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"新規抗凝固薬は心房細動塞栓症予防の第一選択薬として使用すべきである”:Circulationのコントラバーシ2

Circulation1月3日号より

Should Newer Oral Anticoagulants Be Used as First-Line Agents to Prevent Thromboembolism in Patients With Atrial Fibrillation and Risk Factors for Stroke or Thromboembolism?: Newer Oral Anticoagulants Should Be Used as First-Line Agents to Prevent Thromboembolism in Patients With Atrial Fibrillation and Risk Factors for Stroke or Thromboembolism
Christopher B. Granger and Luciana V. Armaganijan
Circulation. 2012;125:159-164


昨日の続きのコントラバーシで、今日は「新規抗凝固薬は心房細動血栓塞栓症抑制の第一選択薬として使うべきである」とする賛成派の言説です。
要点のみまとめてみます。

<ワーファリンの難点>
・ワーファリンは比較的健常な心房細動患者でも使用率は55%以下であり、本来必要性の高い高齢になるほど使用率は低下する。この傾向は米国もヨーロッパも同じ

・ワーファリン服用者でも不適切使用例が多く、高齢者の28%は1年以内に中止してしまうという報告もある

・CHADS2スコア4点以上の患者の20%以上で、最初の1年で大出血を合併する

・INR2~3の維持率は58%である

・こうした処方控えや不適切使用の背景には、抗凝固効果が予測困難、遺伝的に代謝が不安定、多様な薬物、食物相互作用、狭い治療域、煩雑なモニタリングが関係している

・大規模試験ではTTRが10%減少するごとに、脳梗塞の絶対リスクは1%増加すると言われている

・高齢者ではTTRが50%未満で結果が不良であり、また最近の大規模試験でもTTRが悪いほど脳梗塞率が高いことが知られている

・良好なINRコントロールでも脳出血率は高いことも知られている

・抗血小板薬の降下も認められるが、出血コストはワーファリンと同等

まとめ;ワーファリンは2つの大きな限界あり:1)適応例に使われない 2)使われても不適切使用

<新規抗凝固薬>
ダビガトラン

・RE-LY試験でダビガトランはワーファリンに比べ効果的かつ安全
・ダビガトラン150mgx2はワーファリンに比べ脳卒中と全身塞栓症を34%減らし、大出血リスクは同等
・ダビガトラン110mgx2はワーファリンに比べ脳卒中と全身塞栓症減少率は同等で、大出血リスクは20%減少
・消化管出血は150mgでワーファリンより高率
・Dyspepsiaはダビガトラン両用量で高率:11.8% (110 mg) , 11.3% (150 mg) 5.8%(ワーファリン); P<0.001

リバロキサバン
・ワーフリンに比べ12%脳梗塞/全身塞栓症リスクを減少させ、統計学的優位性は示せなかったが非劣性は示せた
・ダビガトラン同様、頭蓋内出血は少ない

アピキサバン
・AVERROES試験ではアスピリンに比べ明らかな優位性を示した:脳塞栓減少オッズ比0.46。出血リスクは同じ
・ARISTOTLE試験ではワーファリンに比べ脳梗塞/全身塞栓症を21%減らした
・出血は31%少なく、死亡率も11%低かった

エドキサバン
・ENGAGE AF-TIMI 48試験が進行中。2012年公開予定

<新規抗凝固薬が第一選択となるには何が大切か>
・ワーファリンは適切に使えば、高い効果があり、廉価であることは確立されており広く受け入れられている 

・新規抗凝固薬が第一選択となるには使いやすさ(大切な点はアドヒアランス忍容性の向上)だけでなく、より良い結果、受け入れ可能なコスト、すべてのサブグループで普遍性がある,ということが必要

使いやすさ
・モニター不要、毎回の量調節不要
・半減期が短いので、即効性があり、導入に時間がかからない

効果
・上記で見たようにワーファリンより脳梗塞/全身塞栓症予防効果は優れる

安全性
・頭蓋内出血は3大試験とも50%近く減少
・低用量ダビガトランとアピキサバンは大出血を明らかに減らした

既にワーファリンでINRコントロールが良好な患者
・一見理にかなっているが、以下のデータからみれば支持されない
・新規抗凝固薬は,ワーファリンの既存使用の有無にかかわらず効果があることはいくつかの試験で明らか
・ダビガトランでは、INRコントロールがより良い施設では、効果が劣るとのエビデンスなし
・大事な点は、頭蓋内出血減少度は、INRコントロールに関わらず同等に認められること。これはリバロキサバンもアピキサバンも同じ

