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心房細動と心筋梗塞後死亡との関係ー梗塞発症後30日以降出現の心房細動は要注意:Circulationより

Circulation 5月2日オンライン版より

Atrial Fibrillation and Death After Myocardial Infarction
A Community Study


心筋梗塞患者における、心房細動の影響について検討

・ 過去約25年間における心筋梗塞による入院患者3220名の地域住民コホート対象
・ 心筋梗塞前の心房細動は304例、心筋梗塞後の発症は729名(2日以内30%、3~30日16%、30日以降54%)
・ 心筋梗塞の5年間累積発症率は19%で、これは心筋梗塞の発症年に関係なし
・ 6.6年の追跡で1638名が死亡
・ 心房細動は死亡率の増加に関連しており、心筋梗塞の時期や心不全とは無関係 (HR3.77, 95%CI:3.37~4.21)
・ このリスクは心房細動のタイミングに大きく関係した。心筋梗塞発症30日を超えての心房細動は死亡率に大きく関係した:2日以内発症のHRは1.63倍、3~30日以内発症は1.81倍、30日を超えての発症は2.58倍。

結論:今回のコホートでは、心筋梗塞後の心房細動発症は多く、死亡リスクを高め、特に発症30日以降の心房細動はリスクが高かった。

###心房細動の発症時期が予後と関係するとの知見が興味深いです。心筋梗塞直後は急性虚血あるいは再還流に伴うものですが、30日以降の発症には、心筋線維化が関与しており、より心筋ダメージが強い例と考えられると思われます。
最近のメタ解析も参照ください。
by dobashinaika | 2011-05-05 09:14 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

プラザキサ低用量処方をどう考えるか

若紫さんのブログにインスパイヤされ、考えてみました。

今後、プラザキサの処方数は確実に増加するでしょうが、そこで間違いなく問題となるのが、低用量110mgx2/日の適応です。

われわれの手がかりは、添付文書とエビデンスです。
添付文書では、以下のような人に110mgを考慮すること、となっています
1)中等度の腎障害(Ccr30-50)
2)P-糖蛋白阻害剤(アミオダロン、ベラパミルなど)併用者
3)70歳以上
4)消化管出血の既往を有する患者

エビデンスとしては、RE-LY試験が唯一の大規模試験です。
同試験の用量に関する知見として、110mgと150mgの比較では
1)一次エンドポイント(脳梗塞/脳出血/全身性塞栓)は150mgが有意に良好(ハザード比0.72, P<0.0049)
2)大出血は150mgが多いが有意差はなし(110mg:2.87%/年vs. 150mg: 3.32%/年)
3)消化管出血は150mgが有意に多い(110mg:1.12%/年vs. 150mg: 1.51%/年, P=0.007)

一方RE-LY試験のサブグループ解析から
1)75歳以上では、一次エンドポイントは150mg群で低く(1.9%/年 vs. 1.4%/年)、大出血は110mg群の方が低い(4.4%/年 vs. 5.1%/年)
2)CCr30~50の群では、一次エンドポイントは150mg群で低く(2.4%/年 vs. 1.3%/年)、大出血は同等(5.7%/年 vs. 5.5%/年)
3)RE-LYでは大出血の既往を持った人が57%だったが、再出血の頻度は同等

また、日本人を対象としたRE-LYのサブ解析では、一次エンドポイント、大出血とも本試験とほぼ同様の結果でした。

こうしてみると、RE-LYおよびそのサブ解析からはNEJMのPERSPECTIVEで述べられているように、腎機能や出血の既往を理由に低用量を選択する根拠は薄いようにも思えます。75歳以上は高用量の場合確かに出血がやや多いのですが、添付文書の「70歳」の根拠はこれからは導けません。

詳しい事情はわかりようもありませんが、日本の添付文書は、FDAのようなエビデンス重視ではなくおそらく過去の経験則、病態生理から導出されたものと思われます。この背景には日本の医師および患者が持つ、出血に対するリスク認知が深くかかわっているように思います。

多くの医師は110mgのオプションがあることである意味とても安心しているのではないでしょうか?日本人対象のサブ解析では、INR管理値が本試験より明らかに低めでした。日本人はそもそも、CT等の画像も含めて心象としてインパクトの強い「出血」を嫌う傾向があります。また一般に人は抗凝固薬投与による利得(脳梗塞予防)よりも損失(出血)をより大きく見積もるといういわゆる損失回避性が備わっているとされています。とくに自分の意図した「処方」という行為により生じた損失は、大変大きく感じられると推測されます。

添付文書上は「110mgを考慮する」という表現であり、保険上そうしないと査定されるということはないと思いますが、添付文書のお墨付きもある以上、少なくとも開業医の多くは、添付文書に該当する患者さんには110mgを処方するように思います。出血回避という日本人の心的事情をうまく汲み取ってくれる装置として低用量ダビガトランは、今後機能すると思われます。
by dobashinaika | 2011-05-04 00:36 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

日本人におけるダビガトラン(プラザキサ)の有効性と安全性:RE-LY試験サブ解析より

Circulation Journal 4月号より

Efficacy and Safety of Dabigatran vs. Warfarin in Patients With Atrial Fibrillation
– Sub-Analysis in Japanese Population in RE-LY Trial –

RE-LY試験の日本人コホートだけを対象にしたサブ解析

・ 49施設、326例
・ 患者背景は本試験に比べ脳卒中/全身性塞栓/TIAの既往が多く33.1% vs 21.8%)、心筋梗塞が少ない(5.5% vs 16.6%)
・ INRは2.0未満36.8%、2.0~3.0 57.6%、3.0超5.6%で、本試験(22.2%, 64.4%, 13.5%)よりも低い傾向

・ 脳卒中/全身性塞栓は110mg群2例(1.38%/年),150mg群1例(0.67%/年),warfarin群4例(2.65%/年)(本試験は各1.54%, 1.11%, 1.71%)で各群有意差なし
・ 大出血は8例(5.53%/年),5例(3.33%/年),5例(3.31%/年)(本試験は各2.87%, 3.32%, 3.57%)で各群有意差なし
・ 小出血は24.19%、33.26%、33.14%(本試験は各13.16%, 14.85%, 16.37%)で本試験より多い傾向
・ 消化器症状は21.7%, 27.3%, 10.2%(本試験は各11.8%, 11.3%, 5.8%)で、ワーファリンより多く、また本試験より多い傾向

結論:日本人のサブ解析におけるダビガトランの有効性、安全性は本試験のコホートとほぼ同等の結果

###本試験との違いは小出血と消化器症状が多かったこと、INR管理値は低かったことです。今後ダビガトラン投与時は、消化器症状対策を考える必要があります。
個人的にはINR管理値の低さが大変興味深いです。これに関しては別に考察します。
by dobashinaika | 2011-05-03 11:52 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

カテーテルアブレーション後の心房細動の自然経過と長期成績:Circ Arrhythm Electrophysiolより

Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology 4月14日オンライン版より

Natural History and Long Term Outcomes of Ablated Atrial Fibrillation

(おそらく)クリーブランドのグループからの心房細動アブレーション長期成績の報告です

・2005年にアブレーションを施行した831人を2009年までフォロー
・アブレーション後1年での再発率:23.8%
・それ以後55カ月までの再発率:8.9%
・1年以降再発例では1つ以上の肺静脈‐心房関伝導の復活または右房からのトリガーが55.6%に存在
・最終的に89.9%が臨床的改善あり(79.4%は抗不整脈薬なし、10.5%は抗不整脈薬服用下にコントロール良好)
・4.6%のみ薬剤抵抗性のまま
・アブレーションしたその年に再発がなく、CHADS2スコア2点以下の人では抗凝固薬中止も可能
・合併症は大変少なかった

結論:薬剤抵抗性の心房細動において、長期の洞調律維持及び症状改善目的の肺静脈隔離術は安全で効果的である。一部の患者では抗不整脈薬、抗凝固薬が必要なくなる。

###何回アブレーションしたかはアブストラクトからは不明ですが、12月、1月と続けて発表されたヨーロッパの2大施設のデータと比べてみると、5年後までの再発率は本研究32.7%、ボルドー37%、ハンブルグ20.5%となり、ほぼどの施設も初年度再発が多く、その後は漸減という形です。これらの研究から、このような経験豊富な施設でのアブレーション後心房細動の自然経過はほぼ明らかにされたとみてよいと思われます。
by dobashinaika | 2011-05-02 18:53 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

心房細動の電気的除細動は長期予後とは無関係:AFFIRM studyサブ解析より

Circulaion: Arhythmia and Electrophysiology オンライン版より

Is there an Association Between External Cardioversions and Long Term Mortality and Morbidity - Insights from the AFFIRM Study

・ 心房細動患者において、繰り返し施行した電気的除細動とmortality、morbidityとの関係に関するAFFIRMのサブ解析

・ AFFIRMでは対象4,060人のうち3.5年のフォローで660人(16.3%)が死亡し331人(8.2%)が心臓血管死
・ 低左室駆出率が5.1%、発作性ではない心房細動が41.8%
・ 2460人は電気的除細動を全く受けていなかった
・ 1600人は1回以上の電気的除細動を受けていた
・ 死亡率は除細動なし16.7%、1回16.5%、2回13.5%、3回以上10.4%で有意差なし
・ 心筋梗塞、冠動脈バイパス術、ジゴキシン服用が死亡率に独立して関連あり
・ 電気的除細動は次回フォローアップ受診時までの入院と関連あり(39.3% vs. 5.8%; Estimated odds ratio: 1.39, p<0.0001)

結論:AFFIRMにおいは、電気的除細動と長期死亡率の間に関連なし。入院との関連はあり。ジゴキシン、心筋梗塞、CABGと死亡率が関連あり

###  AFFIRMでは洞調律が維持されている例では抗凝固療法をやめても良いことになっていたため、除細動時に抗凝固療法がなされていたのかは気になりますが、そのことを勘案しても心房細動の電気的除細動程度では予後に影響しなかったとの結論です。電気的除細動には塞栓症、心筋ダメージその他の合併症があり、ICDなどではショックと生存率に負の相関があるとの報告もされています。一方心房細動では除細動後に洞調律を維持することが予後改善につながると信じられた時代もありました。現在そのコンセプトはほぼ否定されていますので、積極的な電気的除細動は、以前より少ないと思われますが、症状の強い方や若年者ではやはり強力なオプションです。ICDに比べれば低出力であり、除細動時の抗凝固療法をきちんとしていれば、除細動の回数は問題ではなく基礎心疾患などが重要である、と解釈されます。
by dobashinaika | 2011-05-01 10:47 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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