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ダビガトランのリアルワールド出血リスク:JAMAIM誌

Risk of Bleeding With Dabigatran in Atrial Fibrillation
Inmaculada Hernandez et al
JAMA Intern Med. Published online November 03, 2014. doi:10.1001/jamainternmed.2014.5398


疑問:ダビガトランの出血に関するリアルワールドデータはなにか

方法:
・後ろ向きコホート
・米国メディケアの薬局と医療機関データ5%のサンプル(2010−2011年)
・新規発症心房細動
・ワルファリンまたはダビガトランを診断60日以内に投与された患者
・ダビガトラン群1302人、ワルファリン群8102人
・部位別出血(大,小含む)イベント
・大出血:頭蓋内出血、心嚢内出血、血尿による受診、消化管出血、その他の出血
・プロペンシティスコアマッチ、Cox比例ハザードモデル
・4つの高出血リスク群を想定:75歳以上、アフリカンアメリカン,CKD,7つ以上の合併症

結果:
1)ダビガトランの大出血ハザード比(対ワルファリン):
 ・全出血:1.30 (95% CI, 1.20-1.41)
・大出血:1.58 (95% CI, 1.36-1.83)
・消化管出血:1.85 (95% CI, 1.64-2.07)
・頭蓋内出血:0.32 (95% CI, 0.20-0.50)

2)ダビガトラン群の大出血、消化管出血リスク増加はいずれのザブグループでも有意にあり

3)アフリカン・アメリカン、CKD患者で特に高リスク

結論:ダビガトランは(解剖学的部位にかかわらず)大出血リスク増加に関係有り。特に消化管出血を増加させたが、頭蓋内出血は減らした。ダビガトランは特に高リスク患者では、注意して使うべき。

### 先日ご紹介したCirculation誌のメディケアデータとは、やや異なる結果でした。
どちらもダビガトランで、ワルファリンより消化管出血が多かったわけですが、今回はハザード比が1.85倍(Circulaionでは1.28倍)とかなり高く、そのため大出血率も有意に高くなりました。

この違いの原因を知るため、患者背景を見てますと、本論文は症例数が両群とも8000〜13000人。平均年齢約75歳 、白人が80%以上で、黒人はダビガトラン群6.4% ,ワルファリン群8.1%、CHADS2スコア1点が20%前後、2、3点が50%強でした。

Circulationの方は、白人が92%、黒人は3%、CHADS2スコア0〜1点28%、2点40%。3点21%で、やや白人が多く、CHADS2スコアはやや高めですが、大きな違いはなさそうです。

一番の違いは消化管出血の発症率のようです。本論文ではダビガトラン群が17.4%、ワルファリン群で10.0%に対し、Circulationのほうは各3.42%、2.65%でした。ちなみにRE-LY本試験では各1.56%、1.07%でかなり低いです。

例えば、登録研究ですと、RE-LYなどで消化管出血が多いことを知っている患者さんが、少しの血便でも医師に報告するといったようなバイアスはありえるかもしれません。消化管出血の定義は両試験ともカルテベースのようなので、明記されていないようです(間違っていたらすみません)。

RE-LY試験は150mgの大出血はワルファリンと同等で、頭蓋内出血は半分以下、消化管出血は約1,5倍で有意に増加しておりましたので、類似していますが、今回データはさらに消化管出血が多い結果となっています。

RE-LYでは75歳未満では消化管出血はダビガトランで低く、75歳以上で高くなったのですが、本試験は年齢に関わらず一貫して高いとのことです。

確認ですが、米国ですので、110mgx2はなく、ほとんどが150x2で腎機能低下者は75x2だと思われます。

日本では110x2がありますが、これの消化管出血のリアルワールドデータも知りたいところです。今のところ、私としてはこれまで通り、150x2は消化管出血、胃潰瘍、(あるいは大腸ポリペクトミー)の既往がある場合は、立ち止まることにします。

Circulation誌のブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/20339500/

先日の「NOACリアルワールドデータスライド」に追加しておきます。
ダビガトランのリアルワールド出血リスク:JAMAIM誌_a0119856_2223575.png


### 今朝は寒かったです。今日から手袋デビュー。写真が取れるようにスマホ対応手袋買いました。スマホは指紋認証にしていますが、はじめ手袋のまま指紋認証してしまいました。その場面誰にも見られなくてよかった(笑)。
ダビガトランのリアルワールド出血リスク:JAMAIM誌_a0119856_22194082.jpg

by dobashinaika | 2014-11-05 22:26 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ダビガトラン服用中に頭蓋内出血をきたした人の予後はワルファリンと比べてどうか?:Stroke誌

Stroke 7月3日
doi: 10.1161/STROKEAHA.114.006016
Intracranial Hemorrhage Mortality in Atrial Fibrillation Patients Treated With Dabigatran or Warfarin
Alvaro Alonso et al


疑問:現実世界でのダビガトランの頭蓋内出血のアウトカムはどうか?

