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心房細動,もしくは「疾患」の多様性をどう記述したらよいか,あるいは心房細動を記述することの今日的意味

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。

昨年はこれまでに比べて,ブログの更新回数が減少しました。論文読みをサボっていたわけではなくて,プライマリー・ケア関係の実践や学習へのタイムシェアが思いのほか多くて,ブログ発信まであまり手が回らなかったというのが実情です。

しかし,たまに講演会などや年賀状その他でいろいろな方から激励されるにつけ,当ブログへの期待は自分が思っていた以上に大きいというのが,更新回数が少なくなってから改めて気づいたことでもあります。今年はこれまでより厳選した形で重要論文はくまなく紹介するようにしていきたいと思います。

さて,最近改めて思うことのひとつに,「疾患は多様性を重視して捉えたい」ということです。疾患というのはひつとのカテゴリー,概念であり,何らかの共通項でくくられた集合体ですので,当然のことながらそこには様々なケースが含まれています。たとえば心房細動なら,「若年者で飲酒後翌朝に起きた人生初の心房細動」もあれば,「30年来続く90歳の永続性心房細動」もあります。これらを十把一絡げにして「抗凝固薬はCHADS2スコア何点以上で必須」と断言することはできないわけです。

ただ,疾患は多様ですが,それを重視しすぎると今度はなんの意思決定も出きないというジレンマに陥ります。特に「高齢者,超高齢者の心房細動」はそういう「」でくくっては本当はいけない程の多様性を有していると言ってよいかと思います。

多様性に気圧されることなく,「そのひとの」疾患をわしづかみにするにはどうすればよいか。一つの便法は疾患を時間軸と空間軸の2方向からつかまえるやり方です。

時間軸というのは,その疾患を持った人がその疾患のタイムコースのどの位置にあるのか,具体的には原因・背景はなにか(過去),病期・病型はなにか(現在),予後はどうなるのか(未来)を大まかに把握することです。

空間軸というのは,その人がその疾患意外に持っている属性です。年齢性別は言うに及ばずですが,特に大事なのは「併存疾患」「社会心理的因子」の確認です。

心房細動も,この2軸把握法を個々の患者さんごとに適応することをおすすめします。
やってみましょう。

時間軸として,まず心房細動の原因は様々ですが,ESCガイドライン,吹田スコアなどから,年齢,血圧,肥満,アルコール,冠動脈疾患,喫煙をベースに,弁膜症,心不全,甲状腺機能亢進症,COPD,SAS,CKD,過度の運動などがあります。

病型は,ESCガイドラインから「初発」「発作性」「持続性」「長期持続性」「永続性」に分けられます。病期進行は,年間5〜8%程度の速度で発作性から持続性に移行します。また最近はAF burdenという,それまでどのくらい心房細動が負担になってきたかを累積時間や発作回数から評価する概念も重要視されています。

予後は,心房細動の人の死亡の主要因は,心不全,悪性腫瘍,脳卒中などですが,決して脳塞栓症が上位ではなくむしろ抗凝固療法下では低率で,非心臓死が多いこと。心臓死では心不全が要注意で特に心房細動がもとからあって後で心不全を合併するとより予後が悪いことが押さえます。また最近では認知症の発症・進行を促進することが知られてきています。

空間軸としての併存疾患は,上記の原因(背景因子)と重複しますが,やはり心不全合併の早期診断と,高血圧管理がとりわけ重要です。

さらに大事な点は「社会心理的因子」です。もはやあらゆる疾患を理解する上で,医学的な「背景因子」や「併存症」と同等あるいはそれ以上に重要なのは,その人の経済状況,家族や地域内でのつながりの程度,そして疾患や治療および医療者に対する心理です。これらは治療特に服薬の遵守度(アドヒアランス)や病状の進行度を大きく左右します。この点は医学的という範疇からは外れやすくつい軽視しがちですが,もはや超ド級にしっかり押さえなければなりません。

心房細動の人を見たら,こうした2軸法を駆使すれば,たとえば「80歳男性。背景に高血圧とアルコールがあり,発症3年で月1回程度の発作性心房細動があるが,心機能,認知機能低下はなく,家族のサポートがしっかりしていて服薬アドヒアランスは良好」といったように,時間と空間を意識してその人を記述をすることで,そのひとがそどんな立ち位置なのかのおおよその認識と,どんなアプローチで対峙するかといった医師側の態度が一文で簡略的にイメージしやすくなります。

