カテゴリ:抗凝固療法:適応、スコア評価( 79 )

CHA2DS-VAScスコアで抗凝固薬の適応を自動的に決めた場合とそうでない場合とでアウトカムは変わらず:IJC誌


背景:ガイドラインはCHA2DS2-VAScスコアをもとにした意思決定を推奨しているが,アンダーユーズも存在する。ジェネラルプラクティスにおけるRCTにより,自動的な意思決定のインパクトを検証。

方法:
・CHA2DS2-VAScスコアに基づいて自動的に抗凝固療法を行う介入群と対照群の比較
・一次アウトカム;脳卒中/全身性塞栓症/TIA
・二次アウトカム:大出血

結果:
1)対照群1192例(19施設),介入群1226例(19施設)

2)平均77歳,CHA2DS2-VAScスコア平均3.0,平均追跡期間:2.7年

3)CHA2DS2-VAScスコア2点以上でのアンダーユース:6.6%

4)一次アウトカム;介入群1.96%/年 vs. 対照群1.42%/年 ,HR 1.3, 95% C.I. 0.8–2.1)。有意差なし

5)二次アウトカム:介入群0.79%/年 vs. 対照群0.82%/年 。有意差なし

6)アンダーユース:介入群7.2%/年 vs. 対照群8.2%/年

7)オーバーユース:介入群8.0%/年 vs. 対照群7.9%/年

結論:この研究では抗凝固療法のアンダーユースは比較的少ない。CHA2DS2-VAScスコアに基づく意思決定サポートは脳卒中を減らさず,出血やアンダー/オーバーユースに影響しない。

### CHA2DS2-VAScスコア自体が否定されそう,と思いきや対照群といえどもかなりCHA2DS2-VAScスコアを重視していオーバーもアンダーユースも自動的に決めた場合と同じ割合だったようです。

きわめて質の良いGPの集団を選んだ,またはそういう医師だからこそ参加したのかもしれません。しかしCHA2DS-VAScスコア5−6点で超高齢者,フレイルなどでもきちんと出していたのでしょうか。

アウトカムの頻度も非常に低めです。普段の血圧その他の管理も良好なのかもしれません。全文読んだらまた報告します。

by dobashinaika | 2018-09-20 08:24 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

日経メディカルオンライン:今回は「「CHADS2スコア0点1点問題」を真剣に」考えます

日経メディカルオンライン,今回は「「CHADS2スコア0点1点問題」を真剣に考える」です。

これ,実は0点1点に限らず,CHADS2スコア全部が今やあまり信頼性妥当性にかけるという話です。
伏見AFやJ-RISK AF研究をもとにしますと,脳卒中の既往,75歳以上,高血圧までしか残らず,かわりに持続性,BMIあたりが入ってくるようです。

医学の常識として考えられたことも年単位で大幅な裁縫,再構築が迫られる,私たちはこうした光景をこれまで散々見てきましたが,抗凝固薬の分野でも例外ではありません。

新ガイドラインには反映されるでしょうか?

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by dobashinaika | 2018-08-08 07:34 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

日本の心房細動患者では安定した心不全は脳卒中のリスク因子として示されず:伏見AFレジストリ


目的:心不全は様々なタイプが有る。どのタイプの心不全が心房細動の脳卒中/全身性塞栓症に影響するのかを検索

方法:
・伏見AFレジストリ登録患者3749例
・心不全の定義;心不全の入院歴,症状(NYHA≧2),低EF(<40%)

結果:
1)1008例(26.9%)で事前心不全あり

2)事前の心不全(各項目ごとも含め)は脳卒中/全身性塞栓症の発症と関連しない:HR, 1.24; 95% CI, 0.92–1.64)
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3)BNP.NT-proBNP高値は関連あり:HR, 1.65; 95% CI, 1.06–2.53

4)脳卒中/全身性塞栓症が入院後30日以内に明らかに多い:HR, 12.0; 95% CI, 4.59–31.98

結論:心房細動における心不全の脳卒中/全身性塞栓症への影響は,心不全のステージや重症度に依存する。脳卒中/全身性塞栓症は心不全入院30日以内明らかに増加するが,代償された「安定した」心不全はリスクへの関与は明らかではなかった。

