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訓練を受けたチームによる看護師主導の心房細動ケアは通常ケアよりもアウトカムを良くする:EHJより

Nurse-led vs. usual-care for atrial fibrillation

European Heart Journal, Volume 41, Issue 5, 1 February 2020, Pages 634–641, https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehz666

背景:心房細動における看護師主導統合ケアは,通常のケアに比べ患者アウトカムを改善することが期待される。

方法:
P:心房細動患者671例:平均64歳,44%女性,57%がCHA2DS2-VAScスコア≧2

E:看護師主導ケア:循環器医のサポート下での意思決定支援ツールの使用

C:通常ケア

O:複合エンドポイント:心血管死,心血管入院

結果
1)抗凝固薬服用(ガイドラインベース):看護師主導群81%vs. 通常群 82%

2)累積服薬アドヒアランス(第語ラインベース):看護師主導群61%vs. 通常群 26%

3)主要エンドポイント:看護師主導群9.7%/年vs. 通常群 11.6%/年

4)不整脈イベントでの入院:看護師主導群7.0%/年 vs. 通常群 9.4%

5)心不全入院:看護師主導群0.7%/年 vs. 通常群 1.1%/年

6)結果は,訓練を受けた施設と受けていない施設で差があった:経験のある施設のハザード比0.52 (95% CI 0.37–to 0.71),非経験施設:1.24 (95% CI 0.94–1.63);交互作用P<0.001
訓練を受けたチームによる看護師主導の心房細動ケアは通常ケアよりもアウトカムを良くする:EHJより_a0119856_22004951.png


結論:看護師主導ケアが通常ケアより優れていることは示されなかった。今回のデータは経験のあるチームでの看護師主導ケアであれば,臨床的なベネフィットがある可能性を示した。

### 今回のESC不整脈この1年でも特集された統合ケアのうち,看護師主導のケアに関する検討です。看護師主導のケアとは,意思決定支援のためのツール(CardioConsult AF®)を使用して,治療法や背景リスク因子の管理,抗凝固療法,リズム&レートコントロールの情報を伝えます。また最初の訪問時に診断と治療のテストが行われ,その結果が治療に反映されます。最初の訪問時にアドヒアランス向上に関する,心理学的サポートと,病態生理,症状,合併症についての患者教育が行われます。通常ケアは,外来での医師による通常の診療です。

これまでもこうした統合ケアの重要性は指摘されてきましたが,今回の試験で注目なのは,経験のある施設のほうがアウトカムが良好だったということ。ラーニングカーブ,訓練の大切さが強調されています。

心房細動に限らず,医師と1対1で1回数分程度の患者教育をしても,効果は薄いですね。「抗凝固薬飲まないと良くないですよ」と短時間の診察で言ってみても,心に響きません。やはり多職種で,診察時間以外でも継続できるいろいろなツールの活用など多角的に患者さんと情報共有する必要があると思われます。

診察室以外で,医師だけでなく多職種で。以前から何度も繰り返していますが,この発想,マルモの時代で今後ますます大切になってくるし従来の診療システムを変革する必要が出てくるでしょう。

$$$ どこにいるでしょうか笑
訓練を受けたチームによる看護師主導の心房細動ケアは通常ケアよりもアウトカムを良くする:EHJより_a0119856_22033074.jpg



# by dobashinaika | 2021-01-17 22:08 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

1日1ドリンクの飲酒で心房細動発症のハザード比は1.18:EHJ誌より


目的:特に低用量アルコール摂取と心房細動発症の関係に関するエビデンスは,一貫していない。アルコール摂取,バイオマーカーと心房細動発症の関係をヨーロッパ人コホートで評価。

方法:
・住民ベースコホート,107,845人
・評価項目:アルコール摂取(種類,摂取法含む)と心房細動発症の関係
・心血管リスク因子,心不全,NT-pro BNP,高感度トロポニンTを情報収集

結果:
1)平均47.8歳,男性48.3%,平均アルコール摂取量3g/日

2)心房細動発症:5854人(平均13.9年追跡)

3)ワンドリンク(12g/日)ハザード比:1.16, 95% CI 1.11–1.22, P < 0.001.

4)アルコールの種類によらず

5)低用量摂取は心不全リスク低減と関連

6)アルコール摂取と心不全発症の関係は,バイオマーカーや心房細動発症によって完全には説明できない
1日1ドリンクの飲酒で心房細動発症のハザード比は1.18:EHJ誌より_a0119856_07121373.png

結論:心不全のような他の心疾患と異なり,1.2ドリンク/日の控えめで習慣的なアルコール摂取でも心房細動のリスクとなる。心房細動予防の観点から考慮する必要がある。

### 1日12gのアルコールでも16%程度,心房細動発症が増えるという報告。5%ビール350cc(純アルコール約14g)くらいまで,ワインなら1杯(120cc)くらいまでですね。

以前のNEJMの報告では,週2ドリンクまで節酒すれば心房細動再発は88%程度抑えられるというデータも有りました。https://dobashin.exblog.jp/239957741/

興味深いのは,心不全発症率はアルコール摂取量との間にJ-shapeを認める点です。心不全はそれほど一様な病態ではないということかもしれません。
1日1ドリンクの飲酒で心房細動発症のハザード比は1.18:EHJ誌より_a0119856_07131490.png
しかし1日ビール350cc1本でも心房細動発症リスクといわれてもなあ,という感じもします笑。

$$$ 先日のどんと祭。例年になく静かな落ち着いた雰囲気でした。
1日1ドリンクの飲酒で心房細動発症のハザード比は1.18:EHJ誌より_a0119856_07141097.jpeg

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# by dobashinaika | 2021-01-16 07:15 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

デジタルヘルスとイノベーション不整脈編:ESC2020この1年より

ESCこの1年,最後はデジタルヘルスとイノベーション不整脈編

- 英国,60万人以上のプライマリ・ケアセッティング
- AIアルゴリズムによる心房細動リスク予測
- 陰性予測値96.7%,感度91.8%

- 12誘導心電図からの畳込みニューラルネットワークによる潜在性心房細動スクリーニング
- AUC0.9と良好
- 18万人,45万のトレーニングセット,64000の内的妥当性のためのセット,13万のテストセットを使用

-アルゴリズムは AFのスクリーニングを完全に変貌させるだろう
-抗凝固療法が適切なタイミングで行えるようになるだろう
-天文学的サイズのデータべースは,ディープラーニングがどう機能するか,再現性を持ち診療を変化させるツールとなるかの良いサンプルである
-アルゴリズムは近い将来,クリニックでポータブル心電図として利用可能となるだろう

- アルゴリズムの問題の一つとして,adversarial examples(敵対的事例)の攻撃を受けやすいことがある。
- 人間の目には区別できない虚偽のパターンをアルゴリズムがご分類してしまう
- Han et al:adversarial examplesのインパクトを学習するツールや適正な補正のための機会を提供

- PTB-XL:21,000記録,19,000人データ
- データベースの変動性と民族多様性が増えることで,ECGアプリが近い将来臨床実装可能になるとの楽観視

- 230万ECG,160万人データ

- スマホによる潜在性心房細動診断
- 420,000人,117日フォロー
- 潜在的な不整脈を0.5%同定。34%が心電図で心房細動と診断
- まだ正確さにおいて有用とまでは言えないが,将来の可能性が開いた

デジタルヘルスとイノベーション不整脈編:ESC2020この1年より_a0119856_08312252.png
2020年はAIアルゴリズムの循環器領域への参入が,凄まじい勢いで見られる年でもありました,著者が図らずも”アルゴリズムは AFのスクリーニングを完全に変貌させるだろう”と述べていますが,おそらくそうなるでしょう。

患者データと心電図1枚をAIに入力する(もしくは何もしないで電カルだけからでも)だけで,心房細動の発症率がかなりの精度で分かるようになる。そんな時代がそう遠からず来るでしょう。

そうなったとき患者医療者関係はどうなるのか。問題はコミュニケーション論に移行すると思われます。AI先生のご宣託を人はどう捉えるのか。アップルウォッチならぬ,たとえば使い捨てリストバンドとか,ユニクロの廉価なTシャツで心房細動の同定が可能になったら,人はどうするのか考える必要があります。

患者さんが医師からリスクを説明されたとき,たとえば血圧140以上は危ない(この言い方はよくないけど)といわれたとき,多くは1)全く気にしない 2)始終気になって頻繁に血圧測定し不安になる 3)医師に相談すべき場合を自分で判断する の3パターンがあると思われます。AI時代にそれがどう変わるのか。

きのうは何分間の心房細動が何回かあったと告げられたら,あるいは何年か後に〇〇の確率で心房細動になるかもしれないと言われたら,それも医者より確実なAI先生から言われたらどういう反応が患者さんからあるのか,その時人間である医者はどう対応するのか。まあAIだからといって特別なことはないかもしれません。しかしそれも人間には理解不能な,かつ恐ろしいほどの正確さで言われたらどうか。興味と危惧はつきません。

# by dobashinaika | 2021-01-14 08:31 | 心房細動:診断 | Comments(0)

術後心房細動は,死亡率,心血管イベントと連あり:ESC不整脈この1年より

ESCの不整脈この1年。最後は「術後心房細動」です。



P:非心臓手術施行の心血管疾患を持つ患者
E:メトプロロール (POISE-1),アスピリン。クロニジン (POISE-2)
C:プラセボ
O:心房細動,その他の有害事象

結果:
1)POAF(術後30日以内);404/18117
2)脳卒中(術後1年以内):5.6% vs. 1.5%(non-POAF患者)
3)死亡(31.3% vs. 9.3%),心筋梗塞 (26.2 vs. 8.2) とも増加
術後心房細動は,死亡率,心血管イベントと連あり:ESC不整脈この1年より_a0119856_06314087.png
・POAF患者は術後1年以内の脳卒中,心筋梗塞,死亡がnon-POAF患者より多い。
・しかしデクスメデトミジン(麻酔薬)を用いたPCTでは,同薬はPOAFを減らさなかった

### 手術を契機に心房細動を起こすケースは,やはりそれだけ心房筋のリモデリングが進んでいて,心血管リスクの高いということでしょうか。手術後の心房細動出現には要注意です。



# by dobashinaika | 2021-01-10 06:36 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

心房細動リズムコントロールのランダム化試験に関するまとめ:EHJ不整脈この1年2020より

昨日のESC「不整脈この1年2020」の続きです。


今回はリズムコントロールに関するランダム化試験です。
心房細動リズムコントロールのランダム化試験に関するまとめ:EHJ不整脈この1年2020より_a0119856_18104168.png

- EAST-AFNET 4トライアル発症1年未満の心房細動。リズムvs. レート
- リズムコントロール:抗不整脈薬とカテーテルアブレーション
- リズムコントロール群:入院滞在時間,安全性低下をきたすことなく,心血管イベントを低下
- この試験の結果は,従来の試験と競合する:早期介入(抗不整脈薬,アブレーション)の安全適応の点から
- 同試験は,「戦略評価」であり,CABAMA試験のように,洞調律維持か,適正な心拍数維持かといったシンプルな比較ではない
- 同試験の重要点は早期発見の心房細動ということ:心房細動のイベントはほとんど診断1年以内であるから
- 早期介入の有用性は2つのクライオアブレーション試験で示されている
- 心房細動の初期ケアは,非専門医でなく,専門医により施行されるべきである(以下に2つのエビデンス)

- 救急施設での早期リズムコントロール試験:
- 急性発症の心房細動対象
- プロカインアミドvs. 電気的除細動
- 電気的除細動のほうが,患者,医療機関双方にとって負担にならず

- カテーテルアブレーションは心不全アウトカム,QOL向上,コスト低減に有用
- カテーテルアブレーションは血管認知症発症低減に関連あり
- カテアブをサポートあるいは回避するために腎ディナーベーションや経皮的耳介迷走神経刺激などが報告されている

- CASA-AF試験:胸腔鏡下左房後壁隔離:左房後壁+左右頬部カテーテルアブレーションに比べ優越性なく,コスト,QOL面で劣る
- 侵襲は少なく,ラーニングカーブが期待される。


### リズムコントロールは,何と言ってもEAST-AF4が話題です。論者も行っているように,心房細動は発見1年以内が鍵です。その期間は専門医に臨床を任せるべきだとまで述べられています。侵襲医療に対してバイアスのない専門医であれば,期待できますね。

実際は発症1年以内といっても,すでにリモデリングは進んだ持続性症例も混在しますので,1例1例での詳細な検討が求められると思われます。

# by dobashinaika | 2021-01-07 07:32 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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