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患者さんと医師は抗凝固薬を選ぶとき何を好み何に価値を置くのか:CJC誌

Values and preferences of physicians and patients with non-valvular atrial fibrillation receiving oral anticoagulation therapy for stroke prevention
Jason G. Andrade et al
Canadian J cardiol Published Online: October 13, 2015


背景:患者と医師における抗凝固薬に対する価値観に関するデータは不足している。

方法:
・ランダム選択の患者266人,医師178人へアンケート(2014年5〜9月,カナダ)
・薬剤特性と服薬回数について質問
・服薬アドヒアランスと処方状況も評価

結果:
1)患者と医師とで,抗凝固薬の好みは違っていたが,効果よりも安全性を重視する点は同じ

2)薬剤特性のみに重きをおいた場合,医師の選択はアピキサバンが多い(61%)が,患者においては,アピキサバン,リバーロキサバン,ワルファリン感で選択に差はない

3)にもかかわらず,医師の49%は好ましい薬剤としてリバーロキサバンに決めている(アピキサバンは25%)

4)1日1回の薬剤(リバーロキサバン,ワルファリン)のほうがより良い服薬コンプライアンスを示した

5)1日2回の薬剤の30%において1日1回しか飲んでいなかった

結論:リアルワールドの処方は報告されているような価値観を反映しおらず,医師ー患者における抗凝固薬の意思決定には別の要素が影響していた。服薬アドヒアランスとのデータと処方用量とは違う用量の服薬については今後の検討課題。

### 1日2回の薬剤を処方された患者さん全部のうち30%が,毎日1日1回にしているという意味なのか,1日1回にしてしまったことが1回でもある患者さんが30%7日,この記載からは判断しかねますが,前者のようにも取れます。

当院でも以前ご紹介したように抗凝固薬アドヒアランスを調査し,3ヶ月間で1回でも飲み忘れた人(自己中止)の割合をみておりますが,ダビガトラン24%,リバーロキサバン13%,アピキサバン21%,ワルファリン13%で,やはり1日1回の薬剤のほうが比較的良いけこうでした。しかしこれは「1回でも飲み忘れたひと」の割合です。

当院では服薬開始時に時間をかけ,特製のパンフを使って重点的に服薬説明を行いますので,よもや1日1回にしてしまうひとが3割もいることはないようです。

薬剤の特性やエビデンスをとるか,服薬回数を取るか,難しい問題ですが,
私の現時点でのValues and preferences?は以下です。
1)従来ワルファリンを飲んでいるひとで,過去10回の処方中ワルファリン用量の変更が3回以下の場合はそのまま

2)上記が4回以上のひと,あるいは新規処方の方で腎機能良好(CCr30以上),コストが大丈夫ならDOAC。それがダメならワルファリン

3)DOACは1日2回の薬剤のほうが有効性,安全性においてやや優れている可能性があることを患者さんにお話

4)それでもどうしても1日1回がいいという方にはリバーロキサバンかエドキサバン

5)1日2回を選択される方は腎機能,消化管出血の既往などに応じてダビガトランかあぴきさばん

6)何を処方するにしても高リスク例(CHADS2スコア4点以上)ではとにかく出血に対し超慎重に


$$$ 地元特産のしいたけ。大きい。。
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by dobashinaika | 2015-10-16 19:20 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

安定狭心症では患者との情報共有が進むほどカテーテル検査を受けない人が増える:JAMAIM誌

Informed Decision Making for Percutaneous Coronary Intervention for Stable Coronary DiseaseMichael B. Rothberg et al
JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2015.1657
Published onlineMay 18, 2015


休みの日なので、心房細動以外で最近目についた論文について。

目的:安定狭心症の冠動脈形成術をするかどうかの意思決定の際、どの程度情報共通下での意思決定が行われているかを検討

方法:
・the Verilogue Point-of-Practice Databaseという米国のデータベースに登録している600人の医師のうち、研究に協力してくれる循環器科医の外来対象
・安定狭心症患者のPCI(経皮的冠動脈形成術)の意思決定の際の患者との会話を記録
・以下の7項目が会話に含まれているかを研究委員会内の2つのチームが評価
1)患者の役割の検討 2)臨床的な問題や(疾患の)自然経過を提示 3)代替案を検討 4)代替案の長所欠点を検討 5)意思決定の不確かさを検討 6)患者の理解度の検討 7)患者の好みの検討

