人気ブログランキング |

<   2013年 03月 ( 31 )   > この月の画像一覧

新規抗凝固薬を出すときは必ず体重測定を:リバーロキサバンの特定使用成績より

昨日のブログで書かせていただいた、リバーロキサバンの特定使用成績調査ですが、バイエル薬品の担当の方に話を伺ったところ、クレアチニンクリアランス未測定例の中には、患者さんの体重の記載がないケースカード(実際にはネット上)があったとのことです。

たしかに、当院では、診察室の机の目の前に体重計があるので、糖尿病患者さん、心臓病患者さん,特に心不全の既往のある方は、外来で毎回体重を測ってはいますが、長らく見ていて落ち着いている患者さん、たとえばずっとワルファリンを飲んでいてINR測定目的で通っている方などは、新患でなければなかなか測りません。ある程度体格がしっかりしていると、まあ大丈夫だという感じで測定がおろそかになるといったことがあるのかもしれません。あまりにも身体属性として当たり前のことなので、かえって測定を怠る医療機関もあると思われます。

抗凝固薬を新たに出す場合、体重測定を忘れずに。もちろんクレアチニンも。
by dobashinaika | 2013-03-17 23:30 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)

第77回日本循環器学会3日目見聞記(2):新規抗凝固薬で実は一番大切なこと

3日目、医療安全・医療倫理に関する講演会(これまた非常に面白かったです。特に大阪大学の中島和江先生。薬科大学から阪大医学部、ハーバードの公衆衛生大学院というすごい経歴ながらノンテクニカルスキルに関するスーパーわかりやすいレクチャー。こちら参照
http://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/home/hp-cqm/ingai/index.html
を聴いた後、教育セッション「新しい抗凝固薬の臨床」を聴きました。

個人的には東海大学の富田愛子先生の「オーストラリアのNOACの使用実態」が面白かったですね。なぜなら、いま現場でNOACを使う上で最も大きな悩みの種はモニタリングでもエビデンスでもなくて、ズバリ、コストだからです。患者さんも医師も、高いから飲まない、飲めない、出さない、出せないのです。たとえば老健施設に一時入所した場合、医療費は施設持ちです。300mg/日だと
1ヶ月15,480円にもなる薬は施設入所者には出せません。

富田先生はオーストラリアでGPの経験があるのとことです。オーストラリアはイギリス式のプライマリケアシステムでGPがアクセスパーソンです。ワルファリン管理はほとんどGPが行い、Cardiologistは年1回INRをチェックするのみです。 心房細動例の46 %に抗凝固薬が処方され、74%が治療域に入っています。ダビガトランはNVAFにおいては医療保険にあたる国民薬品給付システム(PBS)リストに入っていないため、月12,000円全額自己負担になります。これでは大変なので、薬剤普及プログラム(PFP)があり、発売6ヶ月、製薬会社が登録患者に無償で薬剤を提供し、医師が直接患者さんに手渡す方式がとられています。

効果を理解している患者さんがダビガトランのPFPに5ヶ月で27000人も殺到したとのことです。このシステムは市販後調査などが容易な反面、6ヶ月以降はまた自費になるなど問題も多いとのことです。

富田先生はテキストで、「治療法を選択するときは患者のライフスタイル、経済状況も検討しなければならない.ジェネラルプラクティスは生活の流れ、家庭環境、経済状況、家族歴、既往歴、診断結果、内服中の薬などのデータを収集し、循環器専門医に伝える役目がある」と書かれていますが、まさにその通り!です。肉体労働なのか、納豆や野菜を多く食べるのか、転倒リスクはあるのか、3割負担かどうか、経済状況はどうか。他にも高い薬を出していないかどうか。こうしたポイントを知ることが、CCrやAPTTを測るのと同じくらい大事です。ほんとに。
by dobashinaika | 2013-03-17 23:07 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

第77回日本循環器学会3日目見聞記(1):新規抗凝固薬の大規模試験責任者3人による討論

日循3日間、どっぷり抗凝固薬に浸かってきました(笑)。

今日は午前中Meet the expert10でRE-LYのConnolly Stuart先生(マクマスター大学)、J-Rocket AFの堀正二先生(大阪府立成人病センター)、Alexander John先生(Duke大学)によるディスカッションがありました。

前半は各先生から各試験の概要、特にサブ解析に関して解説がありました。後半時間が余ったので、座長の後藤信哉先生の計らいで3先生のスリーショットによるパネルディスカッションとなりました。新規抗凝固薬の大規模試験開発推進者であるの3先生の掛け合いはなかなかにききごたえがありました。

