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新規経口抗凝固薬の大規模試験の組入れ基準は実臨床とどの程度合致しているのか: Stroke誌

Stroke 8月21日オンライン版
Eligibility and Preference of New Oral Anticoagulants in Patients With Atrial FibrillationComparison Between Patients With Versus Without Stroke
Chang Hyo Yoon et al


疑問:NOACの大規模試験の対象患者は、どの程度実臨床を反映しているのか?

方法:
・対象:韓国のある大学に通院するワルファリン服用心房細動の連続症例695例 (脳卒中500例、非脳卒中195例)
・アウトカム:NOACの4RCT (RE-LY, ROCKET-AF, ARISTOTLE, and ENGAGE-AF-TIMI 48)の組入れ基準にどの程度合致するか

結果:
1)RCTの組み入れ基準(適応/禁忌)との合致率:39~72.8%(脳卒中の有無に依存)

2)RCTとの不一致の原因
非脳卒中例:出血リスク(ATRIAスコアによる):10.8~40.5%、待機的除細動:5.1~7.7%
脳卒中例:低クレアチンクリアランス:5.6~9.2%、出血リスク:15.2~20.8%

3)TTR:脳卒中の方が非脳卒中例より低い:54.4±42.8% versus 65.4±34.9%, 特に後遺症重症例)

4)ATRIAスコア:脳卒中例の方が高い :3.06±2.30 versus 2.18±2.16) (P<0.05、両者とも)

結論:RCTの対象患者は、実臨床の患者の一部のみを反映している。TTRやワルファリンの出血リスクを考えるときは、脳卒中例では、非脳卒中よりもNOACが好ましい。しかしそうした例はRCTでは除外される傾向がある。

### 同様の検討をイギリスのGP対象に行った報告では、合致率は51〜68%で、理由はやはり腎機能、出血リスクが多く、ほかに弁膜症、人工弁などでした。
http://dobashin.exblog.jp/17009757/

やはり結構合致しない人が多いのです。

またこの検討ではワルファリンの管理状況(TTR)も検討していて、脳卒中を来す例はTTRが54.4%と低く、ROCLET-AFを除いたRCTはいずれも60~65%ですので、実臨床はこの点でもかけ離れている訳です。また当院やFUSHIMI AFの抗凝固患者は、各RCTより高齢で、とくに85歳以上の割合が実臨床、特に開業医では多いと思われます。

このように組み入れ基準のほか、TTR、年令、そしてアドヒアランスなどなど、重要な因子がそれぞれRCT通りには行かないと言うことを知っていて損はないと思われます。
by dobashinaika | 2014-08-28 14:32 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

NOAC(非ビタミンK阻害経口抗凝固薬)は現実世界でも有効か?(1):T/H誌

NOACにおける大規模臨床試験と現実世界とのギャップについて、先月の日本循環器学会でお話させていただきましたが、Thrombosis and Haemostasisの2月27日付オンライン版に、全く同様の内容を扱った総説がでておりました。

私、この総説には気づかず、発表しておりました。これ読んでいたら、もっと違った発表になっていたかもしれません(笑)。

Gaps in translation from trials to practice: Non-vitamin K antagonist oral anticoagulants (NOACs) for stroke prevention in atrial fibrillation
http://dx.doi.org/10.1160/TH13-12-1032
E. M. Hylek et al



悔しいので、かいつまんで訳します。膨大なので1日1〜2章ずつで。きょうは頭蓋内出血と消化管出血から

【疑問】ランダム化試験(RCT)と同様に、NOACは頭蓋内出血を減らせるのだろうか?

