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アジア人でもCHA2DS2-VAScスコア0点は脳卒中低リスクか?:JACC誌

Using the CHA2DS2-VASc Score for Refining Stroke Risk Stratification in ‘Low-Risk’ Asian Patients With Atrial Fibrillation
Tze-Fan Chao et al
J Am Coll Cardiol. 2014;64(16):1658-1665


方法:
・186570例の大規模データで、アジア人のCHA2DS2-VAScスコアの妥当性をATRIAスコアとの比較で検証
・平均3.4年追跡
・虚血性脳卒中の既往:12.7%

結果:
・C統計量:CHA2DS2-VAScスコア0.698vs. ATRIA 0.627, p < 0.0001
・ATRIAスコア(0〜5点)の人の中でのCHA2DS2-VAScスコア0〜7点の1年間脳卒中発症率:1.06〜13.33%
・15年間では1.15%〜8.0%
・上記低リスクカテゴリーでのC統計量:CHA2DS2-VAScスコア0.629vs. ATRIA 0.593, p < 0.0001

結論:
ATRIAスコア低リスクは必ずしも真の低リスクではない(1年後脳卒中2.95%、15年後2.84%)。対照的にCHA2DS2-VAScスコア0点は真の低リスクである年間発症率は約1%

###CHA2DS2-VAScスコア0点ですが、このコホートでは1年間脳卒中発症率1.06%。
J-RYHTHMでは血管疾患は「冠動脈疾患」のみですが、0.7%(ワルファリン後0.2%)。
http://dobashin.exblog.jp/19951989/

デンマークの有名なコホートで0.84%でした
http://dobashin.exblog.jp/15040596/

脳卒中年間1%というのは、100人に一人ですから、それでも多いといえば多いかもしれません。
しかしながら、抗凝固薬の大出血率は一番低いエドキサバン30mgでも1.61% 、リバーロキサバンは3.60%ですので、年間1%の脳卒中だと、どう見ても抗凝固薬のリスクリダクションより出血が上まってしまいます。頭蓋内出血だけに限っても、NOACで0.2〜0.5%ですので、仮に7割の脳卒中リスク減少としてもギリギリですね。

やはり抗凝固薬使用の観点からは「低リスク」、正確に言えば抗凝固薬の予防効果が出血リスクを下回るほどの低リスクというところかと思います。
アジア人でもCHA2DS2-VAScスコア0点は脳卒中低リスクか?:JACC誌_a0119856_2141493.jpg

by dobashinaika | 2014-10-14 21:42 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

ダビガトランの服薬アドヒアランス:JMCP誌

A Retrospective Descriptive Analysis of Patient Adherence
to Dabigatran at a Large Academic Medical Center
Timothy W.et al
J Manag Care Pharm. 2014;20(10):1028-34


疑問:実臨床でのダビガトランのアドヒアランスはどうか?

方法:
・カリフォルニアの単一施設での後ろ向きカルテ解析
・ダビガトラン3ヶ月以上処方例
・プライマリ・ケア医、循環器疾患専門医
・MPR (medication possession ratio;総投薬量に対する実服薬量の割合)

結果:
1)159人対象

2)平均MPR 0.63

3)43%の患者はMPR80%未満:このサブグループの平均MPR:0.39 ± 0.27

4)57%の患者はMPR80%i以上:平均MPR0.94 ± 0.08

5)MPR0.8未満の群:男性多い。必要に応じた(PNR)処方が多い(1.73 vs. 0.86, P = 0.0039)

6)入院患者5名:出血3, 幻覚1、ダビガトラン非関連死1

結論:MPRが比較的低く、より改善されたサービスが必要。

### 最近服薬アドヒアランスに関心があるので、ダビガトランのアドヒアランス論文が目につきました。
以前にも報告されていてその論文では80%未満が27.8%でした。今回は43%で多いですね。

どんな時飲み忘れるか知りたいのですが、詳記はないようです。投与早期でもあとでも関係ないとも記載があります。

ただし重篤なアウトカムはなく、特に塞栓症は1例もないようです。平均年齢が70歳と若いこともあるかもしれませんが、多分連続して飲み忘れる症例がなかったのかもしれません。夕方1回程度の飲み忘れはダビガトランの場合大丈夫なのでしょうか?

