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ワーファリンは慢性腎臓病合併心房細動の脳塞栓を明らかに減らすが出血も増やす

NEJM 8月16日号より

Stroke and Bleeding in Atrial Fibrillation with Chronic Kidney Disease
N Engl J Med 2012; 367:625-635


心房細動脳塞栓に慢性腎臓病(CKD)がどう関与しているかについてのデンマーク大規模コホート研究

P:デンマークで1997〜2008年で非弁膜症性心房細動で病院を退院した国内登録患者132,372名

E:腎代替療法(透析など)を必要とするCKD3587例(2.7%)/腎代替療法を必要としないCKD901例(0.7%)

C:CKDのない対象例

O:脳卒中/全身性塞栓、抗血栓療法の効果

結果:
1)脳卒中/全身性塞栓:非代替療法群の対照群に対するハザード比1.49

2)脳卒中/全身性塞栓:代替療法群の対照群に対するハザード比1.83

3)ワーファリン介入による脳卒中/全身性塞栓予防効果:
 非代替群で0.84、代替群で0.44、対照群で0.59
 全体でみると対照群に比べ、腎不全群はハザード比0.76
 アスピリンでは軽減せず(ハザード比1.17)

4)ワーファリンによる出血リスク
 非代替群で1.36、代替群で1.27、対照群で1.28
 全体でみると対照群比べ1.33倍増加
 アスピリンも対照群に比べ1.17倍増加

結論:CKDは心房細動患者の脳卒中/全身性塞栓と出血リスクを高める。ワーファリンは脳卒中/全身性塞栓リスクを軽減する一方、ワーファリンとアスピリンは出血リスクを増やす。

### ワーファリンはやはり腎機能低下例では出血リスクも増やすことが多数例で明確に示されており、大変重要な論文と言えます。。CHADS2スコア別とか、net-clinical benefitを算出してほしいものです。HAS-BLEDでも腎機能はCHADS2スコアとオーバーラップしない出血の危険因子です。たとえワーファリンといえども何らかの代謝の影響も受け、また腎機能以外のリスクも抱え込む症例が多いことから、CKDでのINR管理はより慎重さが要求されるといえると思います。
by dobashinaika | 2012-08-17 22:56 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心房細動において脳出血に比べ脳塞栓の方により関係している危険因子は何か?

Stroke 8月号より

Which Risk Factors Are More Associated With Ischemic Stroke Than Intracerebral Hemorrhage in Patients With Atrial Fibrillation?
Stroke.2012; 43: 2048-2054


心房細動患者においてどの危険因子が頭蓋内出血よりも脳梗塞に関係しているかに関する検討

P:the Registry of the Canadian Stroke Networkに登録した心房細動合併脳梗塞または頭蓋内出血患者連続3197例:頭蓋内出血12.2%

E/C:1)従来から(梗塞、出血に)共通の危険因子と言われている因子:年齢、アルコール、高血圧、糖尿病、腎不全、陳旧性脳梗塞/TIA、認知症)
2)脳梗塞、頭蓋内出血にそれぞれ固有の危険因子

O:脳梗塞または頭蓋内出血

結果;
1)共通リスクのうち年齢(オッズ比1.19)、陳旧性脳梗塞/TIA(オッズ比1.45)の2つは、頭蓋内出血より脳梗塞の方により関連あり

2)高血圧、糖尿病、腎不全、アルコールはどちらか片方に関連が強いことはなかった

結論;知られている危険因子のうち、頭蓋内出血の方により関連するものはなし。年齢は頭蓋内出血より脳梗塞により強く関連

### 挙げられている危険因子はCHADS2とHAS-BLEDではないようです。両者であれば共通項目は年齢、高血圧、脳卒中TIAの既往の3つであり、アルコール、腎不全、肝障害は出血の危険因子の方に、糖尿病は梗塞の方に入ります。

上記の因子が多数混在していた場合は、脳塞栓のリスクを大きいと考えて抗凝固薬を投与することを検討したほうがよさそうなのかもしれません。が、HAS-BLDの他の指標、出血傾向、抗血小板薬・NSAID使用、INR不安定などはどうだったのかは気になります。
by dobashinaika | 2012-08-16 16:57 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

原因不明の脳梗塞の9人に1人に心房細動が見つかる:SMART研究より

Neurology 8月7日オンライン版より

Detection of Paroxysmal Atrial Fibrillation by 30-Day Event Monitoring in Cryptogenic Ischemic Stroke
doi: 10.1161/ STROKEAHA.112.665844