予後への効果
・新規抗凝固薬は予後を10%程度改善(明らかな到達はアピキサバンだけ)
・出血時の中和薬がないなどの欠点はあっても、予後改善効果はそれらを凌駕する

中和薬
・中和薬なしはチャレンジポイントだが、ワーファリンのビタミンKの中和効果や時間に沿った効果は実はよくわかっていない
・半減期が短いので、中和薬はなくても出血率自体低いし、またそれほどシビアでない

コストは妥当?
・ダビガトランの費用対効果を示す論文はある
・ダビガトランの対費用効果は、対象となるワーファリンのTTRに依存するところも大きい

<結論>
・ワーファリンは高い効果があるが、医師患者双方にとって制約があることはよく知られている
・新規抗凝固薬は使いやすさと有効性(少ない脳梗塞、少ない頭蓋内出血、低い死亡率)を有する
・この便益はワーファリン服用の有無に関係なし
・コストは高い効果と使いやすさがあるため、受け入れ可能

###反対陣営へのリプライも掲載されており、その中では「ワーファリンの制約性はしっかりと確立されている」「日本、オーストラリア、ニュージーランドで数多くの出血症例が報告されたが、そうした逸話的な(anecdotal;もしくは伝聞的な、間接的な)報告が大規模試験より出血が高率と言えるのかは定かでなく、4相試験(市販後試験)は必要」と反論しています。

こうして反対,賛成2つの論説を比べると、お互いの長所がそのままお互いの欠点になっている(特にアドヒアランスの面で)ように思われます。

8.12前後の日本のダビガトランを取り巻く言説をそのまま表しているようで面白かったです(もちろん「賛成」が8.12以前、「反対」が8.12以後)

これらを見て、即どちらの立場に組するかと言う判断をするのは適切ではありません。これはコントラバーシで、いわばやらせ論争ですので、どちらかの立場を取れば、これこれこのような自分側の利点と相手の欠点が見えてくると言うことが大切なのです。それらの欠点を克服し、利点をより長じる方法を見つけて行くための参考資料と位置づけるべきです。

両者を俯瞰した上で、どちらの長所がより魅力的か、どちらの短所がより深刻かの程度を医療者自身が勘案して態度を決めるとよろしいかと存じます。私自身は現時点では、「第一選択にすべきでない」立場に近いと言わざるを得ません。まあ当然これは医療者、患者ごとに依存する問題ですが。
by dobashinaika | 2012-01-06 23:49 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

"新規抗凝固薬は心房細動塞栓症予防の第一選択薬として使用すべきではない”:Circulationのコントラバーシ

Circulationの新年1月3日号の”コントラバーシ”に「新規抗凝固薬を心房細動塞栓血栓塞栓症予防の第一選択薬として使用すべきか否か」につき賛成、反対両者の立場を代弁する形で2つの論文が掲載されています。

本日はまず「第一選択にすべきでない」とする陣営の論文をまとめます。賛成派のまとめは明日以降アップします。

Should Newer Oral Anticoagulants Be Used as First-Line Agents to Prevent Thromboembolism in Patients With Atrial Fibrillation and Risk Factors for Stroke or Thromboembolism?: New Oral Anticoagulants Should Not Be Used as First-Line Agents to Prevent Thromboembolism in Patients With Atrial Fibrillation
Jack Ansell
Circulation. 2012;125:165-170


<大規模試験の問題点>
・RE-LY, ROCKET-AFとも選択基準/除外基準が一般化を制限し、少なくともよりすぐられたわけではない(様々なプロファイルの)心房細動患者のいるリアルワールドへの活用法について疑問を抱かせる

・RE-LYではオープンラベルなので、服薬管理においてバイアスの生じる可能性がある

・ダビガトラン群で21%の脱落率(ワーファリン群は17%)があった

・ダビガトラン群ではdyspepsia(消化器症状)が多く(12% vs. 6%)説明できない心筋梗塞も多い。消化管出血も多かった(出血全体の発生率は同等だが)

・TTRに表されるワーファリンコントロールが改善されれば、両者の効果の差は解消される:TTR72.6%を越えるとほぼ同等

・ROCKET-AFはデータがすべて発表されていないので詳細は不明な点が多いが、ワーファリンン管理は理想より低かった

・アピキサバンとアスピリン(ワーファリン不適格例)を比較したAVERROES試験では、明らかにアピキサバンが塞栓症を減らしたが、ワーファリン不適格とした根拠が不明で統一性がないことが指摘されている。またワーファリンでもアスピリンに比べ37%のリスク減少があることも知られている

<新規抗凝固薬の欠点(表3)>
短い半減期

 アドヒアランスの低下による塞栓症リスク増加の危険性

抗凝固モニターなし
 アドヒアランス低下例での評価不能

抗凝固能の測定法なし
 適正用量設定不能
 薬剤抵抗性なのかアドヒアランスが悪いかの評価不能
 大出血時や緊急手術時での抗凝固能評価不能

緊急時の中和剤なし

コスト高

<アドヒアランス低下>
・最も頻繁に懸念されるのは服薬アドヒアランスの問題
・大規模試験ではほとんど問題にされないが、実世界では切実な問題
・コストはアドヒアランスに最も影響する:新規抗凝固薬は高額
・半減期の短い新規抗凝固薬では、アドヒアランス低下はより危険
・ワーファリン服用者の21%がアドヒアランス低下例とも言われていて、こうした患者が新規抗凝固薬に変更されることの危険性が懸念される
・塞栓症が起こるまで、症状に乏しいことが抗凝固薬アドヒアランス低下の要因と思われる。患者は抗凝固薬の重要性をなかなか理解できない
・TTR管理のよいクリニックでは新規抗凝固薬を使用する必要性に乏しい

<モニタリングなし>
・もし脳塞栓が起こったとき患者は薬を飲んでいたのか?出血が起こったとき薬の飲み過ぎはなかったのか?緊急手術のとき安全なのか?
・相互作用を有する薬は少ないとはいえ、P糖蛋白阻害薬などは関係する。それらとの干渉度を表す指標も乏しい
・新規抗凝固薬は腎代謝薬が多いため、特に腎機能の変動する高齢者には注意が必要
・モニターがあることで臨床医は、治療目標を立てることができる

<緊急時中和薬なし>
・消化管出血が多いとされており、それへの対処法は不明
・透析がよいとされる新規抗凝固薬もあるが、脳出血出現時の透析は現実的でない

<コスト>
・患者の出費が明らかにかさむ。アドヒアランスにも影響
・あるマルコフモデルでの試算では、ワーファリンの方がトータルコストは低い
・もう一つの研究では、患者のリスクによって違うとされる

・ダビガトランでは、ボトルから出されたカプセルの安定性が大切である

最後に、疑問のまとめ
・誰に新規抗凝固薬を使うのが適切か?
・どんな患者でワーファリンから切り替えたらよいか?
・全員に適応があるのか
・ワーファリン管理不良例は、モニターの要らない新規抗凝固薬の最良の適応なのか?:アドヒアランス低下に起因する管理不良例では適応にならないのでは?
・安定したワーファリン服用者に適応はあるか?そうした患者では薬変更によるリスクがあるのでは?
・INRモニターを受けられない遠方患者はよい適応か?:多分よいが、今は自己モニターができる

結論;新規抗凝固薬は、薬物動態的に医師患者双方に興味の対象であることは否定しない。しかし現時点で第一選択薬とするには不明な点が多々ある。薬物アドヒアランス、適切な効果判定、患者適応についての理解がなされるまで、新規抗凝固薬をワーファリンから自動的に切り替えたり、第一選択薬とすべきではない。
by dobashinaika | 2012-01-06 00:18 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

心房細動に対するカテーテルアブレーション vs. 外科的アブレーション:FASTトライアル より

Circulation 1月3日号より

Atrial Fibrillation Catheter Ablation Versus Surgical Ablation Treatment (FAST)A 2-Center Randomized Clinical Trial
Circulation.2012; 125: 23-30


重症心房細動におけるカテーテルアブレーションと外科的アブレーションの比較検討

P:薬剤抵抗性で、左房拡大および高血圧を有する(42例、33%)または初回アブレーション不成功(82例67%)の心房細動124例

E:カテーテルアブレーション(CA)63例:肺静脈隔離+線状焼灼(オプション)

