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カテゴリ:心房細動:ダウンストリーム治療( 60 )

日経メディカルオンライン私の処方:若年者に見られる夜間の心房細動への対処

日経メディカルオンラインの「私の処方」のコーナーで、若年者に多い迷走神経依存型心房細動に対する私の処方を紹介しています。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201403/535556.html

夜間から早朝にかけてよく発作が起こる心房細動は、若年者〜中年者で比較的よく見られますが、基本的には発作性心房細動ですので、I群抗不整脈薬、特にフレカナイド、ピルシカイニド、プロパフェノンなどのIcも大変有効と思います。

ただ、私、抗不整脈薬には少々こだわりがあって、とくにジソピラミドにはもう研修医の時から深くこの薬には関わっており、愛着も多いのです。

この薬にはさんざん痛い目にも会わされてきましたが、助けられても来ました。抗コリン作用がかなり強いので、個人的には夜間型の心房細動に好んで使います。エビデンスもまああるにはあるし、I群薬については機序にこだわりを持って使いたいと思っておりますので。

β遮断薬の少量併用は全然セオリーではないかもしれませんが、ジソピラミドで頻脈傾向になるのを抑え、また発作自体にも効いているような印象を持つ症例が時に見られます。

自律神経が心房細動に及ぼす影響は一筋縄ではいかないひとつの証だと思っていますが、広くおすすめできるかと言われるとやや心もとないのですが。
by dobashinaika | 2014-03-27 23:44 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

GRADEシステムを用いると欧米の心房細動ガイドラインでの抗不整脈薬推奨と利益相反に疑問:JAMAIM誌

JAMA Intern Med 2月17日付オンライン版より

Dronedarone for Atrial FibrillationThe Limited Reliability of Clinical Practice Guidelines
Primiano Iannone, et. al.
JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2013.14485


【疑問】心房細動ガイドラインにおけるドロネダロンの推奨度は妥当か?

【方法】
・抗不整脈薬ドロネダロンに関し、医療系学会からの3つのガイドラインを検証した
・3ガイドラインはAHA(アメリカ)、CCS(カナダ)、ESC(ヨーロッパ)
・GRADEシステムを用いて評価

【結果】
1)レートコントロール薬として:サロゲートマーカー(心拍数)に関してはプラセボよりドロネダロンが優る

2)リズムコントロール薬として:ドロネダロンはプラセボに比べて1000患者あたり13(95%CI;−15〜61)の超過死亡に関連した

3)アミオダロンに比べ、ドロネダロンは効果が低い:1000患者あたり214(130〜294)回多く心房細動が再発

4)アミオダロンに比べ忍容性は同等:薬剤中止となった重度副作用イベント1000患者あたり−28 (−69〜 33)

【結論】
エビデンスの限界にかかわらず、3つのガイドライン全てで心房細動の再発予防にドロネダロンが推奨されていた。今回の知見はこうした臨床ガイドラインの信頼性だけでなく、多くの作成委員とドロネダロンの製薬会社との金銭的関係に疑問を投げかけるものである。

### 限りなく興味深い論文です。イタリア・ボローニャのEmilia Romagna Health and Social Care Agencyというおそらく民間の疫学調査会社のようなところ(?)のEBM部門からの発信と思われます。まったくガイドラインメッタ斬り、という感じです。
全文入手しましたのでかいつまんで紹介します。

ドロネダロンは日本では発売されていませんが、アミオダロンからヨードを排した構造で「副作用の少ないアミオダロン」として注目された薬でした。

AHAガイドラインでは推奨度IIaで「発作性あるいは持続性心房細動の停止後の患者で心血管イベントを減らすために妥当」とされ、「NYHAIV、過去4週以内の非代償性心不全、LVEF35% 以下」は推奨度IIIで禁忌となっています。
ESCでは、再発性心房細動に対して推奨度I、エビデンスレベルAであり、持続性心房細動には推奨度IIIとなっています。(カナダは調べていません、すみません)