結果:
1)23の医師、59の会話

2)全7項目を満たすケース:2例3%。

4)冠動脈造影及びPCIを施行しない方向に働く項目
・不確かさ:オッズ比20.5
・患者の役割:5.3
・代替案:9.5
・患者の好みの評価:4.8

5)胸痛の存在や重症度は検査およびPCIの施行には無関係

6)項目が多くなるほど冠動脈造影やOCIを施行しない方向に傾く:1つの項目増加ごとにオッズ比3.2増加

結論:安定狭心症における医師と患者の会話において、情報共通下での意思決定はしばしば不十分。より詳しい意思決定を行うほど、血管造影やPCIはしない方向に傾く。

### 各項目の会話例が示されており、例えば「不確かさ」を伝えるというのは、穿刺や造影剤によるリスクを確率で示すような会話です。「役割」では、「まず薬を飲んで症状が落ち着けばそのままだし、落ち着かなければその症状を言っていただいた上でカテーテルになります」といった具合です。

こういうことを言われればまず患者さんは、カテーテルより薬剤でということになるのは、当然かもしれません。上記7項目のうち「(カテーテルをしなかった場合の)自然経過」だけがカテーテルをすることのオッズ比が大きかったとのことです。

ちょっと不思議に思ったのは、「カテーテルをしないリスクとした場合のリスクの比較」という項目がないことですね。これが一番大切なように思われますが。例えば心房細動の抗凝固薬では、この情報が意思決定に最も大きい項目と思われます。安定狭心症患者ではPCIの薬物療法に対するベネフィットは確立されていませんので、このような結果は納得ですが、抗凝固療法ではどうなのかが知りたいところです。

$$$ 久々に休みの朝はゆっくり広瀬川まで散歩しました。街なかからすぐのところにこういう自然があるのは、考えてみれば幸せかもしれないなあと思います。
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by dobashinaika | 2015-05-31 22:48 | 虚血性心疾患 | Comments(0)

英国NICEの抗凝固薬意思決定ツールには考えさせられる

以前紹介した英国NICE(英国王立臨床評価研究所)の心房細動ガイドラインの付帯資料として患者さん向けの「意思決定支援ツール」が公表されていますが、これが、私などには感動モノの出来栄えなので、その一端をチャプターごとに紹介します
http://guidance.nice.org.uk/CG180/PatientDecisionAid/pdf/English

「心房細動とはなにか」
大まかな心房細動の症状などの記載があり。

「あなたの脳卒中リスクを減らす治療オプション」
”あなたは抗凝固薬を飲むか飲まないかを選ぶことができます。もし飲むと決めた場合はどの抗凝固薬を飲むかを決める必要があります。このツールはどの選択肢に重きをおくかについて助言し、あなたを正しい決定に導くためのものです”
と宣言されています。

「あなたの選択を助ける意思決定ツールの使用」
”もしあなたが、心房細動と診断されたら、直ぐに意思決定をする必要があります(数日以内に)。でも大抵の人はすぐに決めなければならないわけではありません”との記載があります。

「NICEは何を勧めるのか」
・CHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDスコアに基づいて決める
・しかし以下のことを心に留めておくことが大切
1)だれもその一人の人に将来何が起こるかはわからない
2)たとえあなたがどちらかのスコアが低いかゼロであっても、あなたは脳梗塞や大出血をきたすかもしれない
3)もしあなたのスコアが高くても、それはあなたが必ず脳梗塞や大出血を起こすことを意味しません
4)抗凝固薬をのむことはある人々を脳梗塞になることから救いますが、幾人かの人は例え抗凝固薬を飲んでも、脳卒中を発症します。
5)抗凝固薬を飲むことは大出血リスクを増やしますが、この薬を飲む多数の人に大出血が起こるわけではありません。何人かのひとは薬を飲まなくても、大出血をきたします。


「あなたの脳梗塞リスクを減らすための治療方法についての詳細」
「何も飲まない」「ワルファリンを飲む」「NOACを飲む」の3つの選択肢ごとに以下の問に対する答えを図入りで説明
1.その選択はどういうものですか?:薬の飲み方など
2.私の脳卒中リスクは減りますか?
3.私の大出血リスクは減りますか?
4.他の主な副作用はなんですか?
5.定期的な採血が必要ですか?
6.薬を飲み忘れたらどうなりますか?
7.食べ物、飲み物に気をつけるべきですか?
8.他の薬との飲み合わせはどうですか?
9.緊急でない手術(抜歯含む)の時はどうなりますか?
10.緊急時(けがや緊急手術)に中和薬が必要なときはどうなりますか?

