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カテゴリ:抗凝固療法:ダビガトラン( 126 )

ダビガトランの血中濃度がイベント発生と関連あり:JACC誌より

JACC 10月9日付オンライン版より

The Effect of Dabigatran Plasma Concentrations and Patient Characteristics on the Frequency of Ischemic Stroke and Major Bleeding in Atrial Fibrillation Patients in the RE-LY Trial ONLINE FIRST
J Am Coll Cardiol. 2013;():. doi:10.1016/j.jacc.2013.07.104


【疑問】ダビガトランの有効性、安全性と血中濃度の関係は?

P:RE-LY試験のダビガトラン群(110mg, 150mg)

E/C:ダビガトラン血中濃度

O:RELY試験の有効性、安全性評価項目

【結果】
1)血中濃度測定者:9,183例

2)脳卒中/全身性塞栓症:112例1.3%、大出血323例3.8%

3)ダビガトラン血中濃度は腎機能、年齢、体重、女性に依存。人種や居住地、アジア人、抗血小板薬使用に依存せず

4)虚血性イベント発生率はトラフ血中濃度は低いほど高い(p=0.045(C統計量0.657)。年齢、脳卒中の既往が共変数

5)大出血はダビガトラン暴露、年齢、アスピリン使用、糖尿病と有意に関連あり

【結論】虚血性脳卒中および出血はダビガトラン濃度に関連あり。年齢が最重要因子。テイラーメイドの血中濃度測定がリスクベネフィット評価を改善させる

### 血中濃度がイベント有意に相関していれば、PTINRのようにアウトカム予測に使用できます。ただし、PTINRがあれだけ普及したのは、1.6〜2.6または2.0〜3,0で脳梗塞と出血のカットオフ値がうまい具合に切ることができたからです(実際には梗塞の予測としては甘く、出血の指標のみではありますが)。

全文を読んでいないので、適切なカットオフ値が見つけられるのか不明ですが、ダビガトランは高濃度になるほどaPTTとの関係がlinearでなくなるので、血中濃度がきれいなアウトカムと線形関係であれば、とくに高値ほど血中濃度でモニターすべきなのかもしれません。利便性、実現性は困難かもしれませんが。
by dobashinaika | 2013-10-22 08:47 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

大出血後のアウトカムや治療はダビガトランとワルファリンとで違うのか?

Circulation 9月30日付オンライン板より

Management and Outcomes of Major Bleeding during Treatment with Dabigatran or Warfarindoi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.113.002332


【疑問】大出血後のアウトカムはダビガトランとワルファリンとで違うのか?

P:ダビガトランとワルファリンの5つの第3相比較試験に登録された心房細動患者27419人中大出血をきたした1034人、1121件。6〜36ヶ月追跡

E:ダビガトラン群(627例/16755)

C:ワルファリン群(407例/10002)

O:死亡率、輸血、ICU滞在日数

【結果】
1)ダビガトラン群のほうが:高齢、低クレアチニンクリアランス、アスピリンおよびNSAID使用者高率

2)初発大出血度後30日以内の死亡率:ダビガトラン群9.1%vs.ワルファリン群13.0%でダビ群で低い傾向
OR 0.68, 95%CI: 0.46-1.01; p=0.057)
年齢、性別、体重、腎機能、抗凝固薬で補正後OR0.66 ,95% CI: 0.44-1.00; p=0.051

