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カテゴリ:抗凝固療法:ガイドライン( 39 )

日本の不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)が発表されました

先日横浜で開催された第83回日本循環器学会学術集会と同時発表されました「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)」について概観します。


膨大ですので,とりあえず心房細動のところだけ。

4.1.3 AF アブレーションの治療適応

<推奨クラス I:評価法・治療が有用,有効であることについて証明
されているか,あるいは見解が広く一致している.>
・薬物治療抵抗性の症候性発作性 AF(高度の左房拡大や左室機能低下を認めず)(エビデンスレベル(A)

<推奨クラス IIa:データ,見解から有用,有効である可能性が高い>
・症候性再発性発作性 AF に対する第一選択治療としてのカテーテルアブレーション(B)
・心不全(左室機能低下)の有無にかかわらず,同じ適応レベルを適用する(B)
・徐脈頻脈症候群をともなう発作性 AF (B)
・症候性持続性 AF (B)

<推奨クラス IIb:有用性,有効性がそれほど確立されていない>
・症候性長期持続性 AF (B)
・無症候性発作性 AF で再発性のもの(C)
・無症候性持続性 AF (C)

<推奨クラス III:評価法・治療が有用でなく,ときに有害となる可能
性が証明されているか,あるいは有害との見解が広く一致している>
・左房内血栓が疑われる場合(A)
・抗凝固療法が禁忌の場合(A)

※ 薬物治療抵抗性:少なくとも 1 種類の I 群または III 群抗不整脈薬が無効

<症候性AFのフローチャート>
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< AF カテーテルアブレーションの適応に関する総合的判断>
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4.3 AFアブレーション周術期の抗凝固療法

<推奨クラス I>
・ワルファリンもしくはダビガトランによる抗凝固療法が行われている患者では,休薬なしでAF アブレーションを施行することが推奨される(B)
・ヘパリンは,鼠径部穿刺後あるいは心房中隔穿刺後に至適用量をボーラス投与し,アブレーション手技中は ACT 値を 300 秒以上に維持する(B)

<推奨クラス IIa >
・持続性 AF および高リスク例(CHADS2 スコア 2 点以上)では,ワルファリンあるいはDOAC を,少なくとも 3 週間以上使用すべきである(C)
・リバーロキサバン,アピキサバンによる抗凝固療法が行われている患者では,休薬なしで AFアブレーションを施行することが推奨される(B)
・エドキサバンによる抗凝固療法が行われている患者では,休薬なしで AF アブレーションを施行することは合理的である(B)
・DOAC による抗凝固療法が行われている患者では,AF アブレーション施行前に抗凝固薬を1 もしくは 2 回休薬し,アブレーション後に再開することが推奨される (B)
・術後の抗凝固療法(ワルファリンあるいは DOAC)は,再発の有無にかかわらず,少なくとも 3ヵ月間継続することが推奨される(C)
・術後 3ヵ月以降の抗凝固療法(ワルファリンあるいは DOAC)に関しては,長期経過観察期間中の AF 再発を考慮し,CHADS2 スコア 2 点以上の患者では継続投与することが望ましい(C)

### 学会発表と同時のWeb掲載でしたので,現時点で世界で最も新しいアブレーションのガイドラインです。

AFアブレーションの最も良い適応(推奨度I)は「抗不整脈最低1剤使用でも発作が起きる発作性心房細動」です。いきなりするのは推奨度IIaです。しかしながらはじめから症候性のAFで抗不整脈薬1剤程度で発作が起きない症例は少ない(かあっても軽視される?)ので,事実上現在は発作性AFであれば禁忌のない限りアブが第一選択という共通認識が不動になりつつあると思われます。

また持続性(1年以内持続)では,抗不整脈無しでいきなりアブで良いとなっています。

一方,心不全合併AFはCASTLE-AF試験などの知見を踏まえ推奨度IIaで,心不全の有無で推奨度を区別しないとなっています。最近UpdateされたAHA/ACC/HRSガイドラインでは心不全AFのアブはIIbとなっていて微妙な差があります(米国のは死亡率低下や心不全入院減少のためのアブ,となっていますが)。

無症候性心房細動に対してはIIbですから,どうしても現場で必要と判断された場合に限定かと思われます。

高齢者心房細動の推奨度は示されませんが,「アブレーションの効果の高い発作性 AF 例においては,日常生活動作の保たれている高齢者(おおむね 75 歳以上)での治療適応を若年者と同様に考えることは,妥当な判断と考える.しかし一方で,高齢者の持続性および長期持続性 AF へのカテーテルアブレーションの適応の妥当性は,若年者よりも低いと判断する」と記載されています。

「総合的判断」のトリアスに示されるように,年齢,症状,進行度の3因子を総合的に判断することが提唱されています。

個人的にはCAVANA試験で予後改善が示されなかったこともありますが,最も知りたいのは「アブレーションをすることでどのように症状や運動耐用能が改善し,どんなふうに生活や生きることへの意欲が変わるのか」ということなんですが,これはじつはプライマリケア医がいちばん知っている(べき)ことなんですね。

