、効果があると言うには、認知症の方がシロスタゾールを飲むか飲まないかをくじびきのような方法で割り振って、数年後に認知症の進行に差があったかどうかを比べる研究が理想です。あるいはそこまでの研究でなくても、今後多くの施設で多数の人を対象にしての追加の研究結果が出てから、飲むかどうかを考えるという姿勢で良いのではかと思います。

Q6.シロスタゾールの副作用にはどんなものがありますか?

A6.代表的なものに頭痛と動悸があります。どちらも飲んだひとの5〜10%の頻度で起こると言われています。これらの副作用は、飲むのをやめればすみやかに改善します。
また血栓を出きにくくする薬なので、出血も少ない頻度ですが注意する必要があります。

認知症の進行を抑えるには、まず薬物療法がありますが、そのほかにも心理学的なのもの、認知訓練的なもの、運動他音楽芸術的なものなど薬によらない治療法などさまざまなものがあります。よくお話し合いをした上で、納得の行く治療を考えていきたいと思います。
by dobashinaika | 2014-07-22 01:19 | 患者さん向けパンフレット | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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