・頭蓋内出血は各種因子に修飾される:微小血管障害、微小出血、血圧、抗血小板薬併用、外傷
・微小血管障害、微小出血は高齢者に多いが、RCTの参加者の平均年齢は約71歳→なので超高齢者への効果は不明
・こうした患者は認知症を合併するため、こうした患者層(高齢で認知症あり)をRCT(の患者層)が代表しているかは不明

・各RCTの血圧管理は良好(各中央値):RELY:131/77, ROCKET-AF 130/80, ARISTOTLE 130/82
・デンマークのコホート研究(血圧研究):140/90未満が33.2%しかいなかった
・the Copenhagen City Heart Studyでは26%
・RCTでは管理不良な高血圧患者は除外

・アスピリンは頭蓋内出血をワルファリン単独使用の2.4倍増化させる
・アスピリン併用率:RELY40%、ENGAGE-AF 29%だが心筋梗塞の既往は各17%、12%
・アスピリンの適応が適切だったのか疑問がわく
・75歳以上の心房細動患者の、虚血一次予防または安定狭心症にたいするアスピリンの効果は近年疑問視されている
・頭蓋内出血を減らすにはこうしたサブグループへの二者あるいは三者併用は考慮すべき。

【疑問】NOACは現実世界において、消化管出血をRCTより増やすのか?そのリスクを減らせる介入はあるのか?

・ダビガトラン150、リバーロキサバン、エドキサバンは消化管出血をワルファリンよりも増やした
・アピキサバンはワルファリンと同様
・頭蓋外出血の30日死亡率(5.1%)は頭蓋内出血(48.6%)に比べ低値だが、消化管出血はコストと死亡率に明らかに関与
・ワルファリンによる消化管出血の85%が入院する
・より重要なのは、消化管出血により抗凝固療法が中断され、そのことが死亡率増加につながる

・加齢により消化管の性状は傷害が受けやすいようになる
・確たる理由がない限り、高齢者でのアスピリンやNSAIDsの使用は避けるべき
・無症候性症例でPPIの効果は不確定
・消化性潰瘍既往者はヘリコバクター・ピロリ検査を施行しておくべき(対費用効果は不明)

・消化管出血減少の大きな妨げは、出血部位特定がされないこと
・出血時の休薬期間に関しても不確定
・各薬剤ごとに、出血部位の特異性が明確で無いので、消化管出血減少を目的とした薬剤選択ができるかどうか疑問
・鉄欠乏性貧血を診断し、消化管の精査を行うことが大事

### 年齢、血圧、アスピリン併用、消化管出血など、RCTと現実世界と異なることが丁寧に示されています。
特に高齢者では、不要なアスピリン、NSAIDsの併用を避け、血圧をよく管理し、消化管出血の既往はピロリ菌に注目せよ、という実践的なrecommendationとして捉えたい総説ですね。

私の拙い発表は以下のサイトを参照ください。
http://att.ebm-library.jp/conferences/2014/jcs/02.html
by dobashinaika | 2014-04-22 19:49 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

大規模臨床試験とリアルワールドのギャップ(再論)

抗血栓療法トライアルデータベースというサイトの第78回日本循環器学会(JCS2014)レポートで、私がラウンドテーブルディスカッションで話した内容が紹介されています。

「大規模臨床試験とリアルワールドのギャップ」という演題でしたが、よくまとめていただいたので、ご紹介いたします。

http://att.ebm-library.jp/conferences/2014/jcs/02.html

大規模臨床試験の世界(トライアルワールド)とリアルワールドの世界の本質的な差異は何かとつらつら考えるに、対象の範囲やカオス性ではなくて、トライアルワールドの中では、患者も医師も意思決定をしなくても良いのに対し、リアルワールドでは意思決定を常に強いられるということかもしれないという気がします。

この点について、哲学的論考(?)を準備中です(笑)。折を見てまた取り扱います。
by dobashinaika | 2014-04-14 23:30 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

大規模臨床試験とリアルワールドのはざま:一口にリアル・ワールドと言うが。。

3日間の日本循環器学会に参加してまいりました。
今回は2日目に発表する機会を与えていただいたこともあり、詳しく見聞録を書く余裕がありませんでした。

その発表ですが「大規模臨床試験とリアルワールドのはざま」というお題を頂いた時点で危惧していたのですが、
とても15分では扱えない壮大なテーマでした。
当初作成したスライドが50枚以上になってしまい、それでも半分に減らすのが精一杯でした。

ただし、スライドをまとめていく中で、かなりいろいろなことを学習したように思います。
RCTはその内的妥当性を保つために選択基準、除外基準を設けるわけですが、これがリアル・ワールドとの差異を生む、いわゆる選択バイアスが介在するわけです。この選択バイアスが少ないほど、RCTの真実がリアル・ワールドの真実に近づくことができる。つまり外的妥当性が担保されるということになります。

ここまで疫学の教科書に載っている基本事項ですね。

実際、NOACのRCTではCHADS2スコア0または1点以下、超高齢者、高度腎機能障害、人工弁、僧帽弁狭窄その他日常よく遭遇するケースは含まれないまたは非常に少ないです。のみならず、RCT対象者は、医学の試験に協力的で健康意識の高い、アドヒアランスも低くない集団であることが一般的です。

ということで、実際の通院患者の50〜60%の人しか選択基準、除外基準にマッチしていないということになるわけです。

このギャップを埋めるのが観察研究なわけですが、現在までにダビガトランでいくつかの登録研究などが報告され、RE-LYとは異なる結果が認められていたりします。ただしまだ追跡期間が少なく交絡因子も多く、RCTへとフィードバックされるような情報を提示するには至っていないようです。

さらに、通常、予期せぬ副作用、極めてまれな副作用に関しての検出力はRCTには要求されておりませんので、幸い今までのところPMSその他でそうした「害」は認められてはいませんが、だからといってたかだか最高で3年程度のキャリアでは、私自身は50年選手のワルファリンと同等の信頼を置くことはまだできないのです(今更?と言われそうですが)。

で、通常RCT-リアル・ワールド間のギャップは観察研究の積み重ねで埋めていきましょう、で終わりになるわけですが、抗凝固薬の場合これで終わりというわけに行きません。もう一つのリアル・ワールド、つまり「抗凝固療法の適応があるにもかかわらず処方されていない患者さん」が大多数存在するからです。

FUSHIMI AF RegistryではCHADS2スコア、2点以上でも50%の処方率であることはよく知られていますね。ガイドラインであれほど2点以上、1点以上といわれていても、リアルワールドではせいぜい50%の処方率。なぜか?患者さんも医療者も出血を恐れているからです。それと表裏一体のことですが、高齢者にはいくらCHADS2スコア高点でも躊躇するからです。「85歳、高血圧、糖尿病、心不全、認知症あり、転倒の既往あり」の人にCHADS2スコア4点だからはいNOAC飲みましょうとはいかない、という話ですね。

そこのギャプ、いわゆるアンダーユーズのギャップをどうするかーーーこれは今のところソリューションなきアポリア(難題)ですねー。
比較的若いが、CHADS2スコアは2点以上、というどまんなか症例へのアンダーユーズに関しては、医療者への啓蒙で事足りるかもしれませんが、高齢者へのアンダーユーズをどうするか、というのは難しいですね。

というより、これはアンダーユーズと言っていいのかという地点から考え直す必要もあります。がん患者にCHADS2スコアの適応が難しいという総説を紹介しましたが、同様に超高齢者にCHADS2スコアをそのまま適応することには、いま一度考え直す必要があるのかもしれません。

さて高齢者アンダーユーズ(とひとまずは言っておきます)の解決策のひとつは、患者さん、家族とのリスクコミュニケーションを密にして、INRに十分注意し、アドヒアランス、転倒に留意しながらワルファリンを使っていくという方法があります。
もう一つは、例えばアピキサバンやその他NOACのリアル・ワールドの経験知の蓄積を待つということがあります。
更にもう一つは、「抗凝固薬はのまない」という合意形成を患者さん、患者家族と医療者で行うという選択肢です。

どの解決策にしてもまだ発展途上または非常に骨が折れる作業ですね。このギャップというのはそのまま「患者さんと医療者とのギャップ」でもあるし、「理性と恐怖心との心の隙間」かもしれません。

そしてさらに、その外側のリアル・ワールドまで思いを馳せる必要があるかもしれません。
「心房細動があるのに無症候性のひと、または症状があるのに医療機関に来ないひと」です。ここまで範囲を広げればリアルワールドとはイコール「地球上のひと全員」ということになります。ここまで想定すると、時々最近もブログでで取り上げている「隠れ心房細動」探し=心房細動のスクリーニングをどうするかという問題まで話題を広げねばなりません。

いろんな論文、いろんな場所で「リアルワールド、リアルワールド」っていわれますが、最近食傷気味な感じもあったのですが、「リアルワールド」はこのように特に抗凝固療法の領域では、重層的なひろがりをもっており、想定する概念によってその対象となるpopulationがかわり、浮かび上がる問題も違うわけです。今回まとめてみて、そうしたことにきづきました。(Fretcherの臨床疫学の教科書には"All patients with the condition of interest"と既に書いてありますね)

えー、それで実はさらにもう一つの、リアルワールドを考えなければならないわけですが、何かというと、目の前の一人の患者さんですね。
”The Patient's World" 

ということで、ここまで論じないとこのギャップを論じたことにならないということになり、とても15分ではお伝えできなかったのでちょっと補足してみました。

時期を見て当日のスライドもご紹介したいと思います。
by dobashinaika | 2014-03-23 22:42 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

新規抗凝固薬に関する大規模試験の問題点(その2):T/H誌

昨日からの続きです。

New oral anticoagulants for stroke prevention in atrial fibrillation: impact of study design, double counting and unexpected findings on interpretation of study results and conclusions
http://dx.doi.org/10.1160/TH13-11-0918
N. C. Chan et al


<予期せぬ副作用>
1.各NOACともワルファリンより頭蓋内出血が少ない
2.高用量ダビガトランとリバーロキサバンで消化管出血が過多
3.ダビガトランで心筋梗塞が過多
4.低用量エドキサバンは、虚血性脳卒中が高率にも関わらず、血管死、全死亡は明らかに減少した

1)頭蓋内出血
・3NOACでワルファリンに比べた頭蓋内出血減少は強く一貫している:RR中間値0.40
・RELYとROCKETAFでは、脳内出血の大多数は頭蓋内出血(各46%、72%)。次が硬膜下出血(45%、24%)
・NOACは凝固因子を量的に抑えるので、局所の微小出血部位で組織因子絡みで大量に生成されるXaやトロンビンにより駆逐されてしまう。
このことが微小出血を大出血に変換させないことにつながる
・対するワルファリンはXaやトロンビンを修飾し、微小出血部位で組織因子に関連する凝固因子(VIIと思われる)を抑える
・このことは実験レベルで証明済み

2)消化管出血
・ダビ150,リバーロ、エド60はワルファリンに比べ、消化管出血率を増やした
・一方、アピは消化管出血減少傾向を認め、エド30は明らかに減らした:出血減少としては最も地味であるが
・これらの薬剤は消化管において活性型として高濃度に配置される
・ダビ150が糞便中の薬物濃度が最も高い
・NOAC(リバーロ除く)のうち、ダビは上部下部消化管で出血率は同等だが、アピ、エドは上部に多い(2/3)。
・ダビは吸収がpoorで、エステル化による生物学的活性化による活性化された薬剤が腸管に高濃度に残るためであろう。

3)心筋梗塞
・ダビはワルファリンに比べ、心筋梗塞リスク増加と関連した:キシメラガトランなども同様
・Xa阻害薬にはその傾向なし
・メカニズム不明
・影響は軽微だが、統計的には明らか
・プラークラプチャーした部位でのトロンビン凝集を妨げる力の違いかもしれない

