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ワーファリンに満足している患者さんはプラザキサへの変更をどう考えるのか?

J Thromb Thrombolysis. 8月6日Epib ahead of printより

Patients satisfaction with warfarin and willingness to switch to dabigatran: a patient survey.

【疑問】ワーファリンに満足している患者はダビガトランへの変更をどう考えるのか?

【方法】
・以下の2つの調査施行
  1)ワーファリン治療に対する患者の意見
  2)新規抗凝固薬に変更することについての考え
・5段階評価で答えてもらう(多いほど高評価)
・Georgia Regents Health Systemという薬局ベースの抗凝固クリニックが主導
・260人のワーファリン服用者対象

【結果】
1)ワーファリン治療への満足度:4.7±0.78点

2)大多数が新規抗凝固薬への変更の意思あり

3)理由として、受診回数の減少(3.9±1.35点)、食品薬剤相互作用なし(4.1±1.25点)、ワーファリンと同等の効果(3.7±1.38点)

4)変更への障壁としてはコストが大きな理由(1.3±0.58点)

【結論】患者はワーファリン治療に満足していたが新規抗凝固薬への変更を望んでいた。コストが最も大きな障壁であることが明確になった。効果、食事制限なし、受診回数減少が患者の決断に影響を与える大きな因子であった。

### 当院でも同じような反応です。ワーファリンで満足している患者さんは、実は以外にもかなり多いのです。もう数年以上毎月の採血や納豆などの制限に慣れており、採血や納豆制限など別に気ならないという方も多いです。毎月の採血は、逆に数字の目安ができるため、安心だという方もおられます。

新規抗凝固薬に難色を示すひとは、ワーファリンにも難色を示します。ワーファリンへの不満とは上記便宜性でなく、抗凝固薬そのものへの抵抗感ですので、そういう感覚を持ちながら飲んでいる方は新規抗凝固薬へのシンパシーも感じないのは当然でしょう。

ワーファリンで特に何も不満はないけれども、医師からいい薬だし、面倒くささもなくなると言われればまあ変えるのもやぶさかでない、という受け止め方の表現がこの結果であり、それぞれの理由が4点前後という数字に現れていると思われます。
by dobashinaika | 2013-08-19 23:17 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

3つの新規抗凝固薬から何を選ぶか?:CJCのレビューより

昨日のCJCレビューの続きです。

Review:Which Oral Anticoagulant for Which Atrial Fibrillation Patient: Recent Clinical Trials and Evidence-Based Choices
http://dx.doi.org/10.1016/j.cjca.2013.05.010, How to Cite or Link Using DOI



【NOACは何を選ぶか?】

<有効性と安全性>
・直接比較は存在しないし今後も行われないだろう
・既に発表された間接比較は、現代の統計的手法を用いてはいるが、その方法論的限界を認識しつつ以下の結論が得られている
(1)脳卒中/全身性塞栓(SSE):ダビ150、アピはリバーロには明らかに優るがお互いの差はなし
(2)大出血:ダビ110とアピはダビ150とリバーロに明らかに優るがお互いの差はなし
・このリスクとベネフィットバランスは、臨床家を脳卒中(脳梗塞)の高リスクの場合はダビ150かアピ、大出血の高リスクの場合はアピかダビ110の選択を促すだろう
・市販後調査のリアル・ワールドデータでの大出血率は、ダビ150で(RELYほど)多くなくダビ110で少なくないことを示している
・ガイドラインでは、ワルファリンに優先または代替としてNOACを推奨しているが、NOA間を差異化してはいない

<高齢者>
・RELYのSSEアウトカム;75歳以上と未満でダビ110,150での差はなし(年齢による交互作用なし)
・RELYの大出血アウトカム:ダビ150で交互作用あり=75未満で有意に少ない。75歳以上ではむしろ多い傾向
・RELYの大出血アウトカム:ダビ110も交互作用あり=75歳未満で少ない、75歳以上で同等
→これらからワルファリンとのリスクベネフィットバランスは、75歳未満ではダビ150、75歳以上では(75歳未満ほどでないが)ダビ110がよりよい選択

・アピ、リバーロは年齢によるリスクベネフットバランスの差はなし。選択の際、年齢に影響されるべきではない

・75歳以上においては梗塞、出血とも高リスクであり、リスクとベネフィットバランスからはアピキサバンがベストかもしれない。

<腎不全>
・行政当局はeGFR30以上(アピは25)でのNOACの使用を一般に推奨している
・カナダ当局はeGFR30未満のダビ使用を認めていない。アメリカではeGFR15~30でのだび75x2を認めている
・カナダはeGFR30-49でのリバーロ15mg使用が認可済み。アメリカでは15〜50で認可
・カナダ、アメリカともアピ2.5を3条件(クレアチニン1.5位上、80歳位需要、体重60kg以下)中2条件で認可
・SSEに:3NOACとも腎機能の影響受けず
・大出血:アピでのみ交互作用あり。eGFR50未満でワルファリンとのハザード比が50〜80,80以上に比べ有意に大きい
→このことはeGFR30-50ではリバーロやダビよりもアピを選ぶ理論的根拠となる

<冠動脈疾患>
・ダビ:150は初期のRELYのデータでは心筋梗塞罹患率が明らかに高い。その後データベース閉鎖後の解析が追加された。その後のメタ解析ではMIは多いが予後は良かった。

・リバーロ:ROCKET AFではMI、死亡率共に明らかな減少なし
・最近のメタ解析ではMIを減らすとの強い傾向が認められた

・アピ:MIを明らかに減らすとのデータなし。ネットクリニカルベネフィット、死亡率共に減らす
・最近のメタ解析でもMIは減らさず

・ダビでMIが多いという所見は確かのように思われる。おそらくMI予防においてワルファリンよりは効果が低いであろう
・リバーロとアピはMIが多いとの所見はない
・たとえダビがワルファリンに比べ全梗塞イベントに差がなく死亡率は低いとしても、ESCガイドラインのように不安定狭心症患者には慎重にリバーロやアピを選ぶことになるかもしれない

・急性心筋梗塞患者にリバーろ2.5mgと5mgを割りつけたRCTでは、一次エンドポイント(心血管死、MI、脳卒中)を有意に減らした
・バイパスグラフト(冠動脈以外)と頭蓋内出血は有意に増えた
・この研究の対象は若く、心房細動を含まず、リバーロの用量は少なめだった
・この研究から急性冠症候群へのリバーロ使用を勧めることはできない

<静脈血栓症>
・股関節や膝手術でのDVT,肺塞栓予防においては、リバーロはエノキサパリンより優る。ダビ、アピは同等
・既知のADVTに対し、ダビはワルファリンと非劣性。拡大治療をするとプラゼボより優位
・アピはエノキサパリンと非劣性、拡大治療をするとプラゼボより優位
・既知の肺塞栓に対しリバーロはエノキサパリンと非劣性。ダビとアピは肺塞栓のデータなし
・心房細動患者の股関節、膝関節手術のDVT予防にはリバーロが第一選択

<出血リスク>
・ワルファリンとの比較での大出血:アピ5mg、ダビ110で有意に低下。ダビ150、リバーロ20では減らず
・頭蓋内出血:3NOACとも有意に減少
・消化管出血:ダビ150,リバーロ20で有意に多い。ダビ110,アピ5では多くない
→これらからは大出血の高リスク群では、アピ5mgが脳卒中予防と出血リスクの良好なバランスを提供する。ただし梗塞のリスクが非常に高いケースではダビ150の有効性が出血のリスクを上回るかもしれない
・消化管出血の高リスク例ではアピが最適の選択かもしれない

【脳卒中/TIAの既往例】
・3NOACとも、全てのアウトカムに対し脳卒中/TIAの既往が影響することなし
・発症率減少はダビ150(0.62%/年)とアピ(0.91%/年)がリバーロより(0.05%)低い
・このような患者群では、リバーロに比べればダビ150かアピのどちらかがよい

【副作用】
・大出血:アピ、ダビ110は少ない。リバーロ、ダビ150は同等
・Dyspepsia:ダビで多い(11.3%vs.5.8%)。服薬中断(副作用によるものも含む)もダビで多い
・副作用増加、早期服薬中断はリバーロとワルファリン同等。アピでは服薬中断少ない
→Dyspepsia患者ではリバーロかアピが推奨される

【コンプライアンス】
・1日1回が2回よりコンプライアンス良好とのエビデンスからはリバーロが他2剤に優る

【コスト】
・カナダ当局の試算では3NOACともほぼ同等
・CHADS2スコア2点未満:ダビ150が最もQALY大
・CHADS2スコア、2点以上ではダビ150とアピがが同等。リバーロとダビ110がそれにつぐ

【結論】
・3NOACはワルファリンに比べてのPK/PDの点で多くの共通点あり
・しかし有効性、安全性において、患者特性によっては多くの違いあり
・3NOADで直接比較は存在しないが、ワルファリンとの比較に関連しての3剤の相違は概略化され、選択の際の妥当性において論議されうる
・臨床家はNOACの選択に影響を与える患者特性は1つ以上でもある患者に、よく遭遇する
・例えば75歳以上または高出血リスクを持つが、1日2回の内服のコンプライアンスは良くない傾向の人の場合、アピキサバンがリバーロキサバンよりも選ばれるかもしれない。リバーロは単純な内服レジュメだがアウトカムの点で劣ると思われるから。

### このレビューの筆者のCOIは3NOACの会社皆にあるとdisclosureされていました。多方面からエビデンスを詳細に検討し、時に大胆と思われる結論を出していて、なかなか明快で勉強になります。

ただし、間接比較の限界を踏まえての検討としている割には、ちょっと単純に比べ過ぎの感もあります。特に私がいつもこの手の比較で引っかかるのはROCKET-AFがCHADS2スコア2点以上で脳卒中既往例が多く含まれており、他の2試験に比べ明らかに重症例を対象としている点です。またARISTOTLE試験はROCKET-AF試験でやや不備だった点(ワルファリンへの切替時の症例組み込み)などが改善されている点も勘案したいところです。

ワルファリンを介しての間接比較とはいえ、仲介すべきワルファリン投与群の背景自体かなり違うので、これを仲介することにあまり意味は無いような気もします。そうした差異を埋めるような統計的処理がされた比較とはいえ。たとえばCCr50未満(eGFRは誤りだと思われます)でアピキサバンの相対危険減少が他より明らかに大きいとのことですが、もともとのワルファリン群の出血率がARISTORLEでは6.4%で、RELYの5.4%、ROCKET-AFの4.7%より多いわけです。それでもアピの出血率は3.2%で他より低いのでより使いたい方に気は向きますが、ハザード比ずつを比べることはちょっと気が引けます。

あくまでこのレビューは「エビデンスに基づいた」選択ですので、実際現実での意思決定は、患者の選好と医師の専門性というエビデンスと等価な要素を総合検討して決める、ということになるように思います。
by dobashinaika | 2013-08-18 00:15 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

ワルファリンか新規抗凝固薬か?:CJCのレビューより

Canadian Journal of Cardiologyオンライン版からです。

Review:Which Oral Anticoagulant for Which Atrial Fibrillation Patient: Recent Clinical Trials and Evidence-Based Choices
http://dx.doi.org/10.1016/j.cjca.2013.05.010, How to Cite or Link Using DOI


「どの心房細動患者にどの経口抗凝固薬を:最近のクリニカルトライアルとエビデンスに基づく選択」

まさに皆が知りたいレビューが出ています。夏休み期間中に少しずつ勉強したものを要約してアップしてきたいと思います。

最初のほうは飛ばして皆が知りたいところから

【ワルファリンかNOACか】
<前提>
・NOACはワルファリンに比べ使いやすい
・ワルファリンの年間脳卒中絶対危険減少(ARR)2.7%、NNT37(脳卒中)または56(死亡)、

<NOACとワルファリンの有効性比較>
・ダビガトランのワルファリンに対する脳卒中のARRは0.58%、NNT172(死亡のNNT154)
・アピキサバンARR0.33%、NNT303(死亡のNTT104)
・リバーロキサバンは有意差なし

<NOACとワルファリンの安全性比較〜頭蓋外出血>
・ダビガトラン110㎎NNT154、アピキサバンNNT104
・ダビガトラン150とリバーロキサバンは有意差なし

<NOACとワルファリンの安全性比較〜頭蓋内出血>
・ダビガトランARR0.44%、NNT227
・リバーロキサバンARR0.2%、NNT500
・アピキサバンARR0.47%、NNT213

<ワルファリンがNOACより好ましい患者集団>
・リウマチ性弁膜症
・左室機能低下、左室瘤、左室血栓のためワルファリンを使用している患者
・機械弁患者:REALIGN試験が血栓塞栓症のため中止

<腎機能について>
・eGFR15~50まではワルファリンの有効性(NOACに比較してではなく)は認められる
・eGFR15未満のワルファリンの有効性は定かでない
・NOACの各試験では腎機能低下例ではSSE(脳卒中/全身性塞栓)が高率だったが、(ワルファリンに比べての)ハザード比は腎機能正常例のときと違いなし。これは大規模試験が腎機能クライテリアに適合した患者を対象としているため
・超高度腎機能低下(RELYとROCKET-AF:eGFR30未満、ARISTOTOLE:eGFR25未満)では組入基準で除外されておりワルファリンが適切
・eGFR15未満及び透析患者は脳卒中、大出血とも多く、ワルファリン同様個々に決断する

<ワルファリン管理良好者>
・ワルファリンは導入期に出血が高率との報告は多数。一方以前から服用していてINR管理良好なら梗塞、出血とも少ない
・そうした患者は、切望しなければNOACへのスイッチ候補ではない

<コンプライアンス>
・ワルファリンはINR変動でコンプライアンスの向上を企図できるが、NOACにはそれがない
・半減期の短いNOACは飲み忘れがワルファリンより影響大

<コスト>
・NOACはコスト大。とくにINR管理良好者と比べて。
・無保険者には処方の障害となる(北米の場合)
・カナダではダビガトラン150㎎はCHADS2スコア2点未満では費用対効果良い
・ダビガトラン110㎎とアピキサバンはCHADS2スコア2点以上でも費用対効果良い

### よくまとまっています。腎機能のところはeGFRではなく、CCrの誤りではないかと思います。

ワルファリンとの比較をNNTで出だされると、NOACもものすごく良い薬とは言えなくなる感じです。頭蓋内出血が圧倒的に少ないと言われていますが、ダビとアピで200人ちょっとに出してワルファリンより1人頭蓋内出血が少ない、リバーロにいたっては500人です。ただ1年間ですので、10年間出し続ければ20人に一人となります。元々がワルファリンでも頭蓋内出血率は0.76%(RELY), 0.74%(ROCKETAF), 0.80%(ARISTOTOLE)と少ないわけですので、NNTはどう頑張っても2桁にはならないわけですが。

まあエビデンス的にはワルファリンよりいい薬。ただし腎機能、コストがクリアできれば。これまでずっとワルファリンで管理良好ならスイッチはすぐに考えなくて良い、といったあたりでしょうか。

明日からはいよいよ3つのNOACの使い分けをアップします。
by dobashinaika | 2013-08-16 20:01 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

スクリーニングとリスクコミュニケーションは車の両輪:隠れ心房細動スクリーニングのレビュー

Thrombosis and Haemostasis 8月号より

Screening to identify unknown atrial fibrillation :A systematic review
Thromb Haemost 2013 110 2: 213-222


診断されていないいわゆる”隠れ”心房細動のスクリーニングについてのシステマティックレビューです。4月にオンライン版を取り上げましたが、ある企画でsubclinical AFについての原稿を書いているため再読してみました。

【疑問】ワンポイントの心房細動スクリーニングは未知の心房細動を十分数診断し、脳卒中予防につながるのか?

【方法】
・心電図または脈触知によるスクリーニングを扱った試験を検索
・30試験、122,571人、平均64歳、男54%、9カ国
・総合医外来12試験。一般住民健診18試験。

【結果】
1)65歳以上心房細動有病率2.3%(2.2−2.4)から4.4% (4.1-4.6)に増加
2)65歳以上の未知の心房細動の罹患率は1.0%(0.89−1.04)から1.4%(1.2−1.6)に増加
3)試験セッティングは罹患率に影響与えず
4)見つかった心房細動の67%は脳卒中高リスク。多くが抗凝固療法の適応

【結論】高齢者におけるコミュニティーベースの心房細動スクリーニングは心房細動が持つ健康負担を抑制する可能性あり

### 最近、こうしたsubclinical AF、いわゆる”隠れ”心房細動のスクリーニングに関する論文をよく目にします。本ブログでも再三述べているように、これからNOACの嵐が落ち着いたあとは、こうしたunmet needsの発掘のヘルスプロモーションが台頭してくることが確実と思われます。この予兆を先取りするレビューです。

単純に脈を取る、または心電図を取ることで、65歳の人の心房細動罹患率が0.4ポイント上昇とのことです。その多くが高リスクです。

今後例えばメタボやロコモといったアドバタイズ活動同様、”エーフィブ”とか”サイド−”とかのニックネームでスクリーニングの運動が展開されるかもしれません。「腹囲を測るのと同じように脈を取ろう」とか”エーフィブ体操”(どんなんだろう(笑))などが出てくるかもしれません。

冗談はさておき、メタボと違う点は、このレビューでも示されているようにスクリーニングにより脳卒中のハイリスク症例が確実に同定されるということです。つまりこうして見つかった隠れ心房細動に抗凝固療法の介入をすることにより、対象者全体の予後が良くなることが十分見込まれるということです。メタボなんかより大変有望です。心房細動も、それまで高リスク者の抗凝固療法という「ハイリスクストラテジー」から「ポピュレーションストラテジー」へとシフトしていく展開が広がりそうです。
 
ただしもしそうしたヘルスプロモーションが展開されるとして、エーフィブスクリーニングが広く行われるようになった場合、次に大きな課題がやってきます。それはズバリ、リスクコミュニケーションです(これまた今までも述べていますが)。たとえばメタボ検診をやっていて実感しますが、メタボと診断された方を積極的支援に参加するように説得することは大変困難です。事実積極的支援参加者は非常に少ないのが各自治体の実情でしょう。同じように、これまで無症候の人が突然心房細動ですよと言われて、はい、抗凝固薬を飲みましょうと言われてたらどうでしょうか?メタボの場合おなかが出てきているのが自分でわかるので多少の危機感がありますが、心房細動の場合症状がないわけです。抗凝固薬開始まで行き着く道のりは人によってかなり遠い場合も予想されます。

スクリーニングはリスクコミュニケーションとセットで普及しなければうまくいかないだろうと思います。

これまでも指摘してきたように、ポストNOAC時代の心房細動業界の2大イシュー、「隠れ心房細動を探せ」「超高齢者への抗凝固薬」。この心房細動の入口と出口ともいうべき2つの問題が、心房細動の残されたアポリアといえるかもしれません。

追記:スクリーニング+リスクコミュニケーション=ヘルスプロモーション と思いますので。題名と途中の文章を書き換えました。
by dobashinaika | 2013-08-13 13:41 | 心房細動:診断 | Comments(0)

高齢者における心房細動抗凝固療法に関するまとまったレビュー

高齢者の抗凝固療法について考えをまとめたいと思い、先月から気になっていたLip先生のCirculation Journalのレビューを読み返してみました。
自分の勉強のために要約しますが、ご参考になれば幸いです。

Stroke Prevention With Oral Anticoagulation Therapy in Patients With Atrial Fibrillation 
– Focus on the Elderly –
Circ J 2013; 77: 1380–1388


・心房細動有病率は80歳台の10%、85歳以上の18%
・高齢者では、梗塞と出血の療法が多いことから最適な選択がなされていない
・80歳以上にワルファリンを投与しない理由の1位転倒(41%)、2位出血(28%)
・しかし近年高齢者でも有益であるとの研究が多い
・有効性と安全性の観点から高齢者と若年者の抗凝固療法についての比較研究についてセミレビューする

【結果】
<抗凝固薬の有効性と安全性についての高齢者と若年者の比較試験>
・8研究:6 つの観察研究と2つのRCT
・「高齢者」の定義:75歳以上1試験、75歳超3試験、80歳以上2試験、年齢別4群比較2試験

・4研究で血栓塞栓症の比較:全試験とも高齢者のほうが多い
・SPORTIF II:一次エンドポイントは高齢者のほうが高率(アスピリンに比べてワルファリンの優越性は認められず)
・ATRIA研究;血栓塞栓イベントは高齢者のほど高率。アスピリンの比べてのワーファリンのべネッフィトは85歳以上で最大
ただしATRIAは観察研究でワーファリン処方は現場感覚に基づいており、2群間の特徴にもアンバランスあり

・7研究で大出血イベントの比較:6試験で高齢者のほうが多い:2.5〜9倍

・5研究で頭蓋内出血、致死性出血の比較
・SRORTIF II:75歳以上で優位に出血多い
・Coplandらの研究(少数例):年齢は関係なし
・ATRIA研究(13559人の多数例):高齢者ほど出血明らかに多い
・POliらの研究:80歳以上はそれ以下より有意に多い(脳出血は有意差なし)

<高齢者における抗凝固薬(ワーファリン)の有効性、安全性に関する研究>
・7研究:3観察研究、4RCT
・1研究で2種類のワーファリン用量の研究。他はワーファリンとアスピリンとの比較
・高齢者の定義:62歳(1)、70歳(1)、75歳(3)、80歳(2)

・5研究中4つでワーファリンのほうが2〜12倍、血栓塞栓予防効果あり
・SPORTIF IIは有意差なし。2つの観察研究ではワーファリンが有意に良好
・BAFTA研究:大血管イベント、主要エンドポイント、大出血とも有意にワーファリンが良い

・出血に関する4研究:全研究でワーファリン=アスピリン
・SPORTIF IIのみワーファリン>アスピリン(4.2% vs. 1.6%; P=0.04)
・Pengoら:INR2.0-3.0 vs. 1.5-2.0(75歳以上):出血率同じ
・WASPO研究:複合エンドポイントは有意差なし(n=75)

<高齢者における新規抗凝固薬の研究>
・5つのRCT
・SPORTIF III,V:脳卒中/全身性塞栓及び大出血:年齢にかかわらずキシメガラトラン=ワーファリン
ただし全イベントとも75歳以上でそれ未満より有意に高率

・RE-LY:脳卒中/全身性塞栓および大出血:75歳以上で高率。
 年齢と有効性についての交互作用はなし(P=0.81)
しかし大出血については両用量とも年齢の影響明らか
大出血:75歳未満では両用量ともダビガトランが低い。75歳以上では110で同等、150でダビのほうが出血多い傾向

・AVVEROES:有効性安全性ともアピキサバンのアスピリンに対する優位性は年齢に関わらずあり

・ARISTOTLE:脳卒中/全身性塞栓+大出血:年齢とともに高率。
アピキサバンのワーファリンに対する優位性は年齢に関係なし

・ ROCKET AF:リバーロ群、ワーファリン群とも高齢者ほど脳卒中/全身性塞栓+大出血イベント高率
リバーロとワーファリンの関係に関しての年齢の交互作用なし

【考察】
<高齢者と若年者における血栓塞栓及び大出血イベント>

・両イベントとも高齢者ほど高率
・CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコア共に年齢が項目となっている
・Hylekらは高齢者は高血圧、心不全、脳卒中の既往といった他の要素をよく併存すると報告
・Poliらは脳卒中の既往のみが有意に高齢者に多いと報告
・BAFTA研究(75歳以上)はワーファリン非服用者では既存のスコアリングの評価では脳塞栓予測は不正確であり、75歳以上は全例高リスクと扱うべきと主張

・多くの研究でワーファリンによる出血は高齢者>若年者
・高齢者の出血率には試験間で格差あり
5試験の高齢者の大出血率は2.5〜5.0%だが、ある観察研究では80歳以上で13.1%
これらの試験のlower rateはどれも同じなので研究のタイプによる違いでは説明不可能
ワーファリンの開始時期を含むかどうか、あるいはアスピリン併用があるかどうか、TTRが良いかどうかの違いによる

・新規抗凝固薬では高齢者群が若年者でワーファリン群より大出血が高率

・HAS-BLED、 HEMORR2HAGES、 ATRIAの各出血スコアとも高齢者を項目に挙げている
・高齢者ほど出血が多いのは、高血圧などの併存リスクが多いことや、NSAID、抗血小板薬の併用、腎機能低下が原因
・Hylekらは高血圧、脳卒中の既往、転倒の既往、腎不全が高齢者の出血が多い要因であると報告

<高齢者におけるワーファリンの臨床的有効性>
・ネットクリニカルベネフィットの観点から見ると、高齢者ほどイベントが多いとはいえ、高齢者も若年者同様、ワーファリンによる脳卒中/全身性塞栓リスク減少の利益はあきらかにある
・いくつかの研究やメタ解析で有効性安全性ともワーファリンがアスピリンに優るとされている(SPORTIFIIはやや違う)
・ATRIA研究では高齢者ほど、ワーファリンのネットクリニカルべネフィットは増加した

・全体としてみると高齢者においてワーファリン治療はネットクリニカルべネフィット陽性
・対する抗血小板療法は高齢者ほどベネフィット低い
・高齢者でINRを低く保つことに関するエビデンスは限定的。INRを2.0未満にすべきでない。TTRを65%以上にすべき

<高齢者における新規抗凝固薬の臨床的有効性>
・食品、薬剤の影響、狭い治療域、モニタリングの必要性と言った問題がないことは高齢者に利する
・3NOACはワーファリンに対し、少なくとも同等の有効性と安全性、そして明らかに低い頭蓋内出血率を有する
・アピキサバン、リバーロキサバンの第3相試験では有効性と年齢との間の交互作用なし(年齢に関係ない)
・ダビガトランの出血イベントは年齢とともに増加認め、USA以外では80歳以上は11mgが推奨されている
・しかし頭蓋内出血は高齢者でもダビガトランのほうが有意に少ない

・臨床家は新規抗凝固薬がまだ潜在性を秘めた不適切な使用を避けるための施策を行うためにワーファリンと同等の注意が必要であることを銘記する必要がある。そのことはクリニカルトライアルと同等に考えられるべき
・患者の選好が熟慮されるべき

【限界】
・各試験で抗凝固療法のレジュメ、高齢者の定義、治療域に入る患者数が異なる
・高齢者においては、認知機能、転倒傾向、ポリファーマシー、複数合併症、TTRなども考慮しないといけない
・各試験管で抗凝固療法以外の治療に時間的スパンの差がある

・ある試験では転倒の既往は出血の予測因子ではないとしている
・マルコフモデルを用いた検討では、ワーファリンによる抗凝固療法の利益は、年間295回の転倒による潜在的な出血に見合うものと試算されている
・出血の定義もいくつかの研究では異なる
・RCTの世界はリアルワールドではない

【結論】
・心房細動の高齢者は若年者に比べ、脳卒中、血栓塞栓症、出血リスクは増加するため、臨床的決断が困難
・しかし高齢とともに抗凝固薬の脳卒中減少効果が認められ、出血リスクは増加しない
・年齢にかかわらずすべての心房細動患者で脳卒中予防治療の意思決定の際は、ひとりひとりの治療のベネフィットとリスク及び患者の選好を十分考えるべき

### 書くのに疲れました(笑)。高齢者であっても出血を恐れず適切に個々の状況を考えて抗凝固療法せよ、という教えです。
エビデンスの詳細な検討から導き出された説得力のあるものです。NOACは腎機能さえクリア出来れば、かなり有望のようです。

ただ、認知症、転倒リスク、ポリファーマシーについて、もうすこし解説が欲しかったようにも思います。80歳以上の方に処方したくても認知症が強い場合、躊躇することも稀ではありません。そこにはエビデンスでくくれないファジー領域があります。

そのレビューではないのでそこまでは要求できませんが、そうしたファジーを合わせて考えたいです。
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by dobashinaika | 2013-08-12 23:58 | 抗凝固療法:全般 | Comments(2)

心房細動中の血圧は家庭血圧計で正しく測れるのか?

Hypertension 7月29日付けオンライン版より

Impact of Atrial Fibrillation on the Accuracy of Oscillometric Blood Pressure Monitoring
doi: 10.1161/ HYPERTENSIONAHA.113.0142


【疑問】心房細動中の血圧は真の血圧なのか?

【方法】
・102人の患者対象の横断研究
・洞調律患者102人、心房細動患者50人
・上腕式自動血圧計(オムロンM5)、手首血圧計(オムロンR5)の血圧を、動脈血圧と比較
・連続3回血圧測定

【結果】
1)測定法に関わらず、洞調律群も心房細動群も、収縮期拡張期とも血圧は相違なし

2)同一対象内での内的妥当性は、洞調律群に比べて心房細動群の方が高い。

3)心房細動の有無で収縮期拡張期とも血圧の変動に違いはない

【結論】
3回連続測定を行った場合、心房細動は自動血圧計の正確さに明らかな影響は与えない

### 時々心房細動の方の血圧を自動血圧計で測定するとエラーが出ることがあります。おそらく徐脈傾向などがあり、圧波が不連続となる場合ではないかと思います。エラーが出る以外は、家庭血圧計でも3回測定することで、心房細動中の血圧を概ね正しく測定できるということかと思います。
これがはっきりしていないと、永続性心房細動ではCHADS2スコアが正しく評価できなくなってしまいますので、貴重な情報です。
by dobashinaika | 2013-08-08 23:10 | 心房細動:診断 | Comments(0)

心房細動患者数は今後50年で2倍になる見込み:EUでの推定

European Heart Journal 7月30日付けオンライン版より

Projections on the number of individuals with atrial fibrillation in the European Union, from 2000 to 2060
doi: 10.1093/eurheartj/eht280


疑問】ヨーロッパでは今後(2060年までに)心房細動患者はどの程度増えるか?

【方法】
・オランダのロッテルダム前向き一般住民研究とEU統計オフィスからのデータ

【結果】
1)55−59歳では心房細動有病率は男1.3%、女1.7%

2)85歳以上では男24.2%、女16.1%に増加

3)この年齢、性別別の有病率は追跡期間中安定していた

4)2010年時点、EU圏内の55歳以上の心房細動有病者数は880万人(6.5−12.3万人)と推定

5)2060年までに約2倍の1790万人に上ると推定

【結論】
ヨーロッパでは2010年から2060年までに心房細動の有病者は2倍に増加する。これは大きな公衆衛生上の問題である。

### 2009年のEUの総人口は約5億人(@Wikkipedia)とのことです。日本は慢性心房細動だけで約100万人とのデータがありますが、EUが日本の人口の4〜5倍で有病者は8倍というのは日本が少なすぎる感じもします。

約50年で倍になる。高齢化社会に起因するのでしょうが、今後無症候性心房細動へのunmet needsの高まりと診断モチベーションの高まりにより、もっと増加するかもしれません。
by dobashinaika | 2013-08-07 22:30 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

エリキュースの市販直後調査第2回中間報告

ブリストル・マイヤーズ株式会社とファイザー株式会社からエリキュースの市販直後調査第2回中間報告が出ています。
http://www.eliquis.jp/resource/1375153321000/eliquis/direction/report2.html

中身を要約します。

・発売から6月25日まで4ヶ月のデータ
・35例50件の有害事象
・うち重篤:11例18件
・因果関係は否定されなかった副作用:27例32件
・うち重篤6例7件
・大出血は4例4件:脳出血、クモ膜下出血、出血性脳梗塞、下部消化管出血

・重篤な出血6例はいずれも70歳台以上、5例は脳梗塞2次予防
・いずれも投与開始2週間以内
・脳出血、SAHの2例はそれぞれCCr26mL/min, 17mL/min
・6例中4例は抗血小板薬2剤併用

### 分母が不明ですので、この数字をもって多いか少ないかを言うことは当然出来ません。またここで報告されている以外の事例は当然ありますので、真の実態を反映しているものでもないと思われます。

しかし、処方する上で参考になります。

SAH,脳出血の2例はいずれも5㎎ですが、血清クレアチニンで1.44,1.55であり、エリキュースの減量基準ギリギリです。

ただし、CCrにすると17とか、26といったレッドゾーンまたはイエローゾーンに入る症例です。体重の記載がありませんが、おそらく肥満例ではないと思われます。

エリキュースは腎機能別サブ解析で、ワルファリンに比べ腎機能低下者でも腎機能正常者と同等の効果が示されていますが、そうしたデータを過信して、腎機能低下者への安易な処方はなかったのか。とくに腎機能が極端に低下した方に投与することはやはり避けたいと思います。高齢者、低体重ですと血清クレアチニン1.5前後でもかなりCCrは低下することを知っておくべきかと思います。
by dobashinaika | 2013-08-06 18:10 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

高齢者への抗凝固薬処方は少ない:英国GPのデータベースより

Heart 2013 1月号より

Thromboprophylaxis of elderly patients with AF in the UK: an analysis using the General Practice Research Database (GPRD) 2000–2009
Heart 2013;99:127-132


【疑問】高齢者への抗凝固療法は若年者に対してより施行されていないのだろうか?

【試験デザイン】後ろ向きコホート研究

【セッティング】英国一般医リサーチデータベース(GPRD)

【アウトカム】診断初年にワーファリンを開始した患者。CHADS2スコア、HAS-BLEDスコア別

【結果】
1)81,381人:60歳台21%、70歳台37%。80歳以上42%

2)80歳以上の人へのワーファリン開始はより若年そうに比べて明らかに少ない
80歳開始率32%、60台57%、70台55% (p<0.0001)

3)CHADS2スコア別、HAS-BLED別でも同じ結果

4)女性、低BMI、80歳以上、高HAS-BLED、認知症がワーファリン処方減少と関係あり

5)TIA、高血圧、心不全、左室収縮能低下は、処方増加に関係

6)HAS-BLED>CHADS2スコアの患者はワーファリン処方が遅れる

7)高CHADS2スコアは抗凝固療法増加と関係あり

【結論】80歳以上の患者への抗凝固療法は、出血リスク増加を考慮に入れても使用は少ない。

### 以前アップするのを忘れていて気になっていた論文を土日に読んでみました。80台へのワーファリン処方開始率は30%。とくに女性、低BMI、後出血リスク、認知症症例で低いとのことです。女性がなぜ投与されにくいか、男性より動脈硬化リスクを低く見積もられるためではないかとここでは考察されています。

日本のGP対象のFUSHIMI AF Registryでは80台の処方率は40%程度、90台は20%くらいだったと思いました。

この論文では原因検索までしていませんが、アドヒアランス、転倒、思わぬ大出血、などが原因でしょう。特に転倒リスクは、回避理由として大きいように思われます。実際にはあまり関係ないとのデータもありますが。
http://dobashin.exblog.jp/15885017/

やはり大切なのは、血圧、アドヒアランス、転倒リスクの管理ができて初めて安心して処方できるということ。そして処方しないという選択肢も十分にありえるが、その際はご本人ご家族との間で十分、「飲まないことのリスクを受け入れること」について合意形成を行うことかと思います。

それにしてもイギリスはGPレベルでこうしたすごい数のデータベースが構築されているのですね〜。うらやましい。
by dobashinaika | 2013-08-05 19:50 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

ディオバン錠を服用されている方のために、今回の問題についての説明用パンフレットを作りました

ディオバン錠を服用されている方からの問い合わせを多く受けるようになりました
当院では、基本的にアンジオテンシン変換酵素阻害薬をよく処方するため、ディオバン錠を内服する方は比較的少ないです。
しかしそれでも、かなり不安があるという声や、経緯につきもっと知りたいという声がよく聞かれます。
当院では、そうした患者さんのために説明用のパンフを作りました。
ご参考になれば幸いです。また内容や表現に疑問がある場合はご指摘ご批判いただければ幸いです。

追記;ARBとACE阻害薬についてのUpToDateの記載をまとめましたので合わせてご参照下さい。
http://dobashin.exblog.jp/18083317/

####################################

ディオバン錠を服用されている方へ

既に新聞・テレビなどで高血圧の薬、ディオバンについての多くの報道により、服薬することにご不安を感じている方もおられるかと思います。今回のいきさつや、服薬についてパンフレットを作りましたので、ご参考になれば幸いです。

Q1. ディオバンとはどんな薬ですか?

A1.ディオバンは高血圧の薬です。高血圧の薬をなぜ飲むかというと、血圧を下げるためです。しかしそれだけが目的ではありません。高血圧の薬を飲む最終の目的は血圧を下げることで、脳卒中や心臓病を予防することです。

高血圧の薬を飲む→血圧が下がる→脳卒中、心臓病が予防できる

当面の目標としては血圧を下げること、最終目標は脳卒中、心臓病を予防すること、このことをまず理解して下さい。

Q2.今回の報道ではなにが問題となっているのですか?

A2.当面の目標である血圧を下げる働きについて、ディオバンに問題があったわけではありません。世界的な研究からみても、また当院の患者さんで服用している方の血圧をみても、ディオバンを飲むと血圧は下がります。またディオバンは高血圧の薬の中でもARBといって、アンジオテンシンという血圧を上げるホルモンを抑える薬ですが、ARBにより血圧が下がることで脳卒中や心臓病が予防できることも確認されています。
 今回問題となった、京都府立医大や慈恵医大の論文では、ディオバンが、他の薬と比べた時に、脳卒中や心臓病の予防効果がより高かったというデータが発表されました。しかしその後の調査で、こうしたディオバンのほうが良いというデータが、作られたものである疑いが強まったのです。海外では、このようにディオバンが他の薬よりも良いというデータは今のところほとんど存在しません。

まとめますと、ディオバンの血圧を下げる効果に問題はない。脳卒中や心臓病を予防する効果もある。ただしその効果は他の薬と同等であり、他の薬と比べてより予防効果が高いというデータは作られたものであった、ということです。


Q3.ディオバンは安全な薬なのでしょうか?

A3.今回の問題で、ディオバンが薬害の出た薬だということではありません。高血圧の薬としての安全性は今まで通り変わりはありません。

Q4.それでも服用することに不安があるのですが?

A4.ディオバンと同じような働きを持つARBは他にも何種類かあります。また類似の働きを持つアンジオテンシン変換酵素阻害薬や他の血圧の薬も同等の効果を持っています。今回の問題で、ディオバンに対し不信感やご不安を持たれ、薬剤を変えて欲しいというご希望がある場合は、遠慮なくご相談ください。
 ただし、ご自分で服薬をやめてしまうことはしないようにして下さい。


今回の問題をきっかけとして、薬の効果を調べる試験のあり方について、われわれ医療従事者はもう一度考え直すべきであると思います。今後とも、できるだけ適正な情報をもとにお薬を処方できるよう努力いたしたいと思います。

土橋内科医院
by dobashinaika | 2013-08-02 19:46 | 患者さん向けパンフレット | Comments(2)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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