3)赤血球輸血が必要な大出血:ダビガトラン群61%vs, ワルファリン群42%、p<0.001

4)血漿投与が必要な大出血;ダビガトラン群19.8%vs. ワルファリン群30.2%、p<0.001

5)ICU滞在日数;ダビガトラン群1.6日vs. ワルファリン群2.7日、p=0.01

【結論】ダビガトランによる出血のほうが、赤血球輸血を必要とする率が高く、血漿投与率は低く、ICU滞在日数は少なかった。死亡率は少ない傾向を認めた。

### ダビガトランネタが続きます。

「ダビガトランは下部消化管出血が多く、ワルファリンは頭蓋内出血が多かった」ということでほぼ説明が付きそうです。

ダビガトランで出血する例において、腎機能低下、アスピリン、NSAID併用例が、ワルファリンの出血例におけるよりも多かった、ということは教訓的です。

メカニズムとして以下の様なマウスの実験データが有ります。
http://dobashin.exblog.jp/13608710/
by dobashinaika | 2013-10-02 18:57 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

直接トロンビン阻害薬は心筋梗塞のリスクを増やすのか?:Am J Cardiolのメタ解析

American Journal of Cardiology 9月27日付けオンライン板より

Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials on Risk of Myocardial Infarction from the Use of Oral Direct Thrombin Inhibitorsdoi:10.1016/j.amjcard.2013.08.027

【疑問】直接トロンビン阻害薬は心筋梗塞のリスクを増やすのか?

【方法】
・直接トロンビン阻害薬とワルファリンのRCTで心筋梗塞をエンドポイントとしたものについてメタ解析した
・二次解析として代替抗凝固薬とワルファリンのRCTについても解析した

【結果】
1)11試験、39357人。対象薬剤:ダビガトラン、キシメガラトラン、AZD0837

2)心筋梗塞発症率;直接トロンビン阻害薬 285/23333、ワルファリン 133/16024。オッズ比1.35(1.10-1.66, p=0.005)

3)二次解析=直接トロンビン阻害薬、Xa阻害薬、アスピリン、クロピドグレルを含む8試験60615例の検討では有意差なし

【結論】直接トロンビン阻害薬は心筋梗塞リスク増加と関係有り。このリスクはクラスエフェクトであり、ダビガトランに特異的なものではない。今回の所見は市販後調査の必要性を強めるものである。

### ダビガトランだけを対象としたメタ解析は既にでています。(この件に関するダビガトランのデータ修正の経緯もこのブログ参照)
http://dobashin.exblog.jp/14384703/

今回は他の直接トロンビン阻害薬にまで範囲を広げてのメタ解析で、やはりトロンビン直接阻害のデメリットが懸念される結果となっています。

機序としては以下のブログのようなことが言われています。
今回の知見はこの基礎研究にあるように、トロンビンを直接阻害することが冠動脈血栓にとってはネガティブに働くことが示唆されるかもしれません。
http://dobashin.exblog.jp/17168376/

一方、ダビガトランのリアルワールドのデータでは心筋梗塞リスクをも減らすことが示されています。
http://dobashin.exblog.jp/17599884/

要するにまだ決着はついていないという段階ですね。今ここに至っても、礼賛ではなく慎重に使うべきであると再確認です。
by dobashinaika | 2013-10-01 13:34 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ダビガトランはワルファリンに比べ機械弁患者の血栓塞栓症と出血を増加させる:RE-ALIGN試験

現在アムステルダムで開催されているヨーロッパ心臓病学会からの報告以前FDAからダビガトランの機械弁心房細動患者に関する安全性情報が出された根拠となったRE-ALIGN試験の論文化です。

Dabigatran versus Warfarin in Patients with Mechanical Heart ValvesDOI: 10.1056/NEJMoa1300615

P:大動脈弁または僧帽弁置換術7日以内投与開始(population A)または僧帽弁置換(大動脈弁置換併用の有無問わず)3ヶ月以上後(population B)

E:ダビガトラン(腎機能別に150,220,300mg1日2日)、トラフ血中濃度が50ng/ml以上になるように調整

C:ワルファリン:INR2~3または2.5~3.5に管理

O:トラフ血中濃度

【結果】
1)252人登録時点で血栓塞栓イベント及び出血イベントの増加により中止

2)ダビガトランの用量調整または中止:52/162(32%)