### 今回の改定で嬉しいのは,アブレーション前後の抗凝固薬使用について教えてくれているところです。
アブレーション前少なくとも3週間の抗凝固療法と,休薬なしのアブレーションが勧められています。このときワルファリンとダビガトランはエビデンスの多さから推奨度Iでその他のNOACはIIaのようです。

アブが成功した後に抗凝固療法をするかどうかがプライマリ・ケアでは注目ですが,少なくとも3ヶ月は必ず行い,3ヶ月後はCHADS2スコア2点以上はずっと継続となっています。

0点については本文の中で「3ヶ月後に中止可能」と述べられていますが,1点については「判断は難しいが,発作性か持続性か,塞栓リスクと出血リスク,左房径,BNP 値,D-dimer 値,患者の意向などを総合的に判断し,中止または続行を決定する」と言及されています。

実際1点でもやめないほうが無難と考える医師も少なくないため(無症候性の再発も考えると),抗凝固薬を継続している患者さんはよく見かけます。そうなるとアブレーションしたからといって抗凝固薬の呪縛から逃れる人はあまり多くはないということにもなりそうです。

なお注目の左心耳閉鎖デバイスについては,推奨度は示されず,「左心耳閉鎖デバイスは,NVAF に対する長期ワルファリン内服の代替療法となる可能性が示されたが,ワルファリンと同等に有効で,より安全とされる直接作用型経口抗凝固薬に対する有効性・安全性を検証する RCT は行われていない」との記載にとどまっています。

この時代,大変な労作のガイドラインと言えますが,GRADEシステムは用いられていないようでガイドラインそのものとしての評価は今後の判断となろうかと思います。

$$$ しかし今回の横浜での学術集会。ツイッターでのスライド紹介が大幅に緩和されて,担当医師による大量のスライド撮影やコメントがタイムラインに洪水のように押し寄せてきました。非常に壮観でかつ勉強になりました。

これ実現させた学会情報広報部の努力に敬意を評したいと思います。学会員数から見て盛り上がりは途上とは思われますが,一つのプラットフォームとして機能していくことを期待したいです。
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by dobashinaika | 2019-04-02 00:22 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

AHA/ACC/HRSの心房細動ガイドラインがアップデートされました。よりNOAC推しの内容です

AHA/ACC/HRS(米国)の心房細動ガイドラインがアップデートされています。

Morady先生がまとめサイトで12ポイントに集約されていたのを紹介します。

1. エドキサバンが脳卒中予防薬としてNOACのリストに加わった(推奨度I,エビデンスレベル B-R)

2. 中〜高度僧帽弁狭窄症または人工弁以外の患者では,ワルファリンよりNOACが勧められる(I, A)

3.発作性か持続性かは抗凝固薬の使用決定に影響しない(I, B)

4. NOAC開始時および使用後年1回は肝機能,腎機能をチェックすべきである(I, B−NR)

5.CHA2DS2-VAScスコア2点以上(男性)または3点以上(女性)でクレアチニンクリアランス15ml/min未満では,ワルファリン,アピキサバンが妥当である(IIa, B-NR)

6.イダルシズマブは致死的な出血や緊急手技の際に,ダビガトランの中和薬として勧められる(I, B-NR)

7.Andexanet alfa(Xa因子リコンビナント)は致死的イベントの際,リバーロキサバンとアピキサバンの中和薬として用いることができる(IIa, B-NR)

8.経皮的左心耳閉鎖術は長期間の抗凝固療法が禁忌で,脳卒中リスクの高い人に考慮される(IIb, B-NR)

9.症候性心不全やEF低下例では,死亡率低下,心不全入院減少のためにカテーテルアブレーションが勧められる (IIb, B-R)

10. 冠動脈ステント例では,クロピドグレルと低用量リバーロキサバン(15mg/日)またはダビガトラン(150mg1日2回)のタブルテラピーがトリプルテラピーよりも妥当である(IIa, B-R)

11. 体重減少を含むリスク因子是正が,心房細動を持つ肥満患者に勧められる (I, B-R)

12. 体外式ホルター心電図で結論がつかない原因不明の脳卒中患者には,植込み型のモニター装置が潜因性心房細動の同定のためとして妥当である(IIa, B-R)

### エビデンスレベルのRはRCTのあるもの,NRはないものです。

気になる点ですが,
・発作性,持続性は適応に関係ないこと
・クレアチニンクリアランス15未満の重症腎不全でワルファリンの他にアピキサバンも推奨されたこと
・ダブルテラピーとしてダビガトランとリバーロキサバン低用量が挙げられていること
です。

アピキサバンの重症腎不全への使用は,一部の観察研究のみで有効とするものはありますが,日本の添付文書でもまだ記載されておらず,現時点で慎重に行くべきかと思われます。

