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カテゴリ:抗凝固療法:適応、スコア評価( 80 )

ワルファリン管理良好のためNOACに変更しなかった場合でも大出血は多い?:TH誌

Selection, management, and outcome of vitamin K antagonist-treated patients with atrial fibrillation not switched to novel oral anticoagulant
F. Michalsk et al
Thrombosis and Haemostasis Ahead of Print: 2015-05-21


背景:良質にコントロールされたVKA(ワルファリンなど)はNOACに変更する利益は少ないとされるが、そうした患者の選択、管理、アウトカムの知見は乏しい

方法:
P:ドレスデンNOACレジストリー登録患者:2013年1月時点
E:VKA継続患者
C:NOAC処方患者
O;脳卒中/全身性塞栓症率、大出血率

結果:
1)VKA群(427例)はNOAC群(706例)より明らかに低出血リスクのプロフィール

2)VKA群のTTRは期間中(平均値追跡期間15ヶ月)71%から75%に上昇

3)VKA群の脳卒中/全身性塞栓症率:1.3%/人年(ITT解析)、0.94%/人年(as treated)

4)VKA群の大出血;4.15/人年(95%CI;2.60-6.29)

5)大出血例の死亡率(90日以内):16.3%

結論:日常臨床では、VKA継続例はNOAC選択例より健康。高い管理水準と低塞栓率を認めた。しかし患者選択とINR管理は高水準にもかかわらず大出血リスクは受け入れがたいほど良くなかった。

### ドレスデンAFレジストリーは、ドイツ、ドレスデン地区の診療所、病院医師230人が参加し、ダビガトランとリバーロキサバンを処方した症例の登録研究です。この研究に参加した施設で、NOACを投与あるいは変更せず、VKAを依然として継続していた症例を対象としてそのアウトカムを見た研究です。

VKA継続の理由が詳細に記載されてはいませんが、VKA群は塞栓症の既往、出血の既往、腎機能低下率、HAS-BLEDスコアなどがいずれもNOAC例より低いため、VKAを使っていてもイベントが起きた例はNOACに変更し、変更せずVKAのままでいるのはずっと落ち着いていて出血リスクの低い例だからのことが多いと考えてよいかと思います。

脳卒中/全身性塞栓症率は、たとえばRELY試験のワルファリン群は1.69%、ダビガトランは1.11%(150mgx2)〜1.53%(110mgx2)くらいですからダビガトラン150に近い成績と言えます。アリストテレスでのアピキサバンとほぼ同じ率(1.27%)です。

大出血率はRELYのワルファリン群が3.36%、ダビガトラン150mgで3.11%、110mgで2.71%ですので、それらよりも多いことになっています。

大出血の内訳を見ると、15ヶ月中に427例中22例5.2%にみられ、頭蓋内出血7例(1.6%)、消化管出血5例(1.1%)、その他(眼窩内、関節、後腹膜など)10例でした。Nが少ないのでなんとも言えませんが、頭蓋内出血がやはり目立ちます。ちなみにNOAC群の大出血率は約700例中6例、頭蓋内出血は4例でかなり低めです。

出血症例が詳細に記載されていますので、大変参考になります。頭蓋内出血の例は殆どが74歳以上で最高94歳。外傷性が多く、出血時のINRは2.5以上が多いようでした。

これは考えさせられる結果ですね。TTR75%と非常に良好な集団でも、大出血率はNOACに劣るかもしれない。もちろん観察研究でバイアスはありますが、リアル・ワールドの結果ですので、またより出血リスクが低いと思われる例でこの結果ですので、もしかするとTTR良好でも一概にワルファリンで安住すべきではないのかもしれません。

TTRという概念も、実は一口では語れなくて、逸脱している時間と逸脱の度合い(INRの高低)の区別はされていません。またNが少ないですし、日本のデータではありません。

もう少し読み込んでみます。

$$$ 知る人ぞ知る地元ローカル番組のご当地おみやげ1位。かなり美味しいそうです。一口だけ頂きました^^
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by dobashinaika | 2015-05-26 23:35 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

75歳以上の心房細動、静脈血栓にNOACとワルファリンはどちらが良いのか:メタ解析:Circ誌

Efficacy and Harms of Direct Oral Anticoagulants in the Elderly for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation and Secondary Prevention of Venous Thromboembolism: Systematic Review and Meta-Analysis
Manuj Sharma et al
Circulation Published online before print May 20, 2015


疑問:一般に合併症、ポリファーマシー、薬物動態変動が多いとされる高齢者におけるNOAC(DOAC)のエビデンス、特に出血に関してリスクはどうか?

