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抗凝固薬を投与していない心房細動合併脳梗塞の短期予後は良くない:JAHA誌より


目的:心房細動を有する脳梗塞例において,抗凝固薬投与の有無はアウトカムに関係するか。

方法:
・NVAFがあり発症後入院7日以内の虚血性脳卒中/TIA,1189例

結果:
1)68.4%(813例)は抗凝固薬投与なし

2)26.1%(310例)はワーファリン投与を受けるも入院時INR<2

3)3.2%(38例)はINR ≥2

4)ワーファリン投与群は非投与群に比べ3ヶ月後の死亡リスクあるいは障害度が低い
INR<2: adjusted odds ratio: 0.58; 95% CI, 0.42–0.81; P=0.001
INR ≥2: adjusted odds ratio: 0.40; 95% CI, 0.16–0.97; P=0.043
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5)2年後のリスクは同等

6)INR ≥2の群は非投与群に比べ2年間の虚血イベントリスクが高い (adjusted hazard ratio: 2.94; 95% CI, 1.20–6.15; P=0.021).

結論:NVAF症例においては,先行するワルファリン投与は入院後3ヶ月における死亡や障害リスクを減らしたが,2年間でのリスクには関係しなかなった。先行ワルファリン投与は2年以内の虚血イベントの高リスクと関連した。

### すでに発表されている日本のNVAF合併脳卒中の登録研究であるSAMURAI AF Studyのアウトカム報告です。

この研究は大変興味深いものです。国立循環器病研究センターの豊田先生からの指摘がありますが,この段階で,CHADS2スコア2店以上で脳卒中を発症した心房細動例の1/3にしか抗凝固薬が投与されておらず,残り1/3は心房細動と診断されていても抗凝固薬が処方されておらず,最後の1/3は心房細動と診断されていなかったということでした(下図参照)
a0119856_07022030.jpg
つまり1/3は抗凝固薬投与にもかかわらず「防げない」,1/3は心房細動とわかっていても「出さない」,1/3は「見つからない」ということになります。NOAC時代になってこの比率は変わっていると思われますが,それでも抗凝固療法の限界をまざまざと表していると思われます。

しかもやはり非投与例ではアウトカムが悪かったとのことであり,抗凝固薬は大切と思わざるを得ないわけですが,非投与例には上記のように1/3はそもそも診断されていないわけであり,早期発見の重要性と困難性がますますクローズアップされるものと思われます。

ただ,早期発見がいいと手放しに言えないのは,やはり早く発見したからと言って低リスク例では過剰医療になる可能性があるわけであり,ここでも厳密な未来予測の困難性の壁にぶち当たることになりそうです。

また2年後の虚血リスク増加に関しては説明難しいです。筆者は悪性腫瘍や抗リン脂質抗体症候群による虚血イベントとワルファリンが関係しているかと推測しています。

$$$ 新北斎展,見応えありました。
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by dobashinaika | 2019-02-19 07:08 | 脳卒中後 | Comments(0)

抗凝固薬とPPI併用時は,非併用時と比べて上部消化管出血による入院率を減少させるが。。


疑問:抗凝固薬にPPIを併用する場合としないとで上部消化管出血による入院率は変わるのか

方法:
・米国,メディケア受給者対象の後ろ向きコホート,2011-2015年
・ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン,ワルファリンとPPI(ある,なし)
・主要評価項目:上部消化管出血による入院率

結果:
1)1,643,123人,651427人年

2)PPIなしの入院:115/10,000人年

3)リバーロキサバン(144/10,000)が,アピキサバン(73),ダビガトラン(120),ワルファリン(113)よりも入院率が高い

4)アピキサバンはダビガトラン(相対リスク0.61),ワルファリン(0.64)より入院率が低い

5)PPI併用時のほうが入院率は低い(76/10,000,対非併用時相対リスク0.66)

結論:
1)抗凝固薬服用者では,リバーロキサバン内服者の上部消化管出血による入院率が最も高く,アピキサバンが最も低かった。

2)各抗凝固薬ともPPI併用時のほうが入院率は低かった。

### 昨年12月の論文で遅れましたが,大切な内容なので紹介します。

以前ご紹介したのと同じメディケアのデータベースであり,そのときリバーロキサバンが出血が多かったので,消化管出血が多いのはその流れかと思われます。

この論文だけで,抗凝固薬にはPPIを併用したほうが良いと行動変容を起こすのは要注意です。本論文は米国メディケア受給者の後ろ向き研究であり,エビデンスレベルは高いとは言えず限定的です。またPPIの長期投与による副作用や,薬価の問題は別個に検討されなければなりません。これまで出ている各種ガイドラインでも抗血小板薬併用時に消化管出血の既往のある高リスク患者でPPI併用が勧められているのみと思われます。

抗凝固薬そのものに消化性潰瘍促進の機序はないと思われますが,アスピリンと混同しているのかあるいは念の為なのか,全例にPPIを投与される場合(大病院紹介後の逆紹介に多い気がします)を見かけますが,現時点では高リスク群で考慮するということでよいかと考えます。


by dobashinaika | 2019-02-08 07:37 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

AHA/ACC/HRSの心房細動ガイドラインがアップデートされました。よりNOAC推しの内容です

AHA/ACC/HRS(米国)の心房細動ガイドラインがアップデートされています。

Morady先生がまとめサイトで12ポイントに集約されていたのを紹介します。

1. エドキサバンが脳卒中予防薬としてNOACのリストに加わった(推奨度I,エビデンスレベル B-R)

2. 中〜高度僧帽弁狭窄症または人工弁以外の患者では,ワルファリンよりNOACが勧められる(I, A)

3.発作性か持続性かは抗凝固薬の使用決定に影響しない(I, B)

4. NOAC開始時および使用後年1回は肝機能,腎機能をチェックすべきである(I, B−NR)

5.CHA2DS2-VAScスコア2点以上(男性)または3点以上(女性)でクレアチニンクリアランス15ml/min未満では,ワルファリン,アピキサバンが妥当である(IIa, B-NR)

6.イダルシズマブは致死的な出血や緊急手技の際に,ダビガトランの中和薬として勧められる(I, B-NR)

7.Andexanet alfa(Xa因子リコンビナント)は致死的イベントの際,リバーロキサバンとアピキサバンの中和薬として用いることができる(IIa, B-NR)

8.経皮的左心耳閉鎖術は長期間の抗凝固療法が禁忌で,脳卒中リスクの高い人に考慮される(IIb, B-NR)

9.症候性心不全やEF低下例では,死亡率低下,心不全入院減少のためにカテーテルアブレーションが勧められる (IIb, B-R)

10. 冠動脈ステント例では,クロピドグレルと低用量リバーロキサバン(15mg/日)またはダビガトラン(150mg1日2回)のタブルテラピーがトリプルテラピーよりも妥当である(IIa, B-R)

11. 体重減少を含むリスク因子是正が,心房細動を持つ肥満患者に勧められる (I, B-R)

12. 体外式ホルター心電図で結論がつかない原因不明の脳卒中患者には,植込み型のモニター装置が潜因性心房細動の同定のためとして妥当である(IIa, B-R)

### エビデンスレベルのRはRCTのあるもの,NRはないものです。

気になる点ですが,
・発作性,持続性は適応に関係ないこと
・クレアチニンクリアランス15未満の重症腎不全でワルファリンの他にアピキサバンも推奨されたこと
・ダブルテラピーとしてダビガトランとリバーロキサバン低用量が挙げられていること
です。

アピキサバンの重症腎不全への使用は,一部の観察研究のみで有効とするものはありますが,日本の添付文書でもまだ記載されておらず,現時点で慎重に行くべきかと思われます。

またNOACと抗血小板薬併用は,ワーファリンとの公平な比較試験はまだなかったように思われます。

2014年に公開されたときはNOACとワルファリンで推奨度に差はありませんでしたが,今回は全体に明確にNOAC推しとなっている印象です。これも時代の流れかもしれません。エビデンスがまだ乏しい分野でもそこまで推すかという感じもします。

$$$ 東北新幹線大宮駅付近から。この季節,夕暮れの富士山を拝むことができます。
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by dobashinaika | 2019-02-02 07:20 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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