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心房細動におけるShared Decision Making(3):Circulation誌

たくさん読みたい論文はあるのですが(特に、EHJの先月号のLeft atrial structure and function in atrial fibrillation: ENGAGE AF-TIMI 48は、心房細動の本質を考えさせられる良い論文ですね)ちょっと原稿が重なっていて、ゆっくり読めませんので、以前から途中で終わっていたShared Decision Making (SDM)論文の続きを大雑把にまとめます。

【症状管理のSDM】
・第1にレートを落とす、第2に洞調律を維持する、を目標とする
・抗不整脈薬はレートコントロールよりもベネフィットに欠けるとのいくつかの大きな試験あり
・アブレーションはQOL改善には良いが予後改善は不明
・であるので、これこそSDMが理想のアプローチの分野
・しかるに、良いエビデンスがない

【血栓塞栓予防のSDM】
・ガイドライン通りに抗凝固療法が施行されている患者は全体の51%
・その理由は様々
・ワルファリンは単独で出血リスクを年間4%増やす
・抗血小板薬を併用していればリスクはその3倍

・SPAF試験のアスピリン群287例対象の研究では、意思決定支援ツールを使った患者は、従来のカウンセリンクのみに比べて心房細動への理解が改善した
・ただし、意思決定後の後悔や自責の念は同じ
・アスピリンからワーファリンへの切り替え症例率も同じ
・ただし、対象は低リスクで、支援ツールは個別ではないオーディオブックレットと受診前に書き終えるワークシートのみ

・もう一つの最近の研究ではSDMの方法は、意思決定時の迷いを減らし、満足感と知識を高めた。
・NOACの登場で選択肢が増え、より意思決定が複雑になった

【未来のスタディ】
・これまで小規模スタディのみ
・これからは、意思決定時の会話などに絞っての大規模試験が必要
・3分以上の面接が有効である
・心房細動におけるケアの質が進歩し正当化される必要あり

・重要なアウトカムとしては患者の選択肢に関する知識、患者の議論への参加、意思決定の質
(選択と患者の価値観との一致)、患者満足度、通院期間がある・それに加えて治療へのアドヒアランスは大変重要

【結論】
・臨床上の意思決定における患者参加によるSDMは、心房細動管理の患者中心的本質をより高める可能性を秘めたパワフルツールである
・心房細動のSDMの構成員は患者及び、各選択肢のリスク、ベネフィット、患者の環境や目標、好みにあっているかの評価を行う医師である。
・心房細動患者はSDMの利益を被る

意味ある選択肢を教えられること、リスク計算機やツールを与えられること、治療のゴールや価値、患者の好みその選択肢を決める文脈、そして患者自身は決定権を握ることの重要性(患者の行動を要する決定の場合:例)ワーファリンのモニタリングを食事規制)などの面から
・さらなる検討を

###キモは意思決定ツールやコミュニケーションの仕方ですが、これについてはもう少し詳しい説明がほしいところです、個々の論文に当たれということかと思います。これ読んでいると、当院で行っている看護師とのコラボによる解釈モデルの共有に加えて、ゴール、リスクベネフィット、リスクヘッジ方の共有という「4つの共有」がかなりいい線いくんじゃないかと思えてきました。なんとか論文化したい気がします。
by dobashinaika | 2014-06-20 00:34 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動におけるShared Decision Making(2):Circulation誌

昨日からの続き。心房細動におけるSDMその2です。

Shared Decision Making in Atrial Fibrillation
Where We Are and Where We Should Be Going
Luke Seaburg et al
Circulation. 129: 704-710


【SDM: 何がSDMで何がSDMでないか】
・SDMのゴールは患者が利用できるベストなエビデンスと価値、選好にマッチしたケアを受けたいという欲求が増加すること
・患者がSDMに参加する際、そのプロセスと決定事項の質を評価することで、医師ー患者の出会いの質を評価することができる
・プロセスの評価ではその決定がなされる必要性を(選択肢を提示された)患者が理解できるかどうかが問われる
・決定事項の評価は患者の述べたゴールと最終決定における価値がいかに整理されたかによる

・意思決定は多くは患者の生活においてくだされ、意志決定のプロセスは多数存在する(表2)
・医師は実行に値するような合理的なエビデンスベーストの選択肢を、賛否両論あるエビデンス、彼らの好みや患者との協議したこととともにを提示しなければならない
・患者は希望する範囲で、彼らの価値観や好みをはっきりさせ、医師との合意に到達するというそのプロセスに関わる
・SDMはインフォームドコンセント(IC)と同様、プロセスなのであるが、ICがいくつかの可能な行為のうちからの決定言うよりも与えられた行為ヘの許可といった意味合いを含む点で異なっている
・ICでの意思決定とは、患者が技術的な情報を得、医師の追加の情報なしに最終決定がなされる
・SDMは多数の合理的な選択肢があり、患者が各選択肢のベネフィトやリスク、負担、コストに対して抱く相対的な価値観によって選択がなされるという点で、最適な意思決定である。
・このことは、上質なエビデンスがあるときも、エビデンスに乏しい場合でも成り立つ

