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ACCによる周術期の抗凝固療法に関する意思決定パスウェイ:ヘパリンブリッジの適応は超限定的

2017 ACC Expert Consensus Decision Pathway for Periprocedural Management of Anticoagulation in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation
A Report of the American College of Cardiology Clinical Expert Consensus Document Task Force
Journal of the American College of Cardiology DOI: 10.1016/j.jacc.2016.11.024

ACCから周術期の抗凝固療法に関するエキスパ−トコンセンサスがでています。かなり詳しくシェーマも充実しており,現時点での集大成的なレビューと思われます
とてもまとめきれませんので,ACCのメルマガでお勉強

1.ここでの意思決定パスウェイは経口抗凝固薬長期内服の非弁膜症性心房細動における周術期の抗凝固薬管理に関する意思決定の迅速で有用なツールとなる

2.抗凝固薬中止を考えるときは,ビタミンK阻害薬(長期半減期)かDOAC((短期半減期)か,患者の出血リスク,手技の出血リスク,追加の医療情報に気を配る

3.以下の手技(ペースメーカー, ICD植え込みなど)は低出血リスクであり,抗凝固薬は継続

4.患者出血リスクはHAS-BLEDスコアを評価する。それに加え最近3ヶ月以内の出血,血小板以上,INRの上昇(VKA),手術手技による出血の既往に留意する

5.患者に出血リスクがないか低リスク手技場合かつ患者出血リスクが高くないときは,VKAは中止してはならない

6.VKAを中止するときは,INR1.5-1.9の場合手技の3〜4日前,INR2.0-3.0の場合5日,3.0を超える場合少なくとも5日中止する。手技前24時間以内にINRを再チェック

7.ヘパリンブリッジを考えるのは次の2つのシナリオのときのみ
 1)VKA使用患者で年間10%以上の脳卒中/全身性塞栓症リスク(CHA2DS2-VAScスコア27^9点)を持つ,または3ヶ月以内の虚血性脳卒中
  2)VKA使用患者で特に出血リスクのない脳卒中/全身性塞栓症の既往(3ヶ月以上前)のある人

8.DOACを中止するときは,中止日数はクレアチニンクリアランスとその手技の出血リスクで決まる。標準的な表はこの意思決定プロセスに沿っている。ヘパリンブリッジはDOAC治療には適応なし(すみません。表は掲載していません)
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9.抗凝固薬再開時は,完全止血の確認をすべき。その後24時間以内にVKA治療再開と24〜72時間のヘパリンブリッジ(適応ありの場合。継続時間は出血リスクによる:筆者注:低出血リスクは24時間以内,高リスク例は48〜72時間ヘパリンブリッジ後)。DOACはもし患者が経口投与に耐えられないのでなければ,ヘパリンブリッジなしに24〜72時間前(出血リスクによる)に再開すべきではない(筆者注:高リスクでは24〜72時間経ってから,低リスクではその日のうちに)

10. DOACは機械弁患者に使用してなならない

### このレビューはアルゴリズムのシェーマが充実していますので,興味のある方は見てみてください。ただしアメリカさんらしく?いろんな場合を想定して盛り過ぎの感があり,ここまで書かなくてもわかるよ的な感じかもしれません。
ヘパリンブリッジは,VKAではかなり虚血性脳卒中の高リスクまたは既往歴のある人に限っており,NOACでは必要ないと言い切っているのが小気味よいです。
なお高出血リスクとはHAS-BLEDスコア3点以上のことかと思われます。

$$$ 仙台では恒例のどんと祭です。
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by dobashinaika | 2017-01-16 23:55 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

リバーロキサバン投与中の心房細動アブレーション周術期のイベント率はワルファリンと同じ(日本発):CJ誌

Efficacy and Safety of Rivaroxaban and Warfarin in the Perioperative Period of Catheter Ablation for Atrial Fibrillation – Outcome Analysis From a Prospective Multicenter Registry Study in Japan –
Circa J 2016; 80: 2296-2301