原因不明の虚血性脳卒中において、モニタリングによりどのくらい心房細動が同定されるかに関する検討(SMART登録研究)

P:Kaiser Permanente Northern California(民間の非営利医療団体)において原因不明の虚血性脳卒中患者を多施設で登録。3年間追跡

E/C:30日間連続モニター施行(心房細動自動記録)

O:発作性心房細動

結果:
1)発作性心房細動:29例12.1%で記録

2)新しく発見された患者は26例11.0%

3)大多数の患者は無症候性

4)98エピソード中6回だけが患者による記録ないし症候性

結論:原因不明脳梗塞の約9人に1人で、発症30日以内に心房細動が買う人された。ルーチンモニターが強く推奨される。

### 大変臨床的に意義ある研究と思います。

おそらくモニターの方法は、以下のサイトにあるような30日間連続装着できる携帯式のものであろうと思われます。
https://www.cardionet.com/

実際は9人に1人以上あるように思われます。こうして見つかった方はやはり抗凝固療法の適応になると考えられます。

日本でも早く普及すると良いですね。
by dobashinaika | 2012-08-15 19:10 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

心移植直前の透析によりダビガトランの除去を行った一例の報告

The Annals of Pharmacotherapy 8月7日オンライン版により

Safe Use of Hemodialysis for Dabigatran Removal Before Cardiac Surgery
doi: 10.1345/aph.1R081


心移植直前のダビガトラン除去のために血液透析を行った症例の報告

・59歳女性。心不全、心房細動。心移植目的で入院
・ ミルリノン、アミオダロン、ダビガトラン150mgx2投与を受け家庭で安定
・ 心移植可能との情報を受け、入院
・ 入院約36時間前に最後のダビガトラン内服
・ 入院時PT-INR1.2、トロンビン時間90.6秒(上限19.9秒)
・ 直ちに透析開始
・ 透析開始1時間でトロンビン時間は65.5秒
・ 透析2,5時間でトロンビン時間は60.2秒
・ 心移植は術中術後で出血なく施行

結論:
知るかぎりでは手術前にダビガトラン除去の目的で透析の効果を確認した最初の報告。術前の透析のルーチン化は勧められないが、上記のような状況では潜在的効果はある。

###ダビガトランは分子量が小さく、蛋白結合率が低いため、透析可能とされていますが(リバーロキサバンは蛋白結合率90%以上なので透析は不可とされている)、実際に術前で施行し出血マーカーも低下し実際出血なく施行できたとの報告です。

もっとも最後服用が36時間前ですので、半減期12時間のダビガトランが、まだトロンビン時間をこれほど延長させているのは不思議です。この症例の腎機能が知りたいところです。

またモニタリングにはTTが用いられていますが、この妥当性もまだ゙不明かと思われます。というより何が適切な出血の指標かで透析の可否は変わってくるのではと思います。
それでも本報告は透析で安全性が高まることを支持する結果かと思います。

なおこの情報はツイッターでフォローさせていただいている@Office_j(宇津貴史)さんからゲットいたしました。このかたにはいつも大変お世話になっていますしその情報収集力は参考になります。
by dobashinaika | 2012-08-15 09:22 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

女性における心房細動は男性においてよりも脳梗塞の高リスク因子

Stroke 8月7日オンライン版より

Atrial Fibrillation and the Risk of Ischemic Stroke
Does It Still Matter in Patients With a CHA2DS2-VASc Score of 0 or 1?
doi: 10.1161/ STROKEAHA.112.667865


心房細動脳塞栓のリスクとしてのCHA2DS2-VAScスコア1点=女性について評価した台湾からの症例対照研究

E:女性320例(CHA2DS2-VAScスコア1点)。男性509例(CHA2DS2-VAScスコア0点)で心房細動あり。抗凝固療法なし。

C:年齢、性別、他の危険因子を補正した心房細動なし例

O:虚血性脳卒中

結果:
1)虚血性脳卒中(57.4ヶ月追跡)128例(1.4%)

2)男性においては心房細動あるなしはアウトカムに関係なし

3)女性においては心房細動が虚血性脳卒中の明らかな危険因子(4.4%vs. 0.7% :P<0.001:ハザード比7.77)

