心房細動は発作性から持続性に移行するときにイベントリスクが上昇する:Stroke誌

Paroxysmal to Sustained AF and Increased Adverse Events

Stroke. 2018;0:STROKEAHA.118.021396


臨床上の疑問:発作性から持続性への進行は心房細動患者の有害事象にどのようなインパクトがあるのか?

方法:
・FUSHIMI AFレジストリ
・4045例(発作性1974例,持続性2070例)
・心房細動の進行と有害事象の関係を解析
・平均追跡期間:1105日

結果:
1)発作性→持続性への進行例:252例(4.22/100人年)

2)進行例は,進行しない例,および期間を通じて持続性だった例に比べに比べ脳卒中/全身性塞栓症リスクが明らかに増大(対非進行例 aHR:4.10, 95%CI:1.95-8.24, P=P<0.001)(対長期持続例aHR:2.20, 95%CI:1.11-4.00, P=0.025)

3)進行したあとのイベント率は,長期持続例と同じ (aHR, 1.54; 95% CI, 0.78-2.75, P=0.201)

4)心不全入院についても同様の結果:
対非進行例 (aHR,2.0; 95% CI,1.55-4.52, P<0.001)
対長期持続例 (aHR, 1.81; 95% CI, 1.08-2.88, P=0.026)

結論:心房細動の(タイプの)進行は臨床的な有害事象と関連する。有害事象のリスクは発作性から持続例に移行するとき一過性に上昇し,長期持続化すると減少する。

### 先日共著者の赤尾先生に,このペーパーのことをお聞きして久々に興奮いたしました(笑)。心房細動は発作性から持続性に移行するときにイベントが多い。このことは実は私も前々から薄々感じておりまして,持続化して1年以内くらいで脳卒中になる人が多いとは実感していたのですが,こうしてしっかりしたデータが出てきてやっぱりなあ(やられたなあw)という感じです。

ただし機序としては,たとえば発作が頻回となると左心耳血栓が形成されやすくなるわけですが,洞調律に戻る頻度も増えるのでこのとき左心房がスタンニングから動き出して血栓が飛ぶ頻度も増える,といったことも考えられるわけです。しかしACCのメールマガジンのコメントにもありますように,心房細動の進行と有害事象の進行に共通の病態生理があるためと考えることもできます。

「進行例」の定義は大事ですが,本文が入手できておりませんので明らかになったらまたご紹介します。

いずれにせよ観察研究ですので,因果律を当てはめることはこのままではできません。

ですが,この事実が真実に近いならば,持続化しそうな一歩手前でアブレーションをすることは合理的とも言えますので,その意味で大変貴重な報告と思われます。

※Progressionは進行と訳しましたが,進展などの用語もあるかと思われます。

※追記(2018/10/04):全文を確認したところ,"paroxysmal""persistent""permanent"の定義はESCガイドライン2016に従っています。
また,”Progression of AF”の定義は対的期間中にparoxysmalから"susutained(persistent or permanent)"への変化,です。
”peri-progression period"はparoxysmalからsustainedへ変化するときの1年間,とされています。

$$$ 大阪行ってきました。48年ぶり太陽の塔の内部に潜入しました。感動しました。
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# by dobashinaika | 2018-09-20 22:27 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

CHA2DS-VAScスコアで抗凝固薬の適応を自動的に決めた場合とそうでない場合とでアウトカムは変わらず:IJC誌


背景:ガイドラインはCHA2DS2-VAScスコアをもとにした意思決定を推奨しているが,アンダーユーズも存在する。ジェネラルプラクティスにおけるRCTにより,自動的な意思決定のインパクトを検証。

方法:
・CHA2DS2-VAScスコアに基づいて自動的に抗凝固療法を行う介入群と対照群の比較
・一次アウトカム;脳卒中/全身性塞栓症/TIA
・二次アウトカム:大出血

結果:
1)対照群1192例(19施設),介入群1226例(19施設)

2)平均77歳,CHA2DS2-VAScスコア平均3.0,平均追跡期間:2.7年

3)CHA2DS2-VAScスコア2点以上でのアンダーユース:6.6%

4)一次アウトカム;介入群1.96%/年 vs. 対照群1.42%/年 ,HR 1.3, 95% C.I. 0.8–2.1)。有意差なし

5)二次アウトカム:介入群0.79%/年 vs. 対照群0.82%/年 。有意差なし

6)アンダーユース:介入群7.2%/年 vs. 対照群8.2%/年

7)オーバーユース:介入群8.0%/年 vs. 対照群7.9%/年

結論:この研究では抗凝固療法のアンダーユースは比較的少ない。CHA2DS2-VAScスコアに基づく意思決定サポートは脳卒中を減らさず,出血やアンダー/オーバーユースに影響しない。

### CHA2DS2-VAScスコア自体が否定されそう,と思いきや対照群といえどもかなりCHA2DS2-VAScスコアを重視していオーバーもアンダーユースも自動的に決めた場合と同じ割合だったようです。

きわめて質の良いGPの集団を選んだ,またはそういう医師だからこそ参加したのかもしれません。しかしCHA2DS-VAScスコア5−6点で超高齢者,フレイルなどでもきちんと出していたのでしょうか。

アウトカムの頻度も非常に低めです。普段の血圧その他の管理も良好なのかもしれません。全文読んだらまた報告します。

# by dobashinaika | 2018-09-20 08:24 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

日経メディカルオンライン連載第4回「ワルファリンかNOACか 絶滅危惧種? ワルファリンの使い道はここだ」掲載されました

日経メディカルオンライン連載の第4回は「ワルファリンかNOACか 絶滅危惧種? ワルファリンの使い道はここだ」です。

「いまさらワルファリン?」と言われそうです。たしかにD/NOACは便利です,が,しつこくワルファリンも必要だよ,と言い続けていきたいと思っています。
要無料登録ですが,ご覧いただければ幸いです。



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# by dobashinaika | 2018-09-20 06:52 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

DOAC(抗凝固薬)をやめないといけない瞬間,それは生活世界の安定性が保てないとき

先週末,大阪の第66回日本心臓病学会出席のため,日帰り弾丸ツアーを敢行しました。

今回は,JAPAN CARDIOLOGY CLINIC SESSION というシンポジウムで,全国各地域でいわゆる”イケてる”循環器診療に携わる診療所あるいは病院の医師によるセッションでした。わたしは単にブログやったり好き勝手にしているものの代表といった感じでしたが,他の先生方のご発表は臨床テータに裏打ちされた非常に実証的かつ実践的なもので,大いにインスパイヤされました。こうした会に出向くと,世の中にはまだまだすげー人がいるなあと痛感するわけです。学会参加の意味とは,こうしたすげーものに出会った翌日に味わう現前の日常のがっかり感と,このすげーもの感とのギャップをどう埋めるかにあるとも言えます。

さて,このセッションに先だって,本業(というか趣味というか)の抗凝固のセッションで「DOAC中止を考えないといけない瞬間」という大会会長指定のケースカンファを聞きました(その前の「DOAC中止を考える瞬間」は間に合わず。タイトルの意味がどう違うかわわからず)。

2症例提示され,1例目は50代 CHADS2スコア1点でカテアブ後3ヶ月でDOAC低用量処方中に頭蓋内出血(メジャー後遺症なし)。2例目は80代,CHADS2スコア3点,認知症,村落在住の方に処方するか,という問題提示です。

1例目,頭蓋内出血のDOACについては,一応ESCのガイドラインでは急性期は当然中止した上で4〜8週後(長い?)に再開というのが推奨度IIb,エビデンスレベルBとなっていますが,その前提として「出血の原因となったリスク因子の管理し,再開を支持,あるいは保留する因子を吟味した上で「多種職種チーム」の助言をもとに患者,近親者が選択する」となっています。

ディスカッションではなぜ50代で低用量なのにICHを起こしたのかその原因を明らかにすべきである,できればこうしたケースの場合Xa活性などのバイオマーカーがほしいといったコメントが有り,この2点は大変重要と思われました。

2例目は,高齢者心房細動患者で多いイベントは死亡であり脳梗塞ではない,抗凝固薬下の高齢者イベントは出血>梗塞であり,腎機能ほかバイオマーカーをできるだけこまめにチェックする,服薬アドヒアランスが大変重要である,といった議論の流れだったかと思います。

このディスカッションを聞きながら,この後自分が発表する「複雑性を軸にした心房細動診療の困難性と醍醐味 」について改めて考えてみました。

今回の発表では,当院で過去5年間に抗凝固薬投与下に死亡,脳梗塞,大出血などの大イベントをきたしたケースの検討を行いました。そのうちの多くの症例にみられる臨床的特徴は「高血圧,アルコール。INR不安定,腎機能低下,高齢」が挙げられました。

しかしながら,こうした生物医学的とも言える背景のそのまた背景に「認知症,アドヒアランス低下,独居,低収入,家族の支援なし,食事が不規則」といったキーワードが浮かび上がってきました。

独居あるいは家族のつながりが希薄,あるいは生活自体が不規則。そうしたことがアドヒアランス低下をもたらしたり,血圧の上昇,アルコール多飲,栄養不良などをきたし抗凝固作用に何らかの影響が及んで大イベントが起こる。そうした図式が想定されます。

日経メディカルでも強調させていただいているように,最近患者さんを「複雑性」のカテゴリーで考えるようにしておりますが,より実践的に「複雑性」と何かをほぐして考えますと,複雑性とは「生活世界の不安定性」と読み替えることが可能です。

生活世界の安定には,医師一人だけの診察室での手当では到底太刀打ちできません。相手はアドヒアランス,食事栄養,認知症ケアなどなどです。多職種による多角的視点から見た手当が必要なのです。先のESCガイドラインでもICH後の再開でさえ「多種職種チーム」の助言をもとに患者,近親者が選択する」ことが明記されています。

診療所で見る心房細動患者さん,特に在宅診療を受けている方においては,今回専門病院から提示されたケースよりかなり複雑です。
「在宅で要介護3でベッド上生活。抗凝固薬は服用中」「老老介護で夫婦ともに認知症。食事が不規則」そうした症例のDOACをやめるかいなか,そのへんが切実なのです。

DOAC(抗凝固薬)をやめないといけない瞬間。私,自分の講演では
1)腎機能極度の低下時 2)血圧管理不良 3)アドヒアランス不良 4)大出血時(再開を視野に入れながら),5)ベッド上生活で寝返りが打てない状態になったとき,
などを挙げ,年齢だけで決めてはいけないということをこれまで述べてまいりました。

今回発表のために自験例をまとめた中で,あらためて感じた「やめないといけない瞬間」,それをもうすこし包括的な視点から言うと「患者さんの生活世界が安定せず打開策が見えないとき」となります。

これに対する打開策を得るためには多職種の連携が必要。それには各職種のメンバーが
1)抗凝固療法では出血と梗塞の両方の管理が必要である。
という臨床的な統合(ゴールの共有)の他に

2)イベントを減らすためには「生活世界を安定させる」ことが必須である。
つまり「生活世界ファースト」の価値観・文化・視点を共有する(規範的統合)
ことが根本であると思われます。

観念的な話ですみません。もう少し実臨床に即した形でまた書きます。

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# by dobashinaika | 2018-09-11 01:02 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

「ケアネット」の患者向けスライド「脳梗塞予防薬(抗凝固薬)を飲むにあたって」の改訂版を作成しました

医療情報サイトの「ケアネット」の患者向けスライド「脳梗塞予防薬(抗凝固薬)を飲むにあたって」を数年前に作成し,おかげさまで同企画の歴代アクセス数No.1と好評を得ておりましたが,その改訂版をこの程発表させていただきました。

全体のコンセプトは変わりませんが,図やグラフをよりシンプルにしたり,NOACの解説を更新しました。
ややボリュームがありますが,ご参考になれば幸いです。


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# by dobashinaika | 2018-09-05 20:59 | 患者さん向けパンフレット | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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