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心房細動の心拍数を緩やかにコントロールしても心臓に不都合なリモデリングは来さない:JACCより

Journal of American College of Cardiology 8月23日号より

Effect of Lenient Versus Strict Rate Control on Cardiac Remodeling in Patients With Atrial FibrillationData of the RACE II (RAte Control Efficacy in permanent atrial fibrillation II) Study

J Am Coll Cardiol, 2011; 58:942-949

永続性心房細動の目標心拍数を緩やかに(lenient)設定した場合と厳しく(strict)設定した場合とで、リモデリングの指標に差があるかどうかを比較した研究:RACEII試験のデータより


P:患者)オランダの33医療施設で以下の基準を満たした心房細動患者614名。基準:12か月以上続いた永続性心房細動、80歳以下、安静時平均心拍数80/分以上、抗凝固療法施行。


E;介入)目標心拍数を安静時110/分未満に設定した緩やかな(lenient)コントロール群261名


C:対照)目標心拍数を安静時80未満、中等度運動時110未満に設定した厳格なコントロール群256名

O:結果)心エコー上の心房、心室のリモデリング指標;左房径、左房容積、左室拡張末期径)をベースライン期とフォローアップ期で施行


結果:
1)ベースラインの指標に差なし
2)どちらの群でもベースライン期とフォローアップ期で明らかに不都合なリモデリングは認められず
3)心拍数が持続的に80~100であった例と80未満の例とで各指標に差なし
4)緩やかな心拍数は、左房径(1.6mm増, p=0.09)、左室拡張末期径(1.1mm増, p=o.23)に影響与えず
5)女性であることは、左房径(2.4mm増, p=0.02)、左室拡張末期径(6.5mm増, p<0.0001)増加の独立危険因子


結論:緩やかな心拍数コントロールは永続性心房細動の負のリモデリングに関与せず、女性であることが関係した。


###その他、本文では弁膜症、心不全入院歴、BMI、レニンアンジオテンシン系抑制薬使用が左室拡張末期径増加の独立危険因子であるとしています。この論文結果を単純に受け取れば、心拍数93くらいでRAS抑制薬を使っておけば左房拡大,左房負荷は防げると言うことになります。
緩やかに心拍数コントロールをても負のリモデリングが起きない理由として、実際のレートの差は10/分くらいしかなく、特に100/分以上の例が少なかったこと、RAS抑制薬がよく使われていたことなどが考察としてあげられています。女性であることがリモデリングを促進することについては、閉経後の女性ホルモン低下による炎症の促進、再分極異常などが挙げられています。
RAS抑制薬がエコー上のリモデリンングを抑制したとのデータは、最近すっかり陽の目を見ない心房細動におけるRAS抑制薬に久々に振られた話題ですが、後付け解析なので注意は必要です。


RACE IIに関する本ブログはこちら、元論文はこちら
by dobashinaika | 2011-08-18 22:37 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

日本の心房細動の人の予後:Journal of Cardiologyより

Journal of cardiology8月4日オンライン版より

Recent mortality of Japanese patients with atrial fibrillation in an urban city of Tokyo

東京にある心臓血管研究所の心房細動新患患者の予後を検討したコホート研究

・心臓血管研究所を2004年から2009年までに受診した新患13,228人のコホートを追跡
・年齢等補正前の心房細動患者の10万人年あたりの全死亡は1091人、脳卒中97人、心血管死727人
・年齢補正後は各317人、16人、238人
・年齢補正後の心房細動の全死亡における相対危険は1.7

結論:本研究は東京の心房細動患者の特徴や死亡率の最新データであり、心房細動にまつわる問題に対し基本的なデータとなる

###病院通院者対象ですので、一般市民対象より基礎疾患その他で予後は落ちますが、抗凝固療法等の施行は改善要素となります(追跡率等も関係)。例えば代表的な一般コホート対象のフラミンガム研究では心房細動がある人は無い人の1.9倍(男)、1.5倍(女)の死亡リスクがあるとのことで、ほぼ本研究と同等となっています。それにしても、心研のデータベースは日本人の心房細動研究に不可欠な存在ですね。

なお、今後は「心房細動患者」という言葉はなるべく使わず、「心房細動の人」ということにします。理由はツイッターなどでつぶやいてます。
by dobashinaika | 2011-08-17 19:56 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

プラザキサ処方時、「心房細動=脳の疾患」という視点

8月12日の厚労省プレスリリースと日本ベーリンガーインゲルハイムからのプラザキサに関する安全性速報および日本循環器学会からの緊急ステートメントは、われわれが心房細動の抗凝固療法を行うことの難しさを大切さを再認識させるに十分でした。
そのことは2日前のブログに書きましたが、私がもう一つ驚いたことは、発売5ヶ月で既に推定6万4千人もの患者さんにプラザキサが処方されているということです。確かに私の親しいプライマリケア医でも(元々病院勤務時代は非循環器専門)、すでに驚くほどたくさん処方されている先生もおられます。2週間処方や高薬価はあまり縛りにはなっていないようにも感じられます。

これだけの数の処方は、もちろん循環器専門医でないプライマリケア医からもたくさん処方されていることを意味すると思われます。そのパターンはそれぞれでしょうが、ワーファリンからの切り替え、これまでアスピリンでお茶を濁していた方の切り替え、適応はあったが面倒でワーファリンを導入していなかった人への新規投与等が多いと思われます。

たしかにワーファリンに比べれば、食事制限、他剤併用制限が無く、採血モニタリングの必要が無い簡便な薬であることは間違いありません。しかしながら一方ワーファリンに代表される抗凝固薬は厚生労働科学研究の「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアルにおいて「ハイリスク薬」と定義されており、日本薬剤師会も薬学的管理指導に関してガイドラインを出しているような、処方上特に注意が必要な薬品に位置づけられる薬です。このハイリスク薬には抗悪性腫瘍剤、不整脈用剤、抗てんかん剤、ジギタリス剤、テオフィリン製剤、精神神経用剤、糖尿病用薬、すい臓ホルモン剤、免疫抑制剤、抗HIV薬が含まれます。

プライマリケア医の処方する薬品は、特殊な専門のあるクリニックを除き、多くはコモンな疾患に対するものがほとんどです。降圧薬、スタチン製剤、糖尿病薬、骨粗鬆症、認知症薬、消化器系薬剤、抗菌薬、NSAID、抗アレルギー薬などなど。これらは、特に重篤な副作用を認めることもありますが、抗凝固薬のように0.5~1%の頻度で生命に関わるような大出血をきたすほどの薬はそう多くはありません。またプラザキサ同様、腎機能や併用薬剤に関しては他のコモン薬剤でも注意が必要な場合は多いですが、それを怠った場合、重篤な予想される副作用の重篤度は群を抜いています。またなにより他のコモン薬剤では長年の経験の蓄積でそれほど危険を冒さず処方できるのに対し、新薬プラザキサにはまだそうした経験知の蓄積がありません。

もう一つ、プライマリケア医は日頃心房細動を見ると、どうしても動悸を押さえる、または心拍数を押さえることに目が向きがちです。速くて不規則な心電図を目の前にすると、そちらの方がこの疾患の本質であるかのように誤解しがちです。その分抗凝固薬投与に関しては処方するにしてもしないにしても、比較的軽く考えられているように思います。山下武志先生は自身の著書で、心房細動では「心電図を見ない」ようにする事を提唱しています。これを読んだときは極論のようにも感じる一方、なるほど至言と思いました。私は、新規抗凝固薬時代に入ったこのときこそ極論として、次のように言いたいと思います。「心房細動は心臓の疾患ではない。脳の疾患である」。もちろん正確には暴論であり、脳血管疾患のリスク因子にすぎない訳ですが、AFFIRM試験以来、心房細動であること自体はたいして重要ではないことが明白になっており、心房細動を見たら、まず真っ先に脳に思いを馳せるべきだと思われます。そのくらいのしっかりした認識でプラザキサを処方して行きたいということです。

プラザキサを処方する際は、現時点では、簡便であることに心を奪われてはいけないと思います。副作用が重篤で、経験知の蓄積が少ない薬であることをふまえた上で,それでもしっかりと適応を考え、適切に使って行きたいです。

ちなみに当院は、適応と思われる通院患者さん約150人とお話し合いし、現在約20人に処方中です。2週間処方の縛りが処方しない多くの原因となっています。
by dobashinaika | 2011-08-16 10:35 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

心房細動の新規抗凝固薬リバロキサバンに関する大規模試験ROCKT-AF:NEJMより

New England Journal of Medicine 8月10日オンライン版より

Rivaroxaban versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation

45カ国、1178施設が参加した新規Xa阻害薬リバロキサバンのワーファリンを対照とした大規模試験(ROCKET-AF)

P:
非弁膜症性心房細動患者14,264例(脳卒中、全身性塞栓、CHADS2スコア2点以上、のいずれか),追跡期間中央値:約700日

E:リバロキサバン20mg(クレアチニンクリアランス30~49では15mg)

C:ワーファリン(INR2~3にコントロール)

O:一次エンドポイント=脳卒中(梗塞、出血),全身性塞栓。二次エンドポイント=脳梗塞,全身性塞栓、心血管死、心筋梗塞

結果:
1)中途離脱例:リバロキサバン23.9%、ワーファリン22.4%

2)参加者平均年齢73歳、女性39.7%。高血圧90%、心不全62.5%、糖尿病40.0%、脳卒中/TIA、全身性塞栓の既往54.8%。CHADSスコア平均:リバロキサバン群3.5、ワーファリン群3.0

3)一次エンドポイント(on treatment解析):非劣性の比較;リバロキサバンvs. ワーファリン=1.7%/年vs. 2.2%/年 (ハザード比0.79; 95% CI 0.66 to 0.96; P<0.001)、優性の比較;リバロキサバンvs. ワーファリン=1.7%/年vs. 2.2%/年 (ハザード比0.79; 95% CI, 0.65 to 0.95; P=0.01)

4)一次エンドポイント(ITT解析):リバロキサバンvs. ワーファリン=2.1%/年vs. 2.4%/年 (ハザード比0.88; 95% CI 0.74 to 1.03; P<0.001非劣性、P=0.12優性)

5)大出血あるいは小出血(on treatment解析):リバロキサバンvs. ワーファリン=14.9%/年vs. 14.5%/年 (ハザード比1.03; 95% CI 0.96 to 1.11; P=0.44)

6)頭蓋内出血 (0.5% vs. 0.7%, P=0.02) 、致死的出血(0.2% vs. 0.5%, P=0.003)はリバロキサバン群で有意に少なかった
心房細動の新規抗凝固薬リバロキサバンに関する大規模試験ROCKT-AF:NEJMより_a0119856_957531.gif


結論:脳卒中、全身性塞栓に関してリバロキサバンはワーファリンに対して非劣性を示した。大出血においても差はなく、頭蓋内出血、致死的出血はリバロキサバンで有意に少なかった。

###2010年のAHAで発表された内容の論文化です。ダビガトランが話題のさなかのタイムリー(?)な発表です。

当初から指摘されているように解析方法が複雑な試験です。まず服薬を途中でやめてしまった例が22~23%も見られます。ダビガトランのRE-LY試験では16~20%(2年)でした。このため、on treatment解析すなわち服薬中止例を含む脱落群を除外した例同士が比較されています。ところがこの解析にも2つの方法が採用されていて、まず非劣性比較では、プロトコール通りに服薬していた例同士の比較(per protocol解析)がされているのに対し、優性比較では被験薬を一度でも服用しいた患者を対照にしています(安全性解析もこの方法)。

ITT解析の欠点のひとつに、この試験のように脱落例が多い場合実際服薬していない人も服薬群に入れて解析されるバイアスがかかる点があります。一方on treatment解析の欠点のひとつとして、脱落していない群にはそれなりバイアスがかかるため、参加者を二群にランダマイズした意味が無くなる(患者背景などが異なってしまう)ということがあります。いわゆるリアルワールドでは、最初のもくろみ通りに100%の患者さんが薬を飲み続けることはありませんので、ITT解析の方がむしろ実臨床に即しているとも言えます。その意味で優性の比較に関する本試験の解釈にはかなり注意が必要です。

RE-LY試験との違いとしては1)厳格な二重盲検試験(RE-LYはダビラトラン−ワーファリン間はオープンラベル)。2)高リスク例が多い:本例は脳梗塞既往が50%、CHADS2スコア平均3.5点(RE-LYは2.1点)。3)INR管理が困難例が多い:TTR55%(RE-LY64%)。などの重要なポイントがあり、一概に2薬剤を比較することはできません。優劣を付けるには両者の直接比較が必要です。

ダビガトランと同様に、相対的に消化管出血が多く、頭蓋内出血がワーファリンより少なく、Editorialでは脳血管床に存在する組織因子や第VIIa因子をワーファリンのように不活化させないからだと述べられています。

全体としては、ワーファリンより優れているかどうかが不明。少なくとも効果、安全性の点でワーファリンより劣ってはいない。といった印象です。腎機能との関連、消化器系の副作用、出血したときの対処法(特に1日1回の薬なので)、などまだ明らかにされていない点も多いので、これからがある意味楽しみです。薬価もですね。日本ではバイエル薬品が販売に関連しています。なお当院通院された患者さんもこの薬の第II相試験にご協力いただいております。その節はご協力ありがとうございました。

関連サイト
循環器トライアルデータベース
J-ROCKT試験
by dobashinaika | 2011-08-15 10:05 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)

抗凝固薬を正しく怖がり、正しく使う:プラザキサの副作用に関する考察

ご存知のように、プラザキサに関し,日本ベーリンガーインゲルハイム社から安全性速報(ブルーレター)が出されました。発売後8月11日までの約5月間で、推定6万4千人の処方例のうち重篤な出血性副作用が81例(0.12%)、因果関係が否定できない死亡例が5例(0.0078%)認められました。

このブルーレターを見て、処方するのを控えようという気分になっている臨床医の先生もおられるかと思います。また新聞報道を読まれて、お盆開けすぐにでも主治医に相談しようと不安に思う患者さんも多いことかと思います。

プラザキサが世に出ることになった唯一の論拠、RE-LY試験を見ますと平均2年間追跡で生命に関わる出血はダビガトラン110mg1.22%/年、ダビガトラン150mg1.45%、ワーファリン1.80%でした(各約6000例ずつ対象)。日本人のみ対象のサブ解析では同様の大出血は各0.69%、2.0%、1.33%でした。出血そのものによる死亡例の記載まではありませんでしたが、腎機能低下例あるいは他の抗血小板薬併用例は除外されていることも考えてこの数字だけ見ますと、市販後5ヶ月で0.12%の重篤副作用は多いようにはとれないかもしれません。(もちろん、報告に挙ってこない重篤な出血例の存在も考慮する必要はあります)(ちなみにRE-LYと同等またはより高リスク層を対象にしたActive-W試験をみますとワーファリン投与例のみでの出血による死亡率は1.24%/年となっています。)

元来抗凝固薬は、このように大出血というきわめて重篤な副作用が不可避な薬剤です。大規模試験において、そのリスクを上回る塞栓症予防というベネフィットが認められるため全世界で使用されていることは言うまでもありません。

一方発売後5ヶ月で5例もの死亡例が報告される新薬は、心房細動のようなコモンな疾患の薬剤としてはあまり記憶にありません。われわれはこの際、しばらくプラザキサの処方を控えて様子を見るべきなのでしょうか?それとも、ある程度の出血は不可避であると割り切って処方すべきなのでしょうか?

われわれ臨床医は、こういうとき情緒や認知バイアスにとらわれず、やはりなるべく理性を働かせて行動すべきと思います。

今回の死亡例5例を詳しく見てみましょう。死亡した5例は、6月の安全性情報で報告された1例を含みます。気がついた特徴を挙げます。
1)4例が女性
2)高齢者:70代1人、80代3人、100歳代1人
3)全例腎機能低下:3例はクレアチニンクリアランス30未満(No2,3,4はeGFRから換算)
4)他の抗血小板薬使用3例:2例はクレアチニンクリアランス30以上
5)2例は消化管出血(おそらくもう2例も、ただし失血、出血性ショックとの記載)
6)ほとんどが服薬後9〜15日

特に気になるポイントは2点、腎機能アスピリン併用です。ご存知のようにプラザキサは腎排泄薬であり、添付文書でもクレアチニンクリアランス30未満では禁忌です。死亡5例中3例がその掟を破られて使われたようです。

また他の2例はアスピリンが併用されていました。12日に出された日本循環器学会の緊急ステートメントあるいは添付文書ではワーファリンからの切り替えについては述べられていますが、アスピリンからの切り替え法には触れていません。よく痛感するのは、循環器非専門医の心房細動患者さんへのアスピリン処方のなんと多いことかということです。上記2例の詳細は不明ですが、プラザキサもアスピリンと同様の感覚ですんなり切り替えられている可能性があると思われます。アスピリンがしっかり体内から消失しない時期にプラザキサが投与されるようなことが行われていないでしょうか?またアスピリン感覚で腎機能をあまりチェックせず処方されていることはないでしょうか?

私たちは、プラザキサの副作用に慌て恐れる前に、まず上記のように「何がしてはいけないことなのか」を十分押さえることが必要と思います。具体的にはまず上記の2点、腎機能と他薬からの切り替え法です。プラザキサは、ワーファリンに比べれば大変使いやすい薬とは言われています。しかしながら上記の腎機能、併用薬、薬価(来年3月までは処方日数も)その他を総合的に判断した場合、ワーファリンより使いやすいとは一概には言えず、それぞれの臨床医に依存していると思われます。それこそ、自身の経験や力量、診療環境、そして患者さんの意向の3要素を良く考えて、どちらにするか考えるべきだと思います。さらに、抗凝固薬は降圧薬やスタチン製剤、糖尿病の薬などプライマリケアの場で慣れ親しんでいる薬とは,副作用の点で別次元の重篤性を伴う薬であることも十分認識しておく必要があると思われます。

こうしたことのプライマリケアの現場への啓発が、今後さらに学会、製薬会社を挙げてなされるべきであり、また日本人の臨床データの蓄積や大規模試験の必要性もさらに高まるものと思われます。

出血副作用は、ゼロリスクにすることは不可能。しかしながら、それを上回るベネフィットに思いをいたし、できるかぎりリスクを小さくするような努力こそが不可避。プラザキサに限らず抗凝固薬の原則に立ち返って行動したいと思います。
by dobashinaika | 2011-08-14 00:24 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

プラザキサに関する厚労省プレスリリース、安全性速報、日本循環器学会の緊急ステートメント

帰省していたので、情報発信遅れています。ここ1〜2日、プラザキサ関係で大きな動きがありました。

8月12日、厚生労働省から「血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」服用患者での 重篤な出血に関する注意喚起について」と題するプレスリリースがでました。

日本ベーリンガーインゲルハイム社からの安全性速報(ブルーレター)でその根拠となる症例報告と添付文書の改訂(警告の追加)見ることできます。

これを受けた形と思われますが、やはり8月12日付けで、日本循環器学会から「心房細動における抗血栓療法に関する緊急ステートメント」が出されました。

###こういうときこそ、あわてず、プラザキサ全面使用中止などという極端に走らず、「どのようなことをしてはいけないか」を十分考えることが大切です。「塞栓症/出血」を正しく怖がり、正しく使うようにしたいものです。

各論を準備中ですが、なにぶん帰省先なので、少しお待ちを(汗)
by dobashinaika | 2011-08-13 19:41 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

心房細動のない冠動脈疾患患者の脳梗塞予測にもCHADS2スコアは有効:American Heart Journalより

American Heart Journal 8月10日オンライン版より

The CHADS2 score predicts ischemic stroke in the absence of atrial fibrillation among subjects with coronary heart disease: Data from the Heart and Soul Study

心房細動のない冠動脈疾患例の脳梗塞の予測にCHADS2スコアが有効どうかの検討:The Heart and Soul Study

・心房細動なし、抗凝固療法なし、安定冠動脈疾患の916例対象
・6.4年のフォローで、脳梗塞/TIAまでの時間を検討

・40例、0.69/100人年で脳梗塞/TIAを認めた
・CHADS2スコア1点以下(低スコア)に比べ、2−3点(中スコア)、4-6点(高スコア)は各種因子補正後も脳梗塞/TIAが多い:中スコア2.4倍、高スコア4.0倍
・このモデルのCHADS2スコアの推計能力(C統計量=0.65)は、心房細動コホートと同等

結論:CHADS2スコアは心房細動のない、安定冠動脈疾患患者の脳梗塞/TIAを予測した。高スコア心房細動なしでのリスクは、抗凝固療法を受けたCHADS2スコア1-2点の心房細動患者と同等。このことは、脳梗塞予防や無症候性心房細動患者のスクリーニングがCHADS"高スコアで虚血性心疾患例で有効であることを示唆する。

###心房細動がなくてもCHADS2スコアによる脳梗塞予測が可能とのことです。そうですね、CHADS2スコアの各因子はそのままほぼ動脈硬化の因子にもなりますので。この脳梗塞はアテローム血栓性が主なのだと思われます。非心房細動高CHADS2では心房細動の検索に力を入れ、心房細動が見つかったらワーファリンですね。見つからないときはアスピリン?
by dobashinaika | 2011-08-10 23:34 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

一般市民のスポーツ関連突然死:Circulationより

Circulation 8月9日号より

Sports-Related Sudden Death in the General Population

一般市民のスポーツ関連突然死に関するフランスのサーベイランス研究

・2005~2010年におけるフランスの救急サービスの報告やメディアのウェブ上のスクリーニングによりスポーツに関連する突然死(10~75歳)を同定した

・スポーツ関連突然死は年間100万人あたり4.6例
・若年者アスリートに生じるケースの6%を占める
・感度分析を用いると、年間100万人あたり5~17例
・90%以上がレクリエーション系スポーツ
・比較的若年(46±15歳)で、男が多い(95%)
・93%で目撃者がいたが、bystander CPRは30.7%にしか行われず
・Bystander CPRとAEDの初期使用はそれぞれ病院からの生還の強力な予測因子:それぞれOR3.73, 2.19

結論:一般市民のスポーツ関連死は,考えられていたよりもかなり多い。多くのケースは目撃者がいるが、bystanderCPRは1/3しかなされていない。こうしたデータや迅速な介入による蘇生率向上は、今後のヘルスサービス立案に応用できる。

###どのような状況での突然死なのか気になります。またどのような人が亡くなったのか、原文に当たってみますのでお待ちください。
by dobashinaika | 2011-08-09 22:43 | 心臓突然死 | Comments(0)

今後10年間の心房細動リスクを計算してくれるアプリ(アンドロイド用) Atrial Fibrillation Calculator

今後10年間の心房細動リスクを計算してくれるアプリ(アンドロイド用)です。元ネタは何でしょうかね。

Atrial Fibrillation Calculator
by dobashinaika | 2011-08-08 00:26 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

左房径は心房細動発作頻度と持続化の予測因子:J-RHYTHM IIスタディより

Heart Rhythm 8月号から

Echocardiographic predictors of frequency of paroxysmal atrial fibrillation (AF) and its progression to persistent AF in hypertensive patients with paroxysmal AF: results from the Japanese Rhythm Management Trial II for Atrial Fibrillation (J-RHYTHM II) Study

心エコーによる高血圧合併心房細動患者の発作性心房細動の頻度および持続化への進展の予測に関する検討:J-RHYTHM IIの結果から

・J−RHYTHM IIスタディに参加した高血圧合併心房細動患者286名対象
・電話伝送心電図での1年間の心房細動の記録日、持続性心房細動への移行(7日以上あるいは電気的除細動)を検討

・左房径10mm増加ごとに心房細動日は6.5日(95%CI:2.7-10.3%)増加
・左房径10mm増加ごとに持続化は1.84倍(1.28-2.67)増加
・年齢、性、他の交絡因子補正後も同じ

結論:左房径が大きいほど心房細動の発作および持続化が起こる。左房径の増加は心房細動の頻度と進展の良好な予測因子

###納得の結果です。塞栓症の予測にはなったのでしょうか?そこが知りたいですね。以前から考えるのですが、エコーの機械は心エコーの機能がつくと値段が格段に違います。プライマリケア用に左房径とEFくらい測れるだけの簡易心エコー搭載のエコー汎用機があったら、もっとプライマリケアの現場で心エコーが普及すると思うのですが。PC医も左房径、EF、MR,AR,TRくらいがわかるだけのトレーニングであればそれほど負担にならないと思います。
by dobashinaika | 2011-08-07 15:24 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

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