結論:男性でCHA2DS2-VAScスコア0点なら新に脳卒中リスクは低区、心房細動のない例と同等。女性では、女性であること自体が高リスク

### 最近女性であることのリスクがたてつづけに出ていますね。
http://dobashin.exblog.jp/15489568/
http://dobashin.exblog.jp/15370480/
ただし本研究は症例対照研究なので、女性においては心房細動が脳卒中の危険に寄与したということであり、「女性のほうが男性よりリスクが高い」ということはできないところが注意です。

しかしますますCHA2DS2-VAScスコアの有効性が印象づけられます。このままだと次回の日本のガイドラインはもとよりアメリカのガイドラインにも影響するのではと思わせます。

ちょうど今日のCirculationにCHA2DS2-VAScスコア重視の“Clinical Update”が出たようです。イギリスの先生のお話ではありますが。
http://circ.ahajournals.org/content/126/7/860.full
そのうちアップします。
by dobashinaika | 2012-08-14 22:16 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

特発性心房細動における潜在的な冠動脈疾患リスク

Heart Rhythm 8月9日オンライン版より

Patients Originally Diagnosed With Idiopathic Atrial Fibrillation More Often Suffer From Insidious Coronary Artery Disease Compared to Healthy Sinus Rhythm Controls
doi:10.1016/j.hrthm.2012.08.013

特発性心房細動と診断された人における潜在的な冠動脈疾患のリスクに関する症例対照研究

P:2008年1月〜2011年にオランダの一医療施設で心臓CTアンジオを受けた3243例

E:特発性心房細動患者と診断された連続115例:高血圧、糖尿病、心不全、冠動脈疾患の既往、末梢血管疾患、脳卒中の既往、甲状腺疾患、肺、腎疾患、心エコー上の器質的心疾患を除く

C:年齢、性別、各種リスクをマッチさせた洞調律対照例275例

O:冠動脈病変

結果:
1)対照群のほうが冠動脈疾患、喫煙者、空腹時血糖高値が多く、冠動脈径は細かった。

2)潜在性の冠動脈病変は心房細動群で有意に多かった(49% vs. 34%, p=0.008)

3)心房細動の既往と左房径が冠動脈病変の著明な予測因子

結論:特発性心房細動と初めて診断された人の半数に、潜在性の冠動脈病変が見つかった。早い段階からの診断と治療がこうした人の予後改善に寄与するかもしれない。

### 症例対照研究なので、それなりのバイアスは考慮すべきとして、特発性心房細動といえども、心房のリモデリングが進んでいる症例もあり、そうした例では冠動脈の動脈硬化も見られるということかと思われます。そうした例では、逆に慢性化しやすいとか、塞栓症が将来多くなるといったことも予想されます。
冠動脈病変の程度にも寄ると思いますが。
by dobashinaika | 2012-08-13 23:24 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

新しい抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインを考える

抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインを入手しました。

学会員しかアクセスできず、ここに全文アップすると叱られそうなので(笑)、個人的に重要とおもわれるポイントをコメントを付けて書き写します。

◎ 総論的ポイント
1)多学会合同、共通のガイドラインである
日本消化器内視鏡学会,日本循環器学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本血栓止血学会,日本糖尿病学会合同作成

2)コンセンサス重視である
Delphi法による合意形成度の表示あり。ほとんどのステートメントがエビデンスレベルV,VI。推奨度はC1以下

◎ 各論的ポイント
1)内視鏡手技の出血危険度分類と休薬よる血栓塞栓症の高発症群を明確にした。
→手技のリスクと症例それぞれのリスクの2軸で層別化した。

【出血危険度による消化器内視鏡の分類】
1. 通常消化器内視鏡
   上部消化管内視鏡(経鼻内視鏡を含む)
   下部消化管内視鏡
   超音波内視鏡
   カプセル内視鏡
   内視鏡的逆行性膵胆管造影

2. 内視鏡的粘膜生検(超音波内視鏡下穿刺吸引術を除く)

3. 出血低危険度の消化器内視鏡
   バルーン内視鏡
   マーキング(クリップ、高周波、点墨、など)
   消化管、膵管、胆管ステント留置法 (事前の切開手技を伴わない)
   内視鏡的乳頭バルーン拡張術