C:低侵襲外科的アブレーション(SA)61例:双極子による肺静脈隔離+神経叢アブレーション+左心耳切除

O:12ヶ月間の抗不整脈無投与下で、30秒以上の左房由来不整脈フリー例数

結果:
1)12ヶ月不整脈フリー症例はSAで多い:CA36.5%vs. SA65.6% (P=0.0022)

2)サブグループ解析では有意差なし

3)明らかな合併症(気胸、大出血、ペースメーカー)はSAで多い;CA15.9%% vs. SA34.4% (P=0.027)

4)CA群で1例死亡(1ヶ月後くも膜下出血

結論;左房拡大、高血圧あるいは初回不成功例において、12ヶ月間の左房由来不整脈非出現率ではSAはCAより優れる。ただし合併症はSAで多い

###昨年11月のアメリカ心臓協会(AHA)で発表されたトライアルの論文化です。カテーテルアブレーションの1年間不整脈フリー率が少なすぎるような気がしますが、直視下手術の方が効果大だが合併症も多いというのはうなづける結果かと思われます。実際には、日本では低侵襲外科的アブレーションを積極的に行う施設は少なくカテーテルが好まれており、カテーテルアブレーションの成績はもっといいのではないかと思いますが。
by dobashinaika | 2012-01-04 22:50 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

一般医師の「一般意志2.0」可視化への期待:東浩紀著「一般意志2.0」読後感

話題になっている東浩紀氏の「一般意志2.0」にいろいろとインスパイアされることがあったので、私が関わっている医療業界や患者医師関係のことに敷衍しながら思いつきを述べてみたいと思います。

本書では、ルソーの「社会契約論」で提示された「一般意志」をフロイト流の無意識のデータベースと捉え、それを従来からの熟議型コミュニケーションと共存させる新しい民主主義の形が提唱されています。無意識のデータベースとしてグーグル、ツイッターなどのネット社会が「アーキテクチャ(情報環境の設計)」を提供してくれているというわけです。(不正確な要約かもしれませんので、くわしくは原文をあたってください)

ここで一般意志2.0と称されるものは個人の意志の合計である「全体意思」のようなスカラの和ではなく、相殺されたものを除いた上で残る差異の和でありベクトル和と定義されています。また序文で東氏は「私たちはもはや、自分たちに向かない熟議の理想を追い求めるのをやめて、むしろ「空気」を技術的に可視化し、合意形成の基礎に据えるような新しい民主主義を構築した方がいいのではないか」と述べています。

この「一般意志2.0」が、医療者世界に暗黙のうちに存在していることは、私にも直感としてわかります。例えば8月12日以降の心房細動新規抗凝固療法に対する医療者世界での「無意識」です。ブルーレターが出されて以来、不整脈専門医のオピニオンリダーや製薬会社は適正投与の啓蒙へと180度方針を転換しました。多くのプライマリケア医は、そうした専門家の言説を大いに参考にしながらも、ブルーレター前後でそれほど劇的には行動変容を起こさず静観しているというのが実情ではないかと思うのです。プライマリケア医の習性としての「新薬には軽々に手を出さない。専門家集団の動向を見て態度を決める」という姿勢は実は新薬登場前から「空気」として存在しており、発売から約10ヶ月経った今でもそれほど変わりはない気がします。

事実ツイッターやフェイスブック,それに研究会などでお会いする同業の先生方の雑談などからは、そうした「空気」がじんわりと伝わってきますし、そうした空気を多数の先生が吸って、味わっているのだと思います。
そしてこうした「空気」あるいは「一般意志」(一般医師のw)は心房細動治療の分野に限らず、どの領域にも見られるなはずです。

こうした医療者の分野ごとの「一般意志2.0」をツイッターやフェイスブック上から可視化できたら大変興味深いことですし、決して不可能ではないような気がします。

そう考えてくると我々医療者の最大のデータベースとしての電子カルテの存在を無視することはできなくなります。我々が日々行っている治療行為、検査その他の医療行為はもちろん医師としての「意識」に基づいて行われていますが、それらを集合したときに立ち現れるデータ、「例えばこの年齢のこういう合併症を抱えた人にはこの治療を多くの医師が選択している」という情報は医療者集団あるいは患者医療者共同の「無意識」として捉えられるものではないでしょうか。
すでに電子カルテをそのようなリサーチデータベースとして用いる活動は,以前のブログでも紹介したように報告されており今後発展するのは確実と思われます。

