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今の時期「プラザキサからワーファリン」への切り替えも考えなければならないのか。:実例からの考察

先日、休日の一次急患施設の日直を担当しました。

その折、80歳を超えショートステイ中だった方が大量下血のため来院されました。心房細動による心原性脳塞栓のため、普段から車いす歩行の方です。
プラザキサ110mgx2をかかりつけのプラマリケア医から処方されていました。
幸い貧血はなく一般状態も良好でしたが、原因が原因であり高齢であることから、高次救急医療施設に搬送となりました。
血清クレアチニンの大きな低下はありませんでした。

私自身、プラザキサ服用者の大出血例を目の前にしたのは初めてですので、やや驚くと同時に「本当にプラザキサで下部消化管出血ってあるんだなあ」と改めて知らされる思いでした。

この方は80歳を超え、活動性もそれほど高くなく本来であれば慎重投与に該当するかもしれません。
この例の場合がどうかは不明ですが、3月の発売当初に、簡便さのため一旦プラザキサを出してしまった後、高齢者や腎機能低下者(以前のブログで言うところのBRANDスコア高値の方)であるため、本来(といっても8.12以降に判明したことですが)プラザキサ慎重投与例にも関わらず、何らかの理由でワーファリンに変更されない方は全国各地に結構な数いらっしゃるのではないでしょうか。

その理由は担当医、患者さんにより事情は異なりますが、やはりワーファリンへの変更導入の煩雑さが大きな原因になっているのではないかと推察されます。それまでワーファリンを服用していてプラザキサに変更した人であれば、ワーファリンへの「出戻り」は簡単です。しかし3月以来多くのプライマリケア医がプラザキサ処方を行った患者さんというのは、それまでアスピリンを飲んでいた人であるとか、適応でありながらも煩雑さその他から控えられていた人が多いのではないかと思われます。そうした患者さんには、プラザキサで始めてしまった以上、抗凝固療法をやめるわけにはいかず、かといってワーファリンへの変更や新規導入のスキルや経験が少ないためそのままになっているという訳です。

実際、ワーファリンからプラザキサへの切り替えはよく啓発されていますが、その逆の方法を述べたpaperは目にしたことはありません。プラザキサにはワーファリンのような中止によるリバウンドは少ないと思われますが、全く中止して一からワーファリンを導入するとなると、抗凝固療法フリーとなってしまう期間が生じますので、いつの時点でプラザキサをやめてワーファリンを始めるかが問題となります。誰も正確なことは言えないと思いますが、ワーファリンからの切り替えと逆のことをするとなれば、プラザキサ内服中からワーファリン導入を通常通り初め、PT-INRが2.0になる前にプラザキサを止めるということになります。ただこれだと、2に近づくにつれ頻回のINR測定が必要になってしまいます。私も数例ワーファリンに戻した経験がありますが、PT-INRが1.3〜1.4くらいになったらプラザキサをやめるようにしていました。1.6以上になってからでは(特に高齢者)オーバーラップの時期が多いと思いましたので。

しかしこういう作業はプライマリケア医は無理ですので、恥ずかしがらす専門医に紹介すべきだと思います。

そして今こそ、専門医はプライマリケア医にこう呼びかけたいものだと思います。
「プラザキサ慎重投与、または禁忌症例でありながらワーファリンに変更できずにそのままにしておられる患者さんがいらっしゃいましたら、是非紹介してください。ワーファリン導入をさせていただいただきますので」と。

新規凝固薬が普及してくる今こそ、ワーファリンの導入や維持の方法について、もっと生涯教育活動が必要になってきたという状況なのでしょうか。大変逆説的な話しではありますが。

オートマ車しか知らないでドライバーになったとはいえ、やっぱり運転するからにはマニュアル車にも乗れるようにしておいた方がいい,というのが今の段階。もう少しすればオートマ車しか乗れなくてもいっこうに差し支えなく運転できるようになる。早くそうなってほしいものです。
by dobashinaika | 2012-01-19 23:45 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

“リアルワールド”における心房細動アブレーションの合併症、再入院、再施行の頻度と予測因子:JACCより

J Am Coll Cardiol 1月10日号より

Procedural Complications, Rehospitalizations, and Repeat Procedures After Catheter Ablation for Atrial Fibrillation
J Am Coll Cardiol, 2012; 59:143-149


大規模データベースを用いた心房細動のカテーテルアブレーションにおける合併症、再入院、再施行の頻度、予測因子に関する検討

・カリフォルニア州の入院患者データベースから、2005年から2008年までに初回心房細動アブレーションを受けた4156例を抽出し対象とした
・多変量解析により、合併症、30日以内の再入院についての予測因子を検討

結果:
1)合併症:5%、血管に関するものが最多

2)30日以内再入院:9%、高齢、女性、以前の心房細動のための入院、(その医療施設の)心房細動アブレーションの経験の少なさと関係

3)アブレーション1年以内の再入院は38.5%

4)心房細動、粗動の再発による再入院は1年目で21.7%、2年までで29.6%

結論;心房細動アブレーションでは20人に1人の確率で周術期合併症が起こる。再入院はありふれたこと。高齢、女性、以前の入院、その病院の経験の少なさと合併症や再入院とは関係あり。

###合併症の内訳は、血管関係52%、出血/血腫44%、心穿孔/タンポナーデ49.3%、脳卒中4.7%、気胸1.9%、TIA1.4%、死亡0.5%(1人)でした。
合併症の予測因子としては、高齢、女性、心不全、高血圧、CKD、肺疾患が挙げられていますが年齢補正後は女性と以前の入院のみが残っています。

11月のハーバード大学のグループの報告では合併症5%で,腎臓病は予測因子でで下が、年齢は関係ないとされています。

再発率の21.7%はボルドー、ハンブルグなどからの報告とほぼ同様です。

この論文の見所は、とかくバイアスの入りがちな自施設でのデータ公開ではなく、患者データベースを用いた大規模コホートが対象だと言うことです。1施設の成績や多施設の登録研究よりは、より”リアルワールド”でのアブレーションの負の面を明らかにしたものと言えるでしょう。

Editorialではこの論文に親和性を感じる点として1)一施設からの報告に比べ成功率が低い、2)合併症率および再入院率が高い、ことをあげています。また著者らはその背景には十分な経験のない医師が施行することが多いからとしています。これに対しEditorialからは「アブレーションで病院が利益を得ているので、自分が熟練していると断言している医師に安易に特権を与えてしまっている」と警告しています。アメリカでもこういう現状があるのです。

この論文を読むと、カテーテルアブレーションというのは、ある疾患の治療法としてトータルで見た場合、予後改善効果は不明であり、症状軽減効果としても短期間の保証しかすぎず、5%程度の合併症と20〜30%の再発率を有する、ことなどなど、、、概観すればでそれほど完成された治療法とはいえないと言う気がしてきます。もちろん「治療法」としての一般的な評価であって、個々の患者さんでは是非とも必要な人が大勢おられることとは別問題ですが。

アブレーション慎重派が投げかけた一石と見ることもできますが、翻って日本の状況を考えるとき、上記のようなデータベース構築もない現状で、やはり患者さん、そしてプライマリーケア医はマスコミや一般向け病院ランキングなどの評判で医療機関を選ぶしかない現状かと思います。こうしたマスコミデータや世評には多くのバイアスが入っており、たとえ合併症データが示される場合があったとしても、自己申告データにならざるを得ません。

カテーテルアブレーションのような侵襲的手技ほど、医療施設の「一般意志」を可視化する意味でのデータベース構築が望まれます
by dobashinaika | 2012-01-18 23:25 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

「大切な人の死」と急性心筋梗塞リスクの関係:MOIS研究より

Circulation 1月9日オンライン版より

Risk of Acute Myocardial Infarction after Death of a Significant Person in One's Life: The Determinants of MI Onset Study

大切な人の死と急性心筋梗塞の関連を検討した症例対照研究 (MOIS研究)

方法:
・対象:米国ボストン周辺の多医療施設に1989年から1994年まで、急性心筋梗塞で入院した1985例(男1318例、平均61.6歳)のうち、心筋梗塞発症前6ヶ月間に「大切な人」をなくしたことのある人

・その人のベースライン情報に基づく推定心筋梗塞リスクに比べての、大切な人の死後の発症リスクの比をMantel-Haenszel estimatorを用いて算出

・データは、入院中に訓練されたインタビュアーによるインタビューで収集された。「過去1年であなたの人生にとって大切な友達、親類または誰かの死を聞いたことはありますか?」の質問を行い、肯定的だった場合、「大切の度合い」を「少し、中くらい、かなり)の3段階で答えてもらった。

結果:
1)大切な人を亡くしたことのある人は270例13.6%で発症1日以内の19人を含む

2)大切な人の死後24時間以内の心筋梗塞発症率は(その他の時間帯の)21.1倍(13.1−34.1)でその後時間経過とともに減少

3)大切な人の死後1週間以内の心筋梗塞発症の絶対リスクは、10年後心筋梗塞リスクが5%の低リスク例で1394人に1人であったのに対し高リスク例(10年発症リスク20%)では320人に1人

結論:大切な人の死を悲しむ気持ちは、その後の心筋梗塞発症リスクの急増と関係あり。高心血管リスク例でそのインパクトは最も高かった。

###大変興味深いデータです。PDFで全文が読めますが、男性の方が発症率比が高く、65歳未満の方が以上より高いという結果も出ています。
http://circ.ahajournals.org/content/early/2012/01/09/CIRCULATIONAHA.111.061770.full.pdf

また、死亡の知らせを聞いた直後ほど発症率が高いため、悪い知らせを聞いたことにより服薬管理がおろそかになったことが原因ではなさそうです。

このデータを元に、では「大切な人の死」の直後、その人にどう介入すれば良いのか、どう手を差し伸べれば良いのか、答えるすべはありませんが、まずは「見守ること」だろうかと思います。
by dobashinaika | 2012-01-18 00:12 | 虚血性心疾患 | Comments(0)

18万人の大規模コホートにおける心房細動脳梗塞リスクと出血リスクの妥当性:European Heart Journalより

European Heart Journal1月13日オンライン版より

Evaluation of risk stratification schemes for ischaemic stroke and bleeding in 182 678 patients with atrial fibrillation: the Swedish Atrial Fibrillation cohort study
Eur Heart J (2012) doi: 10.1093


スウェーデンの大規模コホートにおいて脳梗塞と脳出血リスクスコア(スキーム)の妥当性を評価した研究

対象:
・Swedish Atrial Fibrillation cohort studyに登録され2005年7月~2008年12月までにスウェーデンの病院で心房細動と診断された182,678例
・1.5年フォロー
・全例抗凝固薬服用
・多くの解析はこれまで抗凝固療法を受けていなかった90,490のサブセットでなされた
・評価項目:血栓塞栓エンドポイント(脳梗塞、TIA、全身性塞栓)、出血、既存の梗塞、出血リスクスコア

結果:
1)新たな血栓塞栓症のリスク因子として、末梢血管疾患(ハザード比0.22,95%CI 1.12-1.32)、血管疾患(ハザード比1.14、1.03-1.23)、心筋梗塞の既往(ハザード比1.17,1.11-1.22)

2)これまでと同様の血栓塞栓症のリスクとして、塞栓症の既往、頭蓋内出血、高血圧、糖尿病、腎不全

3)甲状腺機能亢進症はリスク因子ではなかった

4)C―統計量は、CHADS2スコア0.66(0.65-0.66)、CHA2DS2-VAScスコア0.67(0.67-0.68)

5)大出血、頭蓋内出血のリスク因子として、脳梗塞または血栓塞栓の既往、大出血の既往、高血圧

6)心不全、糖尿病、腎不全、肝臓病、貧血、血小板/凝固脳異常、アルコール中毒、がんは大出血のリスクであったが、頭蓋内出血のリスクではなかった

7)2つの出血リスクスコア(HEMORR2HAGES, HAS-BLED)のC-統計量はどちらも同じで0.6未満

結論:いくつかのリスク因子(頭蓋内出血の既往、心筋梗塞、血管疾患、腎機能)は心房細動における脳梗塞、血栓塞栓症の独立したリスク因子だった。しかし甲状腺機能亢進症はリスク因子ではなかった。CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアは血栓塞栓症の良好な予測能を示した。HAS-BLEDスコアとHEMORR2HAGESスコアの出血予測能は同様なので、単純さにおいてHAS-BLEDスコアが勝る。

###またしても北欧の超大規模コホート研究です。これをやられると何でもリスク因子になりそうで怖いです(笑)。

CHADS2とCHA2DS-VASc2で予測能の差はほんの少しのようです。HAS-BLEDもHEMORR2HAGESより単純さで優るとのことで、実臨床の感覚に近い結果だと思います。

従来のCHADS2スコアになかったリスク因子として血管疾患、心筋梗塞(腎不全も)があげられているのが興味深いです。CHADS2スコア1点の例は、他に血管疾患(CHAD2DS-VASc2にはあり)と腎不全に注意せよというのが私にとってはこの論文のお持ち帰りメッセージです。
by dobashinaika | 2012-01-16 19:30 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

LDLコレステロール高値と低い心房細動罹患率とは関係あり:ARIC研究より

CIRCULATION: ARRHYTHMIA AND ELECTROPHYSIOLOGY オンライン版より

Blood Lipid Levels, Lipid Lowering Medications, and the Incidence of Atrial Fibrillation: The Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) Study

血清脂質およびスタチンと心房細動リスクとの関連を検討した論文

方法:
ARIC研究の参加者のうち心房細動既往のない13,969例(25%はアフリカンーアメリカン)対象
・ベースラインおよび3回の外来でのHDLC.LDLC.総コレステロール、中性脂肪測定。心房細動罹患率は2007年までのもの

結果:
1)心房細動罹患率:1433/13,969(18.7年追跡)

2)血清脂質レベルが1SD(標準偏差)上昇するごとの心房細動ハザード比は、HDLC0.97 (0.91-1.04)、LDLC 0.90 (0.85-0.96), 総コレステロール 0.89 (0.84-0.95)、中性脂肪 1.00 (0.96-1.04)

3)脂質低下薬服用者の非服用者に比べたハザード比は0.96 (0.82-1.13)。一方スタチンのみのそれ以外の脂質低下薬に比べたハザード比は0.91 (0.66-1.25)

結論:高LDLコレステロール、高総コレステロールは心房細動罹患率の低下と関係あり。しかしHDLCと中性脂肪は無関係。脂質低下薬使用と心房細動罹患率とは無関係

###以前女性では低HDLが心房細動リスク上昇と関連ありとの論文を紹介しました。血清脂質と心房細動の関係はこれまで一定の見解はないのが現状ですが、少なくともこの研究はLDLコレステロールが高めの方が心房細動が生じにくいことを示唆しており、これまで炎症との関連が言われていたストリームとは外れる血管と言えるかも知れません。

ただし観察研究ですので因果関係の取り扱いには十分注意が必要です。

一方スタチンと心房細動に関係ないことは、最近のストリームに一致するようです。
by dobashinaika | 2012-01-14 22:55 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

マラソン、ハーフマラソン参加者の心停止発症率は他の活動的身体運動と同等またはそれ以下:NEJMより

New England Journal of Medicine 1月12日号より

Cardiac Arrest during Long-Distance Running Races
N Engl J Med 2012; 366:130-140


参加者年間200万人と言われる全米の長距離走大会(マラソンまたはハーフマラソン)参加者のうち、心停止をきたした人の特徴に関する研究

方法:
・2000年1月から2010年3月までにアメリカ合衆国で開催されたマラソンおよびハーフマラソンにおいて、レース中または終了1時間以内に生じた心停止例を対象

・蘇生成功例では本人へのインタビュー、非成功例では親類へのインタービューあるいはカルテ、死後のデータにより心停止例の臨床的特徴を解析

結果;
1)1090万人の走者のうち心停止例は59人(平均年齢42±13歳、平均51歳、10万人あたり0.54人;95%CI,0.41-0.70)

2)心血管疾患が心停止の主原因;肥大型心筋症、虚血性心疾患

3)心停止発症率はマラソン中(10万人中1.01)がハーフマラソン中(10万人中0.27)より明らかに多い

4)男性が女性より有意に多い

5)男性マラソン走者の高リスク例では最近の5年間の方がその前の5年間より発症率が高い(0.71vs.2.03人/10万人; P=0.01)

6)心停止59例中42例71%は致死的

7)完全な臨床記録が残っている31例においては、バイスタンダー心肺蘇生および、肥大型心筋症以外が事前に診断されていたことが生存に関する強い予測因子

結論:マラソンおよびハーフマラソンの心停止と突然死の全リスクは低い。心停止には、肥大型心筋症、虚血性心疾患が最も寄与しており、男性マラソン走者に最も起こりやすい。最近過去5年間の発症率は高い

###マラソンまたはハーフマラソン中の心停止発症率は10万人あたり0.54人とのことです。筆者らはこの数字はその他の活動的な身体活動同等かまたははそれ以下であるとしています。事実、以前のブログで扱った一般市民のスポーツ関連突然死のデータでも、100万人あたり4.6人とほぼ同等の発症率を示しています。

原因は肥大型心筋症、虚血性心疾患が多く、男性マラソン走者に多いとのことです。特にこの層の方々がマラソン前にスクリーニング検査を受けておくべきかが最も問題かともいます。そうした事前検査の有効性に関するエビデンズはまだないと思われますが、この論文を見るとちょうど自分が50台男性ですので、自分がもしマラソンをするなら(そういうことは間違ってもないですが)最低限心電図と心エコー、できれば運動負荷心電図は受けようかと思わせます。(アスリートでさえも事前心電図スクリーニングは無効とのデータ(こちら)もありますが。。。)
by dobashinaika | 2012-01-13 22:42 | 心臓突然死 | Comments(0)

無症候性心房細動と脳梗塞リスク:NEJM, ASSERT研究より

New England Journal of Medicine 1月12日号より

Subclinical Atrial Fibrillation and the Risk of Stroke
N Engl J Med 2012; 366:120-129


ペースメーカーまたはICD植え込み患者で記録される無症候性心房性頻脈性不整脈の頻度および脳梗塞リスクとの関係に関する検討(ASSERT研究:23カ国の多施設共同研究)

P:65歳以上の高血圧患者で,登録前8週間以内にdual-chamberペースメーカー(95%)または植え込み型除細動器(ICD)(5%) 植え込み術を施行された患者。心房細動、粗動既往者は除く

E:登録後3ヶ月以内に心房性頻脈性不整脈(190/分以上、6分以上持続)が記録された例

C:上記心房性頻脈性不整脈が記録されなかった例

O:一次エンドポイント=脳梗塞または全身性塞栓。二次エンドポイント=血管死、心筋梗塞、脳卒中、体表心電図での心房性頻脈性不整脈の記録;2.5年間追跡

注)3ヶ月後に心房オーバードライブペーシングを施行する群と非施行群とにランダム割り付けして,6ヶ月間の心房細動予防効果もみた

結果;
1)無症候性の心房性頻脈性不整脈は261例10.1%に認められた

2)頻脈群は非頻脈群に比べ、臨床上認められる心房細動の発生が有意に多い(ハザード比5.56; 95%Ci, 3.78-8.17;P<0.001)

3)頻脈群は非頻脈群に比べ、脳梗塞/全身塞栓症の発生が有意に多い(ハザード比2.49; 95%Ci, 1.28-4.85;P=0.007)

4)一次エンドポイントを認めた51例中11例は3ヶ月以内に心房頻脈性不整脈を認めていた

5)無症候性心房性不整脈の脳梗塞/全身塞栓症の住民寄与リスクは13%

6)無症候性心房性不整脈は、各種因子補正後も一次エンドポイントの予測能あり(ハザード比2.50;95%CI, 1.28-4.89; P=0.008)

7)心房オーバードライブペーシングは心房細動を抑制しなかった

結論:ペースメーカー患者において、無症候性心房性頻脈性不整脈は頻繁に起こっており、脳梗塞/全身塞栓症のリスク増加に明らかに関係していた。

###Discussionでの追加データとして、上記の心房性頻脈性不整脈は2.5年追跡では34.7%にみられ、心房性頻脈性不整脈がある人の15.7%がその後臨床的な心房細動が認められるようになり、植え込み後にこの不整脈が認められる平均日数は36日目であることが追記されています。

これまでもペースメーカー患者で記録された無症候性心房細動の報告はありますが、このような多数例で、しかも脳梗塞との有意な関係を明らかにした論文は初めてかと思われます。ペースメーカーの術後点検をしていると、時にこのような短時間のハイレートエピソードを認めることがありますが、今後そうした患者さんにも抗凝固療法を考える必要ありと言うことでしょうか?

Editorialで述べられていますが、そもそも6分間程度の心房細動が塞栓症を生じるかという問題があります。このような頻脈を有する例はCHADS2スコアも高い例が多いからかもしれません。また本論文はペースメーカー症例ですので、元々心房細動が生じやすい素因のある患者さんが多く含まれていることも考慮に入れる必要はあります。

ペースメーカー患者でなくても65歳以上の高血圧患者では、10%とは行かないと思いますが、数%の頻度で短時間の心房細動エピソード位はあるということが推察されます。この層は無治療脳塞栓例の候補者となるものと思われますが、その層に抗凝固療法を行うのか、ということはこの論文から敷衍される大きな問題だろうと思われます。

本文中の結果の中で、CHADS2スコア2点を越えるとハザード比がより高率になるようなので、何かの拍子に短時間の心房頻拍が認められた患者さんでは、現実的にはやはりスコアを考えながら、頻回にホルターなどを行い、長めの発作のある方は抗凝固療法を考えると言うのが、現時点の落としどころかなと思います。

なお付け足しのように心房オーバードライブペーシングは心房細動予防に無効だったことが占められています。これもかなり大きな問題ですので、別の機会にアップします。
by dobashinaika | 2012-01-12 16:16 | 心房細動:診断 | Comments(0)

ふたたび心筋虚血に関するダビガトランとワーファリンの比較:RE-LY試験のサブ解析全文

一昨日ご紹介したRE-LY試験の心筋梗塞をアウトカムとしたサブ解析ですが、PDF版では全文読むことができるようです。

http://circ.ahajournals.org/content/early/2012/01/03/CIRCULATIONAHA.111.055970.full.pdf

これによりますと「”FDAによりリクエストされて”、オリジナルの所見がデータの反復解析の後に修正され、その結果以前報告されていなかった臨床的心筋梗塞4例と無症候性心筋梗塞28例が認められた」となっています。

ですので、臨床的MI(この論文の定義では1)症状または心電図ST変化 2)トロポニンまたはCK-MB上昇 3)Q波のうち2つを満たす)の数も元のRE-LYのときとは変わってしまい、有意差なしとなっているようです。

昨日紹介したArchives of Internal Medcineの論文も早々に引用されており、「対照群に偽薬、ワーファリン、エノキサパリンが含まれているので、より詳細な検討が必要」と評されています。

個人的には、ワーファリンの心筋虚血予防効果を示す報告はあるので、ワーファリンに負けることはあるにせよ、偽薬対象でも分が悪いデータが出ているとなると考えさせられるものがあります。

こういう問題こそ、リアルワールドの登録研究や症例対照研究で解決すべきですね。

早く集合知が欲しい!ですね。
by dobashinaika | 2012-01-11 23:12 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ダビガトランは急性冠イベントリスクを高める:Arch Intern Med誌のメタ解析より

Archives of Internal Medcine1月9日オンライン版より

Dabigatran Association With Higher Risk of Acute Coronary Events
Meta-analysis of Noninferiority Randomized Controlled Trials
Arch Intern Med. 2012;172(5):397-402


ダビガトランの急性冠症候群リスクに関するメタ解析(非劣性RCT)

・PubMed,Scopus,the Web of Scienceからダビガトランを対象とし、二次エンドポイントに心筋梗塞または急性冠症候群を設定しているRCTを検索
・Fixed-effects Mantel-Haenszelテストを用いて解析

結果:
1)7つの試験を抽出(症例30,514例):2試験は心房細動の脳梗塞予防、1試験は急性静脈血栓塞栓症、1試験は急性冠症候群、3試験は深部静脈血栓症の短期成績

2)ダビガトラン群はコントロール群(ワーファリン、エノキサパリン、プラセボなど)に比べ有意に心筋梗塞、急性冠症候群多し:ダビ群vs. コントロール群=1.19%vs. 0.79%, ORM-H, 1.33; 95% CI, 1.03-1.71; P = .03)

3)このリスクはRE-LY試験でのオッズ比1.27とほぼ同等。短期成績をアウトカムとした試験を除いた結果(オッズ比1.33)とも同等

4)リスクはすべての解析でheterogenousではなく、別な手法を用いても同様の結果であった。

結論:ダビガトランは、様々な対象の異なる試験における広い対象において心筋梗塞、急性冠症候群のリスク増加に関係があった。臨床医はダビガトラン使用においてこれら重篤な害の可能性に関して考慮すべき。

###昨日のCirculationのRE-LYサブ解析とは正反対の結論です。こちらは心房細動以外の対象も含めてのダビガトランに関連した大規模試験での虚血性心疾患に関するメタ解析です。

昨日のブログではあっさりコメントしてしまいましたが、ダビガトランの虚血性心疾患リスクを巡る経緯は以下の通りです。

1)大本のRE-LY試験:こちらのTable2をみると「心筋梗塞」はダビガトラン110が0.72%/年、150が0.74%/年,ワーファリンが0.35%/年で、ダビガトラン150mg vs. ワーファリンはオッズ比1.38 (95%CI,1.00-1.91,p=0.048)で有意にダビ150で多い

2)その後2010年に出た修正論文での心筋梗塞発症率は、ダビガトラン110が0.82%/年、150が0.81%/年,ワーファリンが0.64%/年で、ダビガトラン150mg vs. ワーファリンはオッズ比1.27 (95%CI,0.94-1.71,p=0.12)で有意差がなくなった。
これは、新たにRE-LY試験対象者の心電図を見直したところ、無症候性かつ心電図にQ波が認められた28例を新たにデータに追加したため。

3)昨日のブログのCirculation論文は、上記の修正に、さらに複合イベントやそれらのNet clinical benefitなどをデータも追加して、やはりダビガトランはそうしたリスクを増やさない、と結論づけた。

どうでしょうか?あとから心電図を見直したら、無症候性Q波が認められたので、虚血性心疾患イベントを数え直したというのは、どう考えれば良いのでしょう?こうした患者さんは冠動脈の所見はもとより、エコー、シンチでの虚血の評価、心筋逸脱酵素の上昇の有無等は問われていないようです。しかも新しいCirculation論文では新たに複合イベントなども持ち出してダビガトランのリスクが少ないことが強調されています。

この論文が出た同じタイミングで、このメタ解析が出たと言うわけです。
現時点で、こちらのメタ解析をより信頼したくなるように思いますが、皆様いかがですか?
なお本論文でも、心筋虚血がダビガトランで増えるメカニズムについては明らかな仮説は示されていないようです。
by dobashinaika | 2012-01-10 23:03 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

心筋虚血に関するダビガトランとワーファリンの比較:RE-LY試験サブ解析より

Circulation1月3日オンライン版より

Myocardial Ischemic Events in Patients with Atrial Fibrillation Treated with Dabigatran or Warfarin in the RE-LY Trial

RE-LY試験のデータから、虚血性心疾患イベント発生をダビガトランとワーファリンとで比較検討した論文

P:RE-LY試験登録患者(こちら

E:ダビガトラン150mgまたは110mgBID

C:ワーファリン

O:心筋梗塞、不安定狭心症、心停止、心臓死,イベンドのNet clinical benefit(全脳卒中、全身性塞栓、心筋梗塞、肺塞栓,大出血、全死亡)

結果:
1)心筋梗塞;ダビ110,ダビ150 vs. ワーファリン群=0.82% (ハザード比1.29、95%CI0.96-1.75 ,p=0.09)、0.81% (ハザード比1.27、95%CI0.94-1.71, p=0.12)、 vs. 0.64%

2)心筋梗塞+不安定狭心症+心停止+心臓死:ダビ110,ダビ150 vs. ワーファリン群=3.16%/年 (ハザード比0.93、95%CI0.80-1.06)、3.33%/年 (ハザード比0.98、95%CI0.85-1.12)、 vs. 3.41%/年

3)Net clinical benefit:ダビ110,ダビ150 vs. ワーファリン群=7.34%/年 (ハザード比0.92、95%CI0.81-1.01)、7.11%/年 (ハザード比0.90、95%CI0.82-0.99, p=0.02)、 vs. 7.91 %/年

4)ダビガトランvs.ワーファリンの相対リスクは虚血性心疾患イベントの既往の有無に無関係

結論:心筋梗塞はダビガトラン群とワーファリン群とで明らかな差異はなかった。それだけでなく、他の心筋虚血イベントにおいては(ダビ群での)増加も見られなかった。ダビガトランの効果は心筋虚血リスクの高低に関わらず不変であった。

###心筋梗塞が、統計的有意差はないとはいえ、ダビガトラン群でやや多いのが気になります。複合イベントとなると,脳梗塞、脳出血両者がダビガトラン群で低いことで相殺された形になっています。先日のコントラバーシで反対派が、ダビガトランへの懸念として少し触れていた点でもありますね。
by dobashinaika | 2012-01-09 19:45 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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