今回のガイドラインの評価法にはGRADEシステムが用いられていますが、GRADEはすでに多くのガイドラインに採用されたシステムで、上記のCCSのガイドラインもこの方法を採用していたと思います。詳細は以下のサイトなどを参照ください。
http://www.grade-jpn.com/

ドロネダロンは以下のブログで取り上げましたが、ATTENA試験では入院を減らしましたが、心不全患者対象のANDROMEDA試験では死亡例が増加し試験中止となりました。そして永続性心房細動対象のPALLAS試験でも全てのアウトカムを悪化させたため中止となっています。
http://dobashin.exblog.jp/14029569/

GRADEシステムは推奨の強さをエビデンスレベルだけではなく、価値観や好み、医療資源などを考慮して判定するもので、観察研究のエビデンスに基づく強い推奨や、質の高いエビデンスに基づく弱い推奨もあり得るシステムです。その推奨度はあくまで望ましい効果と望ましくない効果のバランスで決まります。

ですからたとえATTENA試験で入院をへらしても、真のアウトカムである死亡に関してはプラセボとかわらないため臨床上のアウトカムとしては「示されていない」と判定されます。

こうしたアウトカム判定もさることながら、「ガイドラインの質の評価」が興味深いです。Institute of Medicine(米国医学研究所)のチェックリストに基づいて透明性、利益相反の管理、作成グループの構成、ガイドラインとシステマティックレビューの連携などの8基準のチェックリストで3ガイドラインを評価しています。利益相反のパートでは、AHAガイドラインでは12メンバー中4人、CCSは34人中19人、ESCでは25人中10人が製薬会社と何らかの金銭的関係があったと指摘され、それぞれ利益相反管理の評価点は"partial"(一部)となっています。

アウトカム評価については意見の別れるところもあると思われますが、ガイドライン自体の評価を論文に掲載してしまうあたり、JAMAの懐の深さを思います。

この論文を読んでしまったら、当然日本のガイドラインはどうなのか、に興味が移りますね。
by dobashinaika | 2014-02-25 00:11 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

カルシウム拮抗薬はβブロッカーに比べ、心房細動患者の運動耐容能を改善させる:EHJ誌より

European Heart Journal 10月17日付オンライン版より

Calcium channel blockers improve exercise capacity and reduce N-terminal Pro-B-type natriuretic peptide levels compared with beta-blockers in patients with permanent atrial fibrillation
doi: 10.1093/eurheartj/eht429


【疑問】心房細動のレートコントロールにおいて、カルシウム拮抗薬とβブロッカーはどちらが運動耐容能や心機能に良いのか

P:永続性心房細動60例:平均71±9歳、女18人、心機能正常

E/C:ジルチアゼム360mg、ベラパミル240mg、メトプロロール100mg、カルベジロール25mg3週間投与

O:運動負荷試験での運動耐容能(peak VO2)、NT-poBNP

T:無作為化クロスオーバー

【結果】
1)運動耐容能:メトプロロール、カルベジロールはベースラインあるいはカルシウム拮抗薬よりも明らかに低い

2)NT-proBNP:カルシウム拮抗薬2薬でベースラインより明らかに減少 (P<0.001)。βブロッカーで上昇 (P<0.05)

【結論】ベラパミルとジルチアゼムは運動耐容能を維持し、NT^proBNPを減少させた。しかるにメトプロロールとカルベジロールは運動耐容能を減少させ、NT-proBNPを上昇させた。

### 結構衝撃的な結果かもしれません。心房細動のレートコントロールは第一選択βブロッカーと考えられているだけに。面白そうなので全文入手してみました。

用量が日本人にしては結構高用量であること、対象は高齢者が多いことにまず注意です。
それと、追跡期間が3週間のみです。

機序として、陰性変力作用ではなく、βブロッカーの"negative lusitropic action"=弛緩速度減少、つまり心臓が拡張するときそれだけ早く、完全に弛緩できるかがを抑制する力のためと考えられています。