この把握法は疾患概念だけでなく,治療や患者の全般的状態にも適応できます。SNSでよく「胃ろうはよくない」「終末期医療をどうする」といったテーマで炎上していますが,一口に胃ろうと言っても様々な諸事情,背景を持ち,どの程度の期間を行っていて,今後の見通しはどうで,他の考えるべきことはなんで,周囲のサポートはどの程度で,と時間空間的因子が複雑に絡み合います。そうした場合,同様に時間的空間的にどのような位置にある人のことを論じているのかの共通基盤ができていないと,議論が空回りして非常に非効率的になってしまいます

疾患を理解する上で当たり前のことで今更ではありますが,カンファレンス,議論など様々な場面で,お互い思い描いている患者像に隔たりがあることは多くの人が実感することと思われます。

ただ「社会心理的因子」が重要と言いながらサラリと通り過ぎましたが,医療者として本当の困難はここであって,いきなり根源的なことを言ってしまうと,病める身体という、いわば究極の内なる他者とどう折り合いをつけていくかの過程をどう捉えるかということになりますが,あまりに大きなテーマですので,diseaseの一要因として,また空間軸的併存因子一つくらいに触れておきます。

最後に,心不全パンデミック時代の今,一不整脈に過ぎず治療法も確立されてきた心房細動をあえて,今後も取り上げる意味としては,やはり「心房細動は,誰でも診断できる」「目にしたら誰でもわかる」疾患であるということを言っておきたいと思います。

たまに間違える場合もありますが,心房細動の心電図をわからない医師はそう多くないです。わからなかったでは済まされない疾患,それが心房細動です。しかも遭遇する機会は今後どんどん増えていくはずです。それゆえ心房細動は心房細動でも「どういう心房細動なのか」を厳しく問われることになる,と言いたいと思います。

新年早々長文になってしまいましたが,今後とも変わらぬご愛顧のほど,お願い申し上げます。

### 初詣はご近所へ
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by dobashinaika | 2019-01-04 22:48 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動が新たに見つかった人は,心血管死のリスクが相対的に高い:GARFIELD-AFレジストリ


疑問:心房細動診断後12ヶ月における早期のイベントリスクはなにか?

方法:
・GARFIEFLD-AFレジストリーの解析
・心房細動の診断後最初の12ヶ月における死亡,脳卒中/全身性塞栓症,大出血のリスクを分析
・52014人,前向き解析,2010−2016年

結果:
1)死亡:2140人(4.3/100人年)。うち13.5%(6.8/100人年)は最初の1ヶ月

2)脳卒中/全身性塞栓症:1.3%。2.3%は最初の1ヶ月

3)大出血:0,8%。1.5%は最初の1ヶ月

4)最初の死亡率上昇に最も寄与しているのは心血管死:

5)早期死亡原因;心不全,突然/目撃者のない死亡,急性冠症候群,感染/敗血症,呼吸不全

6)年齢,心不全,以前の脳卒中,肝硬変の既往,血管疾患,中〜高度の腎臓病,糖尿病,北米やラテンアメリカ在住は早期死亡の高リスク

7)ヨーロッパ,アジア在住は低リスクの指標

結論:新規に診断された心房細動においては,診断後の早期死亡,特に心血管死のリスクが高い。これに対しては包括的ケアが重要であり,臨床家は早期死亡の警告サインを見逃してはならない

### 心房細動と診断されてから1年以内に亡くなる人は4.3%で,そのうちの多くが心不全や突然死,急性冠症候群とのことです。結構多いですね。

心房細動のある方に心不全が新たに合併すると予後が悪くなることは,よく知られています。

心房細動が見つかったら,最低限心機能のチェック,冠危険因子のチェックをして,その後も早期サインを見逃さない。そうしたいものです。

$$$ 今日のニャンコ
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by dobashinaika | 2018-12-13 07:12 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

心不全合併心房細動に対するカテーテルアブレーションは死亡+入院リスク軽減に関連あり:NEJM誌


P:症候性の発作性/持続性AF例に左室駆出率(EF)35%以下・NYHA分類Ⅱ度以上の心不全を合併し、ICD/CRT-Dが既に植え込まれていた397例

E:心房細動アブレーション170例

C:標準治療184例

O:主要評価項目:全死亡or心不全増悪による入院

T:RCT,平均追跡期間37.8ヶ月

結果:
1)平均年齢は64歳、約9割がNYHA分類Ⅱ度とⅢ度、AFの病型は30~35%が発作性、65~70%が持続性

2)主要評価項目:アブレーション追加群HR:0.62,95%CI:0.43~0.87, P=0.007
総死亡:HR:0.53, 95%CI :0.32~0.86, P=0.01
心不全入院:HR:0.56, 95%CI :0.37~0.83. P=0.004
心血管死:HR:0.56, 95%CI :0.29~0.84, P=0.009
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結論:心不全合併心房細動に対するカテーテルアブレーションは,標準治療に比べ,全死亡+心不全増悪入院のリスク低下に関係していた。

