カテゴリ:抗凝固療法:全般( 138 )

DOAC(抗凝固薬)をやめないといけない瞬間,それは生活世界の安定性が保てないとき

先週末,大阪の第66回日本心臓病学会出席のため,日帰り弾丸ツアーを敢行しました。

今回は,JAPAN CARDIOLOGY CLINIC SESSION というシンポジウムで,全国各地域でいわゆる”イケてる”循環器診療に携わる診療所あるいは病院の医師によるセッションでした。わたしは単にブログやったり好き勝手にしているものの代表といった感じでしたが,他の先生方のご発表は臨床テータに裏打ちされた非常に実証的かつ実践的なもので,大いにインスパイヤされました。こうした会に出向くと,世の中にはまだまだすげー人がいるなあと痛感するわけです。学会参加の意味とは,こうしたすげーものに出会った翌日に味わう現前の日常のがっかり感と,このすげーもの感とのギャップをどう埋めるかにあるとも言えます。

さて,このセッションに先だって,本業(というか趣味というか)の抗凝固のセッションで「DOAC中止を考えないといけない瞬間」という大会会長指定のケースカンファを聞きました(その前の「DOAC中止を考える瞬間」は間に合わず。タイトルの意味がどう違うかわわからず)。

2症例提示され,1例目は50代 CHADS2スコア1点でカテアブ後3ヶ月でDOAC低用量処方中に頭蓋内出血(メジャー後遺症なし)。2例目は80代,CHADS2スコア3点,認知症,村落在住の方に処方するか,という問題提示です。

1例目,頭蓋内出血のDOACについては,一応ESCのガイドラインでは急性期は当然中止した上で4〜8週後(長い?)に再開というのが推奨度IIb,エビデンスレベルBとなっていますが,その前提として「出血の原因となったリスク因子の管理し,再開を支持,あるいは保留する因子を吟味した上で「多種職種チーム」の助言をもとに患者,近親者が選択する」となっています。

ディスカッションではなぜ50代で低用量なのにICHを起こしたのかその原因を明らかにすべきである,できればこうしたケースの場合Xa活性などのバイオマーカーがほしいといったコメントが有り,この2点は大変重要と思われました。

2例目は,高齢者心房細動患者で多いイベントは死亡であり脳梗塞ではない,抗凝固薬下の高齢者イベントは出血>梗塞であり,腎機能ほかバイオマーカーをできるだけこまめにチェックする,服薬アドヒアランスが大変重要である,といった議論の流れだったかと思います。

このディスカッションを聞きながら,この後自分が発表する「複雑性を軸にした心房細動診療の困難性と醍醐味 」について改めて考えてみました。

今回の発表では,当院で過去5年間に抗凝固薬投与下に死亡,脳梗塞,大出血などの大イベントをきたしたケースの検討を行いました。そのうちの多くの症例にみられる臨床的特徴は「高血圧,アルコール。INR不安定,腎機能低下,高齢」が挙げられました。

しかしながら,こうした生物医学的とも言える背景のそのまた背景に「認知症,アドヒアランス低下,独居,低収入,家族の支援なし,食事が不規則」といったキーワードが浮かび上がってきました。

独居あるいは家族のつながりが希薄,あるいは生活自体が不規則。そうしたことがアドヒアランス低下をもたらしたり,血圧の上昇,アルコール多飲,栄養不良などをきたし抗凝固作用に何らかの影響が及んで大イベントが起こる。そうした図式が想定されます。

日経メディカルでも強調させていただいているように,最近患者さんを「複雑性」のカテゴリーで考えるようにしておりますが,より実践的に「複雑性」と何かをほぐして考えますと,複雑性とは「生活世界の不安定性」と読み替えることが可能です。

生活世界の安定には,医師一人だけの診察室での手当では到底太刀打ちできません。相手はアドヒアランス,食事栄養,認知症ケアなどなどです。多職種による多角的視点から見た手当が必要なのです。先のESCガイドラインでもICH後の再開でさえ「多種職種チーム」の助言をもとに患者,近親者が選択する」ことが明記されています。

診療所で見る心房細動患者さん,特に在宅診療を受けている方においては,今回専門病院から提示されたケースよりかなり複雑です。
「在宅で要介護3でベッド上生活。抗凝固薬は服用中」「老老介護で夫婦ともに認知症。食事が不規則」そうした症例のDOACをやめるかいなか,そのへんが切実なのです。