その他には、心房収縮はなく、拡張期心室充満が弱いところでは、βブロッカーの負の作用がより強くでてしまうのではと考察されています。

一方ベラパミルの拡張能改善効果やカルディオバージョン時のスタンニングからの改善効果も指摘されています。

とはいえ、心不全患者においては、βブロッカーが長期的に心機能や運動耐容能を改善するデータはたくさんあり、確立された治療法と言えます。

今回の研究は心機能正常の心房細動患者なので、対象に違いはあるとはいえ、それほどβブロッカーがカルシウム拮抗薬にくらべ心機能の点で引けを取るようには思えないのですが。

より長期の追跡期間、より若年者を組み入れ、より低用量での試験も見てみたいと思います。
by dobashinaika | 2013-10-26 00:18 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

日経メディカルオンライン連載「レートコントロールの目標は本当に80/分未満でいいのか?」更新しました

担当させていただいております日経メディカルオンライン連載”プライマリケア医のための心房細動入門”を更新致しました。

第13回「レートコントロールの目標は本当に80/分未満でいいのか?」です。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/odakura/201308/531899.html
(無料登録要)

レートコントロールは簡単なようで難しいです。
ただβブロッカーをこまめに切り分けて使うと、結構うまくいったりします。
その辺り、ご参考になれば幸いです。

次回はカテーテルアブレーションについて掲載の予定です。
by dobashinaika | 2013-08-28 08:40 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

現場の抗不整脈薬使用はガイドラインから解離している:国際登録研究より

Europace 7月14日付オンライン版より

Inappropriate use of antiarrhythmic drugs in paroxysmal and persistent atrial fibrillation in a large contemporary international survey: insights from RealiseAF
Europace (2013)doi: 10.1093/europace/eut204


【疑問】リアルワールドで抗不整脈薬はガイドライン(2006年のACC/AHA/ESC)通り使われているか?

P:最近12ヶ月以内に心電図またはホルター心電図で1回以上の心房細動発作記録がある患者10,523人:4大陸26カ国参加の国際観察研究
参加医は2009〜2010年までに無作為に選出

【結果】
1)発作性4947人(平均64.7歳)、持続性2341人(平均66.0歳)

2)Ic抗不整脈薬589人11.9%:このうちの20.0%でガイドライン違反

3)ソタロール219人4.4%:このうちの16.0%でガイドラインから逸脱

4)アミオダロン第一選択1268人25.6%:49.9%は心不全、高血圧性の心肥大などなし

【結論】大規模国際登録研究において、発作性、持続性心房細動における抗不整脈薬の使用は国際ガイドラインからいくらか解離が見られた。
アミオダロンの第一選択薬としての使用法が最もかけ離れていた。出版されたガイドラインと現場との大きな解離が顕かとなった。

### I群薬で20%、アミオダロンは50%でガイドラインから逸脱とのことです。Ic薬の逸脱理由は不明ですが、考えられるのは、心不全症例への投与だろうと思われます。日本のガイドラインでも「肥大心、不全心、虚血心」への投与はアプリンジン、ベプリジル、ソタロール、アミオダロンが推奨されてます。おそらく心不全例にも使用されているのかもしれません。ただし、心不全は臨床的に軽症から重症まで様々です。日本ではIa,Ic群薬は保険病名上心不全例には禁忌ですが、必ずしも査定されるとは限りません。実際、軽度の心不全でサンリズムなどを処方されるケースはあると思います。

私は支払基金の審査をしていますが、心不全などの器質的心疾患の適正な評価なく、使いやすいからといって漫然と心不全例にサンリズムを処方する場合、持続性心房細動に漫然とリスモダンなどを出している場合、など意外に目につきます。

ガイドライン通りにリアル・ワールドは動かなくて当然ですが、一方あまりに逸脱していたり、ガイドラインの精神を考慮せず漫然とした処方はこの際再考すべきと思います。
by dobashinaika | 2013-07-29 17:01 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心房細動のレートコントロールvs.リズムコントロールに関するAHRQのレビュー