方法:
・DOACのRCT(心房細動及び深部静脈血栓症)のうち75歳以上の人の効果と出血アウトカムにつきメタ解析

結果:
1)19試験あり。高齢者データありは11試験

2)血栓症管理効果:DOACはVKA(ワルファリン)と同等もしくは有効

3)大出血:
ダビガトラン150x2は高リスクの傾向(オッズ比1.18、95%CI0/97-1.44)。110x2にはその傾向なし
アピキサバン(0.63, 0.51-0.77)、エドキサバン60 (0.81, 0.67-0.98)、エドキサバン30 (0.46, 0.38-0.57)は有意に低リスク
リバーロキサバンは同等

4)消化管出血:ダビガトランで高リスク:150mg (1.78, 1.35-2.35)、110mg(1.40,1.04−1.90)

5)頭蓋内出血:ダビガトランで低リスク:150mg (0.43, 0.26-0.72)、110mg(0.36,0.22−0.61)

結論:高齢者においてはDOACの血栓管理リスクはVKAと同等。しかしながら出血については明らかに差異有り。特にダビガトランは消化管出血リスクがVKAより大きい。その他のNOACはデータ不十分でさらなる試験必要

### ついにまとまった高齢者のNOAC vs. ワルファリンのメタ解析がでましたね。ただ結果はこれまで発表された結果から、自明となっていたものかと思われます。ダビガトランの75歳で分けた消化管出血の数値はRELY試験でのサブグループ解析とほぼ同じものです。

先日のBMJでのリアル・ワールドデータと合わせると、75歳以上で消化管出血の既往がある例などでのダビガトラン使用は出しにくいと思われます。リバーロキサバンもこのメタ解析からは微妙かもしれません。アピキサバンは有望のような印象ですが、リアル・ワールドデータがほとんど出ていません。

ということで、以前にも書きましたように高齢者については第一選択ワルファリンで、もう出きる限り丁寧にPT-INR管理をしてTTR高値を目指す→それでPT−INRが暴れるようであればNOACということにしています。たとえば1.6〜2.6の上限または下限ギリギリの際はワルファリン0.25mg単位で使う。野菜の摂取量を一定に保つなどの指導などで、こまめに管理します。今更またこれ言って恐縮ですが、細かいワルファリン管理は循環器内科医の醍醐味ではあるんですねー。未だに

$$$ ご近所で新発見!。このネーミングといえば。。。ここはM県S市杜王町か?
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by dobashinaika | 2015-05-24 23:25 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

心房細動における脳卒中予防の総説:JAMA

Stroke Prevention in Atrial Fibrillation A Systematic Review
Gregory Y. H. Lip, MD; Deirdre A. Lane, PhD
AMA. 2015;313(19):1950-19
62

JAMAにLip先生の心房細動における脳卒中予防の総説が掲載されています。
ごくかいつまんで紹介します。

<一覧>
・心房細動脳卒中リスクと死亡率は抗凝固療法(VKA:ワルファリンまたはNOAC)により減少した。
・まず始めに、臨床家は抗凝固が必要ない低リスク心房細動患者を同定すべき。少なくとも1つのリスク因子(「女性のみ」を除く)を持つ患者は抗凝固療法が勧められるべき
・臨床家は個々の患者の抗凝固療法下での出血リスクを評価し、出血リスク因子(血圧管理、抗血小板薬、NSAIDsなどの併用薬中止、INRの適正管理、アルコール過飲防止)を是正すべき。つまるところ、最も大切なのは脳卒中予防。

<抗凝固薬の選択>
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a:脳梗塞、出血両者とも効果あり
b:CCr<15mL/min (USA)
c:出血リスクの増加も含む
d:HAS-BLEDスコア3点以上。消化管出血のような出血を最小限に保つように
e:未承認(米国)

<リスク層別化と抗凝固療法選択のアルゴリズム>(Freeでないので文書で)
・CHA2DS2-VAScスコア1点以上(女性は2点以上)→No:抗凝固なし
・→Yes:SAMeTT2R2スコア3点以上→Yes:NOAC
・→No:TTR>70%→VKA、TTR<65%または過去6ヶ月間にINR>5が2回or>8が1回or<2が2回
・→VKA

