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当面の診療体制につきまして

当面の診療体制につきまして、お知らせ申し上げます。

しばらくの間、以下のような診療体制といたします。
診療時間について
午前9:00~12:00
午後2:00~ 4:00  (木、土午後休診、日曜祝日休診)

受付、予約について
・予約時間に関係なく受付された順に、診察いたします。
・また次回の予約も当面、お取りしないこととなります。
・お薬がなくなる前のご都合の良い時に受診をお願いいたします。

処方について
・原則として、最大30日処方とさせていただきます。

検査、特殊外来について
・予約された検査、採血はこれまでどおりいたします。
・これまで午後4時からから行っていた「健康増進外来」は、しばらくお休みいたします。
・午後5時から行っていた心臓超音波検査は、通常診療時間内で行います。

被災により保険証をなくした方、負担金支払いの困難な方は受付にお申し出ください。

物資調達等の問題が解消されるまで、暫定的に以上のようにいたしたいと思います。
診療時間などは、近い段階で変わる可能性がありますので当院ホームページやお電話でご確認ください。

なるべく早く、万全な態勢で診療するよう努力しておりますので、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

震災後、不安、不眠、かぜ症状、めまいなどのを訴える方が大変多くなっております。遠慮なくご相談ください。

これから、疲れやストレスが出てくる時期です。皆様くれぐれもお大事になさってください。
# by dobashinaika | 2011-03-31 08:04 | インフォメーション | Comments(0)

PTSD患者における動脈硬化と心血管病リスク

European heart journal 3月号からです。

Stiffness of large arteries and cardiovascular risk in patients with post-traumatic stress disorder
Eur Heart J (2011) 32 (6): 730-736.

幼少期の心的外傷後ストレス障害(PTSD)が、おとなになってからの身体的状態や心血管リスクに関連するか否かを検討したロシアからの論文です。

P:幼少時(1940年から1946年)にシベリアへの国外追放歴のある人

E:DSM-IVのクライテリアでPTSDと診断された80人

C:PTSDのない70人

O:既往歴、現病歴、身体所見、生化学検査、脈波伝播速度(PWV)

結果:
1)PTSD群は、冠動脈疾患、糖尿病、聴力障害,高血圧、高血糖、低HDLコレステロール,高中性脂肪が有意に多い

2)PTSD群では、PWVが有意に高い(13.7 vs. 12.9 m/s, P= 0.042)

3)PWVの数値はPTSDの重症度に応じて増加した

4)PTSDは冠動脈疾患発症の強いリスクファクターである(OR 3.80; 95% CI: 1.62–8.94; P = 0.002)

結論:幼少期の数年にわたる国外追放とそれによるPTSDは心血管病リスクを上昇させる。

###PTSDと心血管疾患の関係は良く報告されています。幼少期のPTSDがその後の心血管リスクファクターになるとのことですが、PWVの差はそれほどでもありません。対象症例数も少ないです。ABIや頸動脈エコーその他の指標も知りたいところです。
# by dobashinaika | 2011-03-29 23:35 | 虚血性心疾患 | Comments(0)

心房細動のアップストリーム治療に関するレビューです

Europace 3月号のレビューからです。アブストラクトのみまとめます。

Upstream therapies for management of atrial fibrillation: review of clinical evidence and implications for European Society of Cardiology guidelines. Part I: primary prevention
Europace (2011) 13(3): 308-328

心房細動はmorbidityとmortalityの両者に密接に関係している
・ 心房細動それ自体が引き起こす連続的な構造的リモデリング、エイジングに伴う変化、器質的心疾患による負荷などから二次的に引き起こされる進行性疾患である
昨今の心房細動管理の趨勢は、再発予防(二次予防)、脳塞栓のリスク評価と予防、レートコントロールとリズムコントロール(抗不整脈薬、カテーテルまたは外科的アブレーションによる)などである。
・ (心房細動の)基質の発生の防止やリスクファクターの修飾を目指した一次予防のコンセプトは、メカニズム—ベイストな昨今の実験結果により、クローズアップされてきた
アップストリーム治療というのは、心房細動の発症や再発予防のために、このような心房の基質や特異的な標的物質を修飾する非抗不整脈薬療法のことをさす
・ これには、ACE阻害薬、ARB、スタチン、ω−3不飽和脂肪酸、糖質ステロイドがある
動物実験ではこれらの薬剤に、電気的、構造的リモデリングへの明らかな予防効果が認められている
アップストリーム治療の重要な標的は心房における線維化、肥大、炎症、酸化ストレスといった構造的変化だけでなく、心房のイオンチャネルやgap junction,カルシウムハンドリングの直接的、間接的効果も含まれる。
一次予防に関するRCTはこれまでないが、ACE阻害薬やARBの器質的心疾患患者における新規発症抑制効果を二次エンドポイントとした試験や、心臓手術後のスタチンの心房細動抑制効果を検討したレトロスペクティブな解析はある。
二次予防に関しては、これまでのアップストリーム治療の試験成績は明らかに(アップストリーム治療が)推奨されないものであることを示している。
・ 小さな、レトロスペクティブな試験では、限定的な患者においてはポジティブでも、プロスペクティブなRCTではいまだにcontroversialまたは大半がネガティブデータである。
・ 注意すべきことは、これらの論争がmortalityあるいは非致死性心血管イベントを問題にしている点である。
・ こうしたアウトカムはレトロスペクティブな解析や大規模ECTで検証されてきたが、なお結論が出ておらず、将来への検討課題となっている。


###心房細動アップストリーム治療の現状がわかる大変良くまとまった言説だと思います。一次予防に関しても著者はpendingとしていますが、J-RHYTHM IIとANTIPAFがでており、それぞれ十分とは言えないまでも結論に一定のベクトルがあると見てよいというのが現状ではないかと思います。
# by dobashinaika | 2011-03-28 23:03 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

心血管系の薬を飲むかどうかの意思決定は、データの提示方法に依存する:Annals of Family Medicineより

今日は、心血管系薬剤服用における意思決定に関する論文です。
Annals of Family Medicine 3・4月号から

Patients’ Preferences for Ways to Communicate Benefits of Cardiovascular Medication

Annals of Family Medicine 9:121-127 (2011)

目的:患者が心血管系予防薬を服用する際の意思決定において、5年リスクスコアの伝え方がどう影響するかに関しての研究

方法:
・ニュージーランド、オークランドの家庭医を受診した連続934症例対象(フラミンガム冠動脈リスクスコア5〜30%)
・ 今後5年間の心血管イベントリスクを、相対危険、絶対危険、オッズ、治療必要数(NNT)、自然発生頻度の5種類の数値を提示し、「毎日服用するように動機付けられたランキング」と「あなたの意思決定に役立ったランキング」をつけてもらった
・ 提示方法(図か数字か)、医師の意見の寄与等についても尋ねた。

結果:
1)「動機付けランキング」「意思決定ランキング」ともに1位相対危険、2位絶対危険でNNTが最下位
2)年齢、性別、人種、計算能力、心血管リスク、心臓発作に対する考えに影響されず
3)図(棒グラフまたは100人表)の方が数値のみ提示よりも好まれた(55.2%)
4)61.8%の人が図や数字よりも医師の意見を選んだ
心血管系の薬を飲むかどうかの意思決定は、データの提示方法に依存する:Annals of Family Medicineより_a0119856_19503991.jpg


結論:患者が心血管系薬剤を服用する場合の選好は、リスクの大小やイベントに対する考え方よりも、効果の提示方法に依存した。各患者が、どの提示方法を好むのかは予測できないので、1種類以上の提示方法が役立つと思われる。

###同じ研究者らによる以前の研究では、やはりRRを図で提示する場合が、患者の意思決定に最も影響を与えることが示されており、今回患者のリスク別に検討しましたが、リスクに関係なくやはり同等の結果とのことです。RRは当然のことながら、数字が大きく出るので、意思決定に影響を与えてしまうと説明できると思います。
しかし、それよりも、やはり医師の意見が最も大きな要素であるという結果が興味深いです。社会心理学の「二重過程理論」ではクライアントの情報処理に対する動機付けと能力の両者ともが高い場合は、自己決定の度合いが多く(中心ルート)、そうでない場合は、情報発信者がどの程度信頼できるか、魅力的か(周辺ルート)と言ったファクターが意思決定に影響するとされていますが、医療上の意思決定は、やはり依然として周辺ルートによる場合が多いのかも知れません。ヘルスリテラシーをどのように向上させるか、震災後、最近こればかり考えています。
# by dobashinaika | 2011-03-27 19:55 | リスク/意思決定 | Comments(0)

心房細動における重症腎機能低下と脳塞栓予防:JACCのレビューから

Journal of American College of Cardiology 
3月22日号のSTATE-OF-THE-ART PAPERからです。

Severe Renal Impairment and Stroke Prevention in Atrial Fibrillation: Implications for Thromboprophylaxis and Bleeding Risk

J Am Coll Cardiol 2011 57: 1339-1348

本文の結論を元にかいつまんで要約します。

・ 透析患者の心房細動は増加しており、有病率は7~27%と言われている。
・ 重症腎不全患者の心房細動は、脳塞栓リスクの増加と関連がある(9.8倍)
・ しかしながらこうした患者の抗凝固療法におけるリスク/ベネフィットを評価したRCTはない。
・ 注意すべきことは、心房細動で抗凝固療法を受けている透析患者では大出血の頻度が高いという点である。
・ こうしたデータは、正確なモニタリングの欠如、目標INRを維持することの困難(スタディ間に差異あり)、不適切な出血の分類と言った因子に影響される。
・ このような限定的なデータを、重症腎不全のような出血と塞栓との両リスクを持つ不均一な患者集団に当てはめることは困難である。
・ 将来的に、腎機能低下に影響されない抗凝固薬が登場すれば、腎不全患者の塞栓予防効果と出血リスクとのバランス改善に有望かもしれない。もちろん腎不全合併心房細動患者に特異的な臨床試験は必要だが。
・ 現時点で腎不全例での経口抗凝固薬は禁忌とすべきではないが、患者ごとのバイアスは考慮されねばならない。
・ ワーファリンは低用量から開始し、正常腎機能例よりも頻回にモニターする必要がある。
・ 定期透析時患者においては透析の機会ごとに,INRをモニターすることが出血を防ぐことになる。

###透析患者さんは、高率に心房細動を合併します。エビデンスも豊富に紹介されていますが、決め手となるRCTが乏しいのが現状のようです。このレビューで強調されているように、モニタリングをこまめに正確に行い、出血リスクと塞栓予防効果を患者さんごとに評価することが重要であると思われます。
# by dobashinaika | 2011-03-26 19:01 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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