「その選択をどう思いますか?」
以下の質問につき「大変重要」「重要」「重要でない」「全く重要でない」のどれかに○をつける
・薬は何を飲むか、そしてその回数
・脳梗塞リスクへの効果
・他の主要な副作用
・定期的な採血の必要性
・飲み忘れた時に何が起こるか
・食時や飲み物への影響
・他に飲んでいる薬の影響
・緊急でない手術の時どうなるか?
・中和薬が必要な場合どうなるか?

「その他ヘルスケアプロフェッショナルに話したいことを書いてください」

### 考えさせられるツールです。
「NICEは何を勧めるのか」の5つの説明文は、英国のヘルスケアプロがあくまで患者さんを一人の人として、自律した一個人として扱うという精神に貫かれているように思います。ここに書かれていることは、全く真実であり、リスクを客観的に捉える視点が徹底化されていると思います。

ただし、日本でこのような文言を文章化して、患者さんにお見せした場合どうなるか。懸念はあります。
「たとえあなたがどちらかのスコアが低いかゼロであっても、あなたは脳梗塞や大出血をきたすかもしれない」
こう言われたら、患者さんは相当戸惑うのではないでしょうか?

それを補うツールとして、ニコニコマークのシェーマが出てきます。
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たとえば、これはCHA2DS2-VAScスコア2点の時、1,000人の心房細動のひとが抗凝固薬を飲まなければ赤の25人が脳卒中になり、残り975人はならない。これに抗凝固薬を飲んだ場合を想定すると下図のように、17人の人が脳卒中にならなくて済むが、8人は相変わらず脳卒中になる。残り975人は飲んでも飲まなくてもそのまま。

というふうに説明するわけです。

当院でもこれに類似の図を実際に使ったことがありますが、患者さんの反応は様々です。飲んで17人が助かるということを重視して飲むというひと、飲んでも飲まなくても975人はそのままで脳卒中にならないことで、そんなに薬とは聞かないものかとびっくりしするひと、飲んでも8人は脳卒中になることを重視して、飲みたくないというひと。

これに出血リスクが加わると、ますます飲みたくないという人が増えるかもしれません。

この図の提示は、絶対リスク表示ですが、患者さんが薬を飲まない傾向に傾くことが知られていますね。
http://dobashin.exblog.jp/12331254/

医師の説明の仕方にもかなり左右されるように思います。

それでも、こうしたある意味フェアな説明法国のガイドラインの付帯資料にしっかりと明記するところに、英国の偉いところを感じます。

日本版ツールを作りたいと強く思わされました。
by dobashinaika | 2014-07-10 00:23 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動におけるShared Decision Making(3):Circulation誌

たくさん読みたい論文はあるのですが(特に、EHJの先月号のLeft atrial structure and function in atrial fibrillation: ENGAGE AF-TIMI 48は、心房細動の本質を考えさせられる良い論文ですね)ちょっと原稿が重なっていて、ゆっくり読めませんので、以前から途中で終わっていたShared Decision Making (SDM)論文の続きを大雑把にまとめます。

【症状管理のSDM】
・第1にレートを落とす、第2に洞調律を維持する、を目標とする
・抗不整脈薬はレートコントロールよりもベネフィットに欠けるとのいくつかの大きな試験あり
・アブレーションはQOL改善には良いが予後改善は不明
・であるので、これこそSDMが理想のアプローチの分野
・しかるに、良いエビデンスがない

【血栓塞栓予防のSDM】
・ガイドライン通りに抗凝固療法が施行されている患者は全体の51%
・その理由は様々
・ワルファリンは単独で出血リスクを年間4%増やす
・抗血小板薬を併用していればリスクはその3倍

・SPAF試験のアスピリン群287例対象の研究では、意思決定支援ツールを使った患者は、従来のカウンセリンクのみに比べて心房細動への理解が改善した
・ただし、意思決定後の後悔や自責の念は同じ
・アスピリンからワーファリンへの切り替え症例率も同じ
・ただし、対象は低リスクで、支援ツールは個別ではないオーディオブックレットと受診前に書き終えるワークシートのみ

・もう一つの最近の研究ではSDMの方法は、意思決定時の迷いを減らし、満足感と知識を高めた。
・NOACの登場で選択肢が増え、より意思決定が複雑になった

【未来のスタディ】
・これまで小規模スタディのみ
・これからは、意思決定時の会話などに絞っての大規模試験が必要
・3分以上の面接が有効である
・心房細動におけるケアの質が進歩し正当化される必要あり

