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カテゴリ:抗凝固療法:中和方法( 29 )

ダビガトランに特異的な中和薬に関する学会発表とプレスリリース

ベーリンガー・インゲルハイム社からのプレスリリースです

http://www.boehringer-ingelheim.com/news/news_releases/press_releases/2012/05_november_2012dabigatranetexilate.html

ダビガトランの中和薬(ヒトモノクローナル抗体フラグメント製剤)について第I相試験が開始されるとのことです。

現在LAで行われているAHAで、ラットに対する効果については発表されています。
http://circ.ahajournals.org/cgi/content/meeting_abstract/126/21_MeetingAbstracts/A9928?sid=89517c16-a818-4c95-adb5-fe5f258fbb56

具体的な薬剤の詳細は不明ですが、ラットにおいてはダビガトランに特異的に作用し、効果発現時間も速いようです。

一応注目。
by dobashinaika | 2012-11-07 19:18 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

新規抗凝固薬アピキサバンに対する中和薬についての研究

アメリカ心臓協会(AHA)の6月20にち開催のWebカンファランスEmerging Science Seriesから

Reversal of Apixaban-Induced Alterations of Hemostasis By Different Coagulation Factor Concentrates: Studies In Vitro With Circulating Human Blood

【目的】
1)止血におけるアピキサバンの高濃度効果の検証
2)アピキサバンの中和における異なる凝固因子の影響の評価

【方法】
1)血小板反応性、トロンビン生成、トロンボエラストメトリー、血小板の密着性、集合性の評価
2)健常者の全血アピキサバン(200ng/ml)とin vitroで混合させ、凝固因子集合体をアピキサバンの抗凝固活性の中和のために追加
3)集合体にはピロトロンビン複合体製剤(PCCs)活性型PCCs、遺伝子組み換え活性化大VII因子製剤(rFVIIa)を含む

【一次エンドポイント】
1)血小板反応性、トロンビン生成(TG)、トロンボエラストメトリーパラメーター(TEM)
2)異なる凝固因子集合体に対しての反応した凝固時間とクロットの堅固性

【結果】
1)血小板反応性はアピキサバンによる影響受けず

2)アピキサバンはTGパラメーターを減少、凝固時間を延長、クロット堅固性、血小板交互作用と同様にフィブリンを減少

3)凝固因子集合体のフィブリンと血小板への効果は多様
※ニュースリリースによると
  ・TGの評価では,PCCおよびAPCCによるトロンビン生成の回復がrFVa  に比べ,より優れていた
 ・ 小凝血塊形成はrFVⅡaが最も早く,APCC,PCCがそれに続いた
 ・傷害血管を用いた灌流試験ではアピキサバン添加で認められたフィブリ  ンと血小板減少に対し,rFVⅡaによる作用減弱効果が最も強く,次いでP  CC,APCCの順に作用減弱が認められた

【結論】
アピキサバンには直接的な血小板作用はない。凝固因子集合体は、様々レベルでアピキサバンの抗凝固活性を代償し中和させた。

### これまで新規抗凝固薬の中和薬に関しては、ダビガトラン、リバーロキサバンですでに幾つかの報告がありますが、アピキサバンでは初めてです。
http://dobashin.exblog.jp/15045649/
http://dobashin.exblog.jp/15452909/
http://dobashin.exblog.jp/13523873/

本報告では、各凝固因子製剤の効果が一様ではなく、これといった決め手はないという結論で終わっているようです。

それにしても、AHAでは年次学術講演会では追いつかないわだいについて、こうしてwebカンファなども行なって、積極的な啓発活動をやっているんですね。これ素晴らしいと思います。地方の勤務医、開業医でなかなか学会に行けない臨床医のために、日本でもこういうwebを使った企画に、どんどん取り組んで欲しいですね。
by dobashinaika | 2012-06-27 23:41 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

症例に基づいたワーファリンの実践的中和法:Circulation誌の総説

Circulation 6月12日号  Clinical Updateより

Reversal of WarfarinCase-Based Practice Recommendations
Circulation.2012; 125: 2944-2947