### CASTLE-AF試験です。カテーテルアブレーションが生命予後を良くするのかに関してのRCTはこれまで大きなものはなく,その意味で大変大きな研究といえます。

とくに抗凝固時代においては心房細動の死因として心不全に目が向けられており,β遮断薬は予後改善効果が少ないことも示されておりますため,大変注目したいところです。

Limitationはたくさん。なによりアブが対象なので,ブラインドできない点です。しかも入院というソフトエンドポイントを含んでおり,バイアスははいりやすいです。ただ,二次評価項目では,死亡単独でも差はついているようです。

今後,心不全のある人ほど,アブをやった方が良いという流れの先鞭をつける論文かもしれません。熟読が必要です。

$$$ 椿貞雄の方がかわいい絵でした。
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by dobashinaika | 2018-02-07 23:25 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

新規発症例の心房細動に,肥満,高血圧,喫煙,糖尿病を合併すると心不全のリスクは増加する:JACCHF誌


疑問:新規発症心房細動を有する女性において,心不全発症のリスク因子は何か?

方法:
・米国のWomen’s Health Studyに登録された39876例
・うちベースラインで心血管疾患のない34,736例対象
・心房細動新規発症例における全体の心血管系リスク,予後,心不全発症リスクを評価

結果:
1)心房細動新規発症:1,534例(4.4%),心不全発症:687例(2.0%):平均追跡期間20.6年

2)新規心房細動発症例中:心不全発症226例
大半(82.7%)は心房細動診断時に発症

3)新規心房細動発症例の大半が(39例除く),心不全の既往なし

4)新規心房細動発症例での器質的心疾患合併例は少ない。
左室肥大39%,僧帽弁逆中15%,左房拡大46%

5)心房細動の新規発症は心不全のリスク増加に関連あり:HR 9.03; 95%CI, 7.52-10.85

6)心房細動患者の女性が心不全を発症した場合,全死亡率(HR, 1.83; 95% CI, 1.37-2.45),心血管疾患による死亡率(HR, 2.87; 95% CI, 1.70-4.85)いずれも増加

7)新規発症心房細動が心不全発症に及ぼす寄与危険度:全死亡率9.9% (95% CI, 2.2%-18.3%),心血管疾患による死亡率18.2% (95% CI, 1%-35%)

8)心不全発症のリスク因子;収縮期血圧120以上,BMI30以上,現在喫煙,糖尿病

9)上4つの因子の組み合わせによる心不全への寄与危険度:62% (95% CI, 23%-83%)

10)3または4つのリスク因子を持つ女性に比べ,コントロール良好の女性は心不全発症リスクが少ない
2つの因子=HR0.60; 95% CI, 0.37-0.95; 1つの因子=HR 0.40; 95% CI, 0.25-0.63; 0因子=HR 0.14; 95% CI, 0.07-0.29
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結論:女性で心房細動の新規発症例においては,肥満,高血圧,喫煙,糖尿病の合併が心不全発症のリスク因子であった。

### 永続性心房細動に長く罹患していても,心不全になる人とならない人がいるのは,臨床上よく懐く疑問です。本研究は多数例のコホートを用いて,肥満,高血圧,喫煙,糖尿病が重複する人ほど心不全になりやすいことを検証した,大変意味のある研究と思われます。

抗凝固療法が普及してきた今日,以前からも述べておりますように,心不全防止が心房細動治療の主眼目になると思われます。その際,上記のリスクを多く抱えている人ほど心不全には常に気をつけて診療することが勧められると思われます。

本文中では睡眠時無呼吸症候群のリスクも大切とされています。実臨床でも常に気をつけたい点です。

$$$ S市杜王町のマンホール
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by dobashinaika | 2017-08-21 22:15 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

心房細動がある人はない人に比べ死亡率が1.5倍,脳梗塞は2.3倍,心不全は5倍:BMJ誌


Atrial fibrillation and risks of cardiovascular disease, renal disease, and death: systematic review and meta-analysis
BMJ 2016; 354 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i4482 (Published 06 September 2016)

疑問:心房細動と心血管疾患,腎臓病,死亡との関連はどうなのか?

