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カテゴリ:心房細動:ダウンストリーム治療( 60 )

最近発症の心房細動ではレートコントロールがリズムコントロールの2.7倍慢性化しやすい

American Journal of Cardiology 4月4日付オンライン版より

Predictors of Progression of Recently Diagnosed Atrial Fibrillation in REgistry on Cardiac Rhythm DisORDers Assessing the Control of Atrial Fibrillation (RecordAF)–United States Cohort
doi:10.1016/j.amjcard.2013.02.056


【疑問】最近発症の心房細動の1年後どうなっているのか?進展に関係する因子は何か?

P:アメリカの登録研究 (The US cohort)に登録された最近発症の心房細動955人

E/C:治療法の違い:リズムコントロール、レートコントロール

O:心房細動の進行:発作性→持続性→永続性

【結果】
1)955人対象:平均68.9歳。男56.8%、白人88.8%

2)登録時レートコントロール59.6%、リズムコントロール40.4%

3)1年後治療方針変更なし:レートコントロール群68.2%、リズムコントロール群77.7%

4)心房細動の進行:全症例の18.6%

5)進行率:レートコントロール群27.6%>リズムコントロール群5.8% (p<0.001)

6)永続性への以降:16.4%

7)レートコントロール群では高齢、登録時に心房細動、持続性、脳卒中/TIAの既往が進行のための予測因子

8)Propensity score補正後のレート群の進行度オッズ比2.67

【結論】米国において、最近発症の心房細動に対するレートコントロール治療は好んでも採用されているが、リズムコントロールよりも心房細動に進行に関係あり。

### まあ抗不整脈薬を使うので、当然といえば当然のデータと思います。それでも予後は同じだよというのが、AFFIRMの思想です。

一方最近ときどき出ている、リズムコントロール優位を示唆するコホート研究は、このブログで取り上げたEditorialにもあるように、年齢その他の交絡因子が補正されていないので、一般化にはまだ早計だという気がします。
http://dobashin.exblog.jp/15543267/
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1171907

リズムコントロール優位を示唆する最近研究はこちら
http://dobashin.exblog.jp/16740233/
http://dobashin.exblog.jp/15497347/

本研究では、いちおうPropensity scoreで補正していますが、予後までは見ていませんね。
by dobashinaika | 2013-04-11 18:24 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

リズムコントロールはレートコントロールより抗凝固療法実施例が少ない:米国登録研究より

American Heart Journal 2月22日オンライン版より

Rate versus rhythm control for management of atrial fibrillation in clinical practice: Results from the Outcomes Registry for Better Informed Treatment of Atrial Fibrillation (ORBIT-AF) registry
doi:10.1016/j.ahj.2012.12.019


【疑問】臨床の場で、レートコントロールにリズムコントロールを追加するときどんな因子が作用するのか?

P:様々なセッティングから登録された外来心房細動患者10,061例。リズムコントロールとレートコントロールに関する情報を収集

E:レートコントロールのみ:6859例68%

C:レートコントロール+リズムコントロール:3202例32%

【結果】
1)レートコントロール群:より高齢、高血圧、心不全、脳卒中の既往、消化管出血の既往がより多い。

2)無症状例:レート群41% vs. レート+リズム群31%

3)抗凝固薬:レート群79% vs. レート+リズム群69% (P<0.0001)

4)リズムコントロールに関連ある因子:症状高スコア1.62倍。電気生理医1.64倍

【結論】米国の外来患者対象の登録研究では、リズムコントロールのみが大勢を占めた。症状がより強い場合や、電気生理医においてはリズムコントロールがより採用されていた。(リズムかレートかの)治療戦略にかかわらずかなりの症例で抗凝固療法が施行されていない。

### 非常に面白い研究です。レートオンリーの時のほうが高齢者、重症者が多いのはわかります。症状が強い例でリズムコントロールが多くなるのも頷けます。

面白いのは、リズム群のほうが抗凝固療法施行例が少ないということ。リズム管理がなされているので、抗凝固薬を出さなくても良いというインセンティブが働くからでしょうか。より若くCHADS2スコアが低いこともあるでしょうが。

もう一つ。電気生理検査に携わる医者は抗不整脈薬を出したがるーこれはホントよくわかります。電気生理をやっている人は、イオンチャネルの勉強をしたり、昔はリスモダンの注射後に頻拍の誘発を一生懸命やったりと、とにかく抗不整脈薬には親和性が高いんです。一時期電気生理オタクだった身として、実によくその心理はわかります。

だからAFFIRM試験が発表されたときは、電気屋さんは誰しもウソだろーと思ってしばらく信じなかった(信じたくなかった)のです。その後アブレーションが出たら、さっさとそちらに鞍替えした人も多かったですが(私も)。

Take home messageとしては、リズムコントロールがうまくいっていても抗凝固療法は忘れない。過去に慣れ親しんでいた薬にいつまでもしがみつかない(?)でしょうか。(後者は半分ジョーク)。
by dobashinaika | 2013-03-04 18:42 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心房細動の心拍数80未満を達成できた例と110未満との間でアウトカムに差なし:RACE II試験サブ解析

JACC 2月19日号より

Rate Control Efficacy in Permanent Atrial Fibrillation: Successful and Failed Strict Rate Control Against a Background of Lenient Rate Control
Data From RACE II (Rate Control Efficacy in Permanent Atrial Fibrillation)
J Am Coll Cardiol. 2013;61(7):741-748. doi:10.1016/j.jacc.2012.11.038


【疑問】RACE II試験で、心拍数の厳格コントロールを達成した例と緩徐コントロール群を比べるとアウトカムに変化があるか?

P:RACE II試験登録例:オランダの33医療施設で以下の基準を満たした心房細動患者614名。基準:12か月以上続いた永続性心房細動、80歳以下、安静時平均心拍数80/分以上、抗凝固療法施行。

E:厳格コントロール達成群:心拍数80/分未満=203例
  非達成群=98例

C:緩徐コントロール群:心拍数110/分未満=307例

O:一次エンドポイント:複合エンドポイント=心血管死、心不全による入院、脳卒中、全身塞栓症、大出血、失神、心室頻拍、心停止による入院、薬剤による生命を脅かす副作用、ペースメーカーやICDの植え込み。二次エンドポイント:一次エンドポイント+全死亡。追跡期間:最低2年、最大3年

【結果】
1)到達心拍数:達成群72 ± 7/分、非達成群86 ± 14/分、緩徐群93 ± 8/分(p < 0.001)

2)一次エンドポイント:達成群14.2%、非達成群15%、緩徐群12.1%(p=0.5)

3)一次エンドポイントの各要素、QOLは各群で差なし
心房細動の心拍数80未満を達成できた例と110未満との間でアウトカムに差なし:RACE II試験サブ解析_a0119856_23133063.jpg


【結論】永続心房細動において、厳格な心拍数管理が成功してもアウトカム改善にはつながらない。故に緩徐コントロール群が第一選択であろう。

### RACE II試験では「心拍数を厳格に管理しようとした群」では緩徐コントロール群とアウトカムで変わりはなかった訳ですが、実際レート80未満に管理できた例だったらアウトカムはよかったのでは、という臨床上の疑問の元に行われた後付け解析です。

あくまで後付けですと、本来の無作為割り付けの意味がなくなり、患者背景などにばらつきが生じる恐れがありますので、あくまで参考データとして捉えるとよいと思います。

実際データをよく見ますと、レートが早い場合(緩徐コントロール群)に一番の不利と思われる心不全イベントが、厳格コントロール達成群とも、非達成群とも全く変わらないことがわかります。筆者は、心不全をきたすのは、(110より)もっと早いレートを要するためとしています。
おそらくそうなんでしょう。平均心拍数で110未満ならそれほど血行動態に影響を与えないということだと思われます。

むしろ厳格群の方がアウトカムの方が悪い傾向にあるのもやや気になります。使用した薬剤(べータブロッカー、ジギタリスなど)のadverse effectも考慮すべきなのでしょうか?