ワーファリン過量の際の中和法について、ケースに基づいた論説です。

74歳女性、救急外来受診。内出血。心房細動でワーファリン服用。最近trimethoprim/sulfamethoxazole服用開始。INR8.6

・原因は抗菌薬
・理由なくINRが3.0を超えることは珍しくない
・原因に関係なく、出血の有無を確認すべき
・INR>5で無症候→ワーファリン少なくとも1回の服薬中止。頻回のモニター必要

・この症例では低用量経口ビタミンK服用でINRはすみやかに正常化されるだろう
・ビタミンKは頻用されるが、大出血に対する短期効果は定かではない
・INR5.0~9.0の無症候者1104名の観察研究(90%がワーファリン中止のみ):30日以内の大出血は0.96%
・INR>6.0の無症候者114名の最近の観察研究(ビタミンKなし);14日以内の出血5例、4,4%(1.4〜9.9%)
・筆者らの割付研究:
 P:ワーファリン服用でINR5~9の無症候患者355名
 E:1.25mg経口ビタミンK
 C:プラセボ
 O:INR正常化率。大出血
 結果:INR正常化はビタミンK群で早い。7日以内大出血は両群とも低率。90日以内大出血は差なし(2.5%vs.1.1%,P=0.22)

結論として、INR5-9の無症候者の場合、ビタミンKでINR早い正常化は可能だが、大出血リスクの低下は期待できない
・高齢、非代償性心不全、ワーファリン低用量、活動性悪性腫瘍はINR正常化を遅らせる要因
・このような出血高リスクにとっては、迅速なINR正常化のベネフィットは、大きいかもしれない

無症候性にもかかわらず、医師はビタミンK投与を決定。この時の用量、投与径路は?

・出血なし、INR>4.0→経口ビタミンK(1~2.5mg )で24時間以内にINRは1.8〜4.0に低下
・静注のほうが早く下がるが、24時間でのINR正常化率は同等
・皮下注射は経口よりINR正常化率が低く(50%未満)勧められない
・経口ビタミンK投与の2つのオプション
 1)5mgの1/4~1/2経口
 2)1〜2mg静注+オレンジジュースコップ1杯


86歳男性。胆石と閉塞性黄疸で入院中。24時間以内のERCPと内視鏡的摘出術予定。ワーファリン服用。INR2.3。肝機能正常。INRを正常化させる戦略は何?

・準緊急手術時の少量経口ビタミンKは、INRを正常化させ輸血を回避する
・すべての手術待機者でワーファリンを5日中止し、INR1.4-1.9の患者に1mgビタミンKを投与したところ、39/43 (90.7%)出、翌日INRが1.5未満に低下。ワーファリン再開は容易。

・ワーファリン中止の日にビタミンK1mg投与により、24時間以内に15人中10人がINR1,4未満になる
・術当日INRが正常化しない場合に限り、新鮮凍結血漿が使用される
・低用量のビタミンkは使用すべきでない。術前日の投与のみでは60%以上の人がINRの正常化に失敗したとの報告あり

52歳女性。人工弁患者。鼻出血。INR15.7。その他正常。圧迫ですみやかに止血成功。他部位の出血なし。

・ACCPガイドラインでは、「INR>9.0で出血なしの患者には、ワーファリン中止、高用量(2.5~5mg)ビタミンK経口投与により24〜48時間以内にINRは正常化される。頻回のモニター、数値に応じた追加投与を行い、INR正常化とともにワーファリンを再開する」とある
・中等度の質のエビデンスあり
・多くの臨床家は、塞栓リスクを恐れるため、低用量ビタミンKを投与する傾向あり
・加えて上記エビデンスでも、低用量ビタミンK投与で、塞栓症イベントは非常に稀
・推奨として、INR>10の出血無しは経口ビタミンK2.5〜5.0mg。INRは24〜48時間後測定。出血のいかなるサインでもあれば、速やかな入院、輸血を検討

