人気ブログランキング |

カテゴリ:心房細動:ダウンストリーム治療( 60 )

新規III群抗不整脈薬ドロネダロンは心血管イベントによる入院を減らす:ATHENA試験post hoc解析

Europace5月15日オンライン版より

Impact of dronedarone on hospitalization burden in patients with atrial fibrillation: results from the ATHENA study

新規III群抗不整脈薬ドロネダロンについてのRCT:ATHENA試験のpost hoc 解析です

P:6か月以内の12誘導ECGでAF・心房粗動が記録され,2回目のECGで洞調律であった発作性・持続性のAF/粗動患者のうち次の要件を1つ以上満たすもの
:70歳以上(のちに75歳以上),高血圧;糖尿病;脳卒中・一過性脳虚血発作・全身性塞栓の既往;左房径50mm以上、EF40%未満

E:doronedarone 400mgx2

C:プラセボ

O:心血管疾患による入院、およびあらゆる理由による入院

結果:
1)初回の心血管疾患による入院リスクはドロネダロン群で有意に減少(p<0.0001)
2)心血管疾患以外の入院は有意差なし
3)心血管疾患による入院の半数は心房細動が原因であり、平均入院期間は4日
4)全入院(HR0.626, 95%CI 0.546−0.719と入院期間(P < 0.0001)は、ドロネダロン群でが有意に少ない
5)ドロネダロンは急性冠症候群による入院(P = 0.0105)や心房組細動の再発、心血管疾患による入院・死亡(P = 0.0048)を減少させた。
6)すべての段階での病院入院におけるケアの負担を明らかに減少させた
7)ドロネダロンの有効性を示す累積データは24月持続した

結論:ドロネダロンは心血管疾患あるいはあらゆる理由による入院リスクを減少させた

###ATHENA試験で有効性が示されたドロネダロンですが、同試験では「心血管疾患による入院」がエンドポイントの一つに入っていましたので、このサブ解析は納得できる結果です。やはりドロネダロンの心房細動予防効果が、心房細動発作による緊急入院を減らしたと解釈できます。そのほか急性冠症候群も少なかったとのことで、アミオダロン同様、多彩な作用が期待されます。
ドロネダロンは、アミオダロンからヨードを排除した、「無毒なアミオダロン」というイメージですが、有症候性の心不全を対象としたANDROMEDAでは、死亡率を逆に高めていることには注意が必要です。
by dobashinaika | 2011-05-24 20:25 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心房細動の電気的除細動は長期予後とは無関係:AFFIRM studyサブ解析より

Circulaion: Arhythmia and Electrophysiology オンライン版より

Is there an Association Between External Cardioversions and Long Term Mortality and Morbidity - Insights from the AFFIRM Study

・ 心房細動患者において、繰り返し施行した電気的除細動とmortality、morbidityとの関係に関するAFFIRMのサブ解析

・ AFFIRMでは対象4,060人のうち3.5年のフォローで660人(16.3%)が死亡し331人(8.2%)が心臓血管死
・ 低左室駆出率が5.1%、発作性ではない心房細動が41.8%
・ 2460人は電気的除細動を全く受けていなかった
・ 1600人は1回以上の電気的除細動を受けていた
・ 死亡率は除細動なし16.7%、1回16.5%、2回13.5%、3回以上10.4%で有意差なし
・ 心筋梗塞、冠動脈バイパス術、ジゴキシン服用が死亡率に独立して関連あり
・ 電気的除細動は次回フォローアップ受診時までの入院と関連あり(39.3% vs. 5.8%; Estimated odds ratio: 1.39, p<0.0001)