疑問:心房細動アブレーション周術期においてNOACはワルファリンより優れているのか

方法:
・日本の医療施設で,リバーロキサバンあるいはワルファリンを投与中に心房細動のカテーテルアブレーションを予定された2つの前向き登録を比較
・主要評価項目:アブレーション後30日以内の血栓塞栓症および大出血

結果:
1)リバーロキサバン1118例(平均65歳),ワルファリン204例(69歳):各42, 22施設

2)リバーロキサバン群:
・主要イベント数:7例0.6%(血栓塞栓症2,大出血5)
・小出血:27例2.4%
・非ヘパリンブリッジ時のイベント数はヘパリンブリッジ時より明らかに低い

3)ワルファリン群:
・主要イベント数3例1.5%(全例大出血)

4)両群間:補正後イベント率に有意差なし

結論:日本における心房細動アブレーション周術期の血栓塞栓症及び大出血率は,リバーロキサバン投与時とワルファリンとで同じである。

### 異なる登録研究を比較しているため,患者背景が異なります。ワルファリン群のほうが高齢,低体重,合併疾患多い,慢性多い,CHADS2スコアCHA2DS-VAScスコア高値となっています。補正後データが有るとはいえ,この点は注意。

イベント数が両群とも極小なので,主要評価項目の差はつかないと思われますが,少なくとも同じとなると,オンオフが簡単なNOACが良いようにも思われます。

ただ,オンオフ事にリスクがあると思われるワルファリンはリバーロキサバンと大差なかったということで,よりハイリスク例に投与されていることも考えると,逆にいえばやりワルファリン偉いということにもなるかもしれません(笑)。

ヘパリンブリッジの結果は興味深いです。非ブリッジ時のほうがイベントが少ないとのことですが,ほとんどが小出血で,ヘパリンブリッジをしなくても血栓塞栓症は1例しかありませんでした。筆者らも「心房細動アブレーション前のヘパリンブリッジは血栓塞栓症ハイリスク例以外は避けるべき」としています。

$$$ 毎朝散歩していますと,冬手袋が片方だけ(時に両方)落ちているのに遭遇します。名付けて「片手落ち」(放送禁止用語だったらごめんなさい)。今シーズン最初の片手落ちです。
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by dobashinaika | 2016-10-28 18:57 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

ケアネット連載「「周術期の抗凝固ブリッジは縮小の方向で」:更新いたしました。

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は「第52回 米国心臓協会 / 米国脳卒中協会の2015年心疾患 / 脳卒中研究 ベスト10
」と
第53回「周術期の抗凝固ブリッジは縮小の方向で」です。
(要無料登録)

特にヘパリンブリッジに関しては,広く臨床現場に影響を与えるペーパーです。
これだけ広く世界中で行われていて,しかも生命に直結する処置にもかかわらず。これまでエビデンスが一定しなかったというのも驚きですし,今,現実に行われていることが実は,逆効果かもしれないというのも,なんとも世界の不確実性を痛感させられる思いです。
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早い段階でのコンセンサス形成をぜひとも希望します・
by dobashinaika | 2016-03-26 21:58 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

周術期の抗凝固薬ブリッジは中止を:CircCVQO誌の論説

A Call to Reduce the Use of Bridging Anticoagulation
Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2016;9:00-00. DOI: 10.1161/CIRCOUTCOMES.115.002430

Circ Cardiovasc Qual Outcomesから周術期の抗凝固ブリッジの中止勧告がPerspectivenの形で出ています。
アブストラクトのみ

・最近いくつかの重要な研究において,周術期の抗凝固薬管理を考える上で大きな変化が起きている

・こうした変化はガイドライン(特に20012年のAmerican College of Chest Physicians Antithrombotic Guidelines, version 9)を突然時代遅れのもの,あるいは現品限りのものにした

・われわれは,ワルファリン服用中の90%の症例で周術期の抗凝固薬中止は必要ないと推定している

・通常でない環境下あるいは適切な評価がなされた患者は除く

DOAC中止も必要ないとのエビデンスが集積されている

・多くの潜在的に(ブリッジングによる)危険の多い患者の安全性が確保され,速やかな診療上の変化が求められる。

###少し補足すると,論旨としては
・いくつかの最近の研究で,周術期のヘパリンブリッジは,血栓塞栓症を減らさず,出血は増やすというデータが集積されている
・2012年のメタ解析
・ORBIT-AF Registry Study
・RE-LY Studyのサブ解析
・The BRIDGE Trial
・Kaiser Permanente VTE Study
・人工弁での幾つかの研究

