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心房細動抗凝固療法の適応決定上CHADS2スコアとCHA2DS2-VAScスコアはどちらが良いのか?

Comparison of CHADS2 and CHA2DS2-VASC anticoagulation recommendations: evaluation in a cohort of atrial fibrillation ablation patientsEuropace (2013)doi:10.1093/europace/eut244

【疑問】CHADS2スコアとCHA2DS2-VAScスコアはどちらがよいのか?

【方法】
・カリフォルニアのセコイア病院でカテーテルアブレーションを受けた心房細動患者連続1411人
・抗凝固薬不要(CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアとも0点)、抗凝固薬考慮(CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアとも1点)、抗凝固薬必須(CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアとも2点以上)

【結果】
1)CHADS2スコアに比べ、CHA2DS2-VAScスコアを用いると、「抗凝固薬不要」は40.3%→21.8%、「抗凝固薬考慮」は36.6%→27.9%に減少

2)一方「抗凝固薬必須」は23.0%→50.2%に増加

3)CHA2DS2-VAScスコアでは65〜74歳と女性が、適応増加分の95.2%を占め、血管疾患は4.8%

4)多くの血管疾患はすでに「抗凝固薬必須」と定義されていたCHADS2スコアの高点数例に発症した(P<0.0001)

5)(ESCガイドラインで)抗凝固薬不要群に再組換されるCHA2DS2-VAScスコアで1点の65歳未満女性30人では、その効果は最小限のものであった。

【結論】アブレーションを施行される心房細動患者においては、CHADS2スコアに比べCHA2DS2-VAScスコアは抗凝固薬の適応を明らかに増加させた。CHA2DS2-VAScスコアを用いることによる適応の大幅増加が患者アウトカムを改善するかどうかはランダム化比較試験が必要

### アブレーションを受ける人は若いので、CHADS2スコア0点で「不要]の65歳〜74歳女性はCHA2DS2-VAScスコアで2点となり「必須」になってしまいます。

CHADS2スコアの年齢を65歳に引き下げるだけのチャズーバスク折衷案がいいように思いますがどうでしょうか。それと予想通り「血管疾患」は他のリスクに飲み込まれて、あまり追加される意味は無いようですね。血管疾患のある人は大抵、高血圧、糖尿病がありますから。
by dobashinaika | 2013-09-17 23:57 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

抗凝固療法下の心房細動の死因は脳卒中ではなく心臓死が多い:"抗凝固療法を超える”視点の必要性

Circulation 9月9日付オンライン版より

Causes of Death and Influencing Factors in Patients with Atrial Fibrillation: A Competing Risk Analysis from the Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulant Therapy Studydoi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.112.000491

【疑問】抗凝固療法を受けている患者の死因は何か?やはり脳卒中か?

【方法】
・RE-LY試験登録患者18113例対象(平均71.5歳、男64%、CHADS2スコア2.1点、平均追跡期間2年)
・中央(の機関)での死因判定

【結果】
1)死亡例1371例:年間3.84%

2)心臓死(心臓突然死、心不全)の全死亡に占める割合:37.4%

3)脳卒中及び出血関連死:9.8%

4)ダビガトランは血管死(塞栓、出血関連)を明らかに減らす:RR0.63,P=0.007

5)他の死因(心臓死も含む)は治療(ワルファリンかダビガトランか)によらず同じ

6)心臓死の最も強い予測因子は
  心不全:ハザード比3.02, P<0.0001
   心室内伝導遅延:ハザード比1.99,P<0.0001
   心筋梗塞:ハザード比2.05,P<0.0001

【結論】抗凝固療法下の心房細動患者集団においては死因の多数は脳卒中とは無関係。今回は心房細動の死亡率を減らすには、抗凝固療法を超えた介入が何であるのかを特定することの必要性を強調する結果となった。

### RE-LY試験参加患者の検討です。
良好な抗凝固療法下では、脳卒中でなくて心不全などが予後に強く影響する。。。
時代は抗凝固療法をだれに行うか、3つのNOACのどれを選ぶのかで持ちきりですが、ポスト抗凝固、つまりしっかり抗凝固療法を施行したら、その先は何をすればよいかということを、そろそろ考えなければいけないようです。と言うか、ポストでなくて、同時に考えるべきことですが。。。

日本人の心房細動患者の死亡率や合併症については山下先生の総説が参考になります。
http://dobashin.exblog.jp/17627741/
またスウェーデンの大規模登録研究では、心房細動患者の死亡率に寄与する因子はがん、CKD、COPDです。
http://dobashin.exblog.jp/17196337/

われわれは抗凝固療法が当たり前となる時代を目前に控え(現状はまだまだですが)、息をするように、当たり前に抗凝固療法ができるようになったら、"Beyond anticoagulation"、つまり抗凝固療法を超えた視点、「抗凝固療法をあえて見ないようにする視点」を求められつつあるのかもしれません。
by dobashinaika | 2013-09-13 23:25 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(3)

超高齢者の方にとって、納豆を食べることと抗凝固薬を飲むことはどちらが幸せなのだろう?

12日はある製薬会社主催のインターネットシンポジウムに参加しました。

ブログで新規抗凝固薬のことを好き勝手に書いているのが目にとまるのか、最近このような講演会の講師の依頼をときに受けます。
私自身は特定の薬剤の宣伝をするつもりは全くなく、本来の適応症例の50%前後とも言われる抗凝固薬のあまりのアンダーユーズな現状が少しでも改善されればとの希望と、講師となることでその分野について大変勉強になること、そしてなにより全国の著名な先生方とつながりができることが楽しくて今日のようにお引き受けすることもあるのですが、取り立てて特定の薬剤の長所だけの紹介はしない、講演料は受け取らないことを原則としています(このことは後日まとめて書く予定にしています)。

きょうは、有名なFUSHIMI AFレジストリーの立役者である京都医療センターの赤尾昌治先生とご一緒させていただきました。赤尾先生からFUSHIMI レジストリーの1年後のアウトカムが報告され、非常に興味深いものがありました。お人柄も素晴らしく、またも良い出会いがありました。

日本の抗凝固薬使用はアンダーコントロール、アンダーユーズであり、諸試験に比べて脳卒中が多く、また抗凝固薬投与例に出血が少なかった、という点は非常に重要な知見だと思います。

また心房細動の人の死亡が、脳卒中ではなくその他の原因が多いということもたいへん示唆に富む所見です。ちょうど同じような趣旨の報告がCirculationからでていて、これも読まねばなりませんが。
http://circ.ahajournals.org/content/early/2013/09/09/CIRCULATIONAHA.112.000491.abstract.html?
papetoc


私の発表は「高齢者の抗凝固療法」という拙いもので、うまく伝わったかどうかわかりません。

上記2つの発表内容とその感想は後日ゆっくりアップさせていただきます。

発表の後のネット経由の質問に以下の様なものがありました。
「90歳以上にも30例程度にワーファリンを投与し、ほとんどの例で経過良好なのだが、97歳のワーファリン服用の方が、納豆を食べたいとのことなので、新規抗凝固薬に変えたいがどうか?」

私は、それまでの話の流れから「NOACで超高齢者のエビデンスはなく、これまでワーファリンでうまくいっているのであれば、腎機能も懸念されるので、ご本人家族と話し合ってなるべく変えずにワーファリンで行くべきでは」というようなことを咄嗟に答えたかと思います。
ただシンポのあと、赤尾先生との雑談の中でも出てきたのですが、納豆食べたければ食べてもいい、と言ってあげるのも十分ひとつの選択肢ではないか。97歳の方の納豆への愛着度をよく聞いてあげて、食べることが幸福なのであれば、抗凝固薬をやめて納豆を食べて良い、というのもありなのでは、と思い直し、自分のまだまだ凝り固まった”エビデンス脳”を深く反省したのでした。

所詮、エビデンスと言ったって、97歳の方が抗凝固薬を施行せずにいた場合の塞栓症と出血リスクバランスについてなんて、レベルの高いエビデンスは存在しません。高齢者はCHADS2スコアとイベント発症率が必ずしも相関しないとのデータも有ります。
http://dobashin.exblog.jp/13024151/

私の今日の講演の趣旨は、高齢者抗凝固療法の是非に関する意思決定は「クリニカルエビデンス」「患者の問題」「医師の専門性」の3者を総合的に考える。というものでした。であればなおのこと、90代の方とそのご家族にとっての最も良いこと、最も幸せなことはなにかを考えてさしあげるべきでしょう。