RE-LYは用量設定から既に2アームに分かれての試験であるのに対し、他の2つは低用量処方に関しては腎機能低下例に対しての付帯事項であること。Rocket-AFはCHADS2スコア高値例対象であること。アリストテレスの低用量設定のみ計算式を用いていないこと。などなどが話題となりました。

EBM watcherとしては面白かったのですが、いかんせん英語による討論だったことと、試験デザインや試験の解釈に話題が及んでいて(当たり前ですが)、プライマリケア従事者にはちょっと距離があったかなと思いました。こういう議論、10数年前勤務医時代にEBMをかじり始めた頃はすごく面白かったのですが、最近関心が複雑系(臨床試験もそれはそれで別の意味で複雑系ですが)の方に向いているので、どうもマニアックに聞こえてしまうのです。これはいけない傾向ですね。サイエンスはサイエンスとしてきっちり、見ていかないとですね。

個人的にはAlexander先生が強調していた、アリストテレスのサブ解析で全身塞栓症はCCr低値でアピキサバン、ワルファリン両者とも多いのに対し、大出血はCCr低値ではアピキサバンの方が発症率が低いという点が気になります。以前のブログでも取り上げました。
http://dobashin.exblog.jp/16869630/

高齢者でCCr30くらいの人で抗凝固薬適応の人はいっぱいいるし、今後増えるからです。実臨床で腎機能低下例に対しNOACがどう使われているのか、注目したいです。
by dobashinaika | 2013-03-17 22:04 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

第77回日本循環器学会学術集会2日目見聞記(4)日本のメガ施設でのダビガトラン使用経験

2日目のシンポジウム12「新たな抗血栓療法のEBM」から前半3題のダビガトランに関する演題を聞きました。

なお以下の内容は、小田倉が受け取った情報を記すもので、文責はすべて小田倉にあります。内容の誤りはご指摘いただければ幸いです。

*国立循環器病センターからのダビガトランの使用報告
・406例、平均67歳、220mgが259人、チャズ0,1が60%
・APTT80以上なし。採血時間とAPTTには関係なし
・【イベント】
脳梗塞1、下肢塞栓1.死亡1(悪性腫瘍)
脳梗塞の1例:60歳チャズ1点。アブレーションで前日から休薬、翌日に脳梗塞
下肢塞栓の1例:内視鏡検査のため3日間休薬中に発症
大出血なし。小出血11.出血例は非出血例に比べAPTT高め
服薬中腎機能低下4例:CCr60くらいから20~38くらいに低下

*大阪大学からのダビガトランの減量に関する報告
・STACIN研究:6施設から心房細動例618人登録
・ダビトラン特有の減量因子(CCr50未満、70歳以上、出血の既往)をいくつ持つかを検討
・2~3因子あり例が35%
・チャズ3点以上でこの因子を持つ例が多い(40%以上)

*倉敷中央病院からのAPTTに関する報告
・466例、平均70.9歳。うち外来フォロー275人対象
・APTTは投与後平均59日に測定。(基準値30.3~45.4)
・【イベント】
塞栓症6人(脳梗塞4、下肢1、SMA塞栓1)
出血1.8%(頭蓋内出血1)
・出血例はAPTT63秒以上、CCr61.3以下
・APTT70以上で有意に出血多い
・APTT分布様式はピーク採血例とトラフ採血とで差なし
・トラフ時採血群ではaPTT70以上での出血が有意に多かった
・最初の90日(150日)に出血事象が集中

###休薬は危険、減量因子多数は薬変更考慮、APTT値は採血時間にあまり関係ない(あるのだろうが臨床的にピークかトラフか区別できない)。APTT高値は危険

といったところが落とし所だったかと思われます。

全体の感想は3日目終わってからアップします。
by dobashinaika | 2013-03-17 07:57 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

第77回日本循環器学会学術集会2日目見聞記(3)15日のリバーロキサバン特定使用成績調査発表

15日に行われたLate Breaking Cohort Studies1からです。今回からRCTでなく登録研究などもLate Breakingセッションが設けられたようです。

イグザレルトの特定使用成績調査(PMS)に関する中間報告がありましたが、私、他のセッションに出席しており実地見分しておりません。しかしながら無視できない話題のため「メディカルトリビューン」社が会場で配布している学会公認のNews Flashの情報をご紹介いたします。