・もともとCHADS2スコアなどは長期の血栓塞栓リスクの評価を目的としており,短期の抗凝固薬中止についてのリスク評価に適しているかどうかは不明

・周術期中止により2〜3%の血栓塞栓リスクを有する例のリスク評価が可能であれば良いが,そうした指標はない

・ヘパリン置換がそのリスクを減らすというエビデンスも,また無い

以下の様な例にのみブリッジが適応される考える
・過去抗凝固薬を中止または継続していて血栓塞栓症を生じた例
・過去3ヶ月以内の脳卒中/TIA
・1ヶ月以内の壁在血栓または左心耳血栓の確認
・僧帽弁の人工弁患者
・古いタイプの人工弁患者
・過去3ヶ月以内の静脈血栓塞栓症
・静脈血栓塞栓症または以下の過凝固状態:抗リン脂質抗体症候群,プロテインC,S欠損,アンチトロンビンIII欠損

もちろん日本人のデータには欠わけですが,かと言って無視する訳にはいかないトレンドになっているように思われます。次回の日本のガイドラインにどう反映されるかですね,だたし日本のガイドラインの改訂は3年後と思われますが。すごく遠い。。。

$$$当院の待合室のお飾りです。
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by dobashinaika | 2016-01-05 19:06 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

手術時のヘパリンブリッジングに関する10のポイント:JACC誌

Bridging Anticoagulation: Primum Non Nocere.
Stephen J. Rechenmacher, MD; James C. Fang, MD
J Am Coll Cardiol 2015;66:1392-1403


JACCから手術時の抗凝固薬ブリッジングに関する総説がでています。
また,ありがたいことにACC.org Weekly Journal Scanというメールマガジンで10個のポイントにまとめてあるので,これをご紹介します。

Bridging Anticoagulation: Review
Geoffrey D. Barnes, MD, FACC

1)毎年,抗凝固療法を受ける人の15〜20%が,抗凝固薬中断を必要とする侵襲的手技や手術を受けている

2)ほとんどのガイドラインが以下の3つの原則を推奨している
・抗凝固薬は低リスク手技の場合,中断すべきでない
・血栓塞栓症のリスクが高く,出血リスクが過度でない場合に,ブリッジングが考慮される。反対に血栓塞栓症リスクが低い場合は施行すべきでない
・中等度のリスクの場合、個々の患者及びその手技ごとに出血リスクと血栓塞栓症リスクを管理すべき

3)第一の重要なステップは抗凝固薬の適応を確認すること。いくつかの例では抗凝固薬は全く必要ないことがある。最近生じた血栓塞栓症例(急性の深部静脈血栓など)では,抗凝固薬の中断は避けるか延期すべき

4)抗凝固薬を中断しなくて良いような低出血リスク手技:皮膚手術,整形外科的手術,ペースメーカー,ICD植えこみ,血管内手技,白内障手術,歯科手技

5)周術期の血栓塞栓症及び出血の頻度は,適応と抗凝固薬の選択により異なる。一般的に抗凝固薬ブリッジング無しでの血栓塞栓症リスクは非常に低い(ある評価では0,53%)。機械弁患者ですら,近年の研究では低い頻度である。左室補助心臓患者では抗凝固薬が一般的であるが,血栓よりも出血のほうが多い。

6)最近のブリッジングに関する研究は非常に多彩で時に血栓塞栓リスクへの考慮のないものもある。「真に安全な」ブリッジングとは血栓塞栓なしで,出血の副作用も予防することである

7)最近のBRIDGE trial (N Engl J Med 2015;373:823-33)では心房細動におけるブリッジングは血栓塞栓症を防げず(0.3〜0.4%),大出血は増やし(3.2% vs. 1.3%, p = 0.005),小出血も増やす(20.9% vs. 12%, p = 0.001)。しかし,この研究ではCHADS2スコア5〜6点の最高リスク患者や心房細動以外に適応のある疾患は含まれていない

