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カテゴリ:抗凝固療法:リアルワールドデータ( 118 )

ワルファリンの処方や心房細動の血栓塞栓率には地域差がある:CJ誌

Regional Differences in Frequency of Warfarin Therapy and Thromboembolism in Japanese Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation – Analysis of the J-RHYTHM Registry –
Circulation Journal http://doi.org/10.1253/circj.CJ-16-0300


疑問:ワルファリン使用に地域差はあるのか?

方法:
・J-RHYTHM Registryに登録している施設を10の地域に分ける
・7406例,2年追跡

結果:
1)CHADS2スコア平均:最高は四国(2.1±1,3)

2)ワルファリン使用:最低は北海道(79.3%),四国(81,0%)

3)PT=INRには左図カナダ明らかな地域差あり(P<0.05)

4)血栓塞栓症:地域差あり(P<0.001)。最高は四国

5)血栓塞栓症と出血は逆相関あり(P=0.062)

6)多変量解析では地域差は血栓塞栓症の独立因子

結論:血栓塞栓症リスク,ワルファリン使用,ワルファリン使用の強度や質には明らかな地域差あり。地域は血栓塞栓症の独立危険因子

### J-RYTHM Registryはあくまで心房細動症例の連続登録なので,ワルファリン使用率が高いことがすなわち適切なワルファリン使用であるとはいえないだろうと思います。

しかしながらやはり,各因子補正後でもワルファリン使用率の低い北海道,四国(80%前後)の血栓塞栓率が各2.5%,1.8%なのに対し,使用率最高の北越(94.4%)の血栓塞栓症率は0.3%と低くなっています。四国を1.0とすると北越は0.12にもなります。ちなみに東北は0.28とまずまずです。

よくみると平均のINRやTTRがよい関西,北越などではやはり血栓塞栓症率が低いようです。

こうした地域差はどこからくるのか。地域に凝固能に関する目に見えない交絡因子があるのか。いわゆる「風土」なのか。各地の主要大学の専門性なのか。はたまた製薬企業の活動度の違いなのか。何なのでしょう。

$$$ 今日は曇りでスーパーマーズ見られず。代わりに先週出ていた虹の写真
ワルファリンの処方や心房細動の血栓塞栓率には地域差がある:CJ誌_a0119856_2140313.jpg

by dobashinaika | 2016-06-01 21:42 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

米国においてはDOAC発売以降抗凝固薬処方が増えている:DA誌

A Comparison of Oral Anticoagulant Use for Atrial Fibrillation in the Pre- and Post-DOAC Eras
Drugs & Aging First online: 06 May 2016


米国の民間データベースから,非弁膜症性心房細動に対する抗凝固療法の処方率についての報告です。

・2005〜2009年をpre-DOAC,2013年をpost-DOACとする
・抗凝固薬処方率;42.2%→54.0%
・より高リスクの人の処方率が相対的に増加:33.9%増
・中リスク,高リスクでの出血も増加:中30.4%,高28.6%
・患者背景に差はなし

結論:非弁膜症性心房細動に対する抗凝固療法は全体として増加。結果良好なRCTとアグレッシブな市場によるものである。

### 別な米国の研究ではふえていないというのもありますが,日本のShinken databaseなどでは確実に増えています。日本ではとくにDOACは低リスク例に出すようになったような気がしますが,米国では高リスク例に多く出されてきているようです。

その分出血も増えているということですが,どの程度のものか知りたいところです。

$$$ 遅くなりました。先週の仙台国際ハーフマラソンです。知り合いが何人も走っていました。
米国においてはDOAC発売以降抗凝固薬処方が増えている:DA誌_a0119856_1826588.jpg

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by dobashinaika | 2016-05-14 18:28 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

心原性脳塞栓高リスク患者の50%弱にしか抗凝固薬が処方されていない(米国):JAMA-C誌

Oral Anticoagulant Therapy Prescription in Patients With Atrial Fibrillation Across the Spectrum of Stroke RiskInsights From the NCDR PINNACLE Registry
JAMA Cardiol. Published online March 16, 2016

疑問:リスクが高い患者ほど抗凝固薬が処方されているのか?