37歳男性。静脈血栓塞栓症二次予防のためワーファリン服用。2日間下血と新しい大量出血のため救急外来受診。INR7.3

・ワーファリン関連出血の10%今日が30日以内に死亡
・50%が頭蓋内出血。消化管出血も危険
・INR是正のベネフィットを証明した上質エビデンスないが、可能な限り凝固系是正の努力をすべき
・静注ビタミンK必要。5〜10mg高用量静注で多くの患者は正常化される
・しかし最大効果発現まで24時間かかる
・暫定的に凝固因子製剤を積極投与すべき
・新鮮凍結血漿は広く使用される。しかし250ml投与では少量の凝固タンパクしか生成できない。1500ml以上必要
・対照的にプロトロンビン複合体製剤(PCCs)はビタミンK依存性凝固タンパクが豊富
・4因子(II.VII.IX,X)PCCsが効果的。3因子PCCsまたはVIIのないPCCsも効果アリ
・筆者の研究では新鮮凍結血漿なしでは3因子PCCsはINR正常化はされなかったが、別の研究では違うデータ
・PCC投与後の血栓についての研究は知られていないが、最近のメタ解析では1.8%以下
・この数字は高いが、投与しないと生命の危機のある患者であり、ワーファリン投与患者はより血栓のリスクが高いのである
・リコンビナントVIIa因子製剤は、よく使用されるが、実験では出血を止めることはできなかった。
・頭蓋内出血へのリコンビナントVIIa因子製剤は、10%以上の血栓塞栓症があったとの報告あり


### 長々書きましたが、この図が簡略化されてわかりやすいです。
a0119856_23511823.gif


出血あり:入院。ビタミンK10mg静注(30分以上かけて)+新鮮凍結血漿 or PCC

出血なし:
 INR>10:ワーファリン中止。経口ビタミンK2.5〜5mg。頻回の外来でのモニター
 INR 4-10:ワーファリン中止。頻回の外来でのモニター。経口ビタミンK1〜2.5mgを考慮(特に  出血高リスク者)


我々プライマリケア医が最もよく遭遇するのは、INR10未満で出血なしです。これにはワーファリン中止のみでも出血は大変少ないとの提言です。
大切なのは、本当に出血がないのかに関する詳細な問診、身体診察及び頻回のモニター、ということになるかと思います。

ワーファリンは出血時、これだけの知の蓄積があります。新規抗凝固療薬はこれについては天と地との差があります。最も新規抗凝固薬は半減期が短いので、単純に「とにかく中止」だけでたいていはよいのでしょうが。しかし出血症例では、やはりすみやかに止血できる製剤についての知がこれから積み上げられることが待たれます。
by dobashinaika | 2012-06-12 23:59 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

ダビガトランおよびリバーロキサバンに対する中和薬の効果

Thrombosis and Haemostasis 5月25日早期公開版より

Effect of non-specific reversal agents on anticoagulant activity of dabigatran and rivaroxabanA randomised crossover ex vivo study in healthy volunteershttp://dx.doi.org/10.1160/TH12-03-0179

健常者を対象にしたダビガトランとリバーロキサバンの非特異的中和薬の効果の検討

【方法】
・対象:健常男性10名
・リバーロキサバン20mg、ダビガトラン150mg1回をランダムに投与。2週間ウォッシュアウトしクロスオーバーに2剤目服薬
・服薬前と2時間後に採血
・in vitroで静脈血にプロトロンビン複合体製剤(PCC)、遺伝子組み換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa:日本商品名ノボセブン)、第VIII因子インヒビター迂回活性複合体(FFIBA®)投与

【結果】
1)リバーロキサバンは内因性トロンビン産生能(ETP)、 lag-time およびtime to peakに影響を与えた
2)PCCはETP-AUCを強力に補正したが、rFVIIaは薬物動態パラメーターを修飾したのみだった
3)ダビガトランはトロンビン生成のlag-time およびtime to peakのみ特異的に作用した
4)PCCはETP-AUCを増加させたが、rFVIIaとFEIBAのみlag-timeを補正した
5)両薬において低用量FEIBAは興味深い中和作用を示した