P:The Truven Health Marketscan Research Databasesにおいて、頭蓋内出血で入院かつ心房細動ありの患者

E/C:プロペンシティースコアをマッチさせたダビガトラン服用者とワルファリン服用者

O:入院時死亡率

結果:
1)2391人:ワルファリン2290人 vs. ダビガトラン531人

2)死亡:531人

3)死亡率:ワルファリン22% vs. ダビガトラン20%

4)スコアマッチ後のダビガトランの相対リスク0.93(0.62−01.37)

5)頭蓋内出血のタイプごと(脳内出血、クモ膜下出血、硬膜下出血)での差はなし

結論:今回のセッティングでは、ダビガトランはワルファリンに比べて、入院時死亡率がより高くはなかった。したがって、中和薬がないことを理由にダビガトランの使用を避ける事はこの結果からは支持されない。

###一旦出血を起こしてしまった症例の予後の比較ですね。

アウトカムが「大出血」においてはダビガトランのほうがやや良いという結果も出ています。
http://dobashin.exblog.jp/18716677/

ダビガトランの頭蓋内出血のほう軽傷で済むという報告もありますが、今回の報告では死亡をアウトカムにすると同じくらいということです。
http://dobashin.exblog.jp/19645660/

アリストテレス試験では大出血後の予後はアピキサバン群のほうがよかったとの報告もありますが、こちらはRCTです。
http://dobashin.exblog.jp/19815143/
もちろんだからアピキサバンのほうが有利とはいえません。

いつもながら観察研究ですので、スコアマッチング済といえども交絡因子はありますことは注意です。
by dobashinaika | 2014-07-04 20:01 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

新規経口抗凝固薬は現実世界で適切に使われているのか?:AP誌

Ann Pharmacother June 30, 2014
Appropriateness of Prescribing Dabigatran Etexilate and Rivaroxaban in Patients With Nonvalvular Atrial FibrillationA Prospective Study
Anne-Sophie Larock et al


疑問:NOACは現実世界では適正に使用されているのか?

方法;
・ベルギーの薬局グループで2013年4月〜10月まで処方されたダビガトランとリバーロキサバンの使用適切性を調査
・the Medication Appropriateness Indexの10項目のうち9項目で評価
・一次アウトカム;不適切処方、二次アウトカム:不適切の内容と有害事象の頻度、薬剤師の介入

結果:
1)対象69人

2)1項目を満たす例:16人23%

3)2項目以上を満たす例:18例26%

4)不適正の内容
・不適正な(薬剤)選択:28%
・誤った用量:26%
・非現実的な処方様式:26%

5)有害事象:51%に認められた:TIA8例含む

6)薬剤師の介入:48回:94%は医師に受け入れられた

結論:ダビガトランとリバーロキサバンの不適切使用はよくあり、有害事象につながる可能性あり。ヘルスケア従事者と患者への再教育必要。薬剤師とのコラボがことを好転させる。

### 「不適切」の中身が問題ですね。不適切な選択とは、腎機能、併用薬剤禁忌などでしょうか。全文入手しだいまた報告します。

それにしても有害事象51%って多いですね。皮下出血も含んでいるのでしょうか。薬剤師の役割は大変大事だと思います。
by dobashinaika | 2014-07-02 22:16 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

リバーロキサバンの大規模観察研究:CMRO誌

Real-world comparative effectiveness and safety of rivaroxaban and warfarin in nonvalvular atrial fibrillation patients
François Lalibertéet al


疑問:リバーロキサバンのリアル・ワールドでの成績はどうか?

方法:
・Symphony Health Solutions’ Patient Transactional Datasets (2011年5月〜2012年7月)を使用・180日間の観察期間の間に、2回心房細動と診断され(ICD9-CMによる)あらたにリバーロキサバンまたわワルファリンが投与されたひと
・CHADS2スコア1点以上
・1:4の比率でプロペンシティースコアマッチング
・アウトカム:大出血、頭蓋内出血、消化管出血、脳卒中/全身性塞栓症、静脈血栓塞栓症
・Coxハザードモデル

結果:
1)リバーロ群3654例、ワルファリン群14616例;患者背景の標準偏差は10%未満

2)大出血、脳卒中/全身性塞栓症で有意差なし

3)静脈血栓塞栓症:リバーロが少ない:ハザード比0.36(0.24-0.54,p<0.0001)

4)リバーロキサバンは、ワルファリンより非継続性が低かった:ハザード比0.66

限界:
クレームデータなので診断精度に欠ける。死亡率や検査データは利用できない。交絡因子の存在は残る。早期に使用しその後変わった可能性もある。

結論:リアル・ワールドでは、リバーロキサバンとワルファリンは、脳卒中/全身性塞栓症、大出血、頭蓋内出血、消化管出血の発現率に有意差なし。しかし、リバーロキサバンは静脈血栓塞栓症は有意に減らした。

### ちょっとマイナーな雑誌だったので、長らく気づかないでいた論文です。リバーロキサバンとしては、これほど大規模な観察研究の報告は初めてかと思います。

まず患者背景は、平均年齢は両群とも73歳台、平均CHADS2スコアは1.1〜1.2点。平均HAS-BLEDスコアは1.9点。
継続性なしの定義は、他の補充なしに処方薬を飲みきったあと60日以上の開きがある場合と定義されています

ROCET-AF試験との違いは、頭蓋内出血と消化管出血に差が見られなかったことですが、追跡期間が短い、診断がICDコードのみで行っている、交絡因子が完全に払拭できないなど、様々な因子が絡んでいるものと思われます。
また95%CIが幅広いのでNが少ない可能性がありますが、イベントの実数が記されていないので、ぜひ知りたいところです。

リバーロキサバンの強みである忍容性はやはり良かったようで、この定義でいうところの継続性が保たれていたのはリバーロ群で81.5%、ワルファリン群で68.3%(6ヶ月)でした。同様の調査をダビガトランでしたところでは、ダビガトラン71.8%(この時ワルファリンは53.3%)とのことです。

CHADS2スコア1点を多く含む集団でも、リバーロキサバンはワーファリンと同等の有効性、安全性が示されたことは意義深いとも思いますが、細かいところをより知りたいですね。
by dobashinaika | 2014-06-24 00:16 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)

NOAC(非ビタミンK阻害経口抗凝固薬)は現実世界でも有効か?(1):T/H誌

NOACにおける大規模臨床試験と現実世界とのギャップについて、先月の日本循環器学会でお話させていただきましたが、Thrombosis and Haemostasisの2月27日付オンライン版に、全く同様の内容を扱った総説がでておりました。

私、この総説には気づかず、発表しておりました。これ読んでいたら、もっと違った発表になっていたかもしれません(笑)。

Gaps in translation from trials to practice: Non-vitamin K antagonist oral anticoagulants (NOACs) for stroke prevention in atrial fibrillation
http://dx.doi.org/10.1160/TH13-12-1032
E. M. Hylek et al



悔しいので、かいつまんで訳します。膨大なので1日1〜2章ずつで。きょうは頭蓋内出血と消化管出血から

【疑問】ランダム化試験(RCT)と同様に、NOACは頭蓋内出血を減らせるのだろうか?

・頭蓋内出血は各種因子に修飾される:微小血管障害、微小出血、血圧、抗血小板薬併用、外傷
・微小血管障害、微小出血は高齢者に多いが、RCTの参加者の平均年齢は約71歳→なので超高齢者への効果は不明
・こうした患者は認知症を合併するため、こうした患者層(高齢で認知症あり)をRCT(の患者層)が代表しているかは不明

・各RCTの血圧管理は良好(各中央値):RELY:131/77, ROCKET-AF 130/80, ARISTOTLE 130/82
・デンマークのコホート研究(血圧研究):140/90未満が33.2%しかいなかった
・the Copenhagen City Heart Studyでは26%
・RCTでは管理不良な高血圧患者は除外

・アスピリンは頭蓋内出血をワルファリン単独使用の2.4倍増化させる
・アスピリン併用率:RELY40%、ENGAGE-AF 29%だが心筋梗塞の既往は各17%、12%
・アスピリンの適応が適切だったのか疑問がわく
・75歳以上の心房細動患者の、虚血一次予防または安定狭心症にたいするアスピリンの効果は近年疑問視されている
・頭蓋内出血を減らすにはこうしたサブグループへの二者あるいは三者併用は考慮すべき。

【疑問】NOACは現実世界において、消化管出血をRCTより増やすのか?そのリスクを減らせる介入はあるのか?