### この文章はわかりにくいですね。要するに
・SAMeTT2R2スコア3点以上または2点以下でもTTR<65%またはINR逸脱多い→NOAC
・SAMeTT2R2スコア0〜2点でTTR>70%→VKA

です。

薬剤選択の際SAMeTT2R2スコアを用いるのが新しい点です。
SAMeTT2R2スコアは以前のブログで、あまり気が進まないと書いた覚えがあります。
でもLip先生はTTR管理の予測スコアとして評価しているようです。

SAMeTT2R2スコアは
・女性、年齢(60歳未満)、既往歴(高血圧、糖尿病、虚血性心疾患、末梢血管疾患、心不全、脳卒中の既往、肺疾患、肝疾患、腎疾患のうち2つ)(以上1点)、薬剤(ワルファリンと相互作用あり)、人種(非白人)(以上2点)
で最高8点です。

一見クリアカットですが、またまたいろいろなスコアが出てきて、返って混乱するような気もします。
私自身は最近は、
・75歳上:第一選択はワルファリン→半年くらい見て変動が多い患者はNOAC
・75歳未満:5つのうちからコスト、服薬回数、腎機能、消化器症状/疾患を考慮して適宜決定

という感じにしています。異論は受け付けます(笑)。

$$$ 杜の都の定番の場所。
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by dobashinaika | 2015-05-21 22:36 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

日本の心房細動患者おいて「女性」は血栓塞栓リスクとしては低い:CJ誌

Validation of Risk Scoring System Excluding Female Sex From CHA2DS2-VASc in Japanese Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation – Subanalysis of the J-RHYTHM Registry –
Hirofumi Tomitaet al
Circulation Journal May 13, 2015


背景:J-RHYTHM レジストリーにおいて、CHA2DS2-VAScスコアスコアとCHA2DS-VAスコアの妥当性を比較する

方法;
・ワルファリン非投与の 997例を2年間追跡;平均68歳、女性294例
・CHA2DS2-VAScスコア、CHA2DS-VA(CHA2DS2-VAScスコアから「女性」を除外)スコアのC統計量を算出

結果:
1)血栓塞栓症:女性7/294(年1.2%)、男性23/703(年1.6%)で男性の方が多い:オッズ比0.72、P=0.44

2)CHA2DS2-VAScスコア、CHA2DS2-VAスコアとも層別化されたグループにおける性差なし

3)C統計量:CHA2DS2-VAスコア>CHA2DS2-VAScスコア (0.029, Z=2.3, P=0.02)

4) net reclas- sification improvement (NRI):CHA2DS2-VAスコア>CHA2DS2-VAScスコア (0.11, 95% CI 0.01–0.20, P=0.02)

5)CHA2DS2-VAScスコア0〜1点の患者では、C統計量、NRIともCHA2DS2-VAスコアのほうがより顕著に大

結論:日本の非弁膜症性心房細動患者においては、CHA2DS2-VAScスコアから女性をのぞいたスコアリングは、血栓塞栓症のリスク層別化の点で、CHA2DS2-VAScスコアよりも有用。特に低リスク患者で有用。

### 確認ですが、J-RHYTHMレジストリーのばあい、血管疾患=冠動脈疾患と定義されています。

これまでおもにヨーロッパのコホート研究では「女性」は特に75歳以上で有意に男性より血栓塞栓症が多く、一方アジアの諸報告では年齢にかかわらず性差なし、または男性のほうがリスク高いという結果が報告されているとのことです。

JーRHYTHMでは、今回の結果のように女性のほうがイベント発生率が低いため、かえって女性を入れてしまうと予測能が落ちるのだろうと推測されます。
更に興味深いことに、このペーパーのTable3をみますとCHADS2スコアとくらべると、なんと一番c統計用が高いのはCHA2DS2-VAスコアでなく、CHADS2スコアとなっています。つまり、日本人では65歳以上や血管疾患もあまりリスク因子として効いていないということを意味すると推測されます。

個人的には、最近特に年齢75歳以上、脳梗塞の既往、高血圧(特に管理不良)は重視で、それ以外でCHA2DS2-VA(Sc)スコア1点の場合はとりあえず様子見という雰囲気になっています。脳血管専門の先生からは甘いと言われそうですが。