またNOACと抗血小板薬併用は,ワーファリンとの公平な比較試験はまだなかったように思われます。

2014年に公開されたときはNOACとワルファリンで推奨度に差はありませんでしたが,今回は全体に明確にNOAC推しとなっている印象です。これも時代の流れかもしれません。エビデンスがまだ乏しい分野でもそこまで推すかという感じもします。

$$$ 東北新幹線大宮駅付近から。この季節,夕暮れの富士山を拝むことができます。
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by dobashinaika | 2019-02-02 07:20 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

The American College of Chest Physicians (ACCP)の心房細動抗凝固療法ガイドライン(CHESTガイドライン)


The American College of Chest Physicians (ACCP)による抗凝固療法ガイドライン(CHESTガイドライン)です。

1. ACCP)による心房細動抗凝固療法2012年のガイドラインアップデート

2.CHA2DS2-VAScスコアを用いる

3.CHA2DS2-VAScスコア低スコア(男性0点,女性1点)は抗凝固療法なし

4.CHA2DS2-VAScスコア1点以上(性別無関係)には抗凝固薬

5.用量調節下でのVKAよりもDOAC

6.予期せぬ出血の既往例では,アピキサバン,エドキサバン,ダビガトラン110

7.VKAを用いるときはTTR>70%を目指すべき。<65%のときはさらなる改善(より頻回のINR測定,アドヒアランス向上,薬剤相互作用の確認,一層の患者教育とカウンセリング)を試みる

8.すべての患者で対処可能な出血リスク因子を改善する:管理不良な血圧,抗血小板薬,NSAIDs併用,アルコール過飲

9.HAS-BLED3点以上では出血の確認と頻回フォロー

10. 48時間以上持続した心房細動(または持続時間不明)の場合,除細動前に最低3週間の抗凝固療法と経食道エコーが推奨される。ベースラインの脳卒中リスクにかかわらず除細動後最低4週間の抗凝固療法が継続されるべき。

11. 経食道心エコーで左心耳血栓が確認された場合,血栓症室と血管内皮化まで除細動の延期と4-12週の抗凝固療法が推奨される。再度の経食道心エコーを施行するかは症例による

12. 冠動脈ステント合併心房細動症例では,多剤抗血栓薬併用思考の是非は出血リスクと,臨床的なステントの必要性に基づく。

13. 待機的ステント術予定の心房細動症例では,
低出血リスク(HAS-BLEDスコア0-2点)例:1-3ヶ月のトリプルテラピー→12ヶ月までの二剤併用(抗凝固薬+クロピドグレル)→抗凝固薬単剤。
高出血リスク(HAS-BLEDスコア3点以上)例:1ヶ月のトリプルテラピー→6ヶ月の二剤併用→ 抗凝固薬単剤

14. 急性冠症候群でステント植え込み術後の心房細動例では,
低出血リスク(HAS-BLEDスコア0-2点)例で:6ヶ月のトリプルテラピー→12ヶ月まで二剤併用→ →抗凝固薬単剤。
高出血リスク(HAS-BLEDスコア3点以上)例:1-3け月のトリプルテラピー→12ヶ月の二剤併用→ 抗凝固薬単剤。

15. 頭蓋内出血後で再発高リスク例(脳アミロイドアンギオパチーなど)では,左心耳閉鎖術が推奨される。

### Lip先生が筆頭authorのようです。

CHA2DS2-VAScスコアに基づき,DOAC(NOACと言っていない)をより推奨し,出血既往例ではDOACの差別化が図られていますね。

全体としては目新しいものはありませんが,現時点でのまとめとしてみておきます。すべての患者での出血リスク減少への努力が強調されている。高出血リスク例ではより入念なフォローを行う。というところを再確認したいです。

$$$ 今日のニャンコ
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by dobashinaika | 2018-10-05 21:28 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

欧州不整脈学会(EHRA)のNOAC使用実践ガイド改訂版は非常に実戦的で細かい:EHJ誌


欧州不整脈学会(EHRA)から2013年に出版されたNOAC使用に関する実践的ガイドが改訂になっております。
前回同様非常に実践的で,臨床上よく遭遇する場面で具体的に何をどうしたらよいかということが,豊富なエビデンスを交えて事細かに書かれています。
ACCまとめサイトを引用します。



1. NOACの禁忌
・NOACの禁忌は、機械弁、中等度〜高度の僧帽弁狭窄(おおむねリウマチ熱由来)である。
・生体弁、僧帽弁修復術後、TAVI後の患者についてのデータは少ないが、処方は許容される。

2. 構造的フォローアップ
・NOAC使用においては、構造的なフォローアップが推奨される。
・構造的フォローアップとは,NOACの適応についての記載、ベースラインの検査データ(Hb、腎機能、肝機能、凝固能)、教育の提供、1年以上の併存疾患のフォローアップからなる。腎機能低下の高齢者では,頻回の検査が必要である。
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3. 腎機能チェック
・CCrでの腎機能算定が重要である。適切な容量設定にCCrが使われる。
・CCr<15-30ml/minあるいは透析患者はNOACはすすめられない。
・(注;米国ではアピキサバンはクレアチニン値,体重,年齢(欧州とは用量が異なる)で用量決定。アピキサバンとリバーロキサバンはFDAで透析時使用が認可されている)