DOAC(抗凝固薬)をやめないといけない瞬間。私,自分の講演では
1)腎機能極度の低下時 2)血圧管理不良 3)アドヒアランス不良 4)大出血時(再開を視野に入れながら),5)ベッド上生活で寝返りが打てない状態になったとき,
などを挙げ,年齢だけで決めてはいけないということをこれまで述べてまいりました。

今回発表のために自験例をまとめた中で,あらためて感じた「やめないといけない瞬間」,それをもうすこし包括的な視点から言うと「患者さんの生活世界が安定せず打開策が見えないとき」となります。

これに対する打開策を得るためには多職種の連携が必要。それには各職種のメンバーが
1)抗凝固療法では出血と梗塞の両方の管理が必要である。
という臨床的な統合(ゴールの共有)の他に

2)イベントを減らすためには「生活世界を安定させる」ことが必須である。
つまり「生活世界ファースト」の価値観・文化・視点を共有する(規範的統合)
ことが根本であると思われます。

観念的な話ですみません。もう少し実臨床に即した形でまた書きます。

a0119856_00592959.jpg
a0119856_00590159.jpg





by dobashinaika | 2018-09-11 01:02 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

リバーロキサバンは塞栓源不明脳塞栓(ESUS)の再発予防においてアスピリンと同等。出血は増やす :NAVIGATE ESUS


ESUS(Embolic Stroke of Undetermined Source)に対しNOACが有効かどうかを検証する研究です。

目的:虚血性脳卒中の20%はESUSで,高再発率。リバーロキサバンが再発を抑制するか?

方法:
P:最近の虚血性脳卒中。動脈硬化性,ラクナ梗塞,塞栓源の解っている塞栓症を除く
E:リバーロキサバン15mg1m日1回
C:アスピリン100mg1日1回
O:主要有効性評価項目:虚血性及び出血性脳卒中/全身性塞栓症の再発
主要安全性評価項目:大出血

結果:
1)7213例,459施設,リバーロキサバン群3609例,アスピリン群3604例

2)平均11ヶ月追跡で中止:リバーロキサバンに脳卒中予防効果なく,出血リスク大

3)主要評価項目:
リバーロキサバン群 172例;5.1%/年
アスピリン群 160例;4.8%/年
ハザード比 1.07 (95%CI:0.87-1.33; P=0.52)

4)虚血性脳卒中再発:
リバーロキサバン群 158例;4.7%/年
アスピリン群 156例;4.7%/年

5)大出血
リバーロキサバン群0 62例;1.8%/年
アスピリン群 23例;0.7%/年
ハザード比 2.72(95%CI:1.68-4.39; P<0.001)
a0119856_06505920.jpeg

結論:リバーロキサバンはESUS後の脳卒中再発予防において,アスピリンよりも優位性を示せず,大出血リスクはより高かった。

### ESUSというのは塞栓源が特定できない脳塞栓症のことで,従来は”Cryptogenic stroke (潜因性脳卒中)”と呼ばれていましたが,画像診断の進歩その他でラクナ梗塞などではない”Undetermined”な塞栓症を新たに定義しようというコンセンサスから生まれた疾患概念(呼称)と思われます。

従来からこうした脳卒中は,無症候性心房細動が大きく関与されていると考えられており,実際以下のWARSS試験というものでは,ワルファリンと明日ポリンを比較していて,有意差はないもののワルファリンに有効性の傾向が見られたと報告されていて,今回の試験の根拠にもなっています。

ところが今回の試験では,NOACの優位性が示されずかえって大出血だけ増やしたという結果でした。おそらく今回の試験のESUS患者の中には,無症候性心房細動以外の大動脈プラーク由来や卵円孔開存などが関与しているものと推察されます。
今回の試験には比較的軽度の脳梗塞例が含まれていることも関係しているかもしれません。

脳血管専門施設ではこれまでもESUSUに対しては抗凝固薬を処方するところもあって,実臨床でも心房細動が記録されていない症例にもNOACなどが処方されているケースはかなり多いと思われます。今後現場で再考を迫られそうです。他の知見の集積を待ちたいと思います。

$$$ 今日のニャンコ
a0119856_06515135.jpeg

by dobashinaika | 2018-05-29 06:54 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