【結論】幾つかの非特異的中和薬がリバーロキサバンとダビガトランの抗凝固活性を中和できることが明らかになった。しかし出血下での臨床的検討が必要で、こうした状況での綿密なリスクベネフィット評価が今後要求される。

### 以前のCirculationで類似論文が掲載されています。
http://dobashin.exblog.jp/13523873/

この時はリバーロキサバンのほうでPCCが効果あるとの結果でした。今回は血友病製剤のノボセブンやファイバなどが候補としてあげられているようです。

ノボセブンについては金沢大学のこのサイトがわかりやすいですね(前も触れましたが金沢大学のサイトは本当にためになります)
http://www.3nai.jp/weblog/entry/36043.html

こうした研究の積み重ねが、いつの日か、これだという中和薬を見出すのでしょうね。期待したいです。
by dobashinaika | 2012-05-30 23:22 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

ワーファリン関連頭蓋内出血に対するプロトロンビン複合体製剤の効果

Stroke 5月3日 Epub ahead of printより

Poor Prognosis in Warfarin-Associated Intracranial Hemorrhage DespiteAnticoagulation Reversal.

ワーファリンによる頭蓋内出血時におけるプロトロンビン複合体製剤(PCC)の効果に関するカナダの多施設登録研究

P:ワーファリン投与により頭蓋内出血をきたし、PCCを使用した141例。2008~2010年まで。

E/C:PCC使用

O:治療後の血栓症、CTによる血腫量測定、modeified Rankinスコアおよび院内死亡率(一次アウトカム)

結果;
1)中間値78歳。男59.6%、中間値グラスゴーコーマスケール14、中間値INR2.0、中間値脳実質内血腫15.8ml

2)PCC治療後;中間値INR1.4。79.5%は治療1時間後でINR1.5未満

3)脳実質内出血例の院内死亡率;42.3%、中間値modified Rankinスケール:5

4)明らかな血腫拡大;45.5%

5)血栓症3例(治療7日以内)

結果;PCC治療は多くの患者ですみやかにINRを補正する。しかし死亡率やmobidityは未だに高い。速やかなINR補正のみでは予後改善は不十分

### 比較対象はありませんが、PCC使用例でも死亡率40%以上と高値です。出血したあとの更なる出血は防げても、始めの一撃が強いので
なかなか救命には至らないということでしょうか。ただ現時点で、なかなか割付試験はできないでしょうから、すくなくとも症例対照研究まではしてほしいものです。

PCCについての関連ブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/15045649/
http://dobashin.exblog.jp/13523873/
by dobashinaika | 2012-05-08 23:12 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

新規抗凝固薬の緊急中和に関するガイダンス

Am. J. Hematol 4月4日オンライン版より

Guidance on the emergent reversal of oral thrombin and factor Xa
inhibitors
DOI: 10.1002/ajh.23202


トロンビン阻害薬およびファクターXa阻害薬の緊急中和薬に関するガイダンスが出ています。
最後の"Suggestion"のところだけまとめました。

【新規抗凝固薬の緊急融和に関する提案】
個人的見解と乏しいエビデンスに基づくものではあるが、以下の提案をする

1.支持的ケア:保液、輸血、腎機能保持、出血スコアの同定、必要なら外科的処置

2.薬剤中止:半減期が短いのでこれだけで多くの患者は十分。腎機能正常なら1-2日で効果は消失

3.活性炭:もし服用後1-2時間なら経口活性炭は副作用の低い治療オプションとして提案する

4.血液透析、血液灌流:緊急実施時の煩雑さからこの治療は敬遠される。実際ダビガトランは2時間程度で2/3程度は体外に排泄されてしまう。腎機能がかなり低下し薬剤がそれ以上停滞する場合は考慮すべき。リバーロキサバンとアピキサバンはタンパク結合が強く透析不可

5.FFP(新鮮凍結血漿):我々の見解ではFFPは緊急中和としては有効でない。ダビガトランでマウスモデルで評価されているのみ。人では検討なし。その他のファクターXa阻害薬でも検討なし

6.ヒト活性型VIIa因子:ラットでは効果あったが、ヒトでの検査では作用しめさず。ヒトでの研究もなし

7.プロトロンビン複合体製剤(PCC):3因子または4因子のPCCは血栓リスクを増大させる可能性あり。リバーロキサバンではPTを正常化させる報告あり。ダビガトラン服用者でaPTTやトロンビン時間を正常はさせない。ヒトでのPCCの出血に対する効果を評価した研究はない。緊急手術に先立ってPCCを投与することの効果は検証されていないが、複数の専門家の意見としては合理的アプローチと思われる。しかしながらコンセンサスを得るまでにはデータ不足。今回も2人のauthorは推奨していない。
a0119856_18552857.jpg

a0119856_18555323.jpg


###PCCは血友病の治療薬として市販されていますが、どうしてもリバースしたい時は現時点ではこれでしょうか。ちなみによくワーファリンでINR高値のときビタミンKでリバースをかけますが、実は即効性はなく効果発現には時間がかかることも、もっと知られるべきかもしれません。

関連ブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/13523873/
by dobashinaika | 2012-04-14 18:59 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

ワーファリンによる出血に対するプロトロンビン複合体製剤の有効性と安全性

Thrombosis Research2月号より

Thromboembolic safety and efficacy of prothrombin complex concentrates in the emergency reversal of warfarin coagulopathy
Thrombosis ResearchVolume 129, Issue 2 , Pages 146-151, February 2012


ワーファリン服用による大出血時等の緊急処置としてプロトロンビン複合体製剤(PCC)の有効性、安全性に関する研究

P;2002年から2010年までに、出血や緊急手術時にワーファリン中和のためにPCCで治療された160例

O:PCC投与7日以内の血栓塞栓症。出血がすみやかにコントロールされる、または外科医からの周術期管理の過剰出血の報告なし

結果:
1)出血例への投与は72%
2)INRはPCC使用により3.5から1.4へ
3)PCCの平均投与量は1800IU (IQR1200-2000)
4)74%でビタミンK、34%に新鮮凍結血漿
5)6人(3.8%)で血栓塞栓イベント(脳卒中3、心筋梗塞1,深部静脈血栓1,脾梗塞1)
6)臨床的評価としては、良好91%、中等度4%、効果少ない2.5%、評価不能4例

結論:ワーファリン中和のためのPCC投与は血栓塞栓イベントのリスク低減に関係。抗凝固薬中止により塞栓機転の亢進や出血による凝固系の賦活化を考慮すべき

###ダビガトラン始め新規抗凝固薬は中和剤がないと批判されますが、「だったらワーファリンだって、ビタミンKなんて効くまで半日以上かかるんだから、それならプラザキサの半減期と同じです」という切り返しが次に予想されます。
そうした切り返しへの再切り返しが、この第IX因子製剤投与でしょう。

私は使ったことはありませんが、この金沢大学のサイトを見ますと血友病患者さんに使う製剤として日本でも使用できるものがあします(しかしこの金沢大学のサイトは凝固系の勉強になりますねー)。まあ保険は今のところ通らないと思われますが。

血栓症リスクがやや上がるようですが、とにかく消化管出血が止まらない場合そんな事言ってられません。

実際、モニターできない新規抗凝固薬使用中に大出血が起きた現場に立ち会ったら、中和剤があったらなあと誰しも思うはずです。

そうした思いへの切り返しとしては一応この論文を。まだ実臨床ではこれからですが。
by dobashinaika | 2012-02-16 23:25 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

ワーファリンによる大出血時、中和に失敗した場合:J Thromb Haemost.より

J Thromb Haemost. 1月18日オンライン版より

Failure to Correct International Normalized Ratio and Mortality Among Patients with Warfarin-Related Major Bleeding: an Analysis of Electronic Health Records

ワーファリンに関連した大出血に対し新鮮凍結血漿(FFP)を投与された患者の30日生存率と死亡までの時間につき検討

・電子カルテデータベースによる後ろ向き研究
・対象:大出血、新鮮凍結血漿投与前あるいは当日のINRが2以上、ワーファリン1回処方90日以内
・FFP開始1日後のINR正常化(INR1.3以下)を評価

結果:
1)条件を満たした患者は405名:平均年齢75歳、男54%
2)FFP開始1日後にINRが正常化していない患者が67%
3)全患者の11%が入院30日以内に死亡
4)正常化されていないINRは、全体の30日死亡率とは関係なしだが、頭蓋内出血のサブグループにおいては(死亡率は)有意に高い(オッズ比2.55、1.04-6.28)

結論:ワーファリン関連頭蓋内出血患者では、新鮮凍結血漿によりINRが1.3以下あるいは1.5以下に正常化されない例において、30日死亡率が増加した

###私自身はFFPを使うほどの大出血を経験したことがありません。一般的にFFPの場合、INRの正常化には800cc以上の大量投与が必要となるとされています。一方ビタミンKによる中和は即効性の点で問題があるので、本当の緊急時には第IX因子複合体製剤などが使用されているものと思われます。
by dobashinaika | 2012-01-26 23:02 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

プロトロンビン複合体製剤はダビガトランよりもリバロキサバンの中和に有効の可能性:Circulationより

Circulation 9月6日オンライン版より

Reversal of Rivaroxaban and Dabigatran by Prothrombin Complex ConcentrateA Randomized, Placebo-Controlled, Crossover Study in Healthy Subjects

健常男性対象、プロトロンビン複合体製剤の新規抗凝固薬中和の有効性に関する無作為割り付けクロスオーバー試験

P:12人の健康男性ボランティア

E:リバロキサバン20mg1日2回(n=6)あるいはダビガトラン150mg1日2回(n=6)を2.5日間服用後にプロトロンビン複合体製剤(Cofact)
50IU/kg単回静注。上記2薬の投与は一定ウォシュアウト後に同一人で繰り返し交互に施行された。

C:上記リバロキサバンあるいはダビガトラン服用後同用量の生理食塩水静注

O:プロトロンビン時間、内因性トロンビン産生能endogenous thrombin potential、APTT、ECT、トロンビン時間

結果:
1)リバロキサバンはプロトロンビン時間をベースライン時より有意に延長(15.8±1.3 versus 12.3±0.7 秒; P<0.001)させ、プロトロンビン複合体により速やかに回復された(12.8±1.0; P<0.001)
2)リバロキサバンは内因性トロンビン産生能を ベースライン時より有意に抑制(51±22% versus 92±22%; P=0.002)させ、プロトロンビン複合体により回復された(114±26%; P<0.001)
3)ダビガトランはAPTT、ECT、トロンビン時間を延長させたが、プロトロンビン複合体の投与ではこれらの時間は改善されなかった

結論:プロトロンビン複合体製剤は,健康人においてリバロキサバンの抗凝固効果を迅速かつ完全に阻止した。しかしダビガトランの抗凝固効果は阻止し得なかった。

###大変興味深い知見です。ワーファリンの中和時においてもビタミンKのみでは迅速さに欠けますので、第IX因子複合体製剤(クリスマシン)の併用が用いられることがあります。プロトロンビン複合体製剤は第IX因子を含み活性型第IX因子は第X因子から活性型(Xa)への生成に関与しますので、X阻害薬の効き過ぎの場合よりXa阻害薬の効き過ぎの場合の方の中和に適しているのだと推測します(間違っていたらすみません)。たった12例の第1相試験(と思われる)でもCirculationに掲載される価値がある、タイムリーな論文だと思います。
by dobashinaika | 2011-09-08 21:23 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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