東氏は「一般意志」は「一般欲求」あるいは「均されたみんなの望み」くらいに理解しようと述べており、電子カルテのデータベースのような「医療行為の実績」を示すものとは性格が異なるかもしれません。しかしわれわれの医療行為の集積は、それ自体医療者および患者との「意志決定」の共同産物であり、そのデータベースはまさにわれわれの(しかも集積されたものは無意識の)「意志」の産物と言えるかと思います。

そうなると、このフレームワークをもっと他の世界にも応用できないかという思いが巡ります。たとえば患者さんの「一般意志」が知りたくなります。あるいは非医療者の「一般意志」の把握に応用できないものかと考えが進むかと思います。試しにツイッター上で「インフルエンザワクチン」と検索すると瞬く間に数十のツイートが抽出されます。それらの中には医療者からの情報提供や有用サイトの紹介もありますが、普通の人が抱くインフルエンザワクチンへのイメージや、打たないことの不安、ワクチン行政への意見など様々な言説を目にすることができます。

われわれは、受診する人の意志や欲求を知ることはできますが、「受診しない気持ち」「医療行為を受けない人の欲求」を知ることはなかなか困難です。特定の領域に限るとまだコンテンツ的には貧困かもしれませんが、本書はこのような未知の情報にアクセスできる可能性を夢想させます。

東氏は、「筆者はこれから夢を語ろうと思う」とし、「筆者の夢もまた断片的で矛盾だらけで、欠陥が多く混乱に満ちている」と述べており、ネット上でも様々な評価を目にします。私は、この書は確かにアカデミズムを追求している他書に比べれば大胆に見える解釈や、現時点では実現性に遠い距離感を感じる記述もありますが、まさにそれが故に多分野に応用できるフレームを提示したたたき台のような書物だと思います。そのように考えれば、医療分野でも上記のように勝手な夢想を展開できる楽しみが生まれてくるように思います。

その他興味深いと思った点を列挙。
・ウェブ2.0の提唱者ティム・オライリーを引用して、「未来の政府は、国民を抑圧したり監視したりするパターナリスティックな存在ではなく、多様な市民生活や企業活動を支援する、検索サービスやソーシャルメディアのような「プラットホーム」になるべきである。「政府2.0」は,その新しい政府の形をさす言葉だ」と述べられています。これまさに、今多くの診療所、クリニックで期待されている、もしくは既に実現されているプライマリケア医のあり方ですね、我々はさしずめ「診療所2.0」を目指し実現しているということですね。

・「政府のすべての会議を「ニコニコ生放送」で公開しろ、と呼びかけているようなものである」との1文を読んで、医療系の学会などでも、シンポジウムなどではフロアや会場外から、発言に突っ込みを入れるような場を想像しました。ツイッター上のTLでもそのようなアイデアが散見されます。実現したらかなり面白いことになるとは思います。シンポジストは大変でしょうが。

最後に、東氏は理性的なコミュニケーションや熟議だけでのコミュニケーションの限界を説いています。この書の前提の一つであり患者医療者関係に敷衍しても、私自身(あるいは多数の同業者)直面している問題であり、本来はこの書の感想として最初に書くべきことかもしれませんが、現時点ではこの大問題をまとめる余裕なしです。そのうちに。。
by dobashinaika | 2012-01-03 15:04 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

経カテーテル的大動脈弁植え込み術後の心房細動:JACC誌より

JACC 12月14日オンライン版より

Incidence, Predictive Factors, and Prognostic Value of New-Onset Atrial Fibrillation Following Transcatheter Aortic Valve Implantation

経カテーテル的大動脈弁植え込み術後に発生する心房細動に関する検討

・経カテーテル的大動脈弁形成術(TAVI)を施行された138連続症例(術前に心房細動の記録のある例は除く)の心房細動発症率、発症予測因子、予後比較の検討

結果:
1)心房細動新規発症は44例31.9%(退院までに30秒以上の心房細動が心電図モニター上記録されたもの)

2)発症予測因子は左房径:1mm増加ごとにオッズ比1.21倍増加

3)経心尖部アプローチ:経大腿動脈アプローチに比べ4.08倍

4)心房細動発症例は有意に脳梗塞、全身性塞栓が多い(13.6% vs. 3.2%, p = 0.021, p = 0.047)

5)予後には差なし

6)その後1年間の追跡でも上記の心房細動発症群は脳梗塞、全身塞栓症とも有意に多い(それぞれ13.6%、15.9%vs. 3.2% )

結論:TAVI後に約1/3の患者で心房細動が記録された。左房径、経心尖部アプローチが発症に関係した。心房細動新規発症は脳梗塞/全身性塞栓症と高率に関係したが予後に差はなかった。

###高リスクの患者さんに開胸でなくカテーテルによる大動脈弁置換が行われるようになっています。最近の報告では開胸術に劣らない成績が提示されていますが、カテーテル手術の方が心房細動は少ないことも示されています。

しかしながらやはり心臓手術であることは変わりなく、特に心尖部から穿刺する方法だと小開胸術と原理的には同じであり、左室を穿刺することもあり、また術後の痛み刺激なども関与して心房細動が増えるのではないかと考察されています。

全体の1/3に術後発症を認めますが、元々重症の大動脈弁狭窄症がある症例なので左房負荷がかかりやすく心房細動が生じやすい心臓であるところに手術侵襲が加わることで、術後心房細動が多くなるものと思われます。

実際の手技は見たことはありませんが。。。
by dobashinaika | 2012-01-02 21:59 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

1月1日夜に考える「今年の抱負」

毎年、1月1日は、ブログで今年の抱負を掲げることにしていました。
さて今年ですが、人間50を越えるとあまり抱負とか目標とかを掲げるといった心境から、ちょっと距離を置きたくなるのかもしれません。今年はこれをしようという明確なビジョンをあえて掲げないことにしようと思います。医療というのは、目標とか成果を第一にしない営みだと最近思うからです。

とはいえ、こういうスタイルで医療をしようとか、生活世界を生きようというスタイルの面でのこだわりは一応持ちたいと思います。中身でなく形式、コンテンツでなくコンテキストはぶれない方がよいと思うからです。

ちょうどこの姿勢に符合すると思うのですが、一番スタイルとして持っておきたいと考えるのは、ある一つの視点、視座に立って患者さんや医療を見ないようにするということです。

たとえば「エビデンスを重視して診療しよう」とか「患者さんの物語をよく把握しよう」と言った、ある一つの姿勢や患者医療者関係の一モデルを一律にモットーのように考えない、その場その場で、患者さんと自分や医療スタッフと関係性の一回性、特殊性を素早く把握しながら柔軟に対応して行こうということです。

患者医療者関係は、当然一律のものではなく、あるときはShared decision making(意志決定の共有)がよいケースもあれば、パターナリズム(父権主義)がふさわしい場合もあります。また一人の患者さんとの関係も時間経過や社会情勢の変化とともに当然変わって行きます。

要はそうした個別性や経時的変化を正しく察知して柔軟に対応して行くという姿勢こそ大切にすべきではないかと最近強く思います。

「個別性や時間性にあわせて自在に自分や患者さんとの関係性を変化させる構え」というのだけは変えないこと、しいいていえばこれが今年の抱負です。「変える」ということは変えないというメタ認識みたいなものです。

具体的には今年、自院の立て替えがあり新しい環境で仕事をすることになるかと思います。その中でも、様々な形をとりながら患者さんや医療情勢に合わせた診療を心がけたいと思います。

それからこのブログやツイッター、フェイスブックは自分の学習や精神活動のプラットホームとして、コツコツ今まで通り続けて行きたいと思います。(これだけは抱負としての具体的コンテンツですが)

昨年の元旦の抱負では「やりたいことをスタープラチナ(「ジョジョの奇妙な冒険」の最強スタンドキャラ)の用なスピードとパワーと緻密さを持って取り組んで行きたい」などと書いていますが、上記の「状況を把握するリテラシー」においてそのようなスタンド能力(笑)を発揮できればよいですねえ。

今年の心房細動診療については、年末年始時間的余裕があったのでいろいろ考えることもありますが、これは少しずつブログでつぶやくつもりです。

本年もよろしくお願い申し上げます。
by dobashinaika | 2012-01-01 22:46 | 土橋内科医院 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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