デザイン:システマティックレビュー&メタ解析

データリソース:Medline and Embase.

論文のクライテリア:心房細動と心血管疾患,腎臓病,死亡関連のコホート研究

結果:
1)104研究,9686513

2)心房細動と関連あるアウトカム
死亡:RR1.46, 95% confidence interval 1.39 to 1.54
心血管死:2.03, 1.79 to 2.30
主要心血管イベント:1.96, 1.53 to 2.51
脳卒中:2.42, 2.17 to 2.71
虚血性脳卒中:2.33, 1.84 to 2.94
虚血性心疾患:1.61, 1.38 to 1.87
突然死:1.88, 1.36 to 2.60
心不全:4.99, 3.04 to 8.22
慢性腎臓病:1.64, 1.41 to 1.91
末梢血管疾患:1.31, 1.19 to 1.45
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3)心房細動と関連のないアウトカム
出血性脳梗塞:2.00, 0.67 to 5.96

4)絶対リスク増加の最も高いのは心不全

5)いくつかのサブグループ解析,感度分析でも同様の結果

結論:心房細動は死亡,心血管疾患,腎臓病のリスク増加に関係あり。心房細動は患者では脳卒中以外のアウトカム減少にも気を配る必要がある。

### すでに同様の知見は本ブログでも何回も取り上げました。心房細動の死因1位は心不全というおおきな論文も最近Lancetに載っています。本論文は心房細動はある人はない人に比べ,全死亡は1.46倍,虚血性脳卒中は2.33倍,そして心不全は4.99倍という結果でした。

最近の研究では,既存の心房細動よりも,心不全に新たに心房細動が発症すると予後が悪くなることがわかっているようです。
いずれにしろ,心房細動患者における治療史として脳卒中治療の世紀から心不全治療の世紀への変遷と言えるかもしれません。取り立ててそんなに騒がなくても,昔も今もどんな心疾患であれ心不全治療は常に念頭に置かれるべきものではありますが,
by dobashinaika | 2016-09-12 18:49 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

米国の主要心臓病学会による心不全薬物療法に関するアップデート10項目

米国の主要心臓病学会が心不全に薬物療法に関する最近のアップデートを報告しています。
ACC (American College of Cardiology)のメルマガに、それを10項目にまとめてくれていますので、復習します。

2016 ACC/AHA/HFSA Focused Update on New Pharmacological Therapy for Heart Failure: An Update of the 2013 ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure
J Am Coll Cardiol. 2016;():. doi:10.1016/j.jacc.2016.05.011


【心不全薬物療法アップデート】
1.駆出分画の低下した心不全(HErEF):ACE阻害楽(推奨度クラス I、レベルA)、アンジオテンシン受容体阻害薬 (ARB) (クラスI, レベルA)、アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(クラスI,ARNI)(レベルB-R),それらにベータ遮断薬、アルドステロン拮抗薬の追加;

2.ARNIはPARADIG試験で心血管死、入院の複合エンドポイントを20%減少。サブ解析でも同様

3.HFrEF (NYHA II/III)で、既存のACEi,ARBで血圧良好な例ではARNIへの切り替え(クラスI)

4.ARNIには低血圧、腎機能低下、血管浮腫(低頻度)がある。将来、適切な容量、忍容性、特に血圧、併用薬、血管浮腫に対するより詳細な知見が提供されるだろう

5.現在米国では3用量のARNIは認められているが、PADIGM試験にないドーズも含まれている

6. 以前あるいは現在症状のあるHFrEFに対する合併症、予後改善目的のACE阻害薬(クラスI、レベルA)、特にARNI不適切例で強く勧める

7. 6の患者でACE阻害薬で咳、血管浮腫など忍容性が低下した場合のARB

8.ARNIは、ACE阻害薬との併用またはACE阻害薬後36時間以内に投与してはいけない(クラスIII、レベルB-R)

9. ARNIは、血管浮腫の既往患者に投与してはいけない(クラスIII、レベルC-EO)

10.NYHAII-III(EF35%以下)のHFrEF、ベータ遮断薬で安静時70回/分以上の人へのイバブラジン(クラスII、レベルB-R)