抗凝固療法に対する患者と医療者の認知/行動についての質的研究システマティックレビュー:BMCFP誌


目的:ビタミンK阻害薬(VKA)のアンダーユーズに関連する因子を探求するために医療者と患者のVKAのリスクベネフィットに対する認知と行動について評価したシステマティックレビュ

方法:
・医療者と患者の抗凝固療法に対する認知と行動に焦点を当てた質的あるいは質的量的混合の研究を対象
・2013年までの各種論文検索エンジンを使用

結果:
1)9研究。研究の質:4研究はexcellent,5研究はmoderate

2)医療者,患者共通に関心あるテーマは3つ:
・抗凝固薬使用の強化
・利益と不利益のバランス
・意思決定と治療管理の役割

3)患者の関心テーマ3つ
・知識と理解
・日常生活への影響
・治療の満足度

4)医療者の抱く困難感
・未来の不確かさ
・個人に特化した意思決定
・主要な問題を任されているという責任感

5)患者の抱く困難感
・情報と理解の不足
a0119856_00003179.png

結論:医療者と患者の認知と行動はVKAアンダーユーズの潜在的要因であろう。診療ガイドラインの質と使い勝手の向上,意思決定のための支援ツールの開発,プライマリケア医と専門医感の連携強化,患者への情報提供の改善といったことが抗凝固薬のアンダーユーズを改善する。

### 家庭医療分野から昨年出た論文ですが未紹介だったのが悔やまれる非常に興味深いレビューです。
循環器専門医は抗凝固薬のリスクベネフィット(ときにNOAC別の)やCHADS2スコアなどに目が向きがちですが,「なぜ抗凝固薬が出せないのか」を認知と行動の面から考えるのが家庭医です。そしてそこに質的に焦点を当てることこそ,量的研究だけでは計り知れない現場の悩み,葛藤が垣間見えるわけです。

共通の関心事としてリスクベネフィットは当然として,意思決定や治療上の管理について患者医療者双方が関心を持っている点はこうした研究に参加者する人の意識の高さを伺わせます。

困難感として,医療者は「未来の不確定」がある点はすごいと思いました。やはり抗凝固薬を使っている医者にとって,「未来は誰にもわからない」ことを骨みにしみて感じているのだと思います。

一方,患者さんは日常生活へのインパクトや満足度,情報の不足を気にするわけです。薬を飲むこと,飲まないことで具体的に生活自体にどんな影響が出てくるのか,単に脳梗塞が予防できる。消化管出血の可能性がある,というだけでなく,脳梗塞,脳出血になったときの生活の質の変化を具体的に示すことが,患者さんのニーズであり,イメージが明確化されるのかと思います。しかしながらここを突いてしまうと,不安感の増大に通じることがあり,この分野で患者さんのニーズをそのまま意思決定に取り入れることの難しさも感じます。

抗凝固療法における意思決定。もうこのネタ何回取り上げたかわかりませんが,最近は行動経済学にもとづくナッジとい概念が有効ではないかと考えています(以下参照)。
その辺に関しては後日まとめて書きたいと思います。

$$$ 待望のおのくん,ゲットしました。とても柔らかいです。
a0119856_00005379.jpg

by dobashinaika | 2018-03-29 00:03 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

高齢者心房細動合併慢性腎臓病患者への抗凝固薬投与は,虚血性脳卒中と脳出血の増加,死亡率の減少に関係する:BMJ誌


P:英国の110のGP施設におけるリサーチデータベース。65歳以上,新規発症心房細動,eGFR<50 mL/min/1.73m2。既存の心房細動,120以上前からの抗凝固薬内服中,透析中,腎移植後を除く

E:心房細動診断60日以内の抗凝固薬投与

C:抗凝固薬なし

O:虚血性脳卒中,脳出血,消化管出血,全死亡

T:プロペンシティースコアマッチ,一般住民ベース,後ろ向きコホート

結果:
1)6977例。抗凝固薬服薬群2434例,対照群4534例。平均追跡506日

2)服薬群:虚血性脳卒中4.6,脳出血1.2(100人年,補正前)

3)対照群:虚血性脳卒中1.5,脳出血0.4(100人年,補正前)

4)服薬群の対対照群ハザード比:虚血性脳卒中2.60(95%CI2.00〜3.38),脳出血2.42(95%CI1.44〜4.05),全死亡0.82(95%CI0.74〜0.91)
a0119856_23335416.jpg