・SDMはその強度の点で限界あり
・SDMは唯一の正しい答えがあるときやある選択肢型に比べて明らかに有意であるときは有効でない
・このようなときはICまたは動機付けのためのインタービューという形式を使う
・エビデンスや技術や薬が進化するように、より上質な技術や治療が医師ー患者間の会話の性質を進化させ変化させることが可能
・今のところ、心房細動治療ではどれがより有意か、患者にとって好ましいかは不明
・これはSDMに理想的に適した状況である

・たとえSDMが理想であっても、実行のためのいくつかの実践的取り組みはある
・医師はSDMをサポートする性向やスキル、時間、ツールを持っていない
・心房細動は選択肢が複雑でありいくつかのアウトカム(好ましい、好ましくない両方の)をとりうる
・心房細動では、レートコントロール(アブレーション&ペースを含む)やリズムコントロール(アブレーションを含む)のための選択肢がある
・理想的には、医師が患者と、彼らの個別化されたリスクとベネフィットを共有できれば良い
・ヘルスリテラシーの各患者間の幅が広いので、こうした情報を示すことは簡単ではない
・こうした複雑な状況では意思決定支援は、大変重要なツールとなる
・また他の疾患の経験が、心房細動の意思決定支援をどうデザインしテストするかのヒントとなる

【意思決定支援】
・意思決定支援のツールはリスクベネフィット理解の手助けとなる
・それらはわかりやすい図表の形で、数ある情報のうち最近のエビデンスに基づく統計的な情報を提示してくれる
・支援ツールはQOL、生存率、脳卒中、致死的出血について、個々の患者ごとの個別的なリスクを評価してくれる
・これらのツールは、双方向性にデザインされているので、標準的な情報媒体とは区別されることに注目
・支援ツールは患者さんの受診の際に使われるようにデザインされている
・それら会話を促進させる点で効果的
a0119856_0102919.png

・支援ツールは、リスクベネフィットの個別化が重要なのでスコアリングの形をとる
・よく知られているのがCHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコア、HEMORR2HAGESスコア、HAS-BLEDスコア、ATRIAスコア

###またまた総論的な話の羅列で恐縮です。私にとっては大変興味深く、後で何回も読み返したいこともあり、いちいち言ってることを咀嚼しながら読んでいたら、ここで全部訳しておきたい気分にかられてしまいました。

ただし最後の支援ツールは、よく欧米の教科書に出てきますが、絶対リスクを示すことで、事の重要性が過小評価されるリスクが有ると思われます。

この辺、抗凝固療法の意思決定時具体的にどうするのか。次回各論で出てくるかもれません。

ちなみに拙著では、その辺の説明の仕方について言及していますので興味ある方は参照ください。
by dobashinaika | 2014-05-07 00:12 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動におけるShared Decision Making(1):Circulation誌

2月のCirculation, Contemporary Reviews in Cardiovascular Medicineより

Shared Decision Making in Atrial Fibrillation
Where We Are and Where We Should Be Going
*Luke Seaburg et al
Circulation. 129: 704-710


ずっと紹介したいと思っておりました2月のCircukationの「心房細動におけるshared decision making (SMD)」を要約します。GWでもないと読めませんので。

【症例】69歳男性。元社長職。息切れ、動機を主訴に夜間救急外来受診。心電図は140/分の心房細動。実ティアゼム静注ですみやかに洞調律に回復。救急外来を退院し循環器外来を予約。高血圧のみ。サイアザイド系利尿薬内服。2、3年前から動悸を自覚。短時間であり自制可能。心エコー、甲状腺機能、電解質に異常なし。心電図;洞調律時異常なし。CHADS2スコア1点、CHA2DS2-VAScスコア2点。消化管出血関連死の家族歴あり。抗凝固療法はあまり好まない。降圧薬に内服薬追加は好まず。彼のゴール、価値観、選好に見合う治療戦略を保証するベストプラクティスをどう提示しますか

【序論】
・心房細動患者の自身の状態や、治療のリスクベネフィットに関する知識には、明らかなギャップが有るとの報告あり
・2007年のランドマーク研究では、医師、患者双方から多角的検討がなされ、各グループとも患者管理の困難さを認識したものの、他グループのケアが最適とは考えなかった。
Med J Aust. 2007;186:175–180
・2012からのメタ解析では、患者はパターナリスティックな意思決定を経験するのに対し、医師はSDMを使っているとかんじている
Patient Educ Couns. 2012;88:330–337
・他の研究では、患者はもっと治療オプションについて知りたがっており、医師のバイアスや診療スタイル(患者の好みでなく)が、抗凝固療法の開始に影響すると報告している
・こうした研究は、心房細動管理の個別化と患者中心の意思決定におけるギャッップを示している。
・米国医学研究所は患者中心のケア(PCC)を6つの基本的領域のうちのひとつと位置づけている

・患者中心のケアの最も重要な側面のひとつは意思決定過程における患者の積極的関与である
・SDMは患者中心のケアの頂点として以下の観点から記述される:患者ー医師間のパートナーシップ、医師のリサーチエビデンスの交換、臨床的専門性、選択に関する患者の知識と経験とそれらにおける賛否両論(各選択の賛否について思慮を共にする)、そして施行する治療への同意