3)虚血性または特定できない脳卒中:ダビガトラン群9例5% vs. ワルファリン群なし

4)大出血:ダビガトラン群7例4% vs. ワルファリン群2例2%=全例心嚢出血
ダビガトランはワルファリンに比べ機械弁患者の血栓塞栓症と出血を増加させる:RE-ALIGN試験_a0119856_2095826.png

【結論】
機械弁に対するダビガトラン使用は、ワルファリンに比べ血栓塞栓症及び出血合併症の増加と関連あり。利益なく、リスクの増加のみ示された。

### 最初のエンドポイントは単なる血中濃度だったのにもかかわらずイベントがあまりにも多く中止となった試験です。

血栓塞栓症はpopulation A に多く、出血は両グループに同様に見られたようです。理由として、投与初期にトラフの血中濃度の低下が見られたことが挙げられていますが、一方トラフ時高濃度例でも血栓塞栓症が認められていることから、十分な理由とはいえないとしています。

もうひとつの理由としては、最低血中濃度がRE-LY試験で効果的とされた50に設定されたことが挙げられ、もっと高い方が適切であり、1日3回などの頻回投与により高いトラフ値、低めのピーク値が達成できた可能性に言及しています。

左心耳血栓は、血流が静かでずり応力も弱く、うっ血と内皮障害が引き金となりますが、機械弁では手術侵襲の組織損傷による組織因子放出による凝固系活性化と血栓形成が関与しており、人工物の血流への暴露は内因系(contact pathway)の活性化の引き金になると考えられています(discssionより)。

ワルファリンは第VII因子を抑制することで組織因子誘発性の血栓を溶かし、また第IX因子抑制により内因系も抑えるため機械弁にはより好都合である一方、ダビガトランはトロンビンを抑えるのみなので、過剰となった内因系凝固因子を抑えることができない。。。

何れにしても残念というか、ワルファリンの偉大さを改めて認識させられる出来事ではあります。

もう少し論文を細かく読み込みたいと思います。

関連ブログ
http://dobashin.exblog.jp/17015520/
by dobashinaika | 2013-09-04 20:11 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ダビガトランのモニターは何が良いのか?:T/H誌より

Thrombosis and Haemostasis 7月25日 エディトリアルフォーカスより

Dabigatran monitoring made simple? 
http://dx.doi.org/10.1160/TH13-07-0576


以前アップしたダビガトランのモニターに関する論文に対する
マクマスター大学のEikelboom先生によるエディトリアルコメントですが、
ダビガトランのモニター法に関する総説となっているのでアップします。
元論文はこちら
http://dobashin.exblog.jp/18242934/

・手術時、急性脳梗塞への血栓溶解療法、腎機能低下例などではダビガトランのモニターが必要

【どのようにして抗凝固活性を測定するか?】
・aPTTは、PTより延長する
・aPTTは血中濃度依存的だが200nb/ml以上ではプラトーに達する
・トロンビンタイムは非常に感度が良ク、低濃度でも明らかな上昇を示す
・トロンビンタイム測定前の血漿の希釈は、感度を鈍らせる
・ヘモクロットアッセイはこの減少を利用したもので、検査前血漿を8倍希釈して検査する
・血中濃度は測定機を使って構成された標準カーブにより算出される
・この方法は迅速で簡単だが、ヘモクロットアッセイは特殊な凝固ラボでしか使えないしアメリカでは許可されていない
・エカリン凝固時間は血中濃度決定にも使われるが、ヘモクロットアッセイほど普及していない

【リアルワールドではどうしたらよいか?】
・Hapgoodらの論文ではヘモクロットアッセイを75サンプルで実施
・4つの試薬で血中濃度とaPTTTが相関
・90〜180ng/mlで良く相関(治療域としてデザインされている)
・トロンビンタイムも相関あり
・トロンビンタイムは60以上では著明に延長

【血中濃度90〜180は本当に治療域としてよいのか?】
・この値はダビガトラン150㎎x2服用者のピークとトラフのそれぞれの中間値を反映
・110mgx2では65〜130に相当
・中間値ということは半分の患者はピーク値、トラフ値より高いか低いということになる
→このことはaPTT値の解釈を複雑化される
・それ故90〜180を治療域と考えることはできない。

【この研究から学ぶことはなにか?】
・著者が述べているように試薬により反応の違いがある
・各施設の試薬の感度を特定すべきである
・試薬のロット番号は変わるときは常に、へパリンに対する臨床的抗Xaレベルが決定されるのと同じようなプロセスで決められるべき
・このためにHapgoodらが示したようなサンプリングが必要かどうかは不明
・ヘモクロットアッセイの普及は、キャリブレーションの能率化の他に、ダビガトラン血中濃度を決定する際の不確定性を除去することにつながる
・コストの問題から多くのラボでは、測定法のレパートリーを広げたくない。

【術源などはどうすべきか?】
・Hapgoodらは手術やインターベンション前は、aPTT,TTが正常化するまでダビガトランを中止するように進めている
・これはいいのか?TTの正常化はaPTTより数日遅れる。すると血栓リスクの時間を長引かせる
・多くの手術は血中濃度50以下なら可能。このレベルではほとんどがPTTも正常レベル
・APTTが正常域であることがダビガトランの活性が残っていないと考えて良い
・高出血リスクの手技に限って、aPTT、TTとも正常化するまで中止することが賢明

【まとめ】
・NOACのモニタリングは発展中の科学
・Hapgoodらの論文は長い道のりのワンステップ
・血中濃度測定はファーストステップにすぎない
・低ダビガトランレベルを血栓リスク、高レベルと出血リスクの関係を規定することが必要。それによりダビがgとランの治療域が真に決まることになる
ダビガトランのモニターは何が良いのか?:T/H誌より_a0119856_1994841.png


### 最後のまとめが全てでしょう。この表が役に立ちます。乗りかかった船で全文訳してしまいました。そこまで意味があったかちょっと後悔していますが。。。
by dobashinaika | 2013-08-20 19:12 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ワーファリンに満足している患者さんはプラザキサへの変更をどう考えるのか?

J Thromb Thrombolysis. 8月6日Epib ahead of printより

Patients satisfaction with warfarin and willingness to switch to dabigatran: a patient survey.

【疑問】ワーファリンに満足している患者はダビガトランへの変更をどう考えるのか?

【方法】
・以下の2つの調査施行
  1)ワーファリン治療に対する患者の意見
  2)新規抗凝固薬に変更することについての考え
・5段階評価で答えてもらう(多いほど高評価)
・Georgia Regents Health Systemという薬局ベースの抗凝固クリニックが主導
・260人のワーファリン服用者対象

【結果】
1)ワーファリン治療への満足度:4.7±0.78点

2)大多数が新規抗凝固薬への変更の意思あり

3)理由として、受診回数の減少(3.9±1.35点)、食品薬剤相互作用なし(4.1±1.25点)、ワーファリンと同等の効果(3.7±1.38点)

4)変更への障壁としてはコストが大きな理由(1.3±0.58点)

【結論】患者はワーファリン治療に満足していたが新規抗凝固薬への変更を望んでいた。コストが最も大きな障壁であることが明確になった。効果、食事制限なし、受診回数減少が患者の決断に影響を与える大きな因子であった。

### 当院でも同じような反応です。ワーファリンで満足している患者さんは、実は以外にもかなり多いのです。もう数年以上毎月の採血や納豆などの制限に慣れており、採血や納豆制限など別に気ならないという方も多いです。毎月の採血は、逆に数字の目安ができるため、安心だという方もおられます。

新規抗凝固薬に難色を示すひとは、ワーファリンにも難色を示します。ワーファリンへの不満とは上記便宜性でなく、抗凝固薬そのものへの抵抗感ですので、そういう感覚を持ちながら飲んでいる方は新規抗凝固薬へのシンパシーも感じないのは当然でしょう。

ワーファリンで特に何も不満はないけれども、医師からいい薬だし、面倒くささもなくなると言われればまあ変えるのもやぶさかでない、という受け止め方の表現がこの結果であり、それぞれの理由が4点前後という数字に現れていると思われます。
by dobashinaika | 2013-08-19 23:17 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ダビトランの血中濃度とaPTT,TTは相関するか:T/H誌より

Thrombosis and Haemostasis8月号より

The effect of dabigatran on the activated partial thromboplastin time and thrombin time as determined by the Hemoclot thrombin inhibitor assay in patient plasma samples
http://dx.doi.org/10.1160/TH13-04-0301



【疑問】ダビガトランの血中濃度とaPTT、トロンビン時間の関係は?

【方法】
・Hemoclot thrombin inhibitor assay (HTI)を用いてのダビガトランの血中濃度とaPTT、トロンビン時間の関係を見た
・45の血漿サンプル
・aPTTの試薬はTriniCLOT aPTT S と3試薬を加えたもの
・線形回帰モデルからダビガトランの治療域血中濃度(90−180ng/dl)に合致したaPTT値を確定

【結果】
1)aPTTと血中濃度とは中等度の相関(r=0.80)

2)高濃度では相関性が落ちる

3)試薬により治療域は違いがある:46–54 s (TC) vs 51–60 s (SP), 54–64 s (SS) and 61–71 s (Actin FS) (p<0.05)

4)トロンビン時間は60ng/dlの血中濃度で300秒以上の感度は良い

【結論】
APTTと血中濃度は中等度の相関だが治療域以上では相関が落ちる。試薬による違いが大きいので、自施設での治療域を知っておくべき。トロンビン時間は感度が良すぎてダビガトランの血中濃度の定量化はできないが、正常のトロンビン時間ならダビガトラン濃度は最小限または血中にないことを意味する。

### やはりaPTTもなかなか難しいということです。先日血液の専門医の先生のご講演を拝聴する機会がありましたが、aPTT80秒以上というのは根拠が無いとのことでした。そうですよね。RELYで出血例は80以上が多かったということだけですので。試薬も様々だし。日本人少ないし。統計的なカットオフ値では当然ないし。それに血中濃度それ自体、臨床的効果とリネアかどうかは不明ですし。治療域が61−71秒の試薬があるということになると80以上の症例でもあまり延長しているとはいえなくなるように思います。


NOACのようなピークトラフを形成する薬剤の場合、やはりピーク時測定は困難だと思います。試薬により、また症例によりピーク形成の時間帯や最高血中濃度を維持している時間も様々でしょう。バイオアベリテイーがかなり低いですし。

最近はトラフからaPTTが延長していればとりあえずまずい、という認識でいます。ですので、当院ではダビガトラン投薬前のベースラインの時、および投与2週間後に朝ダビを内服せずに午前中早めの外来に来てもらって、採血後に待合室で飲んでいただくということをしています。

試薬の標準化、およびSFなどの血栓マーカーなどが早く出てくるといいと思います。
by dobashinaika | 2013-08-01 19:48 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ダビガトランのアドヒアランスはどの程度か?

Journal of Thrombosis and Haemostasis 7月号より

Adherence to anticoagulant treatment with dabigatran in a real-world setting
Journal of Thrombosis and Haemostasis
Volume 11, Issue 7, pages 1295–1299, July 2013


【疑問】ダビガトランのアドヒアランスはどの程度か?

【対象・方法】
・抗凝固療法専門クリニックで3ヶ月以上ダビガトランを服用している103人
・横断研究、インタビューとカルテによる
・追跡期間中に薬局から処方されたダビガトランのカプセル数、飲み忘れ、出血、血栓塞栓イベント、その他副作用(特にディスペプシア)を聴取

【結果】
1)平均75,5±8.5歳、女性46%、CHADS2スコア平均2.5点

2)投与データは99人から回答
・アドヒアランスは99.7%(94.6〜100%)
・11人は80%未満

3)インタービューでは31人(30%)で時に飲み忘れあり;”6年で2回”から”毎日”まで
・アドヒアランス80%未満1人追加

4)出血:21人20%:2人だい出血、脳梗塞1人、ディスペプシア34人33%

5)RE-LY試験登録者と非登録者とで違いなし

【結論】
アドヒアランスは全般的に良好。12%の人は不適切。薬局からの医師への定期的なフィードバックが抗凝固管理には重要

### 当院で50人処方時点同様のインタビューを取りましたが、飲み忘れありとおっしゃった方は10人20%でした。またアドヒアランスが80%を切る人はほとんどいらっしゃらなかったように思います。

当院では、ダビガトラン服用者全員に手帳を渡して、飲んだ時に手帳のカレンダーに丸をつけるようにお願いし、また処方前に内服の意義、飲み忘れ対策、薬の半減期について細かく説明するようにしています。
当院でダビガトランの飲み忘れの多い方は、
1)これまで朝しか処方がなかった方 2)晩酌をする方 3)ディスペプシアのある方
でした。

一番大切なことは最初に内服することのゴールをしっかり患者さんと共有することかと思います。
リスクコミュニケーションは最重要です。クリニカルエビデンスより大切ともいえます。とにかく飲まないことにはエビデンスも何もありません。

この論文で、リスコミがどの程度行われていたのか、非常に興味深いところです。

あ、大事な点。このクリニックの患者さん年齢平均75歳!80歳以上もいるみたいですね。ここが当院と大きく違うかもしれません。NOACは最近でこそご高齢の方でも腎機能良好な人には出しますが、まだ少数ですので。
by dobashinaika | 2013-07-22 19:34 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ダビガトランのブルーレターが出た後、医者は処方態度を変えたか?;心臓血管研究所からの報告

Journal of Cardiology 7月6日付けオンライン版より

“Blue letter effects”: Changes in physicians’ attitudes toward dabigatran after a safety advisory in a specialized hospital for cardiovascular care in Japan
http://dx.doi.org/10.1016/j.jjcc.2013.05.016


【疑問】ダビガトランのブルーレターが出た後、医者は処方態度を変えたか?

【背景】2011年8月、厚労省からダビガトランの安全性情報がリリースされた。その前後でのダビガトランに対する医師の態度の変化についての報告はない。

【方法%結果】
・2011年3月~2012年7月の間に、心臓血管研究所(東京)で404人の非弁膜症性心房細動患者にダビガトランが処方された。

・初回処方日を元に3期に分類
第1期:ブルーレター前、135例
第2期:ブルーレター後、長期処方認可前、112例
第3期:長期処方認可後、157例

・第2期においてはより高齢者、腎機能低下例、抗血小板薬服用者、P糖蛋白阻害薬用者への処方は差し控える傾向が見られた

・APTT測定は1、2、3期となるに連れて増えた

・第3期には、第2期で見られた傾向は逆転し、より高齢者、腎機能低下者に処方される傾向が見られた

・しかし、抗血小板薬およびP糖蛋白阻害薬服用者への処方は減少または横ばいであった

【結論】日本の心血管疾患専門施設におけるブルーレター後のダビガトラン処方に対する医師の行動変容について述べた。リアルワールドでのダビガトランの安全使用に役立つものと信じる。しかし真のインパクトや効果は全国的な多施設研究で確認されるべき。

### なかなかに興味深いですねえ。私は、多少科学的手法から離れているとはいえ、こういう患者、医療者の心理に迫る研究が非常に好きです。特に医療者の行動変容に関しての論文は、自分の心象と比較しながら読むと、医療者の様々な心理的葛藤などが推察することができ、楽しんで読めます。

2011年8月12日に件のブルーレターが出ましたが、ちょうどお盆の時期で私はそのとき震災後初めて少し被災した実家を訪れておりました。行きの新幹線の中のツイッターTL上でブルーレーターのリリースを知り、実家にあったパソコン(なんと実母が使いこなしております)からブログを投稿したことを思い出します。
http://dobashin.exblog.jp/13276881/
翌日「プラザキサを正しく怖がり、正しく使おう」とブログで述べましたところ、驚くほどのアクセス数がつきました。
http://dobashin.exblog.jp/13278908/

しかしこの時点で、私自身、実はプラザキサの処方はほとんど経験がありませんでした。なぜならプラザキサ発売直前に3.11が起き、物流が途絶え、また物流が回復した3月下旬頃〜4月初め頃でも、薬剤供給が思うに任せず長期処方は控える控えないの情報が錯綜しており、ワーファリンに変わるべく上梓されたなどという大物のくすりは、とても自信を持って使う雰囲気ではありませんでした。ようやく余裕を持って処方できるようになったのが、当地では5月連休明けくらいだったかと思われます。

ですので、この論文のようにブルーレター前後の医者に行動変容があった、ということを言われてもなかなかピンと来ませんでした。しかし、全文を読みますと、なるほどブルーレター後、ものすごく処方に慎重になったのを思い出し、また2012年3月の日本循環器学会で各施設からダビガトランの使用経験なども出そろい(とくに心研からのaPTTの報告は大きかったと思われます)、その辺りからまた急速に処方が増えたのは、当院も同じだと思います。

ええ、あの当時の記憶が鮮烈なので、つい自分の経験を書いてしまいましたが、ブルーレターで慎重になった医師達が、aPTT測定などの実績とエビデンスを通じて、自信を持って使用できるようになっていく心象変化が興味深く、
まさに「正しく怖がり、正しく使う」ようになって行くプロセスが反映されたデータのように思います.

できればPatient characteristicsのみならずDocter characteristicsも知りたいところでした。医師経験年数での差とか。。
by dobashinaika | 2013-07-18 23:53 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ダビガトラン投与マウスは脳血栓溶解療法後の出血が比較的少ない

Thrombosis and Haemostasis 7月号より

Anticoagulation with dabigatran does not increase secondary intracerebral haemorrhage after thrombolysis in experimental cerebral ischaemia
Thrombosis and Haemostasis 2013: 110/1 (July). 153-161

【疑問】NOAC服用者はワーファリンに比べ、脳血栓溶解療法後の出血はどうか?

マウスの実験結果です。
本論文のアブストラクトも臨床かにとっては難しいので笑、Editorialから要約します.

・ マウスの脳虚血various rodentモデルを作成し、抗凝固療法なし、ワ0ファリン、ダビガトラン投与の3群に分類

・ 脳虚血作成の後、rt-PAを投与し、24時間後の頭蓋内出血を検索

・ ワーファリンに比べ、ダビガトランは血栓溶解後の二次的な頭蓋内出血を増やさない

・ その上減少傾向を認めた:エバンスブルー染色により脳血管関門での樹得なリークが少ないことが明らかとなっている

・ 著者はmatrix metalloproteinase 9のタンパク分解作用がワーファリンの脳血管関門破壊に関係していることを至適

### ワーファリン服用が、t-PA後の脳出血を増やさないことは、臨床例でも報告されています。
http://dobashin.exblog.jp/15697355/

ダビガトランはそれを上回る結果が期待されるということの実験的検討です.

まだワーファリンと比較できるほどダビガトラン服用例の脳梗塞患者は集まっていないと思われますが、貴重なデータかと思います。

追記:タイトルが「ダビガトラン服用者」となっていたのを「ダビガトラン投与マウス」に改めました。
あくまで動物実験の結果ですので。訂正いたします。
by dobashinaika | 2013-07-04 23:50 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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