結論:高齢の心房細動合併慢性腎臓病例では,抗凝固薬が虚血性脳卒中及び脳出血の増加に関係した。しかし逆説的に全死亡率は減少させた。このような患者では抗凝固薬の新規使用には慎重であるべき,こうした患者対象のランダム化試験が必要

### 大変衝撃的な結果です。これまでも腎機能低下例,特に末期腎不全では抗凝固薬で返って脳卒中が増加するというデータは有りました。しかしここまで大規模に抗凝固薬の有効性を否定するデータは初めてかと思われます。出血ならまだしも虚血性脳卒中も2倍以上増やすとのことですので。

理由について筆者らは,高齢者が多く,途中で投薬中止となった例も多く,そうした例も中止後160日のアウトカムは組み入れられていたこと,虚血性脳卒中の診断は曖昧だったことを挙げています。またワルファリンについては従来から血管の石灰化を助長する作用が指摘されており,慢性腎臓病では特にそれが顕著となるとの推察がなされています。

一方死亡については,致命的な脳卒中は少なく,心筋梗塞などは抗凝固薬で減ったためではと考察されています。

平均年齢81〜83歳,平均eGFR37-38とかなりのハイリスクであることがポイントと思われます。

観察研究とはいえ,GP発信の現場視点の研究です。高齢者CKDではこれまで以上に抗凝固薬は慎重に,という教訓として読みたいと思います。

それにしてもGPレベルでこれだけのコホートを組み,度肝を抜く用なデータを出してくる。英国恐るべし。はがゆし。

$$$ ブリューゲル展。花は語りかけ,人々は躍動していました。美術展ですが撮影OKでした。
a0119856_23344306.jpg

by dobashinaika | 2018-02-20 23:38 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心房細動患者の血圧は140/90mmHg未満に保つべき:不整脈と血圧に関するコンセンサス文書(EHRA,ESC合同):EHJCP誌

大変古いレビューで申し訳ございません。
欧州不整脈学会(EHRA)と欧州心臓病学会(ESC)から不整脈と血圧に関するコンセサス文書が昨年6月のEHJに掲載されております。



その中のThromboembolism and bleeding risk, including safe use of antithrombotic therapy in hypertension(高血圧患者における,抗凝固薬の安全な使用)に関するコンセンサスをご紹介します。

・高血圧のみ単独がリスク因子の心房細動患者においても,ほとんどの例で抗凝固薬を使うべきである。

・高血圧のみがリスク因子の場合特に,リスクーベネフィットに関するShared, informed decision-makingがもとめられる。

・ビタミンK阻害薬の場合は,INRの良好な管理(TTR≥ 65–70%)がもとめられる。

・NOACはVKAに比べ良好なアドヒアランスが得られ,リスク回避の点でより良い。出血を最小限にする目的で,最適な血圧管理がなされるべきである。より多くのデータが蓄積されるまで,血圧は140/90mmHg未満にすべきである。抗凝固薬は管理不良の高血圧(180/100mmHg以上)では,注意深く使用すべきであり,降圧をしっかり行う必要がある。

### 具体的な使用方法については,以下のLip先生特製のシェーマがわかりやすいです。
a0119856_00183170.png


抗血小板薬,NSIADs,HAS-BLEDスコア3点以上の人には特に注意しながら抗凝固薬を投与し,SAMe2-TT2R2スコア2点以下ならVKA,3点以上ならNOACを推奨しております。

至適血圧値についてのエビデンスは少なく,ARISTOTLE試験の後付解析で血圧140/90以上のひとはそれ以下の人に比べ,脳卒中/全身性塞栓症リスクで1.53倍,大出血リスクで1.85倍であったことなどが紹介されていました。

いまのところ,出来る限り140/90以下を目指すことを心がけたいと思います。

$$$ 春はどこから来るのだろう?
a0119856_00213997.jpg


by dobashinaika | 2018-02-09 00:24 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

2017〜2018年心房細動のトピックスまとめ(1):ESC The year in cardiology 2017より

皆様,あけましておめでとうございます。

昨年は後半から,プライマリ・ケアの認定医や指導医講習会,ブラッシュアップセミナーなど,プライマリ・ケア/家庭医療の分野に比重を移していたため,ブログがすっかりご無沙汰となってしまいました。