4. 肝機能チェック
・NOAC使用前,肝機能チェックも重要である。
・NOACはChild-Pugh分類Cの肝機能障害には禁忌
・リバーロキサバンは分類Bでも禁忌

5. ワルファリン⇔NOACの切り替え
・ワルファリンからNOACへのスイッチは、INR,<2.5(筆者注:日本では70歳未満2.0,70歳上1,6)で開始される。
・NOACからワルファリンへのスイッチ時は,INR<2(日本では上記数値以上)になるまでNOACを併用する。NOAC停止後1〜3日は、INRの治療域停留の確認のためINR測定を行う。

6. NOACの薬物相互作用
・NOACの薬物相互作用は少ないが,未だに重要な相互作用はある
・P-糖蛋白阻害薬,CYP3A4関連薬剤など
・ドロネダロン,リファンピシン,HIVプロテアーゼ阻害薬,イトラコナゾール,ケトコナゾール,ボリコナゾール,セントジョーンズワート,デキサメサゾンは重要

7. 非致死性出血時
・正常腎機能であれば,NOACの血中濃度は12〜24時間以内に正常化するはず
・腎機能障害患者は,特にダビガトランでは血中濃度正常化は延長する。

8. 致死性出血時
・ダビガトランでは,イダルシズマブ5mgを15分以上かけて投与される。
・Xa阻害薬では,プロトロンビン複合体製剤50U/kgが投与される。
・すべての患者でサポーティブ治療:機械的止血,内視鏡的または外科的止血(適応ありなら)がなされるべき。

9. 消化管出血後
・脳卒中リスクが残存し再出血リスクを上回るならば,NOACはできるだけ速やかに(通常4-7日)再投与べき。

10. 外科手術時
・術前24-48時間でのNOAC休止で,手術は安全に施行可能。
・CKD患者でダビガトラン服用者は上記より長い休止期間が必要。
・出血リスクが回避されたならば,術後72時間以内にNOAC標準用量を再開する。

11. 急性冠症候群時
・NOAC服用中患者においては,ST上昇型心筋梗塞あるいは発症24-48時間の非ST上昇型心筋梗塞ではPCI(できれば橈骨動脈アプローチ)が可能である。
・NOACと抗血小板薬併用時はPPIを考慮せよ

12. 抗血小板薬併用
・NOAC+抗血小板薬単剤あるいは2剤併用例では,抗血小板薬併用期間の出来る限りの短縮が望まれる。
・待機的PCI患者は,2剤(NOAC+クロピドグレル,退院後1年)治療が良い。
・ACS患者(PCI施行)は,3剤3ヶ月、2剤(前記)を1年後まで。
・1年後はすべての患者でNOAC単剤。

13. 急性脳梗塞発症時
・NOAC内服患者では,もしNOACの血中濃度が測定下限以下であるか,最終内服時間から48時間以上で腎機能が正常であれば,血栓溶解療法を行う。神経学的障害にもよるが,CTで出血を否定できれば3〜14日以内の再開を考える。

### 前回に比べると,「構造的フォローアップ」のキーコンセプト同じですが,できるだけ通常量を使うことが強調され,またCCr別にNOACの用量設定も交えた細かな使い分けや抗血小板薬併用期間など,これまでの各種ガイドラインにはない踏み込んだ内容も見られます。
(前回についてのブログはこちら

転倒リスクや心房細動と悪性腫瘍の項目も追加されています。

これ完全和訳すれば売れるかも。それにガイドラインいらないかもしれません(適応についての記載はないですが)。

$$$ 今日のにゃんこ
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by dobashinaika | 2018-03-30 23:18 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

米国家庭医療学会の心房細動ガイドラインは非常にシンプルで患者中心:AFP誌より

昨年9月の論文ではありますが,アメリカの家庭医療学会( the American Academy of Family Physicians (AAFP)から心房細動の薬物療法に関するガイドラインが出ています。家庭医からの視点でのガイドラインは,日本ではあまり紹介されませんが,心房細動薬物療法のメインストリームはあくまで診療所だと思われますので,このガイドラインは重要です。

推奨1:
・大多数の患者でリズムコントロールよりレートコントロールを優先(推奨度;強,エビデンスレベル:中)
・レートコントロールはカルシウム拮抗薬,β遮断薬を推奨
・リズムコントロールは,症状,運動耐容能低下,患者の好みに基づいて考える(推奨度:弱,レベル;低)

推奨2:
・緩やかなレートコントロール(安静時110<)を厳格なコントロール(<80)よりも推奨(推奨度;弱,レベル:低)

推奨3:
・医療者は脳梗塞と出血についてすべての心房細動患者と話し合う(ベストプラクティスポイント)
・脳卒中に関してCHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコア,出血に関してHAS-BLEDスコアの使用を継続的に考えるべき(推奨度:弱。レベル:弱)

推奨4:
・以下の患者以外は,継続的な抗凝固療法を強く推奨する(推奨度;強,レベル:高)
    低リスク(CHADS2スコア<2)
    抗凝固薬禁忌
・抗凝固薬の選択は患者の好みと病歴に基づくべきである。

推奨5:
・抗凝固療法と抗血小板療法の併用は勧められない(推奨度:強,レベル:中)

利益相反:なし

AAFPは2014年に出たAHA/ACC/HRS(アメリカ心臓病協会他)ガイドラインとの違いもに言及しています。

1)レートコントロール:緩徐か厳格か
・AHA/ACC/HRSでは緩徐なコントロールのほかに,厳格なコントロールも合理的としているが,多くの家庭医は,無症状のひとにまで高用量の薬を処方することには抵抗がある。厳格なコントロールがアウトカムを改善するというエビデンスはない。
・どちらのガイドラインもジゴキシンよりカルシウム拮抗薬やβ遮断薬を推奨しているが,どのCCB,β遮断薬がよいかまでは推奨していない。

2)脳卒中リスクスコア
・AHA/ACC/HRSはCHADS2スコアよりCHA2DS2-VAScスコアを採用しているが,AFFPは優劣をつけていない
・高リスク患者を同定し,意思決定の共有を行うことに価値を置く

### 大変シンプルで,ありがたいガイドラインです。
AFFPのいいところはGRADEシステムを用いている点,あくまで患者の価値観を重視した内容である点です。
薬はゆるく,患者さんの意向に沿ってという視点が好ましいです。
チャズの0,1点は抗凝固療法を強く勧めない,抗凝固薬ー抗血小板薬併用も勧めない,としっかり言い切っているところも迷いがないです。
COIなしもね。

ところで日本のガイドラインは4年以上たちますが,改定はいつなのでしょうか。

$$$ 患者さんが作られたバルーンアートです。人気です。
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by dobashinaika | 2018-03-04 17:30 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

カナダの新心房細動ガイドラインはシンプル。CHADS65を提唱


ESCに続き,カナダの心房細動管理ガイドラインがフォーカスアップデートされました。
2016 Focused Update of the Canadian Cardiovascular Society Guidelines for the Management of Atrial Fibrillation http://dx.doi.org/10.1016/j.cjca.2016.07.591

2014年からの2年ぶり部分改定です。
改定ポイントは
1)様々な冠動脈疾患の状況下での抗凝固管理
2)NOACの現実世界のデータ
3)NOACの中和薬
4)レートコントロール薬としてのジゴキシン
5)周術期の抗凝固管理
7)心臓術後の予防治療を含む外科的手術

の7点です。

今日は冠動脈疾患下での抗凝固療法について紹介します。
まず基本アルゴリズムは,2014年の時と基本的に同じです。
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65歳以上は他にどんな危険因子があろうが即抗凝固。65歳未満でCHADS2スコアの他の因子がひとつでもあれば抗凝固。65歳未満血管疾患(冠動脈疾患含む)有りは抗血小板薬となっています。
65歳がキーポイントでCHADS65と名付けられています。

薬剤選択は,NOACがワルファリンより第一選択であり,出血因子として高血圧,抗血小板薬併用,NSAIDs,ステロイド,アルコール過飲,INR管理不良に注意。とくにNOACでは低クレアチニンクリアランス,75歳以上,低体重に注意,と注釈がついています。

相変わらず非常にシンプルですが,以前Lip先生が噛み付いた,65歳未満で血管疾患がある人に抗血小板薬だけでいいの?という疑問に応える意味もあるのか,冠動脈疾患合併患者について,今回詳細な追加がなされています。以下の通り

<一般的的推奨>

1)冠動脈疾患合併心房細動の場合,脳卒中,冠動脈疾患,出血の3者のバランスを考える(推奨度強,エビレベル高)

2)できるだけNOACを用いる(条件付き推奨,低レベル)
価値と選好:使い勝手の良さ,およびRCTにおいて脳卒中予防ではNOACはワルファリンと同等または優位,大出血は同等か少ない,頭蓋内出血は少ない,冠動脈疾患は増やさないというアウトカムに基づく。冠動脈疾患におけるNOACの効果についての長期的データが欠如しワルファリンが効果的であるとのデータにはあまり重きを置いていない。

<冠動脈疾患(CAD)の一次予防または安定CAD/血管疾患(末梢血管,大動脈プラーク)合併例>
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3)CAD/血管疾患なし,65歳未満,CHADS2スコアゼロ:抗血栓療法不要(条件付き,中等度レベル)
4)CAD/血管疾患なあり,65歳未満,CHADS2スコアゼロ:アスピリン(条件付き,中等度)
5)CAD/血管疾患なあり,65歳以上,CHADS2スコア1点以上」OAC(強,高)

<待機的PCI例>
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6)65歳未満,CHADS2スコアゼロ:アスピリン+クロピドグレル,12ヶ月(2012ガイドラインに準拠)
7)65歳以上,CHADS2スコア1点以上:OAC+クロピドグレル75mg,12ヶ月

<非ST上昇およびST上昇心筋梗塞>

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8)65歳未満,CHADS2スコアゼロ:アスピリン+チカグレロルor クロピドグレル,12ヶ月
9)65歳以上,CHADS2スコア1点以上:OAC+チカグレロル(プラスグレル,クロピドグレルよりも)12ヶ月→OAC単独
10)65歳以上,CHADS2スコア1点以上,PCIの既往:アスピリン81+クロピドグレル75+OAC,3-6ヶ月(期間は冠血栓と出血リスクによる)→クロピドグレル+OAC,12ヶ月まで→oOAC単独
価値と選好:3〜6ヶ月のトリプルテラピーはOAC+クロピドグレルよりも冠動脈イベントが少なく,DAPTyよりもステント血栓が少ないことを重視。出血リスク増大には重きをおかず。塞栓症と出血のバランスは,CHADS2スコア2点以上の高リスクの時に判断すべき

### ”CHADS65”。大変シンプルですが,個人的には何も考えず「65歳以上で一律に抗凝固療法」とするのはいかがなものかと思います。

冠動脈疾患合併例では,待機的PCIのときトリプルはなし,OAC単独の時期が一律に12ヶ月後など,ESCとは微妙に違うようです。

全体に,総論的コンセプトの強調がなく,ESCガイドラインよりシンプルさが目立つ北米らしい GLという印象です。

$$$ ご近所の神社の鳥居が新調されました。ここくぐる時の木の香り,迷走神経刺激作用は絶大です。ちなみにここジムレベル3です。

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by dobashinaika | 2016-09-08 21:56 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その6:ゴールベイストマネージメントの発想


シン・ESCガイドライン 付け足し

ESCガイドラインの特徴である,長く包括的な総論。締めくくりはGoal-based follow-upです。
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従来からの,心房細動管理の2大カテゴリーである「生命予後」と「症状」が柱ですが,それらを患者自身が有効化実装化すること,慢性期に「ケア」を行うこをともゴールとして付記されています。

### こういうのを包括的にテーブルにしてまとめるのって,ヨーロッパのひとは好きですよね,ワタシも好きですが,

患者さんへの説明のコツみたいなのもサラッと書かれていました。
・生命予後改善のための治療は,利益は直接実感できないので,患者さんに(そのことを)注意深く説明する必要がある

・リズムコントロール治療は,たとえ再発したとしても症状がコントロールされていれば成功

・期待される利益を心房細動管理の開始の時に各々の患者に説明することは,(患者に)根拠の無い期待感をいだかせずに,QOLが最適になるようにするポテンシャルがある。

ソーロンソーロンばかりででそろそろと言うかかかなり飽きてきましたが,この表と昨日の1枚目の5ドメインは抑えておくと良いと思われます。
特にゴールベイストの思想は核心です。2年前に出した拙著のキーコンセプトもこれでして,心房細動に限らずあらゆる医療に通じる技法としてStewartらの「患者中心の方法」があり,そのコアコンポーネントである「共通基盤の形成」が文字通り基盤です。

心房細動だったら,何のための薬か,アブレーションか,その治療目的を患者ー医療者双方で明確化し同じ土俵に乗るということ,これこそが究極のゴールといえます。この作業を怠ると,外来で「やっぱり怖くて飲めません」と患者さんが突然不安を抱くことになります。

昨今の週刊誌記事が話題となるのも,この「治療最初のゴールの確認」を医療者が怠っていることが根本にあると思われます。予後改善という実感の沸かないゴールをいかに身近なものとして,リスクを上回るものとして感じてもらえるか,そのコミュニケーション不足が背景と思われます。

抗凝固薬は血液サラサラ薬でなく「脳梗塞を押さえる薬」,降圧薬もコレステロールの薬も糖尿病の薬も,血圧を下げる,血糖を下げる,コレステロールを下げるだけの薬ではなく「脳卒中,心筋梗塞を押さえる薬(糖尿病の場合はその他の合併症も)ということを知らない患者さんは非常に多いと思われます。

もちろん医師の研鑽不足,人間のリスク認知バイアスなども重要なファクターですが。

$$$ 以前亀有に言った時に取った写真。連載完了とは寂しい限りです。
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by dobashinaika | 2016-09-07 23:05 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その6:心房細動管理の統合的マネージメント


新ESCガイドラインのピックアップ最終回。

今回は,本GLを貫く基本コンセプトです。
これ,概念の羅列ですので臨床医にとってはつまらないまたは絵空事のように思えますが,良き戦略なきところに良き戦術なしと言われるように(今思いついた言葉),日々のルーチン的ワークをひとつの芯で貫くことで一貫性や継続性が生まれると思います。
ですので,最初のミッション確認は非常に大事です。

まず心房細動管理の俯瞰図として,以前EHRAからでていた5つのドメインの提示(やや改変)
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5ドメインとは
1)急性期レート/リズムコントロール
2)背景因子
3)脳卒中リスクと抗凝固療法
4)心拍数管理
5)症状管理とリズムコントロールの決定
です。ワタシ的には「スクリーニング」を最初に加えて6つのドメインとしています。

ちなみに特に臨床医として大切な緊急対応が必要な5つの場合としては以下です。
・血行動態不安定
・管理不能な心拍数
・薬剤で管理不能な症状のある徐脈
・重症狭心症/左室機能増悪
・TIA/脳卒中


次にこれらの管理を最適にするために4つの基本理念のようなものが提示されています。
a0119856_2305690.jpg

そしてこうしたコンセプチュアルな提言を文字通り統合するキーワードが”integrated"=統合的マネージメントです。
この概念を具体的かつ包括的にまとめたのが次の表です。
a0119856_232885.jpg

###おそらくジェネラリストが作成委員にかなり食い込んでいるのでしょう。非常にジェネラルに重点の置かれた内容になっています。
こんなの知っててどうすんの?と言われそうですが,実は非常に重要な概念が含まれています。

それは,ワタシの言葉に還元すれば,もはや慢性期の心房細動は「治療」ではなく「管理」であるということ。そしてその管理は多職種チームが患者を取り囲むかたちで行うこと。
もっと言うと昔ながらの医師を頂点とする医療スタイルはもうやめよう,多様な人材,ツール,治療オプションを駆使して,あくまで患者参加型の医療をしようということです。

何の事はない,在宅医療の世界ではもはや共通認識となっているコンセプトですね。

たとえばここに認知症を持ち,服薬アドヒアランスの不良な方がいる。こうしたケースでは,それこそどのNOAを選ぶなんてことよりご家族,ヘルパーさん。訪問看護師さんの情報収集スキルやコミュ能のほうが何倍も大事です。

しかしなにもこのようなcomplexなケースだけでなく,50代でAFの発作が時々あって,たまに来院する低リスクのひとに対しても,同じように適用できます。こういう方でも低いながら当然strokeリスクはあるし,そのことを非常に気にしているかもしれない。あるいは脳卒中については全く知らないかもしれない。患者さんのリテラシーや置かれた状況をよく考えるのはシンプルケースでも同じと思います。特にリスクインパクトの高い抗凝固の要な場合は。

そのとき看護師さんや場合によってはクラークさんからの情報は思いの外重要であったりします。医師一人の対応では到底無理です。

最後に一番大事なゴールベイストフォローアップの概念があるのですが,いろいろ書き散らかしていたら疲れてきました。
また後でまとめます。

$$$ 昨日はこのコンサート。すごいドレス(どうすごいかはググってください),楽譜をipadで高速スクロール,超超絶技巧など,またやってくれました。ユジャ・ワン。
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by dobashinaika | 2016-09-06 23:17 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

4年ぶり改訂、欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報;その1

欧州心臓病学会(ESC)から、欧州心胸部外科学会とコラボで心房細動管理ガイドライン2016年版が発表されました。ちょうどローマで開催されている学会に合わせての発表です。
前回の改訂が2012年のフォーカスアップデートですので4年ぶりの改定です。

2016 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with EACTS
DOI: http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehw210 ehw210 First published online: 27 August 2016


ざっと見の印象ですが、まず抗凝固療法の各論に行き着くまで多数の紙面が総論に割かれている点です。
基本コンセプトは Integrated management(統合的管理)です。

すでにEHRAからシェーマが出ていますが、戦術として心房細動の管理を、急性期、背景因子の管理、脳卒中リスクの評価、レート管理、症状管理の5ステップにまとめ、その根底となる戦略(コンセプト)には、患者の参画、多職種チーム、非専門家の役割、テクノロジーツール、の4アイテムの活用です。また5ステップごとに系統だったゴールが示され、ゴールに向かっての管理というコンセプトも明確化されており、さながらガイドラインが心房細動という大きな山登りの道標の趣を呈しています。

各論では、抗凝固療法の適応や薬剤選択は大筋で変わりないものの、シェーマがシンプルになり、また脳出血後の再開、3剤併用療法、左心耳閉鎖術などが詳述されるようになっています。

まずは知りたさ緊急度優先で抗凝固療法関係の目立ったものをまとめました。総論は膨大かつ重要なので明日以降じっくり紹介します。

抗凝固療法の適応は基本変わっていません。機械弁、僧帽弁狭窄症はVKA(ワルファリン)、バスク0点は抗凝固なし(禁忌)、1点は考慮。2点以上はNOAC、2番手がVKA、抗凝固薬禁忌の場合の左心耳閉鎖術がIIb。
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出血リスクはHAS-BLEDだけでなく、HEMORR2HAGES、 ATRIA、 ORBIT 、ABCの各スコアを網羅しています。
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急性脳梗塞、脳出血後の抗凝固療法についても詳細な投与方法示されています(これは後日熟読したらアップします)。

急性冠症候群時PCI後の抗血栓療法は、
1)低出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)6ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)6ヶ月⇨1年後以降はOAC単独
2)高出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)1ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)1年後まで⇨1年後以降はOAC単独
*1年後以降、冠動脈病変が高リスクの場合はアスピリンかクロピドグレルどちらか併用
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待機的PCI後の抗血栓療法は、
1)低出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)1ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)6ヶ月まで⇨6ヶ月後以降はOAC単独
2)高出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)1ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)1年後まで⇨1年後以降はOAC単独
*1年後以降、冠動脈病変が高リスクの場合はアスピリンかクロピドグレルどちらか併用
a0119856_17471498.gif

待機的OCIの場合トリプルは1ヶ月でいいのですね。またほとんどの場合で1年後はOAC単独(冠病変によっては抗血小板薬1剤追加)です。

堅固な石垣を土台とした壮麗な城のような趣(褒めすぎか)ですね。ただ作成方法は完全なGRADE準拠ではなさそうですし、COIが明示されていないように思いました(見落とし?)。
末尾にサマリー17ポイントを記載されているのもありがたいです(これも後日検討)。

追伸:それにしても良い世の中になったものです。学会というのは参加できるセッションは自分が興味あるものばかりになるので,その分野の見聞だけは深まりますが,全体の俯瞰はできにくいですね。一方ネットが普及したので(とくにESCはそうですが),部屋に居ながらにして学会全体のトピックスを俯瞰することができます。特定の分野の深い見識を得たいなら学会参加,広い見識を得たいならむしろネットのほうが良いかもです。
by dobashinaika | 2016-08-28 17:48 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

NOAC(新規経口抗凝固薬)の実践的使用法10のポイント:これはよくまとまっています

Updated European Heart Rhythm Association practical guide on the use of non-vitamin-K antagonist anticoagulants in patients with non-valvular atrial fibrillation: Executive summary
European Heart Journal First published online: 9 June 2016

毎年EHRA(欧州不整脈学会)から出ている非弁膜症性心房細動に対する抗凝固療法の実践的ガイドが,ことしもアップデートされています。
たくさんあるのですが,ACCのメルマガで例によって10項目にまとめてくれていますので,ご紹介します。

1.非弁膜症性心房細動の定義
機械弁あるいは重症僧帽弁狭窄症(通常リウマチ性)症例をのぞいたものを指す。その他の弁膜症はNOACの大規模試験には含まれており,NOACの適応である。

2.NOACの投与に影響を与える薬剤
ドロネダロン(特にダビガトラン),リファンピシン,HIVプロテアーゼ阻害薬,抗真菌薬(イトラコナゾール,ケトコナゾール),サイクロスポリン,タクロリムス(特にダビガトラン),カルバマゼピン,フェノバルビタール,フェニトイン,セントジョーンズワート

3.ワルファリンとNOACの切り替え方法:
ワルファリン→NOAC:INR2.0~2.5(日本ではガイドラインに基づく範囲の下限値:筆者注)以下になったら切り替え
NOAC→ワルファリン:NOAC投与直前とNOAC投与24時間後のINRを測定し,ワルファリンが至適レベルになるまでNOAC投与

4.周術期:
低分子ヘパリンによるブリッジングは半減期の短いNOACには不適切。術前最後の投与時期は腎機能と出血リスくに依存。一般的には術前24~96時間前の中止が妥当

5.NOACによる出血時の対応:
保存的観察が一般的。大出血,生命に関わる出血の際はイダルシズマブ5mg静注(ダビガトラン),またはプロトロンビン複合体製剤50U/kg(Xa阻害薬)投与(andexanet-alpha認可までの間)。

6.カルディオバージョン:
除細動前NOAC投与3週間。経食道エコーは不要。心房細動発症48時間以内ならば低分子ヘパリンを除細動前に投与し,4週間NOAC継続

7.NOAC投与患者のPCI施行時:
待機的PCI時または急性冠症候群で入院中患者では,24時間以上のNOAC停止。PCI後,ヘパリン静注中止後,抗血小板2剤とともにNOAC開始。PPI併用を考慮すべき。

8.PCI施行後:
最初の1(ベアメタル)または6ヶ月(DES)はトリプルテラピー(抗凝固薬+DAPT)。その後は1年後まで抗凝固薬+どちらか1剤の抗血小板薬。その後殆どの患者は抗凝固薬単独を継続

9.TIAまたは虚血性脳卒中後:
イベント1~12日後には抗凝固薬開始または再開。再開時期はイベントの重症度による。頭蓋内出血後は出血の危険因子除去後4~8週以内抗凝固薬再開。もしくは左心耳閉鎖術を考慮

10. NOAC投与前の腎機能:
CrCLを評価。CrCL15以下または透析中の場合はNOACは不適切。CrCL/10ヶ月ごとに腎機能をチェック

### 臨床的に知っておきたいNOACの管理項目がほとんど網羅されていますね。しかもコンパクトに。早速利用します。
プリントアウトして診察室のかべに貼っておきます。

$$$ ナスもいい具合になってきました。
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最近ネコ不足だったのでもう一枚
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by dobashinaika | 2016-07-11 21:14 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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