方法:
・ACC (American College of Cardiology)の横断研究(PINNACLEレジストリー)
・心房細動の外来患者。2008年〜2012年
・CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコアを算出
・各リスクスコア別の抗凝固薬処方状況を検討

結果:
1)429,417人。平均71.3歳

2)抗凝固薬44.9%,抗血小板薬飲み25.9%,アスピリン+チェノピリジン系5.5%,抗凝固なし23.8%

3)アスピリン単独投与例に比べると,リスクスコアが1点上昇するごとに抗凝固役の処方率が上昇:
CHADS2スコア:1点上昇ごとにオッズ比1.158; 95% CI, 1.144-1.172; P < .001
CHA2DS2-VAScスコア:オッズ比1.163; 95% CI, 1.157-1.169; P < .001

4)全体としては,抗凝固薬の処方率は高リスク患者(CHADS2スコア3点以上,CHA2DS2-VAScスコア4点以上)でさえ50%を超えていない。
心原性脳塞栓高リスク患者の50%弱にしか抗凝固薬が処方されていない(米国):JAMA-C誌_a0119856_212121.png

結論:外来心房細動患者の大規模で質の高い登録研究においては,抗凝固薬の処方率は高リスクスコアほど上昇していた。しかしその傾向は頭打ちとなり,高リスク患者の半分弱にしか抗凝固薬は処方されていなかった。

### 米国でもやはりこうなんですね。FUSHIMIのグラフとほとんど相似形ですね。やはり塞栓症の高リスク例は出血も高リスクだからに他ならないと思います。米国でもアスピリンに安住しているケースがかなり見られるのも興味深いです。

NOAC時代以降はどうなっているのか。これが一番の興味。 

$$$ 仙台はようやく梅が満開〜散り始めですね。最近ちょっと朝の散歩をサボっていました。春になってまた再開です。
心原性脳塞栓高リスク患者の50%弱にしか抗凝固薬が処方されていない(米国):JAMA-C誌_a0119856_21212931.jpg

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by dobashinaika | 2016-03-22 21:23 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本の実臨床におけるNOACの効果(J-RHYTHMレジストリー2):仙台で開催中の日本循環器学会より

Beneficial Effect of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation– Results of the J-RHYTHM Registry 2 –
Circulation Journal: Advanced Publication 2016/3/18


疑問:日本のリアル・ワールドにおけるNOACの効果はどうか

方法:
・J-RHYTHM Registryをさらに3年間延長しての多施設,前向き,観察研究
・登録施設での外来の心房細動症例を連続登録
・5年追跡

結果:
1)6616例,男71.0%,69.7歳,CHADS2スコア平均1.7点

2)ワルファリン3964人,NOAC923人,抗凝固薬なし753人,データなし976人

3)血栓塞栓症:ワルファリン4.9%,NOAC2.1%,抗凝固薬なし6.0%

4)大出血:ワルファリン5.9%,NOAC2.4%,抗凝固薬なし4.8%

5)全死亡:ワルファリン5.8%,NOAC1.4%,抗凝固薬なし13.9%(P<0.001 for each)

6)ワルファリン群(CHA2DS2-VAScスコア,抗血小板薬補正後):全死亡において抗凝固薬なし群より良好(OR 0.30, 95%CI 0.23–0.39, P<0.001)

7)NOAC群:全てのイベントで良好。血栓塞栓症(OR 0.42, 95% CI 0.24–0.74, P=0.003),大出血(OR 0.53, 95% CI 0.31–0.93, P=0.027),全死亡(OR 0.10, 95% CI 0.06–0.18, P<0.001)
日本の実臨床におけるNOACの効果(J-RHYTHMレジストリー2):仙台で開催中の日本循環器学会より_a0119856_18352536.jpg

結論:NOACは日本の全てのタイプの非弁膜症性心房細動におけるイベント率を改善する可能性がある

### 現在仙台で行われている第70回日本循環器学会のLate Breaking Cohort Studyで昨日(3月18日)発表されたJ-RYTHTM Registryの延長スタディです。2012年から2014年の3年間のデータですのでNOAC時代に入ってからのデータとなります。