・2013年1月13日時点で3379例登録(当院も何例か登録していたと思いました)。
・登録後6カ月経過し調査票が回収され133例の解析
・11例で出血性副作用
・重大な出血は1例(胃腸出血)
・CCr15未満の使用は確認されなかった
・CCr30未満の安全性未確立例への処方が78例(2.3%)
・CCr不明例が516例(15.3%)

これは処方した患者さんを医療機関が登録するもので、以前出た市販直後調査とは別のものと思われます。
http://dobashin.exblog.jp/17022781/

しかしながら市販後調査でも腎機能超低下例に使われていたことが報告されております。
とにかくCCr不明!例があるというのには驚きです。しかも500例以上も。

先ごろ出たプラザキサ適正使用のお願いのときにはeGFRをCCrと誤解したような症例が報告されていました。

そもそもわれわれ内科医、循環器医(非腎臓専門医)はこれまでCCrというものには大変なじみが薄かったのです。抗菌薬、フィブラート、抗不整脈薬など腎機能を気にしなければいけない薬剤は多々ありますが、おsれらとてまあここまで厳しくCCrの細かい数字をチェックするように言われている薬はほかにありません。

いっぽうCKDの普及以来eGFRにはわれわれは昨今かなり慣れ親しんできております。

とはいえ、まあしつこいようですが、全然チェックしないというのはアウトです。

3379例中133例と大変少数の報告なので、もっと全容が知りたいところですが、たとえば処方箋へのCCr記載を添付文書上で義務づけるなどの措置はできないものでしょうか。
by dobashinaika | 2013-03-17 00:03 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)

第77回日本循環器学会2日目見聞記(2):心房細動に対する切らない”外科手術

本日午前中は、今個人的に最も注目している治療法である、胸腔鏡下心房細動治療に関する発表を聞きました。(FRS-045)

演者の都立多摩総合医療センター心臓血管外科・大塚俊哉先生(大学の1年先輩であることが最近発覚)の術式はすでにJACCで発表され当ブログでもご紹介いたしましたが、完全胸腔鏡下で、左心耳を切除する方法で、これにより左心耳血栓形成の防止及び抗凝固薬からの解放を目的とするものです。
http://dobashin.exblog.jp/17381555/

・心外膜からの肺静脈隔離+神経叢除神経+左心耳切除(A群88例)と左心耳切除のみ群(B群30例)で比較
・B群はVAScスコア平均5.5点で、血栓塞栓症既往例。21例は血栓塞栓症直後の切除。20例はワーファリン不適例
・手術関連死、大きな合併症なし
・A群のAFフリー率77%(1年)、B群は全例抗凝固薬中止後塞栓症なし(平均21カ月)

### とくにB群の手術時間平均38分!というのに、個人的には驚嘆いたしました。これは、ひそかに画期的治療だと思うのです。塞栓血栓症で悩んでいた人が合併症なし。塞栓症なし。抗凝固薬なしの世界に突入できるわけです。抗凝固薬フリーとの内容に対する家坂先生(座長)のcongratulations!の言葉に拍手が沸き起こったのもうなづけると思います。

いまのところ、塞栓症の既往があり、ワーファリン不適例や高リスク例に施行されていますが、将来、症例が蓄積されれば、CHADS2スコア低値例やいわゆる孤立性心房細動へと適応拡大が見通せると思うのです。特に抗凝固薬フリーということになれば40代、50代の方で、今後数十年抗凝固薬を飲まねばならない人にとって、左心耳だけ切ってしまって、塞栓症と出血リスクからの早めの離脱が期待できるかもしれません。

A群の治療法ももっと進化すればイベントフリー率のさらなる向上の可能性が考えられます。すくなくともカテーテルアブレーションに匹敵あるいは上回る成績が期待できるのでないしょうでか。
ある意味、アブレーションクラスタにとっても脅威になってくるかも知れません。

WATCHMANデバイスの有効性、安全性がしっかり確立されておらず、日本での見通しなど全然立っていないのに対し、すでに何十例もやられているのです。

実は、セッション後,長時間にわたり大塚先生とお話しさせていただく機会を得ることができ、今後も大変将来性の高い手術であることがよく理解できました。その詳細は企業秘密に近いようなので(笑)ちょっと明らかにはできませんが。
とにかく心房細動になったら、VAScスコアを適応する場合65歳以上で全例抗凝固薬ですし、そうでなくても50代くらいで高血圧(まさに私がそう)でも抗凝固薬です。その前にその元を断つ。‐まさに根治療法だと思うのは私だけではないはずです。

今のところは適応は限定されていますので、今後どのような症例に適応すべきかという点や長期成績、技術の普及など懸案事項はありますが、同時に期待すべきポイントでもあります。
術式の紹介はこちらの都立多摩総合医療センターのホームページで
http://www.fuchu-hp.fuchu.tokyo.jp/medical/shinzou_geka_g1.html
by dobashinaika | 2013-03-16 23:32 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(1)

第77回日本循環器学会学術集会2日目見聞記(1)日野原重明先生・百一賀記念講演会

まずは日野原重明先生の百一賀記念講演会から

日野原先生は10日前に胸椎11番目を圧迫骨折されたそうですが、聖路加国際病院整形外科の優秀な技術による手術の結果、3日後には秋田などの講演に出かけられていたとのことです。

まさに驚異としか言いようがありません。

講演中はもちろん終始立って、とうとうとよどみなく、ウィリアム・オスラー先生の言葉引きながら、「医療プロフェッショナルの育成」に関しお話しされました。

総合医、家庭の資質を身につけよ、患者さんへも含めた教育者であれ、等々全医療者が耳を傾けるべき箴言かもしれません。

来年もまたこの学会で講演を拝聴するのを楽しみにしたいと思います。

第77回日本循環器学会学術集会2日目見聞記(1)日野原重明先生・百一賀記念講演会_a0119856_194359100.jpg

by dobashinaika | 2013-03-16 19:45 | 開業医の勉強 | Comments(0)

第77回日本循環器学会学術集会1日目見聞記(2)J-RHYTHM RegistryとFUSHIMI AF Registry

Jリズムレジストリー、FUSHIMI AFレジストリーに関してのランチョンとFeatured Research sessionからの情報です。

・Jリズムレジストリーの中間解析ではINRの分布は年齢に関係なし
・梗塞、終結のイベントも年齢に関連なし。
・そもそもイベントが非常に少ない

・FUSHIMI AFレジストリーは登録施設76のうちプライマリケア医64施設でワーファリン投与50%強
・CHADS2スコア平均2.09点で3点症例がJリズムレジストリーより多い。
・抗血小板薬投与例の74.4%に、心血管疾患なし
・CHADS2スコア0点の17%に抗血小板薬処方あり
・抗凝固薬、抗血小板薬併用例でも明らかな血管疾患なしに抗血小板薬が使用されていることが多い

###Jリズムレジストリーは、専門施設の登録症例がほとんどでワーファリン投与率8割強です。かたや伏見の方はプライマリケア医が大半で投与率50%。より高リスク例も多い。前者は理想世界に近く、後者はリアルワールドのイメージかもしれません。

たしかに、プライマリケアセッティングでは、ずっと見ている高齢者が、脈をとってみたらいつの間にかAFになっていたっていうことがよくあります。80歳認知症のかたが突然抗凝固薬の適応となったらどうするか。とりあえずアスピリンというインセンティブはこれまでは自然な選択でした。これからNOAC時代になってどうするか。どちらのレジストリーも今後とも追跡データをぜひ出していただければ参考になると思います。

なおFUSHIMI AFレジストリーは発表されていましたが、大切な論文ゆえにこれまで紹介する時間が無くて取り上げていませんでした。後日じっくり読みたいと思います。
http://www.journal-of-cardiology.com/article/S0914-5087(13)00005-1/abstract
by dobashinaika | 2013-03-15 21:36 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

第77回日本循環器学会学術集会1日目見聞記(1)プラザキサ使用経験、J-RHYTHMレジストリーなど

第77回日本循環器学会学術集会の報告第1弾です。

午前中は「一般口述3:血栓塞栓症、抗血栓療法、血栓溶解」のセッションを聞きました。
明日から役に立つ情報の観点から、箇条書きでまとめます。
関連する午後のFeatured Research セッション(静岡赤十字病院)とプレナリ―セッション(心臓血管研究所)からの報告も合わせてまとめました。

なお以下の内容は、小田倉が受け取った情報を記すもので、文責はすべて小田倉にあります。内容の誤りはご指摘いただければ幸いです。

***PTINR2.0以上は70歳以下にも適しているか(OJ013:静岡市立静岡病院から)・480人の心房細動例の解析では、70歳以下の人で塞栓症3人(うち2人はINR1.6未満)、出血1人INR1.6~2.0) であり、イベント自体少ない。
・INR管理状況は70歳以上と以下で同じなので、年齢によらず2.0位を目指してもイベント発症率は同じ