結論:AFFIRMにおいは、電気的除細動と長期死亡率の間に関連なし。入院との関連はあり。ジゴキシン、心筋梗塞、CABGと死亡率が関連あり

###  AFFIRMでは洞調律が維持されている例では抗凝固療法をやめても良いことになっていたため、除細動時に抗凝固療法がなされていたのかは気になりますが、そのことを勘案しても心房細動の電気的除細動程度では予後に影響しなかったとの結論です。電気的除細動には塞栓症、心筋ダメージその他の合併症があり、ICDなどではショックと生存率に負の相関があるとの報告もされています。一方心房細動では除細動後に洞調律を維持することが予後改善につながると信じられた時代もありました。現在そのコンセプトはほぼ否定されていますので、積極的な電気的除細動は、以前より少ないと思われますが、症状の強い方や若年者ではやはり強力なオプションです。ICDに比べれば低出力であり、除細動時の抗凝固療法をきちんとしていれば、除細動の回数は問題ではなく基礎心疾患などが重要である、と解釈されます。
by dobashinaika | 2011-05-01 10:47 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

抗不整脈薬の心房細動再発抑制に関するメタ解析

Europace2月号からです。
Mixed treatment comparison of dronedarone, amiodarone, sotalol, flecainide, and propafenone, for the management of atrial fibrillation
Europace (2011) 13 (3): 329-345.

目的:心房細動に対する複数の抗不整脈薬の効果と忍容性を、混合治療比較法(MTC:注)を用いて比較した

方法:
・ アミオダロン、ドロネダロン、フレカイニド、プロパフェノン、ソタロールと偽薬のRCTを系統的に検索した
・ 39のRCTをMTCの手法を用いて統合して、複数の薬剤の効果を比較検討した

結果:
1)アミオダロンが、最も高い再発抑制効果を示した(OR 0.22, 95% CI 0.16–0.29)

2)アミオダロンは、重大な副作用(OR 2.41, 95% CI 0.96–6.06)と副作用による服薬の中断(OR 2.91, 95% CI 1.66–5.11)が高率に見られた。

3)ドロネダロンは、徐脈を含む催不整脈作用が最も少なかった

4)ドロネダロンは脳卒中リスクを明らかに減少させた(OR 0.69, 95% CI 0.57–0.84)

5)アミオダロン(OR 2.17, 95% CI 0.63–7.51)とソタロール(OR 3.44, 95% CI 1.02–11.59)には死亡率を増加させる傾向が見られ、この傾向は例数100未満のスタディを除外するとより明らかになった。

結論:アミオダロンの洞調律維持効果は最も高かった。抗不整脈薬間では効果に違いがあり、ソタロールとアミオダロンは死亡率を増加させ、ドロネダロンは重大な副作用や催不整脈を減少させる可能性を認めた。

注:比較する薬剤の組み合わせが異なるRCTを統合するメタ解析の手法

###アミオダロンは実際使ってみるとすばらしく心房細動を抑えるな、との実感があります。しかしながら甲状腺、肝障害、その他副作用とのせめぎ合いを常に感じながら使わねばなりません。ドロネダロンへの期待が高まります。
by dobashinaika | 2011-02-25 22:18 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

迷走神経を低出力で刺激し続けると心房細動が予防できる

Journal of American College of Cardiology2月1日号からです.
Prevention and Reversal of Atrial Fibrillation Inducibility and Autonomic Remodeling by Low-Level Vagosympathetic Nerve Stimulation
J Am Coll Cardiol, 2011; 57:563-571

目的:低出力の迷走神経刺激で、心房の自律神経によるリモデリングが回復するか否かの検証

方法:
・ 32頭のイヌの両迷走神経を、洞レートや房室伝導を遅延させる閾値の10~50%で刺激した。
・ グループ1:有効不応期(ERP)と心房細動易誘発帯(WOV)を決めるためのプログラム刺激と、6時間連続の高頻度刺激を施行。低出力刺激は4時間めから6時間めに施行した例
・ グループ2:ERP,WOV決定後、6時間連続低出力刺激を施行した例
・ グループ3:前右神経節へのアセチルコリン負荷で持続性心房細動が誘発された例
・ グループ4:右心耳へのアセチルコリン負荷で誘発された例

結果:
1)グループ1では、ERPとWOVははじめの3時間で徐々に短くなり、3時間の低出力刺激で元に戻る傾向にあった。
2)グループ2ではERP,WOVの変化なし
3)グループ3、4:低出力刺激により心房細動の持続時間は短くなり、心拍数は遅くなった(Group 3: baseline: AF-D = 389 ± 90 s, AF-CL = 45.1 ± 7.8 ms; LL-VNS: AF-D = 50 ± 15 s, AF-CL = 82.0 ± 13.7 ms [both p < 0.001]; Group 4: baseline: AF-D = 505 ± 162 s, AF-CL = 48.8 ± 6.6 ms; LL-VNS: AF-D = 71 ± 21 s, AF-CL = 101.3 ± 20.9 ms [both p < 0.001]).。
迷走神経を低出力で刺激し続けると心房細動が予防できる_a0119856_22481732.gif


結論:低出力刺激は、高頻度刺激で誘発される心のリモデリングを予防し回復させ、アセチルコリン誘発性心房細動を抑制した。内因性自律神経系の抑制が、この良好な結果をもたらしたと考えられる。

###心房リモデリングには電気的リモデリング、構造的リモデリングの他に自律神経リモデリングがあり、心房を高頻度で長時間刺激すると交感神経系が賦活化されることが知られています.これは内因性自律神経系と呼ばれるもので、低出力で刺激すると、これの賦活化が弱まるという理路になっています.実際人で迷走神経をどう低出力刺激するのかイメージがわきませんが、自律神経というあまり扱われることのない分野に焦点を当てた点が興味をそそられます.
by dobashinaika | 2011-02-02 22:48 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

新規心房細動治療薬ベルナカラントは、アミオダロンより効果的で安全(AVRO試験)

雑誌Journal of American College of Cardiology1月18日号からです。

目的:発作性心房細動の除細動を目的として、アミオダロンを対象に、新規抗不整脈薬ベルナカラント(静注用)の効果と安全性を比較する。

方法:
・ 除細動適応の発症3〜48時間以内の心房細動患者254人が対象。
・ ベルナカラント3mg/kgを10分間で静注し、15分観察。止まらなければ2mg/kgとアミオダロン偽薬または5mg/kgのアミオダロンを60分で投与。
・ その後60分以上かけて50mg追加とベルナカラント偽薬を追加。

結果:
1)90分以内の洞調律回復はベルナカラント群60/116(51.7%)、アミオダロン群6/116(5.2%)(p<0.0001)。
2)ベルナカラントは早期に除細動され(反応者平均11分)高い頻度でアミオダロンに比べ症状を改善した。:90分後の無症状率=ベルナカラント53.4%vs.アミオダロン32.8%。
3)試験中止となるような重大な副作用はなし。TdPや心室細動、心室頻拍なし

結論:新規発症心房細動発作の除細動において、ベルナカラントの効果はアミオダロンを上回った。両者とも安全で試験における忍容性があった。

###新規心房細動治療薬ベルナカラントのアミオダロンを対象とした第III相試験です(AVRO試験)。心房細動を注射で止めるとき、サンリズムやリスモダンを使うと思いますが、心室筋にも作用するため、心機能低下、血圧低下といった懸念がありました。またNaチャネルブロッカーですので、心房祖動やブルガダ症候群を惹起するといった問題もありました。
今回のベルナカラントは心房に特異的に存在するKチャネルIkur(Ik ultrarapid)を選択的に標的うとする薬剤です。当然心室筋には作用しにくいため、上記の副作用に気兼ねなく使えそうだということになります。
ベルナカラントは2007年、FDAの承認前に、心機能低下例等への低血圧の懸念のため承認が延期となった経緯があります。この薬剤はINa抑制作用も多少持つためですが、大きな副作用はなく、心房組動以降は8%程度とのことです。III群治療薬版のAFFIRM試験をやったらどうなるんだろう?期待と不安が膨らみます。
by dobashinaika | 2011-01-13 09:17 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

冠動脈バイパス術後の心房細動にはビソプロロールがカルベジロールより有効

雑誌American Journal of Cardiology電子版12月3日付けからです。

背景:冠動脈バイパス手術後すぐに起こる心房細動は、その後の経過や生活に影響する。また退院後早期に発症する心房細動もよく見られる現象である。近年のガイドラインでは、β遮断薬がその予防として第一に勧められている。

目的:心機能の低下したバイパス手術後患者の心房細動予防において、β遮断薬のビソプロロール(商品名メインテート:主に心臓に効くβ1選択作用あり)とカルベジロール(商品名アーチスト:β遮断作用の他血管拡張などのα遮断作用もある)とのどちらが有効かを比較検討する。

方法:
・ 対象:手術後リハビリ中、心機能低下(EF40%未満)、平均年齢66歳
・ 術後4〜5日にビソプロロール内服群カルベジロール内服群に無作為割り付け
・ ビソプロロール1.25mg/日、カルベジロール3.25mgにから開始
・ 登録後5日間毎日2回、遠隔心電図を記録してもらう。

結果:
1)心房細動新規発生:ビソ群23/160(14.6%)<カル群37/160(23%)。
ビソ群はカル群の60%、p=0.032
2)全心房細動の23%は症状なし
3)4週後の外来での心拍数:ビソ群15.6/分減>カル群9.4/分減
4)血圧は差なし

結論:心機能が低下した例での術後心房細動予防には、ビソプロロールの方がカルベジロールより有効

###欧米のガイドラインでも術後心房細動にβ遮断薬が推奨されていますが、どの薬を使うかまでは述べられていません。ビソプロロールは心機能低下作用もカルベジロールより強いですので、投与量を考えながらの選択になると思われます。
by dobashinaika | 2010-12-12 09:05 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心臓手術後心房細動の予防にβ遮断薬とアミオダロンの効果は同等

雑誌Annals of Intervnal Medicine12月6日号から

目的:心臓手術後に起こる心房細動予防にメトプロロール(β遮断薬)とアミオダロン(抗不整脈薬)の効果が同等かを比較する

方法:対象は心臓手術後24時間以内で、血行動態が安定し心房細動を起こしていない患者316例。  
メトプロロール1~3mg/時またはアミオダロン15mg/kgを術後15~21時間以内に48時間点滴した。  
無作為割り付け、オープンラベル(薬がどちらかを医者患者が知っている)

結果
1)心房細動発生率:メトプロロール群38/159(23.9%)、アミオダロン群39/157(24.8%)
2) メトプロロールでの発生率は(各因子を修正した場合)アミオダロンの1.09倍
心臓手術後心房細動の予防にβ遮断薬とアミオダロンの効果は同等_a0119856_5494919.gif


結論:メトプロロールとアミオダロンで心房細動発生率は同等。症例数が少なくばらつきが多いため、確定的なことは言えない。
by dobashinaika | 2010-12-11 05:50 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

正常なリズムでは心房細動のときよりも心不全症状は少ない。

心房細動の数ある論文で過去10年間最もインパクトのあったものに、AFFIRM(アファーム)試験があります。心房細動が起きないように不整脈の薬を飲み続けるのと、心房細動は起きてもいいので心拍数だけ抑えようとした場合とで生存率に差がなかったというものです。それまで心房細動はとにかくない方がよいとの固定観念が、医師にも患者にもありましたが、それを覆す結果であったため全世界で大変な反響を呼びました。今回生存率でなく、息切れなどの心不全の症状が、この2つの戦略とどう関係するのかをAFFIRM試験のデータを用いて分析した結果が、アメリカの不整脈専門誌(Heart Rhythm 2010; 7: 596-601)に発表されました。

背景)AFFIRM試験は心房細動を押さえる治療が、心拍数のみ押さえる治療に比べ、生存率の点で変わりないことを示した。しかし心房細動と患者の生活の質が落ちることとは関連がある。