【休薬による血栓塞栓症の高発症群】
抗血小板薬関連
    冠動脈ステント留置後2ヵ月
    冠動脈薬剤溶出性ステント留置後12ヵ月
    脳血行再建術(頸動脈内膜剥離術、ステント留置)後2ヵ月
    主幹動脈に50%以上の狭窄を伴う脳梗塞または一過性脳虚血発作
    最近発症した虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作
    閉塞性動脈硬化症でFontaine3度(安静時疼痛)以上
    頸動脈超音波検査、頭頚部磁気共鳴血管画像で休薬の危険が高いと判断
    される所見を有する場合

抗凝固薬関連※
    心原性脳塞栓症の既往
    弁膜症を合併する心房細動
    弁膜症を合併していないが脳卒中高リスクの心房細動
    僧帽弁の機械弁置換術後
    機械弁置換術後の血栓塞栓症の既往
    人工弁設置
    抗リン脂質抗体症候群
    深部静脈血栓症・肺塞栓症
※ワルファリン等抗凝固薬療法中の休薬に伴う血栓・塞栓症のリスクは様々であるが、一度発症すると重篤であることが多いことから、抗凝固薬療法中の症例は全例、高危険群として対応することが望ましい


2)画期的なステートメント3
内視鏡的粘膜生検は、アスピリン、アスピリン以外の抗血小板薬、抗凝固薬のいずれか1剤を服用している場合には休薬なく施行してもよい。ワルファリンの場合は、PT-INRが通常の治療域であることを確認して生検する。2剤以上を服用している場合には症例に応じて慎重に対応する。生検では、抗血栓薬服薬の有無にかかわらず一定の頻度で出血を合併する。生検を行った場合には、止血を確認して内視鏡を抜去する。止血が得られない場合には、止血処理を行う。
Delphi法による評価;中央値:8、最低値:7、最高値:9
Evidence level Ⅴ、推奨度 C1

3)画期的なステートメント5
出血高危険度の消化器内視鏡において、血栓塞栓症の発症リスクが高いアスピリン単独服用者では休薬なく施行してもよい。血栓塞栓症の発症リスクが低い場合は3~5日間の休薬を考慮する。
Delphi法による評価;中央値:8、最低値:7、最高値:9
Evidence level Ⅳb、推奨度 C1

◎ 予想される現場の変化
1)患者さんにとって
・これまで生検が必要な場合、2回内視鏡を受けていたのが1回ですむ→これまでは施設によってはヘパリン置換せず休薬または入院の上ヘパリン置換の2通りがあったが、前者は危険、後者は煩雑であった。このジレンマを一挙に解決しうる

2)消化器医にとって
・止血の確認が求められる→内視鏡医の質の担保が求められる
・ 出血高危険度手技ではワーファリンからヘパリン置換が明記されたので、順守する必要がある

3)循環器医にとって
・手技前にPT-INR確認が必要になる
・ 内視鏡医により対応が違うことが予想され混乱する

### ごくおおざぱながら、本ガイドラインの雑感を書いてみました。前のブログに書いたように、これまでのような「循環器医は塞栓症を恐れ、消化器医は出血を恐れる」、そうしたリスク認知のスレ違いが解消され、共通基盤が醸成され、循環器医−消化器医のツンデレ関係が解消されることが期待されます。

エビレベル、推奨レベルとも高くないだけに、今後このガイドラインが広く普及した後には、出血、塞栓についてアウトカムがどう変化したのか(変化はわからなくてもガイドライン発表後の出血、塞栓の頻度など)など検証したいものです。

最後に、、、しつこいようですが、多分野に渡る重要なガイドラインですので、なんびともフリーでアクセス出来るようにしてほしいものです。もちろん患者さんも。
by dobashinaika | 2012-08-11 23:10 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(1)

米国心臓協会と米国脳卒中協会による抗凝固薬に関する科学的勧告

Stroke 8月2日オンライン版より

Oral Antithrombotic Agents for the Prevention of Stroke in Nonvalvular Atrial Fibrillation: A Science Advisory for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association
Stroke 2012; DOI:10.1161/STR.0b013e318266722a


アメリカ心臓協会とアメリカ脳卒中協会による抗凝固薬に関する科学的勧告

AHA,ASAから新規抗凝固薬を見すえたAdvisoryが出されました。アメリカでは既に2011年2月にガイドラインが限定アップデートされましたが、ガイドライン本体の改定を待っていたのでは、昨今の新規抗凝固薬の台頭に追いつきません。ということなのか、”A Science Advisory”と言う形で抗凝固薬の新しいRecommendationsが出ています。