***ダビガトラン服用下のaPTT上昇と患者背景の関係(OJ014:心臓血管研究所から)・404例中午前中aPTT測定の195例において、aPTT60秒(施設正常域の中央値の2倍)でみた場合、60秒以上になった例は20~30%。
・年齢56歳以上、体重68kg未満、Cr1.0/0.7(男/女)の3因子が多いほど、aPTT高値
・反対に因子数ゼロならaPTT低値

***Jリズムレジストリーで抗血小板薬併用群での心血管イベントリスク(OJ015;藤田保健衛生大学から)
・Jリズムレジストリーではワーファリン単独73%、抗血小板薬単独8%、併用16%
・ワーファリン単独群を1とすると、脳血栓/全身性塞栓は抗血小板群2.38、併用群0.94
・出血は抗血小板群0.78、併用群1.65
・併用群では出血の既往例、CHADS2スコア高値例で出血多い
・併用群は梗塞は同じで、出血だけ増えた

***日本の発作性心房細動患者で脳梗塞のリスク層別化は妥当か(OJ016岩手医科大から)・未治療332例対象でCHADS2スコア0点35%、1点23%
・心不全が年間発症率4.4%、脳卒中/TIAの既往が10%と高リスク

***出血リスクの新しいスコア;AKBスコア(OJ017:藤田保健衛生大学から)・抗血小板薬併用(A)、腎機能CCr30未満(K)、出血の既往(B)の3因子でのリスク層別化はC統計量0.71でATRIAスコアやHAS-BLEDスコアより良好

***CHADS2スコア低値例での左心耳血栓を生じるリスク因子(OJ018筑波大学から)・406例の心房細動中アブレーション前の経食道エコーで左心耳血栓は38例
・CHADS2スコア0,1点は246例60%で、そのうち12例で左心耳血栓あり
・左室EF55%未満、左房径45mm以上が左心耳血栓形成と関連あり

***ブルーレターはダビガトランの処方にどう影響を及ぼしたか(午後のプレナリ―セッション5:心臓血管研究所から)・上記同様404例のダビガトランの使用経験から
・ブルーレターの出血例は”too aggressive”、ブルーレターにより”guarded!が”more guarded!になった
・ブルーレター前(I期)、ブルーレター後から発売1年まで(II期)、発売1年からそ現在(III期)とすると、II期で高齢者、心不全例への投与が減ったがIII期で増加した
・塞栓症は1例(I期)、出血は1例(III期、直腸潰瘍、80歳)、頭蓋内出血なし

***aPTT低値はダビガトラン内服例での虚血性脳卒中と関係あり(FRS-028静岡赤十字病院)・129例で投与2週間後、内服150±7分で測定
・虚血性脳卒中の4例ともaPTT35秒以下
・出血の6例はaPTTに関連なし

###いろいろと知りたいことが分かったセッションでした。全体として感じたのがは、リスクをいかにとらえるかです。とくにCHADS2スコアについては、さんざん言われているように、簡便さ優先の指標がゆえに、粗雑さも併せ持っている。同じスコアでもたとえば心不全と高血圧ではその重みが違う、ということを改めて感じます。

心臓血管研究所の膨大なaPTTデータは参考になります。とくにCCr30~50の例でも最近は処方されているのが、目を引きました。aPTT低値については、測定ポイントが少なく,
交絡因子もあるため何とも言えない感じもありますが、このようなデータの積み重ねは大切と思いました。

しかし、この午前中のセッションの裏でリバーロキサバンの市販後調査の中間解析が発表されていて、ホットな議論が交わされたようですが、今回は学習優先で一般演題を聞きましたので、聞けませんでした。昨年より心房細動のセッションが多くなっているため仕方ありません。Ustとかであとで見ることができたらいいのにと思いますが、学会参加者減少につながることは絶対やられないでしょうし。

第77回日本循環器学会学術集会1日目見聞記(1)プラザキサ使用経験、J-RHYTHMレジストリーなど_a0119856_2121165.jpg

展示会場へと向かう集団。スーツネクタイ率99%。プライマリーケア系学会とは対極をなす光景ですね。黒系スーツが圧倒的に多くカラスの大群を連想してしまいました(失礼)。
by dobashinaika | 2013-03-15 21:34 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

米国でのダビガトラン市販後の出血に関するNEJM誌のperspective

明日(もう今日になりましたが)からの第77回日本循環器学会「観戦」のために、横浜に来ています。
あすからのフル稼働のために英気を養おうと思いましたが、気になるステートメントがNEJMから出ていたので、読んでから寝ることにします。
簡単に箇条書きでのまとめです。

Dabigatran and Postmarketing Reports of Bleeding
DOI: 10.1056/NEJMp1302834


・2010年10月のダビガトラン承認後、FDAはFDA Adverse Event Reporting System (FAERS)を通じて、重大で致死的な出血事象の報告を受けていた。その出現率は、ワルファリンの出血率よりも多い。

・RE-LYでは以下のことが確認されている
脳卒中/全身性塞栓予防効果:ダビ150>ワルファリン(1.1vs.1.7/100人年)
死亡率:ダビ<ワルファリン(1.1vs. 1.7;傾向)
大出血」ダビ150=ワルファリン(3.3vs.3.6)
消化管出血:ダビ>ワーファリン(1.6vs.1.1)
頭蓋内出血:ダビ<ワーファリン(0.3vs. 0.8)

・RE-LYの結果から予想されてはいたが、市販後調査での出血イベントがあまりにも多かったので、FDAはFAERSによるレビューを急いだ。

・市販後調査では、RELYのような腎機能などが適正化された集団とは対象が違う。

・今回のレポートでは、出血症例の背景は不明。少人数ながら腎機能低下者でも減量がなされていなかったとのこと。

・われわれは疫学上の現象である、Weber effect(Weber JCP. Epidemiology of adverse reactions to nonsteroidal anti-inflammatory drugs. Adv Inflamm Res 1984;6:1-7、すなわち新薬登場時、急激に副作用報告が増加し、その後急減する現象の可能性も考慮している。ワルファリンは発売後約60年たつが、新規抗凝固薬より副作用報告が極端に少ないのはこの理由による。しかしながら、FDAの標準プラクティスに従い、2011年12月に薬剤安全性情報が出された。

・ダビガトランの場合、市販後調査の出血イベントの多さが、真の出血リスク増大を反省しているのか見極めたいと考えた。保険クレームやFDA Mini-Sentinel databaseからの2010年8月~2011年12月までのデータでは、ダビガトランによる出血はワルファリン関連出血より多いというわけではない。

・この解析は、交絡因子や詳細なカルテデータが欠如している点が欠点。これを克服すための2つのプロトコールに基づく評価を立案中。

### 市販後調査で多数の出血事象が報告されたが、それはいわゆるWeber効果(新薬ということだけで報告が触発されたため)であり、別なデータではそれほど顕著な増加はなかった。という趣旨です。Mini-Sentinel Distributed Databaseの内容をみますと頭蓋内出血はダビが1.6人/10万人に対しワルファリンは3.1~3.5人とのことです。まあワルファリンの母数はかなり多いわけではあります。

日本で2011年8月に出ました市販後調査は、腎機能低下例や超高齢者が多数含まれており
単なるWeber効果だけのものではないと思われますが、ただし、対母集団の比率でみた場合、果たしてワルファリンに比べて明らかに出血率が多かったとはいえないだろうとも思われます。ワルファリンの大出血例は市販後50年のこの時期には厚生省に上がっているのは一部かもしれません。

間違ったケースに絶対使わないこと。はじめて使う場合はリスクの少ないケースから。とりあえず、よく言われる原則論を言って寝ます。

明日からは日循ネタをブログ、ツイッター、フェイスブックを通じて発信しまくりたいと思いますので。
by dobashinaika | 2013-03-15 00:07 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(39)
(35)
(27)
(27)
(27)
(25)
(24)
(21)
(21)
(20)
(19)
(18)
(16)
(15)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

2020 年改訂版 不整脈薬..
at 2020-03-14 18:00
DOACの利益に関する低満足..
at 2020-03-05 07:24
日本における心房細動患者の脳..
at 2020-03-03 07:33
日本のNOAC/DOAC登録..
at 2020-03-02 07:21
アジア人のNOAC不適切低用..
at 2020-02-17 07:07
長期ケア施設入所者における抗..
at 2020-02-06 06:58
2019年心房細動関連論文ベ..
at 2020-01-20 08:18
2019年心房細動関連論文ベ..
at 2020-01-11 18:52
アルコール常用者の禁酒は心房..
at 2020-01-10 07:28
心房細動な日々 dobas..
at 2020-01-09 08:49

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン