人気ブログランキング |

<   2013年 07月 ( 21 )   > この月の画像一覧

心房細動発症48時間以内の除細動後に生じる血栓塞栓症の頻度とリスク因子

JACC 7月10日付けオンライン板より

Thromboembolic complications after cardioversion of acute atrial fibrillation – The FinCV study
Am Coll Cardiol. 2013;():. doi:10.1016


【疑問】発作性心房細動電気的除細動後に生じる血栓塞栓症の頻度とリスク因子は何か?

P:48時間未満発症の急性心房細動発作患者3143人、7660件。3施設での連続症例。このうち抗凝固療法非施行の2481人、5116件対象

O:除細動後30日以内の血栓塞栓症

【結果】
1)塞栓血栓症:38例0.7%(0.5−1.0%)。31件は脳卒中。発症中央値2日、平均4.6日、

2)TIA;4例

3)予測因子:年齢(オッズ比1.05)、女性(2.1)、心不全(2.9)、糖尿病(2.3)

4)心不全と糖尿病合併例では最高リスク(9.8%)

5)心不全なし、60歳未満では非常に低リスク(0.2%)

【結論】急性心房細動に体当する除細動後の抗凝固療法非施行例においては、あるサブグループにおける血栓塞栓症の頻度が高い。

### 大変興味深い結果です。日本のガイドラインでも、抗不整脈薬抵抗性の心房細動においては発症48時間以内なら抗凝固療法を施行せず除細動して良いとなっていますが、基礎心疾患の記載はありません。実際現場ではあまり、考慮されていないかもしれません。結構、ルーチンワークのように頻繁に除細動するケースもあるかと思いますが、高リスク群は少なからずあるように思われます。

CHADS2スコア別に検討してもらうともっと良かったかもしれません。多分2点以上は高リスクではないかと思われます。女性、糖尿病が高リスクだったのも興味深いです。心不全+糖尿病の人に除細動すると約1割で血栓塞栓症が生じるというのはショッキングな数字です。心不全患者の抗凝固療法なしのこの論文によれば、除細動は慎むべきでしょう。反対に60歳未満で心不全がなければまずは安全に施行できると言っていいいかもしれません。ガイドラインに影響を与えかねない内容かもしれません。
by dobashinaika | 2013-07-16 18:33 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

バルサルタン問題を契機にアンジオテンシン受容体拮抗薬について復習しました

いま話題となっているアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)をACE阻害薬と比較しながら改めて復習です。
1〜3はUpToDateからの抜粋です。

Renin-angiotensin system inhibition in the treatment of hypertension
Differences between ACE inhibitors and ARBs 
1.高血圧治療におけるレニン・アンジオテンシン系


【ACE阻害薬とARBの違い】
・ACE-iとARBは薬理学上かなり違いがあるが、臨床上の差異はほとんどない
・薬理学的には以下の3つの違いがある
1)アンジオテンシン変換酵素はキニナーゼ。なのでACE-iでこの酵素を阻害するとブラジキニンが増え、キニンレベルが増える。これはARBではみられず。このことが咳の原因となる。ブラジキニンは血管拡張その他ARBにはない作用がある

2)アンジオテンシンIIが減るとACE-iはAT1.AT2両者の効果を低下させる。ARBは前者のみ

3)心、腎、おそらく血管においてアンジオテンシンIIはアンジオテンシン変換酵素以外(キマーゼなど)の酵素により触媒される。この反応で生成されるアンジオテンシンIIの効果はARBで抑制されるがACE-iでは抑制されない

【ARBの効果と用量】
・ARBは単独療法では、他の降圧薬とほぼ同様の効果がある。
・ロサルタンだけは他のARBと同様の降圧効果はない。また尿酸降下作用がある
・降圧効果は概してACE-iとほぼ同様。61試験のメタ解析では降圧効果に差はなし
・心血管イベントについてもACE-iとほぼ同等
ONTARGET試験(テルミサルタンとラミプリル及びその併用の比較)が参考になる
主要エンドポイント:心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全入院
到達血圧はテルミサルタンがラミプリルより低め
主要エンドポイントに有意差なし
咳はラミプリルで多い。高カリウム、急性腎不全は併用群で多い。
・低用量利尿薬併用または塩分制限で効果が増強される
ACE-i同様利尿薬の副作用である低ナトリウム、低カリウムを低減させる

【副作用】
・一般にARBACE-iとも忍容性に優れる
・咳と血管浮腫はARBで少ない
・妊婦には禁忌

Angiotensin converting enzyme inhibitors and receptor blockers in acute myocardial infarction: Recommendations for use
2.急性心筋梗塞患者のACE-iとARB


【ACE-iとARB比較】
・2つの比較試験あり:心不全または前壁梗塞のうち1つのリスク
・OPTIMAAL試験:ロサルタンに比べ、カプトプリルは死亡率減少傾向あり:relative risk 0.88, 95% CI 0.78-1.01
・VALIANT試験:有意差なし
・ACE-iが飲めない患者に対してARBが勧められる

###心筋梗塞二次予防に関しては日本循環器学会の「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011 年改訂版)」の記載を改めてコピペします
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ogawah_h.pdf
ARB
クラスI
ACE 阻害剤に不耐例で,心不全徴候を有するか左心 室駆出分画が 40%以下の心筋梗塞例に急性期から投 与する. (エビデンス A)
“2010 年 8 月末時点で,心筋梗塞発症予防における確立 したエビデンスを有し,かつ「降圧を超えた心保護効果 を有する」ACE 阻害薬に対し,優先して積極的に ARB を使用する根拠は乏しい.このことから日本人における ACE 阻害薬での比較的高い副作用発現率を考慮したと しても,心筋梗塞の二次予防目的における RA 系阻害薬 の第一選択は ACE 阻害薬であると考えられる.したが って本ガイドラインでは,前回とは異なり心筋梗塞にお ける二次予防ではクラスIの適応として,「ARB の使用 は ACE 阻害剤に対する認容性がない場合に限られる」 とした.また ARB と ACE 阻害薬との併用は腎機能に及 ぼす影響を考え,慎重に行うべきではあるが,左心室収 縮機能不全例では予後を改善する可能性がありガイドラ インに採用した.繰り返しになるが,ACE 阻害薬と ARB は似て非なる薬剤である.ともすれば ARB は「咳の少ない ACE 阻害 薬」とも考えられがちであるが,心血管イベント予防に おいてそれは明らかに誤りである.それぞれの薬剤の薬 理作用,大規模臨床試験の結果,使用予定症例の病態を 正確に把握し,両薬剤の使い分けを行うことが重要であ る.

Angiotensin II receptor blockers in heart failure due to systolic dysfunction: Therapeutic use
3.心不全(収縮障害)に対するARB


【ACE-iとの比較】
・ACE-iは心不全患者の予後を改善する
・ACE-iとARBは異なるメカニズムを持つ薬だが、心不全患者の臨床的効果はほぼ同等
・2012年のコクランレビュー
LVEF40%未満患者対象のACE-iとARBの比較ではアウトカムは同等
点推定においてはACE-iのほうがやや優位:(RR 1.05; 95% CI 0.91-1.22)
心不全患者の心筋梗塞、入院、脳卒中においては有意差なし
副作用による服薬中止はARBのほうが有意に少ない
プラセボとの比較ではARBはぎりぎり優位(RR 0.87, 95% CI, 0.76-1.0)。こうした結果ACE-iでは見られない(ACE−iはもっと良い)

【筆者らの推奨】
・心不全患者のARBは、ACE-iが服用困難者(腎機能低下、高カリウム以外)に推奨される

4.心房細動とACE-i、ARB

これは拙ブログを参考願います。
http://dobashin.exblog.jp/12337052/
現時点でACE-i.ARBが心房細動新規発症予防及び二次予防に関しての有効性は認められないというのがコンセンサスでしょう。

###以上まとめますと
1.降圧薬としてのARBは忍容性が高く、よく使われている。しかし臨床的効果はACE-i=ARB
2.心筋梗塞二次予防についてはACE-i>ARB
3.心不全予防についてはACE-i>/=ARB
4.心房細動予防についてはどちらも効果なし

ACE-iとARBは、似て非なる薬ですので単純に比較すること自体意味があるかどうかわかりませんが、少なくともこうして見ると現在、日本で処方されている患者さんのうち少なくない例においてARBはACE阻害薬で代用できるものと思われます。たとえば心筋梗塞後の方に第一選択でARBを処方する医師はかなりいるのではないでしょうか?この機会に再考したいものです。
by dobashinaika | 2013-07-13 18:55 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

アピキサバンの中和薬に関する治験

ちょっと古い情報ですみません。

アピキサバンの中和薬に関する第II相試験の結果が、開発者よりプレスリリースされております。
http://investors.portola.com/phoenix.zhtml?c=198136&p=irol-newsArticle&ID=1834683&highlight=

この薬(Andexanet Alfa)、以前紹介した同じXa阻害薬であるリバーロキサバンに対する開発中の中和薬と同じものと思われます。

静注後2分で抗凝固作用の95%が消失。忍容性にも問題なし
とのことです。

こちらもご参考までに
http://dobashin.exblog.jp/17315109/
by dobashinaika | 2013-07-11 16:56 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

左心耳容積と心房細動脳塞栓発症は関連あり:AJC誌より

American Journal of Cardiology 7月8日付オンライン版より

Usefulness of Left Atrial Appendage Volume as a Predictor of Embolic Stroke in Patients With Atrial Fibrillation
doi:10.1016/j.amjcard.2013.05.062

【疑問】左房容積と心房細動発症とは関連があるか?

E:心房細動と脳卒中の既往のある48人

C:心房細動あり、脳卒中なし48人

O:MRIによる左心耳容積

【結果】
1)左心耳容積:既往群>対照群:28.8 ± 13.5 cm3 vs 21.7 ± 8.27 cm3, p = 0.002

2)左心耳容積34cm2を超える例は脳卒中リスクが最高:OR 7.11, p = 0.003

【結論】心房細動患者では、左心耳容積は脳卒中と関連あり。この測定値が脳卒中のリスク層別化に役立つ可能性あり

### エコーで左心耳のもやエコーや流速などが有用であるとの報告は見かけます。
http://dobashin.exblog.jp/13511523/
http://dobashin.exblog.jp/10359132/

MRIを使って容積のみから血栓リスクを論じた研究はあまり見かけないように思いました。
小規模のケースコントロール研究ですので、バイアスは大きいです。理屈としては理解できる結果と思われます。

以前アップした、左心耳の形態についての検討も参考のこと。
http://dobashin.exblog.jp/15898221/
by dobashinaika | 2013-07-10 18:49 | 心房細動:診断 | Comments(0)

心房細動と身体障害、主観的健康感の低下とは関連あり:フラミンガム研究より

American Heart Journal 7月号より

Reciprocal relations between physical disability, subjective health, and atrial fibrillation: The Framingham Heart Study
American Heart Journal
Volume 166, Issue 1 , Pages 171-178.e3, July 2013


【疑問】身体障害、主観的健康感と心房細動置罹患率とには関係はあるか?