NOACがいいということですが,まず登録研究ですので患者背景が違います。年齢はワルファリン群70.1歳,NOAC群67.1歳で有意にNOAC群が若く,CHADS2スコアもワルファリン群1.7点,NOAC群1.4点です。他にもNOAC群の方が発作性が多く,心不全が少なく,75歳以上が少ないというように,全体的にNOAC群の方が低リスク例に投与されているということができます(CHADS2スコア0点が21.0%もあります)。

NOACの内訳はダビガトラン4.9%,リバーロキサバン6.1%,アピキサバン2.8%です。2012年から2014年にかけてワルファリン群75.4%→63.6%でしたが,NOAC群6.1%→20.4%と増えており,全体のnは減少していますので,ワルファリンからNOACに切り替えた症例が多いことがうかがえます。

現在大きな病院で行われているようなNOACの適応基準でNOACを投与していれば,NOACは大変良いと考えます。

$$$ 今までにないほど仙台国際センターも,地下鉄駅も人と熱気であふれていました。展示棟の存在が大きいですね。非常に大きなスペースで驚きました。
私のところからは歩いても行けるのですが,遠方の方は宿泊が大変と聞いています。今日あたりも街は循環器の先生であふれているでしょうか。
 
日本の実臨床におけるNOACの効果(J-RHYTHMレジストリー2):仙台で開催中の日本循環器学会より_a0119856_18345779.jpg

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by dobashinaika | 2016-03-19 18:37 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

DOAC発売により抗凝固薬の処方は増えたのか?:AJCD誌

Suboptimal Use of Oral Anticoagulants in Atrial Fibrillation: Has the Introduction of Direct Oral Anticoagulants Improved Prescribing Practices?
Am J Cardiovasc Drugs. 2016 Feb 10.


疑問:DOAC発売後,抗凝固薬処方は増加したか?

方法:前向き,または後ろ向き実臨床観察研究のメタ解析

結果:
1)多くの研究では,DOAC導入後も抗凝固薬の使用は最適ではないことが示されている

2)特に高リスク例で顕著に使用されていない。

3)DOACの採用は文献によりまったくさまざま

4)いまだに多くの国でデータの統合は遅れている

論:現在利用できるデータでは,DOAC時代にもかかわらず心房細動患者における抗凝固療法は最適な使用状況とはいえず,ガイドラインの遵守も良くない。

### いろいろなデータがありますが,たとえば心房細動におけるDOAC導入後の抗凝固薬処方率は約40%で,あまり変わっていないとのことです。

あるデータでは,DOAC初が以前31.7%,発売後33.7%。GARFIELD-AF第1コホートではVKA59%,DOAC4%です。

DOACの占有率も,低いところで日本のFUSHIMIで6.3%(2014年)のほか,10%台のデータが多いですが,2015年の研究では37.8〜48.8%位くらいの物もあります。

筆者らは,コスト,アドヒアランス遵守の厳しさ,中和薬がない,特殊な例へのエビデンスの欠乏などを挙げているようです。

日本の状況ですが,少なくとも私が見聞きする限りでは,ワーファリンのみの時代に比べれば処方は増えているように思われますが,当初考えられているほど,抗凝固薬自体プライマリケアの場で広く使われているとはいえないと思われます。

$$$ 駐車場にいたところを激写
DOAC発売により抗凝固薬の処方は増えたのか?:AJCD誌_a0119856_22231248.jpg

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by dobashinaika | 2016-02-24 22:24 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

持続性心房細動のほうが発作性より血栓塞栓症が多い:EHJ誌システマティックレビュー

The impact of atrial fibrillation type on the risk of thromboembolism, mortality, and bleeding: a systematic review and meta-analysis
Eur Herat J First published online: 16 February 2016


疑問:心房細動のタイプによって血栓塞栓症,出血,死亡率に違いはあるのか?

方法:
・PubMed検索によるシステマティックレビュー
・非発作性 (NPAF)vs.発作性 (PAF)

結果:
1)12研究,99996人

2)血栓塞栓症ハザード比(NPAF vs. PAF)(非補正時) :1.355 (95% CI: 1.169–1.571, P < 0.001)

3)血栓塞栓症ハザード比(抗凝固薬なし) : 1.689 (95% CI: 1.151–2.480, P = 0.007)

4)血栓塞栓症ハザード比(補正後): 1.384 (95% CI: 1.191–1.608, P < 0.001)
持続性心房細動のほうが発作性より血栓塞栓症が多い:EHJ誌システマティックレビュー_a0119856_2328126.gif

5)全死亡率ハザード比(非補正時):1.462 (95% CI: 1.255–1.703, P < 0.001)

6)全死亡率ハザード比(補正時後):1.217 (95% CI: 1.085–1.365, P < 0.001)
持続性心房細動のほうが発作性より血栓塞栓症が多い:EHJ誌システマティックレビュー_a0119856_23253460.gif

7)出血ハザード比(非補正時):1.00 (95% CI: 0.919–1.087, P = 0.994)

8)出血ハザード比(補正時後):1.025 (95% CI: 0.898–1.170, P = 0.715).

結論:非発作性心房細動は,発作性に比べて血栓塞栓症と死亡が有意に増加。このデータは心房細動の進展に関する新たな治療と,さらなる研究を必要とする。

### 伏見レジストリ-でも,最近同様の見解が出ていますね。
http://dobashin.exblog.jp/21797910/

やはり持続性のほうが良くないというデータは近年数多くでています。CHADS2スコアといい,ヘパリンブリッジといい,発作性-非発作性の差といい,ここ1〜2年で心房細動治療の常識とされていた知識が揺らぎつつあるように思われます。次回ガイドラインまで待てない感じですね。

$$$ 今週日曜日,20℃あった2月の午後の空。雲が分厚く不気味でした。翌日はまた最高気温5度以下。体調には十分ご注意ください。
持続性心房細動のほうが発作性より血栓塞栓症が多い:EHJ誌システマティックレビュー_a0119856_23245597.jpg

by dobashinaika | 2016-02-18 23:29 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

リバーロキサバン,ダビガトラン,ワルファリンの服薬アドヒアランス比較;EP誌

Real-world persistence and adherence to oral anticoagulation for stroke risk reduction in patients with atrial fibrillation
Europace DOI: http://dx.doi.org/10.1093/europace/euv421 euv421 First published online: 31 January 2016

疑問:DOACとワルファリンのパーシスタンスとアドヒアランスはどうか?

方法:
・ドイツのプライマリ・ケア施設,7265例
・抗凝固薬の新規投与例,心房細動,ダビガトラン,リバーロキサバン,VKA
・少なくとも180日追跡,処方後360日まで

結果:
1)パーシスタンス(180日後):リバーロキサバン66.0%(対VKA=P,0.001, 対ダビガトランP=0.008),ダビガトラン60.3%,VKA58.1%

2)パーシスタンス(360日後):リバーロキサバン53.1%,ダビガトラン47.3%,VKA25.5% (NOAC vs.VKA, P<0.001

3)パーシスタンス(360日以降):リバーロキサバンのほうがダビガトランより良好 (P=0.026)

4)男性,糖尿病ありは,パーシスタンスを高める

5)腎機能低下,抗血小板薬は低める

6)高アドヒアランス (MPR80以上);リバーロキサバン使用例の61.4%,ダビガトランの49.5%

7)平均MPR: リバーロキサバン0.76 (0.74^0.78),ダビガトラン0.67 (0.65-0.69)

結論:リバーロキサバン,ダビガトランはVKAよりも処方後360日のパーシスタンス良好。リバーロキサバンはダビガトランよりパーシスタンス,アドヒアランス良好。何が影響するのかに関してはさらなる研究必要

### NOACのほうがワルファリンより薬剤の継続率が良いことはすでにいくつかの報告があります。
自己中止率 http://dobashin.exblog.jp/22299043/
NOAC vs.VKA http://dobashin.exblog.jp/21536136/

ちなみにパーシスタンスは薬の導入から中止までの時間を指し,ずっと継続している時間の割合を示すとされています。

リバーロキサバンで高い継続率とのことですが,それでも1年で53%ですね。やはりアドヒアランス問題はなかなかに難しいという感じです。

そうこうしているうちにBMJに「リバーロキサバン:エビデンスは信用できるか?」というBMJらしい問題提起がありました。
http://www.bmj.com/content/352/bmj.i575

あとでゆっくり読みます。
by dobashinaika | 2016-02-04 22:22 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

抗凝固薬の自主中止率は47%でDOACのほうがワルファリンよりやや良い(米国の観察研究):AJMC誌

Oral Anticoagulant Discontinuation in Patients With Nonvalvular Atrial FibrillationAm J Manag Care. 2016;22(1):e1-e8

疑問;抗凝固薬服用の中止理由はなにか?

研究デザイン:後ろ向きコホート

方法:
・the MarketScan claims database(2009〜2012年)
・心房細動に対する新規の抗凝固薬処方から6ヶ月処方継続例
・服薬中止(自己中止あるいは医師による中止)に関わる因子を分析

結果:
1)12129人:ワルファリン67.1%,DOAC32.9%

2)中止率47.3%(追跡期間平均416.6日)。平均中止期間120日

3)DAOC中止率vs. ワルファリン中止率:ハザード比0.91(0.86-0.97)

4)65歳以上高齢者(対18〜34歳):ハザード比0.32(0.24-0.43)

5)糖尿病:ハザード比0.84(0.77-0.90)

6)脳卒中/TIAの既往:ハザード比0.65(0.56-0.75)

7)肺塞栓の既往:ハザード比0.71(0.58-0.88)

8)心不全:ハザード比0.80(0.74-0.87)

9)大出血既往ありの患者は中止率高い:ハザード比1.20(1.08-1.34)

結論:非弁膜症性心房細動例の抗凝固薬中止率は高い。DOACはワルファリンに比べて中止率が低い。複合合併症のある患者は中止率低い。出血の既往例は中止率高い。


### 中止の定義は,最後の処方から60日以内に処方の希望(受診)がなかった場合としています。他の抗凝固薬に切り替える例は含まれていません。DOACはダビガトランとリバーロキサバンで,アピキサバン以降は時間的に含まれていません。

米国なので処方期間も長めとは思いますが,それにしても中止率47%というのは,非常に多いように思われます。DOACの中止率もワルファリンよりやや良いとはいえ,劇的に改善されてはいないように思います。

日本(少なくとも当院)ではここまでやめてしまう人はいないと思いますが,やっぱりDOACの使い分け云々を考える前に,いかに中止しないようにするかのほうが優先順位は高そうです。

$$$ 先日の雪の日に庭に迷い込んだネコ。ただし足跡のみ
抗凝固薬の自主中止率は47%でDOACのほうがワルファリンよりやや良い(米国の観察研究):AJMC誌_a0119856_22192173.jpg

by dobashinaika | 2016-01-27 22:20 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本の代表的心房細動データベースにおける抗凝固薬使用とアウトカムの変遷:CJ誌

Nine-Year Trend of Anticoagulation Use, Thromboembolic Events, and Major Bleeding in Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation – Shinken Database Analysis
Circulation Journal released online January 21, 2016


疑問:日本の医療施設における抗凝固薬の使用状況及びアウトカムはどうか?

方法:
・心臓血管研究所(東京)におけるShinken Databaseの2004〜2012年のデータ
・非弁膜症性心房細動と診断された2434例
・3つの時期に分類:2004−2006年(681例),2007−2009年(833例),2010−2012年(920例)

結果:

1)抗凝固薬処方数:3期を通じて安定して増加

2)大出血;2004−2007年から2007−2009年にかけてワルファリン使用にもかかわらず減少傾向:低用量,抗血小板薬併用回避のため

3)血栓塞栓症:改善なし

4)2010−2012年:低リスク患者へのDOACが血栓塞栓症の減少及び大出血(特に頭蓋外出血)の増加に寄与した。

5)上記時期の高リスク患者はほとんどの例でワルファリン治療で血栓塞栓症,大出血とも改善されなかった

結論:過去9年間の脳卒中予防の傾向としては抗凝固薬処方の安定した増加と血栓塞栓症,大しゅっけつの部分的な減少を認めた。DOC時代になっても高リスク患者の血栓塞栓症予防は不十分であり,DOACは頭蓋外出血増加に関係していた。


### 非常に膨大なデータで,興味深いポイントがたくさんあり,結果の表をずっと眺めていても飽きません(私だけ?w)

まず抗凝固薬処方率は3期ごとで40.7→47.5→55.9%と増加。2010−2012年のDOAC処方率は25.5%。CHADS2スコア0点の42.5%(2004〜2006年は30.8%),1点の62.8%(2004〜2006年は45.2%)に処方。CHADS2スコア2点以上のINR平均は1.94(12ヶ月)

血栓塞栓症は3期ごとで1.2→1,2→0.65%/年で減少傾向だが有意差なし。
大出血は5.7→1.6→6.5%/年で3期目に増加したのは頭蓋外出血。

3期目で血栓塞栓症が減ったのはCHADS2スコア0点の低リスクに多く出してその層はそもそも血栓塞栓症が少ないからで,CHADS2スコア2点以上の高リスク層では減っていない,大出血が多かったのはDOACにより頭蓋外出血が増えたから,と考察されています。

これを見ると,DOAC時代になり処方は増えているが,高リスクに対する血栓塞栓症と頭蓋外出血のアウトカムはほとんど改善されていないということも言えそうです。ただし高リスク例では主にまだワルファリンが出されていたようです。

3期目が2010〜2012年で完全なDOAC時代とは言いがたいフェーズですので,これ以降のデータがむしろ待たれるところです。

$$$ 毎月第4週週末は東京で総合診療セミナー。寒くても恒例の朝散歩。東京は晴れでした。
日本の代表的心房細動データベースにおける抗凝固薬使用とアウトカムの変遷:CJ誌_a0119856_21373064.jpg

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by dobashinaika | 2016-01-25 21:42 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)

糖尿病合併心房細動では血糖管理よりも罹患期間が虚血性脳卒中リスクに影響:JACC誌

Effect of Diabetes and Glycemic Control on Ischemic Stroke Risk in AF PatientsATRIA Study
J Am Coll Cardiol. 2016;67(3):239-247


疑問:糖尿病の罹患期間やHbA1c値と心房細動患者の脳卒中リスクとの関係は何か?

方法:
・ATREIA研究:カリフォルニアの地域ベースの心房細動患者コホート
・1996〜2003年に登録
・糖尿病合併心房細動患者
・アウトカム:糖尿病罹患期間3年以上,3年未満の2群。HbA1c9.0%以上,7.0−8.9%,7.0%未満の3群間での虚血性脳卒中発症率

結果:
1)罹患期間:3年未満40%,3年以上60%(2011例の検討)

2)HbA1c:9.0%以上19%,7.0−8.9%36%,7.0%未満46%

3)罹患期間3年以上例の虚血性脳卒中ハザード比(対3年未満):1.74(1.10−2.76)

4)年齢別発症:75歳以上>75歳未満

5)HbA1c9.0以上例,7.0−8.9%例の虚血性脳卒中ハザード比(対7.0%未満):1.04(0.57−1.92),1.21(0.77−1.91)


結論:血糖コントロールよりも糖尿病罹患期間のほうが,糖尿病合併心房細動患者の虚血性脳卒中予測に重要
糖尿病合併心房細動では血糖管理よりも罹患期間が虚血性脳卒中リスクに影響:JACC誌_a0119856_18585433.jpg

### 血糖管理よりも,罹患期間のほうが脳卒中に関係するとのことですが,考えてみれば,糖尿病でなくても長い観察期間の患者さんお方が脳卒中になりやすいとも言えるので,そうかなあというしかない感じです。同じ罹患期間を患者さんを比較したら,やはり血糖管理が悪い人のほうがおきやすいのかどうか。。

以前も糖尿病罹患期間は関係ありとの研究がありました。CHADS2スコア1点で糖尿病だけで適応に悩む場合,罹患期間が長い時は抗凝固考えるという材料にはなるかもしれません。
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by dobashinaika | 2016-01-20 19:00 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


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