RACE II試験についてはこちら
http://dobashin.exblog.jp/10211952/

原各群と緩徐群でQOLが変わらないとしてサブ解析はこちら
http://dobashin.exblog.jp/13796669/

心房細動のレートコントロールに関する総説はこちら
http://dobashin.exblog.jp/14206464/

心房リモデリングと緩徐コントロールとの関係についてはこちら
http://dobashin.exblog.jp/13315365/
by dobashinaika | 2013-02-12 23:14 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心不全合併心房細動では洞調律時間が長い方がQOLが良い

JACC12月オンライン版より

Quality of Life and Functional Capacity in Patients With Atrial Fibrillation and Congestive Heart Failure ONLINE FIRST
J Am Coll Cardiol. 2012;():. doi:10.1016/j.jacc.2012.10.031


心房細動と心不全との合併例において、リズムコントロールとレートコントロールとでQOLや身体機能に与える影響の比較検討

P:AF-CHF試験参加者のうち、リズムとレートにランダム割付された1376名。

E:リズムコントロール

C:レートコントロール

O:SF-36(前、4ヶ月)。6分間歩行(前、3週、4ヶ月、1年)

結果:
1)QOLは両群ともに同程度の改善
2)洞調律維持時間が長い例で高率にQOLスコアがより改善
3)6分歩行、NYHA分類は両群で差なし
4)洞調律維持時間が長い例ではNYHA改善度がより大きかったが、6分歩行は変りなし

結論:心房細動—心不全合併例ではリズムコントロールとレートコントロールとでQOL、身体機能の改善は同程度。一方、洞調律維持はNYHA分類やQOLの改善に関係あり。

### 有名なAFFIRM試験のサブ解析でも洞調律維持はQOL改善とは無関係という結果だったと思いました。J-RHYTHM試験ではQOLの3要素のうち「症状の頻度」のみリズムコントロール群で改善され、「症状のつらさ」「不安、生活制限」は差がありませんでした。

心不全合併例を対象とした本試験でもオーバーオールでは差がないものの、洞調律維持時間が長い例の方でQOL改善が図られているようです。

心不全を有していた方が、より洞調律の心地よさを感じるという解釈ももっともらしいかもしれません.

しかしながら、この論文かなり制約が多いようです。あと付け解析である点。
AF-CHF試験登録例1376例のうち、833例のみエントリーでそのうちアンケートに全部答えられた749例が対象である点。SF-36という包括的指標しか取り上げていない点。等など突っ込み所はありそうです。

ぼく自身はこうしたQOLをアウトカムにした研究は,それこそ参考の参考程度にとどめることにしています。なぜなら、扱うものがQOLですから、アウトカムは患者さんの数ほどあるということです。予後と違い患者さんごとにアウトカムがある程度見える化されています。サンリズムを飲んだときとメインテートだけのときとで、どちらが良かったですか、とストレートに患者さんに聞くことが可能です。そのように試行錯誤して良い道を選んで行けば良いので、QOLを問題にする場合、余りエビデンス依存にはならないわけです。
by dobashinaika | 2012-12-25 22:10 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

ジギタリスは心房細動の予後悪化に関連あり;AFFIRM試験サブ解析

European Heart Journal 11月27日オンライン版より

Increased mortality among patients taking digoxin-analysis from the AFFIRM study.
doi: 10.1093/eurheartj/ehs348


AFFIRM試験サブ解析。心房細動+ジゴキシン服用患者の予後

P:AFFIRM試験参加者

E:ジゴキシン

C:ジゴキシンなし

O:死亡率

結果:
1)全死亡率:ジゴキシン群の推定ハザード比1.41(1.19〜1.67)