・重要なアウトカムとしては患者の選択肢に関する知識、患者の議論への参加、意思決定の質
(選択と患者の価値観との一致)、患者満足度、通院期間がある・それに加えて治療へのアドヒアランスは大変重要

【結論】
・臨床上の意思決定における患者参加によるSDMは、心房細動管理の患者中心的本質をより高める可能性を秘めたパワフルツールである
・心房細動のSDMの構成員は患者及び、各選択肢のリスク、ベネフィット、患者の環境や目標、好みにあっているかの評価を行う医師である。
・心房細動患者はSDMの利益を被る

意味ある選択肢を教えられること、リスク計算機やツールを与えられること、治療のゴールや価値、患者の好みその選択肢を決める文脈、そして患者自身は決定権を握ることの重要性(患者の行動を要する決定の場合:例)ワーファリンのモニタリングを食事規制)などの面から
・さらなる検討を

###キモは意思決定ツールやコミュニケーションの仕方ですが、これについてはもう少し詳しい説明がほしいところです、個々の論文に当たれということかと思います。これ読んでいると、当院で行っている看護師とのコラボによる解釈モデルの共有に加えて、ゴール、リスクベネフィット、リスクヘッジ方の共有という「4つの共有」がかなりいい線いくんじゃないかと思えてきました。なんとか論文化したい気がします。
by dobashinaika | 2014-06-20 00:34 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動におけるShared Decision Making(2):Circulation誌

昨日からの続き。心房細動におけるSDMその2です。

Shared Decision Making in Atrial Fibrillation
Where We Are and Where We Should Be Going
Luke Seaburg et al
Circulation. 129: 704-710


【SDM: 何がSDMで何がSDMでないか】
・SDMのゴールは患者が利用できるベストなエビデンスと価値、選好にマッチしたケアを受けたいという欲求が増加すること
・患者がSDMに参加する際、そのプロセスと決定事項の質を評価することで、医師ー患者の出会いの質を評価することができる
・プロセスの評価ではその決定がなされる必要性を(選択肢を提示された)患者が理解できるかどうかが問われる
・決定事項の評価は患者の述べたゴールと最終決定における価値がいかに整理されたかによる

・意思決定は多くは患者の生活においてくだされ、意志決定のプロセスは多数存在する(表2)
・医師は実行に値するような合理的なエビデンスベーストの選択肢を、賛否両論あるエビデンス、彼らの好みや患者との協議したこととともにを提示しなければならない
・患者は希望する範囲で、彼らの価値観や好みをはっきりさせ、医師との合意に到達するというそのプロセスに関わる
・SDMはインフォームドコンセント(IC)と同様、プロセスなのであるが、ICがいくつかの可能な行為のうちからの決定言うよりも与えられた行為ヘの許可といった意味合いを含む点で異なっている
・ICでの意思決定とは、患者が技術的な情報を得、医師の追加の情報なしに最終決定がなされる
・SDMは多数の合理的な選択肢があり、患者が各選択肢のベネフィトやリスク、負担、コストに対して抱く相対的な価値観によって選択がなされるという点で、最適な意思決定である。
・このことは、上質なエビデンスがあるときも、エビデンスに乏しい場合でも成り立つ

・SDMはその強度の点で限界あり
・SDMは唯一の正しい答えがあるときやある選択肢型に比べて明らかに有意であるときは有効でない
・このようなときはICまたは動機付けのためのインタービューという形式を使う
・エビデンスや技術や薬が進化するように、より上質な技術や治療が医師ー患者間の会話の性質を進化させ変化させることが可能
・今のところ、心房細動治療ではどれがより有意か、患者にとって好ましいかは不明
・これはSDMに理想的に適した状況である

・たとえSDMが理想であっても、実行のためのいくつかの実践的取り組みはある
・医師はSDMをサポートする性向やスキル、時間、ツールを持っていない
・心房細動は選択肢が複雑でありいくつかのアウトカム(好ましい、好ましくない両方の)をとりうる
・心房細動では、レートコントロール(アブレーション&ペースを含む)やリズムコントロール(アブレーションを含む)のための選択肢がある
・理想的には、医師が患者と、彼らの個別化されたリスクとベネフィットを共有できれば良い
・ヘルスリテラシーの各患者間の幅が広いので、こうした情報を示すことは簡単ではない
・こうした複雑な状況では意思決定支援は、大変重要なツールとなる
・また他の疾患の経験が、心房細動の意思決定支援をどうデザインしテストするかのヒントとなる