### 心房細動があっても,よく管理された高血圧,糖尿病は脳卒中が少ないだろうことは直感としてわかりますが,心不全は流石に関係するだろうと思いきや。これも安定した心不全は全く脳卒中に関与しないことが伏見AFレジストリにより明らかとなりました。NYHAやLVFEが低くてもです。

関係したのは,「心不全入院30日以内」です。やはり心不全非代償期は凝固能の亢進,利尿薬投与など血栓ができやすい状況と思われます。

またBNP/NTproBNPも関係しました。それぞれのカットオフ値は測定し得た例の平均値で分けていてBNPが169.4pg/mL,NT-proBNPが1,457 pg/mLでした。全例測定でなく,測るべきと考えられた人で比べますので,選択バイアスはありカットオフ値の判断までできないかと思いますが,極端な高値は注意する指標として有効かと思います。

伏見AFレジストリ開始から7年。これまで明らかになった日本の抗凝固療法の「リアル」は数知れず,最近までのデータの蓄積は間違いなく今のそして今後の日本の心房細動診療を左右する要になると思われます。先日久々に赤尾先生にお会いする機会がありましたが,「伏見」をささえるシステム,とくにリーダーの赤尾先生とそのフォロワースタッフのチームの素晴らしさがこの研究を開花させたことが強く印象に残りました。

そしてCHADS2スコアですが,今の日本にはほとんど当てはまらないことはもはや明白だろうと思われます。伏見その他のレジストリからは「脳卒中の既往」「75歳以上」が最強で,(よく管理された)高血圧,糖尿病,心不全は関係ないことになります。かわって「持続性」「低体重」「低腎機能」「貧血」「左房径」などがスコアに入ってくるかもしれません。他の集団でも同じようなアウトカムが示されてきいます。

今のところは,以前拙著でも提唱したように,CHADS2スコア2点以上は暫定的に抗凝固薬必須としておいて,0,1点の場合に,安定した高血圧と心不全,糖尿病が1点の項目だったときは,「持続性」「低体重」「低腎機能」「貧血」「左房径」のどれか一つがあれば適応とかんがえる,つまり低リスクの場合上記の付加項目を「考慮する」というスタンスで行きたいと思います。ガイドラインが変わるまでです。

$$$ 東京で見かけたラーメン屋さん。この季節これは致命的では。。(仙台ではそうでもないけど)
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by dobashinaika | 2018-07-25 07:07 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

CHA2DS2-VAScスコアが経年的に増加する人は脳梗塞リスクも増加し,元々の点数より増加分のほうが予測能が高い。


疑問:経年的にCHA2DS2-VAScスコアが増加したとき脳塞栓リスクも上昇するのか?

方法:
・台湾の国民健康保険における心房細動患者31,309例
・抗血栓療法なし。年齢,性別以CHA2DS2-VAScスコアの点数なし
・高血圧,糖尿病などの新規因子が増加したかどうか。増加とその後の脳梗塞リスクの関係を評価

結果:
1)ベースラインCHA2DS2-VAScスコア:1.20点

2)2.31点に増加(171,956人年),平均増加1.02点

3)1点以上増加の頻度:脳梗塞既往歴症例89.4%,脳梗塞なし例54.6% (p<0.001)

4)最も多い新規併存リスクは高血圧

5)ベースライン時やフォローアップ時のCHA2DS2-VAScスコアより変化のほうが脳梗塞の予測能が良い
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結論:CHA2DS2-VAScスコアは変わらぬものではなく,ほとんどの患者は1点以上増加する。 CHA2DS2-VAScスコアの増加は脳梗塞リスクの増加と関連があり,CHA2DS2-VAScスコアそれ自身よりも予測能に優れている。

これ大事なポイントで,以前から疑問に思っていたところでした。CHA2DS2-VAScスコア0点でも,年が経つに連れてリスクは黙っていても増加するわけで,そうした症例の脳梗塞リスクはどう考えたら良いのか知りたいところでした。
予想通りというか,やはりもともとの点数による評価よりも,点数が「増加した」ことのほうが,脳梗塞リスクをより反映するとのことでした。
新たに高血圧などを合併した例ほど,より注意すべきということかと思います。納得です。

流石に,今回の雪,応えましたね。でもスタッフ総出で30分で雪かき終えましたー。
雪は,人を小踊りもさせるし,沈黙もさせます。

ベースライン
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30分後
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by dobashinaika | 2018-01-24 22:33 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

心房細動は血栓塞栓症の原因ではなくCHA2DS2-VAScスコアで2点相当のリスク因子のひとつにすぎない:JACC誌


疑問:心房細動自体は本当に脳卒中の主要なリスク因子なのか?

背景:
・CHA2DS2-VAScスコアは心房細動患者におけるリスク評価ツールとして確立されている。
・心房細動それ自体が脳卒中の原因となる因子なのかはわかっていない
・大多数(80〜90%)の脳卒中患者では心房細動は記録されていない。

方法:
the U.K. Biobank cohort登録患者502353例
・40〜69歳の患者,英国のGPによる登録。2006〜2010年

結果:
1)平均57+/-8歳:81%が65歳未満,19%が65〜74歳,46%が女性,平均追跡期間2.2年

2)高血圧29%,脳卒中/TIAの既往2%,血栓塞栓症の既往3%,心不全1%,血管疾患3%,糖尿病5%

3)心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.86(95%CI;0.74-1.01)/100人年

4)非心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.14(95%CI;0.13-0.15)/100人年

5)CHA2DS2-VAScスコアは心房細動例の脳卒中を予測した:N = 9,947; p < 0.001; C-statistic: 0.64

6)同様に非心房細動例の脳卒中も予測可能だった:N = 492,406; p < 0.001; C-statistic: 0.64

7)CHA2DS2-VAScスコア2点未満の心房細動例の血栓塞栓症発症率:0.48 (0.35-0.67)

8)CHA2DS2-VAScスコア4点未満の非心房細動例の血栓塞栓症発症率:0.12(0.11−0.13)

9)CHA2DS2-VAScスコア2点の心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.80 (0.59-1.08)

10)CHA2DS2-VAScスコア4点の非心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.76 (0.64-0.91)

11)CHA2DS2-VASc-A2スコア(CHA2DS2-VAScスコア+心房細動あり2点/心房細動なし0点)は一般住民における血栓塞栓症を十分便予測しえた:N = 502,353; C-statistic: 0.67
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結論:CHA2DS2-VAScスコアは心房細動のない例でも血栓塞栓症の予測に役立つ。このスコアに心房細動2点として別に追加したスコアを一般住民に当てはめる新しくてより深いスコアを考案した。CHA2DS2-VASc-A2スコア4点以上に抗凝固薬を詳報すべきかどうかは,このデータだけからは結論できない。さらなる研究を提案したい。

### なるほどねー。心房細動クラスタ(そんなのあるのか?)にとってはまさに発想の転換ですね。
心房細動を特別視せず,他の因子と並列に捉えた場合,心房細動はCHA2DS2-VAScスコアで2点程度の寄与危険なんですね。まあCHA2DS2-VAScスコア0点では心房細動があっても投与しなくてよかったので,ある意味2点相当というのはうなづけますが,改めてこういたデータを突きつけられると,心房細動がまずあってそっからリスク評価を考えるという従来の発想法をリセットし,心房細動も一つの危険因子としてとらえたくなるわけです。

ただ,では心房細動なしでもCHA2DS2-VAScスコアが4点以上なら抗凝固薬かというとことは単純ではないですね。たとえば,75歳以上,糖尿病,高血圧の人は4点ですが,全員抗凝固薬かという話になります。こういう患者さんはものすごくいますので,高血圧や糖尿病の重症度その他をよく考える必要があります。出血リスクも考える必要があるし,また85歳以上でもそうかというと,当然まだ何も言えないと思われます。

ただ従来からも脳卒中のリスクスコアはいくつかありますが,その中では簡便なものと考えられます。追加試験を待ちましょう。

$$$ 今日の収穫
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by dobashinaika | 2017-08-01 23:29 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

プライマリ・ケア外来でも発作性心房細動への抗凝固薬処方率は非発作性に比べて低い:Heart誌


疑問;英国のプライマリ・ケアでの心房細動管理は,ガイドラインとどの程度合致しているか?

