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心房細動スクリーニングの現状と問題点(バーチャルワークショップ);背景編


デバイスによる潜在性心房細動のスクリーングにおける状況と問題点が詳細に語られれいます。本編はまず背景から。
端的にまとめますと,

1)プライマリ・ケアレベルで,検脈,聴診,血圧計による心房細動高リスクに対するスクリーニングは広く行われている
・65歳以上の未診断心房細動は,OppSTS による発見率は1.4%
・メタ解析では,65歳以上で抗凝固療法に適する心房細動を同定するNNS(the number needed to screen)は83:推奨クラスI

2)USPSTFでは,2018年段階では(2021年でも),ルーチンのスクリーニングの推奨は,エビデンス不十分としている

3)スクリーン強度や発見率が高いほど脳卒中リスクは低いというトレードオフがある

4)デバイス/方法によって検出率にばらつきあり
心房細動スクリーニングの現状と問題点(バーチャルワークショップ);背景編_a0119856_07250613.gif

5)検出された心房細動の予後が不明なので,抗凝固療法の適応になるか不明

6)偽陽性の際の害について検討は必要

7)上記の知識ギャップを埋めるためにリスク層別化などによるRCT等による検討が必要
心房細動スクリーニングの現状と問題点(バーチャルワークショップ);背景編_a0119856_07253073.gif
### たしかにスクリーンされた心房細動に対する介入が,リスクベネフィットに見合うものか,そのRCT(臨床的に発見されたものと比べて)はないです。デバイスによってもかなり違います。医療においてはDxへの期待がものすごいのだと思いますが,こうした冷静な視点が求められます。



# by dobashinaika | 2022-01-29 07:32 | 心房細動:診断 | Comments(0)

米国USPSTFの心房細動スクリーニングについての推奨:現時点では利益と害のバランスを評価できるだけのエビデンスは不十分


US Preventive Services Task Force(USPSTF)から50歳以上の,無症状の心房細動に対するスクリーニングの推奨に関するステートメントが出ています。

【USPSTFの推奨はなにか?

・50歳以上の心房細動の記録や症状のない患者において
=心房細動のスクリーニングについての利益と害のバランスを評価するに現時点のエビデンスは不十分である(グレードI)

【この推奨は誰に適応があるか?】
・50歳以上の,心房細動の診断や症状がなくTIAや脳卒中の既往のない成人

【何が新しいか?】
・2018USPSTFの心電図スクリーニングの推奨に合致
・今回2021推奨は,自動血圧計,パルスオキシメーター,スマートウォッチ,スマートフォンアプリといったスクリーニング方法も含む

【この推奨をどう実装する?】
・心房細動スクリーニングを推進するまたは反対するエビデンスは不十分。脳卒中予防のための利益を確定するにはさらなる研究が必要
・臨床家はスクリーニングすべきか,するとしたどうすべきかついて診療的判断をする必要がある。その際USPSTFとしては通常診療の一部として検脈を考慮する事が重要と考える

【この推奨に関する追加の情報として何を知るべきか?】
・心房細動の有病率は年齢とともに上昇し,55歳未満では0.2%なのに対し,85歳以上では約10%である
・心房細動患者はかなりの脳卒中リスクを有し,他の原因に比べ心房細動関連脳卒中はより重篤である
・しかし,ある種のアプローチで同定されるような潜在性心房細動(デバイスでのみ同定され,臨床的には顕在化せず,おそらく短時間持続)に関連する脳卒中のリスクは不確かである
・潜在性心房細動に抗凝固療法が妥当であるかどうか,どの程度が妥当か(持続時間または発現頻度)はわかっていない

【なぜこの推奨がトピックであり重要なのか?】
・心房細動は最も一般的な不整脈であり,脳卒中の主要リスクでありながらしばしば発見されないから

【追加のツールあるいはリソース】
米国USPSTFの心房細動スクリーニングについての推奨:現時点では利益と害のバランスを評価できるだけのエビデンスは不十分_a0119856_21532442.png

### 根拠としているのは以下の2つの総説です。
特に後者は最近の総説であり,即,読むに値します(後日読み込みます)。

これらの総説では,特に24時間以内の短持続時間や全体の持続時間(AF burden)が少ない場合のの脳卒中リスクは不明であり,抗凝固薬使用の妥当性も不確定だとしています。

一方スクリーニングによる害としては,テスト陽性による不安あるとしても重大な害ではないとしながらも,誤診(偽陽性)による治療,特に抗凝固薬の出血リスクや薬物,非薬物療法による有害事象を招くことがある。また心電図で他の異常が見つかりさらなる検査や試験が必要となることもある,としています。

現時点の冷静な判断ですが,いまやそうした「待ち」の姿勢を嘲笑するかのように,各種のデバイスが競うように開発されつつあります。ただ,現時点ではまだ感度,特異度に難がありデバイス単独では臨床に不可欠となるまでの存在感はありません。アップルウォッチを本当に必要な人に普及するにはまだ精度とコストの点で遠いものがあります。
で,何より,この論文の指摘のように,どの程度AF buednがあれば治療の対象になるのかが不鮮明なのです。

そこがしっかり明確にならないと,一回アップルウォッチで不整脈が見つかったからと言って,すぐ抗凝固とは行かないわけです。もちろんその他のデバイスや臨床的リスクファクターを加味しての総合的な尤度比を向上させていく必要があります。
セッティングデータが決まればあとはAIがやってくれるとなりますが,最初のセッティングをどう決めるか。あとやはりAIのディープラーニングは可視化できないか(そうでないと宗教に近づく予感が)。

尽きせぬ問題と興味があります。


# by dobashinaika | 2022-01-27 21:57 | 心房細動:診断 | Comments(0)

DOAC vs.ワルファリン:4つのRCTのネットワークメタ解析:Circ誌


・DOACの4つのRCTをあわせたデータベースCOMBINE AFを使用したネットワークメタ解析
・対象:71683例(標準用量29362,低用量13049,ワルファリン29272)

・<標準用量vs.ワルファリン>:
・脳卒中/全身性塞栓症(HR0.81 95% CI, 0.74–0.89),死亡(HR, 0.92 95% CI, 0.87–0.97),頭蓋内出血(HR, 0.45 95% CI, 0.37–0.56)はDOACが優位
・大出血は有意差なし(HR, 0.86 95% CI, 0.74–1.01)

・<低用量 vs. ワルファリン>
・脳卒中/全身性塞栓症,死亡,頭蓋内出血,大出血とも有意差なし
・低用量では,脳卒中/全身性塞栓症,死亡については年齢,性別に関係なく有意差なし

<患者背景別>
・標準用量では,VKAの使用歴(P=0.01) ,低クレアチニンクリアランス (P=0.09) で優位
・標準用量では,大出血は低体重の人ほどDOAC優位(P=0.02)
・若年者では標準用量 (interaction P=0.02) ,低用量(interaction P=0.01) ともワルファリンより優位

<結論>
・DOACはワルファリンに比べて,有効性,安全性に優れる

### 4RCTを統合したCOMBINE AFというデータベースがあるんですね。注目は,低用量ではアウトカムに有意差がなくなるということですね。低用量の人はそれだけ高リスクですので,競合リスクも多く差が出にくいのと,脳卒中/全身性塞栓症への有効性は低く,出血も適切に管理されたワルファリンと比べればそれほど少なくはならないと考えていいでしょうか。
基準に合致した低用量患者では大出血でさえ多くなるというメタ解析の結果もあります。
基準に合致していれば,なるべく標準用量を使えというメッセージと考えます。

DOAC vs.ワルファリン:4つのRCTのネットワークメタ解析:Circ誌_a0119856_07233520.jpg


# by dobashinaika | 2022-01-26 07:27 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

GLP-1受容体作動薬は心房細動新規発症抑制に関連せず: REWIND試験後付解析


REWIND試験の後付解析
・心血管リスクを持つ50歳以上の2型糖尿病患者9543 例,平均66歳,5.4年追跡
・GLP-1受容体作動薬dulaglutide群(標準治療に追加) Vs.プラセボ(標準治療)群
・心房性不整脈:dulaglutide群5.5%(5.4年)
・心房性不整脈:dulaglutide群10.7/000人年 vs. プラセボ群10.5/1000人年(p=0.59)
・複合エンドポイント(心房性不整脈,死亡,心不全)も同様に有意差なし
・dulaglutideは2型糖尿病の心房性不整脈新規発症リスク減少と関連しない

### 近年大変使用する機会の多いGLP-1受容体作動薬dulaglutide(トルリシティ)と心房細動の関連をみた報告です。
post-hoc解析であり,結論を出すのは早計ですが。

DPP4阻害薬では観察研究で心房細動抑制のデータがあるようです。またSGLT2阻害薬もいくつかのメタ解析で心房細動抑制が示されていますね。

これらの糖尿病薬(とくにSGLT2阻害薬)は多面的な機能を持っていますが,長期に見ていく必要があると思われます。
GLP-1受容体作動薬は心房細動新規発症抑制に関連せず: REWIND試験後付解析_a0119856_07211669.jpg




# by dobashinaika | 2022-01-25 07:25 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

左心耳閉鎖デバイスvs. DOACの長期成績(PRAGUE-17試験):JACCより


・PRAGUE-17試験
・左心耳閉鎖デバイス (LAAC)vs.DOACの長期成績報告(PRAGUE-17試験 )
・402人,RCT,平均追跡3.5年
・一次評価項目(心原性塞栓症,心血管死,臨床的に有意な出血 ,手技/デバイスによる合併症):LAACはDOACに非劣性(p for noninferiority = 0.006)
・ハザード比:心血管疾患死0.68,脳卒中/TIA1.14,臨床的に有意な出血 0.75(以上有意差なし)。手技に関連しない出血0.55 (p = 0.039)
・ per-protocol解析でも on-treatment解析でも結果は同等
・結論:3.5年追跡でも,LAACはDOACに比べ心血管,神経学的,あるいは出血イベントは非劣性

左心耳閉鎖デバイスvs. DOACの長期成績(PRAGUE-17試験):JACCより_a0119856_07222332.jpeg

### 左心耳デバイスはWatchmanまたはAmuletです。
これまでワルファリンとWatchmanの比較はPREVAIL, PROTECT AF,EWOLUTION などのスタディがあり,いずれも悪くないということでしたが,今回のPRAGUE-17はDOACとの比較です。

残念ながら,本試験は composite endpointなので,死亡ごと,脳卒中/全身性塞栓症ごと,あるは出血ごとのアウトカムまでは不明です。全部まとめて非劣性ということですね。

左心耳デバイスで知りたいことはたくさんありますが,抗血小板療法の併用が(いつまで)必要かどうかは重要だと思います。

2年前のですがWATCHMANの総説はこちら

左心耳閉鎖デバイスvs. DOACの長期成績(PRAGUE-17試験):JACCより_a0119856_07263977.jpg

# by dobashinaika | 2022-01-24 07:28 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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