### まずはACE阻害薬+β遮断薬,それにアルドステロン阻害薬追加。ACEiで咳などが出ればARBというのを,まず再確認です。

それにしても勉強のためになると思って読んでいったら、日本の現場ではまだ使われていないものばかりの情報でした。ARNIはこのレポートで見るとかなり有望のようですね。
今後こうした薬が出てくるのでしょう。
これからもACEiとベータではダメなのか。よくよく考えたいです。

$$$ どこかにまたネコが。。
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by dobashinaika | 2016-05-28 10:46 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

ケアネット連載「新規発症の心房細動が心不全の予後を悪くすることが明らかに」更新いたしました

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は「第55回 日本の登録研究においても新規発症の心房細動が心不全の予後を悪くすることが明らかに」です。

心不全では,もともとあった心房細動より,新たに心房細動を発症したほうが,予後を悪くするという論文です。

http://www.carenet.com/series/afjournal/cg001089_0055.html?keiro=backnum
(要無料登録)
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by dobashinaika | 2016-04-30 21:25 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

日本の登録研究においても既存のより新規発症の心房細動が心不全の予後を悪くする:CJ誌

Prognostic Impact of New-Onset Atrial Fibrillation in Patients With Chronic Heart Failure – A Report From the CHART-2 Study –
Takeshi Yamauchi et al
Circulation Journal http://doi.org/10.1253/circj.CJ-15-0783


疑問:心不全患者が心房細動を合併した場合,予後は悪くなるのか

方法:
・東北地方のCHART-2研究登録例10219例のうち,stage C/Dの4818例

結果:
1)登録時心房細動:38.6%

2)心房細動症例(対非心房細動例):高齢,eGFR低下,BNP高値,LVEF,Bブロッカー,ARB使用は同等

3)新規発症心房細動:3.6%(3.2年追跡期間中)

4)新規発症例の死亡に関する補正後ハザード比:1.72; P=0.013

5)登録時心房細動(発作性,持続性とも)は予後に関連なし

6)死亡率は,新規発症後最初の1年で特に高い

7)RAS阻害薬とスタチンが新規発症抑制に関連あり。利尿薬は発症促進に関連あり

結論:心房細動の既往ではなく,新規発症が,特に発症1年以内の心不全死亡率増加に関連していた。

### 東北大学循環器内科からの精力的な仕事です。
もともとあった心房細動に心不全を合併した場合は,心不全のない例に比べて予後が悪いことは明らかと思われますが,一方心不全がもともとあって,そこに心房細動が合併した場合に関しては,結果はさまざまだったんですね。

普通に考えれば心房細動があると,左室の充満時間の短縮,塞栓症リスク増大などで予後は悪くなりそうで,事実昔のSOLVD試験を始めとするトライアルは予後悪化を示唆していましたが,最近の試験はそうでもなくて,Euro Heart Surveyなどは今回の知見と全く同じ,新規発症が予後に影響し,既存の心房細動はむしろ予後を良くするとしています。

やっぱり,心不全の治療が良くなったためと思われます。その中でもRAS阻害薬とスタチンが関連ありということで,どちらも前向き試験で心房細動発症に関するアップストリーム効果は否定されてはいますが,いちおう頭に入れておきます。

$$$ 土曜日は盛岡で健康カフェの話をさせていただきました。詳細は後日ご報告します。楽しかったです。
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by dobashinaika | 2015-12-13 23:33 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

生活のシンプルセブン(7つの生活習慣)は心不全,狭心症,脳卒中,認知症等のリスク低下に関連

American Heart Association's Life's Simple 7: Avoiding Heart Failure and Preserving Cardiac Structure and Function.
Am J Med 2015;128:970-976


疑問:AHAが提唱している”生活習慣シンプル7”は心不全リスクと関連があるのか

方法:
・米国のthe population-based Atherosclerosis Risk in Communities Study cohort13,462人
・45〜64歳,1987〜1989年に登録

結果:
1)85歳までの心不全は25.5%

2)心不全リスク:スコア10〜14点(最適)=14,4%,5〜9点(平均)=26.8%,0〜4点(不適切)=48.6%

3)臨床的にイベントのない人でも,平均点のひとは不適切のひとに比べても左室肥大は40%,拡張不全は60%と普通に見られる

結論:AHAの7つの生活習慣は心不全リスク低下だけでなく,冠動脈疾患,脳卒中,認知機能低下,糖尿病,慢性腎臓病,がんのリスク低下にも関連。この研究はライフスタイルの変化が心不全にも影響することに焦点を当てた。早いうちからの生活習慣介入は大切。

