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2019年心房細動関連論文ベスト:「ガイドライン&レビュー編」「私的おもしろ論文編」

2019年ネタをだいぶ引っ張りますが笑,今回は「ガイドライン&レビュー編」「私的おもしろ論文編」をお送りします。順不同です。

【ガイドライン&レビュー編】

<不整脈非薬物療法ガイドライン(2018年改訂版)>
日本循環器学会 /日本不整脈心電学会合同のガイドラインです。
カテーテルアブレーション,ICDなどの適応,施設基準や,ブルガダ症候群の対処法など詳述されていて,参考になります。

<2019 AHA/ACC/HRS心房細動ガイドラインアップデート>
クレアチニンクリアランス15未満でアピキサバンを推奨するなど,一部踏み込んだ内容もあります。

<不整脈マネジメントに関するknowledge gaps:欧州不整脈学会から>
今何がわかっていないかを明確にする企画で,個人的に一番すきなテキストです。ただし,デバイスなどの話題が多く,「超高齢者の抗凝固療法」などがないのが不満。

<無症候性不整脈の管理に関するコンセンサスステートメント:欧州不整脈学会から>
こういうところにもコンセンサス文書を出すEHRAの底力を感じます。しかも「すべき」「してもよい」「してはいけない」の3カテゴリーに分けるのも実践的

<フレイル高齢者の心房細動管理レビュー>
フレイル患者のアウトカムに関するエビデンスは乏しい,というのが結論で拍子抜けの感はあります。

<低リスク心房細動に対する抗凝固療法;欧州心臓病学会からのオピニオンステートメント>
この問題も大切ですね。65歳以上,糖尿病,AFバーデン(持続時間)などが評価項目としてあげられています。

【私的おもしろ論文編】

<アブレーション後のループレコーダーでは75%の人が再発:CAPTAF試験>
再発の定義にもよりますが,ここでは「2分以上」となっています。それにしてもそんなものなのでしょうか。

<製薬企業による講演会その他に使われる莫大な資金は販売促進目的である:BMJ openより>
個人的にベストの論文。どこの国も同じかという感じ。こういう論文が発表されないようにするためになんとかしないと。

<服薬アドヒアランスが良好ならばワルファリンとDOACで有意差なし;AJCD誌より>
まだワルファリンですか?と言われそうですが,DOACのアドヒアランスそんなに素晴らしくはないという実感があるのであえて。

$$$ 目の前をゆうゆう闊歩する牛柄猫
2019年心房細動関連論文ベスト:「ガイドライン&レビュー編」「私的おもしろ論文編」_a0119856_10581359.jpg

by dobashinaika | 2020-01-20 08:18 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

2019年心房細動関連論文ベスト5:臨床研究編

遅くなりましたが2019年に読んだ心房細動関連論文&ガイドライン/レビューベスト5をお送りします。
例によって私の個人的見解であり,あくまで自分の臨床に役立つという視点から選びました。
臨床研究,ガイドライン/レビュー,個人的好みに分けてリストアップします。

本日は臨床研究です,順位はつけていません。順不同です。

<Apple Watch study>:心房細動のスクリーニングにおけるアップルウォッチの有用性を示した研究
日本では認可されていませんが,テクノロジーの進歩はとどまらない。アップルウォッチなどまだまだ序の口でもっと簡便で安価なデバイスが今後10年のうちに続々出てきそうな気がします。

<RE-SPECT ESUS>:原因不明の脳卒中に対しダビガトランはアスピリンよりも再発予防効果があるとは言えず,出血は多かった
スクリーング技術が発達する一方で,原因不明の脳卒中にいきなりNOACを処方するのには疑問が投げかけられています。2018年のNAVIGATE-ESUSにつづき,この試験でもNOACの優位性は示されず出血のみ増やしたようです。脳卒中の原因は多様なので,やはり診断をつけてからなのでしょうか。


<伏見AFレジストリサブ解析>:日本においても心房細動の死因の多くは非心臓死
心房細動の死因の多くは非心臓死,といいうのはこれまで言われてきましたが伏見AFでそう言われると俄然説得力があります。感染症,貧血,心不全など包括的視点が改めて求められます。

<AFIRE>:心房細動合併安定狭心症1年後の抗血栓療法はNOAC単独が抗血小板薬併用よりも良い
日本発の快挙。今年のトピックとして挙げないわけには行きません。これまで1年以上過ぎた安定狭心症+心房細動例では抗血小板薬を抜くのは勇気がいりましたが,この研究以後自信を持って止めることができるようになっています。その意味でプライマリ・ケア医への影響も絶大な研究と思われます。
2019年心房細動関連論文ベスト5:臨床研究編_a0119856_18511074.png

<CAVANA>:カテーテルアブレーションは薬物療法に比べ心房細動の予後(その他の複合エンドポイント)を改善せず
これも挙げないわけには行かないですね。残念ながらアブレーションの複合エンドポイントにおける優位性は示されませんでしたが,ツッコミどころの多い試験です。アブレーションと薬物療法の二項対立自体,概念的にも試験のデザインや運用の面からも不可能のような気がしてきます。

こうしてみると有名どころのRCTや登録研究ばかりになってしまいました。個人的趣味の論文およびガイドラインやデビューについてはすみません,後日あげます。

by dobashinaika | 2020-01-11 18:52 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

アルコール常用者の禁酒は心房細動再発を有意に減少させる:NEJM誌


背景:アルコール過飲が心房細動罹患率や心筋リモデリングに影響することが知られているが,心房細動二次予防における禁酒の効果については明らかではない

方法:
・オーストラリアの多施設(6施設),前向き,オープンラベル,無作為化比較試験
・1日10ドリンク以上(1ドリンク=純アルコール12g)飲酒例対象
・発作性または持続性心房細動,ベースラインは洞調律
・禁酒群,飲酒継続群に割付
・主要評価項目:心房細動再発(ブランキング期間2週間後),全心房細動負担(心房細動継続時間の比)。6ヶ月追跡

結果:
1)140人,男性85%,平均62+/-9歳,禁酒群70例,継続群70例

2)禁酒群の飲酒減少量:週16.8ドリンク→2,1ドリンク,減少率87.5%

3)継続ぐんの飲酒減少量:週16.4→13.2ドリンク,減少率19.5%

4)再発率:禁酒群37/70(53%),継続群51/70(73%)

5)再発までの期間:禁酒群が継続群により長期(ハザード比0.55,95%CI0.36−0.84,P=0.005)

6)6ヶ月間の心房細動継続時間:禁酒群で有意に低下(中間継続時間率0.5%vs. 1.2%)

結論:心房細動を持つアルコール常用者において禁酒は心房細動再発を減少させた
アルコール常用者の禁酒は心房細動再発を有意に減少させる:NEJM誌_a0119856_07254578.jpg

### アルコールが心房細動に悪影響であることは確立されています。以前のブログでも1日1ドリンク程度で罹患率が上昇するという発表がありました。https://dobashin.exblog.jp/20005788/
1日1ドリンク増えるごとに8%心房細動が増えるとの報告もあります。J Am Coll Cardiol 2014;64:281-289.

本論文はオーストラリア発ですので1ドリンク=純アルコール12gとなっています。12gは5%ビールで300cc,日本酒0.6合程度ですね。禁酒対象者は1日10ドリンクですから5−6合は飲む人ということになります。完全禁酒率は61%ということですので,同意をとったとはいえいかに禁酒が困難かが伺われます。またこれだけの試験デザインを遂行するのは大変だったと思われます。

この論文では禁酒群は同時に体重減少(3.7kg)と血圧低下も認めており,禁酒による複合的な効果も考えられます。

アルコールが心房細動管理の重要な修飾因子であることはこの治験からも強く支持されるものと思われます。ただし,editorialでも指摘されているようにサンプルサイズが小さく,またベースラインの心房細動継続時間が2%と低いのが気になります。もっとシビアな例でも禁酒すれば心房筋のリモデリングが防止できるのか。また完全禁酒ではなく,程々にしてもリスクは減るのか。6ヶ月以上の追跡ではどうか。など新たな課題も尽きません。



by dobashinaika | 2020-01-10 07:28 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

心房細動な日々 dobashin.exblog.jpブログトップ | 投稿 European Heart Journalの循環器2019年,心房細動編のまとめ(その2:カテーテルアブレーション)

昨日のESCのまとめその2です。カテーテルアブレーションについてです。

【アブレーション

<臨床アウトカム>
CABANA試験:アブレーションに関する報告は数多いが,最も強く期待されていたのはCABANA試験
・多施設RCT,アブレーションvs.薬物療法
・一次複合エンドポイント(死亡,重症脳卒中,重症出血,心停止)は同等
・この種の試験は,医師がアブレーション候補者をリクルートするので,途中から薬物療法→アブレーションのクロスオーバーが多いのが難点。本研究でも27.5%
・(最終的な)治療法で解析したが場合は予後改善が見られたが,この方法は無作為化の原則を損ないバイアスを増やす

・アブレーションによる微小塞栓は大きなインパクトを与えず,アブそのものは認知機能を改善する(308名,1年追跡)との研究あり

・QOLを一次エンドポイントにした初めての研究では,アブレーションが良好

・クライオアブレーションの知見としては,高周波アブレーションより速く,心嚢液貯留雨が少なく,施設の症例数に関わらずアウトカムに勝るとの報告があった

・登録研究は数多く,スウェーデンの登録研究で合併症,死亡は低率で,心房細動,VT,PVCのアブレーション数は,心房細動の再施行のため増加している
・ヨーロッパの登録研究では,クライオアブレーションは女性には効果的だが,合併症は多かった
・デンマークの登録研究では,心房細動アブレーションの成功率は90%で2年後の再発は13%
・ドイツの登録研究では,心嚢液貯留率0.9%(21141例中)でハイボリューム施設ほど少ない(高周波の場合)

・心筋梗塞後の心室細動ストームに対するアブレーションの報告(多施設110例)では,院内死亡率27%,2年後死亡率36%と高値で施行時間もかかる

・不整脈原性心筋症における反復性心室頻拍のアブレーションに関する後ろ向き試験(110例)では,薬物療法より効果的だが,心外と心内アプローチの両者を使用した

<新マッピング技術>
・複雑な不整脈におけるアブレーション不成功の原因は,メカニズム理解の欠如
・ripple mappingは持続性心房細動(53%vs.従来法39%),心房頻拍,不整脈原性心筋症に伴う心室頻拍に有用
・Non-contact mapping は12ヶ月持続の心房細動に有効(59%)
・STAR mapping systemは,持続性心房細動35例中80%に有効(18ヶ月)
 心房細動な日々 dobashin.exblog.jpブログトップ | 投稿 European Heart Journalの循環器2019年,心房細動編のまとめ(その2:カテーテルアブレーション)_a0119856_08483066.png
・どの方法が普及するのか残された課題である

<エネルギー源>
・ハイパワー短時間高周波はいまのところ悪いアウトカムなし
・電気穿孔法(electroporation)は新エネルギー源として有望
・難治性心室頻拍の高周波アブレーションはイノベーション分野であり19例対象の小試験で有効とされている

<ガイドライン等>
・多くのガイドラインが出版されている
・心室性不整脈のアブレーションガイドラインは,プログラム刺激が予後予測に有効であり,心内電位を用いた方法も推奨している

・不整脈の性差が問題視され,アウトカムの違いはあるにせよ,女性に対するカテーテルアブレーションの適応に影響を与えるべきではない

### CABANA試験を大きく扱っています。この試験はここでも指摘されているように様々な解釈が可能なデザインですね。「”アブレーションを受けるのが適切と医師が思うような症例”では薬物より予後改善効果あり」ということは言えそうです。「誰を誰が適切に思うか」という段階で多くのバイアスが入り込むと思われます。

しかしいろいろなテクノロジーが開発されているのですね。「どの方法が普及するのか残された課題である」と述べられていますが,永遠に解決できない問題のようにも思えてきます。






by dobashinaika | 2020-01-09 08:49 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

European Heart Journalの循環器2019年,心房細動編のまとめ(その1)です

あけましておめでとうございます。ことしも「心房細動な日々」をよろしくお願い申し上げます。
ことしはESCのまとめからです。


【リスク評価】
<心房細動の発症予測>
・BMI,睡眠障害が心房細動リスクに関係あり
・多くのリスクスコアの予測能は高リスク例に関して中等度だが,最近多変量解析に基づく複合モデルの提案あり
・C2HESTスコアはアジア発でフランスの脳卒中後コホートとデンマークの国民登録で外挿評価されたもの。脳卒中後のターゲットを絞った心房細動スクリーニングを支援
・対照的にNOACとESUS (embolic stroke of unknown source)に関する2つのRCTは脳卒中減少は示されず,NAVIGATE-ESUSでは出血が増えた

<心房細動の早期診断>
・Apple Watch studyでは,脈不整の警告を受けた者のうち34%で心電図パッチによる心房細動を検出。アップルウォッチとパッチの同時検出時の一致率は84%
・Huawei Heart Studyは,フォトプレチスモグラフィーを用い陽性適中率91.6%であり80%以上が抗凝固使用を改善させた

<脳卒中のリスク評価>
・肥大型心筋症,画像診断で明らかな冠動脈疾患においてリスク評価法が進化。両者とも機械学習を使用
・Patient Cantered Outcome Research Institute (PCORI)によるレビューでは,CHA2DS2-VAScスコア,HAS-BLEDスコアがの卒中と出血リスク評価においてベストのリスクスコアだった
・修飾されたリスク因子に焦点を当てた出血リスク予測は,HAS-BLEDより劣った

<バイオマーカーによる予測>
・高度にセレクトされたコホートにおいてバイオマーカーの使用は提案されてきたが,リアルワールド研究での有用性は示されていない
・ある研究では,バイオマーカーの追加は脳卒中や出血リスク予測能を改善しなかった
・心房細動と診断された患者が抗凝固療法を受けることにつながるデータもいまのところなし
・知っておくべきなのは,多くのリスク評価がベースラインの評価に基づいており,動的で年齢とともに変わるということである

【臨床におけるNOACと心房細動管理】
・NOACは心房細動脳卒中予防の景色を変え,多くのガイドラインで望ましい選択とされているが,高リスク群に関する臨床試験は少なく,アドヒアランス,パーシシテンス同様課題の残る分野である

<全般>
・4番目のNOAC(エドキサバン)に関するリアルワールドデータが初めて発表された
・高齢者におけるNOACのデータも増えており,80歳以上の超高齢者でも有効性と安全性が明らかに示されてきた
・オンラベルでアドヒアランスの高い用量設定が高いアウトカムを得られるとの追加データが,例えばダビガトランで示されている
・AEGEAN研究ではアピキサバンで90%という高いアドヒアランス/パーシスタテンスが示されたが,介入によりさらに向上するまでには至らなかった

<腎機能>
・クレアチニンクリアランス高値(>95)群では,すべてのXa阻害薬でワルファリンより虚血性脳卒中が相当多かった。リアルワールドデータにおいては明白ではなかったが
・末期腎不全においては,安全性においてアピキサバンがワルファリンを上回った

<アブレーションとPCI後のNOAC>
・アブレーション時には,NOAC中断なしのストラテジーがワルファリンより安全であった
・心房細動合併急性冠症候群(PCI施行)では,AUGUSTUSとENTRUST-AF PCI研究でNOACベースのレジメあるいは抗凝固薬+P2Y12阻害薬のdual therapyが出血を低減した
・血栓/虚血アウトカムはtriple therapy,dual therapy,NOACベースはいずれもワルファリンに比べ差がなかった。
・しかしdual therapyはステント血栓と心筋梗塞が多かったため,こうした患者には最初の短期間はtriple therapyにメリットが有る
・安定狭心症においては抗凝固薬単独療法がdual therapyより良好であることがAFIRE試験で示された

<心房細動の統合マネジメント>
・心房細動の統合マネジメントの概念が提案されているが,簡便で実行しやすいという観点からの適応や実装についての評価はなされてこなかった
・統合マネジメントは死亡率と入院を低減する
・プライマリーケア及びセカンダリーケア(専門医,非専門医を含む),患者自身にとっての意思決定アプローチとして, ABC (Atrial fibrillation Better Care)がある
・ABCとは:Avoid stroke(脳卒中予防),Better symptom management with patient-centred symptom directed decisions on rate or rhythm control(リズム/レートコントロールにおいて患者中心の症状に基づく管理),Cardiovascular and risk factor optimisation, including lifestyle changes(ライフスタイルを含む心血管リスク因子の最適化)
・ABCパスウェイアプローチは死亡,入院,有害事象,コストを減らすことが報告されている
・アプリを使ったABCパスウェイ管理の有用性がRCTで示されている
European Heart Journalの循環器2019年,心房細動編のまとめ(その1)です_a0119856_07233462.png

### European Heart Journalに発表された循環器2019年この1年,「不整脈とペーシング」部門のうち心房細動に関する記事をまとめました。今日はリスク評価と抗凝固療法。アブレーション,デバイス関係は後日まとめます。

リスク評価については,アップルウォッチが目を引いたのと,ESUSでのNOACの不調が挙げられています。脳卒中リスクとしてはやはりCHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDがよくて,バイオマーカーは今ひとつ。

NOACでは,高齢者,腎機能低下,アブレーション周術期でも安全で,ACSではNOACデースのdual therapy(超急性期はtriple),安定狭心症ではNOAC単剤がよい。

全体としてはABCパスウェイを念頭にやりましょう,という感じです。このアルゴリズムもあるいは全体の論文の引用にもLip先生の影響が大きい印象です。

現時点でのパースペクティブとしては,NOACは治療としては確立され洗練されてきていてある程度の高リスク例でも使えることが示されてきた(ESUSでは不明だが),今後はデバイスによる早期発見だーというトレンドを感じます。

当ブログの年間ベスト5も(だいぶ遅れましたが)近々まとめます。

$$$ 新幹線から見たお正月の富士山。東北新幹線からでもきれいに見えます
European Heart Journalの循環器2019年,心房細動編のまとめ(その1)です_a0119856_07273054.jpeg


by dobashinaika | 2020-01-08 07:30 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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