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東京のコホート研究では脳卒中/全身性塞栓症と全死亡はDOACーワルファリン間で有意差なし。大出血はDOACで有意に少ない:SAKURA AF レジストリー


P:登録時心房細動が確認され,抗凝固療法を施行されている日本のNVAF患者3268例

E:DOAC1690例

C:ワルファリン1578例

O:主要評価項目:脳卒中/全身性塞栓症。心血管死,全死亡,大出血,および以上全てについても解析

試験デザイン:東京地域の医療機関(2心臓血管センター,13病院,48診療所)からの前向き登録研究。2013年9月〜2015年12月に登録。平均追跡期間39.3ヶ月

結果:
1)追跡率:1年=97.5%,2年=91.2%

2)以下のアウトカムでDOAC-ワルファリンで有意差なし
脳卒中/全身性塞栓症:DOAC vs. ワルファリン=(1.2 vs. 1.8%/年)
大出血:DOAC vs. ワルファリン=(0.5 vs. 1.2%/年)
全死亡:DOAC vs. ワルファリン=(2.1 vs. 1.7%/年)

3)プロペンシティスコアマッチ後は
脳卒中/全身性塞栓症(P=0,.679),全死亡(P=0.894)は同じ
大出血はDOACで少ない(P=0.014)
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結論:日本における心房細動患者の抗凝固薬使用の現状とアウトカムに関する,高追跡率で信頼すべきデータである。3年追跡で,脳卒中/全身性塞栓症と全死亡はDOACーワルファリン間で有意差はなかったが,大出血はDOACで有意に少なかった。

### 日本大学板橋病院が中心となって行われている心房細動登録研究におけるアウトカム論文です。
患者背景等に関する論文はすでに出ています(これまで紹介しないですみません^^)

有名な伏見AFとの比較ですが,平均年齢はSAKURA 72.0歳,FUSHIMI 73.6歳。平均CHADS2スコアはSAKURA 1.80点,FUSHIMI 2.0点です。

SAKURAは抗凝固薬投与例のみが対象なのと,ワルファリンのTTRが算出されているところも違う点です。

まず2年間での抗凝固薬使用率の推移を見ると,ワルファリン,ダビガトラン,リバーロキサバンは減少し,アピキサバン,エドキサバンが徐々に増えているのがわかります。
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アウトカムでFUSHIMIと違う点は,スコアマッチ後は大出血がDOACで有意に少なかった点です。考察では,スコアマッチ後も1600例強と多くの例で比較している点を指摘していました。

それにしてもこの試験での大出血率は大変低いですね。ワルファリンでも年間1.2%,DOACでは0.5%です(頭蓋内出血でなく大出血です)。TTRも大変いいし,またCHADS2スコアも比較的低い例が多いのも一因と思われます。

ただし,高齢者でのサブ解析では今年の日循で発表されているものによれば,大出血でも差がなかったようです。

今後とも注目したい研究と思います。

$$$ 高い空,乾いた風,薄い雲,季節の移ろいが愛おしいですね。
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by dobashinaika | 2018-08-19 22:23 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

日本の心房細動患者では安定した心不全は脳卒中のリスク因子として示されず:伏見AFレジストリ


目的:心不全は様々なタイプが有る。どのタイプの心不全が心房細動の脳卒中/全身性塞栓症に影響するのかを検索

方法:
・伏見AFレジストリ登録患者3749例
・心不全の定義;心不全の入院歴,症状(NYHA≧2),低EF(<40%)

結果:
1)1008例(26.9%)で事前心不全あり

2)事前の心不全(各項目ごとも含め)は脳卒中/全身性塞栓症の発症と関連しない:HR, 1.24; 95% CI, 0.92–1.64)
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3)BNP.NT-proBNP高値は関連あり:HR, 1.65; 95% CI, 1.06–2.53

4)脳卒中/全身性塞栓症が入院後30日以内に明らかに多い:HR, 12.0; 95% CI, 4.59–31.98

結論:心房細動における心不全の脳卒中/全身性塞栓症への影響は,心不全のステージや重症度に依存する。脳卒中/全身性塞栓症は心不全入院30日以内明らかに増加するが,代償された「安定した」心不全はリスクへの関与は明らかではなかった。

