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心臓病学2018〜この1年〜心房細動,心房細動アブレーション編:EHJ誌より


EHJのThe year in cardiology 2018: arrhythmias and cardiac devicesを読みます。
2018年に出版された心房細動関連論文からトピックとなったもののまとめです。
今回は心房細動,心房細動アブレーション編。5つの重要試験が紹介されています。

P:心房細動3013例中クライテリアに当てはまる363例:心不全(LVEF35%以下、ICDまたはCRT装着)、発作性持続性問わず
E:カテーテルアブレーション
C:従来治療
O:一次エンドポイント:全死亡、心不全増悪
結果:
1)一次エンドポイント=アブレーション群で38%減少(HR0.62. 95%CI0.43-0.87;P=0.007)
2)アブ群で心不全増悪減少(HR 0.56, 95% CI 0.37–0.83; P = 0.004)
3)アブ群で全死亡減少(HR 0.53, 95% CI 0.32–0.86; P = 0.011)
4)アブ群でLVEFが7%改善(12ヶ月後)
5)心房細動発作のない時間はアブ群が2倍(5年)
6)アブ群の1.7%で心嚢液貯留

【CAVANA試験(学会発表)】:この年最も待ち望まれていた試験
P:65歳以上または64歳未満で1つ以上の危険因子を持つ心房細動患者
E:カテーテルアブレーション
C:薬物治療
O:一次エンドポイント:死亡、重篤な脳卒中、重篤な出血、心停止
結果:
1)平均67.5歳。発作性43%、持続性47%、長期持続性10%
2)一次エンドポイント:両群間に有意差なし(the pre-specified intention to treat analysi)(8% for ablation vs. 9.2% for drugs, P = NS)
3)全死亡:有意差なし(5.2 vs. 6.1% respectively, P = NS)
4)死亡または心血管系の入院:アブ群で低下 (51.7% vs. 58.1%, P = 0.001)
5)アブレーションは心房細動を47%減らし、アブ群の60%は心房細動なしとなった
6)副作用:アブ群9% VS. 薬物群4%

  • 結局のところこの試験はネガティヴに終わった。
  • ITT解析ではクロスオーバーが多かった(薬物群の27.5%はアブレーションを受け、アブ群の9.2%はアブレーションを受けず)。
  • 何れにしてもカテーテルアブレーションの価値を否定するものではない。
  • 2017年の専門家提言ではESC,ACCのガイドライン同様、カテーテルアブレーションはQOL改善のための第一選択であると明言されている。
  • CASTLE-AFもCAVANAもこれらのガイドランを支持するものである。
  • しかしアブレーションが全死亡や重篤な脳卒中、重篤な出血、心停止を抑制するというコンセプトは証明されていない。
  • ただ、EAST試験(最終的アウトカムを扱う)待ちではあっても、心房細動が心血管イベントの「厄介なバイスタンダー」というより,より重要な役割を担っていることを示すエビデンスが徐々に蓄積されつつある。
  • 結果としてカテーテルアブレーションが単なる症状緩和の手段という以上の可能性が提示されるかもしれない。

・2005年ー2014年。初回アブレーション例5420人
・1年間再発率:2005-2006年=45%、2013-2014年=31%
・再発予測因子:2年以上の持続、女性、高血圧、アブ前1年以内の除細動
・この結果は驚くに値しない、この論文は「リアルワールド」の知見と(アブのアウトカムの)改善傾向を示している。

・アブレーション後3ヶ月の抗不整脈薬を止めるべきか、継続すべきか
・継続群で再発が有意に少ない:2.7% vs. 16.9%
・心房細動の疫学病理学的意義は複雑で、アブレーション自体はそれらすべての機序をコントロールできないことを示している。

【RACE3試験】 ブログ記事はこちら
P:軽症/中等症心不全合併早期持続性心房細動。リズム治療は継続
E:背景への介入:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、スタチン、ACE阻害薬、心臓リハ(身体活動、ダイエット、カウンセリング)
C:従来治療
O:1年後の7日間ホルター心電図で洞調律維持
結果:介入群75% vs. 従来群63%, P=0.042

  • この試験は心房細動患者におけるリスク因子介入の重要性を世界的に呼びかけた点で重要。

### いずれも今後の心房細動治療を方向付けるトライアルです。
アブレーションは重症心不全の予後改善に寄与し、未だ不明な点はあるが心房細動全体の予後にも好影響はありそう。背景因子への介入が基本的に大事
というのがトレンドのようです。

次回は抗凝固療法について読みます。

$$$ iPhoneで撮った部分日食。あまり綺麗に撮れず
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by dobashinaika | 2019-01-06 12:38 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

心房細動が新たに見つかった人は,心血管死のリスクが相対的に高い:GARFIELD-AFレジストリ


疑問:心房細動診断後12ヶ月における早期のイベントリスクはなにか?