しかしこの間,趣味の論文読みは飽きずにやっておりましたので,恒例の年間べスト5は,この週末に発表する予定です。

今日はEuropean HeartJournalから2017年の論文まとめー不整脈,心臓デバイス編を紹介します。
その前にこの記事でも紹介されていましたが,不整脈,電気生理検査のパイオニアであるMark E. Josephson先生が昨年72歳でご逝去され,その哀悼文が掲載されていました。私は先生のClinicalelectrophysiology,とくにAVNRTのchapterやシェーマをそれこそ,ぺージ数まで暗記するほど繰り返し読んだことを思い出し。訃報に接して悲嘆に暮れました。改めてご冥福をお祈りしたいと存じます。

今日は,本ブログのメイン領域である”Stroke prevention in atrial fibrillation”の章をまとめます。


Stroke prevention in atrial fibrillation
・2016年ESCガイドラインではNOACが望ましい治療として位置づけられている1)
・遺伝子ガイドのワルファリン治療はNOAC優位を覆すかもしれない2)
・一方ワルファリン治療下の頭蓋内出血の多く(78.5%)は,INR<3.0の標準用量で生じるとされている3)
・念入りなRCTの解析により,4つのRCTのの違いが明確となってきている

・NOACの残された課題として不適切な”減量(reduced)”使用がある
・医療保険ベースのデータによると減量使用は全体の40%以上
・特にアピキサバンで著明であり,AROSTOTLE試験でアピキサバン2x2.5mg投与例4.7%との比較もなされていない4)
・重要な点として,アピキサバンやリバーロキサバンのクライテリアに一致しない減量使用が,RCTではその適切さをが証明されておらず,決して予測し得ない結果を招いていおり,それ故に推奨されないといことである
・対照的に,RE-LYとENGAGE AF-TIMI48では”低用量(lower dose)"使用に関して特に解析がなされている5.6)
・(クライテリアに準拠した)低用量使用か,(不適切な)減量しようかの比率を解析できるのが,保険ベースデータの強みだが,こうしたデータは,医療者と患者に,RCTのポジティブでデータはクライテリア道理に使用して初めて得られるということへの再認識を求める
・一方いわゆる"Real world data”,特に保険ベースの結果には十分な注意を要する
・統計的な補正にかかわらず,交絡因子は存在し,解釈には限界があり,因果関係の評価は不可能である7)

・心原性脳塞栓のもう一つのモダリティとして左心耳閉鎖術がある
・1つのデータとしてEVOLUTION registryにおいてWatchmanの1年間の結果が発表され,1000人あたりのstroke発症率は低率であった8)
・しかし同学会でのフランスからのデータでは,377例中6.1%でデバイスを閉鎖する血栓を認めた9)
・この学会の最後では,塞栓子の留置場所が未だに定まっていないことが顕にかになった。PROTECT-AF studyから8年以上たってもである
・2016年ESCガイドラインでは左心耳閉鎖術はClass IIbである1)
・さらに登録研究がでたところでこの推奨レベルは変わりそうにない。よくデザインされたRCTが必要
・CLOSURE-AF, ASAP-TOOなどの高リスく例での試験が進行中であるが,左心耳閉鎖術vsNOACの比較試験が急務である
・また,左心耳閉鎖術+低用量NOACのコンビネーションについては全く研究されていないが,実際はこの2つは相補的なコンセプトであろう
・残念なことに,今現在こうした興味についてのスポンサーは限られている

1)2016 ESC guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with EACTS. Eur Heart J 2016;37:2893–2962
2)Effect of genotype-guided warfarin dosing on clinical events and anticoagulation control among patients undergoing hip or knee arthroplasty: the gift randomized clinical trial.JAMA 2017;318:1115–1124.
3)Intracranial hemorrhage in patients with atrial fibrillation receiving anticoagulation therapy
.Blood 2017;129:2980–2987.
4)Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation.N Engl J Med 2011;365:981–992.
5)Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation.N Engl J Med 2009;361:1139–1151.
6)Edoxaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation.N Engl J Med 2013;369:2093–2104.
7)J Thromb Haemost 2016;14:2091.http://dx.doi.org/10.1111/jth.13557
8)Boersma et al., presented at Europe 201
9)Fauchier et al., presented at Europe 2017

### ESCでは・NOACの減量使用,・左心耳閉鎖術の2つが取り上げられていました。
クライテリアに基づいた「低用量使用」と不適切な「減量使用」を分けて述べていました。どちらが良いかの検証ですが,日本ではあまりなされていないようです。日本の現状が知りたいところです。