【方法】フラミンガムハート研究。10年追跡

【結果】
1)対象3609人(平均73歳、59%女性)のうち、身体障害を持つ者は861人24%

2)10年間の身体障害新規発症者:555人。年齢、性別補正後の罹患率は13%

3)身体障害と心房細動罹患とは関連有り(ハザード比1.24)

4)対象3525人のうち、主観的健康感に乏しい333人では心房細動罹患が多い(ハザード比1.70)

5)反対に、対象2080人(平均69歳、55%女性)のうち、心房細動(106人)は新たな身体障害の発生(573人)と関連有り(オッズ比1.58)

6)対象1954人のうち、心房細動(96人)は、乏しい主観的健康感と関連有り(オッズ比1.83)

【結論】身体障害、主観的健康感の低下は、心房細動発症と関係があった。反対に、心房細動は新規の身体障害発生や主観的健康感の低下と関連があった。心房細動ガイドラインには症状についても記載がされているので、身体障害や主観的健康感と心房細動の関連性の一時性やメカニズムを明らかにすることが重要

### 身体障害の程度,たとえば脳塞栓に関連した超重症なものがどの程度含まれるか、単なる発作中の運動耐用能の低下も含まれるのか、確認したいところです.発作性が多いか持続性が多いかも関連のある要因でしょう.

こうした身体機能低下および健康感の低下が、抗不整脈薬、抗凝固薬、カテーテルアブレーションによりどの程度改善するのか。非常に興味深い点ですね。

ちなみにうつ、不安と心房細動の関連についての総説はこちら
http://www.hindawi.com/journals/cpn/2013/159850/
by dobashinaika | 2013-07-09 22:44 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

”新規抗凝固薬は心房細動脳卒中二次予防の第一選択薬として使うべきではない”:TH誌コントラバーシより

Thrombosis and Haemostasis 6月27日付けオンライン板より

Contra: “New oral anticoagulants should not be used as 1st choice for
secondary stroke prevention in atrial fibrillation”
doi:10.1160/TH13-03-0246



新規抗凝固薬を心房細動脳卒中の二次予防の第一選択薬として使って良いかどうかに関するPro and Con

今回はContra(反対)の立場から

【イントロ】
・ARISTOTLE, RE-LY, ROCKET-AFの3試験を検討
・3試験のうち有効性の点でダビガトラン300、アピキサバンはワーファリンより優位。リバーロキサバンはワーファリンと同等か非劣勢
・3薬剤とも頭蓋内出血においてはワーファリンより安全

【二次予防に関するNOACのデータは限定的】
・神経学のコミュニティーは、NOACを脳卒中の二次予防薬として期待を寄せている。その根拠はNatrisらのメタ解析による
・ただし、そのデータは次のような理由で限定的である

1)3試験とも(発症)14日以内の脳卒中は含まれていない
・発症初期の出血回避のため
・このため発症1ヶ月以内のデータが少ない
・RELY, Rocket-AFは6ヶ月以内の重症脳卒中を除外

2)頭蓋内、眼内、脊髄、後腹膜、関節内の各出血の既往例は、3試験とも除外されておりデータなし

3)ARISTOTLEでは脳卒中/TIA既往者と非既往者で、アピキサバンとワーファリンの有効性は同等
・絶対リスク減少は、既往者0.77/100、非既往者0.22
・同試験では2.2%380例が追跡できていない。アピキサバンとVKAとの絶対差は脳卒中/全身性塞栓症で53,死亡63,頭蓋内出血70。
失われたデータは数としても大きい

4)脳卒中の既往から登録までの期間や脳卒中の重症度が不明。
・脳卒中後のうつ、機能障害、てんかんの頻度も不明
・これらは転倒やアドヒアランス低下から抗凝固薬の障壁となる

5)服薬中断率が各トライアル間で20%程度違う
・ARISTOTLRサブ解析ではアピキサバン群とワーファリン群で、既往者非既往者ともに中断率に差はない 
・中断の理由が明らかにされていない。おそらくNOACの忍容性の差は検討されていない

6)少なくともダビガトランはワーファリンに比べて使いやすいかどうかは疑わしい
・ダビガトランがカプセルのまま薬の分配器にかけられない。
・噛まずに飲み込む、カプセルから薬を出さないなどの注意点は認知症患者には困難
・胃管から吸入できない
・もし上記の事をしてしまった場合のデータがない(その点他の薬も同じ)

7)中和薬、モニタリング法がない
・脳卒中既往者は転倒しやすい(ためそうした方策がほしい)。
・RE-LYでは転倒により硬膜下血腫はダビガトラン群でワーファリンより低かった。ただしリアルワーリドや他のNOACでは不明

8)従来のワーファリンのトライアルは製薬会社から独立して施行されたが、NOACの3試験とも製造元がスポンサー
・主執筆者は製薬会社と関連があるかemployeesである
・製薬会社から独立した試験が急務であるがコストが数百万ドルかかるため、国際でベルでの組織が考慮されるべき

9)NOACの効果のモニタリングができないので、(脳梗塞急性期の)血栓溶解療法時高出血リスクかどうか認知されないまま施行される

10)NOACはモニタリングができないので薬物あるいは食物相互作用の影響を確認できない
・ワーファリンはINRでできる
・脳卒中既往者は抗てんかん薬を含む多剤併用者が多い
・NOACはP糖タンパクの器質であり、CYP系で代謝を受けるものが多い。これらのシステムは代謝物や生物学的利用率の影響を受けやすい
・P糖蛋白修飾物は心房細動関連薬剤(アミオダロン、プロパフェノン、ドロネダロん、ベラパミル)に多い
・これらの影響はわかっておらず、腎機能障害での出血報告もある
・NOACの、冠動脈ステント後2剤抗血小板薬併用例での使用法は不明。3試験ではトリプルテラピーは禁忌
・ダビガトランではPT,aPTTがtPA投与時のモニタリングとして好まれるが、臨床経験はまだ少ない

11)ダビガトランの心筋梗塞リスク増加の問題
・脳卒中既往者は冠動脈疾患合併も多い

12)INR管理の国際格差
・北欧諸国に比べ、INR管理において”poor countries”がある
・こうした国の医者、患者へのワーファリンについての教育をすべき

【結論】脳卒中二次予防において、ワーファリンに比べ、NOACが優れているようなエビデンスは欠如している。メタ解析、サブグループ解析は限定的な情報しか追加しない。もし二次予防患者でワーファリンを上回るNOACの潜在的能力が、製薬会社から独立したトライアルによって証明されないでれあれば、われわれは脳卒中既往者に対しても、セルフモニタリング下でのワーファリンを継続することを勧める。

### 土曜日にアップするといって、今日になりました。すみません。
”反対派”の意見ですが、相当厳しいというか面白い反論になっています。これが誌上でのコントラバーシ、いわば役になりきった上での討論ですので、リアルないわゆる本格討論ではありません。ですが本論説は、もう二次予防患者対象というより、ほぼNOACに対する難点のすべてを網羅して、相当強い装備で持って反論されているように見えます。

そしてその論点は、NOACがかなり普及してきた現在でも、改めて考えなおすべき主張が多く含まれているように思います。とくに、脱落症例数、服薬中断の問題はあまり指摘されなかった点かと思います。また脳卒中発症後早期の方は含まれていない点も、こうした人への早期の抗凝固療法再開が現場では問題となるわけなので、データがない不安はあります。

中和薬、モニタリング法がない、心筋梗塞リスクの問題は、特に二次予防でなくてもNOACの弱点として認識されるべき点でしょう。

この論者の先生は製薬会社へのCOI(利益相反)なしとのことですが、前章の”賛成派”の先生はたくさんありました。こうしたことを考えると、この論戦、結構”マジ討論”かもしれません。
by dobashinaika | 2013-07-08 18:52 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

”新規抗凝固薬は心房細動脳卒中二次予防の第一選択薬である”:TH誌コントラバーシより

Thrombosis and Haemostasis 6月27日付オンライン板より

Pro: “The novel oral anticoagulants should be used as 1st choice for secondary prevention in patients with atrial fibrillation.”
http://dx.doi.org/10.1160/TH13-04-0277

新規抗凝固薬を心房細動脳卒中の二次予防の第一選択薬として使って良いかどうかに関するPro and Conが掲載されています。大変興味深いので要約します。

まず本日はPro(賛成)の立場から

【イントロ】
・ARISTOTLE, RE-LY, ROCKET-AF, AVERROESの4試験のサブ解析を検討
・4試験とも一次エンドポイントは脳卒中または全身性塞栓症。脳卒中には虚血性と出血性を含む

【患者のベースライン】
・4試験ともだいたい同じ
・平均71歳、高血圧、糖尿病が多い。CHADS2スコア高点が多い。30−40%はアスピリン併用。44−61%はワーファリン既服用者

【血管系アウトカム】
・ARISTOTLE試験:
➢脳卒中/全身性塞栓症は二次予防患者(脳卒中既往者)で顕著に高い(ハザード比2.52)
➢脳卒中/TIA既往者のサブグループ解析ではアピキサバン群2.46%vs. ワーファリン群3.24%(ハザード比0.76)
➢アピキサバン群の絶対危険減少は1.77/100人年(対ワーファリン)

・AVERROES試験
➢脳卒中/TIA既往者の一次・エンドポイント:アピキサバン群2.39%vs.アスピリン群9.6%;ハザード比0.29
➢非既往者のイベント率は低い:アピキサバン群1.68%vs.アスピリン群3.06%
➢他の全イベンドもアピキサバン群が優位

・RE-LY試験
➢脳卒中/TIA既往者の一次・エンドポイント:ダビガトラン110群2.32%(相対危険0.84)vs.ダビガトラン150群2.07%vs.ワーファリン群2.78%(相対危険0.75)
➢脳卒中率は既往者で高い
➢ダビガトランの一次エンドポイント及び他のアウトカムにおけるワーファリンに対する優位性は既往者では明らかではなかった

・ROCKET-Af
既往者での一次エンドポイント:リバーロキサバン群2.79%vs.ワーファリン群2.79% で同等
➢非既往者でも1.44%vs. 1.88%

・他の血管性イベントでは各NOACとワーファリン群で有意差なし。
・すべての試験で、脳卒中は既往者のほうが非既往者より高率

【出血合併症】
・ARISTOTLE
➢既往者:アピキサバン群2.84%vs. ワーファリン群3.91%(0.54−1.32)

・AVEROROES
➢既往者のほうが非既往者より出血多い(2.88倍)
➢アピキサバン群とアスピリン群でリスクは同等

・RE-LY
➢110mgでワーファリンより少ない(RR0.6)
➢150mgでワーファリンと同等(RR1.01)

・ROCKET-AF
➢既往者:リバーロキサバン群3.13%vs. ワーファリン群3.22%、同等
➢非既往者:リバーロキサバン群4.10%vs. ワーファリン群3. 69%、同等

・ワーファリンとの比較3試験を通じて、NOACは脳出血や他の頭蓋内出血については明らかな減少を認める。脳出血関連死が40%減少することに関連あり。

【メタ解析】
・いずれの二次予防者についての解析も、nが少ないため統計的有意差は認められていない
・Ntarisらの14,527例のメタ解析では、NOACの二次予防効果は対ワーファリンでオッズ比0.85、相対リスク減少14%、絶対リスク減少14%、NNT134
・NOACの出血リスク減少は、対ワーファリンでオッズ比0.86、相対リスク減少13%、絶対リスク減少0.8%、NNT125
・この大出血の減少は出血性脳卒中の減少によるところ大:オッズ比0.44、相対リスク減少57.9%、絶対リスク減少0.7%、NNT139
・Rasmussenらのメタ解析では二次予防についてはNOAC3剤とも同様の効果があり、出血等に関してはダビガトラン110がリバーロキサバンより減少効果ありとしている

【結論】NOACは脳梗塞/TIA既往のある心房細動患者の二次予防にとって大きなブレイクスルーである。この患者群は脳梗塞再発ハイリスクであり、NOACはこれを顕著に減らし、なおかつワーファリンによる大出血合併症も有意に減らす。またNOACは早急に効果が発現するため、早期退院に寄与する。残念なことに超急性期の脳卒中/TIAはRCTには含まれていないため、これら患者へのエビデンスは持ち合わせない。
二次予防では絶対リスクは明らかにNOACで減るが相対リスク減少はみられなかっった。脳卒中発症率が高いためと考えられる。
ゆえにNOACは心房細動患者の脳卒中二次予防において好ましい選択である。

### これはCONと合わせて読むと面白いです。CONはあしたアップします。そのうえでどちらが良いのか、判断して下さい。
by dobashinaika | 2013-07-05 18:05 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

ダビガトラン投与マウスは脳血栓溶解療法後の出血が比較的少ない

Thrombosis and Haemostasis 7月号より

Anticoagulation with dabigatran does not increase secondary intracerebral haemorrhage after thrombolysis in experimental cerebral ischaemia
Thrombosis and Haemostasis 2013: 110/1 (July). 153-161

【疑問】NOAC服用者はワーファリンに比べ、脳血栓溶解療法後の出血はどうか?

マウスの実験結果です。
本論文のアブストラクトも臨床かにとっては難しいので笑、Editorialから要約します.

・ マウスの脳虚血various rodentモデルを作成し、抗凝固療法なし、ワ0ファリン、ダビガトラン投与の3群に分類

・ 脳虚血作成の後、rt-PAを投与し、24時間後の頭蓋内出血を検索

・ ワーファリンに比べ、ダビガトランは血栓溶解後の二次的な頭蓋内出血を増やさない

・ その上減少傾向を認めた:エバンスブルー染色により脳血管関門での樹得なリークが少ないことが明らかとなっている

・ 著者はmatrix metalloproteinase 9のタンパク分解作用がワーファリンの脳血管関門破壊に関係していることを至適

### ワーファリン服用が、t-PA後の脳出血を増やさないことは、臨床例でも報告されています。
http://dobashin.exblog.jp/15697355/

ダビガトランはそれを上回る結果が期待されるということの実験的検討です.

まだワーファリンと比較できるほどダビガトラン服用例の脳梗塞患者は集まっていないと思われますが、貴重なデータかと思います。

追記:タイトルが「ダビガトラン服用者」となっていたのを「ダビガトラン投与マウス」に改めました。
あくまで動物実験の結果ですので。訂正いたします。
by dobashinaika | 2013-07-04 23:50 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

心房細動アブレーションの合併症率は4%で多くは軽症:イタリアの登録研究より

J Cardiovasc Electrophysiol 6月25日付オンライン板より

Updated National Multicenter Registry on Procedural Safety of Catheter Ablation for Atrial Fibrillation
DOI: 10.1111/jce.12194

【疑問】イタリアでのカテーテルアブレーションの安全性はどうか?

【方法】
・2011年1年間
・2323人、29施設、平均年齢60(52−67歳)
・入院から30日以内の合併症をカウント

【結果】
・手技による死亡:なし

・メジャーな合併症94例4.0%
  ➢血管穿刺部トラブル50例2,25
  ➢心タンポナーデ12例0.5%
  ➢心膜炎14例0.6%
  ➢TIA12例0.5%
  ➢脳卒中4例
  ➢横隔神経麻痺3例0.1%
  ➢血胸3例0.1%
  ➢その他3例0.1%

・女性(オッズ比2.643)、手技長時間(オッズ比2.195)は合併症の独立危険因子

【結論】心房細動アブレーションに伴う大きな合併症は4.0%に見られる。その多くは穿刺部位のトラブルである。


### イタリアの29医療施設での心房細動アブレーション登録研究です。血管トラブルを除けば44例2.0%になります。

以前のヨーロッパの別の登録研究で合併症頻度3.9%、日本では6.2%でした。合併症の定義でやや変動しますが、心房細動アブレーションの2〜6%にちょっと気になるトラブルのおそれがあるということは知っておくべき数字です。
http://dobashin.exblog.jp/16008039/

私がもしアブレーションを受けるとしたら、手術にまで回らない穿刺部トラブル及び手術にまで回らない心タンポナーデまでは許容範囲かと思います(それも怖いですが)。脳卒中、TIA、横隔神経麻痺は勘弁願いたいです。なんといってもアブレーションしなくても心房細動自体で死ぬことはない疾患ですので(アブの予後改善効果がはっきりしていないということの裏返しで)。こうした重篤な方はどのような経緯で合併症をきたすのか、よく知りたいところです。多分TIA,脳卒中などはやはりCHADS2スコアの高い人だろうと思われます。
そして受ける時に一番知りたいのは、その施設での成績と合併症です。
by dobashinaika | 2013-07-03 18:08 | 心房細動:アブレーション | Comments(1)

心不全はワーファリン管理に最も関連ある因子:Am J cardiol誌より

American Journal of Cardiology 6月24日付オンライン版より

Impact of Co-morbidities and Patient Characteristics on International Normalized Ratio Control Over Time in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation
doi:10.1016/j.amjcard.2013.04.013

【疑問】ワーファリンのコントロールに影響をあたえるものは何か?

P:12ヶ月以上ワーファリンを服用中で、通院期間60日以内の非弁膜症性心房細動患者23,425人(平均74.8歳、84.8%が65歳以上)。2006〜2010年までの追跡研究

E/C:各種合併症(CHADS2スコア2点以上=higherCHADS2)

O:TTR55%未満=lowerTTR

【結果】
1)合併症:高血圧41.7%。糖尿病24.1%、心不全11.7%。脳卒中の既往11.1%

2)平均TTR67.3 ± 14.4%、lowerTTRは18.6%

3)Lower TTRを規定する因子:心不全(オッス比1.41)、糖尿病(1.28)、脳卒中の既往(1.15)

4)Higher CHADS2はlower TTRと関係あり(オッズ比 1.11, 95% CI 1.04 to 1.18; p <0.001)

【結論】心不全はlower TTRと最も関係あり。次が糖尿病と脳卒中の既往このような患者への抗凝固療法には注意が必要

### 確かに心不全の患者さんはINRが上下することが多いです。腎機能も低下していますし、また腸管からのワーファリンの吸収や食事量が一定しないことが予想されます。

ただ、日常外来では特に循環器専門でない限り心不全の患者さんはそう多くはありません。当院でTTRが落ち着かない患者さんの多くは、やはり高齢者の方です(今回の検討では年齢は影響していないでようですが)。他の薬を沢山飲んでいる、認知機能が低下している、、、そうした因子も影響があるものと思われます。

まだ未知の因子があるような気がします。以下ご参照下さい。
http://dobashin.exblog.jp/16103073/


とはいえ、やはり心不全患者さんのワーファリン管理には通常より神経を使うことは教訓と思われます。
by dobashinaika | 2013-07-02 14:57 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(39)
(35)
(27)
(27)
(27)
(25)
(24)
(21)
(21)
(20)
(19)
(18)
(16)
(15)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

2020 年改訂版 不整脈薬..
at 2020-03-14 18:00
DOACの利益に関する低満足..
at 2020-03-05 07:24
日本における心房細動患者の脳..
at 2020-03-03 07:33
日本のNOAC/DOAC登録..
at 2020-03-02 07:21
アジア人のNOAC不適切低用..
at 2020-02-17 07:07
長期ケア施設入所者における抗..
at 2020-02-06 06:58
2019年心房細動関連論文ベ..
at 2020-01-20 08:18
2019年心房細動関連論文ベ..
at 2020-01-11 18:52
アルコール常用者の禁酒は心房..
at 2020-01-10 07:28
心房細動な日々 dobas..
at 2020-01-09 08:49

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン