心房細動患者の血圧は140/90mmHg未満に保つべき:不整脈と血圧に関するコンセンサス文書(EHRA,ESC合同):EHJCP誌

大変古いレビューで申し訳ございません。
欧州不整脈学会(EHRA)と欧州心臓病学会(ESC)から不整脈と血圧に関するコンセサス文書が昨年6月のEHJに掲載されております。



その中のThromboembolism and bleeding risk, including safe use of antithrombotic therapy in hypertension(高血圧患者における,抗凝固薬の安全な使用)に関するコンセンサスをご紹介します。

・高血圧のみ単独がリスク因子の心房細動患者においても,ほとんどの例で抗凝固薬を使うべきである。

・高血圧のみがリスク因子の場合特に,リスクーベネフィットに関するShared, informed decision-makingがもとめられる。

・ビタミンK阻害薬の場合は,INRの良好な管理(TTR≥ 65–70%)がもとめられる。

・NOACはVKAに比べ良好なアドヒアランスが得られ,リスク回避の点でより良い。出血を最小限にする目的で,最適な血圧管理がなされるべきである。より多くのデータが蓄積されるまで,血圧は140/90mmHg未満にすべきである。抗凝固薬は管理不良の高血圧(180/100mmHg以上)では,注意深く使用すべきであり,降圧をしっかり行う必要がある。

### 具体的な使用方法については,以下のLip先生特製のシェーマがわかりやすいです。
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抗血小板薬,NSIADs,HAS-BLEDスコア3点以上の人には特に注意しながら抗凝固薬を投与し,SAMe2-TT2R2スコア2点以下ならVKA,3点以上ならNOACを推奨しております。

至適血圧値についてのエビデンスは少なく,ARISTOTLE試験の後付解析で血圧140/90以上のひとはそれ以下の人に比べ,脳卒中/全身性塞栓症リスクで1.53倍,大出血リスクで1.85倍であったことなどが紹介されていました。

いまのところ,出来る限り140/90以下を目指すことを心がけたいと思います。

$$$ 春はどこから来るのだろう?
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# by dobashinaika | 2018-02-09 00:24 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心不全合併心房細動に対するカテーテルアブレーションは死亡+入院リスク軽減に関連あり:NEJM誌


P:症候性の発作性/持続性AF例に左室駆出率(EF)35%以下・NYHA分類Ⅱ度以上の心不全を合併し、ICD/CRT-Dが既に植え込まれていた397例

E:心房細動アブレーション170例

C:標準治療184例

O:主要評価項目:全死亡or心不全増悪による入院

T:RCT,平均追跡期間37.8ヶ月

結果:
1)平均年齢は64歳、約9割がNYHA分類Ⅱ度とⅢ度、AFの病型は30~35%が発作性、65~70%が持続性

2)主要評価項目:アブレーション追加群HR:0.62,95%CI:0.43~0.87, P=0.007
総死亡:HR:0.53, 95%CI :0.32~0.86, P=0.01
心不全入院:HR:0.56, 95%CI :0.37~0.83. P=0.004
心血管死:HR:0.56, 95%CI :0.29~0.84, P=0.009
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結論:心不全合併心房細動に対するカテーテルアブレーションは,標準治療に比べ,全死亡+心不全増悪入院のリスク低下に関係していた。

### CASTLE-AF試験です。カテーテルアブレーションが生命予後を良くするのかに関してのRCTはこれまで大きなものはなく,その意味で大変大きな研究といえます。

とくに抗凝固時代においては心房細動の死因として心不全に目が向けられており,β遮断薬は予後改善効果が少ないことも示されておりますため,大変注目したいところです。

Limitationはたくさん。なによりアブが対象なので,ブラインドできない点です。しかも入院というソフトエンドポイントを含んでおり,バイアスははいりやすいです。ただ,二次評価項目では,死亡単独でも差はついているようです。

今後,心不全のある人ほど,アブをやった方が良いという流れの先鞭をつける論文かもしれません。熟読が必要です。

$$$ 椿貞雄の方がかわいい絵でした。
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# by dobashinaika | 2018-02-07 23:25 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