<低用量エドキサバンの死亡率低下>
・ENGAGE AFでは、エドキサバンは15〜60mgという4倍のスパンの用量設定がなされた
・低用量エドキサバンは、ワルファリンより虚血性脳卒中を明らかに減らし(ARR0.55%/年)、血管死も減らした(ARR0.46%)
・死亡率も低下させ、出血減少がこれに寄与した:大出血ARR1.82%、致死的出血ARR0.25%:多くは頭蓋内出血減少
・低用量エドキサバンとワルファリンの死亡率減少の差は、頭蓋内出血減少だけでは説明不可能:致死的脳卒中のARRは0.07%、死亡率のARRは0.55%
・他に死亡率減少の理由としては血管死の減少がある
・大出血が、非出血性血管死に寄与しているとするのは妥当:機序として抗凝固薬の中止、低血圧、過凝固など

【考察】
・再評価によって見えてきたこと
1)有効性のアウトカムから頭蓋内出血を省くと、虚血性脳卒中の減少効果でワルファリンより優れたのは高用量ダビのみ

2)リバーロキサバンとエドキサバン60のITT解析での優越性欠如は、高い早期脱落率によるものであり、間接比較の問題を浮き彫りにした

3)ダビ、リバーロ、エド60は消化管出血増加に関連

4)特に低用量NOAC使用で、出血減少に伴い死亡率が減少

・アピとエド30は出血高リスク例にアピールする:消化管出血増加に関連せず

・エド30はワルファリンより脳梗塞が高率だがアピは脳梗塞の低い傾向

・リバーロとエド60は1日1回が強みだが、消化管出血はワルファリンより多い

・ダビ150は、非出血性脳卒中をワルファリンよりも減らす唯一のNOACであり、2012ESCガイドラインでもアピ、リバーロ内服中の脳梗塞高リスク例には推奨された:ただし消化管出血、心筋梗塞は増やすのでそうしたリスクのある例には注意

・直接比較はない時点では、NOAC間の選択は虚血性脳卒中予防、大出血リスク(頭蓋内出血と消化管出血)、心筋梗塞リスク、死亡率と1日1回という便利さを検討することに影響を受けるであろう。

【結論】4NOACは、より便利で、頭蓋内出血を減らし、少なくとも脳卒中/全身性塞栓症予防に効果的であり、死亡率を減少させる。NOAC間の相対的な有効性と安全性についての明確な結論は、直接比較がない以上控えるべき。

### 最後の1文が全てのように思います。その割には結構大胆に使い分けに関して述べているように思いますが。。中断率が高いためNOAC間比較は難しいという指摘が一番目を引いたように思います。

現時点では4NOACを上記のようないろいろな観点から優劣を考えて使い分けすること自体、医師の”好み”の問題に帰結せざるを得ないというのが本当のところだろうと思います。まあこの件に関しては、論じればキリがないですが、疲れたのでこの辺で。
by dobashinaika | 2014-03-05 01:10 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(1)

新規抗凝固薬に関する大規模試験の問題点(その1):T/H誌

Thromb Haemost誌に4NOACの大規模試験に関して興味深い総説が掲載されていますので、紹介します。

New oral anticoagulants for stroke prevention in atrial fibrillation: impact of study design, double counting and unexpected findings on interpretation of study results and conclusions
http://dx.doi.org/10.1160/TH13-11-0918
N. C. Chan et al


【(これまで)公表されている結論】
1.ダビガトラン150は、大出血を増やすことなく、ワルファリンに比べ脳卒中/全身性塞栓症予防に効果あり

2.ダビガトラン110は、ワルファリンに比べ脳卒中/全身性塞栓症予防は非劣性で、大出血は少ない

3.リバーロキサバンは、大出血を増やすことなく、ワルファリンに比べ脳卒中/全身性塞栓症予防は非劣性

4,アピキサバンは、ワルファリンよりも脳卒中/全身性塞栓症予防、および大出血、死亡率減少に優れる

5,エドキサバン60は、ワルファリンに比べ脳卒中/全身性塞栓症予防は非劣性、大出血、心血管イベントリスクは減らす

6.エドキサバン30は、、ワルファリンに比べ脳卒中/全身性塞栓症予防は非劣性、大出血、心血管イベントリスクは減らす

総じて、4NOACは安全性、有効性で少なくともワーファリンと同等で、頭蓋内出血は減らす。このことは市販後調査や、登録研究、モデル研究で指示されている。

【データの批判的審査後の上記結果の再評価】
結果の解釈や推奨度の考慮に影響を与える問題として以下があげられる。
1.4試験とも、頭蓋内出血(出血性脳卒中)は脳卒中(有効性アウトカム)と大出血(安全性)による”ダブルカウント”

2.ROCKET AFとENGAGE AFにおける高い早期中断率:これらはITT解析においてリバーロキサバンとエドキサバンの不利益となる

3.RE-LY,ROCKET-AF,ENGAGE-AFにおける予期せぬ副作用

4.低用量エドキサバンの予期せぬ死亡率減少

〈頭蓋内出血のダブルカウント〉
・伝統的に、心房細動の脳卒中予防研究では一次有効性アウトカムは脳卒中(出血と梗塞)と全身性塞栓症の複合である
・各4試験において、NOACは脳内出血(合併症)を減らした
・ゆえに、出血性脳卒中を有効性と安全性の両方に組み入れることはワルファリンに比べたNOACのネットベネフィットを過大評価する可能性あり
・有効性アウトカムから脳内出血を外すことはNOACのワルファリンに比べてのベネフィットの解釈を以下の3つの形で変化させることになる
1)4つのNOAC全てでネットクリニカルベネフィットの誇張された評価があきらかになる
2)ワルファリンに比べて虚血性脳卒中を減らすのはダビガトラン150のみである
3)これまで認知されているアピキサバンの脳卒中と頭蓋内出血の両方の減少に関する対ワルファリン優位性は両方に出血性脳卒中が含まれることで説明可能

<ITT解析の早期中止のインパクト>
・各論文はITT解析が報告されているが、ROCKETAFとENGAGEAFの初期解析法はon-treatment 解析である
・ITT解析すると、リバーロキサバンと高用量エドキサバンはワルファリンに比べ非劣性だが、アピキサバンと高用量ダビガトランは優位性を示した
・このことをもってアピ、ダビよりリバーロ、エドの効果が少ないと考えるべきではない
・その比較が間接的であるという事実とは別に、4試験には早期中断者数とITT解析に含まれるoff-treatmentでのイベント(試験期間中)の数に重要な差異がある
・4試験のうちROCKETAFとENGAGEAFは高い早期中断率であった:参加者のCHADS2スコアが高くより重症例がいるため
・ROCKETAFではリバーロキサバン群の35.4%、ワルファリンの34.6%が早期に中断、ENGAGEAFではエドキサバン34.3%、ワルファリン34.4%で早期中断
・このためこれらでITT解析を行うとoff-treatmentでのイベント(が多くカウントされてしまうこと)により薬の効果が薄まる
・早期中断は各試験の両群間のoff-treatmentイベントにアンバランスをきたす:ROCKETAF=ワルファリン群66追加に対しリバーロ群81イベント追加。ENGAGEAF=ワルファリン群105に対しエド群14追加
・高い早期中断率の結果、ROCKETAFではハザード比はon-treatmentでは0.79(p=0.02)だが、ITTでは0,88となりもはや優位性は消失。ENGAGEAFでの高用量エドキサバンも同様

### さすがマクマスター大学グループ、というか、脳出血のダブルカウントは以前から矛盾として指摘されていました。脱落率過多によるITT解析の不適切さは、EBMをかじったものなら気づくべきですが、私も脱落率高いなあと思いながら、まあそんなもんかとも思ってスルーしてしまっていました。RELYでは21%、ARISTOTLEも23%で、総じて決して低くはない数字ですね。

ここまでまとめるだけで疲れましたので、後半の「予期せぬ副作用」とディスカッションもかなり面白いのですが、すみません、明日できれば紹介いたします。
by dobashinaika | 2014-03-03 23:37 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(1)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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