目的)息切れ、動機などの心不全の症状を、心房細動抑制を目指す群と心拍数調節を目指す群と比べる。

方法)AFFIRM試験のデータを用いて解析(サブ解析)し比較する。

結果)心房細動抑制群より心拍数調節群の方が心不全症状は一般的に多く見られた。正常なリズム(洞調律)の場合が最も症状が軽く、心房細動の場合葉より症状は重かった。心房細動抑制の方針から心拍数調節へと方針が変わった例(あるいはその逆)で最も症状が重かった。

結論)心房細動抑制群は心拍数調節群に比べ、心不全の症状は軽かった。正常なリズムの維持が最良の心機能と関連していた。心房細動抑制を目指しているにも関わらず心房細動が発生し症状の強い患者はアブレーションなど、他の治療方針を考えるべきである。

###日本でもJ-RHYTHM(ジェイリズム)試験というAFFIRM試験出井辞した試験が行われました。この試験はAFFIRMより発作心房細動や心機能のよい患者が多かったのですが、やはり生存率に差はないものの、動機などの症状は今回と同様、心房細動抑制群でよかったという結果でした。実際問題、心房細動をそのままにして心拍数だけ押さえる場合も、目標となる心拍数を達成するには薬の種類や量の選択の点で難しいのが現状です。症状が強い患者さんはやはりなるべく正常なリズムを目指すという考え方を指示する論文です。
by dobashinaika | 2010-05-09 23:19 | 心房細動:ダウンストリーム治療

心房細動関連講演3連発

ここ1~2週の間に、心房細動とその関連の話題につき、3つの勉強会で講師としてお話しする機会をいただきました。4月15日(木)は青葉区の開業医の先生方の集まりである「心血管疾患予防検討会」でテーマは「開業医にとっての心房細動ベストプラクティス」。21日(水)は仙台徳洲会病院が主催されます「第2回泉七北田勉強会」で「この心房細動をどうするか」というテーマでお話しいたしました。そして23日(金)は主に宮城野区の先生方の集まりである「第18回内科外来診療を考える会」で「循環器領域における抗凝固・抗血栓療法」につきお話しさせていただきました。

それぞれ心房細動の話題を中心にお話しいたしましたが、3つの会とも違う形で心房細動の捉え方を提示しようとしましたため、準備に大変時間がかかってしまいました。ここ3~4週間。頭の中で心電図が細かく揺れている状態でした(笑)。

しかし人間、一つのことばかり考えざるをえないような追いつめられた状態になると、ふとアイデアがわいてきたりもします。今回、大げさですが、それに近いような経験をしました。ずっと、薬の使い方のことについて考えていたら、ふとお風呂に入っているときに、なるほどこう考えれば薬をうまく使うことができる、というひらめきみたいなもの(それほど大したものではないですが)を自覚することがあります。

その道を極めた人たちというのは、おそらく自分を追い込んでいくのが上手で、日々こう言った発見の連続なのだろうなと、私などが言うのも大変おこがましい限りですが、ほんの少しだけ、名人の粋という者のにおいをかいだ気分になった数週間でした。

論文のアップが滞ってしましましたので、今週からまた再開いたします。
by dobashinaika | 2010-04-25 23:05 | 心房細動:ダウンストリーム治療

心房細動の目標心拍数はそれほど厳しくしなくてもよいかもしれない

何回も発作性心房細動を繰り返す場合、抗不整脈薬であくまで発作を抑え込むのがいいのか、それとも発作は出てもいいからそのときの心拍数を遅症状を抑えるだけでも良いのか。このいわゆるリズムコントロールvs.レートコントロール問題は、AFFIRM試験、RACE試験などの大規模試験によりどちらも同じ生命予後(寿命)であることが示されました。これらの結果が出た後、医師は患者さんが心房細動を何回も起こす場合、何種類も薬を変えて起きないようにすることはあまりしなくなり、心拍数を調節する薬を出す傾向が強くなりました。さて、しかし心拍数をどのくらいに調節したらよいかについては、強いエビデンスはありませんでした。
このほど、その疑問に応えるべく、上記のRACE試験を受けたRACE IIが、超一流の医学雑誌New England Journal of Medicineの3月15日号電子版(www.nejm.org March 15, 2010 (10.1056/NEJMoa1001337)に発表されました。
EBMの基本にのっとりPECO(P:患者、E:介入、C:対照、O:結果)に沿って読んでいきます。