包括的なアップストリーム治療は,心房細動の洞調律維持に貢献する:RACE3試験


目的:心房細動の背景因子をターゲットにすることが持続性心房細動患者の洞調律維持に寄与するのか

方法:
・対象;早期の持続性心房細動+軽症〜中等症心不全
・背景因子をターゲットvs.従来治療にランダム化
・両群とも心房細動と心不全の原因治療とレートコントロールは受けている
・介入群:1)ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA) 2)スタチン3)ACE阻害薬/ARB、運動、ダイエットを含む心リハ
・エンドポイント:1年間後ホルター心電図を7日間思施行し洞調律の維持を評価

結果:
1)245例:介入群119例、従来群126例

2)MRA使用:介入群85%vs.従来群4%, p<0.001

3)スタチン使用:介入群93%vs.従来群61%, p<0.001

4)ACEi/ARB使用:同程度

5)背景因子の治療は介入分でより達成できた

6)1年間洞調率例:;介入群75% vs. 従来群63%、オッズ比1.765, 95%CI下限1.021, P=0.042
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結論:RACE3試験は、背景因子を標的にする治療が、持続性心房細動の銅調律維持を改善することを確実にした。

### これまでないことにされていた感のある,例のAFのアップストリーム治療ですが,しっかりした包括的な取り組みでやれば違うのでは,という疑問に答える形で出されたのがこのRACE3です。

この論文の注目点は1)どの程度の持続性か 2)介入はどの程度か 3)追跡期間 
4)AFの記録方法 の4点です。
1)は,症候性,罹患期間5年未満,トータルの持続期間7日〜6ヶ月未満,電気的除細動1年以内,心不全は発症1年以内のHFpEFかHFrEFなど。
2)は,血圧目標120/80,服薬アドヒアランス,運動継続状況,ダイエットの状況についての6週ごとのカウンセリング付き。
3)は,1年間の追跡です。
4)は,3ヶ月毎の診察。6週間ごとのカウンセリングと心電図,1年後に7日間のホルター心電図です。

各背景因子の動向ですが,血圧は介入群125mmHg,従来群130で有意に低下(拡張期も),BMI,コレステロール,NT-proBNPなどが軒並み下がっています。

Nが少なく,絶対リスク減少も小幅とはいえ,包括的多面的にアップストリーム治療を行えば,やらないよりは良いといえるかもしれません。しかも持続性になるかどうかの時期で,多少心不全が関与しているようなケース。まだガチガチにリモデリングが進む前です。スタディーデザインのセンスの良さですね。

RACEシリーズはどれも重要です。

$$$ 開けてくれと懇願する今日のニャンコ^^
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# by dobashinaika | 2018-02-02 23:18 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

末梢動脈疾患における抗凝固療法11か条:ACCのまとめサイトから


ACCのまとめサイトから。末梢動脈疾患 (PAD)における抗凝固療法の現時点でのまとめ11か条が紹介されています。

1.動脈硬化性心血管疾患は世界で2億人が罹患している。下肢PADは死亡率や合併症率を明らかな相関がある。PADの5〜10%は毎年再発をくりかえす。

2.PADのほとんどの患者は無症候。PAD関連の症状とは,非典型的下肢痛,間欠跛行,虚血性の安静時疼痛,潰瘍,ガングレンである。

3.PAD患者は心血管死,心筋梗塞,脳卒中のリスクが上昇している。心血管死,心筋梗塞,入院の年間リスクは21%。下肢イベントの年間リスクは2〜10%の幅があり,年齢,症状,治療法,血管再建術の既往による。

4.米国では,PADの治療法は慣習的に抗血小板療法(アスピリンかクロピドグレル)であり,大血管イベントを25%減少させる(AHA/ACC/ガイドライン:推奨レベルI,エビデンスレベルA)

5.冠動脈リスクと同等にもかかわらず,PAD患者への抗血小板薬とスタチン使用は冠動脈患者に比べて明らかに少ない。各種の技術を使うことで,薬剤使用率を上げることが求められている

6.薬物療法にも関わらず症状のある患者は,シロスタゾールや運動療法が歩行距離やQOL改善に役立つ。危険性の高い下肢虚血に関しては確立された治療法は少なく,年間50%近い死亡率がある

7.VorapaxarはPAR-1阻害薬であり,心血管イベント(心血管死,心筋梗塞,脳卒中を1.2%)減らす。ただし,入院は少ないが,出血リスクは増加させる

8.最近のCOMPASS試験では,安定した動脈硬化性疾患(PADも含む)が,アスピリン100mg/日とリバーロキサバン5mg1日2回,アスピリン100mg/日+リバーロキサバン2,5 mg1日2回にランダム化された。2年のフォローアップで,アスピリン100mg/日+リバーロキサバン2,5 mg1日2回群が心筋梗塞,虚血性脳卒中,心血管死を低下させた(4.1% vs. 5.4%, HR, 0.76; 95% CI, 0.66-0.86)。ただし併用療法では大出血が増えた (3.1% vs. 1.9%, HR, 1.70; 95% CI, 1.40-2.15).。

9.COMPASS試験でのPAD患者においても,アスピリン100mg/日+リバーロキサバン2,5 mg群が複合エンドポイントを減らし(5.1% vs. 6.9%, HR, 0.72; 95% CI, 0.57-0.90),大出血は増加させた (3.1% vs. 1.9%, HR, 1.61; 95% CI, 1.12-2.31)

10.VOYAGER PAD試験(進行中)は,PAD患者を血行再建後にリバーロキサバン2.5mg 1日2回とプラセボ(アスピリン100,gに追加)にランダム化したものである

11.BEST-CI試験(進行中)は,重症下肢虚血を,薬物療法に加え外科治療と経皮的血行再建術にランダム化(オープンラベル)したものである
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アスピリンかクロピドグレルで治療し,効果のない場合にシロスタゾールと運動療法というのが主流とのことです。NOACがここに加わるかどうか,進行中の試験の結果がまたれるところです。

### ご近所の神社。早朝の厳しくも清々しい空気です。
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# by dobashinaika | 2018-01-26 23:30 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

CHA2DS2-VAScスコアが経年的に増加する人は脳梗塞リスクも増加し,元々の点数より増加分のほうが予測能が高い。


疑問:経年的にCHA2DS2-VAScスコアが増加したとき脳塞栓リスクも上昇するのか?

方法:
・台湾の国民健康保険における心房細動患者31,309例
・抗血栓療法なし。年齢,性別以CHA2DS2-VAScスコアの点数なし
・高血圧,糖尿病などの新規因子が増加したかどうか。増加とその後の脳梗塞リスクの関係を評価

結果:
1)ベースラインCHA2DS2-VAScスコア:1.20点

2)2.31点に増加(171,956人年),平均増加1.02点

3)1点以上増加の頻度:脳梗塞既往歴症例89.4%,脳梗塞なし例54.6% (p<0.001)

4)最も多い新規併存リスクは高血圧

5)ベースライン時やフォローアップ時のCHA2DS2-VAScスコアより変化のほうが脳梗塞の予測能が良い
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結論:CHA2DS2-VAScスコアは変わらぬものではなく,ほとんどの患者は1点以上増加する。 CHA2DS2-VAScスコアの増加は脳梗塞リスクの増加と関連があり,CHA2DS2-VAScスコアそれ自身よりも予測能に優れている。

これ大事なポイントで,以前から疑問に思っていたところでした。CHA2DS2-VAScスコア0点でも,年が経つに連れてリスクは黙っていても増加するわけで,そうした症例の脳梗塞リスクはどう考えたら良いのか知りたいところでした。
予想通りというか,やはりもともとの点数による評価よりも,点数が「増加した」ことのほうが,脳梗塞リスクをより反映するとのことでした。
新たに高血圧などを合併した例ほど,より注意すべきということかと思います。納得です。

流石に,今回の雪,応えましたね。でもスタッフ総出で30分で雪かき終えましたー。
雪は,人を小踊りもさせるし,沈黙もさせます。

ベースライン
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30分後
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# by dobashinaika | 2018-01-24 22:33 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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