【意思決定支援】
・意思決定支援のツールはリスクベネフィット理解の手助けとなる
・それらはわかりやすい図表の形で、数ある情報のうち最近のエビデンスに基づく統計的な情報を提示してくれる
・支援ツールはQOL、生存率、脳卒中、致死的出血について、個々の患者ごとの個別的なリスクを評価してくれる
・これらのツールは、双方向性にデザインされているので、標準的な情報媒体とは区別されることに注目
・支援ツールは患者さんの受診の際に使われるようにデザインされている
・それら会話を促進させる点で効果的
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・支援ツールは、リスクベネフィットの個別化が重要なのでスコアリングの形をとる
・よく知られているのがCHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコア、HEMORR2HAGESスコア、HAS-BLEDスコア、ATRIAスコア

###またまた総論的な話の羅列で恐縮です。私にとっては大変興味深く、後で何回も読み返したいこともあり、いちいち言ってることを咀嚼しながら読んでいたら、ここで全部訳しておきたい気分にかられてしまいました。

ただし最後の支援ツールは、よく欧米の教科書に出てきますが、絶対リスクを示すことで、事の重要性が過小評価されるリスクが有ると思われます。

この辺、抗凝固療法の意思決定時具体的にどうするのか。次回各論で出てくるかもれません。

ちなみに拙著では、その辺の説明の仕方について言及していますので興味ある方は参照ください。
by dobashinaika | 2014-05-07 00:12 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動におけるShared Decision Making(1):Circulation誌

2月のCirculation, Contemporary Reviews in Cardiovascular Medicineより

Shared Decision Making in Atrial Fibrillation
Where We Are and Where We Should Be Going
*Luke Seaburg et al
Circulation. 129: 704-710


ずっと紹介したいと思っておりました2月のCircukationの「心房細動におけるshared decision making (SMD)」を要約します。GWでもないと読めませんので。

【症例】69歳男性。元社長職。息切れ、動機を主訴に夜間救急外来受診。心電図は140/分の心房細動。実ティアゼム静注ですみやかに洞調律に回復。救急外来を退院し循環器外来を予約。高血圧のみ。サイアザイド系利尿薬内服。2、3年前から動悸を自覚。短時間であり自制可能。心エコー、甲状腺機能、電解質に異常なし。心電図;洞調律時異常なし。CHADS2スコア1点、CHA2DS2-VAScスコア2点。消化管出血関連死の家族歴あり。抗凝固療法はあまり好まない。降圧薬に内服薬追加は好まず。彼のゴール、価値観、選好に見合う治療戦略を保証するベストプラクティスをどう提示しますか

【序論】
・心房細動患者の自身の状態や、治療のリスクベネフィットに関する知識には、明らかなギャップが有るとの報告あり
・2007年のランドマーク研究では、医師、患者双方から多角的検討がなされ、各グループとも患者管理の困難さを認識したものの、他グループのケアが最適とは考えなかった。
Med J Aust. 2007;186:175–180
・2012からのメタ解析では、患者はパターナリスティックな意思決定を経験するのに対し、医師はSDMを使っているとかんじている
Patient Educ Couns. 2012;88:330–337
・他の研究では、患者はもっと治療オプションについて知りたがっており、医師のバイアスや診療スタイル(患者の好みでなく)が、抗凝固療法の開始に影響すると報告している
・こうした研究は、心房細動管理の個別化と患者中心の意思決定におけるギャッップを示している。
・米国医学研究所は患者中心のケア(PCC)を6つの基本的領域のうちのひとつと位置づけている

・患者中心のケアの最も重要な側面のひとつは意思決定過程における患者の積極的関与である
・SDMは患者中心のケアの頂点として以下の観点から記述される:患者ー医師間のパートナーシップ、医師のリサーチエビデンスの交換、臨床的専門性、選択に関する患者の知識と経験とそれらにおける賛否両論(各選択の賛否について思慮を共にする)、そして施行する治療への同意

・初期のSDM研究は、「専門性の出会い」モデルを説いた:医師は病態、リサーチにおいて専門性を持ち、患者は自分自身への専門性を持ち疾患と治療を彼らの人生として付き合うという役割への専門性を持つ
・こうしたミーティングは、医師にとっては患者に医学的問題を伝える機会であり、患者にとっては医師に、彼らの信念や価値、選好を伝える機会である
・話し合いの間、お互いに彼らの好みを考え、表現し、合意への道筋を確認することができる
・多くの医師の共通の見解は、患者は意思決定に関与したいのではなく、意志に従いたいと考えているということである
・意思決定支援についてのエビデンスは、一旦患者がSDMに参画すると、彼らは意思決定のやり方を変えたがるようになり(年齢、性別に関係なく)、将来的にSDMについて関心をもつようになる、ことを示している

・SDMは特殊なスキル、工程、ツールが必要:臨床的な出会いを根本的に変化させ、PCCを促進させ、この質を改善させる可能性を持つ
・2011年のシステマティックレビューでは、SDMは患者の治療選択の知識や患者満足度のマーカーを改善させることが示されている
health treatment or screening decisions. Cochrane
・今のところ、治療アドヒアランス、ヘルスケア、コストなどとの相関についてのエビデンスは、上記結果とは合致していない

【心房細動治療概観】
・第1ステップ;二次性心房細動かどうか
・第2ステップ:AFが患者のQOLにどう影響し、緩和するにはどうすればよいか
・第3ステップ:抗凝固療法

・第2,3ステップはSDMの良い適応
・抗凝固療法のSDM研究は多いが、QOL研究は未開
・こうした意思決定は反復され進行していくが、心房細動の症状や性質に影響され、合併症や患者の生活環境とも関係する

・循環器病学はしばしば、大規模臨床試験やガイドラインとともに進化する。アウトカムは何千もの患者から導かれる
・SDMはそれらエビデンスを患者中心のやり方に変換するツールであり、「ひとつのサイズを全てに当てはめる」ことを拒否する。これはEBMの今日的コンセプトとは異なり、患者の文脈や価値、PCCの質を統合する


【表1】SDM会話の主要コンポーネント
・医師患者両者の関与(好みの範囲で)
→医師”脳卒中リスクを減らすいくつかの治療法があります。これらの治療法についてお話し合いをし、あなたにとってどれが一番よい選択かを一緒に見て行きたいです”

・情報は双方向性に共有される
→医師”施行できる治療法とその副作用、それぞれ利点とリスクについて話をさせてください。これらの治療から、あなたが一番気になることをお話ください”

・両者がそれぞれの好みを表明し、その選択について熟慮する
→医師”まずβ遮断薬を選びます。比較的安全でしばしば効果的です”
患者”でも、疲れやすくなるとか、性的な副作用があるとおっしゃいましたね。考えてしまいます。カルシウム拮抗薬のほうが試したいかもしれません。安全で価格も手頃だから、”
医師”それも心拍数を遅くするように働き、安全ですね。ただコレステロールの薬に影響するかもしれませんので脂質の薬を変える必要があるかもしれません。それでもいいですか?”
患者”構いません。私の医療保険は良いプランですので、大抵のコレステロールの薬はカバーしています”

・計画的な意思決定(治療しないという可能性も含む)
→医師”カルシウム拮抗薬をはじめに服用するということに同意します。もしこの薬でうまく行かなければ、もう一度意見を再検討して別な心拍数調節薬や抗不整脈薬、アブレーションを考えましょう。”
患者”わかりました”

### 結局全訳になりました。メイヨクリニックからのレビューです。

心房細動の、特に抗凝固療法はSDMが最も求められる領域と思われます。
4月に発刊されました拙著では、このことを第一コンセプトとして書かせていただきました。

SDMで一番難しいのは、表の3番目の「お互いの選好を考える」ということです。医師の選好は病態生理とエビデンスで固まりやすいですが(これが間違っていることも多々ある)、患者の選好を捉えることはこんなんです。

昨日、せんだいメディアテークで鷲田清一先生と野家啓一先生のコラボセッションがありましたが、自己とは物語であり、物語とは編集である。ということが繰り返し説かれていました。そうなんですよね。「自己が物語を語っているるのではなく、話が自己を作る」んですね。とこれまた昨日読了した戸田山和久先生の「哲学入門」でもデネットの言葉として述べられてました。

物語はまた他者によっても規定される(野家先生)ですので、それを引き出すのが医者の役割だと思います。

患者さんがなんで抗凝固療法を嫌がるのか。アブレーションを躊躇するのか。そこを紡ぎだす役目が医師にはあるというわけです。

この時、疑問として湧いてくるのは当然「言い方によってどうにでもなるんじゃないの?」ということです。その辺を本レビューではエビデンスやツールについての考察を交えながら論議を展開しています。

ということで続きはまた後日。。

拙著もこのへんに力を入れて書いておりますので、ご参照を
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by dobashinaika | 2014-05-05 00:01 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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