米国の保健福祉省保健医療研究品質局(AHRQ)から心房細動のリズムコントロールとレートコントロールに関するレビューが出ています。

Treatment of Atrial Fibrillation
AHRQ Publication No. 13-EHC095-EF


アブストラクトだけ要約します。
http://effectivehealthcare.ahrq.gov/ehc/products/358/1521/Atrial-fibrillation-prepublication-draft.pdf

【目的】心房細動管理の1つの戦略—レートコントロールとリズムコントロールについてはさまざまなアプローチ法がありその安全性、有効性は、未だに不明

【方法】PubMed®, Embase®, and the Cochrane Databaseをリソースとするシステマティックレビュー。ランダム効果モデル採用

【結果】
1)182論文レビュ−:
・レートコントロール:14研究。
・レートコントロールを厳格か緩徐か:3研究。
・初回リズムコントロール不良患者へのレートコントロールvsリズムコントロール:6研究。
・抗不整脈薬+電気的除細動:42研究
・リズムコントロール:83研究
・レートコントロール、リズムコントロール比較:14研究

2)レートコントロールのキークエスチョンを引き出す論文は限定的:カルシウム拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)がジゴキシンより有効との強いエビデンスあり

3)電気的除細動:二相性波形のほうが単相波形より効果的(オッズ比4.39)
  200J二相性のほうが360J単相性より効果が低い(オッズ比0.16)

4)抗不整脈薬下の電気的除細動のほうが、無投薬下より効果的(中度エビデンス強度)。ただどの抗不整脈薬型よりよいかは結論なし

5)肺静脈隔離術の抗不整脈薬に対する優位性は選ばれたサブセットの患者(若年で器質的心疾患のない発作性心房細動)において高エビデンス強度(オッズ比6.51)

6)他の心臓手術に追加したMaze手術の僧帽弁膜症のみの手術に対する優位性は中エビデンス強度(オッズ比5.80)

7)レートコントロールvs.リズムコントロール:いずれも中エビデンス強度
全死亡(OR 1.34; 95% CI, 0.89 to 2.02)
心血管死(OR 0.96; 95% CI, 0.77 to 1.20)
脳卒中(OR 0.99; 95% CI, 0.76 to 1.30)
出血イベント(OR 1.10; 95% CI, 0.87 to 1.38)
心血管疾患による入院のみ高強度でレートコントロールがよい(OR 0.25; 95% CI, 0.14 to 0.43)

8)サブ解析が少ないため、患者特性による効果の違いを結論付けることはできなかった

【結論】今回のレビューでは、以前のレビュー同様、両戦略間でわずかのアウトカムの差しか示すことはできなかった。特定の特性の患者におけるアウトカムに対も依然として不確実だった。特に死亡率、脳卒中、心血管入院については特に追加研究が必要

### 6つのキークエスチョンが設定されています
KQ1. レートコントロールの安全性、有効性は何か?
KQ2. 厳格なレートコントロールか緩徐レートコントロールか?
KQ3. 非薬物療法の安全性、有効性は何か?
KQ4. 抗不整脈薬+電気的除細動の安全性、有効性は何か?
KQ5. 非薬物療法と薬物療法、それぞれ単独と併用の安全性、有効性は何か?
KQ6. レートコントロールかリズムコントロールか?

それぞれにレビューされた研究のエビデンス強度が記されていますが、高強度の項目は大変少ないです。限定された患者での肺静脈隔離術はレベルが高いです。それ以外のレートvs.リズムのエビデンスなどは”low”や”insufficient”が多いのが目立ちます。

まだまだこの分野若っていないことが多いようです。かなり分量が多いので、今後少しずつ読んでいくことにします。
by dobashinaika | 2013-06-19 13:36 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

メインテートに「頻脈性心房細動」の適応追加

メインテート(ビソプロロール:田辺三菱製薬)に「頻脈性心房細動」の適応が追加承認されたようです。

http://www.mt-pharma.co.jp/shared/show.php?url=../release/nr/2013/MTPC130614.html