・初期のSDM研究は、「専門性の出会い」モデルを説いた:医師は病態、リサーチにおいて専門性を持ち、患者は自分自身への専門性を持ち疾患と治療を彼らの人生として付き合うという役割への専門性を持つ
・こうしたミーティングは、医師にとっては患者に医学的問題を伝える機会であり、患者にとっては医師に、彼らの信念や価値、選好を伝える機会である
・話し合いの間、お互いに彼らの好みを考え、表現し、合意への道筋を確認することができる
・多くの医師の共通の見解は、患者は意思決定に関与したいのではなく、意志に従いたいと考えているということである
・意思決定支援についてのエビデンスは、一旦患者がSDMに参画すると、彼らは意思決定のやり方を変えたがるようになり(年齢、性別に関係なく)、将来的にSDMについて関心をもつようになる、ことを示している

・SDMは特殊なスキル、工程、ツールが必要:臨床的な出会いを根本的に変化させ、PCCを促進させ、この質を改善させる可能性を持つ
・2011年のシステマティックレビューでは、SDMは患者の治療選択の知識や患者満足度のマーカーを改善させることが示されている
health treatment or screening decisions. Cochrane
・今のところ、治療アドヒアランス、ヘルスケア、コストなどとの相関についてのエビデンスは、上記結果とは合致していない

【心房細動治療概観】
・第1ステップ;二次性心房細動かどうか
・第2ステップ:AFが患者のQOLにどう影響し、緩和するにはどうすればよいか
・第3ステップ:抗凝固療法

・第2,3ステップはSDMの良い適応
・抗凝固療法のSDM研究は多いが、QOL研究は未開
・こうした意思決定は反復され進行していくが、心房細動の症状や性質に影響され、合併症や患者の生活環境とも関係する

・循環器病学はしばしば、大規模臨床試験やガイドラインとともに進化する。アウトカムは何千もの患者から導かれる
・SDMはそれらエビデンスを患者中心のやり方に変換するツールであり、「ひとつのサイズを全てに当てはめる」ことを拒否する。これはEBMの今日的コンセプトとは異なり、患者の文脈や価値、PCCの質を統合する


【表1】SDM会話の主要コンポーネント
・医師患者両者の関与(好みの範囲で)
→医師”脳卒中リスクを減らすいくつかの治療法があります。これらの治療法についてお話し合いをし、あなたにとってどれが一番よい選択かを一緒に見て行きたいです”

・情報は双方向性に共有される
→医師”施行できる治療法とその副作用、それぞれ利点とリスクについて話をさせてください。これらの治療から、あなたが一番気になることをお話ください”

・両者がそれぞれの好みを表明し、その選択について熟慮する
→医師”まずβ遮断薬を選びます。比較的安全でしばしば効果的です”
患者”でも、疲れやすくなるとか、性的な副作用があるとおっしゃいましたね。考えてしまいます。カルシウム拮抗薬のほうが試したいかもしれません。安全で価格も手頃だから、”
医師”それも心拍数を遅くするように働き、安全ですね。ただコレステロールの薬に影響するかもしれませんので脂質の薬を変える必要があるかもしれません。それでもいいですか?”
患者”構いません。私の医療保険は良いプランですので、大抵のコレステロールの薬はカバーしています”

・計画的な意思決定(治療しないという可能性も含む)
→医師”カルシウム拮抗薬をはじめに服用するということに同意します。もしこの薬でうまく行かなければ、もう一度意見を再検討して別な心拍数調節薬や抗不整脈薬、アブレーションを考えましょう。”
患者”わかりました”

### 結局全訳になりました。メイヨクリニックからのレビューです。

心房細動の、特に抗凝固療法はSDMが最も求められる領域と思われます。
4月に発刊されました拙著では、このことを第一コンセプトとして書かせていただきました。

SDMで一番難しいのは、表の3番目の「お互いの選好を考える」ということです。医師の選好は病態生理とエビデンスで固まりやすいですが(これが間違っていることも多々ある)、患者の選好を捉えることはこんなんです。

昨日、せんだいメディアテークで鷲田清一先生と野家啓一先生のコラボセッションがありましたが、自己とは物語であり、物語とは編集である。ということが繰り返し説かれていました。そうなんですよね。「自己が物語を語っているるのではなく、話が自己を作る」んですね。とこれまた昨日読了した戸田山和久先生の「哲学入門」でもデネットの言葉として述べられてました。

物語はまた他者によっても規定される(野家先生)ですので、それを引き出すのが医者の役割だと思います。

患者さんがなんで抗凝固療法を嫌がるのか。アブレーションを躊躇するのか。そこを紡ぎだす役目が医師にはあるというわけです。

この時、疑問として湧いてくるのは当然「言い方によってどうにでもなるんじゃないの?」ということです。その辺を本レビューではエビデンスやツールについての考察を交えながら論議を展開しています。

ということで続きはまた後日。。

拙著もこのへんに力を入れて書いておりますので、ご参照を
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by dobashinaika | 2014-05-05 00:01 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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