P:患者)オランダの33医療施設で以下の基準を満たした心房細動患者614名。基準:12か月以上続いた永続性心房細動、80歳以下、安静時平均心拍数80/分以上、抗凝固療法施行。

E;介入)目標心拍数を安静時110/分未満に設定した緩やかな(lenient)コントロール群311名

C:対照)目標心拍数を安静時80未満、中等度運動時110未満に設定した厳格なコントロール群303名

O:結果)一次エンドポイント:複合エンドポイント=心血管死、心不全による入院、脳卒中、全身塞栓症、大出血、失神、心室頻拍、心停止による入院、薬剤による生命を脅かす副作用、ペースメーカーやICDの植え込み。二次エンドポイント:一次エンドポイント+全死亡。追跡期間:最低2年、最大3年

T;試験デザイン)無作為割り付け試験

結果)
1)心拍数:緩やか群93±9/分 vs. 厳格群76±12/分
2)使用薬剤:緩やか群=薬なし10.3%、β遮断薬のみ42.2%%、に対し厳格群=β遮断薬のみ20.1%、β遮断薬とジギタリス併用37.3%、β遮断薬とカルシウム拮抗薬併用12.5%
3)一次エンドポイント:緩やか群イベント発生12.9% vs. 厳格群14.9%(絶対差 -1.0%(90%信頼区間、-7.6 - 3.5; P<0.001事前設定非劣性区間)
心房細動の目標心拍数はそれほど厳しくしなくてもよいかもしれない_a0119856_015779.gif

4)その他の結果:全死亡、症状(動悸、息切れ、疲労)の出現率、NYHA分類(心不全の重症度)の度合い、副作用の点でもどちらも有意な差はなし。
5)目標心拍数達成率:緩やか群97.7% vs. 厳格群67.0%で緩やか群で有意に達成率が高い(P<0.001).

###アメリカとヨーロッパの学会ガイドライン(ACC/AHA/ESCガイドライン)では安静時心拍数を60~80/分にするように勧めており、上記のAFFIRM試験では80/分以下でかつ6分間歩行時110/分以下になるように求められています。若い患者さんなどでは、この基準を満たすのには、結構多くの薬の併用が必要な場合もあったのも事実です。一方今回の結果の110/分以下を達成するのは、実際比較的容易です。動悸などの頻度も同じなのであれば、より緩やかな目標が設定されることは患者、医師両者にとって喜ばしいことと言えます。
しかし、試験の追跡期間は3年です。通常心房細動患者さんが心不全をきたすのは、ご高齢の方が多く、心房細動の罹患期間が5年以上の方が多いと思われます。またQOLの評価ももう少し細かいデータがほしいところと思われます。
ともあれ、今後のガイドラインや臨床の場に大きな影響を与える試験であることは間違いないと思います。

論文全文はこちら
by dobashinaika | 2010-03-18 00:02 | 心房細動:ダウンストリーム治療


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(39)
(35)
(27)
(27)
(27)
(25)
(24)
(21)
(21)
(20)
(19)
(18)
(16)
(15)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

2020 年改訂版 不整脈薬..
at 2020-03-14 18:00
DOACの利益に関する低満足..
at 2020-03-05 07:24
日本における心房細動患者の脳..
at 2020-03-03 07:33
日本のNOAC/DOAC登録..
at 2020-03-02 07:21
アジア人のNOAC不適切低用..
at 2020-02-17 07:07
長期ケア施設入所者における抗..
at 2020-02-06 06:58
2019年心房細動関連論文ベ..
at 2020-01-20 08:18
2019年心房細動関連論文ベ..
at 2020-01-11 18:52
アルコール常用者の禁酒は心房..
at 2020-01-10 07:28
心房細動な日々 dobas..
at 2020-01-09 08:49

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン