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日本の登録研究においても既存のより新規発症の心房細動が心不全の予後を悪くする:CJ誌

Prognostic Impact of New-Onset Atrial Fibrillation in Patients With Chronic Heart Failure – A Report From the CHART-2 Study –
Takeshi Yamauchi et al
Circulation Journal http://doi.org/10.1253/circj.CJ-15-0783


疑問:心不全患者が心房細動を合併した場合,予後は悪くなるのか

方法:
・東北地方のCHART-2研究登録例10219例のうち,stage C/Dの4818例

結果:
1)登録時心房細動:38.6%

2)心房細動症例(対非心房細動例):高齢,eGFR低下,BNP高値,LVEF,Bブロッカー,ARB使用は同等

3)新規発症心房細動:3.6%(3.2年追跡期間中)

4)新規発症例の死亡に関する補正後ハザード比:1.72; P=0.013

5)登録時心房細動(発作性,持続性とも)は予後に関連なし

6)死亡率は,新規発症後最初の1年で特に高い

7)RAS阻害薬とスタチンが新規発症抑制に関連あり。利尿薬は発症促進に関連あり

結論:心房細動の既往ではなく,新規発症が,特に発症1年以内の心不全死亡率増加に関連していた。

### 東北大学循環器内科からの精力的な仕事です。
もともとあった心房細動に心不全を合併した場合は,心不全のない例に比べて予後が悪いことは明らかと思われますが,一方心不全がもともとあって,そこに心房細動が合併した場合に関しては,結果はさまざまだったんですね。

普通に考えれば心房細動があると,左室の充満時間の短縮,塞栓症リスク増大などで予後は悪くなりそうで,事実昔のSOLVD試験を始めとするトライアルは予後悪化を示唆していましたが,最近の試験はそうでもなくて,Euro Heart Surveyなどは今回の知見と全く同じ,新規発症が予後に影響し,既存の心房細動はむしろ予後を良くするとしています。

やっぱり,心不全の治療が良くなったためと思われます。その中でもRAS阻害薬とスタチンが関連ありということで,どちらも前向き試験で心房細動発症に関するアップストリーム効果は否定されてはいますが,いちおう頭に入れておきます。

$$$ 土曜日は盛岡で健康カフェの話をさせていただきました。詳細は後日ご報告します。楽しかったです。
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by dobashinaika | 2015-12-13 23:33 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

血圧管理は心房細動の脳卒中リスク軽減における重要な戦略:アリストテレス試験サブ解析

Blood Pressure Control and Risk of Stroke or Systemic Embolism in Patients With Atrial Fibrillation: Results From the Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation (ARISTOTLE) Trial
Meena P. Rao et al
J Am Heart Assoc.2015; 4: e002015


疑問:心房細動患者の血圧管理と脳卒中の関係は?

方法:
・アリストテレス試験登録患者18201人のうち,治療を必要とする高血圧の既往および登録時といずれの時点 とで血圧が140かつ/または90以上)

結果
1)治療必要な高血圧の既往を持つひとは87.5%

2)いずれかの時点で高血圧のある患者のハザード比
・脳卒中/全身性塞栓症:1.53(1.25–1.86)
・出血性脳卒中:1.85(1.26–2.72)
・虚血性脳卒中:1.50(1.18–1.90)

3)大出血
・高血圧の既往例で低い:ハザード比0.80(0.66–0.98)
・登録時高血圧例では同等:ハザード比0.89(0.77-1.03)

4)アピキサバンとワルファリンの脳卒中/全身性塞栓症予防で比較すると,高血圧の既往,血圧の管理にかぎらず両者で同等
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結論:試験のいずれかの時点で血圧が高いことは脳卒中/全身性塞栓症リスクに関連。この結果は心房細動の脳卒中リスク軽減の重要な戦略としての血圧管理を強力に支持する。

### 高血圧既往例で大出血が少ないのは解せませんが,管理不良例はやり大出血は増えているようです。

サブグループ解析で,ある意味観察的な研究ですので一概に因果関係を言うことはできませんが,普段の高血圧患者さんでまず念頭に置く140/90くらいは心房細動で最低限クリアしておきたいと改めて確認。

$$$ 夜の緊急往診。ナビがなくてもすぐ到着。毎朝の散歩の賜物です。
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by dobashinaika | 2015-12-09 23:15 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

服薬アドヒアランスを良くするための実践と考察

Self-reported adherence to anticoagulation and its determinants using the Morisky medication adherence scale
Lana A. Castellucci et al
Thorombosis Research 2015; 136: 727-731


疑問:DOACの服薬アドヒアランスはどうか?

方法:
・抗凝固薬服用患者に4つの質問からなるMorisky scoreを測定
・4つの質問
1.あなたはこれまで薬を飲み忘れたことがありますか?
2.あなたはうっかり薬を飲む時を忘れることがありますか?
3.あなたは具合が良い時に薬を休んでしまうことがありますか?
4.薬を飲んでいて具合がわるい時,飲むのをやめますか?


結果:
1)500人:VKA74%,DOAC26%(リバーロキサバン79%,ダビガトラン26%,アピキサバン2%)

2)深部静脈血栓症72%,心房細動18%

3)適切なアドヒアランス(Morisky score0点):VKA56.2% ,DOAC57.1%

4)アドヒアランスの予測因子
・年齢(オッズ比1.02)
・女性(1.58)
・追加投薬(2.78)
・退職後(2.31)

結論:自己申告によるアドヒアランスはVKAとDOACで同等。DOACのアドヒアランス評価に検査測定が広く利用できるまでは,医師はアドヒアランスの重要性を患者に遭うたびに強調すべきである。Morisky scoreが抗凝固薬アドヒアランスの簡単な評価法である。

### 上記4質問全部「いいえ」ならば適切なアドヒアランスと評価するわけですが,質問1からして「いいえ」と答える人は実はほとんどいないのではないかという気もします。

当院で今年前半の3ヶ月間,1回でも自己判断で服薬を中断したひとを患者自己申告で調べたところ,13〜24%でした。この数字実は少なすぎると思っています。薬の服薬手帳による申告ですが,医師に直接答える形なのでややバイアスが入ると思います。
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それは置いておいて,飲み忘れる理由を患者さんに聞いてみると以下のようでした。
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1)出血へのおそれ
2)受診の遅れ
3)うっかり忘れる
4)認知症
5)コスト
6)飲みにくさ
7)その他(薬が嫌いなど)

複数回答のひともいました。
服薬アドヒアランスを考えるときのキーワード。それはズバリ,飲まない理由は多種多様であるということです。
しかしそれで片付けては対策が立てられませんので,服薬の意義を理解しているかという点で切ってみます。

上記理由1)「出血のおそれ」が強いひとは「飲む意義理解◯(または△),でも副作用がそれ以上に怖い」と言えます。同様に考えると
2)「受診の遅れ」は「意義理解◯または△または☓,でも1,2回の休薬の危険性理解☓」
3)「うっかり」は「意義理解◯または△または☓」
4)「認知症」は「意義理解☓」

アドヒアランス向上への道は「抗凝固薬には脳塞栓予防という大目的があるのだから,そのゴールを理解してもらうことが一番」と拙著にも書いたのですが,じつはそれは大事なのですが,患者さんことにゴールの理解に至るのには,個別でより多様なアプローチが必要なのだろうと最近思います。出血が怖い人には,塞栓予防というゴールを強調しても目に見える出血という恐怖はなかなか払拭できません。この理由を克服するのは困難で,リスク認知のギャップに対するアプローチが必要です。長く粘り強い道のりです(解決できないかもしれません)。「受診の遅れ」「うっかり」の人の意義理解は様々です。十分理解していても2〜3回のまないくらいは良いと考えている人もいれば,医師のいうまま飲んでいて全く意義は理解していないひともいます。

「うっかり」で意義理解◯の人には薬のセットケースや薬袋の色分け,服薬薬剤の減量などの「ツール利便化」が有効と思われます。「認知症」の人には,意義理解よりもまず認知症の評価,そして一方化するなどのツール利便化,あるいは服薬管理者の明確化が必要です。

心臓血管研究所の山下先生が以前おっしゃっていたように,アドヒアランスと薬の理解度(自分がわかっていると思う度合い),あるいは説明時間とは比例しない,むしろ情報過多で患者さんはアップアップしている。服薬開始時の説明の時,誰にでも一律に心房細動のメカニズムのいろはから話し込んでも,医師が満足するだけで患者さんの理解は得られないものと思われます。

患者さんごとに飲まない理由をよく聞く。飲まない(飲めない)事情を把握する。その理由,事情に応じて意義理解が必要なのか,出血に対する説明が必要なのか,単なるツールの利便化だけでよいのか,の対応をきめ細かく行う。服薬に対する解釈モデルの把握ですね。なかなか難しそうです。

当院では,当初服薬開始時1時間近くの講義のようなことをしていたのですが,最近はすっかりやめました。その代わり最初の説明は最小限にして,毎回,医師が診察する前に看護師に服薬状況や出血,退院からの新処方など6項目を聞いてもらうようにしています。それでも難しいひとには薬剤師からも個別アプローチをするようにしています。このように,いろいろな職種から飲み忘れの重大さをことあるごとに伝えてもらうことで当初より飲み忘れは減ってきています。

まとめます。服薬アドヒアランス向上には
1)患者さんが薬を飲まない(飲めない)理由,事情は多種多様である事を理解する
2)その理由,事情(いわば”ニーズ”)を患者さんごとに把握する
3)一律総括的でなく,その患者さんの”ニーズ”に応じた服薬説明をする
3)医師だけでなく多職種で飲み忘れの重大さを伝える
4)受診ごとに細く長く行う。

最後に,面白い論文を見つけました。
Effect of Financial Incentives to Physicians, Patients, or Both on Lipid Levels
A Randomized Clinical Trial
JAMA. 2015;314(18):1926-1935. doi:10.1001/jama.2015.14850.


脂質異常症の患者さんに薬剤のボトルを開封するとくじ引きができで当たると100ドルもらえる,医師は患者さんのコレステロール値が一定以下に下がれば256ドルもらえる。そうした金銭によるインセンティブを付加したところで,LDLコレステロールは医者患者両者介入群でのみ8.5mg/dl低下したに過ぎなかったとのことです。

やっぱりアドヒアランス向上は,お金でもダメ,地道な努力が必要ということです。

$$$ 午前6時半。そろそろ散歩時朝焼けがまぶしい季節です。
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by dobashinaika | 2015-12-08 22:36 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

生活のシンプルセブン(7つの生活習慣)は心不全,狭心症,脳卒中,認知症等のリスク低下に関連

American Heart Association's Life's Simple 7: Avoiding Heart Failure and Preserving Cardiac Structure and Function.
Am J Med 2015;128:970-976


疑問:AHAが提唱している”生活習慣シンプル7”は心不全リスクと関連があるのか

方法:
・米国のthe population-based Atherosclerosis Risk in Communities Study cohort13,462人
・45〜64歳,1987〜1989年に登録

結果:
1)85歳までの心不全は25.5%

2)心不全リスク:スコア10〜14点(最適)=14,4%,5〜9点(平均)=26.8%,0〜4点(不適切)=48.6%

3)臨床的にイベントのない人でも,平均点のひとは不適切のひとに比べても左室肥大は40%,拡張不全は60%と普通に見られる

結論:AHAの7つの生活習慣は心不全リスク低下だけでなく,冠動脈疾患,脳卒中,認知機能低下,糖尿病,慢性腎臓病,がんのリスク低下にも関連。この研究はライフスタイルの変化が心不全にも影響することに焦点を当てた。早いうちからの生活習慣介入は大切。

### 神セブンならぬ,シンプルセブン。 7つの生活習慣とは,以下でこれを3段階に分け,2,1,0‥とスコアリングします。
1)喫煙(吸わないorやめて12カ月超,12ヶ月以内,喫煙中)
2)BMI(<25,25〜30,30<)
3)運動(週の運動時間ごとに3段階)
4)健康ダイエットスコア
5)総コレステロール(<200,200〜240,240)
6)血圧(<120/80, 120-139/80-90 or <治療下120/80,>140/90)
7)空腹時血糖(<100,100〜125,>126)


ちなみに運動は理想(週150分以上中等度または75分以上高度または150分以上中/高),平均(週1〜149分中等度または1〜74分高度または1〜149分中+高)。
ダイエットは以下の5項目(1)フルーツと野菜>4.5カップ/週 2)魚23.5oz/週以上 3)線維質立リッチ 4)塩分<1500mg/日 5)砂糖<450cal/週)で,理想は4〜5点,平均2〜3点,不適切102点です。

私,自分で計算したところ結構高得点でした。昨年体調を崩してから塩分厳格制限と毎日散歩で得点を上げました。もっともこのBMIスコアは日本人には当てはまりませんが。

$$$と言いつつ,忘年会でこんなところへ,,,全部歌えたりします。。
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by dobashinaika | 2015-12-07 23:59 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

ケアネット「多発する心房期外収縮は脳梗塞と関連あり」ほか,更新いたしました

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

第46回 86歳、腎機能低下例がDOAC、アスピリン併用時に止まらない鼻血のため来院。さて、どうする?(2015/12/4)

第45回 多発する心房期外収縮は脳梗塞と関連あり(2015/11/30)

第44回 ワルファリンを適正に管理すれば85歳以上でも安全かつ有効(2015/11/13)
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今回はいずれも,より実臨床に則した内容です。
ご参照ください(要無料登録)。
by dobashinaika | 2015-12-06 23:16 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

第7回どばし健康カフェ「「テレビ,新聞,雑誌の健康情報〜何が正しい?」を開催いたします。

第7回どばし健康カフェを開催いたします。

今回のテーマは「テレビ,新聞,雑誌の健康情報〜何が正しい?」

日時:平成28年 1月16日(土)15:00〜(約2時間)
場所:土橋内科医院待合室(仙台市青葉区八幡2−11−8)


市民と医療従事者が垣根を超えて,健康・医療・福祉について気軽に語り合うカフェです。
今回はいろいろな健康情報を上手に読み解くにはどうしたら良いか,具体的に「赤ワインは糖尿病に良い」という記事を読みながら考えていきます。

以下のサイトから申し込み可能です。
”こくちーずpro 第7回どばし健康カフェ 申し込み”

どなたでも気軽に参加できます。お待ちしております!
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by dobashinaika | 2015-12-04 22:43 | 土橋内科医院 | Comments(0)

”壊死性筋膜炎”に関するBMJのレビュー

BMJの"壊死性筋膜炎"に関するレビューから"Learning Points"だけまとめました。

Necrotising fasciitis
BMJ 2012; 345 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.e4274 (Published 20 July 2012)


・壊死性筋膜炎は致死的で急速進行性の軟部組織感染症であり,健康な若い人に起きる
・インスリン注射使用中の糖尿病,血液悪性疾患は特にリスクが高い
・診断には強い疑いを持つことが必要。「何かおかしい」あるいは治療にはんおうしない場合は特に壊死性筋膜炎を考える
・早期の外科的な検索(生検)は合併症が少なく確定診断と治療促進への唯一の道である
・診断が確定すれば外科的手術での生存率は60〜80%。より速い生検とデブリードマンが切除範囲の拡大や術後の後遺症を減らす。
by dobashinaika | 2015-12-03 23:25 | 感染症 | Comments(0)

心房細動患者の脳卒中リスク予測はATRIAスコアが最適:JACC誌

van den Ham HA, Klungel OH, Singer DE, et al.
Comparative Performance of ATRIA, CHADS2, and CHA2DS2-VASc Risk Scores Predicting Stroke in Patients With Atrial Fibrillation: Results From a National Primary Care Database.
J Am Coll Cardiol. 2015 Oct 27;66(17):1851-9. doi: 10.1016/j.jacc.2015.08.033.


疑問:ATRIAスコア,CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコアの中で一番良い抗凝固薬適応の指標は?

方法:
・英国のデータベースThe Clinical Practice Research Datalink database, 1998 to 2012
・ワルファリン非投与の心房細動例
・虚血性脳卒中,ワルファリン投与,死亡,試験終了まで追跡

結果:
1)60594人

2)年間脳卒中発症率:2.99%

3)CHA2DS2-VAScスコアで中〜高リスクとされた患者のイベント率はATRIA,CHADS2スコアではより低い

4)年齢が最強の予測因子

5)C統計量最大量:ATRA-0.70, CHADS2−0.68,CHA2DS2-VASc−0.68

6)再分類することによる予測能改善は,CHA2DS2-VAScスコアに比べてATRIAがよい
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結論:ATRIAスコアはこのデータベースコホートでは良いパフォーマンスを示した。CHA2DS2-VAScスコアに比べて低リスク患者でより精度が高い。こうした再評価は抗凝固薬の過剰使用に歯止めをかけるかもしれない。

### ATRIAスコアは以下です。以前に紹介したものとはやや違っています。元論文は以下で,2013年の学会発表(Singer D.E., Chang Y., Borowsky L.H., et al; A new risk scheme to predict ischemic stroke and other thromboembolism in atrial fibrillation: the ATRIA study stroke risk score. J Am Heart Assoc. 2013;2:e000250)です。CHA2DS2-VAScスコアやCHADS2スコアに比べかなり最近の症例をモデルにしていますし,とにかく,年齢と脳卒中の既往に重きをおいています。65歳以上というだけで既往無しで3点,既往ありは7点です。
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このデータベースコホートは平均74.4歳,75歳以上56%,85歳以上20.3%の集団です。こうした集団でも,CHA2DS2-VAScスコア1点の年間虚血性脳卒中発症率は0.78%と低値でした。また年間2%を超えるのはCHA2DS2-VAScスコアが3点になってからであるのに対し,ATRIAは6点からでした。ATRIAで6点というのは,65〜74歳で,糖尿病,心不全,高血圧の3つを合併しなければなりません。ATRIA6点はCHA2DS2-VAScスコアで4点,CHADS2スコアで3点の高リスク例となってしまいます。

やはり特にCHADS2スコアなどは2000年以前の古いデータに基づくものなので,年齢と高血圧,糖尿病などを一律にしていますが,降圧薬,糖尿病薬が豊富な現代においては,ATRIAのように改善のできないあるいは出来にくい年齢,脳卒中の既往などに重きを移したスコアリングのほうがマッチするような気がします。

この論文,今週のBMJのメルマガ人気投票でSPINT試験についで2位でした。
「低リスクに出し過ぎる」という警鐘ですね。脳卒中専門の先生は違和感があるかもしれません。
プライマリ・ケア医としては低リスクの同定にはこっちを使いたくなるかもです。

$$$ いよいよ紅葉も散り崩れり,です。でもまた来春新緑になるんですね,必ず。
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by dobashinaika | 2015-12-03 22:58 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

心房細動患者で左房内血栓を認めるのは約10%:T/H誌

Prevalence of left atrial thrombus in patients with non-valvular atrialfibrillation
A systematic review and meta-analysis of the literature
Matteo Nicola Dario Di Minno et al
Thromb Haemost 2016; 115:http://dx.doi.org/10.1160/TH15-07-0532


疑問:心房細動症例に左房内血栓はどの程度発生しているのか?

方法:
・非弁膜症性心房細動症例において。経食道心エコー施行時の左房内血栓の頻度に関するメタ解析
・72研究,20516人

結果:
1)左房内血栓の頻度:9.8%(7.6〜12.5)

2)左房内血栓は高齢(オッズ比2.56),女性(1.35),高血圧(1.78),糖尿病(1.86),心不全(3.76)

3)左房内血栓を有する患者はCHA2DS2-VAScスコア高値(0.88),高脳卒中/全身性塞栓症リスク(3.53)

4)左房内血栓の頻度と抗凝固薬使用は負の相関あり

5)抗凝固薬使用100%の研究の左房内血栓は3.4%,抗凝固薬使用0%の研究での頻度は7.4%

結論:今回データからは,左房内血栓は心房細動患者の約10%にみられ,認められた患者の脳卒中/全身性塞栓症リスクはない患者の3〜5倍。抗凝固薬投与例にも認められている。除細動やカテーテルアブレーションにおける左房内血栓のスクリーニングは血管イベント予防に有効。

### 左房内血栓が,ほんとうに心房細動に多いのか,多いとしてどのくらいなのか,実は実数としては知りませんでした。経食道エコーで10%なのですね。もちろん,左房内血栓はできたり,溶けたりしてるのかもしれず,あくまで観察した時に認められた例としての数字かと思われます。

また持続性/永続性だと15%と全体の平均より多くなるとのことです。

ちょっとびっくりしたのは,抗凝固薬使用例でも3.4%に認められるという点です。抗凝固が不十分ということかと思います。また欧州の研究らしく,女性も血栓ができやすいカテゴリーに入っていました。

今後結構引用される解析かもしれません。

$$$ 今朝の空。2列に並ぶひこうき雲
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by dobashinaika | 2015-12-02 22:59 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

抗凝固薬内服下で消化管出血を起こしたあとに抗凝固薬を再開すべきか:BMJ

Stroke and recurrent haemorrhage associated with antithrombotic treatment after gastrointestinal bleeding in patients with atrial fibrillation: nationwide cohort study
Laila Staerk, Gregory Y H Lip et al
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h5876 (Published 16 November 2015)

疑問:心房細動の抗凝固療法継続中に消化管出血を起こした人の抗凝固薬再開時における血栓塞栓症,大出血,再出血リスクはどのくらいか?

方法:
・デンマークコホート研究(1996〜2012年)
・心房細動の抗凝固療法施行時に消化管出血をきたし,抗凝固薬あるいは抗血小板薬を再開した症例
・退院90日後から追跡
・アウトカム:全死亡,血栓塞栓症,大出血,再出血

結果:
1)4602人(平均78歳),2年追跡

2)死亡:39.9%,血栓塞栓症12.0%。大出血;17.7%,再出血12.1%

3)抗凝固薬再開せず:27.1%

4)抗血栓薬再開例全死亡ハザード比(非再開例に比べ):抗凝固薬0.39,抗血小板薬0.76,両者0.41

5)抗血栓薬再開例血栓塞栓症ハザード比(非再開例に比べ):抗凝固薬0.41,抗血小板薬0.76,両者0.54

6)抗凝固薬再開のみが,大出血リスクを増加;ハザード比1.37

7)消化管出血再発は再開例,非再開例で同等
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意義:消化管出血後の抗凝固薬再開は再開しない例に比べて,死亡,血栓塞栓症を明らかに減らす。出血は増加するが。

資金;ベーリンガー・インゲルハイム社

### 抗凝固薬にNOACは含まれていない模様です。

またもデンマークでLip先生からの情報発信。
以前にもこの問題に関するメタ解析を取り上げました。この時は再開例の血栓塞栓症に関するハザード比は0.68でしたので,それよりも良い結果でした。
平均78歳と高齢集団にもかかわらず,やはり出血した場合でも再開したほうが良いということかと思います。
http://dobashin.exblog.jp/21285265/

もちろん,INRの厳格管理,血圧,PPI追加,出血源の同定などの施行は大切かと思われます。

あと,当然観察研究なので、非再開例の中には再開できないような重症例も含まれる可能性は押さえていくべき。

ただ,NOACだとどうするか。ほかのNOACに変えるべきか,低用量に変えるべきか。選択肢が増えただけに悩ましさも増えたように思います。
私はなるべくなら,RCTで消化管出血がワーファリンよりも増えないNOACに変えていますが,そうしたNOACでも消化管出血を経験していますので,あくまで暫定的です。
高齢者なら低用量にするという選択もあると思われます。

$$$きょうのにゃんこ。どこでしょうか
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by dobashinaika | 2015-12-01 22:15 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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治療 2015年 04 月号 [雑誌]

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ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

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