8)機械弁かつ心房細動患者対象のPERIOP2 (NCT00432796)が進行中

9)臨床家は,出血(血栓塞栓)リスクを評価するのに,BleedMAP(出血の既往,機械弁,活動性のがん,低血小板数)を使うことが可能

10)DOACは半減期が短いため,ヘパリンブリッジを必要としない。DOACはヘパリンに変わりうるものかもしれない。しかしその研究はまだ少ない


### 低血栓塞栓リスク,低出血手技ではブリッジしない。血栓塞栓リスクが高く,出血リスクが低い場合に考慮というのがこれまでのガイドラインですが,近年の研究では,止めてブリッジすべき例はそれほど多くないことが示されていますね。

BRIDGE trial も多くは低出血リスク手技を扱っていますし,CHADS2スコア高点は含まれていませんので本当に迷うような高リスク例については解決はされていないのが現状でしょう。

そうした例では適応を慎重に考えた上で,手術前にDOAC切り替えで,ヘパリンでつなぐ期間をできるだけ短くする方法が最近はとられていて,今後も増えるものと思われます。このときよくDOACの適応,用量につき注意する必要はあると思われます。

表題の”Primum Non Nocere”はご存知ヒポクラテスの名言とされる"First, do no harm"(まず患者に害をあたえてはならない)ですが,ヒポクラテスが言った言葉ではないというのがほんとうのところのようですね。

$$$ 今日のにゃんこ
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by dobashinaika | 2015-10-13 22:25 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

心房細動患者の手術時ヘパリンブリッジの血栓塞栓率は非施行群と同じ。出血は多い:NEJM誌RCT

Perioperative Bridging Anticoagulation in Patients with Atrial Fibrillation
James D. Douketis et al
NEJM June 22, 2015


背景:心房細動患者の待機手術時、抗凝固療法のブリッジングは必要かどうか不明。抗凝固ブリッジング非施行が血栓塞栓症において、低分子ヘパリンブリッジングに非劣性かつ出血において優位であるとの仮説を立てた。

方法:
P:心房細動でワルファリンが投与されたす周術期の患者

E:低分子ヘパリン(100IU/kg)ブリッジング:1日2回術前24時間まで3日間および術後5〜10日

C:偽薬

O:動脈血栓塞栓症(脳卒中/全身性塞栓症/TIA)、大出血:術後30日追跡

T:RCT

結果:
1)1884人。非施行群934例、ブリッジ群950例、

2)血栓塞栓症:非施行群0.4%、ブリッジ群0.3%:P=0.01(非劣性)

3)大出血:非施行群1,3%、ブリッジ群3.2%:P=0.005(優位性)

結論:待機的手術のためにワルファリンを中止した心房細動患者において、ブリッジング非施行は低分子ヘパリンブリッジに比べて、血栓塞栓症においては非劣性かつ出血は減少させた。

### ついにでたという感じです。RCTです。これまではサブ解析や観察研究だけでした。
http://dobashin.exblog.jp/20530181/

患者背景ですが、両群とも平均年齢71〜72歳、CHADS2スコア2.3〜2.4点。術前中止期間は両群とも5.2日。術後開始は平均1.5日。消化器系手術が44%、心胸郭系手術17.2%、整形外科手術9.2%。89.4%は低出血リスク手術でした。

もっと具体的に見ると、消化器内視鏡、心臓カテーテル、歯科、皮膚、白内障、腹腔内臓器切除、肺切除、整形外科、末梢血管血管、泌尿器領域、心臓ペースメーカーなどです。

ただサプリメンタリーをよく読むと手術手技には消化器内視鏡が多く含まれていて、大手術の症例数は全体としては90例ずつくらいと少ないところは要注意かと思われます。

抗凝固療法が周術期の血栓塞栓症に無関係な理由として筆者は、手術手技自体や術中血圧の要素のほうが大きいことを指摘しています。またワルファリン中止のリバウンドによる過凝固とヘパリンによるその抑制効果はこの研究によって支持されなくなったと述べています。

研究の限界としては、CHADS2スコア5〜6点の高リスク例が少ない。頸動脈剥離術、大きながんの手術、心臓手術、脳手術が含まれていない。血栓塞栓症イベントがそもそも少ない。等が挙げられています。

そうですねー。ワルファリンやめたときの実際の血栓塞栓症は、ヘパリンで予防されるのでなく、手術手技それ自体や血圧で決まると考えるのは妥当かもしれませんkudorね。

ただ、大手術や高リスク例まで全部に当てはめるまでには至っていないようです。更に大きな手術のみでもRCTが出れば完璧ですが。

でもたとえばESCなどは、この論文が出たことで少なくとも一般的な手術でのヘパリンブリッジは「勧められない」とするステートメントなどを速いうちに出すような気がします。医学常識はこうして変わっていくのですねー。

$$$ご近所の立葵。元気に立位を保っています。
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by dobashinaika | 2015-06-24 21:45 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

周術期のヘパリンブリッジにより大出血は増える(ORBIT-AF試験):Ciurculation誌

Use and Outcomes Associated with Bridging During Anticoagulation Interruptions in Patients with Atrial Fibrillation: Findings from the Outcomes Registry for Better Informed Treatment of Atrial Fibrillation (ORBIT-AF)
Benjamin A. Steinberg et al
Circulation 12月12日


疑問:抗凝固療法中断時のヘパリンブリッジは有効かつ安全か?

方法:
・米国の外来心房細動患者対象のORBIT-AF試験
・手技による抗凝固療薬の一時的中断とブリッジング治療を施行した例の検討
・中止30日以内の心筋梗塞、脳卒中/全身性塞栓症、大出血、入院、死亡

結果:
1)全7372例中、抗凝固薬の中断2,800例30%。平均2年追跡

2)ブリッジング治療:665例21%:低分子ヘパリン73%、未分画ヘパリン15%

3)ブリッジング治療患者:脳血管疾患の既往例多い (22% vs. 15%, p=0.0003)

4)ブリッジング治療患者:機械弁患者多い:(9.6% vs. 2.4%, p<0.0001)

5)CHA2DS-VAScスコアに差なし

6)大出血:ブリッジング治療者に多い:(5.0% vs. 1.3%, adjusted OR 3.84, p<0.0001)

7)心筋梗塞、脳卒中/全身性塞栓症、大出血、入院、死亡:ブリッジング治療例に多い:(13% vs. 6.3%, adjusted OR 1.94, p=0.0001)

結論:ブリッジング抗凝固療法は抗凝固療法中断患者の1/4に施行されており、大出血や有害事象の高リスクと関係していた。これらのデータは、定型的なブリッジング施行を支持しない。更なるデータ必要

### またしてもブリッジング治療にネガティブな結果です。先日RE-LY試験のサブ解析でも同様の結果でした。あの時は大出血はワルファリン群でブリッジング例がしない例の2倍、ダビガトラン群が4.5倍。脳卒中/全身性塞栓症は同等またはダビガトラインのほうがやや低いでした。
http://dobashin.exblog.jp/20486096/

今回の抗凝固薬プロファイルはワルファリン93%とダビガトラン6.5%です。ブリッジング例の大出血は3.8倍でした。脳卒中/全身性塞栓症はアブストラクトには載っていませんが、本文の表を見ますとイベント数自体がかなり少なく、これだけで有意差はなかったようです。

また抜歯でも9%に中断が見られたり、カテーテルアブレーションや内視鏡でも有害事象が多いのも目立っています。

この試験ですが、心臓手術や心臓以外の手術でもブリッジングしないで手術する例が何百例もあって、手術の種類も様々であり、ヘパリンの量や投与時期なども主治医の裁量と思われます。またブリッジングの適応も、まさに塞栓症リスクの高い例ほど行われているわけですので、選択パイアスは登録研究の宿命かと思われます。

今後、ヘパリンブリッジは避けるべきであるという警鐘は大きく鳴ってきたとは言えると思われますが、どんな症例ならしなくて済むのか。たとえばCHA2DS-VAScスコア1点患者など、もともと塞栓症イベントが少ない例なら、抗凝固薬中断だけでも良いのか。
またヘパリン投与量を厳密に調節すれば大丈夫なのか、どういう症例が出血するのか、ブリッジングなしで塞栓症を起こすのか、ブリッジング期間の短いNOACならどうなのか? 

