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カテゴリ:医療の問題( 21 )

なぜ新薬発売後に重大な副作用が出てしまうのか?

既に報道されておりますように、糖尿病新薬のSGLT2阻害薬における市販後調査で2人の死亡例が報告されたとの報道がなされました。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20141011-OYT1T50075.html?from=fb

対象薬はサノフィと興和が製造販売を手がける「アプルウェイ/デベルザ」と、アストラゼネカなどが販売する「フォシーガ」です。以下のPDFに概要が報告されています。
http://e-mr.sanofi.co.jp/di/information/APWPV999F1.pdf?date=20141012210604
http://med2.astrazeneca.co.jp/product/fxg_report201410.pdf

両者とも、脱水が背景にあり利尿薬を服用しているケースのようです。
もちろん、上記の条件が揃っていても重篤にならないケースも有り、正確な死因は今後の検討がまたれるところです。

しかしながら、同薬は本年4月の発売以来既に日本糖尿病学会から「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」が2回も出され、そのなかで「利尿薬との併用 は推奨されない。」と明記されています。

また別の薬ですが、最近では新規経口抗凝固薬(NOAC)の登場の時にも、最初の市場上梓薬であるプラザキサが発売されて5ヶ月でブルーレターがでて、5例の死亡報告が紹介され、これらはいずれも添付文書から外れた腎機能低下患者に投与されていた例でした。
http://dobashin.exblog.jp/13276881/

これらの新薬は、いずれも製薬会社が莫大な資金を投入して開発し、これまた莫大な資金による第III相臨床試験を経て世に出たものです。どちらもそれまでの治療薬とは異なる新しい機序の薬として、メディアその他で盛大に宣伝されたのは記憶にあたらしいところです。

もちろん市販後調査は全数調査ではありませんし、先行薬でも副作用としての死亡報告はありますので、新薬が既存薬に比べリスク(インパクトx確率)が高いかどうかは、この段階では不明です。

ここで問題にしたいのはリスクの多寡ではなく、添付文書や学会から注意喚起がなされていたのにもかかわらず、どうしてそこから外れた使用がなされてしまうのかということです。こうした新薬の発売当初にどうして毎度のごとくこのような深刻な有害事象が起きてしまうのでしょうか

まず一番目に問題となるのは、やはり上記のような注意喚起がなされているにもかかわらず利尿薬投与下で処方した医師側のあり方でしょう。特に新薬の場合、添付文書をよく把握し、また学会からの情報には敏感になるべきでしょう。

しかし問題の背景はもっと深いものがあると思われます。
こうした新薬は、今言ったように莫大な経費をかけた無作為化比較試験(RCT)を経て、ある程度の臨床的有効性と安全性が保証された上で当局の認可がおります。しかしこの無作為比較試験を主な根拠とした有効性安全性には問題があります。

たとえばNOACのRCTはすでに4つの1万人以上規模のものが結果発表され、認可の最大の根拠となっているわけですが、このRCTというのが現実世界の対象患者とは性質を異にする集団なのです。RCTは厳密な選考基準、除外基準を通って選ばれた患者集団であり、服薬アドヒアランスは良好で、重症合併症や超高齢者の登録は非常に少ないのです。英国のgeneral physician対象の調査では、実際の診療所で処方する患者さんのうちRCTの選択基準に合致する人は56〜74%に過ぎなかったという報告もあります。
http://dobashin.exblog.jp/17009757/

このように、そもそも現実世界の病院診療所の患者さんは、RCTのような整ったプロフィールのひとばかりでない、様々な背景を持った人の集団ですので、実際処方してみたら、予期しなかったような有害事象が出現する可能性が常にあると言わざるを得ません。

以前ものべましたが、こうしたRCTと現実世界のギャップを埋めるものとして登録研究を始めとする観察研究がありますが、SGLT2もNOACもそうした観察研究が出る前のRCTの段階から市場に出回りました。その分野の専門医でない場合、そうしたRCTの選択基準まではチェックしませんし、ある特殊なケースでどのような有害事象が予想されるという点に関して、専門医が感じるような臨床的経験もありません。