### 神セブンならぬ,シンプルセブン。 7つの生活習慣とは,以下でこれを3段階に分け,2,1,0‥とスコアリングします。
1)喫煙(吸わないorやめて12カ月超,12ヶ月以内,喫煙中)
2)BMI(<25,25〜30,30<)
3)運動(週の運動時間ごとに3段階)
4)健康ダイエットスコア
5)総コレステロール(<200,200〜240,240)
6)血圧(<120/80, 120-139/80-90 or <治療下120/80,>140/90)
7)空腹時血糖(<100,100〜125,>126)


ちなみに運動は理想(週150分以上中等度または75分以上高度または150分以上中/高),平均(週1〜149分中等度または1〜74分高度または1〜149分中+高)。
ダイエットは以下の5項目(1)フルーツと野菜>4.5カップ/週 2)魚23.5oz/週以上 3)線維質立リッチ 4)塩分<1500mg/日 5)砂糖<450cal/週)で,理想は4〜5点,平均2〜3点,不適切102点です。

私,自分で計算したところ結構高得点でした。昨年体調を崩してから塩分厳格制限と毎日散歩で得点を上げました。もっともこのBMIスコアは日本人には当てはまりませんが。

$$$と言いつつ,忘年会でこんなところへ,,,全部歌えたりします。。
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by dobashinaika | 2015-12-07 23:59 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

CHA2DS-VAScスコアは心房細動の有無に関わらず心不全のリスク予測に有用:JAMA

Score in Predicting Ischemic Stroke, Thromboembolism, and Death in Patients With Heart Failure With and Without Atrial Fibrillation
Line Melgaard et al
JAMA. Published online August 30, 2015.

目的:CHA2DS-VAScスコアは心不全でも有効か

方法:
・デンマークの前向きコホート登録研究
・2000−2012年に新たに診断された心不全42987例,抗凝固療法なし,心房細動合併21.9%
・CHA2DS-VAScスコア別,心房細動の有無別に層別化
・アウトカム:虚血性脳卒中,血栓塞栓症,心不全診断1年以内の死亡

結果:
1)非心房細動例:虚血性脳卒中3.1%,血栓塞栓症9.9%,死亡21.8%

2)いずれのアウトカムもCHA2DS-VAScスコア増加に連れて,心房細動の有無にかかわらずリスク増加

3)血栓塞栓症リスク;CHA2DS-VAScスコア4点以上では心房細動にかかわらず高リスク
非心房細動例:9.7%,心房細動例8.2%;P<.001 for interaction

4)C統計量:心房細動にかかわらず同様の有用性
非心房細動例:0.64,心房細動例0.67

5)陰性的中率
非心房細動例:91%,心房細動例92%%

結論:心房細動の有無にかかわらず,心不全患者において,CHA2DS-VAScスコアは虚血性脳卒中,血栓塞栓症,死亡リスクと関連あり。CHA2DS-VAScスコア高点例では,血栓塞栓症の絶対リスクは非心房細動例で心房細動例より高い。しかし予測精度は中程度であり,臨床上の使用には考慮が必要。

### まあまあ納得のいくアウトカムですが,やはり登録研究なので,心不全及び心房細動診断の根拠が気になります,おそらくカルテベースですので,どの程度の心不全重症度か,発作性心房細動が見逃されていないかは,常に考えねばなりません。

ただ,高CHA2DS-VAScスコア点数では心房細動など関係なく血栓塞栓症が危ないというのは納得です。4点以上だと結構合併症が多いので心房細動なしでも血栓塞栓症が来るというのはそうかもと思われます。ただ筆者は,心房細動がなくてもCHA2DS-VAScスコア2点以上だとNOACの効果が見込めるといったニュアンスのことを書いていますが,それはどうかと思われます。Lip先生のグループらしい推論かもしれません。

高リスク(CHA2DS-VAScスコア)の心不全では,心房細動にかかわらず血栓塞栓症には注意をということですね。

$$$ 先日名古屋に行ってきました。駅前ですぐ目についたので早速カメラ。むかしは「ビルヂング」が一般的だったんですね。ググってみたら,ここは有名な「 ビルヂング」だとのことです。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%EB%A5%C2%A5%F3%A5%B0
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by dobashinaika | 2015-09-08 18:35 | 循環器疾患その他 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

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著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

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