超高齢者に取っては抗凝固療法をしない、あるいはやめるというのも十分一つの選択肢である。

もし上記のご質問をされた先生が、このブログをご覧になっておられれば、これが私の追加の解答でございます。
きょうは、FUSHIMI AF Registyを始めインスパイヤされることの多い1日でした。
by dobashinaika | 2013-09-13 00:47 | 抗凝固療法:全般 | Comments(2)

新規抗凝固薬からワルファリンへの切り替えは要注意:当院での検討

本日は、古巣の仙台市立病院の病診連携の会でした。
私は、新規抗凝固薬NOACからワルファリンや他のNOACに切り替えを余儀なくされた症例をまとめたので、発表させていただきました。

ROCKET-AFまたはARISTOTOLE試験では試験終了時、NOAC中止、ワルファリン再開時に脳卒中/全身性塞栓が増加したことが知られています。また日常診療で、様々な理由でNOACからワルファリンに戻る、または他のNOACに切り替える必要に迫られることがあります。当院での2011年3月から今までのそうした切り替え症例の例数および変更理由は以下の通リです

1)ダビガトラン→ワルファリンに切り替えた症例は12例
・ aPTT上昇2例、腎機能低下2例、消化器症状1例、その他症状3例、飲み忘れやすい1例、ブルーレターを読んで1例、コスト高2例
・変更時INR至適レベルまでの到達期間はワルファリンナイーブ(4例)が平均17日(7〜24日)、非ナイーブ(8例)が6.6日(2=13日)
・脳卒中、全身性塞栓、大出血イベントなし

2)ダビガトラン→リバーロキサバン:6例
・消化器症状4例、その他症状1例、夜のみ忘れやすい1例

3)ダビガトラン→アピキサバン2例
・腎機能低下

4)リバーロキサバン→ワルファリン;1例
・コスト高

5)リバーロキサバン→ダビガトラン3例
・1日2回が飲みやすい1例、その他症状2例

このような結果でした。ダビガトラン→ワルファリンが12例も認められ、びっくりしています。

とにかく最大の問題は、ワルファリン投与開始からINR至適レベル到達までの時間です。
ワーファリンナイーブなら、これまでも抗凝固薬なしできていたので、急がなくて良いかもしれません(NOACにリバウンド現象がないという前提で)。それにしてもたとえ2mg/日から初めてはいるものの、24日もかかる症例がありました。この間NOACとワルファリンは併用状態です。

それより問題は、ワルファリンの経験例(非ナイーブ例)です。以前の常用量から始めることにしていますが、投与初期の過凝固が心配であり、また急激なINR上昇に備えて3日毎に来院していただいています。
これ自体患者さんが大変ですし、またリスクも有ります。

幸い当院では、これまで塞栓、出血イベント共にありませんが、両者を併用する期間が多少なりともあり、その期間は腎機能その他により、各個人で相当異なると考えられます。

このオーバーラップの時期、採血間隔など考えるべき課題は多大なものがあります。

解決策としては、まずできるだけ他のNOACにかえることがあります。今回ダビガトランからワルファリンに変え他症例は、発売初期でまだ他のNOACが上梓されていない、または2週間処方の時の例が多かったようです。
今後3〜4剤のNOACが使えるようになるので、消化器症状、腎機能などが理由なら他のNOACに変える配慮が必要かと思われます。

ただし、出血、飲み忘れ、コスト高などの理由になりますと、他のNOACというわけには行きません。

やはりNOACから他のNOACへの切り替え困難でワルファリンへの切替を余儀なくされるケースでは、入院の上へパリンブリッジまたは入院の上ワルファリン経口投与開始、という選択肢を今後より積極的に考える必要があると思われます。

NOACが今後ますます普及でしょうが、多く処方していれば、必ず上記のような患者さんに遭遇する。その時にワーファリンのありがたみを知ると同時に、しっかりとした戦略とワルファリン使用のスキルがやはり必要なのであることを再認識いたました。

新しいものを知れば知るほど、古いものも必要とされることがある。「温故知新」であり、「温新知故」ということですねえ。
by dobashinaika | 2013-09-12 00:32 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

心房細動の抗血栓療法で最も良好なアウトカムを示す治療法は何か?

Heart 9月5日号オンライン版より

Current and new oral antithrombotics in non-valvular atrial fibrillation: a network meta-analysis of 79 808 patientsHeart doi:10.1136/heartjnl-2013-304347

【疑問】各種抗血栓療法で最も良いアウトカムを示すものは何か?

【デザイン、セッティング、患者】
心房細動患者の抗血栓療法を取り扱った論文をMEDLINE, Embase, and Cochrane Central Register of Controlled Trialsから抽出

【アウトカム】脳卒中、塞栓症、死亡、出血を含む複合エンドポイント

【結果】
1)20試験、79,808人、8治療法(アスピリン、アスピリン+クロピドグレル、ビタミンK阻害薬、ダビガトラン110,ダビガトラン150、リバーロキサバン、アピキサバン、プラシボコントロール)

2)ダビガトラン150の対プラセボ脳卒中リスク(オッズ比0.25)、虚血性脳卒中+全身性塞栓(オッズ比0.26)、死亡(オッズ比0.53)の各リスクは最低

3)アスピリン+クロピドグレルの対プラゼボ出血リスクは最高(オッズ比3.56)

4)シミュレーションによる比較では、脳卒中、虚血性脳卒中、全身性塞栓、死亡においてNOAC>VKA, 抗血小板薬

【結論】ネットワークメタ解析においては、NOACが脳卒中、虚血性脳卒中、全身性塞栓、全死亡を減らす最も見込みのある治療法である

### 最近話題のネットワーク解析による検討です。
この解析方法の問題点はBMJに掲載されているので、参考にしてください。
http://www.bmj.com/content/347/bmj.f3675

個々の研究のバイアス検討が甘くなるようですね。この論文がそうしたバイアスがあるのかはアブストラクトのみですので、不明です。全部のアウトカムを込みにして、抗血小板療法まで含めて比較しているのがすごいです(アメリカの方が好きそうなことかもしれません)。

シミュレートしてプラセボと比較させるとダビガトラン150が最良の薬のようですが、アピキサバンではないのは統計的な問題からなのでしょうか。虚血性脳卒中が入っているから?

いずれにしても"promising"でありまだ”established”ではない段階ということで
by dobashinaika | 2013-09-09 22:28 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

抗凝固療法のガイドラインについての雑誌記事を書きました

Thrombosis Medicine 2013年9月号(先端医学社)の”ガイドライン ここがポイント”というコーナーで「抗凝固療法とHAS-BLEDスコア」と題した記事を執筆させていただきました。

http://www.sentan.com/cgi-bin/db_n.cgi?mode=view_backno&no=978

いつも勉強させていただきております鹿児島大学の丸山征郎先生が編集主幹をされている雑誌です。

内容は現在内外からでている抗凝固療法のガイドラインの状況を、HAS〜BLEDスコアとの関係を絡めながら概観したものとなっています。

この記事を書くことで、自分自身大変勉強になりました。

ご笑覧いただければ(と言っても購入しなければなりませんが)幸いです。
by dobashinaika | 2013-09-08 22:09 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

抗凝固薬の梗塞と出血を一度に評価するリスクスコア:欧州心臓病学会2013より

今週初めアムステルダムで開催されたESC2013では、色々と興味深いディスカッションが行われてようです。
学会ホームページに主要なトライアルの発表とそのディスカッションが紹介され、日本に居ながらにして最先端の知見が得られるのがありがたいです。
その中空から、主に心房細動関連の治験について少しずつご紹介していきます。

AMADEUS: Development of a novel composite stroke and bleeding risk score in patients with atrial fibrillation

【疑問】梗塞と出血の両方を予測するスコアはないものなのだろうか?

【方法】AMADEUS試験(FXa阻害薬=idraparinuxとワルファリンとの比較試験)ビタミンK阻害薬(VKA)群における各エンドポイントごとの予測因子を測定する
エンドポイント1:脳卒中、非中枢性塞栓、大出血
エンドポイント2:脳卒中、全身性または静脈塞栓、心筋梗塞、心血管死、大出血

【結果】
1)VKA群2293例

2)エンドポイント1(50イベント2.4/100人年)の独立予測因子:年齢(p=0.014)、脳卒中/TIAの既往(p=0.049)、アスピリン使用(p=0.002)、TTR(p=0.007)

3)エンドポイント2(94イベント4.5/人年)の独立予測因子:エンドポイント1の因子+左室収縮能低下(p=0.011)

4)各回帰係数の応じて以下のように主見つけした複合スコア1,2を創出
Composite score 1 = (0.05 x Age)+(0.6 x Previous stroke or TIA)+(0.9 x concomitant aspirin)-(1.8 x TTR)
Composite score 2 = (0.05 x Age)+(0.6 x Previous stroke or TIA)+(0.7 x concomitant aspirin)+(0.6 x LV dysfunction)-(1.4 x TTR)5)各スコアのAUCは他のスコアに比べても良好:スコア1=0.728、スコア2=0.707

【結論】脳卒中/血栓塞栓症/出血のための新しい複合スコアを開発したこ。これまでのスコアは各人の脳卒中/血栓塞栓症と出血のバランスを評価したが、この複合スコアではさらなる研究が必要である。

### ディスカッションレポートが有り、その中で演者のLip先生は
・この研究は血栓塞栓と大出血、そしてよく忘れられる心血管イベント(心筋梗塞)の総合的な指標に関するリスクスコアの評価である
・筆者らはAMADEUS研究というよく定義されたコホートにおいてこの仮説を検証した
・筆者らはアスピリン内服やTTRの質などの心房細動に対して負のリスク因子も取り上げた。アスピリンの追加は利益ではなく出血リスクを増加させる。我々は抗凝固役の管理の質のチェックを迫られ、INR管理の悪いケースでは他のオプション選択を余儀なくされる
・「シンプルイズベスト」:実際我々は日々の臨床では意思決定において、CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコア、HAS-BLEDスコアを使っている
と述べたとされています。

CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコア、HAS-BLEDスコアと比べて、予測能を明らかに改善することはしなかったとのことです。年齢、脳卒中の既往、アスピリン使用、TTRですので、要素自体はシンプルですが、係数をかけるので計算機が必要ですし、TTR測定や、左室収縮能評価は面倒そうです。

本来は、このようにコホート内の各危険因子を分析し、回帰係数ごとに重み付けして点数を出すほうが科学的であり、CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアのように最初に規定しておいて、あとから発症率と相関したから良しとするという決め方よりは合理的であはあります。

また塞栓症と出血を一括して評価する点では合理的な発想という印象も受けます。

それでもやはりCHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアなどに一日の長があるのでしょうか。
by dobashinaika | 2013-09-06 23:27 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

超高齢者の心房細動管理:ケアネットより

医療情報サイト、ケアネットの「レポート」に「超高齢者の心房細動管理」と題した記事を掲載させていただきました。
http://www.carenet.com/report/series/cardiology/cvc/001/03/01.html
(要無料登録)

もともとは昨年11月発行の"Cardiovascular Contemporary"誌に書かせていただいた内容の転載です。

80〜85歳以上を超高齢者に対して抗凝固療法を行うべきか? 極めて今日的な、しかし解答困難な問題です。

エビデンスは少ない、ケースごとに多様性があり、不確実であり、高リスク。しかし心原性脳塞栓で要介護となる可能性も高い。

超高齢者の抗凝固療法、いやもっと広げて超高齢者の医療戦略そのものが答えの出ないアポリアでありそれでも答えを出すことを迫られる不可能かつ不可避問題です。所詮どんなエビデンスも不確実ではあるわけで、「正しい」解をことさら求めず、患者ー医療者双方にとって「最適な」解を探求する。

高齢者医療へのスタンスは今のところこの姿勢。
by dobashinaika | 2013-09-05 23:43 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

ダビガトランはワルファリンに比べ機械弁患者の血栓塞栓症と出血を増加させる:RE-ALIGN試験

現在アムステルダムで開催されているヨーロッパ心臓病学会からの報告以前FDAからダビガトランの機械弁心房細動患者に関する安全性情報が出された根拠となったRE-ALIGN試験の論文化です。

Dabigatran versus Warfarin in Patients with Mechanical Heart ValvesDOI: 10.1056/NEJMoa1300615

P:大動脈弁または僧帽弁置換術7日以内投与開始(population A)または僧帽弁置換(大動脈弁置換併用の有無問わず)3ヶ月以上後(population B)

E:ダビガトラン(腎機能別に150,220,300mg1日2日)、トラフ血中濃度が50ng/ml以上になるように調整

C:ワルファリン:INR2~3または2.5~3.5に管理

O:トラフ血中濃度

【結果】
1)252人登録時点で血栓塞栓イベント及び出血イベントの増加により中止

2)ダビガトランの用量調整または中止:52/162(32%)

3)虚血性または特定できない脳卒中:ダビガトラン群9例5% vs. ワルファリン群なし

4)大出血:ダビガトラン群7例4% vs. ワルファリン群2例2%=全例心嚢出血
a0119856_2095826.png

【結論】
機械弁に対するダビガトラン使用は、ワルファリンに比べ血栓塞栓症及び出血合併症の増加と関連あり。利益なく、リスクの増加のみ示された。

### 最初のエンドポイントは単なる血中濃度だったのにもかかわらずイベントがあまりにも多く中止となった試験です。

血栓塞栓症はpopulation A に多く、出血は両グループに同様に見られたようです。理由として、投与初期にトラフの血中濃度の低下が見られたことが挙げられていますが、一方トラフ時高濃度例でも血栓塞栓症が認められていることから、十分な理由とはいえないとしています。

もうひとつの理由としては、最低血中濃度がRE-LY試験で効果的とされた50に設定されたことが挙げられ、もっと高い方が適切であり、1日3回などの頻回投与により高いトラフ値、低めのピーク値が達成できた可能性に言及しています。

左心耳血栓は、血流が静かでずり応力も弱く、うっ血と内皮障害が引き金となりますが、機械弁では手術侵襲の組織損傷による組織因子放出による凝固系活性化と血栓形成が関与しており、人工物の血流への暴露は内因系(contact pathway)の活性化の引き金になると考えられています(discssionより)。

ワルファリンは第VII因子を抑制することで組織因子誘発性の血栓を溶かし、また第IX因子抑制により内因系も抑えるため機械弁にはより好都合である一方、ダビガトランはトロンビンを抑えるのみなので、過剰となった内因系凝固因子を抑えることができない。。。

何れにしても残念というか、ワルファリンの偉大さを改めて認識させられる出来事ではあります。

もう少し論文を細かく読み込みたいと思います。

関連ブログ
http://dobashin.exblog.jp/17015520/
by dobashinaika | 2013-09-04 20:11 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

われわれはディオバン問題の教えをDPP4阻害薬処方に活かせるのか?

現在アムステルダムで欧州心臓病学会が開催され、NEJMにその速報が連日論文化されています。
その中でDPP4阻害薬のプラゼホ対照RCTが2本発表されていて、非常に大切と思われますのでご紹介いたします。

ひとつはsaxagliptin(オングリザ:協和発酵)で、「2.1年の追跡で心血管イベントを増やさず、減らさず。心不全は1.27倍に増やした」というもの
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1307684?query=featured_home#t=article

もうひとつはalogliprin(ネシーナ」武田薬品)で「中央値18ケ月の非劣性RCTで、心血管イベントを増やさなかった」というもの
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1305889?query=OF#t=article

どちらもHbA1cは0.3くらい下がっていますが、エンドポイントに差がないという結果でした。
追跡期間が短い、下がりが悪い場合併用薬が許されているなどのlimitationがあります。しかしながら、なおかつこの2試験はかなり重要な問題を我々につきつけるように思われます。

DPP4阻害薬は、今や患者ベースでシェア5割を超え新規患者の6割以上に処方されるとも言われています。
https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/44370/Default.aspx

各製薬会社のセールス、講演会その他プロパガンダが非常に目立つことは医療従事者であれば誰もが実感していることと思います。

しかしながら、これまでメタ解析やサブ解析では心血管イベント抑制のアウトカムは認められていたものの、プラセボ対照の前向き試験でのアウトカムはほとんどありませんでした。

今回追跡期間は短いながら、「非劣性しか証明できなかった」「心不全を増やすというadverse effectの可能性が示唆された」ことは、広く医療者が知るべきだと思われます。

確かにDPP4阻害薬は、効果と安全性のバランスは一見取れており、1日1回のものは使いやすく、糖尿病治療においては一定の利用価値はあるのかもしれません。

それでもなお今回のペーパーを読むにつけ、シェア第1位、第1選択薬の地位に値するような信頼性と妥当性を獲得している薬なのかということに関してはもう少し十分な知見の蓄積と時間が必要のように思われます。

DPP4阻害薬について、その一見した使いやすさ、安全なイメージから一歩引いて、われわれはもう少し待ちの姿勢を意識してもいいのではないかと思います。

イメージに惑わされない。広告に惑わされず、自分の頭で考える。
これはつい最近のディオバン問題、あるいはプラザキサのブルーレターの時に我々が学んだばかりのことだと思います。
その教訓を生かしたいものです。
by dobashinaika | 2013-09-03 22:57 | EBM | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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治療 2015年 04 月号 [雑誌]

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