これまでは、高血圧、狭心症、一部の心不全の適応だけであり、心房細動がなかったのが不思議な感じです。これで、「保険病名」を気にしなくてすみます。
by dobashinaika | 2013-06-16 19:10 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

日経メディカルオンライン連載「〜、リズムコントロールか、レートコントロールか?」更新しました

日経メディカルオンラインの連載・プライマリケア医のための心房細動入門ノ第11回を更新しました。

今回は「発作を繰り返す患者には、リズムコントロールか、レートコントロールか?」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/odakura/201305/530506.html

心房細動には意思決定が難しい3重要問題があります。
1つは抗凝固療法をするかしないか
2つ目はリズムコントロールかレートコントロールか
3つ目はカテーテルアブレーションを受けるか
です。

どれもこれも、ハイリスクハイリターンの課題であり、なかなか意思決定は一筋縄ではいきません。

以前から臨床上の意思決定を行う際は、今回の連載の図1に示す捉え方、すなわちその医療行為の禁忌をおさえた上で、EBMの3要素であるエビデンス、患者の好み、医師の専門性を同時に総合的に考えるというフレームワークを提案しています。
a0119856_2062771.jpg


それぞれがカテゴリーミスマッチです。
「科学的、数値的な証拠」と「患者の好き嫌い、感情世界」は相容れる領域ではありません。「患者世界」と「医師世界」のすり合わせも困難です。原理的に「総合的に」考えるのは不可能なのですが、それをしなければならないのが日常臨床です。それをどうするかを知りたい、と言われても困るのですが。

本当は、この3つは同じ一つの医療の流れの中にある別な面を見ているのにすぎないのかもしれません。この様に二項対立あるいは三権分立させることが本当に良いことかはわかりません。便宜的な考え方の整理としてとりあえずは使えるかと思います。
by dobashinaika | 2013-05-27 20:09 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

ジゴキシンが心房細動患者の予後を悪化させるというエビデンスは乏しい;AFFIRM試験サブ解析

European Heart Journal 4月16日付けオンライン版より

Lack of evidence of increased mortality among patients with atrial fibrillation taking digoxin: findings from post hoc propensity-matched analysis of the AFFIRM trial
doi: 10.1093/eurheartj/eht120


【疑問】AFFIRM試験においてジゴキシンは心房細動患者の死亡率を増加させるか?

P:AFFIRM試験参加者

E:登録時のジゴキシン服用者のうち、対照群と59のベースライン属性によるpropensityスコアをマッチできた878人

C:同様にスコアマッチした非ジゴキシン服用者878人

O:死亡率

【結果】
1)両群あわせて年齢平均70歳。女性40%、3.4年フォロー

2)死亡率:ジゴキシン群14%vs. 非ジゴキシン群13%:ハザード比1.06 (0.83−1.37), P=0.640

3)入院率;両群で有意差なし:ハザード比0.96

4)非致死性不整脈:有意差なし:ハザード比0.90

【結論】ベースラインの初期治療時ジゴキシン服用者において、死亡率あるいは入院率が増加するエビデンスは見いだせなかった。

### 昨年11月の同じEuropean Heart Journalに発表されたAFFIRM試験サブ解析とは、真逆の内容です。
http://dobashin.exblog.jp/16894537/


アブストラクトだけ読んでしまうと論文というものが信じられなくなります。この違いを解く鍵は、統計解析の方法によります。

くわしくはEditorialをご覧いただきたいのですが、大まかに言うと、以前紹介したWhitbeckらの論文では、試験当初ジゴキシンを処方された患者さんが途中でジゴキシンを中断してしまった場合、非ジゴキシン群として扱うように決められていました。たとえば最初の9ヶ月ジゴキシンを服用していて、その後服用を中止し、死ぬまでの残り9ヶ月ジゴキシンを飲まなかった場合は、はじめの9ヶ月はジゴキシン群として生存として扱い、次の9ヶ月は非ジゴキシン群として生存として扱い、18ヶ月の時点では死亡として扱うというものです。
一方、今回の論文ではジゴキシン服用者の予後はあくまでベースライン登録時で決め、はじめの6ヶ月ジゴキシン服用し、その後中断した患者や、割り付け時にジゴキシンの情報がなかったものは除外されています。
http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2013/04/10/eurheartj.eht087.extract
a0119856_2357754.png



このように両論文では、ジゴキシン服用者の定義が異なることになります。一見以前紹介したWhitbeckらの方が、より詳細なモデルを使用しているように見えますが、欠点もあります。この分析法だと当初からのジゴキシン非服用者が、途中から心不全を起こし、その治療としてジゴキシンを開始した場合、もしその患者が亡くなった場合はジゴキシンが死亡に寄与したとみなされてしまいます。

どちらも一長一短ですね。Editorialではそもそもpropensityスコアマッチによる、非ランダム化の後付け解析であり、所詮無作為化試験を越えることはできないとしています。

 この2論文はEBMerが後付け解析はあくまで後付け解析、鵜呑みにするな、ということを説くのに、非常に適したサンプルとなるかもしれません。

で、ジゴキシン、どうしましょう?(私は心機能正常例ではほとんど使っていませんが)
by dobashinaika | 2013-04-25 23:54 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心機能低下例心房細動発作にはランジオロールがジゴキシンより優れる:J-Land Study

Circulation Journal 4月号より

Urgent Management of Rapid Heart Rate in Patients With Atrial Fibrillation/Flutter and Left Ventricular Dysfunction 
– Comparison of the Ultra-Short-Acting β1-Selective Blocker Landiolol With Digoxin (J-Land Study) –
Circulation Journal
Vol. 77 (2013) No. 4 908-916


【疑問】左室機能低下例の心房細動/粗動に対する急速な心拍数コントロールに関して、ランジオロールはジゴキシンに比べて優れているか?

P:心房細動/粗動発作時心拍数120/分以上で、LVEF25-50%の患者200人

E:ランジオロール:93人:投与量1−10μg · kg–1 · min–1

C:ジゴキシン:107人

O:心拍数管理成功=投与2時間後、心拍数20%以上減少かつ心拍数110未満

【結果】
1)投与前心拍数:ランジオロール群138.2±15.7、ジゴキシン群138.0±15.0

2)心拍管理成功例:ランジオロール群48%、ジゴキシン群13.9% (P<0.0001)

3)重症副作用は両群とも2〜3例

【結論】ランジオロールは左室機能低下、心房細動/粗動例の心拍数管理においてジゴキシンより優れている。臨床現場でのオプションとして考えるべき。

### 3月の日本循環器学会でのLate breaking clinical trialで発表されたJ-Land Studyです。

ランジオロールはオノアクトとしてすでによく使われていますが、開心術後心房細動患者に対するジルチアゼムとのオープンラベル試験では優位性が示されています。
http://dobashin.exblog.jp/15232450/

これまで「手術時の頻脈性不整脈に対する緊急処置:心房細動、心房粗動、洞性頻脈」「手術後の循環動態監視下における頻脈性不整脈に対する緊急処置:心房細動、心房粗動、洞性頻脈」に対して保険適応がありました。

ことしの2月に、おそらくこの試験の結果を受けてのことかと思われますが、心機能低下例における頻脈性不整脈(心房細動・粗動)」に対する承認申請が、製薬会社(小野薬品)からなされたようです。

私は殆ど使ったことがない薬ですが、保険適応となれば、かなり使われることになるのでしょう。実際使用経験がある人の声を聞いてみたいところです。

知らない薬、使ったことのない薬、新薬、、、そういったものを自分も使うかどうかの判断基準というのは、結局エビデンスより何より、やはり実際使用経験のある人の声、しかも自分が信頼している人の声というのが、第一優先基準です。リスクコミュニケーションと同じですね。まず情報の発信者を信頼出来るか否か。そこにかかります。ちょっと脱線。
by dobashinaika | 2013-04-17 20:14 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

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