方法:
・GARFIEFLD-AFレジストリーの解析
・心房細動の診断後最初の12ヶ月における死亡,脳卒中/全身性塞栓症,大出血のリスクを分析
・52014人,前向き解析,2010−2016年

結果:
1)死亡:2140人(4.3/100人年)。うち13.5%(6.8/100人年)は最初の1ヶ月

2)脳卒中/全身性塞栓症:1.3%。2.3%は最初の1ヶ月

3)大出血:0,8%。1.5%は最初の1ヶ月

4)最初の死亡率上昇に最も寄与しているのは心血管死:

5)早期死亡原因;心不全,突然/目撃者のない死亡,急性冠症候群,感染/敗血症,呼吸不全

6)年齢,心不全,以前の脳卒中,肝硬変の既往,血管疾患,中〜高度の腎臓病,糖尿病,北米やラテンアメリカ在住は早期死亡の高リスク

7)ヨーロッパ,アジア在住は低リスクの指標

結論:新規に診断された心房細動においては,診断後の早期死亡,特に心血管死のリスクが高い。これに対しては包括的ケアが重要であり,臨床家は早期死亡の警告サインを見逃してはならない

### 心房細動と診断されてから1年以内に亡くなる人は4.3%で,そのうちの多くが心不全や突然死,急性冠症候群とのことです。結構多いですね。

心房細動のある方に心不全が新たに合併すると予後が悪くなることは,よく知られています。

心房細動が見つかったら,最低限心機能のチェック,冠危険因子のチェックをして,その後も早期サインを見逃さない。そうしたいものです。

$$$ 今日のニャンコ
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by dobashinaika | 2018-12-13 07:12 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

28万人規模のNOAC-ワルファリン,NOAC間の比較研究(The ARISTOPHANES Study):Stroke誌より


目的:複数のデータソースを用いた多数例でのNVAF抗凝固薬使用患者における有効性安全性の検討

方法:
・後ろ向き観察研究,2013〜2015年の間にアピキサバン,ダビガトラン,リバーロキサバン,ワルファリンを開始したNVAF患者
・メディケア,メディケイド,4つの米国の商業データベース
・NOACーワルファリン,NOAC-NOAC間でプロペンティースコアマッチ

結果:
1)全285,292人:アピーワル57,929人,ダビーワル26,838人,リバーローワル83,007人,アピーダビ27096人,アピーリバーロ62,619人,ダビーリバーロ27,538人

2)脳卒中/全身性塞栓症ハザード比(対ワルファリン):
アピ:0.61; 95% CI, 0.54–0.69
ダビ:0.80; 95% CI, 0.68–0.94
リバーロ:0.75; 95% CI, 0.69–0.82

3)大出血ハザード比(対ワルファリン):
アピ:0.58; 95% CI, 0.54–0.62
ダビ:0.73; 95% CI, 0.66–0.81
リバーロ:1.07; 95% CI, 1.02–1.13

4)NOAC間の比較結果は様々
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結論:このNOACとワルファリンに関する大規模観察研究では,脳卒中/全身性塞栓症はNOAC優位,大出血はNOACごとに異なっていた。この結果はヘルスケアプロバイダーとNVAF患者間のshared decision-makingの助けとなる。

Funding:Pfizer Inc and Bristol-Myers Squibb.

### 米国の28万5千人という超大規模観察研究です。用量は3つのNOACとも標準用量:低用量=7:3〜8:2でした。

NOAC間比較では,脳卒中/全身性塞栓症,大出血ともアピキサバンがダビガトラン,リバーロキサバンより少なく,ダビvsリバーロでは大出血はダビが少なく,脳卒中/全身性塞栓症は同等でした。

リバーロキサバンの大出血は,消化管出血が多かったとのことです。考察で筆者らは,リバーロキサバンは生物学的利用率が高く食品の影響を受け易いが,必ずも食後適切に服用されていないことが指摘されていました。

アピ,リバーロは日本では低用量使用(ダビも110が多い)が多いようですので,必ずしもこの結果を日本に外挿できないと思われます。この試験でNOAC間の優劣をつけるのは軽率ですが,ここまでの結果が出るのであればアピvsリバーロのガチンコRCTをやって欲しい気もします。

ARISTOPHANESは古代ギリシャの喜劇作家ですね。世界史で覚えた気がします。Aで始まるギリシャ偉人がよく用いられますね。FundingがAピキサバンの製薬企業であることは押さえるべきポイント。

$$$ この季節,東北新幹線で大宮に差し掛かるときれいに富士山が見えます。かなり大きく見えてびっくりしますね。
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by dobashinaika | 2018-12-04 06:21 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

高齢者心房細動合併慢性腎臓病患者への抗凝固薬投与は,虚血性脳卒中と脳出血の増加,死亡率の減少に関係する:BMJ誌


P:英国の110のGP施設におけるリサーチデータベース。65歳以上,新規発症心房細動,eGFR<50 mL/min/1.73m2。既存の心房細動,120以上前からの抗凝固薬内服中,透析中,腎移植後を除く

E:心房細動診断60日以内の抗凝固薬投与

C:抗凝固薬なし

O:虚血性脳卒中,脳出血,消化管出血,全死亡

T:プロペンシティースコアマッチ,一般住民ベース,後ろ向きコホート

結果:
1)6977例。抗凝固薬服薬群2434例,対照群4534例。平均追跡506日

2)服薬群:虚血性脳卒中4.6,脳出血1.2(100人年,補正前)

3)対照群:虚血性脳卒中1.5,脳出血0.4(100人年,補正前)

4)服薬群の対対照群ハザード比:虚血性脳卒中2.60(95%CI2.00〜3.38),脳出血2.42(95%CI1.44〜4.05),全死亡0.82(95%CI0.74〜0.91)
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結論:高齢の心房細動合併慢性腎臓病例では,抗凝固薬が虚血性脳卒中及び脳出血の増加に関係した。しかし逆説的に全死亡率は減少させた。このような患者では抗凝固薬の新規使用には慎重であるべき,こうした患者対象のランダム化試験が必要

### 大変衝撃的な結果です。これまでも腎機能低下例,特に末期腎不全では抗凝固薬で返って脳卒中が増加するというデータは有りました。しかしここまで大規模に抗凝固薬の有効性を否定するデータは初めてかと思われます。出血ならまだしも虚血性脳卒中も2倍以上増やすとのことですので。

理由について筆者らは,高齢者が多く,途中で投薬中止となった例も多く,そうした例も中止後160日のアウトカムは組み入れられていたこと,虚血性脳卒中の診断は曖昧だったことを挙げています。またワルファリンについては従来から血管の石灰化を助長する作用が指摘されており,慢性腎臓病では特にそれが顕著となるとの推察がなされています。

一方死亡については,致命的な脳卒中は少なく,心筋梗塞などは抗凝固薬で減ったためではと考察されています。

平均年齢81〜83歳,平均eGFR37-38とかなりのハイリスクであることがポイントと思われます。

観察研究とはいえ,GP発信の現場視点の研究です。高齢者CKDではこれまで以上に抗凝固薬は慎重に,という教訓として読みたいと思います。

それにしてもGPレベルでこれだけのコホートを組み,度肝を抜く用なデータを出してくる。英国恐るべし。はがゆし。

$$$ ブリューゲル展。花は語りかけ,人々は躍動していました。美術展ですが撮影OKでした。
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by dobashinaika | 2018-02-20 23:38 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

アピキサバンのリアルワールドデータ,メタ解析:Stroke誌


目的:リアルワールドでのアピキサバンと他のOACとの比較

方法:
・メタ解析
・3ヶ月以上使用,100例以上
・ワルファリン,ダビガトラン,リバーロキサバンとの比較研究対象

結果:
1)16研究,アピキサバン使用170814例
2)米国6,デンマーク4,スウェーデン2,英国,日本,トルコ,ノルウェイ各1
3)2015〜2017年発表論文。デンマーク,トルコ,ノルウェイは全国登録,スウェーデンの1研究は地域登録,米国の研究はすべて保険データベース。ほかは1つの施設登録研究
4)平均年齢は70〜76歳。1つの研究は68.5歳,1つは83.9歳
5)アピキサバンvs.ワルファリン
脳卒中/全身性塞栓症:同等だが低用量ではアピ>ワルファリン。標準用量ではアピ<ワルファリン
出血:全ての出血でアピ<ワルファリン
全死亡:統計的に異質性が高く算出不可能
6)アピキサバンvs.ダビガトラン
脳卒中/全身性塞栓症:アピ=ダビ。低用量アピ<ダビ
出血:全ての出血でアピ<ダビ
全死亡;算定不可能
7)アピキサバンvs.リバーロキサバン
脳卒中/全身性塞栓症:アピ>リバーロ
出血:全ての出血で低用量アピ<リバーロ
出血性脳卒中:アピ=リバーロ
全死亡:標準量アピ<リバーロ

注:「アピ<ワルファリン」はアピのほうが発症率が低いという意味です。

結論:リアルワールドデータのメタ解析では,脳卒中/全身性塞栓症はアピキサバンとワルファリン,ダビガトランは同等。リバーロキサバンはより有効。しかし出血ではアピキサバンはワルファリン,ダビガトラン,リバーロキサバンより少ない。低用量使用では良くない結果だが,対象患者が高齢で虚弱であり交絡因子が多い。

### これだとアピキサバン良さそうと思いがちですが,まあ様々なタイプのリアルワールドデータのメタ解析ですので,決めつけはできません。出血が少ない。低用量使用ではワルファリンと有効性同じ,くらいを頭にとどめておきます。

$$$ 一昨日は今シーズン初雪かき。でもすぐ溶けました。
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by dobashinaika | 2017-12-29 22:03 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

アジアの大規模リアルワールドデータにおけるNOACの有効性と安全性は?:Stroke誌


疑問:アジア人のリアルワールドデータでは,NOAC (対ワルファリン)の有効性安全性はどうなのか?

方法:
・韓国の国民健康保険データベース
・アウトカム:虚血性脳卒中,頭蓋内出血,全死亡
・NOAC(ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン)11611例,ワルファリン23222例(プロペンシティースコアマッチ),NVAF,CHA2DS2-VAScスコア2点以上

結果:
1)虚血性脳卒中:NOAC=ワルファリン,頭蓋内出血:NOAC<ワルファリン,全死亡:NOAC<ワルファリン

2)虚血性脳卒中,頭蓋内出血の対ワルファリン相対危険:3つのNOACで同じ

3)全死亡及びネットクリニカルベネフィット(上記3アウトカム合計):ダビガトランとアピキサバンでワルファリンより良い。リバーロキサバンとワルファリンは同等

結論:アジアにおける高リスクの心房細動患者において,3つのNOACはワルファリンに比べ虚血性脳卒中じは同等で,頭蓋内出血は少なかった。全死亡は,ダビガトラン,アピキサバンがワルファリンとより少なかった。

### アジア人のRWDでは,かなり大規模なデータです。概ねこれまでのRWDやNOACと同様の結果かと思われます。高齢者などではどうだったのかも知りたいところです。

$$$ 前回のブログで見えていた黒猫チャン
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by dobashinaika | 2017-10-23 22:01 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

英国のプライマリケアセッティングではNOACはワルファリンより消化管出血多い。虚血性脳卒中は同等:BJCP誌


疑問;プライマリ・ケアにおいて抗凝固薬の大出血リスクはどの程度か?

方法:
・英国のプライマリ・ケアセッティンングでの心房細動コホート:UK Clinical Practice Research Datalink (March 2008-October 2014)
・NOAC、VKA、アスピリンの新規処方患者
・処方から脳卒中または大出血までを追跡

結果:
1)31497例

2)大出血:NOACの対VKAハザード比2.07 (95% CI 1.27-3.38)

3)主に消化管出血はリスク増の主因;ハザード比2.63(95% CI 1.50-4.62)

4)出血は女性に多い:ハザード比3.14 (95% CI 1.76-5.60)

5)アスピリンの出血リスクはVKAと同程度

6)虚血性脳卒中:NOACとVKAは同程度:ハザード比1.22 (95% CI 0.67-2.19)

7)VKAはアスピリンより効果大:ハザード比2.18 (95% CI 1.83-2.59

結論:NOACは高い消化管出血リスク(特に女性)に関連。このタイプの出血をきたしやすい患者にはNOAC使用は注意。NOACとVKAは脳卒中予防においては同程度。アスピリンは心房細動の脳卒中予防には効果なし

### やや驚きの結果(ハザード比が)です。
ただ,これまでのリアルワールドエビデンスを眺めますと,有効性(脳卒中/全身性塞栓症あるいは虚血性脳卒中)はNOAC=VKAとするデータが多いのですね。出血も頭蓋内出血こそNOACは少ないですが,消化管出血は薬剤によってはNOACが多いというデータは数多くあるのです。これなども

ややマイナー雑誌なので全文入手ができていません。患者プロフィールが最も問題なので至急確認してみます。

やはりNOACを選ぶときは消化管出血はひとつのポイントになりそうです。既往のある例,NSAIDを使う例,で女性などが揃ったら消化管出血のエビデンスの少ないNOACまたはワルファリンを考えます。

$$$ うちの庭に迷い込んだハクビシン(見えますか)。
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by dobashinaika | 2017-03-14 23:18 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

NOACのリアルワールドデータはこう読む:JAMA総説


NOAC観察研究に関する総説。Lip先生一派から

・RCTでは限られた集団対象のため,観察研究が行われている
・しかし観察研究は薬剤の適応基準,用量,薬剤選択,アドヒアランスに問題あり
・RCTでは同定できない潜在的な安全性を明らかにできる可能性あり

<観察研究の種類>
1.職能的,社会的に企画された登録研究(EORP,NCDR PINNACLE),企業ファンド登録(GARFIELD,ORBIT-AF)
・前向き,予めエンドポイント設定,厳密なデータ管理
・患者は限定された分野(循環器プラクティスなど),ICや処方管理がアドヒアランスに影響与える
・ミッシングデータあり

2.ヘルスケアや医療保険ベースの全国的登録研究
・選択,除外基準がなく選択バイアスは最小限
・後ろ向き研究であり,アウトカムの定義が不正確,データミッシング,INRなど測定されない,OCTがまじるなどの欠点
・”健康な”OAC服用者を減らすため,対象はほとんど新規投与患者に限られる
・交絡バイアスを減らすため,多変量解析,プロペンシティースコアマッチなどが施行される
・PSマッチングは好まれるが,Nが小さいと大量の不適合者が出る
・追跡期間は90日から2年に渡る

<観察研究での出血率>
・アピキサバン:2.29−2.38%/年(ARISTOTOLEは2.13%)
・ダビガトラン:2.04-3.60% (RELYは150mgx2;3.11% ,110mgx2:2.17%)
・リバーロキサバン:2.90−6.0%(ROCKET-AFは3.60%)
・全体としてワルファリンより大出血は少ないか同等
ワルファリンの大出血率;対ダビガトランでは3.58−4.46%,対リバーロキサバン3.40−5.09%
・NOAC同士のペアでの出血率では最低がアピキサバン,中位がダビガトラン,高いのがリバーロキサバン
・全NOACで頭蓋内出血はワルファリンより少ない(0.22%-0.49% vs 0.32%-1.06%)
・消化管出血はリバーロキサバンがワルファリンより高い(3.26% vs 2.53%),ダビガトラン,アピキサバンはワルファリンと同じ

<有効性(脳卒中/全身性塞栓症,死亡率)>
・リバーロキサバン,アピキサバンは低下のデータあり(1.33% vs 1.55% for apixaban; 2.89% vs 3.25% for 20 mg of rivaroxaban; and 4.60% vs 3.90% for 15 mg of rivaroxaban)
・死亡率はアピキサバン,ダビガトランで低下。リバーロキサバンで同等または上昇 (7.02% vs 7.41% to 25.7% vs 8.8%)

<処方傾向>
・研究間で概ね同じ
・ワルファリンは高齢で合併症の多い例(Deyo-Charlson Comorbidity Score,CHA2DS-VAScスコア高リスク)に出される
・ダビガトラン150x2は比較的若い人に出される。リバーロキサバンは合併症の多い人,アピキサバンは出血リスクの高い人に出される
・アスピリン併用はNOACよるワルファリンで良く行われる

<低用量処方>
・安全性の観点からよく見られる
・ダビガトランエドキサバンは低用量設定がRCTでなされていて,有効性より安全性の改善に関係していいる
・低用量処方はRCTより頻繁に行われているが,脳卒中も大出血も低用量のほうが多い。
・小レは低用量処方例がより高リスクのためなのと
・不適切に低用量にしているおそれがあるためと思われる

<服薬アドヒアランス>
・おおむねNOACのほうがワルファリンより良い(特にリスク因子2点以上)
・研究によっては,ダビガトラン(67.2%)はリバーロキサバン(72,2%),アピキサバン(69.5%)より落ちる
・後ろ向き研究はアドヒアランスを過剰に多く評価しやすい
追跡期間が12ヶ月以下だから
リフィルからのデータなので一時的な中断か永続的なのかわからなくなる

<まとめ>
・観察研究は因果関係を特定することができない
・NOAC間の直接比較はすべきでない
・コホート(の内容),追跡期間,用量,試験の種類,エンドポイントの定義,補正方法などを考えて解釈すること

・様々な制約はあるにしても,観察研究のデータはPCTの結果の証左となっており,NOACが日常臨床でワルファリンに変わりえるものであることが示されている
・NOACかワルファリンかの選択の際は,RCT,観察研究両者でのリスクベネフィットをレビューしてのディスカッションがなされるべき

### もっとまとめると
1)観察研究には,公的機関や製薬企業により計画的に行われるものと,保険データベースなどからレトロスペクティブに行われるものがあり
2)大出血はワルファリンと同等か少ない
3)リバーロキサバンは他に比べてやや出血が多い
3)NOACは頭蓋内出血は少ないが,消化管出血は同等か多い
4)脳卒中,死亡もおおむね同等か少なめ(出血ほどはっきりしない)
5)NOAC はワルファリンより低リスク例に出される
6)RCTより低用量が好んで出される
7)服薬アドヒアランスはワルファリンより良い
こんなかんじですかね。

個人的にはRCT,観察研究で同じ傾向が出ていればどっぷり信用することにしています。
「NOACはワルファリンより出血,とくに頭蓋内出血は少ないが,消化管出血は同等か多いかもしれない」
とだけは言えそうです。

読み方としては
1)企業主導かどうか(医師主導とされていてもファンドが製薬会社のことが多い)→その場合バイアスやや大きいと考える。またリクルート医療機関をよく見る
2)保険などベースの登録研究かどうか→その場合,アウトカムの定義,補正法,ミッシングデータなどを見る
3)その次に患者プロファイル,薬の用量,追跡期間を見る
と言った感じです。

$$$ ネコちゃん探しのポスターの脇にどばし健康カフェの案内。町内の掲示板です。
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by dobashinaika | 2017-02-19 18:19 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

低用量NOACとワルファリンとで有効性,安全性はあまり変わらない:デンマーク登録研究:BMJ


疑問;低用量NOACとワルファリンはどちらが良いのか?

P:抗凝固薬新規投与のNVAF,デンマークの国民登録55644例

E:NOAC低用量:アピキサバン2.5mgx2,ダビガトラン110mgx2,リバーロキサバン15gx1

C:ワルファリン(プロペンティースコアマッチ)

O:有効性「虚血性脳卒中/全身性塞栓症」,安全性「受診を要する出血」

結果;
1)リバーロキサバン群3,476例(平均年齢77.9歳),アピキサバン群低4,400例(平均年齢83.9歳),ダビガトラン群8,875例(平均年齢79.9歳),ワルファリン群38,893例(71.0歳)

2)平均CHA2DS2-VAScスコア:各3.6,4.3,3.8,3.0点

3)虚血性脳卒中/全身性塞栓症発症率/年:アピキサバン群4.7%,ワルファリン群3.7%,リバーロキサバン群3.5%,ダビガトラン量群3.3%
ハザード比:アピキサバン群1.18, 95%CI 0.95-1.47,リバーロキサバン群:HR 0.89,95%CI 0.68-1.15,ダビガトラン群::HR 0.89,95%CI 0.77-1.02

4)出血;アピキサバン群とワルファリン群5.4%,リバーロキサバン群が5.8%,ダビガトラン群が4.3%
ハザード比:ダビガトラン群HR 0.80,95%CI 0.70-0.91,アピキサバン低群:HR 0.96,95%CI0.73-1.27,リバーロキサバン群:HR 1.06,95%CI 0.87-1.28)
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結論:アピキサバン2.5mgx2はワルファリンに比べ虚血性脳卒中/全身性塞栓症を増加させる傾向にあった。リバーロキサバンとダビガトランは減少傾向であった。出血はダビガトランで有意に低値だったが,アピキサバンとリバーロキサバンではワルファリンと同等であった。

### 対象はデンマークのNVAFで新規に抗凝固薬を処方された方,平均年齢がかなり違い,ワルファリン71歳に対し,ほかは77歳以上,アピキサバンに至っては83.9歳です。低用量だからと思われます。補正はされています。

低用量処方の場合,アピキサバンはやや脳卒中/全身性塞栓症が増える。出血はダビガトランでのみ減るということで,やや意外なデータでした。補正できていない因子があるのかもしれません。

以下のブログで取り上げた同じデンマークの大規模コホートの標準用量とで単純に発症率を比較すると,脳卒中/全身性塞栓症は2.8〜4.9%(標準量),3.5〜4.7%(低用量)と両者であまり発症率は変わりなしでしたが,出血は2.4〜5.3%(標準量),4.3〜5.4%(低用量)とむしろ低用量のほうが多い傾向でした。もちろん一概には比べられません。

筆者も触れていますが,アピキサバンはARISTOTLEのサブ解析で2.5mgx2処方群でもワルファリンより少ない傾向という結果でした。対象が違いますが,リアるワールドでは減量基準が守られていたのか気になるのと同時に,筆者は80歳以上の高齢者でも血中濃度50%(健常者データ)のドーズダウンが良いことなのかとに疑念を訴えています。

リバーロキサバンの日本人での低用量は10mgですので,日本人への一般化は難しいですが低用量にした場合,標準量とは多少違った結果が出ることは注意したいと思われます。

by dobashinaika | 2017-02-14 18:57 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

新規抗凝固薬投与15万例でのダビガトランvsリバーロキサバンvsワルファリンの結果は?:JACC誌


疑問;リアルワールドでのNOACの実力は?

P:抗凝固薬新規投与の心房細動。66歳以上。米国。メディケア

E/C;
・ダビガトラン150mg約22,000例,リバーロキサバン約23,000例,ワルファリン10万例
・プロペンシィテースコアマッチ

O:脳卒中,塞栓症,消化管出血,それ以外の大出血,心筋梗塞,心不全,上記疾患にかかるコスト

結果:統計学的に有意なもの
1)脳卒中,非消化管出血,心筋梗塞,心不全,入院:ワルファリン>ダビガトラン≧リバーロキサバン
2)塞栓症:ワルファリン=ダビガトラン,ワルファリン>リバーロキサバン,ダビガトラン=リバーロキサバン
3)消化管出血:リバーロキサバン>ワルファリン=ダビガトラン
4)入院コスト:ワルファリン>ダビガトラン=リバーロキバン
a0119856_18223016.png

結論:新規のダビガトラン,リバーロキサバン服用患者の入院コストはワルファリンより低い。主に脳卒中,非消化管出血,心不全の減少による

### 15万人の大規模コホート。このコホートではリバーロキサバンの消化管出血がやや多いようでしたが,入院コストは両NOACともワルファリンより低いとのことです。
ダビガトラン150mgとありますが,1日1回なのでしょうか。詳しく記載はありませんでした。
(はじめ,誤った解釈を書いてしまいました。すみません,訂正します)

これは新規投与例ですね。リアルワールドデータのときはPECOのうちP (patient)の対象にまず注目します。つぎにマッチングしているか,統計処理も一応押え,その後結果を読むようにしています。

$$$ これからも連携を大切にしていきたいと思います。
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by dobashinaika | 2017-02-01 18:30 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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