左心耳閉鎖術も多くの問題があるようですね。W-O法がより普及するとどうなるでしょうか。

私,個人的には以下の4つのポイントが昨年〜ことしのメインストリームのように思います。
1)Cardio-oncology(心臓ー悪性腫瘍連関)と抗凝固薬
2)認知症と抗凝固薬
3)ESUSあるいはSub-clinical AF
そして
4)新しいThrombi-Cardiologyは到来するか

ことしの当ブログは,これまでのような論文紹介はトピックなものだけにとどめ,この4テーマをそれぞれ私見を交えて,その都度サマリー的にまとめて出していきたいと思います。またよりプライマリ・ケア的なテーマも取り上げていきます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

### 大崎八幡神社参道で当院の提灯発見
a0119856_22500169.jpg



by dobashinaika | 2018-01-05 22:52 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

抗凝固薬による出血管理についての12のポイント:JACC誌


先日紹介したACCの,抗凝固薬の出血管理に関するコンセンサスについて,10のまとめがACCのまとめサイトからでてきます。

Consensus for Management of Bleeding on Oral Anticoagulants


1.AFとVTEのような状況でのDOACの使用はコモンである。今後より増えるであろう。

2.出血はDOACをふくむ抗凝固薬の合併症として知られる。出血の評価と管理はいまだ取り組むべき課題であり,とくにDOACは一定の血液チェックが欠如している。

3.第一ステップは出血の重症度を聴くことである:1)出血は致死的部位か? 2)血行動態的に不安定か? 3)ヘモグロビン2g/dl以上の出血または2単位以上の輸血が必要か?

4.もし出血が大出血でない(上記3つを満たさない)と考えられなければ,そして出血による入院や外科的介入が必要ならば,DOACは止めるべき

5.臨床的に妥当な血中レベルであることを確認し,ダビガトラン内服患者では希釈トロンボテスト,エカリン凝固時間,エカリンクロモジェニックアッセイを施行すべき。

6.臨床的に妥当な血中レベルであることを確認し,Xa阻害薬ではchromogenic anti-Xa activity assayを施行すべき。正常PTおよびaPTTは臨床的に適切な血中レベルの除外には不適である。

7.中和薬使用は致死的出血あるいは重篤部位での大出血に限られる

8.ビタミンK阻害薬(ワルファリン)の中和には,5−10mgのビタミンK静注が大出血には妥当。2〜5mgの経口ビタミンKは入院が必要な小出血に使用

9.4因子プロトロンビン製剤の仕様はVKAあるかはXa因子阻害薬服用患者の大出血に推奨される。Xa阻害薬では50IU/kgの固定用量が推奨される

10.ダビガトラン服用下の大出血患者はイダルシズマブ5g静注またはイダルシズマブ不適合患者では4因子PCCが勧められる

11.出血コントロールが付いたら,shared decision makingの対話がDOAC再開の是非及び時期決定に必要となる。重症部位出血例,再出血高リスク例,再出血時死亡が予想される例,出血源が同定できない例,外科手術が予定されてる例では,再開を遅らせる。

12.消化管出血患者では,OAC再開は出血7日以上後がベターアウトカム(死亡率減少,血栓塞栓リスク減少)

13.頭蓋内出血患者では,再開は約4週遅らせる
a0119856_00371611.jpg


###毎年恒例。今年は寒いせいか何時になくイルミネーションが映えます。
a0119856_00010005.jpg
a0119856_00004147.jpg

by dobashinaika | 2017-12-15 00:04 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

NOACはワルファリンに比べて、腎有害事象リスクを有意に低下させる:JACC誌

Renal Outcomes in Anticoagulated Patients With Atrial FibrillationYao X, Tangri N, Gersh BJ, et al. J Am Coll Cardiol 2017;70:2621-2632.


疑問:抗凝固薬の種類により腎機能への影響は違うのか?

