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カナダの新心房細動ガイドラインはシンプル。CHADS65を提唱


ESCに続き,カナダの心房細動管理ガイドラインがフォーカスアップデートされました。
2016 Focused Update of the Canadian Cardiovascular Society Guidelines for the Management of Atrial Fibrillation http://dx.doi.org/10.1016/j.cjca.2016.07.591

2014年からの2年ぶり部分改定です。
改定ポイントは
1)様々な冠動脈疾患の状況下での抗凝固管理
2)NOACの現実世界のデータ
3)NOACの中和薬
4)レートコントロール薬としてのジゴキシン
5)周術期の抗凝固管理
7)心臓術後の予防治療を含む外科的手術

の7点です。

今日は冠動脈疾患下での抗凝固療法について紹介します。
まず基本アルゴリズムは,2014年の時と基本的に同じです。
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65歳以上は他にどんな危険因子があろうが即抗凝固。65歳未満でCHADS2スコアの他の因子がひとつでもあれば抗凝固。65歳未満血管疾患(冠動脈疾患含む)有りは抗血小板薬となっています。
65歳がキーポイントでCHADS65と名付けられています。

薬剤選択は,NOACがワルファリンより第一選択であり,出血因子として高血圧,抗血小板薬併用,NSAIDs,ステロイド,アルコール過飲,INR管理不良に注意。とくにNOACでは低クレアチニンクリアランス,75歳以上,低体重に注意,と注釈がついています。

相変わらず非常にシンプルですが,以前Lip先生が噛み付いた,65歳未満で血管疾患がある人に抗血小板薬だけでいいの?という疑問に応える意味もあるのか,冠動脈疾患合併患者について,今回詳細な追加がなされています。以下の通り

<一般的的推奨>

1)冠動脈疾患合併心房細動の場合,脳卒中,冠動脈疾患,出血の3者のバランスを考える(推奨度強,エビレベル高)

2)できるだけNOACを用いる(条件付き推奨,低レベル)
価値と選好:使い勝手の良さ,およびRCTにおいて脳卒中予防ではNOACはワルファリンと同等または優位,大出血は同等か少ない,頭蓋内出血は少ない,冠動脈疾患は増やさないというアウトカムに基づく。冠動脈疾患におけるNOACの効果についての長期的データが欠如しワルファリンが効果的であるとのデータにはあまり重きを置いていない。

<冠動脈疾患(CAD)の一次予防または安定CAD/血管疾患(末梢血管,大動脈プラーク)合併例>
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3)CAD/血管疾患なし,65歳未満,CHADS2スコアゼロ:抗血栓療法不要(条件付き,中等度レベル)
4)CAD/血管疾患なあり,65歳未満,CHADS2スコアゼロ:アスピリン(条件付き,中等度)
5)CAD/血管疾患なあり,65歳以上,CHADS2スコア1点以上」OAC(強,高)

<待機的PCI例>
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6)65歳未満,CHADS2スコアゼロ:アスピリン+クロピドグレル,12ヶ月(2012ガイドラインに準拠)
7)65歳以上,CHADS2スコア1点以上:OAC+クロピドグレル75mg,12ヶ月

<非ST上昇およびST上昇心筋梗塞>

a0119856_21495065.png

8)65歳未満,CHADS2スコアゼロ:アスピリン+チカグレロルor クロピドグレル,12ヶ月
9)65歳以上,CHADS2スコア1点以上:OAC+チカグレロル(プラスグレル,クロピドグレルよりも)12ヶ月→OAC単独
10)65歳以上,CHADS2スコア1点以上,PCIの既往:アスピリン81+クロピドグレル75+OAC,3-6ヶ月(期間は冠血栓と出血リスクによる)→クロピドグレル+OAC,12ヶ月まで→oOAC単独
価値と選好:3〜6ヶ月のトリプルテラピーはOAC+クロピドグレルよりも冠動脈イベントが少なく,DAPTyよりもステント血栓が少ないことを重視。出血リスク増大には重きをおかず。塞栓症と出血のバランスは,CHADS2スコア2点以上の高リスクの時に判断すべき