2)心血管死:1.35(1.06〜1.71)

3)心不全別死亡率
心不全あり:ハザード比1.37
心不全なし:ハザード比1.41

4)ジゴシンと性別についての全死亡、心血管死に対する交互作用なし

結論:ジゴシンは性別や心不全に関係なく、心房細動患者の死亡率の明らかな増加と関連があった。心房細動患者に広く用いられていることへの警鐘

### AFFIRM試験では多剤への変更が最も多かったのがジギタリスでした。また目標心拍数達成率は58%でβ遮断薬と同等でしたが、日本での約倍量処方でのデータです。

心拍数調節能力も低く、私はレートコントロール目的ではほとんど使用していません。

それにしても1.4倍の死亡率増加というのはすごく高い数字です。心不全患者ではDIG試験で予後改善しないということが明らかですが、心房細動患者ではなぜむしろ悪化させるのか?心房の不応期短縮で心房細動が増えるためなのか?患者背景、抗凝固療法の有無等の因子はどうなっているのか。興味深いところです。

心房細動のひとにジギタリス漫然長期投与は慎みたい、というのがあらためてのお持ち帰りメッセージ
by dobashinaika | 2012-12-01 00:24 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

大規模観察研究では心房細動のリズムコントロールのほうがレートコントロールより脳卒中/TIAが少ない

Circulation 11月2日オンライン版より

Rhythm Versus Rate Control Therapy and Subsequent Stroke or Transient Ischemic Attack in Patients With Atrial Fibrillation
doi: 10.1161/ CIRCULATIONAHA.112.092494

脳卒中/TIAリスクのリズムvs.レートコントロール間長期追跡比較

P:カナダ・ケベックの65歳以上心房細動データベース登録患者(1999-2007年)

E:リズムコントロール:Ia,Ic,III群薬新規及び従来からの処方例16325人

C:レートコントール:41,193人

O:脳卒中、TIA

T:一般住民ベースの観察研究。平均追跡期間2.8年(最長8.2年)

結果;
1)CHADS2スコア2点以上の治療方針:リズムコントロール少ない (58.1% vs. 67.0%, p<0.001)

2)抗凝固療法施行率:同等(76.8% in rhythm control vs. 77.8% in rate control group)

3)粗脳卒中/TIA罹患率:リズムコントロール群で低い (1.74 vs. 2.49, /100人年 P<0.001)

4)リズムコントロール群優位傾向はCHAD2スコア高い例ほど顕著

5)リズムコントロール群の修正ハザード比は0.80 (0.74-0,87)。このリスクはpropensity スコア修正後に確定

結論:リズムコントロール群は、特に中等度〜高リスク患者でレートコントロール群より低い脳卒中/TIAリスクと関連あり。

### 以前ご紹介したカナダ・ケベックでの観察研究において、脳卒中/TIAをエンドポイントにした解析結果です。

以下のブログで指摘したように、AFFIRM試験より若い集団です。またCHADS2スコア高値はリズム群で少ないというバイアスがあります。もちろん観察研究だからです。それだけに実臨床に近い世界とも言えます。
http://dobashin.exblog.jp/15497347/
http://dobashin.exblog.jp/15543267/

AFFIRM試験ではサブ解析で脳卒中リスクに差はなかったはずですが、結果的に洞調律を維持できた群はやはり予後が良好で、予後規定因子として、抗凝固療法と洞調律維持(結果的に)が挙げられた点が思い起こされます。

心室には効かず心房だけに効く、しかもアミオダロン以上に効く理想の抗不整脈薬があれば、それこそ抗凝固薬が不要な時代となるわけですが、なかなかまだまだ。でもターゲットを絞ればリズムコントロールもまだ十分吟味に値するかもしれません。
by dobashinaika | 2012-11-05 22:47 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心臓再同期療法での心房細動評価による心不全のリスク予測

American Heart Journal 10月号より

Burden of atrial fibrillation and poor rate control detected by continuous monitoring and the risk for heart failure hospitalization
American Heart Journal
Volume 164, Issue 4 , Pages 616-624, October 2012


心臓再同期療法での両心室ペースメーカー(CRTD)による持続モニタリングによる心房細動累積時間、リズムコントロールと心不全リスクの関係に関する検討

【方法】
・ CRTD(90日以上の追跡期間)患者対象の4試験のメタ解析
・ 5分以上の心房細動1日以上、かつトータル1時間以上の心房細動
・ 3グループ
グループ1:8時間以上の発作性心房細動1日以上または30日以上続くレート90/分以上の持続性心房細動
グループ2:レート90以下の発作性心房細動累積1日以上
グループ3:発作性心房細動累積6時間未満またはレート90以下の持続性心房細動

【結果】
1)心房細動(519人,33%)は、心房細動なしに比べ心不全リスクが高い(ハザード比2.0)

2)グループ2は3に比べ、次期30日間での心不全入院リスクが高い(ハザード比3.4)

3)グループ1はさらにリスクが高い(ハザード比5.9)

【結論】CRTDでの心房細動の有無および心拍数評価が、その後の心不全リスク同定に有効。

### CRTDの適応となるよう患者さんの心不全の予測に心房細動の出現、とくに発作性心房細動の累積時間が参考になるとのことです。また持続性心房細動ではレート90以上だと心不全リスクが高いというのもの知見です。

RACEII試験では、心拍数は110くらいにコントロールしても予後に変わりないとのことでしたが、やはりCRTDの適応となる心不全例では、速いレートはハイリスクなのでしょう。
http://dobashin.exblog.jp/10211952/
by dobashinaika | 2012-10-30 23:43 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心房細動除細動後の抗不整脈薬はいつまで投与すべきか:Lancet誌より

Lancet 6月18日早期公開版より

Short-term versus long-term antiarrhythmic drug treatment after cardioversion of atrial fibrillation (Flec-SL): a prospective, randomised, open-label, blinded endpoint assessment trial
doi:10.1016/S0140-6736(12)60570-4


除細動後の抗不整脈薬投与は短期間で良いかどうかについての検討

P:ドイツの44施設において、除細動待ちの持続性心房細動患者を2007~2010年まで登録。

E:除細動成功後フレカイナイド200-300mg/日4週間

C:フレカイナイド200-300mg/日6か月(投薬なし群は早期の結果により除外)

O:持続性心房細動になるまでの時間または死亡:6ヶ月間毎日テレメトリー心電図施行、連続2心電図で心房細動が認められればホルター

T:前向き、無作為割り付け、オープンラベル、エンドポイントはブラインド

結果:
1)投薬なし群を当初設定したが、4週後の感度分析後フレカイニドの優位性が確立したため除外

2)一次エンドポイント:4週間群46%(120/261)vs6か月群39%(103/263)(非劣性p=0.2081)

3)最初の1ヶ月でprimary endopointに達していない患者のポストホック解析では長期投与群が短期投与群より優っていた(ハザード比0.31;p=0.0001)

結論;除細動後短期の抗不整脈薬投与は、長期投与より効果の点で劣っていた。しかし(短期投与は)多くの再発を防ぐことができる。

### 心房筋の活動電位持続時間(不応期)は、心房細動中は短縮しており、持続時間が長いほど短縮します。Allessieの有名な"AF begets AF"の証左です。持続性心房細動を電気的に除細動してもすぐには不応期は改善せず、2~4週後に正常に復するという事実から、その最初の数週だけ抗不整脈薬を投与しただけで再発が抑えられるという仮説を検証するために行われたのが、この研究です。

結論は目論見通りで、持続性心房細動に戻る率は同等とのことでした。心房細動の罹患期間やCHADS2スコアなどの患者背景は不明ですが、無作為割付ですので、おそらく同じと思われます。

