心房細動アブレーションのタイミング 〜スイートスポットはどこか?:European Heart Journal誌のレビューより
European Heart Journalにアブレーションのタイミングに関する総説が掲載されています。
通常のアブストラクトとグラフィカルアブストラクトを読みます。
Abstract
・発作性心房細動(PAF)の第一選択療法としてのアブレーションの有効性と、PAFと持続性心房細動(PsAF)でのリ薬物療法に対する明らかな優位性についての説得力のあるエビデンスがある
・このデータに基づいて、「早ければ早いほどよい」という原則が一般的に適用されるべきであるという見解が広まっている
・しかし、心房細動の自然経過は非常に変化に富み非線形であるため、すべての患者に対して発症後早期にアブレーションを行うことが最良であると断言することは困難である
・症状が軽度でよくコントロールされている、 頻度が少なく進行性のエピソードがない(すなわち、 PsAFに至る進行性の負荷増大がない)患者では、 保存的アプローチが妥当であることを示す十分なエビデンスが存在する
・保存的管理の重要なポイントは、危険因子の修正、心房細動エピソードの頻度や持続時間の変化、患者の嗜好に細心の注意を払うことである
・心房細動が進行後は、リスク因子に注意しながら早期にアブレーションを行うことが最良であるとのエビデンスが蓄積されている
Graphical Abstract
・1)症候性心房細動 2)リスク管理下でも頻発する心房細動 3)治療不応性のあり持続性心房細動 がアブレーションです
・HFrEF合併心房細動,症候性持続性は条件次第。低burden高QOLなら患者さんの希望次第
・初発から1年以内で再発なしなら推奨されない
といったところですね。
心房細動の発症時期やburdenもさることながら,リスク因子の修正、抗不整脈薬,除細動の反応,患者の嗜好などさまざまなファクターを総合しての判断というところが強調されています。
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by dobashinaika
| 2025-01-05 12:11
| 心房細動:アブレーション
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JAMA Networkによる心房細動の包括的レビュー:「心房細動全史」の提示
あけましておめでとうございます
細々とはありますがこのブログを続けていきたいと思います。
今年の初記事は,昨年JAMA Networkに掲載された心房細動の総説です。現時点での主要な病態の捉えからと診断,治療戦略が網羅されています。
主要サマリーとして「心房細動でよくある質問(FAQ)」が提示されています。
Q:心房細動患者において,脳卒中および血栓塞栓症予防のために抗凝固療法を受けるべき患者とは?
A:虚血性脳卒中または血栓塞栓症イベントの推定リスクが年間2%以上の患者では、抗凝固療法のベネフィットは大出血のリスクを上回る。CHA2DS2-VAScスコアなど脳卒中リスクの高い患者を特定するリスクスコアがいくつかある。抗凝固療法は、出血などの禁忌が生じない限り、無期限に継続すべきである。
Q:心房細動のリスクが高い患者にはどのような治療が推奨されるか?
A:リスクの高い患者の心房細動の予防には、減量、適度な運動、禁煙、飲酒量の減少、最適な血圧管理などの生活習慣や危険因子の修正が推奨される。
Q:新たに心房細動を発症した無症状の患者はどのように治療すべきか?
A:70歳未満の新規心房細動患者には、無症状であっても除細動と抗不整脈薬投与によるリズムコントロールが有効である。心不全や左室収縮機能障害のある患者に対しても、リズムコントロールを考慮すべきである。脳卒中または血栓塞栓イベントのリスクスコアが年間2%以上の場合は、抗凝固療法を開始すべきである。
またAHAでは一昨日ガイドラインが改定され,心房細動のステージ分類が改められました。より時間軸を意識し,従来からある心不全のステージ分類と波長を合わせてのものになってます。あらたにstage 1 としてat risk for AF,stage 2としてpre-Aが新設されました。この2つの分類は,心房細動が診断される以前の高血圧,肥満などの心房細動リスクのみが顕在化しているおり,実は病理学的には心房筋の変性が生じてくる段階で,左房拡大や心房期外収縮,非持続性心房頻拍などが検出されるフェーズです。
さらにStage 3Dとし「カテーテルアブレーション成功」が加わりましたがこれらの流れの基調を「心房リモデリング」としてとらえ,そこに心房細動との関連性に重点を置いた「心房細動全史」と言うべきシェーマが提示されています。
この図は心房細動というものを俯瞰的に理解するうえで大変参考になります。眼の前の患者さんが一体どの地点に位置しているのか,この図を意識しながら診療したいものです。
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by dobashinaika
| 2025-01-04 17:33
| 心房細動診療:根本原理
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ヨーロッパ心臓病学会の新しい心房細動マネジメントガイドラインを読む。"AF−CAREの理念"や"CHA2DS2-VAスコア"について解説
現在ロンドンで開催中のヨーロッパ心臓病学会に歩調を合わせて,2024ESC心房細動マネジメントガイドラインが発表されました。前回改定から4年ぶりです。
最も大きな変更点は基本理念です。
以前の”ABCパスウェイ”から”AF-CARE”という原則に変わっています。”CARE”とは以下
”C”:併存疾患とリスク因子の管理
”A”:脳卒中と血栓塞栓症の回避
“R” :心拍数とリズムのコントロールによる症状の軽減
”E”:評価とダイナミックな再評価
2020年版では,抗凝固療法→症状緩和→リスク/併存疾患管理の順に戦略を考える思考手順になっていましたが,今回は,より実践的と思われるAとR,つまり抗凝固療法とリズム/レートコントロールをはさむように,CとEという包括的な視点が導入され,それらが通奏低音のように鳴り響くイメージです。
以下のCentral illustrationにほぼ概要が集約されていますのでこれをもとに全体を紹介します。
まずキーコンセプトのAF-CAREについては3つのテーゼが示されています(推奨クラス,エビデンスレベル)
・年齢,人種,社会的地位にかかわらずすべでの心房細動にAF-CAREの平等な適応:I,C
・患者,家族,介護者,ヘルスケア職への教育:I,C
・多職種アプローチによる患者中心のマネジメント:IIa,B
次に”C”: Comorbidity and risk factor management(併存疾患/リスク因子管理)として
・高血圧:降圧治療(I)
・糖尿病:効果的血糖コントロ‐ル(I)
・心不全:利尿薬(I),適切なHFrEF治療(I),SGLT2阻害薬(I)
・肥満,過体重:10%減量(I),リズムコントロール下での肥満手術(IIb)
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群:マネジメント(Ib)
・アルコール:週3ドリンク以下(I)
・運動能力:その人にあったプログラム(I)
・他のリスク/併存疾患:積極的評価と管理(I)
“A”: Avoid stroke and thromboembolism(脳卒中/血栓塞栓症回避)では:
血栓塞栓症リスクの考慮→リスクスコアの使用→抗凝固薬選択→出血リスク評価→出血予防の手順が提示されています
・血栓塞栓症リスク:
>高リスク患者の抗凝固薬開始(I),
>その時の出現パターン(発作性,持続性,永続性)は考慮しない(III)
>抗血小板薬は推奨されない(III)
・その地域で検証されたリスクスコアorCHA2DS2-VAスコアの使用
>CHA2DS2-VAスコア≧2:(I)
>CHA2DS2-VAスコア=1:(IIa)
・抗凝固薬選択
>機械弁,僧帽弁狭窄以外はDOAC使用(I)
>VKAはIND2.0-3.0目標(I),INRレンジ>70%(IIあ),DOACへの変更(I)
・出血リスク評価
>すべての修飾可能な出血因子の評価と管理(I)
>抗凝固薬中止のためのリスクスコアの使用(III)
・出血予防
>抗血小板薬は併用しない(III)
>慢性冠動脈疾患/末梢血管疾患に対して抗凝固薬に抗血小板薬を12
ヶ月以上併用は避ける(III)
“R”: Reduce symptoms by rate and rhythm control(レート/リズムコントロールによる症状軽減)
・心房細動のタイプごとに考慮
・レートコントロール,除細動,抗不整脈薬,カテーテルアブレーション,胸腔鏡下/ハイブリッド療法,外科的アブレーション,アブレート&ペース
“E”:Evaluation and dynamic reassessment (評価とダイナミックな再評価)
・心房細動の出現または心房細動以外での入院時に再評価
・発症後6ヶ月,その後最低年1回あるいは臨床的必要性に応じた定期的再評価
>心電図,血液検査,心画像,ホルター,他の画像検査
>新たな/既存のリスク因子,併存疾患の評価(I)
>脳卒中と血栓塞栓リスクの層別化(I)
>治療前後での症状のチェック(I)
>修飾可能な出血リスクの評価と管理(I)
>血栓塞栓リスクがある場合,リズム治療にかかわらない抗凝固薬の継続(I)
###
基本理念”AF-CARE”については,本文で”with the caveat that any tool is a guide only, and that all patients require personalized attention””Joint management with each patient forms the starting point of the AF-CARE approach.”
すなわち「どのようなツールもガイドに過ぎず、 すべての患者に個別的な対応が必要であることに注意しながら」「眼の前の患者との共同管理が、 AF-CAREアプローチの出発点」という,患者への個別的な視点が思想として前面に出されており,いかにもヨーロッパ的だなと思わせます。私はこういう姿勢大好きです。
その他に重要な変更点は以下です。
1)CHA2DS2-VAScスコアから「性別」が外され,CHA2DS2-VAスコア(チャズ‐バスコア)になった
>従来から,75歳を超えた女性以外はリスクにならないとの報告があり,また性別で点数が違うのは複雑とのことで今回から「女性」が点数から外れています。
2)心房細動のリスク因子がより具体的に記述された
>心不全合併例でのSGLT2阻害薬(I),10%の減量(I),アルコールは週3ドリンク以下(I),睡眠時無呼吸症候群の管理はIIb,などかなり具体的です。
3)レートコントロールで,LVEF>40%ならβ遮断薬,非ジヒロドピリジン系カルシウム拮抗薬,ジギタリスのどれでも選択可能
>最近のRATE-AF試験などを受けて,ジギタリスもクローズアップされている感があります。
また分類として,以前「長期持続性(12ヶ月以上で洞調律復帰の可能性あり)」として独立していたカテゴリーが「持続性」の中に戻っています。
診断では,治療方針決定のための心エコーが推奨レベルIとなっています。
他のガイドラインとの比較ですが,2023ACC/AHA/ACCP/HRS(米国)では分類が心房細動のタイムコースに沿っていてより心不全分類に近づく形でしたが,こちらはよりシンプルになっています。
日本の最近のフォーカスアップデート版では,特に高齢者の抗凝固療法について分厚い記述がなされており,高齢者心房細動を多く診る開業医としては大変参考になりますが,ESCではあっさりとした記述になっており,欧州では高齢者心房細動はそれほど問題になっっていないのかと考えさせられます。
発表されたばかりですので,もう少し読み込みたいと思います。
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by dobashinaika
| 2024-09-01 23:53
| 抗凝固療法:ガイドライン
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心房細動とHFrEF:昔からある問題の新しいアセスメント JACC誌のState-of-the-Art Review その1:序論,疫学,病態生理
ハイライト
- 心房細動とHFrEFは互いに不適応で併存しており、その負担は増大している。
- 心房細動のリズムコントロールの利点はHFrEF患者で最も大きい。
- 根底にある機序を理解し、理想的な治療戦略を洗練させるためには、今後の研究が必要である。
はじめに
・ACC、 AHA、 ACC、 HRSの 心房細動(AF)の管理に関する最新のガイドライン(2023,11)1では、 心房細動と合併する心血管疾患(CVD)の予防と治療のために、特に心不全(HF)の管理が強調されている。
・心房細動とHFrEFを合併した患者に対する最適な治療法の理解は大きく進展している。
心房細動とHFのスペクトラム
・最新の心房細動ガイドラインでは、心房細動の病期分類が導入され、心不全の病期分類と同様の経過をたどっている(中央図)。
・モニタリングと介入の強度は疾患の進行度によって異なり、重複する部分や相互作用する部分も多い。
心房細動と心不全には共通の危険因子があるため、 「 “at-risk” と“predisease” の患者 に焦点を当てることで、これらの脆弱な患者の臨床転帰を 改善することができる
・HFと診断された患者の目標は、心房細動の発症を予防すること
・定義によれば、すべてのHF患者は少なくともステージ2の心房細動。
・このような患者に対しては、高血圧、冠動脈疾患、糖尿病などの修飾可能な危険因子を積極的に治療すべきである。
疫学
・米国における心房細動の有病率は、 2010年の約500万人から、 2030年には1,200万人に倍増すると予測されている。
・心房細動は 2030 年までに 800 万人以上の 成人に発症すると推定されている4。
・生涯に心房細動を発症するリスクは、 22% から 36% と推定されている
・フラミンガム心臓研究の解析によると、心不全を発症する前に心房細動があることは、心不全と診断された後に心房細動を発症することの 3 倍。
・心房細動患者では、心房細動でない人に比べ、心不全を発症する相対リスクは 4.6 倍 。
・心房細動患者において、心不全(13.7%)は、死亡(1 年で 19.5%、5 年で 48.8%)に次いで、5 年後に最も頻度の高い転帰 。
病態生理学
心房細動は心筋の炎症と線維化が心房心筋症(左右心房内の解剖学的、電気的、内皮的、機械的リモデリング)を引き起こす。
・このような心房の変化は、有害なリモデリングにつながり、しばしば心房細動が心房細動を生むと要約される。
・心房細動は、不整脈誘発性心筋症につながる可能性がある。
・不整脈誘発性心筋症は、一般的に可逆的な心室拡張と機能障害の病因であり、洞調律が回復すれば改善する。
・心房細動に続発する収縮期心不全の発症に関与する他の機序としては、房室同期不全、持続性頻拍、不規則な心室リズム、心房収縮期の喪失による急性の血行動態の逸脱。
・心房細動と心不全の相互の危険因子には、年齢、糖尿病、高血圧、構造的心疾患などそれぞれ類似した危険因子があるが、患者がどちらかの疾患を発症すると、もう一方の疾患も発症する確率が高くなる。
・たとえば従来の右室心尖部ペーシングは心室同期障害を誘発し、左房のリモデリングを助長する。
・逆に、右室ペーシングの回避アルゴリズムや、His束または左室束からの本来の伝導系を介したペーシングは、心房細動とHFの両方のリスクを減少させる。
・心房細動と心不全に共通する危険因子のいくつかは、生活習慣や行動を修正することで下流の有害な転帰を軽減または予防できるというエビデンスがある(表1)。
・スウェーデンのコホートにおける心房細動の有病率は、 HFrEF、HFmrEF、HFpEF でそれぞれ 53%、60%、65%。
・HFpEFの心房機能障害は、HFrEFよりも心房細動を合併していることが多い(HF入院の44.9%対40.8%)。
・しかし、HFrEFと比較して、HFpEFとHFmrEFは異なる病態生理を構成しており、あまりよく理解されていない。
### AF burdenの続きを書こうと思いましたが,HFrEFとAFに関する総説が目に止まり,どうしてもこちらをまとめたくなったので紹介しておきます。心房細動というと最先端の話題はアブレーション,早期発見が潮流ですが,プライマリ・ケアのフィールドでは何と言っても心房細動合併心不全がメインストリームです。とにかく氷に患者さんが多いかつ増えています。もはや高齢者心疾患は「心房細動+心不全」を一つの疾患概念として考える事が必要であろうと思われます。
その疫学,病態生理,治療を手際よくまとめた総説です。おりしも心不全と心房細動の病期分類がほぼ同じタイムコースとして改定されていてまさにそんな時代であると痛感します。
実はHFpEF+心房細動が高齢者では最も遭遇するので,そうしたまとめも今後ありましたら紹介していきます。
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by dobashinaika
| 2024-08-18 21:39
| 心房細動:疫学・リスク因子
|
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AF burden :新たなアウトカム予測因子と治療ターゲット その1:EHJ誌より
【イントロダクション】
・心房細動由来の心血管イベントリスクは、 併存疾患に依存すると考えられていたが,最近の臨床試験の結果はそれを覆す。
・早期リズムコントロール治療のに関するエビデンス、心房細動の持続時間を短くすることで転帰を減少させることができるという概念を裏付けている。
・まれで短いエピソードのデバイス検出心房細動(DDAF)患者では、抗凝固療法を行わなくても脳卒中の発症率は低く(1.1~1.2%/年)、抗凝固療法の効果は弱い。
【心房細動の自然経過と退縮】
・新しく心房細動と診断された患者の初診は、発作性、持続性、あるいは「初発」が1/3ずつを占める
・1 年に発作性から持続性に進行する患者は 20 人に 1 人程度 (5%/ 年)
・併存疾患のない発作性心房細動患者の半数以上は 25 年間進行しない
・多くの心房細動患者は 1 年間の経過観察で再発を示さず、 中には持続性心房細動の後に発作性心房細動を示し、 心房細動のパターンが後退する例さえある
・発作性心房細動患者の平均心房細動負荷は、 植込み型心電図モニターや毎日の心電図モニターを使用した場合 約11%
・RACE-Vでは、一部で発作性が非発作性パターンに進行し(5.5%/年)、全体的な心房細動負荷は低いままであった。
・EAST-AFNET 4試験において、通常治療群でもの60%が2年後に洞調律であったことや、心房細動アブレーションが12ヵ月の待機期間後も有効性を維持していることは、心房細動の再発や進行が緩徐かつ多様であることの証明
・概念的には、非発作性心房細動患者の心房細動負荷は100%であるべきであるが、自然退縮により不整脈負荷は70~100%に減少する (図1)
<デバイスによる心房細動の検出>
・micro-AF、不顕性心房細動、心房高頻度エピソードと呼ばれる短く連覇する心房性不整脈は、心房細動、脳卒中、死亡のリスクと関連している
・NOAH-AFNET 6試験では、登録時に記録された心房性高頻度エピソードのほとんどすべて(97%)が、経験豊富なコアラボによって心房細動であると確認された
・DDAFは、心電図で診断された心房細動の10倍以上(デバイスを植え込み、脳卒中の危険因子を有する患者の約30%)発見されている
・LOOP試験では、心房細動負荷の中央値は0.13%であり、患者の16%は24時間以上持続するエピソードに進行したが、22%は過去6ヵ月以上のモニタリングでエピソードを繰り返さなかった
【心房細動の負荷、 併存疾患、 転帰の相互作用】
・併存疾患は心房細動の進行を促進する。CHADS2スコアが高く,併存疾患が多い患者ではDDAFの負担が大きい
・機器データと電子カルテの転帰を関連付けた大規模観察研究では、DDAFの負担が高く、CHA2DS2-VAScスコアが非常に高いことが、脳卒中/全身性塞栓症のリスクが高いことと関連している
・DDAFと併存疾患の間の相互作用は微妙であり、おそらく直線的ではない
・同時に、心房細動は心不全、脳卒中、心血管死のリスクを高める(表1)。
1)心房細動と左室機能 :
・心房細動は心室機能を直接障害し 、 不整脈誘発性心筋症を引き起こす可能性があるが、 心房細動アブレーションにより洞調律を正常に戻すと回復する
・心不全と心房細動負荷の間には強い双方向の関連があり、 心不全が心房細動を助長することもあればその逆もある
・心房負荷軽減目的のリズムコントロール/アブレーションはHFrHFの心不全イベントを軽減
・HFpEFに関しては試験が進行中
2)心房細動と脳卒中:
・左心耳閉塞術と早期リズムコントロール療法は、それぞれ抗凝固療法に加えて脳卒中を3分の1減少させる
・脳卒中後の急性期には心房性不整脈の頻度が高い
3)心血管死:
・心房細動に起因することもあれば、心房細動とは無関係に起こることもある
・抗凝固療法の試験でみられた死亡率の低下は、脳卒中の予防が心血管死を減少させることを示唆している。
・心血管死や総死亡に対する早期リズムコントロール9や心房細動アブレーションの効果は、おそらく脳卒中や心不全を予防することによる
・全体として、心血管死に対する心房細動のこれらの効果は、心血管死を引き起こす他の疾患と競合しており、心血管死に対する心房細動の寄与は、他の心血管疾患の数、強度、治療の質に依存する。
心房細動は、症状、QOL、その他の転帰にも影響を及ぼす。認知症やQOLへの影響については、別のところで取り上げているので、本稿では詳しく述べない。
【リズムコントロール療法は心房細動の負担を軽減し、 心房細動関連の転帰を予防する】
・心房細動アブレーションは抗不整脈薬に比べ、心房細動の再発を予防し、心房細動再発までの期間を延長し、心房細動の負担を軽減する。また、発作性心房細動から持続性心房細動への進行を遅らせる。
・早期リズムコントロールの安全性と有効性は、大規模医療データセットのいくつかの非ランダム化解析で再現されている
・これらは、心不全で駆出率が低下した患者や心臓移植待機患者における心房細動アブレーションの転帰改善効果と一致している。
・同様に、ATHENA試験では、ドロネダロンによるリズムコントロール療法が脳卒中の減少を含む転帰を改善する効果がすでに認められている
・より古いAFFIRM試験とRACE試験の中立的な結果は、明らかに安定した洞調律でリズムコントロールを受けている患者における経口抗凝固療法の中止と、前世紀に行われていた抗不整脈薬療法の催不整脈作用の増強によって説明できる。
・AF-CHF試験では、心房細動で左室駆出率が35%未満の患者において、アミオダロン群と非リズムコントロール群とが比較され、心血管死における差は認められなかった
・心房細動におけるアミオダロンの中立的な効果は完全には理解されていないが、特にCASTLE-AF試験やCASTLE-HTx試験の結果との関連で考えると、アミオダロンによる心房細動負荷の減少が心血管イベントを減少させるのに十分でなかった可能性がある
・さらに、AF-CHF の主要転帰である心血管死は、当時適用されていた利用可能な心不全治療を考慮すると最も感度の高い主要転帰パラメータではなかった(前節を参照)
・リズムコントロールによる転帰の減少効果は、合併症の負担が大きい患者(CHA2DS2-VAScスコア4以上)においてより顕著であり、その中の2つリスクの相互作用を示唆している
・併存疾患負荷の高い患者 に対して、早期のリズムコントロールを系統的に行いその後心房細動負荷を下げると、心血管系の転帰がより顕著に低下する
・同様に、心房細動アブレーションと薬物療法との差は、心不全を有し合併症の負担が大きい患者においてより顕著である
<症状と生活の質>
・これに対する効果については抗不整脈薬よりも心房細動アブレーションの方が顕著である
・どちらの治療法を用いても長期的なリズムコントロールが可能である
・明らかに、 心房細動に関連する症状や心理的苦痛、 QOL の他の領域 を軽減することは、 心房細動患者を含むすべての慢性心血管病患者 において、 重要な治療目標であることに変わりはない
・症状の軽減が心房細動の負担軽減に続くことは考えられるが、 この複雑な治療領域では、他の機序や因子が相互に作用する。
### これまで心房細動に関係する心血管イベント,たとえばStrokeにしても心不全にしても併存する疾患に依存して増えると考えられてきました。その最たるものがCHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコアです。しかし昨今AF burden=心房細動負担という新たな概念が登場しました。
どのくらいの持続時間,頻度,ばらつきで発作が出現するのかが,心房細動のイベント発生や予後にまで影響し,またアブレーションなどの治療選択に関与するという報告が相次いでいます。
このため,最近では従来のリズム治療≦レート治療からむしろリズム治療≧レート治療,もしくはリズム治療>レート治療という状況に変わってきています。
それは検出デバイスの発達と,カテーテルアブレーション技術の進歩によるところが大きいと思われます。
ただそのburdenの測定法がやはり確立されておらず,Device-detected AFという新しい心房細動の分類ができるほど,デバイスでのburden測定が重要視されてきています。逆に言うと,普通の発作性心房細動の正確なbruden測定はなかなか困難であり,さまざまなデバイスを組み合わせて判断するというのが現状かと思われます。
次回は残りの抗凝固療法とAF burdenの関係など お話します。
$$$
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by dobashinaika
| 2024-08-15 14:46
| 心房細動:疫学・リスク因子
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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