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日本のコホート研究ではオフラベル低用量DOACでもアウトカムは悪化せず:Circ J誌より


目的:日本におけるオフラベル用量のDOAC使用のアウトカム

方法:
・SAKURA AF レジストリ
・3237例中,4DOAC処方をフォローしえた1676例対象。平均追跡39.3ヶ月

結果:
1)適切標準用量:46%,適切低用量:28.7%,アンダードーズ:4.0%,オーバードーズ22.2%

2)適切標準用量群に比べアンダードーズ,オーバードーズ群は明らかに高齢で高リスク

3)脳卒中/全身性塞栓症,死亡:標準用量群,アンダードーズ群間で有意差なし

4)大出血:アンダードーズ群で低い傾向:HR0.474, P=0.0739
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5)複合イベント(脳卒中/全身性塞栓症,大出血,死亡):標準用量群に比べオーバードーズ群で高い:HR 2.714, P=0.0081
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結論:アンダードーズ群と標準用量群では患者背景が異なっており,アンダードーズ群がアウトカムが悪いわけではない。しかしオーバードーズ群はイベントリスクが高く,慎重なフォローが必要。さらなる研究が必要

### 複合イベントが良くなかったのは,オーバードーズ群と適切低用量群でした。適切低用量群は年齢が最高(平均79.2歳)でCHADS2スコアも最高でした。ここに属する例は真の高リスク例であり,たとえ低用量であってもアウトカムが良くないのだと思われます。

一方オーバードーズ群は筆者も述べているように,図らずも低用量になってしまった群,つまり当初は標準用量でよかったのに経年的に加齢,腎機能低下,低体重が進行したにもかかわらず,それに応じて用量を減らさなかった例ーチコちゃんから医師が"ぼーっと生きてんじゃねえよ”と言われそうな例と思われます。この群はダビガトラン処方が53.0%を占めており,当初ダビガトラン150x2で始めたが70歳以上になっても低用量にしていない例があるのかもしれません。

一方アンダードーズ群は年齢71歳,CCr70.1と比較的良好であり,もともとリスクの少ない例が多いと思われます。低リスク例かまたは用量基準ギリギリの例なのでアウトカムが標準用量と変わらないのかもしれません。

アンダードーズ群ではイグザレルト処方例が50.1%ですが,全体に若年で低リスクのため塞栓リスクが増えていないのかもしれません。

いずれにせよ,大幅な逸脱でなければDOACの低用量処方は日本でアウトカムに大きな影響はないのが現状のようです。ただしボーッと高用量は要注意,ということです。

$$$ 忙中菓子あり。萩の月たまに食べても美味しいです。
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by dobashinaika | 2019-03-13 22:04 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

抗凝固薬抗血小板併用例では,抗凝固薬単独に比べ大出血も脳卒中・塞栓症も多い:伏見AFレジストリより

Current Status, Time Trends and Outcomes of Combination Therapy With Oral Anticoagulant and Antiplatelet Drug in Patients With Atrial Fibrillation - The Fushimi AF Registry.Circ J. 2018 Nov 24;82(12):2983-2991


目的:抗凝固薬と抗血小板薬の併用療法の現状,変遷,アウトカムを明らかにする


方法:
P:伏見AFレジストリ登録患者2348人
E:抗血小板薬服用:521人(22%)
C;非服用:1875人(78%)
O:併用療法の割合,併用抗凝固薬,大出血,脳卒中/全身性塞栓症

結果:
1)併用群のほうが併存疾患が多い一方,動脈硬化疾患なしが30%

2)2011年から2017年の間,併用療法は26%→14%に減少

3)NOAC使用は増加

4)特に併用群においてオフラベル低用量が増加

5)大出血:併用群>非併用群(hazard ratio HR 1.42; 95% CI: 1.03–1.95)

6)脳卒中/全身性塞栓症:併用群>単独群 (HR, 1.48; 95% CI: 1.09–2.00)
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結論:日本においては,併用療法は減少しているが,NOAC使用率は増加している。併用群では大出血のみならず,脳卒中/全身性塞栓症も増加した。

### 伏見AFレジストリによる抗血小板薬併用療法の解析結果です。

併用群のほうが抗凝固薬単独群よりも,男性が多く高齢で糖尿病,冠動脈疾患等の合併症も有意に多かったとのことです。併用群の動脈硬化疾患は冠動脈疾患が42%,脳血管疾患が35%程度です。

また約30%で併用群にもかかわらず動脈硬化疾患がなかった一方,単独群でも27%は同疾患を有していました。

抗凝固薬はワルファリンが85.0%,抗血小板薬はアスピリンが82.3%,12.5%は複数使用でした。

特筆したいのは,年々NOAC使用群でオフラベル低用量が増えており,特に抗血小板薬併用群でその傾向が強い点です。併用するときNIOAC低用量にしたくなるのも人情ですが,本当にそれで良いのか,このスタディでもアウトカムに影響しなかったのかも興味あるところです。

また大出血のみならず脳卒中/全身性塞栓症においてさえも併用群のほうがイベントが多かったとのことですが,多変量解析によれば抗血小板薬追加ではなく,出血の場合は高齢,出血の既往,アルコール,脳卒中/全身性塞栓症の場合は高齢,strokeの既往が統計上有意なリスク因子となっていました。NOAC使用はイベント率には絡んでいなかったようです。

ESCガイドラインではPCI1年後は抗凝固薬単独が推奨されており,今回のデータを見るとますます併用はしたくない感を持ちますが,そこまで割り切って中止する施設はまだ少ないのが現状で,いいのかなあと思いながら使っているのに歯がゆさを覚えます。イベントには併用そのものより背景因子の関与が大とのことですので,HAS-BLED高スコア例では相当慎重に使うまたは単独にすることを考えるということですね。

診察室でいつも悩むところですので貴重な研究です。

$$$ 近所の春日神社。秋を惜しむ紅です。
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by dobashinaika | 2018-12-01 07:32 | 抗凝固療法:抗血小板薬併用 | Comments(0)

心房細動は発作性から持続性に移行するときにイベントリスクが上昇する:Stroke誌

Paroxysmal to Sustained AF and Increased Adverse Events

Stroke. 2018;0:STROKEAHA.118.021396


臨床上の疑問:発作性から持続性への進行は心房細動患者の有害事象にどのようなインパクトがあるのか?

方法:
・FUSHIMI AFレジストリ
・4045例(発作性1974例,持続性2070例)
・心房細動の進行と有害事象の関係を解析
・平均追跡期間:1105日

結果:
1)発作性→持続性への進行例:252例(4.22/100人年)

2)進行例は,進行しない例,および期間を通じて持続性だった例に比べに比べ脳卒中/全身性塞栓症リスクが明らかに増大(対非進行例 aHR:4.10, 95%CI:1.95-8.24, P=P<0.001)(対長期持続例aHR:2.20, 95%CI:1.11-4.00, P=0.025)

3)進行したあとのイベント率は,長期持続例と同じ (aHR, 1.54; 95% CI, 0.78-2.75, P=0.201)

4)心不全入院についても同様の結果:
対非進行例 (aHR,2.0; 95% CI,1.55-4.52, P<0.001)
対長期持続例 (aHR, 1.81; 95% CI, 1.08-2.88, P=0.026)

結論:心房細動の(タイプの)進行は臨床的な有害事象と関連する。有害事象のリスクは発作性から持続例に移行するとき一過性に上昇し,長期持続化すると減少する。

### 先日共著者の赤尾先生に,このペーパーのことをお聞きして久々に興奮いたしました(笑)。心房細動は発作性から持続性に移行するときにイベントが多い。このことは実は私も前々から薄々感じておりまして,持続化して1年以内くらいで脳卒中になる人が多いとは実感していたのですが,こうしてしっかりしたデータが出てきてやっぱりなあ(やられたなあw)という感じです。

ただし機序としては,たとえば発作が頻回となると左心耳血栓が形成されやすくなるわけですが,洞調律に戻る頻度も増えるのでこのとき左心房がスタンニングから動き出して血栓が飛ぶ頻度も増える,といったことも考えられるわけです。しかしACCのメールマガジンのコメントにもありますように,心房細動の進行と有害事象の進行に共通の病態生理があるためと考えることもできます。

「進行例」の定義は大事ですが,本文が入手できておりませんので明らかになったらまたご紹介します。

いずれにせよ観察研究ですので,因果律を当てはめることはこのままではできません。

ですが,この事実が真実に近いならば,持続化しそうな一歩手前でアブレーションをすることは合理的とも言えますので,その意味で大変貴重な報告と思われます。

※Progressionは進行と訳しましたが,進展などの用語もあるかと思われます。

※追記(2018/10/04):全文を確認したところ,"paroxysmal""persistent""permanent"の定義はESCガイドライン2016に従っています。
また,”Progression of AF”の定義は対的期間中にparoxysmalから"susutained(persistent or permanent)"への変化,です。
”peri-progression period"はparoxysmalからsustainedへ変化するときの1年間,とされています。

$$$ 大阪行ってきました。48年ぶり太陽の塔の内部に潜入しました。感動しました。
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by dobashinaika | 2018-09-20 22:27 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

東京のコホート研究では脳卒中/全身性塞栓症と全死亡はDOACーワルファリン間で有意差なし。大出血はDOACで有意に少ない:SAKURA AF レジストリー


P:登録時心房細動が確認され,抗凝固療法を施行されている日本のNVAF患者3268例

E:DOAC1690例

C:ワルファリン1578例

O:主要評価項目:脳卒中/全身性塞栓症。心血管死,全死亡,大出血,および以上全てについても解析

試験デザイン:東京地域の医療機関(2心臓血管センター,13病院,48診療所)からの前向き登録研究。2013年9月〜2015年12月に登録。平均追跡期間39.3ヶ月

結果:
1)追跡率:1年=97.5%,2年=91.2%

2)以下のアウトカムでDOAC-ワルファリンで有意差なし
脳卒中/全身性塞栓症:DOAC vs. ワルファリン=(1.2 vs. 1.8%/年)
大出血:DOAC vs. ワルファリン=(0.5 vs. 1.2%/年)
全死亡:DOAC vs. ワルファリン=(2.1 vs. 1.7%/年)

3)プロペンシティスコアマッチ後は
脳卒中/全身性塞栓症(P=0,.679),全死亡(P=0.894)は同じ
大出血はDOACで少ない(P=0.014)
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結論:日本における心房細動患者の抗凝固薬使用の現状とアウトカムに関する,高追跡率で信頼すべきデータである。3年追跡で,脳卒中/全身性塞栓症と全死亡はDOACーワルファリン間で有意差はなかったが,大出血はDOACで有意に少なかった。

### 日本大学板橋病院が中心となって行われている心房細動登録研究におけるアウトカム論文です。
患者背景等に関する論文はすでに出ています(これまで紹介しないですみません^^)

有名な伏見AFとの比較ですが,平均年齢はSAKURA 72.0歳,FUSHIMI 73.6歳。平均CHADS2スコアはSAKURA 1.80点,FUSHIMI 2.0点です。

SAKURAは抗凝固薬投与例のみが対象なのと,ワルファリンのTTRが算出されているところも違う点です。

まず2年間での抗凝固薬使用率の推移を見ると,ワルファリン,ダビガトラン,リバーロキサバンは減少し,アピキサバン,エドキサバンが徐々に増えているのがわかります。
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アウトカムでFUSHIMIと違う点は,スコアマッチ後は大出血がDOACで有意に少なかった点です。考察では,スコアマッチ後も1600例強と多くの例で比較している点を指摘していました。

それにしてもこの試験での大出血率は大変低いですね。ワルファリンでも年間1.2%,DOACでは0.5%です(頭蓋内出血でなく大出血です)。TTRも大変いいし,またCHADS2スコアも比較的低い例が多いのも一因と思われます。

ただし,高齢者でのサブ解析では今年の日循で発表されているものによれば,大出血でも差がなかったようです。

今後とも注目したい研究と思います。

$$$ 高い空,乾いた風,薄い雲,季節の移ろいが愛おしいですね。
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by dobashinaika | 2018-08-19 22:23 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

日本の心房細動患者では安定した心不全は脳卒中のリスク因子として示されず:伏見AFレジストリ


目的:心不全は様々なタイプが有る。どのタイプの心不全が心房細動の脳卒中/全身性塞栓症に影響するのかを検索

方法:
・伏見AFレジストリ登録患者3749例
・心不全の定義;心不全の入院歴,症状(NYHA≧2),低EF(<40%)

結果:
1)1008例(26.9%)で事前心不全あり

2)事前の心不全(各項目ごとも含め)は脳卒中/全身性塞栓症の発症と関連しない:HR, 1.24; 95% CI, 0.92–1.64)
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3)BNP.NT-proBNP高値は関連あり:HR, 1.65; 95% CI, 1.06–2.53

4)脳卒中/全身性塞栓症が入院後30日以内に明らかに多い:HR, 12.0; 95% CI, 4.59–31.98

結論:心房細動における心不全の脳卒中/全身性塞栓症への影響は,心不全のステージや重症度に依存する。脳卒中/全身性塞栓症は心不全入院30日以内明らかに増加するが,代償された「安定した」心不全はリスクへの関与は明らかではなかった。

### 心房細動があっても,よく管理された高血圧,糖尿病は脳卒中が少ないだろうことは直感としてわかりますが,心不全は流石に関係するだろうと思いきや。これも安定した心不全は全く脳卒中に関与しないことが伏見AFレジストリにより明らかとなりました。NYHAやLVFEが低くてもです。

関係したのは,「心不全入院30日以内」です。やはり心不全非代償期は凝固能の亢進,利尿薬投与など血栓ができやすい状況と思われます。

またBNP/NTproBNPも関係しました。それぞれのカットオフ値は測定し得た例の平均値で分けていてBNPが169.4pg/mL,NT-proBNPが1,457 pg/mLでした。全例測定でなく,測るべきと考えられた人で比べますので,選択バイアスはありカットオフ値の判断までできないかと思いますが,極端な高値は注意する指標として有効かと思います。

伏見AFレジストリ開始から7年。これまで明らかになった日本の抗凝固療法の「リアル」は数知れず,最近までのデータの蓄積は間違いなく今のそして今後の日本の心房細動診療を左右する要になると思われます。先日久々に赤尾先生にお会いする機会がありましたが,「伏見」をささえるシステム,とくにリーダーの赤尾先生とそのフォロワースタッフのチームの素晴らしさがこの研究を開花させたことが強く印象に残りました。

そしてCHADS2スコアですが,今の日本にはほとんど当てはまらないことはもはや明白だろうと思われます。伏見その他のレジストリからは「脳卒中の既往」「75歳以上」が最強で,(よく管理された)高血圧,糖尿病,心不全は関係ないことになります。かわって「持続性」「低体重」「低腎機能」「貧血」「左房径」などがスコアに入ってくるかもしれません。他の集団でも同じようなアウトカムが示されてきいます。

今のところは,以前拙著でも提唱したように,CHADS2スコア2点以上は暫定的に抗凝固薬必須としておいて,0,1点の場合に,安定した高血圧と心不全,糖尿病が1点の項目だったときは,「持続性」「低体重」「低腎機能」「貧血」「左房径」のどれか一つがあれば適応とかんがえる,つまり低リスクの場合上記の付加項目を「考慮する」というスタンスで行きたいと思います。ガイドラインが変わるまでです。

$$$ 東京で見かけたラーメン屋さん。この季節これは致命的では。。(仙台ではそうでもないけど)
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by dobashinaika | 2018-07-25 07:07 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

米国循環器学会(ACC)による心房細動の医師教育用スライドセット(日本語)

香坂俊先生@sk2798からご教示頂きました,米国循環器学会(ACC)による心房細動の医師教育用スライドセットです。
日本心臓病学会がプライマリケア医のためのワークショップとして作成したものと思われますが,これが非常に秀逸です。
心房細動の管理についてこのスライドで一通り学ぶことができます。左心耳血栓の動画などもついていて至れり尽くせり。私も利用しようと思います。


$$$
恒例のどんと祭,お清めして参りました。
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by dobashinaika | 2018-01-14 20:55 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

アジアの大規模リアルワールドデータにおけるNOACの有効性と安全性は?:Stroke誌


疑問:アジア人のリアルワールドデータでは,NOAC (対ワルファリン)の有効性安全性はどうなのか?

方法:
・韓国の国民健康保険データベース
・アウトカム:虚血性脳卒中,頭蓋内出血,全死亡
・NOAC(ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン)11611例,ワルファリン23222例(プロペンシティースコアマッチ),NVAF,CHA2DS2-VAScスコア2点以上

結果:
1)虚血性脳卒中:NOAC=ワルファリン,頭蓋内出血:NOAC<ワルファリン,全死亡:NOAC<ワルファリン

2)虚血性脳卒中,頭蓋内出血の対ワルファリン相対危険:3つのNOACで同じ

3)全死亡及びネットクリニカルベネフィット(上記3アウトカム合計):ダビガトランとアピキサバンでワルファリンより良い。リバーロキサバンとワルファリンは同等

結論:アジアにおける高リスクの心房細動患者において,3つのNOACはワルファリンに比べ虚血性脳卒中じは同等で,頭蓋内出血は少なかった。全死亡は,ダビガトラン,アピキサバンがワルファリンとより少なかった。

### アジア人のRWDでは,かなり大規模なデータです。概ねこれまでのRWDやNOACと同様の結果かと思われます。高齢者などではどうだったのかも知りたいところです。

$$$ 前回のブログで見えていた黒猫チャン
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by dobashinaika | 2017-10-23 22:01 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

やはり心房細動では血圧が高い(収縮期150mmHg以上)と血栓塞栓症と出血リスクが高かった;伏見AFレジストリーから


P:FUSHIMI AF Registryに登録した心房細動患者3713例。追跡期間中央値1,035日

E:高血圧あり:2304例,62.1%

C:高血圧なし:1409例

O:脳卒中/全身性塞栓症,大出血

結果:
1)高血圧の既往は,脳卒中/全身性塞栓症,虚血性脳卒中,頭蓋内出血,大出血ともに影響なし

2)ベースライン血圧150mmHg以上群(305例,13.3%):150mmHg未満群(1983例)にくらべ
脳卒中/全身性塞栓症多い:HR: 1.74, 95% confidence interval [CI]: 1.08–2.72
大出血多い:HR: 2.01, 95% CI: 1.21–3.23

3)150mmhg未満群は,非高血圧群と比べて脳卒中/全身性塞栓症,大出血に差はなし
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結論:脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも,特に収縮期血圧の高い心房細動患者において発症リスクが高かった。

### 臨床に直結するデータですね。最近ではJ-RHYTYHレジストリーで同様研究があり,それでは収縮期血圧136mmHgで切られていました。
伏見では150がカットオフポイントですが,140−149mmHgは差がなかったようです。

Discussionにもあるように,血圧はベースラインのワンポイントの値なのでこれだけで目標値を定めるのは無理がありますが,自験例でも出血,梗塞を起こす症例は,だいたい145~150mmHgを超えるような症例であり,実感に合っているように思います。

抗凝固薬ありでもなしでもこのことは認められているので(抗凝固薬無し群はそれだけ低リスクであることに注意),抗凝固薬を出しっぱなしにして血圧を軽く見てはいけない,というメッセージを受け取りたいと思います。

いまさらながらですが,抗凝固療法の主眼は脳血管イベント予防にあるのだから,であるなら当然血圧管理が最大の課題であることを反芻します。


### ご近所ネコシリーズ
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by dobashinaika | 2017-06-04 19:15 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本人の今後10年間の心房細動発症リスクがわかる予測スコア


目的:日本で心房細動を予測するリスク因子は何か?

方法:
・吹田市の一般住民コホート6898例,30−79歳。心房細動なし。1989年から登録,追跡
・2年に1回の検診,医療機関受診時心電図で診断された心房細動

結果;
1)311AF(95180人年)

2)以下のリスク因子を同定
男性/女性=0/-5(点)(30.40代)3/0(50台),7/5(60代),9/9(70代)
高血圧,肥満,アルコール過飲,冠動脈疾患:各2点
喫煙中:1点
非HDL中等度;-1点
不整脈:4点
心雑音:8点(30−40代),6点(50代),2点(60代)

3)C統計量0.749;95%CI 0.724-0.774)

4)今後10年の心房細動発症リスク:
スコア2点以下1%以下,スコア10−11点9%,スコア16点以上27%
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結論:我々が開発した従来からのリスク因子を用いた心房細動発症10年リスクスコアは,心電図なしで外来患者や健診でルーチンに簡便に利用できる。

### 心房細動の発症リスク因子はいろいろあります。日本の国立循環器病研究センターからのこの研究では,年齢,血圧,体重,アルコール,冠動脈疾患,喫煙などの従来からよく言われている因子にくわえ,心房細動以外の不整脈と心雑音を重視しています。

私自身に当てはめると,心雑音なし,ライフスタイル&脂質−1点(non-HD),心血管リスク6点(心室期外収縮,高血圧治療中)で50代男性ですと7%と出ました。

心房細動発症リスクに関する総説,ブログはこちら

$$$ ご近所町内会の張り紙。カフェは6月10日です。
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by dobashinaika | 2017-05-25 15:14 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

日本のリアルワールドでは,DOACとワルファリンで脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも発症率に有意差なし:Fushimi AF Registryより


疑問:DOAC発売後5年たった時点での,日本の抗凝固療法のアウトカムはどうなっているのか?

方法:
・Fushimi AF Registry登録患者対象
・80医療施設,3731例,2015年11月まで追跡

結果:
1)脳卒中/全身性塞栓症:年間2.3%

2)大出血:年間1.8%

3)DOAC発売後,DOAC使用は緩徐に増加:2015年はワルファリン37%,DOAC26%,抗凝固なし36%

4)脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも,DOACとワルファリンで出現率に差はなし
脳卒中/全身性塞栓症HR, 0.95; 95% CI: 0.59–1.51, P=0.82),大出血HR, 0.82; 95% CI: 0.50–1.36, P=0.45
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結論:リアルワールドの臨床プラクティスでは,DOAC投与下での脳卒中/全身性塞栓症や大出血は,ワルファリンと比べて明らかな違いはなかった。

### 伏見AFの最新データです。日本のイマココがわかる大変貴重な報告です。
追跡率89.6%,各群はCHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDスコアの全項目でpropensity scoreマッチされています。
患者プロファイルの確認ですが,平均年齢73.6歳,平均CHADS2スコア2.0点です。ワルファリン群のほうが高齢,低体重,低血圧で高リスク例が多かったとのことです。
ワルファリン1728例,DOAC270例(ダダビガトラン115,リバーロキサバン222,アピキサバン202,エドキサバン6:5年の間に重複あり)

アウトカムの確認
1)抗凝固療法施行率:53%(2011年)→64%(2015年)
2)ワルファリン:DOAC:抗凝固なし:51%:2%:47%(2011年)→38%:26%:36%(2015年)
3)CHADS2スコア別処方率変化:3点以上の処方率は60数%で過去5年で不変。0点(35→49%),1点(45→62%)の人が増えている
4)DOACの低用量処方:ダビガトラン90%,リバーロキサバン44%,アピキサバン44%
5)非推奨例:ダビガトラン36%,保険適応外例:リバーロキサバン,アピキサバン59%
6)脳卒中/全身性塞栓症発症率への寄与因子:年齢(10歳ごと),脳卒中の既往のみ,(高血圧,糖尿病などは入らず)
7)ワルファリン vs. DOACのアウトカムはPSマッチ後も同じ
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Limitationは多くありますが,それでもワルファリンとDOACでアウトカムが変わらなかったのは相当インパクトがあります。
理由として著者らはDOACのアンダードースを挙げています。たしかにダビガトランでさえ36%,他に至っては59%もの症例で添付文書からはずれた低用量使用だったのにはやや驚きました。通常腎機能や年齢がギリギリのひとでは低用量にシフトするのもやむを得ませんが,6割近くが低用量というのはギリギリでないひともかなり含まれるのではないでしょうか。ただそれだと出血は少ないように思いますが,出血も同じだったとのことです。

筆者が述べているようにDOACのアドヒアランスの問題,nが少ないことなども関係しているかもしれません。

それにしても,試験の限界も多々あるにしても,日本の実臨床での実態をかなり反映した集団のアウトカムと思いますので,日本の臨床家の今の薬の出し方と,患者さんの飲み方では,DOACはワルファリンに勝てていないということです。あれだけ宣伝攻勢,あれだけの薬価でこうなんですね〜〜。やっぱり抗凝固薬を「誰に」「どう」使うかは,「何を」使うかより100倍重要。「何を」を考えるならコストとアドヒアランスがアウトカムより大事。なんとこんなところに落ち着くのでしょうか。NOAC礼賛の立場を取ってこなくてよかった(?)。


by dobashinaika | 2017-04-19 22:34 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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治療 2015年 04 月号 [雑誌]

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