・ダビガトラン150、リバーロキサバン、エドキサバンは消化管出血をワルファリンよりも増やした
・アピキサバンはワルファリンと同様
・頭蓋外出血の30日死亡率(5.1%)は頭蓋内出血(48.6%)に比べ低値だが、消化管出血はコストと死亡率に明らかに関与
・ワルファリンによる消化管出血の85%が入院する
・より重要なのは、消化管出血により抗凝固療法が中断され、そのことが死亡率増加につながる

・加齢により消化管の性状は傷害が受けやすいようになる
・確たる理由がない限り、高齢者でのアスピリンやNSAIDsの使用は避けるべき
・無症候性症例でPPIの効果は不確定
・消化性潰瘍既往者はヘリコバクター・ピロリ検査を施行しておくべき(対費用効果は不明)

・消化管出血減少の大きな妨げは、出血部位特定がされないこと
・出血時の休薬期間に関しても不確定
・各薬剤ごとに、出血部位の特異性が明確で無いので、消化管出血減少を目的とした薬剤選択ができるかどうか疑問
・鉄欠乏性貧血を診断し、消化管の精査を行うことが大事

### 年齢、血圧、アスピリン併用、消化管出血など、RCTと現実世界と異なることが丁寧に示されています。
特に高齢者では、不要なアスピリン、NSAIDsの併用を避け、血圧をよく管理し、消化管出血の既往はピロリ菌に注目せよ、という実践的なrecommendationとして捉えたい総説ですね。

私の拙い発表は以下のサイトを参照ください。
http://att.ebm-library.jp/conferences/2014/jcs/02.html
by dobashinaika | 2014-04-22 19:49 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

大規模臨床試験とリアルワールドのギャップ(再論)

抗血栓療法トライアルデータベースというサイトの第78回日本循環器学会(JCS2014)レポートで、私がラウンドテーブルディスカッションで話した内容が紹介されています。

「大規模臨床試験とリアルワールドのギャップ」という演題でしたが、よくまとめていただいたので、ご紹介いたします。

http://att.ebm-library.jp/conferences/2014/jcs/02.html

大規模臨床試験の世界(トライアルワールド)とリアルワールドの世界の本質的な差異は何かとつらつら考えるに、対象の範囲やカオス性ではなくて、トライアルワールドの中では、患者も医師も意思決定をしなくても良いのに対し、リアルワールドでは意思決定を常に強いられるということかもしれないという気がします。

この点について、哲学的論考(?)を準備中です(笑)。折を見てまた取り扱います。
by dobashinaika | 2014-04-14 23:30 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

大規模臨床試験とリアルワールドのはざま:一口にリアル・ワールドと言うが。。

3日間の日本循環器学会に参加してまいりました。
今回は2日目に発表する機会を与えていただいたこともあり、詳しく見聞録を書く余裕がありませんでした。

その発表ですが「大規模臨床試験とリアルワールドのはざま」というお題を頂いた時点で危惧していたのですが、
とても15分では扱えない壮大なテーマでした。
当初作成したスライドが50枚以上になってしまい、それでも半分に減らすのが精一杯でした。

ただし、スライドをまとめていく中で、かなりいろいろなことを学習したように思います。
RCTはその内的妥当性を保つために選択基準、除外基準を設けるわけですが、これがリアル・ワールドとの差異を生む、いわゆる選択バイアスが介在するわけです。この選択バイアスが少ないほど、RCTの真実がリアル・ワールドの真実に近づくことができる。つまり外的妥当性が担保されるということになります。

ここまで疫学の教科書に載っている基本事項ですね。

実際、NOACのRCTではCHADS2スコア0または1点以下、超高齢者、高度腎機能障害、人工弁、僧帽弁狭窄その他日常よく遭遇するケースは含まれないまたは非常に少ないです。のみならず、RCT対象者は、医学の試験に協力的で健康意識の高い、アドヒアランスも低くない集団であることが一般的です。

ということで、実際の通院患者の50〜60%の人しか選択基準、除外基準にマッチしていないということになるわけです。

このギャップを埋めるのが観察研究なわけですが、現在までにダビガトランでいくつかの登録研究などが報告され、RE-LYとは異なる結果が認められていたりします。ただしまだ追跡期間が少なく交絡因子も多く、RCTへとフィードバックされるような情報を提示するには至っていないようです。

さらに、通常、予期せぬ副作用、極めてまれな副作用に関しての検出力はRCTには要求されておりませんので、幸い今までのところPMSその他でそうした「害」は認められてはいませんが、だからといってたかだか最高で3年程度のキャリアでは、私自身は50年選手のワルファリンと同等の信頼を置くことはまだできないのです(今更?と言われそうですが)。

で、通常RCT-リアル・ワールド間のギャップは観察研究の積み重ねで埋めていきましょう、で終わりになるわけですが、抗凝固薬の場合これで終わりというわけに行きません。もう一つのリアル・ワールド、つまり「抗凝固療法の適応があるにもかかわらず処方されていない患者さん」が大多数存在するからです。

FUSHIMI AF RegistryではCHADS2スコア、2点以上でも50%の処方率であることはよく知られていますね。ガイドラインであれほど2点以上、1点以上といわれていても、リアルワールドではせいぜい50%の処方率。なぜか?患者さんも医療者も出血を恐れているからです。それと表裏一体のことですが、高齢者にはいくらCHADS2スコア高点でも躊躇するからです。「85歳、高血圧、糖尿病、心不全、認知症あり、転倒の既往あり」の人にCHADS2スコア4点だからはいNOAC飲みましょうとはいかない、という話ですね。

そこのギャプ、いわゆるアンダーユーズのギャップをどうするかーーーこれは今のところソリューションなきアポリア(難題)ですねー。
比較的若いが、CHADS2スコアは2点以上、というどまんなか症例へのアンダーユーズに関しては、医療者への啓蒙で事足りるかもしれませんが、高齢者へのアンダーユーズをどうするか、というのは難しいですね。

というより、これはアンダーユーズと言っていいのかという地点から考え直す必要もあります。がん患者にCHADS2スコアの適応が難しいという総説を紹介しましたが、同様に超高齢者にCHADS2スコアをそのまま適応することには、いま一度考え直す必要があるのかもしれません。

さて高齢者アンダーユーズ(とひとまずは言っておきます)の解決策のひとつは、患者さん、家族とのリスクコミュニケーションを密にして、INRに十分注意し、アドヒアランス、転倒に留意しながらワルファリンを使っていくという方法があります。
もう一つは、例えばアピキサバンやその他NOACのリアル・ワールドの経験知の蓄積を待つということがあります。
更にもう一つは、「抗凝固薬はのまない」という合意形成を患者さん、患者家族と医療者で行うという選択肢です。

どの解決策にしてもまだ発展途上または非常に骨が折れる作業ですね。このギャップというのはそのまま「患者さんと医療者とのギャップ」でもあるし、「理性と恐怖心との心の隙間」かもしれません。

そしてさらに、その外側のリアル・ワールドまで思いを馳せる必要があるかもしれません。
「心房細動があるのに無症候性のひと、または症状があるのに医療機関に来ないひと」です。ここまで範囲を広げればリアルワールドとはイコール「地球上のひと全員」ということになります。ここまで想定すると、時々最近もブログでで取り上げている「隠れ心房細動」探し=心房細動のスクリーニングをどうするかという問題まで話題を広げねばなりません。

いろんな論文、いろんな場所で「リアルワールド、リアルワールド」っていわれますが、最近食傷気味な感じもあったのですが、「リアルワールド」はこのように特に抗凝固療法の領域では、重層的なひろがりをもっており、想定する概念によってその対象となるpopulationがかわり、浮かび上がる問題も違うわけです。今回まとめてみて、そうしたことにきづきました。(Fretcherの臨床疫学の教科書には"All patients with the condition of interest"と既に書いてありますね)

えー、それで実はさらにもう一つの、リアルワールドを考えなければならないわけですが、何かというと、目の前の一人の患者さんですね。
”The Patient's World" 

ということで、ここまで論じないとこのギャップを論じたことにならないということになり、とても15分ではお伝えできなかったのでちょっと補足してみました。

時期を見て当日のスライドもご紹介したいと思います。
by dobashinaika | 2014-03-23 22:42 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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