もちろん、処方するすべての医師に、処方上の基本的注意事項の把握が求められるのは当然ですが、この問題は、そのような医師側の問題だけでなく、今述べたような新薬の信頼性に関する構造的な問題も、同時にいやそれ以上に考えるべきではないかと思います。

たとえば、ヨーロッパの不整脈学会(EHRA)では、NOACの使い方に関して、ガイドラインとはまた別に、処方の仕方、患者フォローアップの仕方から他薬への切り替え方に至るまで、詳細かつ明確に、実践的な手引書が作られています。
http://www.escardio.org/communities/EHRA/publications/novel-oral-anticoagulants-for-atrial-fibrillation/Pages/welcome.aspx

全部の新薬でという訳にはいかないかもしれませんが、非専門医にも広く処方が求められる今回のような薬では、専門医がまず一定期間使用し、また登録研究がある程度出揃い、上記のようなプラクティカルガイドが専門医の間で作られるようになってから非専門医が初めて処方できるような、一定の規則を設けるのもひとつの方策ではないかと思われます。

そうしたシステムが確立されでもしない限り、非専門医としての基本は、少なくとも「ある一定のコンセンサスが出るまでは非専門医は新薬の処方は、見守りの姿勢」だと思います。

先日のブログで、ノンアドヒアランスの総説を読みましたが、このように薬剤処方の根幹に関わるような問題は、その要因も構造的です。ノンアドヒアランスの原因も、患者のリテラシー不足などといった単一なものではなく、薬そのものの問題、患者側の問題、医師側の問題、医療システムの問題など、さまざまな要因が絡んだ複雑な様相なのであるのが常であり、そのためそれに対する方策もmultimodalにならざるを得ません

新薬有害事象対策も同様で、われわれ医師側も十分慎重な姿勢が求められますが、同時にシステムそのものの問題点へのアプローチがもっと論議されて良いのではと思います。

えーそれで、しかしながら、実はこの問題はさらに根が深くて、これほど大きな新薬開発には莫大な宣伝が付きもので、そのような製薬会社経由の情報がやはり情報源の中の大きな位置を占めてしまうという医師の情報収集のあり方に言及せざるをえないことになります(やっぱりそこかw)。これこそ構造的な問題だと思われます。開業医はMRさんの情報だけを鵜呑みにするな、自分で情報を収集するスキルを身につけよ、、、といくら言葉にしても現実世界は堅固かもしれません。これもシステムへの介入が必要なのだろうと思います。具体的方策は。。上記のような規制も一法ですが。。。また考えます。

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今朝の散歩は広瀬川河畔から牛越橋付近。朝の7時ですが既に芋煮会始まってました^^
by dobashinaika | 2014-10-12 22:49 | 医療の問題 | Comments(0)

身近な健康や医療のことについて気軽に語り合いませんか?:健康カフェへのお誘い

どばし健康カフェ(仮称)へのおさそい

皆様、おかげさまで当土橋内科医院も新医院への移転が完了いたしました。今までに比べて待合室がかなり広く取ったことが特徴かと思います。この待合室は、普段診察や会計までお待ちいただく以外に、医師や看護師、薬剤師、保健師、栄養士などの医療従事者と、地域の皆様とが、健康の問題や地域の医療について語りある場所にしたいと思って作りました。もし、日頃健康の問題で疑問に思っていること、聞いてみたいと思うことがあったら、お茶やコーヒーなど飲みながら気軽に話し合ってみませんか?
当院では、今後月1回くらい、診療時間以外の夜間や、木曜日、土曜日の午後などに、こうした語らいの場を設けたいと思っています。以下の様なテーマで1時間くらいの予定です。
当院かかりつけの方でなくても、全く構いません。もし興味がありましたら、気軽に当院まで、電話、FAX、メール、どんな手段でも結構ですので、気軽にご連絡ください。お待ちしております。

当院の電話番号、FAXはこちらです。
TEL:022-272-9220
FAX:022-272-9234
また以下の専用メールアドレスにご連絡いただいても結構です。
dobashi@mist.ocn.ne.jp