もう疑問だらけという感じですね。
前回も述べたようにまずは大手術のみを対象としたランダム化比較試験が必要です。

### 市内の本屋さん。人文系の本が充実していてよく行ったのですが、昨日で閉店です。本屋フェチの私としては心が痛みます。
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by dobashinaika | 2014-12-16 19:01 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

周術期のヘパリンブリッジにより大出血は増え血栓塞栓症は変わらない:TH誌

Perioperative bridging anticoagulation during dabigatran or warfarin interruption among patients with an elective surgery or procedureSubstudy of the RE-LY trial
J. D. Douketis et al
Thrombosis and Haemostasis 12月4日


疑問:ヘパリンブリッジは、NOACでも有効か?

方法:
・対象:RELY試験参加者のうち待機的手術/手技のために抗凝固薬を一時中断(1回め)した人
・ダビガトラン群、ワルファリン群でヘパリンブリッジした人としない人を比較
・脳卒中/全身性塞栓症、大出血、血栓塞栓症
・評価期間:術前7日間〜術後30日
・Cox regression

結果:
1)ブリッジ施行例:ワルファリン中断時のほうがダビガトラン中断時より多い:27.5% vs. 15.4%; p<0.001

2)ダビガトラン群の大出血:ブリッジ施行例で大出血多い:6.5% vs. 1.8%; p<0.001

3)ダビガトラン群の脳卒中/全身性塞栓症、血栓塞栓症:ブリッジ、非ブリッジで同じ:0.5% vs.0.3%;p=0.46

4)ワルファリン群の大出血:ブリッジ施行例で大出血多い:6.8% vs. 1.6%; p<0.001

5)ワルファリン群の血栓塞栓症;ブリッジ施行例で多い:1.8% vs. 0.3%; p=0.007

6)ワルファリン群の脳卒中/全身性塞栓症:ブリッジ、非ブリッジで同じ:0.5% vs. 0.2%;p=0.32

結論:RE-LY試験では、ダビガトラン、ワルファリンとも周術期のヘパリンブリッジにより大出血が増えた。

### 非常に興味深いデータです。

ヘパリンブリッジのプロトコールは、ダビガトランの場合、低出血リスク手術では24時間前に中止し高出血リスク手術では2〜5日中止(腎機能にもよる)。ワーファリンは主治医任せです。

このデータからは、一言で言えば「ヘパリンブリッジはワルファリンでもダビガトランでも、出血ばかりふやして、脳卒中/全身性塞栓症は予防しない」ということです。

まずもって、周術期に抗凝固薬を中断しても、脳卒中/全身性塞栓症発症リスクは大変低いのですね0.2〜0.3%しかありません。そこにブリッジした場合、むしろイベントが増えるような数字になっていますね(統計的有意差はありません)。

それに対し、ヘパリンブリッジした時の大出血リスクはワルファリン、ダビガトランとも6%台と高率です。

あたかも抗凝固薬をやめるとすぐにも脳塞栓を起こすような印象がありますが、実際は0.2〜0.3%と低値です。それでもインパクトは絶大なので、とにかくヘパリンでつないでという発想になりますが、やっても塞栓症は減らないし、むしろやや増やすかもしれない、それよりも結構出血を増やしてしまう。ということで従来からの治療法に再考を迫る結果になっています。

もちろん無作為割付でないので、ヘパリンブリッジをした例は塞栓症のリスクの高い既往例とかが多く、そういう例では出血リスクも大きいでしょう。また腎機能ほかも偏りがある可能性があります。また大出血の中身が記されていません。肝腎の頭蓋内出血はどうだったのか。

とにかく近頃ヘパリンブリッジは何かと論議を読んでいるところで、この際バッチリRCTして欲しいものです。

RE-LY試験の周術期サブ解析自体は以下
http://dobashin.exblog.jp/15598618/

ヘパリンブリッジへの疑義論文は以下
http://dobashin.exblog.jp/19307831/

$$$ 今日で、大きな病気をしてからちょうど4ヶ月になります。まだ4ヶ月しか経っていないのかという驚きにも似た時間間隔があります。これまでの同じ4ヶ月の何倍もの濃密な時間を経験したように思います。

先日、虹の儚さをつぶやきましたが、これはちょうど2ヶ月前に当院から西の空を見上げた時に見つけた虹です。この虹はいつまでも消えずにずっと残っていました。これまさにブリッジですね。
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by dobashinaika | 2014-12-08 22:36 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

ケアネット連載;心房細動アブレーション前後でワルファリンを継続すべきか?:更新いたしました

ケアネットに連載中の「Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~」
第7回は「心房細動アブレーション前後でワルファリンを継続すべきか?」です。

最近アブレーション前後でワーファリンをやめないで継続する施設が増えてきておりますが、それを裏付けるデータです。

http://www.carenet.com/series/afjournal/cg001089_0007.html
(無料登録が必要です)
by dobashinaika | 2014-07-18 00:37 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

手術時に新規抗凝固薬の休薬は安全なのか?:EHJ

European Heart Journal 1月6日付オンライン版より

Peri-interventional management of novel oral anticoagulants in daily care: results from the prospective Dresden NOAC registryEur Heart J (2014) doi: 10.1093/eurheartj/eht557

【疑問】手術時,短期間新規抗凝固薬を休止した場合安全か?

【方法】
・新規抗凝固薬内服患者を登録
・手術時休薬例を対象

【結果】
1)2179人登録。うち手術施行595例27.3%、863施術(15.6%最小限手術、74.3%小手術、10.1%大手術)

2)手術後30日後までのイベント
・心血管大イベント:1.0%
・大出血1.2%

3)両合併症とも大手術後に多い:心血管大イベント4.6%、大出血8.0%

4)ヘパリンブリッジは心血管イベントを減らさず、大出血のみを増やす:2.7%vs.0.5%(ブリッジなし例);P=0.010

5)糖尿病(オッズ比13.2)、大手術(オッズ比7.3)が心血管イベントの独立危険因子

6)大手術は大出血の独立危険因子(オッズ比16.8)

7)大手術と小手術に分けて検討すると、ヘパリンブリッジは大出血の独立危険因子ではない

【結論】新規抗凝固薬の継続または短期休薬はほとんどの手術において安全な戦略である。大手術を受ける心血管リスクのある患者ではヘパリンブリッジは有効だが出血には考慮が必要。

### 大変役に立つ知見です。

新規抗凝固薬内服患者さんで手術が必要になると、手術当日または前日から内服を止める施設が多いと思われます。よく腹部手術などで大きな病院に紹介すると手術の1日前に止めることが多いのですが、まる1日血栓に対しnon protectになるので、塞栓イベントはどうなのかなとヒヤヒヤすることがあります。かと言って当日のみ休止だと、腎機能低下例などは残存している可能性もありますし難しい判断かと思います。

今回、大手術でなければ休薬は概ね問題はないとの所見のようです。ヘパリンブリッジは出血が増えるし、どうせ1〜2日でしょうからしないほうがよいのかもしれません。

やはりこういう時はワーファリンのようにモニターできると安心なんですが。

この研究では、休薬期間が何日だったのか、新規抗凝固薬間での違いはあったのかが気になります。
全文をあたってみます。

<追記>
全文にあたったところ,休薬期間は術前2日(中間値),術後1日とのことです。
またNOACの内訳はリバーロキサバン76%,ダビガトラン23.5%,アピキサバン0.5%でした。
最小限手術=皮膚表面,創傷治療,抜歯でない歯科治療
小手術=心臓カテーテル,ペースメーカー,穿刺,白内障,内視鏡,生検,抜歯,ヘルニア手術,筋肉注射
大手術=骨盤,腹部,胸部,脳,整形領域,外傷,血管の各手術
とのことです。
by dobashinaika | 2014-01-06 20:03 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

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