J-RHYTHMでのCHA2DS2-VAScスコアの妥当性について検討したブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/19951989/

$$$ 今週末は青葉まつり
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by dobashinaika | 2015-05-13 22:01 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

低リスクの人に抗凝固療法をすべきか?再論:TH誌

先日の「低リスク患者の抗凝固療法の総説」に関するエディトリアルです。
Stroke risk in atrial fibrillation: Do we anticoagulate CHADS2 or CHA2DS2-VASc ≥1, or higher? Nielsen et al
Thrombosis and Haemostasis
http://dx.doi.org/10.1160/TH15-02-0154


元の総説についてのブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/21017387/

このエディトリアルに興味深い表がのっています。
これを見るとたとえCHA2DS2-VAScスコア0点でも0.04〜2.4%と脳卒中発症率に結構な幅があるようです。
アウトカムの取り方や、対象が入院患者かコミュニティーか、血圧などの管理状況によってもかなり異なると思われます。
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またこの元論文のグラフを見ても、対象のセッティングによってCHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアとも、かなり研究によってばらつきがあることが一目瞭然です。
これによれば日本の発症率は最下位レベルです。
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こういうのを読めば読むほど、リスク層別化の難しさを知らされます。

個人的には、何回も言いますが
・CHA2DS2-VAScスコア0点は真の低リスクとして投与しなくて良い
・2点以上はなるべく投与の方向
・1点の場合、年齢、血圧管理、血糖管理、喫煙、腎機能その他のリスクの併存などをより詳細に「考慮」して考える。特に低リスクの時は、スコアリングにあまり縛られず、脳卒中(動脈硬化)のさまざまなリスクを考慮、という方針です。

$$$自宅では本日桜開花宣言でした。
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by dobashinaika | 2015-03-31 23:06 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

デンマークの大規模コホートでは低リスク患者の脳卒中発症率は低くない:JACC誌

Oral Anticoagulation, Aspirin, or No Therapy in Patients With Nonvalvular AF With 0 or 1 Stroke Risk Factor Based on the CHA2DS2-VASc Score.
Lip GY et al
J Am Coll Cardiol. 2015 Mar 5


背景:リスク因子1個の心房細動患者に関する最適な治療についてのコンセンサスはない

目的:CHA2DS2-VAScスコア0,1点患者における抗凝固薬のインパクトと梗塞、出血リスクを評価する

方法:
・デンマーク市民登録システム、デンマーク国内患者登録、デンマーク国内処方登録
・CHA2DS2-VAScスコア1,2点で新規発症非弁膜症性心房細動のある退院患者39,400人
・無治療=23,572人、アスピリン5,353人、ワルファリン=10,475人

結果:
1)無治療患者の脳卒中リスク(ITT解析):0点(男)=0.49/100人年、1点(女)=0.47/100人年

2)上記患者の出血リスク:1.08/人年(1年)、0.97/100人年(フル追跡)

3)スコア1点追加後(男1点、女2点)脳卒中リスク:1.55/100人年、約3倍増加

4)上記患者の出血リスク:2.35倍、死亡リスク:3.12倍

結論:低リスク患者(CHA2DS2-VAScスコア0点(男)1点(女)は真の低リスク患者。1点追加で無治療の場合イベント率は明らかに増加(特に死亡率)

### デンマークの大規模登録研究を統合した、壮大な低リスク患者集団のメダデータ?です。登録期間は一番古い研究で1977年から、新しいのでも1995年からとかなり以前からのものです。高血圧合併率は32〜39%くらいのようです。

低リスク患者をどうするかが最近盛んに論文をにぎわせていますね。先日取り上げましたが以下の総説がよくまとまっています。
http://dobashin.exblog.jp/21017387/

CHA2DS2-VAScスコア裏付けとなった有名なデンマークの国内登録研究では、CHA2DS2-VAScスコア1点の入院及び血栓塞栓症死亡率は2.01%(1年)、10年追跡で1.45%でした。当然ながら上記結果と一致しています。
http://dobashin.exblog.jp/12036073/

一方、何回も引用しますが日本の代表的登録研究のプール解析では、CHA2DS2-VAScスコア1点でなんと0.93%です。
http://dobashin.exblog.jp/20541922/

日本の登録は、最近の登録であり、登録施設も循環器専門施設が多いからという説明でよいのでしょうか。大規模登録研究だと例えば血圧、糖尿病の管理状況や、診断自体の精度にも日本のものほど高くないことが予想されます。しっかりとした診断と基礎疾患の的確な治療がなされた場合、高血圧だけの方、糖尿病だけの方などは低リスクなのではないかとますます思えてきますが。。。。

やはり65歳〜69歳と70歳〜74歳で分けるとか、血圧管理良好群と不要群で分けるなど、CHA2DS2-VAScスコア1点をもう少し木目細かにリスク層別化したmodifiedスコアが必要に思います。そうすると簡便さが失われうわけですが。。

$$$ 散歩道でもようやく梅の花がほころび始めました。仙台は梅と桜が一緒に来る。本当なんですね。
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by dobashinaika | 2015-03-25 22:30 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

低リスクの人に抗凝固療法をすべきか:抗凝固療法の適応に関する総説。TH誌

Stroke risk in atrial fibrillation: Do we anticoagulate CHADS2 or CHA2DS2-VASc ≥1, or higher?Jonas Bjerring Olesen et al
Thrombosis and Haemostasis http://dx.doi.org/10.1160/TH15-02-0154


Thrombosis and Haemostasis誌からOlsen先生の「抗凝固療法の適応に関する総説」が出ています。
非常に勉強になりますので、要約しておきます。

イントロ:
・これまでのVKAに関するRCTでは、非抗凝固療法群の年間脳卒中発症は4.5人
・VKAは年間脳卒中/全身性塞栓症発症率は1.5−2.4人
・NOAC(ダビガトラン、アピキサバン)はVKAよりもよく減らす
・しかしNOACのRCTではCHA2DS-VAScスコア1点の多くは除外されている

CHADS2スコアとCHA2DS-VAScスコアはなにが違うか
・「リスク因子1つ(「女性」を除く)で抗凝固療法推奨:CHA2DS2-VAScスコアで男1点、女2点)」は、とくにNOACとTTR70%以上のワルファリンで一般的に推奨される
・スコア別非抗凝固時血栓塞栓症発症率は、試験により差異有り:選択バイアスの違い

CHADS2スコア:
・日本の2つの試験(Suzuki et al, Okumura et al)とATRIA試験の1,2点の発症率は非常に低い
・他の試験のワルファリン群や、ワルファリン対照試験の偽薬群よりも低い
・血栓塞栓症発症率(1年間):Suzuki et al=1.3%, Okumura et al=1.5%, ATRIA=2.1%
・ATRIA研究:初発心房細動の組入れ、ヘルスプランのない患者の除外、診断から12ヶ月間の外来患者は除くなどの条件あり
・Framingham研究:CHADS2スコア0点も示している
・NRAF研究:上記より高リスク。入院患者対象のためだが急性心房細動、65歳未満は除外
・デンマーク、スウェーデンの研究は入院患者対象であり高リスク
・デンマークの研究=3.7%(男), 5.4%(女)、スウェーデンの研究=4.5%
・上記3研究はよりリアル・ワールドに近いように思われる
・ある研究ではCHADS2スコア0点でも高リスクであり、他の研究では1点では抗凝固療法を正当化できない

CHA2DS2-VAScスコア:
・European Heart Survey, Suzuki et al, Singer et alの研究のCHA2DS2-VAScスコア1,2点は低発症率
・上記デンマーク、スウェーデンの研究では高発症率:これらの研究では臨床データの欠落、特定患者に抗凝固療法が施行されなかった理由が明確になっていない
・近年、抗凝固療法が推奨される転換点(血栓塞栓>出血)は脳卒中/全身性塞栓症は勝率0.9%/年と言われていて、CHA2DS2-VAScスコア1点でさえ当てはまる。

血栓塞栓イベント:
・近年、Fribergらはイベントの定義(虚血性脳卒中か脳卒中/全身性塞栓症か)のインパクトを見事に指摘
・定義の絞込により発症率は0.5~0.9%減少する
・後に抗凝固療法を施行した患者が除外されるのも問題
・TIAは容易に見過ごされないようにすべき

CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアをどう使うか:
・スコア1点の人に利益があるかどうかは、対象選択による
・診断直後が最もリスクが高いことが報告されている
・ある患者群では一時的抗凝固療法のみで良いかもしれない
・比較の際、ハザード比は適切なでない
・ハザード比は、直近のリスク記載であり、リスクが競合した場合高齢者よりも若年者においてより重要となりやすい
・注意深い臨床家は、他のデータを臨床の場に取り入れている:同じ80歳でも動脈硬化疾患や入院患者の場合などは無症候の外来患者に比べて高リスクと捉える
・スコアの各項目でリスクは代わる
・全てのリスクが同等ではないので、スコアリングを使う場合は実用性やシンプルを求めるときである
・低点数のひとは、スコアを厳格に使うべきではない
・心房細動の罹患期間や患者の価値、好みを意思決定に組み入れるべき
・最近の研究では、患者は1つの脳梗塞を避けるのに4つの大出血まで許容するとされる

将来の展望:
・抗凝固療法適応は統一性なし:高リスクに使用されない、または低リスクで使用多い
・注目すべきはスコアの洗練化ではなく、医師の正しいリスク評価
・ESCは低、中、高リスクといったカテゴリー化を強調しない
・かわりにリスクに基づく連続的なアプローチを推奨
・スコアの厳格な使用ではなく、まず真の低リスクをを同定するために使う。その次に1点の人を考える
・将来より良いスコアが必要かもしれないが、そのときには非抗凝固療法群は設定できないかもしれない
・新リスクスコアは臨床的に実用性のある3〜5年単位の絶対リスクを用いるべき
・全部のリスクが同等である必要はない

### かなり親和性を感じる言説です。
・スコアリング設定のもとになる非抗凝固時のリスク評価は対象の選択バイアスに左右される
・スコアには時間的要素が入っていない
・ハザード比を用いると高齢者には当てはめにくい
・各スコアの項目は同レベルには扱えない
・他の動脈硬化のリスクや心房細動罹患期間も考えるべき
・特に低リスクでは、スコアに縛られない
・リスクの低い患者の特定にまず使うべき

といったところです。

それにしてもやはり日本の観察研究の脳梗塞発症率は世界的に見ても低いのですね。
CHA2DS2-VAScスコア1,2点の時は、他の動脈硬化リスク、心房細動罹患期間なども加えて流動的に考えるという姿勢を再確認しました。
Editorialの方も面白いですが、これは後日

$$$ 散歩コースにあるせまい路地の坂。しかも階段。路地裏、坂、そして階段と来ればなんとしても行きたい気分になります。以前ちょっと住んでいた東京はそういう坂がたくさんあってワンダーランドでした。仙台は少ないですが、それだけに見つけると秘密基地のようで誰にも教えたくありません(笑)。自分だけの秘密基地を持つのも散歩の極意です。
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by dobashinaika | 2015-03-19 00:01 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

アジア人でCHA2DS2-VAScスコア1点は抗凝固薬の適応か:JACC

Should Atrial Fibrillation Patients With 1 Additional Risk Factor of the CHA2DS2-VASc Score (Beyond Sex) Receive Oral Anticoagulation?
Chao TF et al
J Am Coll Cardiol. 2015 Feb 24;65(7):635-42


疑問:アジア人に、CHA2DS-VAScスコア1点は抗凝固療法の適応はあるのか?

方法:
・台湾のNational Health Insuranceデータベース
・心房細動186,570例、抗凝固薬、抗血栓薬非処方例
・CHA2DS-VAScスコア1点男性及びCHA2DS-VAScスコア2点女性につき検討
・エンドポイント:虚血性脳卒中

結果:
1)CHA2DS-VAScスコア1点男性の虚血性脳卒中:年2.75%(平均追跡5.2年)

2)CHA2DS-VAScスコア1点男性の各項目別リスク:血管疾患1.96%/年、65〜74歳3.50%/年

3)CHA2DS-VAScスコア2点女性の虚血性脳卒中:年2.55%

4)CHA2DS-VAScスコア2点女性の各項目別リスク:高血圧1.91%、65〜74歳3.34%

結論:CHA2DS-VAScスコアの各スコアすべてが同じ重みではなく、65-74歳が最高リスクだった。CHA2DS-VAScスコア1点の患者には抗凝固薬が考慮されるべき

### 昨年のESCに発表されていたデータの脳梗塞の方だけの報告です。平均年齢は男女とも59.1歳と若い集団です。

以前のブログでまとめた日本のJ-RHYTHMレジストリーではCHA2DS2-VAScスコア1点の血栓塞栓症発症率は0.9%でした
ので、やはり日本のデータはかなり低いことになります。
http://dobashin.exblog.jp/19951989/

改めて日本の登録研究はかなり低い発症率だったことがこの研究からも実感されます。

65歳ー74歳というのが一番ハザード比が高いことで、やはり65歳から抗凝固薬を考えなければならないのでしょうか。個人的には前から述べているのように65〜74歳を65〜69歳と10〜74歳にさらに細分化した研究を誰かしてくれないかなあと思うのですが。65サイト74歳ではだいぶリスクが違う気がします。細分化し過ぎかもしれませんが。。
by dobashinaika | 2015-02-18 22:14 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

ケアネット連載 〜日本人における抗凝固薬の効果と安全性の特徴

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は「日本人における抗凝固薬の効果と安全性の特徴:です。
国立循環器病研究センターからの、日本人対象の抗凝固薬めメタ解析についてEditorailが出ていたので、それをまとめたものです。

ご参考になれば幸いです
http://www.carenet.com
(要無料登録)
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by dobashinaika | 2015-02-06 18:33 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

ワルファリンよりも新規抗凝固薬が選ばれる最大の理由は?:AJC誌

Factors Driving Anticoagulant Selection in Patients with Atrial Fibrillation in the United States
Julie C. Lauffenburger et al
Am J Cardol 2月2日


疑問:医師が抗凝固薬を選ぶときの選択基準は何か?

背景:NOAC導入の際、リアルワールドでの抗凝固薬の選択基準は明確ではない。この研究の目標は、脳梗塞リスク(治療ベネフィット)、出血リスク(治療の害)、処方上の手当の範囲(の3つ)のうちどれをどの程度考慮するのかを解析することである。

方法:
・対象:USデータベースまたはメディケアにおいて2010年10月〜2012年12月に抗凝固薬が開始された、非弁膜症性心房細動症例
・ワルファリンとNOAC選択、およびダビガトランとリバーロキサバンの間の選択の際に、塞栓症リスク(CHA2DS2-VAScスコア)、出血のリスク(ATRIAスコア)、手当における余裕(全生活費に対する手当の有り合い)の間の関係を評価

結果:
1)70498症例:ダビガトラン29.9%、リバーロキサバン7.9%

2)ワルファリン処方例に比べてNOAC処方例は
CHA2DS2-VAScスコアが低い:修正RR0.75 (0.72-0.77)
低出血リスク(ATRスコア)低い:修正RR0.66 (0.64-0.69)
経済的余裕あり(手当割合20%以下):修正RR2.03 (1.92-2.16)

3)処方上の余裕のある人は、ワルファリン処方例に比べNOAC処方例はほぼ2倍

4)ダビガトランに比べ、リバーロキサバン選択患者は: 高出血リスク;修正RR1.16 (1.09-1.24)

結論:高出血リスク、高塞栓リスク患者ではワルファリンがより好まれるが、経済的余裕がNOAC選択の最強因子である。

### "benefits’ generosity"はメディケアなどの保険制度で、何割給付を受けるかという経済上の「寛容さ」を指すものと考え、「経済的余裕」と一部訳しました。

この論文の結果は大納得です。何回も書いていますが、「高い」という理由でNOACを避けワルファリンを選ぶ方は、かなり多いということをいつも実感します。特に3割負担の方、年金暮らしのかたですね。大きな病院より開業医では確実にこうした方が多いように思われます。

ワルファリンを選ぶひとにとっては、(ベネフィット) - (リスク)<(コスト)ということになります。

抗凝固薬の選択要件をこのように「ベネフィット」「リスク」「コスト」で考えて、コスト重視の向きにはワルファリン、という推奨がされることがあり、私も時にそういう書き方をするのですが、よく考えるとですね、いい薬なのに、高いから飲めないという薬が、日本の、しかもコモンディジーズにおける、外来の診療において、あってよいものなのか?エビデンス的に優れた薬が、経済的格差という理由から使われないということがあって良いものなのか?ということをですね、十分考えなければならないように思います。
by dobashinaika | 2015-02-04 23:42 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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