推奨部分だけ訳しておきます。( )内のI,II,IIIはエビデンスレベル、A,B,Cは推奨度です)

1.ワルファリン(I,A)、ダビガトラン(I,B)、アピキサバン(I,B)リバーロキサバン(IIa,B)はすべての非弁膜症性心房細動の一次及び二次予防に適応。抗凝固薬の選択は、リスク因子、コスト、忍容性、患者の選好、薬剤相互作用、TTRなどを考慮して個別に決める。

2.ダビガトラン150mgx2は、少なくとも1つ以上の追加リスクがあり、CCr>30の患者では、ワーファリンの効果的な代替薬(I,B)

3.薬物動態に基づくと、ダビガトラン75mgx2はCCr15-30で少なくとも1つ以上の追加リスクのある患者で考慮されるかもしれない。ただし安全性と効果は確立されていない(IIb,C)

4.データがないので、CCr<15の患者ではダビガトランは推奨できない(III,C)

5.アピキサバン5mgx2は、少なくとも1つ以上の追加リスクに、さらに80才以上、体重60kg以下、血清クレアチニン1.5以上のうち一つだけを持ち合わせる患者で、ビタミンK拮抗薬(VKA)不適合の場合アスピリンに代わる薬となる(I,B)

6.安全性、有効性は確立してはいないが、アピキサバン2.5mgx2は、VKA不適合者で、少なくとも1つ以上の追加リスク+上記リスクを2つ以上有する患者のアスピリンに代わる薬となる(Ib,C)

7.アピキサバン5mgx2は上記患者におけるVKAに代わる薬となる(I,B)

8.安全性、有効性は確立してはいないが、アピキサバン2.5mgx2は少なくとも1つ以上の追加リスク+上記リスクを1つ以上有する患者のワーファリンに代わる薬となる(IIb,C)

9.アピキサバンはCCr<25では使用すべきでない(III,C)

10.中〜高リスク患者(脳卒中/TIA、全身塞栓症の既往、リスク二つ以上)ではリバーロキサバン20mgx1がワーファリン代替薬として合理的

11.上記リスクかつ腎機能低下例(CCr15~50)ではリバーロキサバン15mgx1が考慮される。安全性、有効性は確立されていない(IIb,C)

12.リバーロキサバンはCCr<15では使うべきでない(III,C)

13.ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンと抗血小板薬との併用の安全性、有効性は確立されていない(IIb,C)

### アメリカですので、ダビラトランは150mgx2と75mgx2が認められており、110mgx2の記載はありません。

「追加リスク」とはCHADS2スコアのことです。ダビガトラン、アピキサバンは1点以上、リバーロキサバンは2点以上で、ワーファリンにとって代われるとしています。

日本では今のところ、このような細かい情報、推奨は学会主導でなく、製薬会社主導になっているのが現状だと思われます。製薬会社からリリースされる添付文書、市販後調査情報、パンフレントなどから、なんとなく適応が醸成されているというのは、実はあまり健全な姿ではないように思われます。

この辺でまた日本の学会も同じようなadvisoryをしてほしいものです。

おまけ:個人的には「リスク因子、コスト、忍容性、患者の選好、薬剤相互作用、TTRなどを考慮して個別に決める」というフレーズが一番好きです。
by dobashinaika | 2012-08-09 23:47 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

心房細動患者のステント術後の抗血栓療法における出血

Circulation 8月6日オンライン版より

Bleeding after Initiation of Multiple Antithrombotic Drugs, Including Triple Therapy, in Atrial Fibrillation Patients Following Myocardial Infarction and Coronary Intervention: A Nationwide Cohort Study
doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.112.114967


心筋梗塞、冠動脈インターベンション合併心房細動患者での3剤併用を含む多剤抗血栓薬使用時の出血に関すデンマークの全国登録研究

P:2000年〜2009年までに登録された心筋梗塞、冠動脈インターベンション合併心房細動患者11,480名(平均75.6才)

E/C:
a)3剤群=ビタミンK阻害薬(VKA)+アスピリン+クロピドグレル
b)2剤群=VKA+アスピリン
c)2剤抗血小板薬群=アスピリン+クロピドグレル

O:出血

結果;
1)出血例:728例6.3%。うち79例0.7%が致死的

2)30日以内出血率:a:b:c=22.6:20.3:14.3/100人年

3)早期出血(90日以内)、晩期出血(90〜360日)ともa群はb群に比べハザード比大(1.48,1.36)

4)塞栓率:3群で有意差なし

結論:3剤併用は出血リスク高い。3剤併用は安全は治療ではない。3剤併用は出血リスクが十分考慮された例に行うべき

### 不整脈医と虚血医とのツンデレ関係に一石を投じる研究です。なんといっても症例数が多いことのインパクトがあります。3剤併用すると年間22%の出血があるとなると考えさせられます。

ESCのガイドラインでは
1)安定狭心症ではできるだけBMS
2)3剤併用の場合は3〜6ヶ月までを目処とし、その後はVKA+クロピドグレル
です。

いまならダビガトランやリバーロキサバンの投与も考えられますが、こまめな調節ができるワーファリンのほうが、私としては安心です。新規抗凝固薬はこうしたエビデンスがありませんので。
by dobashinaika | 2012-08-07 23:46 | 抗凝固療法:抗血小板薬併用 | Comments(0)

心房細動抗凝固療法の出血を予測する3つのスコアの比較

J Am Coll Cardiol 8月1日オンライン版より

Performance of the HEMORR2HAGES, ATRIA, and HAS-BLED Bleeding Risk–Prediction Scores in Patients With Atrial Fibrillation Undergoing Anticoagulation The AMADEUS (Evaluating the Use of SR34006 Compared to Warfarin or Acenocoumarol in Patients With Atrial Fibrillation) Study
J Am Coll Cardiol. 2012;():. doi:10.1016/j.jacc.2012.06.019


3つの心房細動出血スコアの比較:AMADEUS試験の登録患者対象

P:AMADEUS試験(idraparinuxとワーファリンの比較試験:出血例増加のため試験中止)登録症例:
70.2±9.0歳、男性65%、非弁膜症性心房細動、CHA2DS2-VAScスコア換算で1点以上(「女性」は除く)

E/C:
HEMORR2HAGESスコア、ATRIAスコア、HAS-BLEDスコア

O:出血、各予測能

結果:
1)net reclassification improvement:HAS-BLEDがHEMORR2HAGES、ATRIAよりそれぞれ10.3%、13%改善

2)ROC曲線でのC-統計量:0.60 vs. 0.55 and 0.50 for HAS-BLED vs. HEMORR2AGES and ATRIA

3)decision-curve analysisではHAS-BLEDスコアがどの閾値においても最も優れたパフォーマンス

4)頭蓋内出血においてはHAS-BLEDだけが明らかなすぐれた予測能あり(c-index: 0.75; p = 0.03)

5)ATRIAスコア3点を超えるとどの出血リスクとも相関はなくなる

結論:HAS-BLEDスコアの出血予測能がややすぐれているが、3つのスコアとも中等度の予測能を示した。HAS-BLEDだけが頭蓋内出血において明らかに優れた予測能を示した。間げべん差においてもHAS-BLEDはattractiveな方法である。

###
ATRIAスコア
  (以前のこのブログ参照http://dobashin.exblog.jp/13080552/
貧血3点
重症腎不全3点
75歳以上2点
出血既往1点
高血圧1点

HAS-BLEDスコア
心房細動抗凝固療法の出血を予測する3つのスコアの比較_a0119856_20115924.gif

HEMORR2AGESスコア
 肝腎疾患(Hepatic or renal)
 アルコール中毒(Ethanol abuse)
 悪性腫瘍(Malignancy)
 75歳以上(Older)
 血小板減少(Reduced platele count or function)
 高血圧(Hyoertension)
 貧血(Anemia)
 遺伝(Genetic factors)
 過度の転倒リスク(Excessive fall risk)
 脳卒中の既往(Stroke)
 出血の既往(Prior bleed、2点)

net reclassification improvement、decision-curve analysisといった概念はOnline Appendix参照とあるのですが、探せませんでした。

まあこうしてみると、HAS-BLEDが一番シンプルでかつ出血に直結しらリスクかなと思います。ATRIAスコアもシンプルですが、貧血に3点を与えているあたりがどうなのかという感じです、

いずれにしても、塞栓リスクとダブる項目は多いので悩ましいことには変わりないですね。
by dobashinaika | 2012-08-06 20:16 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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治療 2015年 04 月号 [雑誌]

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ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

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