アピキサバンはワルファリンに比べ心房細動合併透析患者の大出血リスクを少なくする:Circ誌


疑問:アピキサバンは透析を伴う末期腎臓病(ESKD)合併心房細動にも有効か?

方法:
・ United States Renal Data Systemにおけるメディケア登録者対象のレトロスペクティブコホート
・心房細動合併の透析を行うESKD患者で,新規に抗凝固薬を開始した人
・アピキサバン群vs. ワルファリン群,prognostic scoreでマッチング
・脳卒中/全身性塞栓症,大出血,消化管出血,頭蓋内出血,全死亡を比較

結果:
1)25,526例,女性45.7%,平均68.2歳,アピキサバン2351例,ワルファリン23712例

2)アピキサバンは2012年末から認可され2015年では新規処方例の26.6%

3)脳卒中/全身性塞栓症:有意差なし(HR 0.88, 95% CI 0.69-1.12; P=0.29)

4)大出血:アピキサバンで有意に少ない(HR 0.72, 95% CI 0.59-0.87; P<0.001)

5)用量別:アピキサバン5mgx2は2.5mgx2およびワルファリンより脳卒中/全身性塞栓症,死亡が有意に少ない

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結論:透析中の心房細動合併ESKD患者では,アピキサバンはワルファリンより大出血が少なく,標準用量では,塞栓症や死亡も少なかった。

Disclosures:なし

### アピキサバンは腎排泄が27%程度と他のNOACより低く,低腎機能例に用いられていましたが,透析患者でのデータはこれまでありませんでした。禁忌はCCr15未満ですが,実臨床は透析患者にも使われている場合もあり,それを集計したものです。

アピキサバンのほうが大出血が少ないとのことですが,絶対危険をみてみると,ワルファリンが年間22.9%なのに対し,アピキサバンは19.7%で3%少ないようです。多くは消化管出血ですが両群とも23%前後,頭蓋内出血も有意差なく,どちらも3.4%前後でした。一方脳卒中/全身性塞栓症は両者とも12%前後でした。

大出血は差があるが,消化管出血と頭蓋内出血別に見ると差がないので,その他の出血で差があったのかもしれません(そこまで読めませんでした)。アピキサバンはワルファリンに比べれば,出血リスクは少なそうではあります。

ただし,それぞれのネットクリニカルベネフィットすなわち「抗凝固薬を投与したことによる塞栓症リスク減少分利益-出血リスク増大分」がわかっていませんので,この論文を持ってアピキサバンgoではないと思われます。

そもそも出血自体20%/年以上(死亡も24.7%)と相当多いので,やはり投与の是非は相当慎重に行く必要があると思われます。

RCTやXa活性測定などを考慮した追加試験が必要ですが,出てくるでしょうか。

$$$ 玄関先に来たかえるさん,ふみそうになって焦りました。
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# by dobashinaika | 2018-08-02 07:34 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は抗凝固薬の有効性安全性を低下させる:JACC誌


疑問:ダビガトランを飲んでいる人において,非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID)はアウトカムに影響を与えるのか?

方法:RE-LY試験のpost hoc解析

結果:
1)NSAID服用者2279人(18113人中)

2)大出血:NSAID群で有意に多い(ハザード比1.68; p < 0.0001)

3)消化管出血:NSAID群で有意に多い(ハザード比1.81; p < 0.0001)

4)脳卒中/全身性塞栓症:NSAID群で有意に多い(ハザード比1.50; p < 0.007)

5)NSAIDはワルファリンに比べての,ダビガトランの相対的有効性に影響を与えず

6)心筋梗塞:NSAID使用非使用で同じ

7)入院;NSAID群で有意に多い(ハザード比1.64; p < 0.0001)

結論:NSAIDは大出血,脳卒中/全身性塞栓症,入院のリスク上昇に関連した。ダビガトランのワルファリンに比べての有効性と安全性は不変だった。

ワルファリンでは,以前から抗凝固薬併用でイベント上昇は常識でした。

ダビガトランでもその弊害は同等とのことです。NSAIDは腎機能も低下させますので,腎排泄薬への悪影響も懸念されます。
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いずれにしてもなるべく併用しないように心がける必要があります。特に整形外科などに通院していて,知らないうちにNSAIDが処方されているケースを時に経験します。よく連携を取り合う必要があります。

$$$ 仙台へも火星大接近
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# by dobashinaika | 2018-08-01 07:18 | 抗凝固療法:抗血小板薬併用 | Comments(0)

日本の心房細動患者では安定した心不全は脳卒中のリスク因子として示されず:伏見AFレジストリ


目的:心不全は様々なタイプが有る。どのタイプの心不全が心房細動の脳卒中/全身性塞栓症に影響するのかを検索

方法:
・伏見AFレジストリ登録患者3749例
・心不全の定義;心不全の入院歴,症状(NYHA≧2),低EF(<40%)

結果:
1)1008例(26.9%)で事前心不全あり

2)事前の心不全(各項目ごとも含め)は脳卒中/全身性塞栓症の発症と関連しない:HR, 1.24; 95% CI, 0.92–1.64)
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3)BNP.NT-proBNP高値は関連あり:HR, 1.65; 95% CI, 1.06–2.53

4)脳卒中/全身性塞栓症が入院後30日以内に明らかに多い:HR, 12.0; 95% CI, 4.59–31.98

結論:心房細動における心不全の脳卒中/全身性塞栓症への影響は,心不全のステージや重症度に依存する。脳卒中/全身性塞栓症は心不全入院30日以内明らかに増加するが,代償された「安定した」心不全はリスクへの関与は明らかではなかった。

### 心房細動があっても,よく管理された高血圧,糖尿病は脳卒中が少ないだろうことは直感としてわかりますが,心不全は流石に関係するだろうと思いきや。これも安定した心不全は全く脳卒中に関与しないことが伏見AFレジストリにより明らかとなりました。NYHAやLVFEが低くてもです。

関係したのは,「心不全入院30日以内」です。やはり心不全非代償期は凝固能の亢進,利尿薬投与など血栓ができやすい状況と思われます。

またBNP/NTproBNPも関係しました。それぞれのカットオフ値は測定し得た例の平均値で分けていてBNPが169.4pg/mL,NT-proBNPが1,457 pg/mLでした。全例測定でなく,測るべきと考えられた人で比べますので,選択バイアスはありカットオフ値の判断までできないかと思いますが,極端な高値は注意する指標として有効かと思います。

伏見AFレジストリ開始から7年。これまで明らかになった日本の抗凝固療法の「リアル」は数知れず,最近までのデータの蓄積は間違いなく今のそして今後の日本の心房細動診療を左右する要になると思われます。先日久々に赤尾先生にお会いする機会がありましたが,「伏見」をささえるシステム,とくにリーダーの赤尾先生とそのフォロワースタッフのチームの素晴らしさがこの研究を開花させたことが強く印象に残りました。

そしてCHADS2スコアですが,今の日本にはほとんど当てはまらないことはもはや明白だろうと思われます。伏見その他のレジストリからは「脳卒中の既往」「75歳以上」が最強で,(よく管理された)高血圧,糖尿病,心不全は関係ないことになります。かわって「持続性」「低体重」「低腎機能」「貧血」「左房径」などがスコアに入ってくるかもしれません。他の集団でも同じようなアウトカムが示されてきいます。

今のところは,以前拙著でも提唱したように,CHADS2スコア2点以上は暫定的に抗凝固薬必須としておいて,0,1点の場合に,安定した高血圧と心不全,糖尿病が1点の項目だったときは,「持続性」「低体重」「低腎機能」「貧血」「左房径」のどれか一つがあれば適応とかんがえる,つまり低リスクの場合上記の付加項目を「考慮する」というスタンスで行きたいと思います。ガイドラインが変わるまでです。

$$$ 東京で見かけたラーメン屋さん。この季節これは致命的では。。(仙台ではそうでもないけど)
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# by dobashinaika | 2018-07-25 07:07 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

低リスク無症状の人に心電図スクリーニングは勧められない;USPSTF Recommendation

US Preventive Services Task Force (USPSTF )から心電図スクリーニングに関する推奨が出ています。2012年に出たものの改訂版です。

結論:
・心血管疾患低リスク(10年イベントリスク<10%)の無症状の成人において,安静時心電図あるいは運動負荷心電図のスクリーニングを勧めない(D推奨)

・中〜高リスクの無症候性の成人での,利益と害のバランスを検討したエビデンスは不十分 (I statement)

論拠の論文はこちらです。

### 複合心血管イベントのアウトカム改善効果は低い。一方過度の介入(カテなど)による害についてのエビデンスは限定的としています。2012年版と基本姿勢は同じです。

健診,術前検査でほぼルーチンに行われている心電図検査ですが,なんの疑問もなしにやることに再考を促されそうです。毎年市民検診を担当していますが,たしかに毎年異常無しの方でも取っています。日本の費用対効果を調べたものはないでしょうか。

$$$ 始めるのが遅かったミニトマト,ようやく色づいてきました。
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# by dobashinaika | 2018-07-19 06:01 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

プライマリ・ケアにおいて最も安全性の高いNOAC(DOAC)は?:BMJ誌


目的:(プライマリ・ケアレベルでの)DOACとワルファリンの有効性,安全性比較

デザイン:前向き,オープン,コホート

セッティング:英国の2つのプライマリ・ケアデータベース。UK general practices contributing to QResearch or Clinical Practice Research Datalink.

対象:ワルファリン132231例,ダビガトラン7744例,リバーロキサバン37863例,アピキサバン18223例。登録前12ヶ月は抗凝固薬処方なし

主要評価項目:大出血(入院,死に至る),合わせて特定部位の出血,全死亡も検索

結果:対ワルファリンハザード比(心房細動症例,補正後)
1)アピキサバン:大出血0.66 (0.54 to 0.79),頭蓋内出血0.40 (0.25 to 0.64)

2)低用量アピキサバン:全死亡1.27 (1.12 to 1.45)

3)ダビガトラン:頭蓋内出血0.45 (0.26 to 0.77)

4)リバーロキサバン:全死亡 1.19 (1.09 to 1.29)

対ワルファリンハザード比(非心房細動例)
5)アピキサバン:大出血(0.60, 0.46 to 0.79),消化管出血((0.55, 0.37 to 0.83),上部消化管出血(0.55, 0.36 to 0.83)

6)低用量アピキサバン全死亡(1.34, 1.13 to 1.58).

7)リバーロキサバン:頭蓋内出血 (0.54, 0.35 to 0.82). 全死亡(1.51, 1.38 to 1.66)

結論:全体としてはアピキサバンはワルファリンに比べて大出血,頭蓋内出血,消化管出血を減らす安全な薬剤である。一方,リバーロキサバンと低用量アピキサバンはワルファリンに比べて全死亡増加させた。

資金提供:NIHRから。企業からの提供なし。

### 全体としてはアピキサバンが最も安全との結果です。ただし低用量ではかえって死亡率を上昇させる結果になっていました。
一応補正されているとはいえ低用量を使う症例はそれだけ高リスクであることが関係していると思われます。低用量処方は控えるべきとは一概に言えませんが,注意を要することは必要と思います。
アドヒアランスや適応などはデータベースからは不明です。

### 今日のニャンコ,見えにくい。
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# by dobashinaika | 2018-07-13 07:38 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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