どんな時に飲み忘れやすいか、飲み忘れやすい人のプロフィールなども知りたいところです。

ダビガトランの服薬アドヒアランス:JMCP誌_a0119856_2314534.jpg

今日の散歩は近所の朝顔。朝散歩でもしない限り、朝顔なんて小学校の宿題以来じっくり愛でたことはなかったですね。

何気ない日常の風景も被写体として、「見る」対象としてみると、語りかけてくる何かがあります。
by dobashinaika | 2014-10-13 23:28 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

なぜ新薬発売後に重大な副作用が出てしまうのか?

既に報道されておりますように、糖尿病新薬のSGLT2阻害薬における市販後調査で2人の死亡例が報告されたとの報道がなされました。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20141011-OYT1T50075.html?from=fb

対象薬はサノフィと興和が製造販売を手がける「アプルウェイ/デベルザ」と、アストラゼネカなどが販売する「フォシーガ」です。以下のPDFに概要が報告されています。
http://e-mr.sanofi.co.jp/di/information/APWPV999F1.pdf?date=20141012210604
http://med2.astrazeneca.co.jp/product/fxg_report201410.pdf

両者とも、脱水が背景にあり利尿薬を服用しているケースのようです。
もちろん、上記の条件が揃っていても重篤にならないケースも有り、正確な死因は今後の検討がまたれるところです。

しかしながら、同薬は本年4月の発売以来既に日本糖尿病学会から「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」が2回も出され、そのなかで「利尿薬との併用 は推奨されない。」と明記されています。

また別の薬ですが、最近では新規経口抗凝固薬(NOAC)の登場の時にも、最初の市場上梓薬であるプラザキサが発売されて5ヶ月でブルーレターがでて、5例の死亡報告が紹介され、これらはいずれも添付文書から外れた腎機能低下患者に投与されていた例でした。
http://dobashin.exblog.jp/13276881/

これらの新薬は、いずれも製薬会社が莫大な資金を投入して開発し、これまた莫大な資金による第III相臨床試験を経て世に出たものです。どちらもそれまでの治療薬とは異なる新しい機序の薬として、メディアその他で盛大に宣伝されたのは記憶にあたらしいところです。

もちろん市販後調査は全数調査ではありませんし、先行薬でも副作用としての死亡報告はありますので、新薬が既存薬に比べリスク(インパクトx確率)が高いかどうかは、この段階では不明です。

ここで問題にしたいのはリスクの多寡ではなく、添付文書や学会から注意喚起がなされていたのにもかかわらず、どうしてそこから外れた使用がなされてしまうのかということです。こうした新薬の発売当初にどうして毎度のごとくこのような深刻な有害事象が起きてしまうのでしょうか

まず一番目に問題となるのは、やはり上記のような注意喚起がなされているにもかかわらず利尿薬投与下で処方した医師側のあり方でしょう。特に新薬の場合、添付文書をよく把握し、また学会からの情報には敏感になるべきでしょう。

しかし問題の背景はもっと深いものがあると思われます。
こうした新薬は、今言ったように莫大な経費をかけた無作為化比較試験(RCT)を経て、ある程度の臨床的有効性と安全性が保証された上で当局の認可がおります。しかしこの無作為比較試験を主な根拠とした有効性安全性には問題があります。

たとえばNOACのRCTはすでに4つの1万人以上規模のものが結果発表され、認可の最大の根拠となっているわけですが、このRCTというのが現実世界の対象患者とは性質を異にする集団なのです。RCTは厳密な選考基準、除外基準を通って選ばれた患者集団であり、服薬アドヒアランスは良好で、重症合併症や超高齢者の登録は非常に少ないのです。英国のgeneral physician対象の調査では、実際の診療所で処方する患者さんのうちRCTの選択基準に合致する人は56〜74%に過ぎなかったという報告もあります。
http://dobashin.exblog.jp/17009757/

このように、そもそも現実世界の病院診療所の患者さんは、RCTのような整ったプロフィールのひとばかりでない、様々な背景を持った人の集団ですので、実際処方してみたら、予期しなかったような有害事象が出現する可能性が常にあると言わざるを得ません。

以前ものべましたが、こうしたRCTと現実世界のギャップを埋めるものとして登録研究を始めとする観察研究がありますが、SGLT2もNOACもそうした観察研究が出る前のRCTの段階から市場に出回りました。その分野の専門医でない場合、そうしたRCTの選択基準まではチェックしませんし、ある特殊なケースでどのような有害事象が予想されるという点に関して、専門医が感じるような臨床的経験もありません。

もちろん、処方するすべての医師に、処方上の基本的注意事項の把握が求められるのは当然ですが、この問題は、そのような医師側の問題だけでなく、今述べたような新薬の信頼性に関する構造的な問題も、同時にいやそれ以上に考えるべきではないかと思います。

たとえば、ヨーロッパの不整脈学会(EHRA)では、NOACの使い方に関して、ガイドラインとはまた別に、処方の仕方、患者フォローアップの仕方から他薬への切り替え方に至るまで、詳細かつ明確に、実践的な手引書が作られています。
http://www.escardio.org/communities/EHRA/publications/novel-oral-anticoagulants-for-atrial-fibrillation/Pages/welcome.aspx

全部の新薬でという訳にはいかないかもしれませんが、非専門医にも広く処方が求められる今回のような薬では、専門医がまず一定期間使用し、また登録研究がある程度出揃い、上記のようなプラクティカルガイドが専門医の間で作られるようになってから非専門医が初めて処方できるような、一定の規則を設けるのもひとつの方策ではないかと思われます。

そうしたシステムが確立されでもしない限り、非専門医としての基本は、少なくとも「ある一定のコンセンサスが出るまでは非専門医は新薬の処方は、見守りの姿勢」だと思います。

先日のブログで、ノンアドヒアランスの総説を読みましたが、このように薬剤処方の根幹に関わるような問題は、その要因も構造的です。ノンアドヒアランスの原因も、患者のリテラシー不足などといった単一なものではなく、薬そのものの問題、患者側の問題、医師側の問題、医療システムの問題など、さまざまな要因が絡んだ複雑な様相なのであるのが常であり、そのためそれに対する方策もmultimodalにならざるを得ません

新薬有害事象対策も同様で、われわれ医師側も十分慎重な姿勢が求められますが、同時にシステムそのものの問題点へのアプローチがもっと論議されて良いのではと思います。

えーそれで、しかしながら、実はこの問題はさらに根が深くて、これほど大きな新薬開発には莫大な宣伝が付きもので、そのような製薬会社経由の情報がやはり情報源の中の大きな位置を占めてしまうという医師の情報収集のあり方に言及せざるをえないことになります(やっぱりそこかw)。これこそ構造的な問題だと思われます。開業医はMRさんの情報だけを鵜呑みにするな、自分で情報を収集するスキルを身につけよ、、、といくら言葉にしても現実世界は堅固かもしれません。これもシステムへの介入が必要なのだろうと思います。具体的方策は。。上記のような規制も一法ですが。。。また考えます。

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今朝の散歩は広瀬川河畔から牛越橋付近。朝の7時ですが既に芋煮会始まってました^^
by dobashinaika | 2014-10-12 22:49 | 医療の問題 | Comments(0)

魚油に心房細動抑制効果なし(JACC):ひとはなぜそれでもサプリを好むのか

Fish Oil for the Reduction of Atrial Fibrillation Recurrence, Inflammation, and Oxidative Stress
Nigam A, Talajic M, Roy D, et al
J Am Coll Cardiol 2014;64:1441-1448
.

疑問:高用量魚油は炎症、酸化ストレス、心房細動再発を抑えるのか

方法:
・オメガ3脂肪酸(N-3)評価のための多施設試験(AFFODRD試験)。
・二重盲検、無作為化、プラセボ対照
・6ヶ月以内の発作性または持続性、症候性心房細動
・魚油4g/日 vs. プラセボ
・平均271日追跡
・一次アウトカム:30秒以上の心房細動再発
・二次アウトカム;炎症、酸化ストレスマーカー(高感度CRPとミエロペルオキシダーゼ)

結果;
1)337人登録、297人88%完了。脱落率に差なし

2)ベースライン特性に差なし

3)一次アウトカム:魚油群64.1% vs. プラセボ群63.2%:ハザード比1.10(0.84−1.45;p=0.48)

4)高感度CRPとミエロペルオキシダーゼ:6ヶ月後の減少度は両群差なし

結論:高用量魚油は、従来からの心房細動治療を受けていない心房細動患者の再発を抑制しない。その上炎症や酸化ストレスマーカーも減らさない。これが効果の欠如の説明になる。

見通し;このデータはオメガ3脂肪酸が心房細動負担の減少にあまり寄与しないことを示す。別の治療が期待される

### 確認ですが、ベースラインでは両群とも年齢60歳程度、発作性が持続性の2倍位、心機能低下や抗不整脈薬を必要とする例は省かれています。
魚油の中身は1g中にEPA400mgとDHA200mg含有したのが1日4gです。

日本で高脂血症に効果効能が通っている武田薬品のロトリガは2g中にEPA930mg、DHA750mgで1日2g標準、中性脂肪高値の場合は1日4gまでOKです。
いずれにしてもこれまでの用量よりはやや多い試験です。

過去のブログでさんざん見たように、オメガ3脂肪酸は心房細動抑制には効果が無いことはもう既知のものかと思っていました。
http://dobashin.exblog.jp/16784119/

しかし人々のサプリ信仰は、根強いのでしょうか。まだこのように論文が出るようです。
注意すべきなのは、アウトカムの評価、つまり心房細動の再発の評価法が、定期的な電話伝送(無症候性対策)および症候時の際の電話伝送によっているということです。

サプリを飲んでいると、それだけで効いていると思い込む、すると症状が感じにくくなる、いわゆるホーソン効果もあると思われます。本来は合併症や死亡をアウトカムにすべきですが、おそらくやる前から勝算がないと思われたのかもしれません。

その辺のアウトカムの取り方については、同じく心房細動とサプリメントに関しての青島周一先生の秀逸な論考をご覧ください。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/ebm/201409/538376_3.html
(要無料登録)

サプリを良しとする人間心理は興味深くて、大きいのはやはり医師の出す「医薬品」への(特に副作用の)恐怖や不信感があると考えられます。お医者さんが出す薬はなんとなく強くて怖いけれど、コンビニで売っているサプリなら副作用も少なくて安心である、という思い込みです。

更に上記のホーソン効果のごとく、そうして自分で選んだものというのは、「効く」という感覚を懐きやすいことも要因の一つと思われます。その上、サプリを進める人が同僚とか親戚とか、気のあった友人であることが多いのもサプリへの誘惑を強めます。

「信頼しているあの人がいいって言っていたサプリだし、自分で選んで買ったのだから、効いてほしい、いや効くに違いない」というバイアスが、西洋医薬品への恐れ不信感が相俟って、サプリやその他様々な診察室の外での医療行為(擬似医療?)へと誘う。。。

医療者としてこうしたバイアスとどう向き合うか、深く考えたいです。

ということで今日の散歩は、ちょっと早く起きてしまったので大崎八幡まで足を伸ばしました。
秋晴れ早朝の人もまばらな国宝神社。。なんとも清々しい気分になります。
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by dobashinaika | 2014-10-10 20:58 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

散歩哲学(1)〜医者が病気になった時〜

8月に入院したのですが(詳しくはこちら参照ください)、退院後約4週間、自宅療養を行いました。最初の2週間は頭痛やめまいとの闘いで、外にでることもままならなかったのですが、後半の2週間からは、なんとか散歩まで、ゆっくりではありますが、できるようになりました。

じつはこの病気になるまで、スケジュールを決めたしっかしした運動はしていなかったのです。患者さんには日頃から運動しなさいなどと言っておいて、お恥ずかしい話ですが。。。

あまり首に力がかけられないので、やはり有酸素運動としての散歩が一番と考え、ここ3週間以上になりますが、毎日、雨の日以外は20〜30分、家の近くを歩き回ようになりました。

いまさらながらですが散歩は素晴らしいです。
毎日だいたい同じルートを歩きますが、時にはちょっと寄り道をしたり、気になる曲がり度を曲がってみたりします。

今の季節は、金木犀が盛りで、毎朝、その心地よくて何となく緊張感のある香りに包まれながら逍遥しています。

空の青さ、鳥のさえずり、逃げるように走り去る野良猫、風音。。。

なにげない風景が、草木が、新鮮な顔を見せてくれます。
あるいは、ここにこんなお店があったのかという、小さな発見があります。

毎日同じようなルート、同じような家々、同じような景色なのですが、実は、毎日微妙に違うのです。
ここ数日、金木犀の香りの勢いがだんだん強くなってきています。また少しずつ肌寒くなり、ちょっと長袖が欲しくなります。

そうした季節のうつりかわりもそうですが、歩くこちら側も、毎日微妙に変わります。
今日は少し右の足首が痛いとか、心拍数が落ち着いているとか、頭がちょっと重いとか。。
あるいは、ブログに書くことが浮かんだりとか

毎日同じように思えていた外の風景も、中の自分も、必ず昨日とは違う何らかのうつろいがあります。

ドゥールーズの「差異と反復」にある、
「習慣とは日々のくり返しから"違い"を無視したもの」
とう言うのはなるほどその通りで、 私達の日常は習慣と発見、習慣と差異とからできているようにも思います。

今回、医者でありながら不覚にも病を患いましたが、その体験を通じて見えてきたこと(あるいは見えなくなったこと)が少なからずあります。

これから少しずつ、そうしたことをほぐしていきたいと思います。
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by dobashinaika | 2014-10-10 00:12 | 医者が患者になった時 | Comments(0)

心血管診療におけるノンアドヒアランスについての総説:EHJ誌

European Heart Journalの「心血管治療におけるノンアドヒアランス(服薬アドヒアランス不良)」についての総説

Non-adherence to cardiovascular medications* Kumaran Kolandaivelu1,2,
Benjamin B. Leiden, Patrick T. O'Gara, Deepak L. Bhatt
Eur Heart J (2014)doi:10.1093/eurheartj/ehu364


キーポイントは以下

・ノンアドヒアランスは世界的であり治療不良、アウトカム劣化のリスク因子
・ノンアドヒアランスのインパクトは治療による、特定の治療の文脈内で定義され評価される
・ノンアドヒアランスの原因は多要素であり、患者特異的である。スクリーニングツールの適応は不確定で無効と考えられる
・ノンアドヒアランスの治療は多元的で、エネルギーを使う:テーラーメイドでコラボ化されたスクリーニングが必要。それらは患者、プロバイダー、ペイヤーが費用対効果を最大限にするために必要とされる

ノンアドヒアランスはグローバルなもので、REACHレジストリーの服薬アドヒアランスは最も低い中近東で40%くらい、最高のアジアでも70%くらいです。その他主要な心血管系登録研究も、66〜78%くらいのアドヒアランスです。

また一般的にRCTのアドヒアランスは良好で、スタチンの試験で有名なWOSCOPSは75%、4Sは88%でしたが、登録研究のOntariI Databaseでは
30~40% でした。

アドヒアランスがアウトカムに及ぼす影響は薬によっても違うので一律に語れません。半減期の長い薬はそれほど影響されませんが、短い薬は致死的となることがあります。

しかしそうはいっても、トータルとして、ノンアドヒアランスの患者さんは継続して飲むひとよりアウトカムは一般的に悪いです。
PREMIER試験ではノンアドヒアランスの人の死亡率はアスピリンにおいて1.83倍、スタチンで2.86倍でした。

その原因としては、多くのものが関与しており以下が挙げられています。

治療的側面として:副作用、薬の多さ、コスト
患者の要因として:低ヘルスリテラシー、社会経済的地位、年齢、性別、宗教、地域、民族、文化的経験的信仰、メンタルヘルス
ヘルスシステムとして:エビデンスベースと解決策の欠如
プロバイダーの問題として:不敵さつなコミュニケーション、早急な判断、ポリファーマシー、文化的経験的信仰
病院の問題として:適切なスクリーングツールの欠如、サポート体制の欠如、診療時間の短さ、医師がよく変わること
保険上の問題として:医療保険がない

対策としてはこれらの克服となるわけですが、なかなかひと筋なわでは行かないようです。
教育ツールとしては昔ながらのカレンダーや薬箱から、モバイルPCアプリなどによるネットワークシステムまででており、アドヒアランスを評価するバイオマーカーも開発されています。しかしコストや複雑さなどの点から、広く普及するには至っていません。

しかしやはり患者教育はやり方によっては有効で、FAMEというトライアルでは、従来通りの方法と、マルチコンポーネントな方法(ブリスターパックの配布など)を比較し、当初2群とも従来通りの方法では5%のアドヒアランス(本当?)しかなかったのが、マルチコンポーネント法だと98.7%に増加し、それを従来通り戻すと21.7%に減り、戻さない群では97.4%だったとのことです。

まあ教育ばかりでなく、薬そのものへのモチベーション、ゴールの共有、ポリファーマシーや服薬回数の減少などの取り組みも重要と思われます。

しかし登録研究のアドヒアランスが50%未満とか良くて70%というのでは、RCTがそのまま現実世界に適応したくてもできないわけですね。
筆者の言うように、「ノンアドヒアランスはEBMを土台から崩す(undermine)」わけで、エビデンスの批判的吟味と平行して、いやこれまであまり取り組まれてこなかったので、それ以上に今後のメインテーマだろうと思います。
by dobashinaika | 2014-10-08 23:48 | EBM | Comments(0)

「頻脈性不整脈に対する抗凝固薬使用の要点」についての新聞記事です

MEDICAMENT NEWS(ライフサイエンス)最新号(10月5日)で
「頻脈性不整脈に対する抗凝固薬使用の要点」
について書かせていただきました。
http://www.lifesci.co.jp/cgi-bin/search/periodicals.cgi?type=mn#03


参考にしていただければ幸いです。
(購入が必要です)
by dobashinaika | 2014-10-08 21:15 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

「弁膜症性心房細動」の新しい呼び方の提唱;EHJ誌

European Heart Journal オンライン版 CURRENT OPINION:

What is ‘valvular’ atrial fibrillation? A reappraisal
Raffaele De Caterina and A. John Cam


Dr. Camらによる「弁膜症性」心房細動に関するオピニオンです。
著者等による「弁膜症性」の定義と結論のみ紹介します。

・「弁膜症性」「非弁膜症性」はしばしば混乱を招く
・機械的な人工弁表面での血液の接触の仕方は弁膜症のない多くの心房細動の場合とは異なる
・心房細動のない機械弁患者においてもワルファリンは、ダビガトランより効果的かつ安全

・中等度〜高度僧帽弁狭窄症と人工弁は血栓塞栓症のリスクが特に高い
・「僧帽弁狭窄症」は「リウマチ性心房細動」とほど同じ意味で使われる
・僧帽弁狭窄症における血栓生成の病理は非弁膜症性のそれとは質的に異なるかどうか不明

・僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症は左房内の低血流を来さないし、血栓塞栓リスクの増加は明らかでない
.またそれらは「非弁膜症性」に比べNOACでの血栓塞栓症リスクの低下も明らかではない

・同様に、肥大型心筋症も非弁膜症に比べて、NOACがリスクを減らすわけではない

・生体弁や弁形成後は「非弁膜症性」に比べて、血栓塞栓リスクの点で本質的にあまり変わりはない
・NOACがこれらにおいてワルファリンより優れているエビデンスもない

我々は、‘mechanical and rheumaticmitral valvular AF’ (略して MARM-AF) という言葉を提唱する。

###  「弁膜症性」だと人工弁がぬけますので、「非ー非弁膜症性」という疾患概念を作る必要があるわけですね。NOACの適応はいずれも「非弁膜症性心房細動」ですが、この「弁膜症」の定義がいつも紛らわしく、保険査定上も問題となるところです。

本来は「人工弁及びリウマチ性僧帽弁性心房細動」というのが正しいというわけでそれを略してMARM AF(マームエーエフ)という呼び名が飛び出してきました。

最後のほうでイタリック体で控えめには記載されていますけど、その程度普及するでしょうか。
by dobashinaika | 2014-10-07 23:45 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

薬剤師主導による抗凝固薬管理の質は良好:IJPP誌

Anticoagulation management by community pharmacists in New Zealand: an evaluation of a collaborative model in primary care
Jeff Harrison, John P. Shaw and Jenny E. Harrison
International Journal of Pharmacy Practiceオンライン版


方法:
・地域薬剤師の抗凝固療法管理サービス(抗凝固療法用量調節のためのコンピュターによるINR管理)
・サービス前後でのTTR検討
・薬剤師によるものとGPによるものとの比較

結果:
1)全693例。平均65歳。平均TTR78.6%

2)TTR: GP主導ケア61.8% vs. 薬剤師主導ケア78.5% (p<0.001)

3)とくに範囲より低値が是正された

4)回数に差はなかった

結論:地域薬剤師主導のpoint-of-careとコンピュータ−による抗凝固ケアは安全かつ効果的でTTRを著明改善。この結果は広くコラボ的ケアのモデルとして適応できる。

### ニュージーランドの薬科大学、薬剤師からの報告です。
薬剤師主導のpoint-pf-careとは、薬局でコアグチェックによる採血を施行し、その場ででたPT-INR値に応じて、コンピュータ−による用量アルゴリズムにもとづいて、ワルファリンの錠数を決めるというものです。その変更は薬剤師の裁量に任されているようです。

かたやGP主導の方法は、詳細は記されていませんが従来通りの経験的なものと思われます。

それにしても薬剤師主導のTTRが78.6%というのは驚異的です。
Disccusionで述べられているようにWanらの報告によると、TTRが7%改善すると大出血は1%減る。12%改善すると血栓塞栓症が1%改善しますので、医師主導よりも薬剤師主導のほうが出血が2ポイント、血栓塞栓症が1ポイント以上減ることになり、もちろんNOACのRCTの結果より良いことになりそうです。

ただし、この研究の一番の特徴は検査回数ですね。原則週1回の採血で安定しいる場合は月1回まで延長できるとされています。結果的に薬剤師主導は月3,4回、医師主導でも2.8回とかなり手間かなあと思われます。

おそらく薬剤師の先生の、コミュニケーションスキルレベルも高いと思われますが、このくらい頻回の検査と、コンピューターアルゴリズムでの厳格管理だと驚異的なTTRがえられるのでしょうか。

検査回数をもう少し減らした上での研究がまたれます。月1回の検査でもこのようにきっちりやればNOACに負けなさそうな気がします。
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by dobashinaika | 2014-10-06 20:40 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

EBMとSDM(shared decision making)の関係:JAMA誌

The Connection Between Evidence-Based Medicine and Shared Decision Making
Tammy C. Hoffmann, PhD1,2; Victor M. Montori, MD, MSc3; Chris Del Mar, MD, FRACGP1
JAMA. 2014;312(13):1295-1296.


JAMAから。Evidence-based medicine (EBM) and shared decision making (SDM) の関係についての総説
要点のみ

・EBMとSDMともヘルスケアの率の本質だが、両者の相互依関係については十分理解されていない
・EBMはこれまで患者の価値、好みを無視しがち:それらの統合が困難なため 

<両者が不可欠>
・SDMなきEBMは暴政(専制政治?):エビデンスは本に訳されずに投げ出され、アウトカムか改善しない・EBMの原則に目が向けられない時SDMは限定的となる
疾患の自然経過、可能な選択、利益と害について知らされなければ、患者の好みや意向は信頼できるリスクベネフィット評価に基づくものでないことになる

<なぜ分断されていたのか>
・これまでEBMのリーダーや研究者、指導者とSDMのそれとは別のクラスターだった
・EBMの起源は疫学なので、方法論やエビデンスのリソース、吟味、統合などに焦点が当てられていた
・そして患者との話し合いやエンゲージには気が蒙られなかった
・EBMの関心の多くはスキャンダル(未発表データとか、spin、利益相反)やテクノロジーに目が向きがち

<統合の実現>
・まずEBMトレーニングにSDMを取り入れること
・もう一つは臨床ガイドラインに両者を取り入れること
・多くのガイドラインは患者の好みを取り入れていない
・または患者と会話するよう促しているが、その方法まで言及していない
・リスクベネフィットが拮抗している時やエビデンスが不明瞭な場合にこそSDMが強く薦められる
・特にリスクベネフィットが拮抗している時。たとえばワルファファリン患者での服薬アドヒアランス、モニタリング、食品

<結論>
・最近になりEBM,SDM両者のリンクの不足と重要性が指摘されてきた
・ガイドライン、教育、リサーチなどで強調される機会がたくさん
・Evidence-based medicine needs SDM, and SDM needs EBM. Patients need both.
EBMとSDM(shared decision making)の関係:JAMA誌_a0119856_23305330.png


###抗凝固療法も例示されていましたね。抗凝固療法などはSDMの適応の必要な最たる分野かもしれません。

どうシェアしたら良いのか。EBM(狭義のでしょう)の中に取り入れられにくかったのは、それが本質的に”スキル””テクニック”ではくくれない、客観的な技法ではないからだと思われます。

SDMなきEBMは暴政(専制政治?)なら、EBMなきSDMは宗教でしょうか(あるいは詐欺?)
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by dobashinaika | 2014-10-04 23:32 | リスク/意思決定 | Comments(2)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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