はじめの数週で再発した例が多かったということも推測されます。

また結果3)などから考えると、まず除細動後4週間は抗不整脈薬を投与し、この間再発したら長期投与はしない。再発しなければその後長期に抗不整脈薬を投与したほうが良い、という連略が立てられるかもしれません、
最近は、除細動後にアブレーションを考える場合も多いかともいますが、抗不整脈薬を4週間投与してみて再発したら、アブレーションという手段もあり得ると思われます。逆に再発しない例のほうがアブの成績も良好になるとは思われますが。
by dobashinaika | 2012-07-09 23:37 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心房細動リズムコントロールの優位性を示したコホート研究への専門家の見解:heart wireより

先日ブログで取り上げましたカナダ、ケベックのリズムコントロール優位だった大規模コホート試験に対して医学サイトの"heart wire"から、専門家の論評が掲載されています。
http://www.theheart.org/article/1409513.do

モントリオールMcGill UniversityのDr Louise Piloteの見解
・この知見は、レートコントロールを意思決定する前に、その患者が実際リズムコントロールの俎上に上げるべきかどうか、また少なくともリスムコントロールに耐えうる患者かどうかを見ようとすべきである、ということの示唆である。

・AFFIMR前はリズムコントロールはレートコントロールより優位であり、洞調律の維持は心不全、脳塞栓を減らし、死亡率低下に寄与すると考えられていた。しかしAFFIR以降は専門家はどちらも同等と考えるようになった。

・現在我々は、優良なるリズムコントロール薬を持ち合わせていない。それが本当の問題だ。AFFIRMでさえ、リズムコントロール群では慢性化は遅れた(それは脳卒中をより増加した)

・もし可能な限り洞調律を維持出来れば、死亡率は減るかもしれない。しかしそれは我々が良いリズムコントロール薬を持ち合わせていないためであり、それは偶発的なことではない

・我々はリズムコントロールに忍容性があれば、洞調律を維持でき、結局は死亡率を減らすことのできる患者群のいることを知っている

・このことは脳卒中に限ったことではなく、心不全や不整脈にまつわる合併症を減らし、死亡を減らすことも可能であろう

University of CalgaryのDr Anne Gillisの見解
・この研究におけるリズムコントロール群の優位は、ベースラインの差に起因し、薬剤の効果の差ではない

・リズムコントロール群はレートコントロール群より若く(77歳vs.80歳)、ワーファリン使用者が多い(60.1%vs.54.4%)

・心房細動の症状の重症度の記載なし(これによってどちらにするか変わってくる)

・リスムコントロール群の40%にジゴシンが処方されていた

・データとしては面白く、今後への期待はあるが、住民ベース研究としての限界があり心房細動のアプローチ法を変えるべきではない

・リスムコントロールを決定するには患者の症状を書き留めねばならない。抗不整脈薬の有害作用があるからである

・レートコントロールがうまく行かなくてもさらなる最適化を図ることが症状緩和につながる

Editorialの2人はDr Gillに賛成
・リズムコントロールは医学的問題の少ない若年者に偏る、という交絡に陥りがち

・今回の知見は挑発的だが、一般化するには不十分

・より安全で効果的な洞調律維持戦略が考えられ、現代的な抗凝固療法と結びつけば明らかな効果が出るであろう

・CRBANA試験によりアブレーションがリズムコントロールをうわ回る結果が期待される

・しかしながら、再発のことを考えるとアブレーション後早期の抗凝固療法中止は勧められないだろう

### Pilote先生、Gills先生どちらも一理ありです。もちろんコホート研究ですからバイアスがあるのは当然で、リズムコントロール群のほうが「軽い」症例が多いことは否めません。

しかし、AFFIRMでも予後に影響を与えた因子として「洞調律維持できたこと」が統計的に有意であったことが挙げられていますし、途中で抗凝固療法をやめていなければもう少し良い結果が出たことはよく言われています。

Pilote先生の期待もよくわかるし、理論的には陰性変力作用や催不整脈作用のない心房細動予防薬があればそれがベストであることはわかりますが、今現在そんな都合の良いdream drugはありません(心房特異的Kチャネル阻害薬が治験終了段階ですが)。

いまのところ最善のアプローチはまず、レートコントロールが基本。その上で心房細動は「早期発見」を旨とし、なるべく「早期介入」に心がける。プライマリケア医としては、dream drugが出るまで、地道に血圧、血糖コントロールし、症状に応じてアブレーションや抗不整脈薬を考える、ということしかないです。ありきたりですが。
by dobashinaika | 2012-06-11 23:35 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

2万人以上の大規模コホートでは心房細動のリズムコントロールがレートコントロールより予後が良い

Archives of Internal Medicine 6月オンライン版より

Comparative Effectiveness of Rhythm Control vs Rate Control Drug Treatment Effect on Mortality in Patients With Atrial FibrillationRhythm vs Rate Control Drug Treatment
doi:10.1001/archinternmed.2012.2266


リズムコントロールvs.レートコントロールについての大規模住民コホートを対象にした長期追跡試験

P:カナダ、ケベック州の一般住民入院データベース中、1999年~2007年に心房細動の診断で入院下66歳以上の人。入院前の心房細動関連薬の服用はなし。退院7日以内の投与はあり。

E:リズムコントロール

C:レートコントロール

O:死亡率

結果:
1)対象者:26,130人。3.1±2.3年追跡。13,237人(49.5%)死亡

2)治療開始後6カ月の死亡率:リズムコントロール群のハザード比1.07(1.01-1.14)

3)死亡率4年後まで両群で差なし。5年後からリズムコントロール群の死亡率が安定して低下

4)5年後死亡率:リズムコントロール群で低下:ハザード比0.89(0.81-0.96)

5)8年後死亡率:リズムコントロール群で低下:ハザード比0.77(0.62-0.95)
2万人以上の大規模コホートでは心房細動のリズムコントロールがレートコントロールより予後が良い_a0119856_0215241.png


結論:この住民ベースのサンプルでは追跡4年までは両群間に差はないが、より長期の追跡ではリズムコントロールの方が優れていた。

### ツイッター上で@Office_jさんに教えていただき、すぐ読んでみました。

非常に興味深い研究です。AFFIRM研究のリズムコントロールもレートコントロールも予後同じだよ、というその後の不整脈治療パラダイムを決定づけたキーメーッセージを有る意味覆す結果となっています。

リズムコントロールかレートコントロールかは、退院後7日以内の現場での判断によっているようです。

ですので後ろ向きコホート研究として避けられない選択バイアス、例えばリズムコントロール群の方が若いのでは、とか発作回数は少ないのではといった懸念は大有りに思えますが、両群の背景はそれほど差がないように工夫されているようです。

AFFIRMとの違いはいろいろあり、患者背景の違いでは平均年齢が10歳くらい高い、入院患者対象、心不全が多いなどがあります。

治療法の違いでは、アミオダロン使用例が多い、リズムからレートにスイッチした例が多い、初期ワーファリン使用率はAFFIRMより少ないが、本研究内ではリズムコントロール群の方がワーファリン使用率が高い。AFFIRMのように洞調率維持を確認したらワーファリンを止めるというようなことは行われていない(はず)。などがあります。

この差の解釈は大変面白いですが、もっと深く読み込む必要があると感じますので、じっくり読みましたらまたアップすることにします。

とりあえずこのEditorialが参考になります。
Rate vs Rhythm Control in Atrial FibrillationCan Observational Data Trump Randomized Trial
Results?

全くの余談ですが、私、もともとが不整脈屋なので抗不整脈薬には一番のこだわりがあり、「ちゃんとやればリズムコントロールだって捨てたもんじゃない」との思いを長年心の奥にしまいこんでいたので、この論文を読んでやや晴れやかな気分になりました。
by dobashinaika | 2012-06-06 00:26 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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