       §§§§§§§どばし健康カフェ(仮称)§§§§§§§

場所:当院待合室
時間;木曜日または土曜日の午後、あるいは午後7時ころから約1時間
(第1回の具体的日時はまだ未定です)
取り上げたいテーマ
・あなたにとってよい医師とは?看護師とは?薬剤師とは?保健師とは?栄養士とは?
・あなたにとって、元気のみなもとはなんですか?
・サプリメントってほんとにからだにいいの?
・介護保険についてもっと知りたい
・一人暮らしの方がもし具合が悪くなったら
・健康についての情報は何を信用しますか?
などなどです。

(個別の健康問題については、扱いませんので、ご了承願います)
by dobashinaika | 2013-01-27 19:15 | 医療の問題 | Comments(0)

”森口騒動”で考えたこと-「科学における不正行為」と「メディアの誤報」そして科学リテラシー

今日は、心房細動を離れて先週来続いているいわゆる「森口騒動」についてちょっと考えたことをつらつらします。

今日昼休みたまたまテレビを見たら、件の「森口氏」の自宅の賃貸がどうのこうのとかといったまさしく瑣末なことをとりあげ、これまでにもあった捏造行為や経歴詐称の非を厳しくあげつらう内容でした。

もちろん件の氏に「不正行為」があったことは間違いなさそうだし、それに関する検証と責任の追求は、今後のiPS細胞の臨床応用にも大きな影響を与えるだけに、しっかり行われるべきであると思います。

しかし、こうした「科学における不正行為」は以下のWikipediaを参照するまでもなく、古今東西各分野で枚挙に暇がありません。誤解を恐れずに言えば科学に不正行為はつきものと言っても過言ではないかもしれません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/科学における不正行為

まず押さえるべきは、科学者がこのようにくりかえし不正行為をしてしまう大きな構造、例えば容易にデータを改ざんできてしまうような組織内部の構造、スポンサーとの利益相反、論文の査読体制など、こそなのです。そしてそうした構造を生み出すに至る虚栄心、功名心、要するに人間心理のエゴにまでメスを入れるべきなのです。

メディア(特にワイドショー的な番組)にそこまで求めることは酷としても、そうした「構造」を検証することなしに個人の非ばかりを強調する報道姿勢には暗澹たる気持ちにさせられるのです。

次に、言うまでもなく今回のより大きな問題は、もう散々言われているように「メディアにおける誤報」です。これに関してもやはり古今東西、様々なメディアで各種の誤報がなされています。しかし今回のメディアの報道ではこのことを大々的に取り上げる空気は薄く、表面的な論議に終始している感があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/誤報

ここでも我々は、今回読売新聞の記者某の非や責任をあげつらうだけではなく、古来より過熱報道、誤報道が繰り返されるその構造をこそつまびらかにし、誤報道がなされてしまうようなチェック体制の甘さ、商業主義、他社との競争といった大きな枠組みの中で今回の問題を考えるべきだと思われます。

今回の問題においては、まずこうした「科学における不正行為」と「メデイアにおける誤報」とを峻別して論ずるべきです。そしてそれぞれに、それらを成り立たせている構造、その根底にある人間心理にまで立ち入って検証していく、という視点が必要です。そうした視点なく、ただ個人的不正、一新聞社の勇み足として済ませてしまっては何の生産的論議もなく、また歴史が繰り返されるだけです。

そうした論議を踏まえて見えてくるものがあります。それが「科学情報を読み解く力」つまり科学リテラシーです(リテラシーってあまりにも使われすぎていて、現時点であまり好きな言葉ではないですが)。

今回の場合、どうして読売新聞の記者が真偽を見抜けなかったのか。そしてさらに、我々読者、一般人が、ノーベル賞受賞直後の状況の中でかの情報を鵜呑みにしてしまったのではないか。かく言う私もあの日の一面を見た時、「うそだろう」と思う反面、ハーバードとMGHが緊急避難で認可したんだったらありえるかな、と思ってしまったのです。

そもそもメディア上の科学情報は、その妥当性信頼性において玉石混交であり、玉もあれば石もあります。しかしそれらの情報には、ある程度のエビデンスレベル、まあいわゆる格付けが存在していて、特に情報の信頼性に於いて、その点を常に考えながらメディアに接していくことが大切です。
(この読み取り方についてはこちらなど参照)

今回の騒動は、はからずもそうしたリテラシーについて、つまり科学情報をどのように読みとくかということについて、メディアにも、そして一般の人達にも広く考えるためのある意味と良い契機とも言えたのです。

例えば私は、今回の新聞の切り抜きを患者さんなどにお見せし、科学情報に格付けがあること、どのポイントを読めばそれがわかるのかなどを一緒に考える機会を作りたいと本気で思ったりしています。

このように科学リテラシー論議の一石となる機会なのにもかかわらず、それを瑣末な個人批判に収束させるような愚は厳に慎むべきです。

・ 森口騒動は「科学における不正行為」と「メディアにおける誤報」とを分けて論ずるべき
・ その時そうした行為、そうした誤報を個人批判に収束させるのでなく、それらを成立させるにたる「構造」を考察すべき(両者に相似な構造があるように思いますが)
・ この問題の根底に横たわる科学情報に対するリテラシー向上に向けた論議をすべき


今回の騒動で私がちょっとだけ広く主張したいこと、学んだことはこんなところです。メディアに対して最大限に怒りながらです(笑)。
by dobashinaika | 2012-10-16 00:42 | 医療の問題 | Comments(0)

市民と医療者が「医療」「健康」について語り合える場をつくる。

今日は、東京・根津にある株式会社エンパブリックさんのコニュニティ戦略パートナー・サービスに参加しました。
http://empublic.jp/partner/index.html

患者さんと医者は、普段ほとんど診察室の中でしか会話をしないため、病気のこと以外に関し、患者さんが何を考えどう行動したいのかを医者が知る機会は余りありません。

たとえば、特定健診を毎年受けに来ておられる方でも、ほんとうに必要だと感じて受けておられるのか、それとも嫌々ながら受けているのか。そもそも特定健診の時に腹囲を測る意味について考えた方がおられるのかどうか(その意味は医療従事者の間でも疑問ですが)。

要するに疾患そのものについての思い以外に、「健康」一般についてや「医療問題」について患者さんあるいは一通院しておられない人たちと会話することはほとんどないと思われます。

反対に、患者さんあるいは通院しておられない人たちも、普段医療について医者がどんなことを考えているのかなんて聞く機会は希少と思われます。

前々からこうした「診察室以外」で「自分の病気以外のこと」(自分の病気のことでもいいのですが)の健康や医療の問題について患者ー医師がどう考えているのかを可視化出来る場を作りたいと思っていました。ちょうど、自院のリニューアルを図っている所でもあり具体的な場づくりを設計図に盛り込みたいとも思っていました。

今回、あるfacebookのつながりからこのような企画があることを知り参加してみました。

参加者は10名。さまざまなNPO職員のかた、介護ネットワーク、被災地支援、コワーキング運営者の方々、上記のような取り組みをすでに始めている若手医師の方などなど、様々な職種の方たちの話を聞くことが出来ました。

また、ワークシートを埋める作業や参加者とのディスカッションを通じて、土橋内科医院の周辺のコミュニティや場作りに必要なこと、足りないことについての「気づき」が色々とありました。

宿題を出され、次回1ヶ月後に戦略計画の発表会です。
当院版「メディカルカフェ」の実現に向けて頑張りたいと思います。

それにしても医療従事者以外の職種の人達と(自分が一番年長!)との交わりは新鮮ですね。我々医者が、毎日本当に狭い世界で生きていることを思い知らされます。その意味でもぜひ実現させたいです。

根津界隈は、先日ブラタモリでも紹介された「谷根千」のまっただ中で、街全体がいい感じ-まさにコミュニティを考えるにふさわしいロケーションでした。
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by dobashinaika | 2012-02-12 23:21 | 医療の問題 | Comments(0)

第9回せんだい医薬連携セミナー

昨年に引き続き医師と薬剤師の連携を考える医薬連携セミナーが開催されました。今回は一連の活動の総括的な内容となり、私もパネリストとして参加しました。参議院議員や厚生省の方もコメンテーターとして参加され、参加人数も多く、大変内容の濃いセミナーでした。

今回は患者さんが、処方された薬を残してしまう、いわゆる残薬の問題を取り上げました。昨年9月から12月まで、当院も参加し市内の8医療施設で、薬局薬剤師が患者さんに薬の残りがないか調べるよう呼び掛け、残薬があったら主治医に申し出るように促しました。東北薬科大学の大野勲教授によればこの3ヶ月間で一人当たり約4000円強の残薬調整による節約が算定され、これを日本国民全体の生活習慣病患者にあてはめて試算すると約200億円以上の医療費削減につながるとのことです。

今回の残薬調査では、医療費節約以外にも様々な教訓を得ることができました。残薬の主な原因は1位飲み忘れ、2位自分で調節する、でした。残薬を患者さんに意識してもらうことで、患者さんの服薬アドヒアランス(きちんと飲むこと)が高まります。薬剤師は、飲み忘れやすい薬の服薬指導を重点的に行うことで残薬を防ぐことができます。血圧が下がりすぎて自分で降圧薬を飲まなくなってしまう人の事例もあり、そのような場合、降圧薬の変更等医師に対応が必要となります。以上のように残薬を患者さんに意識してもらうことで、全体として医療の質の向上につながるように思います。

コメンテーターの桜井充参議院議員もおっしゃっていましたが、残薬問題は結局は医師ー患者関係が帰するのだと思います。良好な医師患者関係のもとでは残薬は発生しにくいはずです。そこには十分な説明とインフォームドコンセントが存在するからです。残薬あるところに医師ー患者関係の乱れあり、とも言えるかもしれません。そこを医師と薬剤師とでワークシェアリングし。乱れを直していく。。。。

残薬一つとってみても、我々はまだまだやれること(やらねばならないこと)が山積みです。
by dobashinaika | 2010-03-03 23:03 | 医療の問題

第3回日本心臓ペースメーカー友の会宮城県支部総会に参加して

おととい(5月24日)は日本心臓ペースメーカー友の会宮城県支部の第3回総会と懇話会が開かれ、支部顧問として出席いたしました。宮城県支部の活動も軌道に乗って、今や会員は80名を超え、今回の懇話会にも多数の出席者がありました。恒例の質疑応答は東北大学病院院循環器内科の福田浩二先生はじめ、機械関連会社の方など、多くの方のご協力の下、今回も2時間たっぷり数多くの質問が出されました。

毎回携帯電話の質問、電磁調理器の質問が多く聞かれますたが、何センチ(携帯電話なら22cm、電磁調理器なら50cm)までなら大丈夫と言われても、心のどこかでは不安があるのです。

以前書きましたが、人間は「恐ろしい」と感じ、「未知のもの」と感じるものをにリスクとしてとらえます。いくら知識として知っていても、リスク、脅威であることはなかなか消えません。しかしながら、正しい知識は「恐い」という感じを多少なりと和らげる方向に向かわせます。

参加した方々の「知りたい」「安心したい」という思いが、今回も強く伝わってきた友の会でした。a0119856_2253997.jpg
by dobashinaika | 2009-05-26 22:55 | 医療の問題

医療に対するゼロリスク志向 ~小松秀樹先生の講演を聴く~

仙台厚生病院春季セミナーで、小松秀樹先生の講演を拝聴しました。今夜の講演で先生は、著書「医療の限界」に沿って、医療におけるさまざまな軋轢を個人レベルと社会レベルとで分けて述べておられました。随所に、不確実性に対する哲学的考察、医療システムの人類史的来歴等々のことばが散りばめられ、哲学、世界史好きな私にとっては(共通一次試験で現役、浪人時とも「世界史」「倫社」選択)大変刺激的なひと時でした。

先生は言います。患者に医療の不確実性が許容されない、死や障害が受け入れられない、因果律への理解が不足している、調査と調査内容を結び付ける想像力が欠如している、根拠のない楽観主義がメディアをおおう...これらを私なりに解釈させていただくと「リスクリテラシーの欠如」ということになります。先生が述べられた「不確実性が許容されない」というのは人々が「完全な安全」つまり「ゼロリスク」を追求しがちであるということでしょう。

リスク心理学の中谷内一也先生著「環境リスク心理学」によれば、「人為的活動に伴う事故や産業活動の副産物などの影響ではゼロリスクが求められやすく、特に、原子力関係の事象や医療にはその要素が強い」といいます。さらに、病気に対してよりも、医療行為に対してゼロリスク要求が高い、つまり病気になってしまうことについては許容できるが、医療事故は許せない、ということです。ここには医療に対しては高ベネフィット、低リスクと認知されるいわゆる感情ヒューリスティクス(直感)が働くからだとされています。

たしかに、たとえば手術による合併症リスクが30%といわれて理解したつもりでも、もし自分にその合併症がふりかかったら、我々はどうしても、「なぜ私が」と原因を問わずには居られません。病気になったとき「なぜ私が」と、悩むのと同様、合併症が自分の身に生じた場合「どうして私だけが」と思い悩むことは万人が抱く感情と思われます。

となると、不確実性が許容されない背景にはこれらの「ヒューリスティクス」「感情」等、単にリテラシーの欠如として片づけられない側面があるともかんがえられます。目下のところ、このようなゼロリスク志向を矯正する手立ては、学校等におけるリスクリテラシーを向上させる教育、マスメディアがゼロリスクへの認識を改めること、等々しか浮かびませんが、そのような教育、啓蒙だけで矯正できるのかどうか、根源的なところでは悩ましい問題です。

とはいえ、社会全体でこのような医療に対する「ゼロリスク神話」を駆逐させていくことはやはり重要だと思われます。少なくとも無用な訴訟に対する抑止力となりうるのではないでしょうか?

この辺の「リスクシテラシー教育」については、また後日考えたいと思います。

by dobashinaika | 2009-04-26 00:10 | 医療の問題 | Comments(0)

今年のメタボ健診

昨日(4月7日)、仙台市医師会館において、平成21年度の仙台市特定健康診査と特定保健指導の研修会がありました。昨年度から始まったいわゆるメタボ健診に関して、仙台市から説明を受けるものです。メタボ健診は地方自治体から仙台市医師会が委託を受ける形で行われています。仙台市は国民健康保険の方全員と社会保険の一部の方をいわゆるかかりつけ医で個別に行うことにしたため、受診率50%以上で全国的にも高い水準にあるとのことです。これは、仙台市及び医師会の担当の方々の並々ならぬご努力の成果と思います。

しかしせっかくの高受診率でしたが、それがメタボ克服という成果へと結びついたかどうかはまだ明らかにされていません。あれほど鳴り物入りで始まったメタボ健診ですので、昨年度の受診率、保健指導を受けた方の数、割合はもとより、保健指導を受けた方の体重減少率、腹囲減少率、検査値の変化等が明らかにされるべきだと思います。また各医療機関でどのような保健指導が行われたのか、たとえば医師一人でやっているところが多いのか、栄養士や保険師とワークシェアをしているところはどのくらいか、といった点や、実際やってみてこういう点が良かった、ここが問題だったといったところを各医療機関からヒアリングすべきだと思います。検診開始前には、メタボ健診の意義、効果の点で多くの議論を呼びました。また多くの医師は高々20分の保健指導で受診された方の行動変容(食事、運動などをするようになること)がなされるとは今でも信じていないでしょう。しかし実際にはこういういい例もあったとか、ここがまずいから行動変容がなされないのだといった現場の声を、1年という歳月を経た今、できるだけ吸い上げるべきだと思います。そうして次に向けて改善すべき点は改善すべきでしょう。

このような現場から当局への情報吸収および当局から現場へのデータのフィードバックは必ずなされるべきものだと思います。もう一度まとめます。
市当局あるいは医師会は昨年度のメタボ健診の
・受診率、メタボ該当率、要医療、要指導の数、保健指導該当率および受講率
・保健指導受講者の体重変化率、腹囲変化率、検査値変化率(可能であれば)
につきわれわれ現場医療者に公表していただきたいと思います。。
また以下の点の実施を切に望みます。
・各医療機関でだれが保健指導を担当したのかの調査
・具体的に行動変容が成功した事例の詳細の吸い上げ
・行動変容に失敗した事例の吸い上げ
・できればこのようなクリニックからの事例などを持ち寄っての勉強会、症例検討会の開催

実際はだれがやるんだということになってバリアは多々あるとは思います。しかし仙台市に関しては、県医師会健診センターがデータを一手に掌握しているはずでありデータベースの構築は比較的容易と思われます。なによりこうした検証なくして前進はないと思います。それがあれだけあったメタボ健診の議論への一つの回答になると思うのです。
by dobashinaika | 2009-04-08 23:21 | 医療の問題 | Comments(0)

第3回八幡地区包括ケア会議

今日の夜は八幡コミュニティーセンターで今年度第3回の八幡地区包括ケア会議があり。出席しました。包括ケア会議とは48号線沿いの早美ビルにあります国見包括支援センターさんが主催され、八幡地域の高齢者の包括的な支援について話し合う会合で、年3回開かれています。本日は八幡交番の署長さん、八幡地区赤十字奉仕団の団長さん、社会福祉法人青葉福祉会の理事長さん、東北福祉大学地域減災センターの先生、青葉区保健福祉センター障害高齢課の方などが参加されました。

今回は八幡地区での防災啓発活動、つまり地震等の災害に備え高齢者が準備すべきことをどう周知徹底させるかについて話し合いいたしました。国見包括支援センターさんは大変活発に地域活動を行っておられ、今回は防災チェックリストを作成し、緊急時の連絡先、避難場所、かかりつけ医療機関や内服薬などが、災害時に分かるようになっているかなどを高齢の方に呼びかけていこうと取り組んでおられました。

しかしまず第一の問題として、そのようなチェックリストをどの方に配ったらよいかということが議論に上りました。この八幡地区だけでも90歳以上でお元気な方は90人以上もおられるとのことです。一戸建てにご家族と同居されている方は良いとしまして、一人ぐらしの方、ご高齢のご夫婦二人暮らしの方などが、マンション等の集合住宅にお住まいの場合は、そのような方がどこに住んでいるのかさえ、赤十字奉仕団や町内会などでも把握できていないとのことです。個人情報保護が壁になっているようです。

災害発生時は、普段飲んでいる薬が入手できなくなる場合が想定されます。また万が一避難所生活になった場合、血圧の薬など何を飲んでいるかわからないと臨時診療所などにおいて困る場合もあります。当院では患者さんに「私のカルテ」にて薬の内容などを書いて渡すようにしておりますが、災害時にこの手帳を手元に置いておくように私のカルテに表示すること、緊急連絡先を書く欄を設けることなど、すぐに実践していこうと、強く思いました。
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by dobashinaika | 2009-03-05 21:58 | 医療の問題 | Comments(0)

薬剤師とのミーティング

a0119856_21303272.jpg本日、昼、当院に近接するアイ薬局の薬剤師さんとのミーティングがありました。このミーティングは月1回、第4木曜日、昼食をとりながら行われるもので、土橋内科から出される薬の処方について、まず薬剤師さんから私に、なぜこの処方が出ているのか等や処方の間違い等の薬の情報について質問してもらい、私がそれについて答えます。次に、患者さんが、なにを薬剤師さんに質問したかなど、患者さんの情報を報告しもらいます。また、患者さんが薬をきちんと飲んでいるのかなどの情報も医師に伝えてもらうようにしています。アイ薬局さんではそれらの情報を一覧表にしてくださいますので、大変助かっています。

今日のミーティングでも、診察室で医師に言わずに、薬局で薬剤師さんに薬のことを聞く方が多数おられることが報告されました。たとえば風邪薬を睡眠薬と一緒に飲んでもよいか、とか朝飲み忘れた薬を昼に飲んでもよいかなどなど。こういうことは、医師に聞きづらいということもあるのでしょうが、短い診察時間の中でつい聞くことを忘れてしまう、もっと別のことを訴えていたら聞く時間がなかった、などのために薬剤師さんに尋ねるのではないかと思われます。

どうしても外来診療時間の短い日本の診療所においては、患者さんからの情報を集める、伝えるという大事な作業はやはり医師だけでは不十分であることをいつも痛感させられます。これを看護師、薬剤師、事務職などなどマンパワーをフル動員して今後とも取り組んでいきたいと思います。
by dobashinaika | 2009-03-05 21:30 | 医療の問題


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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