### ”CHADS65”。大変シンプルですが,個人的には何も考えず「65歳以上で一律に抗凝固療法」とするのはいかがなものかと思います。

冠動脈疾患合併例では,待機的PCIのときトリプルはなし,OAC単独の時期が一律に12ヶ月後など,ESCとは微妙に違うようです。

全体に,総論的コンセプトの強調がなく,ESCガイドラインよりシンプルさが目立つ北米らしい GLという印象です。

$$$ ご近所の神社の鳥居が新調されました。ここくぐる時の木の香り,迷走神経刺激作用は絶大です。ちなみにここジムレベル3です。

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by dobashinaika | 2016-09-08 21:56 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

カナダのガイドラインで抗凝固適応なしは実は「低リスク」ではない?:CJC誌

Canadian Journal of Cardiology DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.cjca.2014.10.018
Atrial fibrillation patients categorised as ‘not for anticoagulation’ with the 2014 Canadian Cardiovascular Society algorithm are not ‘low risk’
Gregory Y.H. Lip et al


疑問:カナダの心房細動ガイドラインで抗凝固療法の必要なしとされた患者は本当に低リスクなのか?

方法:
・65歳未満でCHADS2スコア0点の患者222582例を、CHA2DS2-VAScスコア(女性を除く)に当てはめる
・カナダのガイドラインで抗凝固療法必要なしの人で、CHA2DS2-VAScスコアで適応となる人のイベントレートを算出
・Cox比例ハザードモデル

結果:
1)ESCガイドラインで抗凝固適応かつカナダのガイドラインで抗凝固適応とならない人の年間虚血性脳卒中/全身性塞栓症発症率:4.32/人年 (3.26-5,74)

2)ESCガイドライン抗凝固適用なしとされたザブグループに比べハザード比3.08 (2.21-4,29)

3)血管疾患ありかつCHADS2スコア0点(カナダではアスピリンのみ推奨)のイベント発症率;4.84 (3.53-6.62)

結論:2014のカナダのアルゴリズムに従うと、抗凝固療法必要なしのサブグループの1年間脳卒中発症率は高い。これは「低リスク」ではないといえる。
CHA2DS2-VAScスコアに基づいたESCのガイドラインがよりリファインされている。

### またもLip先生からの挑戦状?です。
カナダのガイドラインで抗凝固適応なしかつESCで適応ありというと、女性を除くとなっているので「65歳未満でCHADS2スコア0点で血管疾患だけ持つ人」ということになります。

この特性のひとはどういう人なのか、以前から疑問なのです。若くて危険因子がないのに血管疾患あり。ちょっと考えにくいのですが(脂質異常症、喫煙、家族歴などがある人でしょうか)、そうした集団のイベント発生率は結構高いようです。元データをあたってみたいと思います。
おそらくデンマークあたりのNational datebaseだと思われますが、ESCはとにかくこの北欧中心の後ろ向き大規模コホートが後ろ盾みたいで、後ろ向きコホートだって色々バイアスがあると、ちょっといいたくなる気もします。

それにしてもLip先生のCHA2DS2-VAScスコア推しの姿勢は積極的ですね。こうしたconの意見をすぐに掲載するCJCのレビューアーにも敬意を評したいところです。

カナダのガイドライン作成委員会からのreplyが楽しみです。
Lip先生、日本のガイドラインにはどのような意見を持っているのか、聞いてみたいです。
カナダの新ガイドラインはこちら
http://dobashin.exblog.jp/20248153/
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柿の実がたわわに実っています。京都嵯峨野に落柿舎という、たしか芭蕉の弟子の去来の別荘があったと思いました。落柿舎なんてまさにシブい命名ですね、改めて。この実が落ちる頃、木枯らしが吹くのでしょう。
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by dobashinaika | 2014-10-20 21:11 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

カナダの新しい心房細動ガイドラインはわかりやすい:CJC誌

カナダの心房細動ガイドラインがアップデートされました、

2014 Focused Update of the Canadian Cardiovascular Society Guidelines for the Management of Atrial Fibrillation
Can J Cardiol. 2014 Oct; 30(10):1114-30.


たくさんあるので、<脳卒中予防原則>の要点だけ紹介

推奨
1.心房細動(粗動)は、発作性、持続性を問わず脳卒中の予測インデックス(CHADS2スコアに基づいたCCAアルゴリズム)をを使って層別化すべき(推奨度強、高エビデンスレベル)

2.65歳以上またはCHADS2スコア1点以上の殆どの患者で抗凝固療法(強、中レベル)

3.CCSアルゴリズムでリスクがない(65歳未満またはCHADS2スコア0)、かつ血管疾患あり(冠動脈、大動脈、末梢)の時はアスピリン81mg(普通、中)

4.CCSアルゴリズムでリスクがない(65歳未満またはCHADS2スコア0)、かつ血管疾患なしは、抗血栓薬なし(普通、低)

5.非弁膜症性心房細動の抗凝固療法はワルファリンに優先して(可能なときは)ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンを用いるべき(強、高)
※「非弁膜症性」とはリウマチ性僧帽弁狭窄症、機械弁、生体弁、僧帽弁形成がないこと

6,人工弁、僧帽弁狭窄症、eGFR (CCr)15~30の時はワルファリン(強、中)
※高齢、腎不全、低体重がない場合は2用量の家、一般に高用量を用いるべき
※ダビガトラン内服者では、脳卒中と出血リスクの観点から75歳以上は110mg1日2回にすべき。

7.抗凝固療法の適応ながら抗凝固薬を拒否する場合はアスピリン81mg+クロピドグレル75mgを使うべき(強、高)
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### 以前からカナダのガイドラインは大変クリアカットで使い安いと思っていましたが、この改訂版でもこれまでの各国のガイドライの中では最も使いやすい気がします。

アルゴリズムというのは、一番使いやすいです。しかもシンプル。CHADS2スコアの年齢を65歳以上にしてしまったところ、CHADS2スコア0点は血管疾患があればアスピリンにしたところ、が他のガイドラインと大きく違うと思われます。「女性だけ」「血管疾患だけ」はエビデンスがないからと退けています。

CHADS2スコアの年齢を65歳にして使うやり方は、私も拙著などで以前から提唱しておりますね^^。

NOACの使い分けに関しては、直接比較がないので、この薬をあの薬よりも選ぶという点で臨床家に与える影響を討論し、統計処理を行った間接比較は2つあるものの、その限界を知るべきだとしています。これも全く同感。

サブ解析については、
・ダビガトラン150は75未満でよいが75歳以上は110が良い
・アピキサバンとリバーロキサバンは75歳前後で結果に変わりはない。eGFR(CCr)30〜50ではリバーロキサバンか青いきサバンが良いかもしれない
・初期論文ではダビガトランは心筋梗塞をワルファリンとり増やしたが、追加データが出るとそれは明らかでなくなった
・メタ解析ではダビガトランはより心筋梗塞が多いとされ、全死亡率はへらすものの、最近のFDA研究はダビガトランとワルファリンの心筋梗塞が波動程度であるとしている
・消化管出血ははダビガトラン150とリバーロキサバンで最も多い
・ダビガトランの所見はFDAの大規模コホート研究で明らかになった。ディスペプシアと早期服薬中止例が多い
という解説付きです。

抗血小板薬の使用は意見がわかれるかもしれませんが、個人的にはCHA2DS2-VAScスコアを考えるより、このアルゴリズムで考えたほうがわかりやすいです。

他の項目も興味深いので、順次読んでいきます。

2012年の旧ガイドラインはこちら
http://dobashin.exblog.jp/14915909/
by dobashinaika | 2014-10-01 21:31 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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