### 心房細動があっても,よく管理された高血圧,糖尿病は脳卒中が少ないだろうことは直感としてわかりますが,心不全は流石に関係するだろうと思いきや。これも安定した心不全は全く脳卒中に関与しないことが伏見AFレジストリにより明らかとなりました。NYHAやLVFEが低くてもです。

関係したのは,「心不全入院30日以内」です。やはり心不全非代償期は凝固能の亢進,利尿薬投与など血栓ができやすい状況と思われます。

またBNP/NTproBNPも関係しました。それぞれのカットオフ値は測定し得た例の平均値で分けていてBNPが169.4pg/mL,NT-proBNPが1,457 pg/mLでした。全例測定でなく,測るべきと考えられた人で比べますので,選択バイアスはありカットオフ値の判断までできないかと思いますが,極端な高値は注意する指標として有効かと思います。

伏見AFレジストリ開始から7年。これまで明らかになった日本の抗凝固療法の「リアル」は数知れず,最近までのデータの蓄積は間違いなく今のそして今後の日本の心房細動診療を左右する要になると思われます。先日久々に赤尾先生にお会いする機会がありましたが,「伏見」をささえるシステム,とくにリーダーの赤尾先生とそのフォロワースタッフのチームの素晴らしさがこの研究を開花させたことが強く印象に残りました。

そしてCHADS2スコアですが,今の日本にはほとんど当てはまらないことはもはや明白だろうと思われます。伏見その他のレジストリからは「脳卒中の既往」「75歳以上」が最強で,(よく管理された)高血圧,糖尿病,心不全は関係ないことになります。かわって「持続性」「低体重」「低腎機能」「貧血」「左房径」などがスコアに入ってくるかもしれません。他の集団でも同じようなアウトカムが示されてきいます。

今のところは,以前拙著でも提唱したように,CHADS2スコア2点以上は暫定的に抗凝固薬必須としておいて,0,1点の場合に,安定した高血圧と心不全,糖尿病が1点の項目だったときは,「持続性」「低体重」「低腎機能」「貧血」「左房径」のどれか一つがあれば適応とかんがえる,つまり低リスクの場合上記の付加項目を「考慮する」というスタンスで行きたいと思います。ガイドラインが変わるまでです。

$$$ 東京で見かけたラーメン屋さん。この季節これは致命的では。。(仙台ではそうでもないけど)
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by dobashinaika | 2018-07-25 07:07 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

米国循環器学会(ACC)による心房細動の医師教育用スライドセット(日本語)

香坂俊先生@sk2798からご教示頂きました,米国循環器学会(ACC)による心房細動の医師教育用スライドセットです。
日本心臓病学会がプライマリケア医のためのワークショップとして作成したものと思われますが,これが非常に秀逸です。
心房細動の管理についてこのスライドで一通り学ぶことができます。左心耳血栓の動画などもついていて至れり尽くせり。私も利用しようと思います。


$$$
恒例のどんと祭,お清めして参りました。
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by dobashinaika | 2018-01-14 20:55 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

アジアの大規模リアルワールドデータにおけるNOACの有効性と安全性は?:Stroke誌


疑問:アジア人のリアルワールドデータでは,NOAC (対ワルファリン)の有効性安全性はどうなのか?

方法:
・韓国の国民健康保険データベース
・アウトカム:虚血性脳卒中,頭蓋内出血,全死亡
・NOAC(ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン)11611例,ワルファリン23222例(プロペンシティースコアマッチ),NVAF,CHA2DS2-VAScスコア2点以上

結果:
1)虚血性脳卒中:NOAC=ワルファリン,頭蓋内出血:NOAC<ワルファリン,全死亡:NOAC<ワルファリン

2)虚血性脳卒中,頭蓋内出血の対ワルファリン相対危険:3つのNOACで同じ

3)全死亡及びネットクリニカルベネフィット(上記3アウトカム合計):ダビガトランとアピキサバンでワルファリンより良い。リバーロキサバンとワルファリンは同等

結論:アジアにおける高リスクの心房細動患者において,3つのNOACはワルファリンに比べ虚血性脳卒中じは同等で,頭蓋内出血は少なかった。全死亡は,ダビガトラン,アピキサバンがワルファリンとより少なかった。

### アジア人のRWDでは,かなり大規模なデータです。概ねこれまでのRWDやNOACと同様の結果かと思われます。高齢者などではどうだったのかも知りたいところです。

$$$ 前回のブログで見えていた黒猫チャン
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by dobashinaika | 2017-10-23 22:01 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

やはり心房細動では血圧が高い(収縮期150mmHg以上)と血栓塞栓症と出血リスクが高かった;伏見AFレジストリーから


P:FUSHIMI AF Registryに登録した心房細動患者3713例。追跡期間中央値1,035日

E:高血圧あり:2304例,62.1%

C:高血圧なし:1409例

O:脳卒中/全身性塞栓症,大出血

結果:
1)高血圧の既往は,脳卒中/全身性塞栓症,虚血性脳卒中,頭蓋内出血,大出血ともに影響なし

2)ベースライン血圧150mmHg以上群(305例,13.3%):150mmHg未満群(1983例)にくらべ
脳卒中/全身性塞栓症多い:HR: 1.74, 95% confidence interval [CI]: 1.08–2.72
大出血多い:HR: 2.01, 95% CI: 1.21–3.23

3)150mmhg未満群は,非高血圧群と比べて脳卒中/全身性塞栓症,大出血に差はなし
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結論:脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも,特に収縮期血圧の高い心房細動患者において発症リスクが高かった。

### 臨床に直結するデータですね。最近ではJ-RHYTYHレジストリーで同様研究があり,それでは収縮期血圧136mmHgで切られていました。
伏見では150がカットオフポイントですが,140−149mmHgは差がなかったようです。

Discussionにもあるように,血圧はベースラインのワンポイントの値なのでこれだけで目標値を定めるのは無理がありますが,自験例でも出血,梗塞を起こす症例は,だいたい145~150mmHgを超えるような症例であり,実感に合っているように思います。

抗凝固薬ありでもなしでもこのことは認められているので(抗凝固薬無し群はそれだけ低リスクであることに注意),抗凝固薬を出しっぱなしにして血圧を軽く見てはいけない,というメッセージを受け取りたいと思います。

いまさらながらですが,抗凝固療法の主眼は脳血管イベント予防にあるのだから,であるなら当然血圧管理が最大の課題であることを反芻します。


### ご近所ネコシリーズ
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by dobashinaika | 2017-06-04 19:15 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本人の今後10年間の心房細動発症リスクがわかる予測スコア


目的:日本で心房細動を予測するリスク因子は何か?

方法:
・吹田市の一般住民コホート6898例,30−79歳。心房細動なし。1989年から登録,追跡
・2年に1回の検診,医療機関受診時心電図で診断された心房細動

結果;
1)311AF(95180人年)

2)以下のリスク因子を同定
男性/女性=0/-5(点)(30.40代)3/0(50台),7/5(60代),9/9(70代)
高血圧,肥満,アルコール過飲,冠動脈疾患:各2点
喫煙中:1点
非HDL中等度;-1点
不整脈:4点
心雑音:8点(30−40代),6点(50代),2点(60代)

3)C統計量0.749;95%CI 0.724-0.774)

4)今後10年の心房細動発症リスク:
スコア2点以下1%以下,スコア10−11点9%,スコア16点以上27%
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結論:我々が開発した従来からのリスク因子を用いた心房細動発症10年リスクスコアは,心電図なしで外来患者や健診でルーチンに簡便に利用できる。

### 心房細動の発症リスク因子はいろいろあります。日本の国立循環器病研究センターからのこの研究では,年齢,血圧,体重,アルコール,冠動脈疾患,喫煙などの従来からよく言われている因子にくわえ,心房細動以外の不整脈と心雑音を重視しています。

私自身に当てはめると,心雑音なし,ライフスタイル&脂質−1点(non-HD),心血管リスク6点(心室期外収縮,高血圧治療中)で50代男性ですと7%と出ました。

心房細動発症リスクに関する総説,ブログはこちら

$$$ ご近所町内会の張り紙。カフェは6月10日です。
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by dobashinaika | 2017-05-25 15:14 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

日本のリアルワールドでは,DOACとワルファリンで脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも発症率に有意差なし:Fushimi AF Registryより


疑問:DOAC発売後5年たった時点での,日本の抗凝固療法のアウトカムはどうなっているのか?

方法:
・Fushimi AF Registry登録患者対象
・80医療施設,3731例,2015年11月まで追跡

結果:
1)脳卒中/全身性塞栓症:年間2.3%

2)大出血:年間1.8%

3)DOAC発売後,DOAC使用は緩徐に増加:2015年はワルファリン37%,DOAC26%,抗凝固なし36%

4)脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも,DOACとワルファリンで出現率に差はなし
脳卒中/全身性塞栓症HR, 0.95; 95% CI: 0.59–1.51, P=0.82),大出血HR, 0.82; 95% CI: 0.50–1.36, P=0.45
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結論:リアルワールドの臨床プラクティスでは,DOAC投与下での脳卒中/全身性塞栓症や大出血は,ワルファリンと比べて明らかな違いはなかった。

### 伏見AFの最新データです。日本のイマココがわかる大変貴重な報告です。
追跡率89.6%,各群はCHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDスコアの全項目でpropensity scoreマッチされています。
患者プロファイルの確認ですが,平均年齢73.6歳,平均CHADS2スコア2.0点です。ワルファリン群のほうが高齢,低体重,低血圧で高リスク例が多かったとのことです。
ワルファリン1728例,DOAC270例(ダダビガトラン115,リバーロキサバン222,アピキサバン202,エドキサバン6:5年の間に重複あり)

アウトカムの確認
1)抗凝固療法施行率:53%(2011年)→64%(2015年)
2)ワルファリン:DOAC:抗凝固なし:51%:2%:47%(2011年)→38%:26%:36%(2015年)
3)CHADS2スコア別処方率変化:3点以上の処方率は60数%で過去5年で不変。0点(35→49%),1点(45→62%)の人が増えている
4)DOACの低用量処方:ダビガトラン90%,リバーロキサバン44%,アピキサバン44%
5)非推奨例:ダビガトラン36%,保険適応外例:リバーロキサバン,アピキサバン59%
6)脳卒中/全身性塞栓症発症率への寄与因子:年齢(10歳ごと),脳卒中の既往のみ,(高血圧,糖尿病などは入らず)
7)ワルファリン vs. DOACのアウトカムはPSマッチ後も同じ
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Limitationは多くありますが,それでもワルファリンとDOACでアウトカムが変わらなかったのは相当インパクトがあります。
理由として著者らはDOACのアンダードースを挙げています。たしかにダビガトランでさえ36%,他に至っては59%もの症例で添付文書からはずれた低用量使用だったのにはやや驚きました。通常腎機能や年齢がギリギリのひとでは低用量にシフトするのもやむを得ませんが,6割近くが低用量というのはギリギリでないひともかなり含まれるのではないでしょうか。ただそれだと出血は少ないように思いますが,出血も同じだったとのことです。

筆者が述べているようにDOACのアドヒアランスの問題,nが少ないことなども関係しているかもしれません。

それにしても,試験の限界も多々あるにしても,日本の実臨床での実態をかなり反映した集団のアウトカムと思いますので,日本の臨床家の今の薬の出し方と,患者さんの飲み方では,DOACはワルファリンに勝てていないということです。あれだけ宣伝攻勢,あれだけの薬価でこうなんですね〜〜。やっぱり抗凝固薬を「誰に」「どう」使うかは,「何を」使うかより100倍重要。「何を」を考えるならコストとアドヒアランスがアウトカムより大事。なんとこんなところに落ち着くのでしょうか。NOAC礼賛の立場を取ってこなくてよかった(?)。


by dobashinaika | 2017-04-19 22:34 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本の実臨床におけるNOACの効果(J-RHYTHMレジストリー2):仙台で開催中の日本循環器学会より

Beneficial Effect of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation– Results of the J-RHYTHM Registry 2 –
Circulation Journal: Advanced Publication 2016/3/18


疑問:日本のリアル・ワールドにおけるNOACの効果はどうか

方法:
・J-RHYTHM Registryをさらに3年間延長しての多施設,前向き,観察研究
・登録施設での外来の心房細動症例を連続登録
・5年追跡

結果:
1)6616例,男71.0%,69.7歳,CHADS2スコア平均1.7点

2)ワルファリン3964人,NOAC923人,抗凝固薬なし753人,データなし976人

3)血栓塞栓症:ワルファリン4.9%,NOAC2.1%,抗凝固薬なし6.0%

4)大出血:ワルファリン5.9%,NOAC2.4%,抗凝固薬なし4.8%

5)全死亡:ワルファリン5.8%,NOAC1.4%,抗凝固薬なし13.9%(P<0.001 for each)

6)ワルファリン群(CHA2DS2-VAScスコア,抗血小板薬補正後):全死亡において抗凝固薬なし群より良好(OR 0.30, 95%CI 0.23–0.39, P<0.001)

7)NOAC群:全てのイベントで良好。血栓塞栓症(OR 0.42, 95% CI 0.24–0.74, P=0.003),大出血(OR 0.53, 95% CI 0.31–0.93, P=0.027),全死亡(OR 0.10, 95% CI 0.06–0.18, P<0.001)
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結論:NOACは日本の全てのタイプの非弁膜症性心房細動におけるイベント率を改善する可能性がある

### 現在仙台で行われている第70回日本循環器学会のLate Breaking Cohort Studyで昨日(3月18日)発表されたJ-RYTHTM Registryの延長スタディです。2012年から2014年の3年間のデータですのでNOAC時代に入ってからのデータとなります。

NOACがいいということですが,まず登録研究ですので患者背景が違います。年齢はワルファリン群70.1歳,NOAC群67.1歳で有意にNOAC群が若く,CHADS2スコアもワルファリン群1.7点,NOAC群1.4点です。他にもNOAC群の方が発作性が多く,心不全が少なく,75歳以上が少ないというように,全体的にNOAC群の方が低リスク例に投与されているということができます(CHADS2スコア0点が21.0%もあります)。

NOACの内訳はダビガトラン4.9%,リバーロキサバン6.1%,アピキサバン2.8%です。2012年から2014年にかけてワルファリン群75.4%→63.6%でしたが,NOAC群6.1%→20.4%と増えており,全体のnは減少していますので,ワルファリンからNOACに切り替えた症例が多いことがうかがえます。

現在大きな病院で行われているようなNOACの適応基準でNOACを投与していれば,NOACは大変良いと考えます。

$$$ 今までにないほど仙台国際センターも,地下鉄駅も人と熱気であふれていました。展示棟の存在が大きいですね。非常に大きなスペースで驚きました。
私のところからは歩いても行けるのですが,遠方の方は宿泊が大変と聞いています。今日あたりも街は循環器の先生であふれているでしょうか。
 
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by dobashinaika | 2016-03-19 18:37 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本の代表的心房細動データベースにおける抗凝固薬使用とアウトカムの変遷:CJ誌

Nine-Year Trend of Anticoagulation Use, Thromboembolic Events, and Major Bleeding in Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation – Shinken Database Analysis
Circulation Journal released online January 21, 2016


疑問:日本の医療施設における抗凝固薬の使用状況及びアウトカムはどうか?

方法:
・心臓血管研究所(東京)におけるShinken Databaseの2004〜2012年のデータ
・非弁膜症性心房細動と診断された2434例
・3つの時期に分類:2004−2006年(681例),2007−2009年(833例),2010−2012年(920例)

結果:

1)抗凝固薬処方数:3期を通じて安定して増加

2)大出血;2004−2007年から2007−2009年にかけてワルファリン使用にもかかわらず減少傾向:低用量,抗血小板薬併用回避のため

3)血栓塞栓症:改善なし

4)2010−2012年:低リスク患者へのDOACが血栓塞栓症の減少及び大出血(特に頭蓋外出血)の増加に寄与した。

5)上記時期の高リスク患者はほとんどの例でワルファリン治療で血栓塞栓症,大出血とも改善されなかった

結論:過去9年間の脳卒中予防の傾向としては抗凝固薬処方の安定した増加と血栓塞栓症,大しゅっけつの部分的な減少を認めた。DOC時代になっても高リスク患者の血栓塞栓症予防は不十分であり,DOACは頭蓋外出血増加に関係していた。


### 非常に膨大なデータで,興味深いポイントがたくさんあり,結果の表をずっと眺めていても飽きません(私だけ?w)

まず抗凝固薬処方率は3期ごとで40.7→47.5→55.9%と増加。2010−2012年のDOAC処方率は25.5%。CHADS2スコア0点の42.5%(2004〜2006年は30.8%),1点の62.8%(2004〜2006年は45.2%)に処方。CHADS2スコア2点以上のINR平均は1.94(12ヶ月)

血栓塞栓症は3期ごとで1.2→1,2→0.65%/年で減少傾向だが有意差なし。
大出血は5.7→1.6→6.5%/年で3期目に増加したのは頭蓋外出血。

3期目で血栓塞栓症が減ったのはCHADS2スコア0点の低リスクに多く出してその層はそもそも血栓塞栓症が少ないからで,CHADS2スコア2点以上の高リスク層では減っていない,大出血が多かったのはDOACにより頭蓋外出血が増えたから,と考察されています。

これを見ると,DOAC時代になり処方は増えているが,高リスクに対する血栓塞栓症と頭蓋外出血のアウトカムはほとんど改善されていないということも言えそうです。ただし高リスク例では主にまだワルファリンが出されていたようです。

3期目が2010〜2012年で完全なDOAC時代とは言いがたいフェーズですので,これ以降のデータがむしろ待たれるところです。

$$$ 毎月第4週週末は東京で総合診療セミナー。寒くても恒例の朝散歩。東京は晴れでした。
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by dobashinaika | 2016-01-25 21:42 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本の登録研究においても既存のより新規発症の心房細動が心不全の予後を悪くする:CJ誌

Prognostic Impact of New-Onset Atrial Fibrillation in Patients With Chronic Heart Failure – A Report From the CHART-2 Study –
Takeshi Yamauchi et al
Circulation Journal http://doi.org/10.1253/circj.CJ-15-0783


疑問:心不全患者が心房細動を合併した場合,予後は悪くなるのか

方法:
・東北地方のCHART-2研究登録例10219例のうち,stage C/Dの4818例

結果:
1)登録時心房細動:38.6%

2)心房細動症例(対非心房細動例):高齢,eGFR低下,BNP高値,LVEF,Bブロッカー,ARB使用は同等

3)新規発症心房細動:3.6%(3.2年追跡期間中)

4)新規発症例の死亡に関する補正後ハザード比:1.72; P=0.013

5)登録時心房細動(発作性,持続性とも)は予後に関連なし

6)死亡率は,新規発症後最初の1年で特に高い

7)RAS阻害薬とスタチンが新規発症抑制に関連あり。利尿薬は発症促進に関連あり

結論:心房細動の既往ではなく,新規発症が,特に発症1年以内の心不全死亡率増加に関連していた。

### 東北大学循環器内科からの精力的な仕事です。
もともとあった心房細動に心不全を合併した場合は,心不全のない例に比べて予後が悪いことは明らかと思われますが,一方心不全がもともとあって,そこに心房細動が合併した場合に関しては,結果はさまざまだったんですね。

普通に考えれば心房細動があると,左室の充満時間の短縮,塞栓症リスク増大などで予後は悪くなりそうで,事実昔のSOLVD試験を始めとするトライアルは予後悪化を示唆していましたが,最近の試験はそうでもなくて,Euro Heart Surveyなどは今回の知見と全く同じ,新規発症が予後に影響し,既存の心房細動はむしろ予後を良くするとしています。

やっぱり,心不全の治療が良くなったためと思われます。その中でもRAS阻害薬とスタチンが関連ありということで,どちらも前向き試験で心房細動発症に関するアップストリーム効果は否定されてはいますが,いちおう頭に入れておきます。

$$$ 土曜日は盛岡で健康カフェの話をさせていただきました。詳細は後日ご報告します。楽しかったです。
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by dobashinaika | 2015-12-13 23:33 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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