方法:
・英国プライマリ・ケアデータベース(2000−2015年)から発作性心房細動の管理についての情報を得る
・主要エンドポイントは抗凝固薬処方

結果:
1)心房細動患者179,343人

2)発作性心房細動患者数の推移(2000→2015年):心房細動全体の7.4%→14%に増加

3)発作性心房細動患者への抗凝固薬の処方率の推移:16%→50.7%

4)非発作性心房細動患者への抗凝固薬の処方率の推移;33.5%→67.1%

5)発作性心房細動でCHADS2スコア1点以上の人の抗凝固薬の処方率の推移:18.8%→56.2%

6)非発作性心房細動でCHADS2スコア1点以上の人の抗凝固薬の処方率の推移:34.2% →69.4%

結論:心房細動患者への抗凝固薬処方率は過去15年で増加したが,適応患者の多くの層,特に発作性の例で抗凝固療法が施行されていない

### CHADS2スコア1点以上の抗凝固療法適応例でも,実際の処方率は発作性56%,非発作性69%ということで,「発作性は軽症」というバイアスが根強いようです。ただ最近は,抗凝固療法を施行しているひとでは発作性より非発作性のほうが塞栓症リスクが高いという報告も相次いでおり,一口に「発作性」と言ってもその中をさらに低リスク発作性,高リスク発作性くらいに分けて考えたほうが良いかもしれません。

15年前は発作性の抗凝固薬の処方率が16%というのも驚きですが,まあたしかにアスピリンでかなり逃げていましたね。自分自分で振り返っても。たしかにあの頃より心原性脳塞栓は少なくなったという印象はあります。ただし,今この時点を15年後に振り返ったとき,「あの頃は心原性塞栓症が多かった」と思えるかどうか。上記処方率50%が100%になれば当然出血率も増加しますので,現状のガイドラインが真のリスクを表しているのかもまだまだ検証の余地があると思われます。

### 玄関先で
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by dobashinaika | 2017-06-26 22:22 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

抗凝固薬の適応と使い分けのシンプルなアルゴリズム:ESC誌より

Stroke prevention in Atrial Fibrillation
Gregory Y. H. LipEur Heart J (2017) 38 (1): 4-5. DOI:https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehw584

ESCでLip先生の抗凝固薬に関するわかりやすいアルゴリズムが提唱されました。
3ステップとしていますが,どう考えてもCHA2DS2-VAScスコアとSAMe-TT2R2スコアの2ステップと思われますので,私なりにもっとシンプル化して図にしてみました。

解説は以下の通り

・心房細動があると脳卒中リスク5倍
・リスクファクターはホモジーニアス(各項目均一)ではない
・年間1%以上の脳卒中発症率が抗凝固薬投与の閾値
・アスピリンのNCB(ネットクリニカルベネフィト)は負の値
・CHADS2,CHA2DS2-VAScスコアの予測能は中有等:Cインデックス0.6くらい)
・CHA2DS2-VAScスコアは低リスク抽出に有効
・各種バイオマーカーを追加すれば予測能は上がるが,臨床での迅速性も考慮
・ステップ1:低リスクの同定
・ステップ2:CHA2DS2-VAScスコアの評価
・ステップ3:SAMe-TT2R2スコアの評価
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※ 男性1点以上,女性2点以上の場合,HAS-BLEDスコア3点以上であれば,出血の原因となる因子に注意し頻回のフォローアップを要す。

CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコア,HAS-BLEDスコアは以下を参照

SAMe-TT2R2スコアは:女性,60歳未満,2つ以上の合併症,ワルファリンに影響ある薬剤(各1点),喫煙(2点),エスニックマイナリティー(2点)です。

### 私からコメントすると,
1.CHA2DS2-VAScスコアは日本人の低リスク患者同定には間口が広すぎる。(私見では65−69歳くらいの血圧,血糖安定時患者は保留?)
2.NOACオンリーでなく,ワルファリンを重視している点は非常に親近感を持つ
3.SAMe-TT2R2スコアが2てん以下の人は少ない(60歳以上の男性は既に2点以上)ということを踏まえて考えたいと思います。

ただ,かなりこのアルゴリズムでイケルと思います。このあとステップ4としてNOACの使い分けとなるととたんに面倒になりますが。。。

by dobashinaika | 2017-01-24 19:10 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

抗凝固薬の新しいTIMI-AFスコアはワルファリンかNOACかの選択に有効か:ESC誌

A novel risk prediction score in atrial fibrillation for a net clinical outcome from the ENGAGE AF-TIMI 48 randomized clinical trial
Eur Heat J http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehw565


目的:抗凝固薬の適応に関する新しいリスクスコアを創出する

方法:
・ENGAGE AF-TIMI試験のワルファリンナイーブ(初回使用)患者対象
・重篤な脳卒中,生命を脅かす出血,全死亡をもとにしたネットクリニカルアウトカム(NCO)に基づいて統合的なリスクスコアを作成
・C統計量とbookstrappongによるバリデーションを施行

結果:
1)NCOイベント;7545.9イベント(6.05%)/2898例中,平均2.7年追跡

2)最高17点のリスクスコア (TIMIT-AFスコア)を低,中,高リスクの3レベルに分類:各イベントリスクは3.5%, 9.9%, and 20.8%

3)C統計量:0.693

4)エドキサバン高用量,低用量ともに,高リスク群,中リスク群ではワルファリンよりベネフィットがあり,低リスク群では同等だった(P-interaction 0.008および 0.014)。

結論:心房細動のワルファリンナイーブ例では,TIMI-AFスコアは複合アウトカムの予測やNOACとワルファリンの選択に際し助けとなる

資金:第一三共からのグラント

### これまでのリスクスコアをまとめますと
・CHADS2, CHA2DS2VASc, R2CHADS, ATRIA, ABCの各スコアは脳卒中(虚血性脳梗塞)
・HEMORR2HAGES, HAS-BLED, ATRIA, ABC, ORBITスコアは出血
・SAMe-TT2R2スコアはワルファリン管理の予測
とそれぞれアウトカムが異なっていました。

本来は梗塞と出血量者を統合したスコアがベストなはずですがこれまで決定的なものがないことがむしろ不思議でした。
今回のスコアはENGAGE AF-TIMI48試験の二次ネットクリニカルアウトカムとして特に設定した「重篤な脳卒中,生命を脅かす出血,全死亡」をアウトカムに採用しています。(定義がややはっきり記載されていないのが残念)。

TIMI−AFスコアとは:年齢(66〜74才2点,75以上3点),左室駆出分画(<30%3点,30〜49 %2点, 不明1),ヘモグロビン13未満2点,非白人(アジア2点,黒人2点,他2点),持続性1点,脳梗塞既往1点,クレアチン110 umol/L以上1点,女性1点,糖尿病1点,頸動脈疾患の既往1点,心筋梗塞の既往1点
と大変細かいです。

このスコアの特徴は低リスク(0〜6点)ではイベント発生率がワルファリン=NOACなのに対し,中〜高リスク(7点以上)ではワルファリン>NOACであるということです。ワルファリンだとどの項目がよりイベントを起こしやすいのかまで明らかにされてはいません。
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いきなりこのスコアを使うのではなく,中〜高リスクのときの薬剤選択に用いるように勧めています。なんか,NOAC時にエドキサバンが番宣の趣もあるスコアですが,細かい項目などを確認してからちょっと使ってみようかとも思います。
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CHA2DS2-VAScスコア2点前後で,抗凝固薬行くか行かないかの選択に外挿できるかと思いましたが,どうかな。
by dobashinaika | 2017-01-08 11:35 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

アジア人心房細動大規模データべースでは50歳以上から抗凝固薬の適応:Stroke誌


Validation of a Modified CHA2DS2-VASc Score for Stroke Risk Stratification in Asian Patients With Atrial Fibrillation
A Nationwide Cohort Study
Stroke. 2016;STROKEAHA.116.013880, published online before print September 13, 2016


台湾の国内データベースに基づく興味深い検討がでています。

目的:CHA2DS2-VAScスコアの年齢部分を現行の65〜74歳から50〜74歳に広げた場合,予測能はどうなるか?

方法:
・新規の心房細動と診断された224866人対象
・抗凝固療法をしていない124,271人において,CHA2DS2-VAScスコアとmCHA2DS2-VAScスコア(50〜74歳)の予測能を比較

結果;
1)mCHA2DS2-VAScスコア1点(男性)または2点(女性)にすると,ワルファリンの使用で虚血性脳卒中が30%減少

2)頭蓋内出血は不変

3)ネットクリニカルベネフィットもmCHA2DS2-VAScスコアのほうが良好

結論:アジア人心房細動コホートでは,mCHA2DS2-VAScスコアは,もともとのCHA2DS2-VAScスコアよりパフォーマンス良好。より多くのネットクリニカルベネフィット陽性患者を抽出できる。

### 台湾のコホートではこうなるのですね。同様の研究は以下でも垣間見えます。
http://dobashin.exblog.jp/20904993/
http://dobashin.exblog.jp/20288437/

一方日本は3大コホートでの脳塞栓発症率自体かなり低く,65歳〜74歳でさえ危険因子とはなりえませんでした。
http://dobashin.exblog.jp/20541922/
伏見でも,75歳以上としています。
http://dobashin.exblog.jp/21820445/

この差は何でしょうか。血圧その他の周辺管理の違いか。選択バイアスか。
流石に50歳からNOACを出す気にはなれません。
日本もビッグデータはよ,って言いたいところです。

$$$ 月は見えなかったけどお月見
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by dobashinaika | 2016-09-15 22:12 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

左房径>45mmは心房細動脳塞栓の予測因子:Fushimi AFレジストリーより

Left atrial enlargement is an independent predictor of stroke and systemic embolism in patients with non-valvular atrial fibrillation
Sci Rep. 2016 Aug 3;6:31042. doi: 10.1038/srep31042


疑問:左房径は心房細動塞栓症の予測因子となるのか

方法:
・Fushimi AF レジストリー登録患者のうち2015年までにベースラインで心エコーを施行した2713例対象
・左房径45mm超の群(左房拡大群)とそれ以下の群とで,背景やイベント発生率を比較
・平均追跡期間976.5日

結果:
1)左房拡大群は全体の39%

2)拡大群ほど:高齢,心房細動持続期間が長い,非発作性が多い,CHADS2/CHA2DS2-VAScスコア高値,抗凝固薬使用多い

3)脳卒中/全身性塞栓症発症リスク(拡大群,対比拡大群):
      全コホート1.92(95%CI:1.40〜2.64;p<0.01)
      抗凝固薬使用例 1.97(95%CI:1.18〜3.25;p<0.01)
      抗凝固薬非使用例 1.83(95% CI: 1.21-2.82; p < 0.01)
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4)CHA2DS2-VAScスコア,抗凝固薬使用で補正後 1.74 (95% CI: 1.21-2.82; p < 0.01)

結論:左房拡大は心房細動の大規模コホートにおける脳卒中/全身性塞栓症発症率の独立予測因子

### 左房径は直感的に考えれば,大きいほど左房内血流の遅延をきたし,左心耳血栓が増え,心原性脳塞栓の予測因子として確実のように思われますが,これまでのスタディーでは予測因子にはならないとするものも多数ありました。

測定方法が均一でない,左房容積や左房内血流を必ずしも反映しない,抗凝固薬使用例を対象とした研究が多い,などの因子が影響するようですが,最近は,以下のブログなどもそうですが,やはり予測因子として考えられそうという研究が増えていました。
http://dobashin.exblog.jp/13511523/

今回はあのFushimi レジストリーの日本人多数例での綺麗なデータであり,抗凝固薬使用の意思決定の上で大変参考になります。

CHADS2スコア1点でやや若くて,血圧もしっかり管理されているような例などで抗凝固開始に迷いますが,そんなとき参考にしたいと思います。

CHADS2,CHA2DS2-VAScの予測精度が上がるのか,ROC曲線だと45mmがやはり最適なのか,追加の検討が楽しみになります。

$$$ 本日大収穫祭り! このところ毎日見にトマトとナス三昧です。
by dobashinaika | 2016-08-09 22:37 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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治療 2015年 04 月号 [雑誌]

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ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

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