方法:
・米国の後ろ向きコホート研究
・9769例、平均72.6歳、ワルファリン、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンいずれか服用者。平均追跡10.7ヶ月
・アウトカム:eGFR30%以上減少、Cr2倍上昇、急性腎障害、腎不全

結果:
1)複合エンドポイント(2年):eGFR低下24.4%、クレアチニン上昇4%、急性腎障害14.8%、腎不全1.7%
2)プール解析:eGFR30%以上減少、Cr2倍上昇、急性腎障害についてはNOACがワルファリンより明らかに少ない
3)上記ハザード比:eGFR30%以上減少0.77、Cr2倍上昇0.62、急性腎障害0.68
4)ダビガトラン、リバーロキサバン(アピキサバンは除く)は有意に腎機能の有害事象が少なかった
a0119856_18261879.jpg


結論:ダビガトラン、リバーロキサバン使用患者はワルファリンに比べて、腎機能の有害事象の有意な低下と関連あり

### 機序としては、ビタミンK依存性のあるGammacarboxyglutamic acidが腎血管石灰化を抑制しますが、ワルファリンはこのタンパクマトリックスの合成を阻害するために、腎症を促進し、NOACはXa因子やトロンビンが血管炎症に関与しており、これらを抑制することで腎症を抑えるということのようです。

なお、この研究は、薬剤が腎に与える影響であり、腎機能が低下している人への投与のアウトカムではないので、そこは注意です(言うまでもないですが)。

by dobashinaika | 2017-12-13 18:28 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

抗凝固薬の出血管理に関するACCのコンセンサス文書

ACCの専門部会から,抗凝固薬使用患者における出血管理に関するコンセンサス文書がでました。
非常によくまとまっています。

オーバービューのシェーマのみ日本語にして紹介します。
細かい止血方法などシェーマで表されていて,大変参考になります。
1)出血の評価と重症度判定
2)出血の管理・コントロール
3)抗凝固薬の再開とその時期の決定
の3ステップでまとめられています。
a0119856_00371611.jpg
$$$ 京都にもネコがいた(当然)^^
a0119856_10475800.jpg



by dobashinaika | 2017-12-07 00:47 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

抗凝固薬は心房細動患者の認知症リスクを低下させる可能性:EHJより


疑問:抗凝固薬は認知症リスクを減らすか?

方法:
・スウェーデンの観察研究
・退院時診断が心房細動,以前からの認知症診断なしの患者対象
・プロペンシティースコアマッチ,TT解析

結果:
1)444,106例

2)ワルファリン42.9%,DOAC2.9%,抗凝固薬なし54.3%

3)認知症リスク:抗凝固薬群1.14vs. 非抗凝固薬群1.79。ハザード比0.71 ,相対危険減少29%

4)ワルファリンとDOACで有意差なし。
a0119856_23265087.png


結論:認知症リスクは,抗凝固療法非施行例では,施行例より高い。

### なんと,抗凝固薬が認知症リスクを低下させる可能性があるそうです!
JAHAの総説を読むと,抗凝固薬と認知症との関係は一定しないようでしたが,この論文はnも多く,スコアマッチの手続きも踏んでいます。

メカ二ズムが不明であり,ま他絶対リスクは0.65%しか減っていないので,臨床上のインパクトにはまだ欠けるように思います。
前向き試験が志納中ですので,期待したいです。

$$$ 運慶展。中学の頃,仏像が好きで好きで仕方がない変わった青年だったのですが,亡父が京都奈良に突然連れて行ってくれて,運慶の無著世親像を見ていたく感動したのを思い出しました。非常なる計算と技術を背景に持ちながら,それが全面に出ることなく,またそれがために深い精神性をたたえることになる,それこそがほんまもんの美というものなのかと思わされました。
a0119856_23201796.jpg


by dobashinaika | 2017-11-06 23:28 | 抗凝固療法:全般 | Comments(1)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
通知を受け取る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(32)
(30)
(25)
(25)
(23)
(23)
(22)
(20)
(19)
(19)
(18)
(17)
(14)
(13)
(13)
(13)
(12)
(12)
(12)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

10月27日,第14回どばし..
at 2018-10-11 17:00
津川友介先生の講演「ビッグデ..
at 2018-10-11 00:07
中動態的オープンダイアローグ..
at 2018-10-08 10:13
The American C..
at 2018-10-05 21:28
抗凝固薬抗血小板薬併用療法に..
at 2018-10-03 20:53
ワルファリン開始当初のINR..
at 2018-09-27 23:59
心房細動は発作性から持続性に..
at 2018-09-20 22:27
CHA2DS-VAScスコア..
at 2018-09-20 08:24
日経メディカルオンライン連載..
at 2018-09-20 06:52
DOAC(抗凝固薬)をやめな..
at 2018-09-11 01:02

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン