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【Apple Heart Study】アップルウォッチで40万人のうち0.52%に心房細動が検出。陽性適中率84%:NEJM誌より


疑問:スマートウォッチは,日常使用において心房細動を同定するのか?

方法:
・Apple Heart StudyはAppleがスポンサーの前向きオープンラベル試験
・参加者:22歳以上。2017年11月〜2018年8月までに脈不整通知アルゴリズム搭載のアプリをダウンロードした人。米国在住,iPoneとApple Watchを所有。心房細動のある人や抗凝固薬使用中の人は除外
・上記アルゴリズムが心房細動の可能性を同定した場合遠隔医療が開始され,7日まで装着できる心電図パッチが参加者に送付される。
・脈不整通知後90日,及び試験の最後にサーベイが行われる
・主目的:通知された登録者が心電図パッチで心房細動(30秒以上)
が記録される頻度。脈不整間隔のpositive predictive value(信頼区間0.10)


結果:
1)参加者:419,297人,登録期間8ヶ月間

2)脈不整通知受信者:2,161人,0.52%。平均モニター期間117日

3)うち450人が解析可能な心電図データを返却

4)脈不整通知後の心電図施行は平均13日。心電図パッチは平均6日装着

5)心房細動検出:34%(97.5% CI, 29-39) 。65歳以上が35%(97.5% CI, 27-43)

6)positive predictive value:
心電図と脈不整通知が同時に記録された場合=0.84 (95% CI, 0.76-0.92)
心電図と不整なタコグラムが同時に記録された場合=0.71 (97.5% CI, 0.69-0.74)

7)90日サーベイを返却した1,376人のうち,57%が医療プロバイダーを受診

8)有害事象の報告なし
【Apple Heart Study】アップルウォッチで40万人のうち0.52%に心房細動が検出。陽性適中率84%:NEJM誌より_a0119856_07300070.png
結論:脈不整通知の頻度は低い。脈不整通知受信者の34%で心電図上心房細動が認められた。通知の84%が心房細動に一致していた。このサイトレス試験(参加者がどこに訪問する必要がない)のデザインは大規模実用試験の基礎を提供する。この結果とアドヒアランスはユーザー使用デバイスの信頼性を担保するだろう。

### スタンフォード大学とAppleが共同で行ったApple Heart Studyの論文化です。
40万人以上の超大規模試験です。全コホートの平均年齢は41歳,CHA2DS2-VAScスコア2点以上は13%です。

positive predictive value(陽性適中率=陽性と判定された場合に、真に心房細動である確率)が84%と良好ですが,偽陽性も16%に見られることになります。

またこの試験ではnegative predictive valueが示されていませんので,陰性だから安心ということはできないと思われます。

ただし従来のような長時間モニターや単発的なホルター心電図に比べれば圧倒的に簡便かつ長時間モニターが可能ですので,たとえばアブレーション後の全患者に使用できる日も近いかもしれないと思わせる試験です。日本での適用の声が加速されるかもしれません。

でもやっぱり偽陽性があるのは気になります。簡便なだけに汎用してよいのか,リスク化,医療化につながらないのか,そこを十分に考えないと。

$$$ 最近一番気になった駅のポスター
【Apple Heart Study】アップルウォッチで40万人のうち0.52%に心房細動が検出。陽性適中率84%:NEJM誌より_a0119856_07311667.jpg

by dobashinaika | 2019-11-26 07:35 | 心房細動:診断 | Comments(0)

心房細動合併透析患者においてアピキサバンはワルファリンと同等の出血/脳卒中発症率:RFNAL-AF試験


意義:RENAL-AF試験は,末期腎不全の透析患者においてアピキサバン5mg1日2回が,ワルファリンと同等の出血/脳卒中発症率であることを示した。

目的:この試験のゴールは,心房細動合併末期腎不全透析患者における脳卒中予防に対するアピキサバンの安全性と有効性を評価すること

試験デザイン
対象:アピキサバン5mgBID(29%は2.5mgBID;n=82)とワルファリン(INR2-3,TTR44.3%)の1:1無作為割付。154人,1年間追跡,平均69歳,女性35%

組入基準:心房細動,CHA2DS2-VAScスコア≧2,透析の必要な末期腎不全,抗凝固薬適応者

除外基準:中〜高度僧帽弁狭窄症,心房細動でない患者への抗凝固療法,アスピリン>81mg服用者,抗血小板薬2剤服用者,生命予後3ヶ月未満

患者背景:平均CHA2DS2-VAScスコア4.0点,脳卒中の既往19%,出血の既往21%,アスピリン40%

主要結果:臨床的に意義のある非大出血はアピキサバン31.5% VS. ワルファリン25.5%(p>0.05)

二次的アウトカム(アピキサバン VS. プラセボ):
・頭蓋内出血:1.2%vs. 1.4%
・消化管出血:2.4% vs. 8.3%
・ISTH大出血:8.5% vs. 9.7%
・脳卒中:2.4% VS. 2.8%
・心血管死:11% VS. 5.6%

解釈:末期腎不全透析患者にではアピキサバン5mgBIDとワルファリンとで,出血と脳卒中は同等。この試験の主要なポイントは以下:ファンドの喪失(当初の登録は760例目標)による早期の中止。TTRが44%に過ぎず,多くは治療域以下。低用量アピキサバン(2.5mgBID)とアスピリン(40%以上に使用)の中止だったらワルファリンより出血が少なかったかもしれない。

スポンサー:BMS/Pfizer Alliance

### 透析患者を対象としたアピキサバンとワルファリンのRCTということで,注目の試験が今回のAHAで発表されています。論文化されていませんので,細かいことは不明です。5mgBIDやアスピリン併用例が多く解釈を難しくさせているようです。ただ,ワルファリンのTTRも44%ですので,もっと管理が良ければどうかとも思います。

アピキサバンvsワルファリンの末期腎不全での観察研究は以下があります。これでは出血はアピ期s版が少なく,脳卒中/全身性塞栓症は同等でした。

心房細動合併末期腎不全についての最近のレビューはこちら

$$$ さいきん,朝のルーチンに豆を挽いています。心が落ち着きます。
心房細動合併透析患者においてアピキサバンはワルファリンと同等の出血/脳卒中発症率:RFNAL-AF試験_a0119856_06475621.jpg

by dobashinaika | 2019-11-21 06:49 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

日本の心房細動患者の死因の半分以上は非心臓死。脳卒中は6.5%:伏見AFレジストリより


目的:現在の実臨床において,心房細動患者の死因と関連する因子を明らかにする

方法:
・伏見AFレジストリーにおいて,2016年11月までに評価できた4045例の死因および心血管/非心血管因子について検討

結果:
1)平均73.6 ± 10.9歳。平均CHA2DS2-VAScスコア3.38 ± 1.69

2)抗凝固薬処方:55%。平均追跡期間1105日

3)死亡705人(5.5%/年),心血管死180(全死亡の26%),非心血管死381(54%),原因不明144(20%)

4)死因の内訳:心不全(14.5%),悪性腫瘍(23.1%),感染症/敗血症(17.3%),

5)脳卒中による死亡は6.5%のみ

6)感染症/敗血症と原因不明が,高齢になるほど増加

7)心臓死の最大のリスク因子は心不全の既往(HR2.42,95%CI:1.66-3.54 ; P < 0.001)

8)非心臓死の最大のリスク因子は貧血 (HR 2.84, 95% CI 2.22–3.65; P < 0.001)
日本の心房細動患者の死因の半分以上は非心臓死。脳卒中は6.5%:伏見AFレジストリより_a0119856_07192765.png

結論:日本の地域ベースの心房細動コホートにおいては,心血管死は主に脳卒中ではなく心不全に関連していた。非心血管死(悪性腫瘍,感染症/敗血症)が死因の半分以上を占め,年齢とともに増加した。臨床的なリスク因子は心血管と非心血管とで異なっていた。

### 大変貴重な報告です。
これまでのAFFIRM試験やNOACの大規模試験,あるいは各種登録試験でも,心房細動を持つ人の死因は約1/3が心血管死で残りが非心血管死または不明でした。今回の伏見のデータはそれらよりなお心血管死の割合は少なく全体の1/4程度です。

しかも脳卒中は6.5%(虚血性4.8%,出血性1.7%)です。ちなみにネットで平成30年の厚労省による「人口動態統計月報年計(概数)の概況 」によると75-80歳までの人の死因は,脳血管疾患が第3位で7.7%です。伏見では55%に抗凝固薬が入っており,一概に比較はできませんが大幅には違わないようです。

そして心不全がやはり死因としては大きい。これも実感です。高齢者の心房細動にHFpEFが併存する症例は急増しています。

近年ますます高齢者,あるいは90歳以上の超高齢者,そして在宅診療の患者さんの抗凝固薬をどうするかという問題が切実になっています。

こうした報告を見ると,高齢者の場合心房細動だからといって抗凝固薬という直線的思考は通用しない,あるいは,心房細動そのものが果たして「リスク」なのだろうかという感が強いです。

もちろん脳梗塞→身体機能低下という面で大きなリスクですが,抗凝固薬による新たな出血も増えるし総死亡はあまり減らさない,(というか競合リスクのため脳卒中より死亡が早いので本当のところはわからない?)となると抗凝固薬にそれほどこだわることはないのかもしれません。

関連ブログはこちら

$$$ 勾当台公園も色づいてきました
日本の心房細動患者の死因の半分以上は非心臓死。脳卒中は6.5%:伏見AFレジストリより_a0119856_07211670.jpg

by dobashinaika | 2019-11-11 07:22 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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