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カテゴリ:抗凝固療法:全般( 148 )

長期ケア施設入所者における抗凝固薬中止の最大理由は「最近の転倒」:JAGS誌


目的:長期ケア施設住所中の心房細動患者において,抗凝固薬を中止する予測因子を解析

デザイン:後ろ向きコホート

セッティング:米国の長期ケア施設

参加者:2015年に心房細動を有する長期ケア施設入所者のうち,抗凝固薬の中止,非中止の状態を確認できる十分な情報のある48545人。

評価方法:
・以下の6項目と抗凝固薬中止との関連を解析
1)最近の転倒 2)重度のADL障害(21−28点/28点スケール) 3)移動能力低下 4)認知機能低下 5)BMI18.5未満 6)体重減少(5%以上/月or 10%以上/6ヶ月)
・ナーシングホームの90日ごとのデータセット(2回連続以上)において”on-on-off-off"なら「中止」。"on-on-on-on"なら継続と判定

結果:
1)中止者4172人,非中止者44373人
2)最近の転倒:1.9倍中止例多い(OR=1.91,95%CI1.66-1.20)
3)移動能力低下,認知機能低下:オッズ比14-17%増加のみ
4)重度ADL低下,BMI低値,体重減少10%:オッズ比55-68%増加
5)CHA2DS2-VAScスコアは中止の予測因子にならない

結論:重度の高齢による障害は抗凝固薬中止の予測因子となったが,CHA2DS2-VAScスコアはならなかった。ワルファリンとNOACの比較,脳卒中や出血と中止との関連などの評価が今後の課題

### 大変興味深い研究です。長期ケアが必要なフレイル高齢者の抗凝固薬中止は,永遠の課題と思われます。現場では「転倒」が最大の中止原因でした。

エビデンス的には抗凝固薬内服中の転倒そのものはアウトカムに直接影響しない事が多いとなっていますが,施設入所者を対象とした研究はありません。この研究でもアウトカムまでは言及していません。

当然ながら,徐々に低下するADLや認知機能よりも転倒というて劇的な事象のほうが,治療者にインパクトを与えるからと思われます。

やめたあとのアウトカム評価もお願いしたいところです。

$$$ 舌出し猫
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by dobashinaika | 2020-02-06 06:58 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

日経メディカルオンライン:第11回 高齢者の抗凝固薬で気になる「転倒・服薬アドヒアランス」 抗凝固薬の服用を怖がる患者にどう説明する? 公開いたしました

日経メディカルオンラインの連載:プライマリ・ケア医のための心房細動入門リターンズ,本日第11回が公開されました。

今回のタイトルは,”高齢者の抗凝固薬で気になる「転倒・服薬アドヒアランス」 抗凝固薬の服用を怖がる患者にどう説明する?”です。

服薬アドヒアランスは抗凝固薬療法のダークサイドといいますか,薬の効果や安全性の議論に隠れていながら,実は非常に深い,しかも重要な問題と思われます。そこにはエビデンス,理性,病態生理といったカテゴリーではくくりきれない人間の「認知」の問題があります。

日頃の実践を通して得られた知見とともに,この問題を考えていますので,ご高覧ください

(無料登録が必要です)
日経メディカルオンライン:第11回 高齢者の抗凝固薬で気になる「転倒・服薬アドヒアランス」 抗凝固薬の服用を怖がる患者にどう説明する? 公開いたしました_a0119856_06250561.png

by dobashinaika | 2019-10-15 06:26 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

新規発症心房細動では服薬アドヒアランスが良好であればワルファリンとDOACで脳卒中発症率に差はない:米国メディケアデータ:AJCD誌


目的:抗凝固薬のアドヒアランスあり,なし,服薬なしで心房細動の脳卒中リスクを比較

方法:
・米国メディケアクレイムデータ使用
・2014−2015年に新たに心房細動と診断され抗凝固薬を診断後12ヶ月の間に処方された39727例
・3回の受診時,過去30日の服薬アドヒアランスを調査
80%以上:遵守群,0-80%:非遵守群,0%;非使用群

結果:
1)遵守群35.0%,非遵守群10.9%,非使用群54.0%

2)脳卒中発症率(対非使用群)
遵守群:ハザード比(HR) 0.62; 95%CI 0.52-0.74
非遵守群:HR0.74; 95% CI 0.57-0.95

3)抗凝固薬別脳卒中発症率(対非使用群)
DOAC遵守群:HR0.54; 95% CI 0.42-0.69
ワルファリン遵守群:HR 0.70; 95% CI 0.56-0.89
DOACとワルファリンとで有意差なし:HR 0.77; 95% CI 0.56-1.04

結論:アドヒアランスが良好な場合,抗凝固薬による脳卒中リスクは40%に減少する。それにも関わらず新規発症心房細動の抗凝固薬アドヒアランス遵守率は1/3にとどまる。

### ワルファリンのTTRが70%以上であればDOACとアウトカムがそれほど変わらないとはよく言われますが,この報告では,TTRでなく服薬アドヒアランスを指標にしています。

DOACのRCTでも両者のアドヒアランスはかなり良好だったと思われますので,今回アウトカムの差がつかなかった理由は不明です。

ただメディケアの患者には多様な層が含まれていると思われますので,そうした日常診療に近い患者群においてもアドヒアランスの重要性が強調されることの意義は深いと思われます。

$$$ 仙台の日の出。だいぶ遅くなってきました。
新規発症心房細動では服薬アドヒアランスが良好であればワルファリンとDOACで脳卒中発症率に差はない:米国メディケアデータ:AJCD誌_a0119856_10453447.jpg



by dobashinaika | 2019-10-06 10:47 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

製薬企業をスポンサーとするDOAC/NOAC関連イベントと処方数,もしくは医師の生涯学習のあり方


目的:製薬企業をスポンサーとするNOAC関連イベントの質,数,内容を明らかにする(オーストラリア)。それらとNOACの消費量とを比較する。

デザイン&セッティング;
・Australian pharmaceutical industry transparency reportsのデータからのcross-sectional study
・2011年10月から2015年9月までのNOAC関連イベント,および2011年4月から2016年6月までのNOAC消費量(Australia’s Pharmaceutical Benefits Scheme (PBS)による)を調査

主要アウトカム:
NOAC関連教育イベントの特性,内容,コスト,頻度,参加者の情報,NOACの消費率

結果;
1)イベント数:2797イベント(月平均45件)

2)コスト:$A10 578 745(約7億5700万円:1豪ドル=71.6円として)。うち飲食代:$A4 23
8 962(約1億7千万円)

3)対象:GP(42%),循環器専門医(35%),血液専門医(23%)

4)場所:48%が診療外:レストラン,バー,カフェ

5)形式:55%がカンファランス,ミーティング,セミナー

6)2つのイベントにおいては,認可されていない適応や(NOACに)好ましい利益/害のプロフィールが提示され,スピーカーは製企業と親密な関係であった。

7)NOAC関連イベント数とNOAC処方数は経時的に増加した
製薬企業をスポンサーとするDOAC/NOAC関連イベントと処方数,もしくは医師の生涯学習のあり方_a0119856_08235469.gif
リバーロキサバン

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アピキサバン

製薬企業をスポンサーとするDOAC/NOAC関連イベントと処方数,もしくは医師の生涯学習のあり方_a0119856_08245558.gif
ダビガトラン

結論:4製薬企業によるNOAC関連イベントの莫大な資金は,販売促進目的であることが示された。医療従事者は,新しく提供された薬剤については例えば官庁などからの,(製薬企業から)独立した情報を探索すべきである。

### 著者はシドニー大学の薬学センター/薬学部の先生です。
NOAC関連イベントが月平均45件とのことですが,日本では例えば今年9月の仙台だけでも私の知る限り5-6件くらいあります(最近少なくなったとはいえ)。発売当初2−3年はそれは大変な数でした。日本全国でみるとオーストラリアをかなり凌駕する(数倍?)くらい開催されているのではないでしょうか。また費用もこれよりかなり多いかと思われます。
場所はレストランなどが多いとのことですが,日本はホテルが圧倒的に多いですね。最近はWebカンファランスも増えています。

しかしこの論文では相当手厳しく実例が挙げられています。2014年のEuropean Haematology Association’sのあるセミナーでは5人の講演者全員が製薬企業から講演料,研究グラント,相談業務を受けていて,一人の講演者は「NOACは禁忌は完全にない」,他の講演者は「小児にも ‘last resort therapy’として使える」と言った,などと生々しいレポートが記載されています。イベント数と薬剤消費量は直接関連があるかどうか不明ですし,結論最後の政府関連情報を,というのも違うかもしれないとしても,考えさせられます。

私自身,NOAC発売は医療従事者の生涯学習のあり方について深く考えさせられる契機となりました。新薬に関してはやむを得ない面はあるにせよ,とくに開業医では生涯学習(特に薬剤について)において製薬企業ベースの講演会が大きな位置を占めているのは否めません。自分でエビデンスを探すよりもいろんな意味においてconvenientです。

しかし著者も指摘しているように,そうした情報は数々のバイアスが入り込みやすいということは十分知るべきでしょう。日本ではオピニオンリーダーと呼ばれる医師が上記のような講演会のスピーカーとなっており,バイアスを見分けるのは非専門家にはかなり困難な状況と考えます。

新たな勉強法としては,日々の診療で発生する疑問を解決するために1)ネット(UpToDateなど)やSNSを参考にしていわゆるパーソナルナレッジベースをつくる 2)近所の開業医仲間で小さい勉強会を開いて問題解決を図る,などが考えられます。

コンプライアンスの関係や時代の流れから見て,おそらく製薬企業関連教育イベントは希少になっていくものと思われます。自ら主体的に学ぶ姿勢の探索が求められます。

開業医の生涯学習については,後日まとめて書くつもりです。

$$$ 今日のニャンコ
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by dobashinaika | 2019-08-30 08:29 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

フレイルと心房細動,抗凝固療法の関係に関するシステマティックレビュー:Age and Ageing誌


目的;フレイルと心房細動,臨床アウトカムの関係に関するエビデンスの統合

方法:フレイルと心房細動,臨床アウトカムの関係,フレイルと抗凝固療法との関係についてのシステマティックレビュー

結果:
1)20試験,30,883例対象,全て観察研究,病院での研究18,コミュニティー対象4,ナースングケア1

2)リスクバイアスは低〜中等度

3)心房細動有病率:3-38%

4)フレイルは,脳卒中増加,全死亡,入院期間,重症度と相関あり

5)フレイルは入院時の抗凝固薬処方率減少と関連あり (pooled adjusted OR 0.45 95%CI 0.22–0.93,3試験)。退院時処方率とは関連なし(pooled adjusted OR 0.40 95%CI 0.13–1.23,3試験)

6)コミュニティ対象の試験ではフレイル症例ほど抗凝固薬処方が多い(OR 2.33 95%CI 1.03–5.23)
フレイルと心房細動,抗凝固療法の関係に関するシステマティックレビュー:Age and Ageing誌_a0119856_06565851.png

結論:心房細動患者においてフレイルはコモンかつ負の臨床アウトカムに関連した。フレイルと抗凝固薬処方とは関連があったが,入院患者とコミュニティ対象とでは結果の方向性が異なった。一般住民において高齢者は多数を占めるが,フレイルと心房細動,抗凝固療法,アウトカムとの関連に関するエビデンスは欠如している。

### フレイルと心房細動,抗凝固療法に関するメタ解析です。トピックな話題でのメタ解析なので興味を引きました。
フレイルの定義は各試験で異なりますが,Clinical Frailty Scale (CFS)などが使用されているようです。CFSですと5点(買い物,外出,家事に支援が必要)以上とする論文が多いですが,対象の多くは7点(生活全般への介助)以上であり,概ね要介護3以上が対象と思われます。

コミュニティベースではフレイルの人ほど抗凝固薬が処方されていた点が興味深いですが,考察によれば1論文のみで,比較的j若年で低リスクの心房細動が対象の試験だからだろうとのでした。一方別のメタ解析ではフレイルへの抗凝固療法はフレイルでない人に比べて約半分との報告もあります(J Atr Fibrillation. 2018 Apr; 10(6): 1870.)。

フレイルの人ほどアウトカムが良くないし,抗凝固薬処方が少ない,ー納得ですが,抗凝固薬の有無でネットクリニカルベネフィットが変わるのかまでのアウトカムはないようでした。そこが一番知りたいところではあります。

$$$ 今日のニャンコ
フレイルと心房細動,抗凝固療法の関係に関するシステマティックレビュー:Age and Ageing誌_a0119856_06574444.jpg


by dobashinaika | 2019-08-21 07:00 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

日経メディカルオンライン更新いたしました。:第10回 高齢者の抗凝固療法で気になる「腎機能低下・高血圧・多剤併用」 意外と要注意な「NOACの併⽤薬の減らし⽅」

日経メディカルオンライン連載中の「プライマリ・ケア医のための心房細動入門リターン」更新いたしました。
今回は,第10回 高齢者の抗凝固療法で気になる「腎機能低下・高血圧・多剤併用」 意外と要注意な「NOACの併⽤薬の減らし⽅」です。

NOAC/DOACでも併用薬は,腎機能や血圧とともに意外と重要だということを述べています。
ご参考になれば幸いです。

(要無料登録)
日経メディカルオンライン更新いたしました。:第10回 高齢者の抗凝固療法で気になる「腎機能低下・高血圧・多剤併用」 意外と要注意な「NOACの併⽤薬の減らし⽅」_a0119856_07295359.png

by dobashinaika | 2019-08-06 07:30 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

がん合併心房細動例では,脳卒中予防の点でNOACは少なくともワルファリンより劣ることはない:JAHA誌


背景:がん合併心房細動に対するNOACの効果は一定しない。このポピュレーションにおけるNOAC vs. ワルファリンのメタ解析を行う

方法;
・5試験。NOAC8908例,ワルファリン12440例,ランダム効果モデル

結果:
1)心房細動患者では,がんの状態と脳卒中/全身性塞栓症,大出血,死亡とに有意な関連なし

2)ワルファリンに比較してNOACは以下を減らした。
脳卒中/全身性塞栓症(RR, 0.52; 95% CI, 0.28-0.99),
静脈塞栓血栓症(RR, 0.37, 95% CI, 0.22-0.63),
頭蓋内出血または消化管出血(RR, 0.65; 95% CI, 0.42-0.98) ,
虚血性脳卒中(ボーダーライン) (RR, 0.63; 95% CI, 0.40-1.00) ,
大出血 (RR, 0.73; 95% CI, 0.53-1.00)

3)NOAC vs. ワルファリンの上記のアウトカムは,がんのあるなしに関係なく同様
がん合併心房細動例では,脳卒中予防の点でNOACは少なくともワルファリンより劣ることはない:JAHA誌_a0119856_07292493.png
がん合併心房細動例では,脳卒中予防の点でNOACは少なくともワルファリンより劣ることはない:JAHA誌_a0119856_07295145.png

結論:がん合併心房細動においては,NOACはワルファリンに比べて血栓塞栓症と出血は同等もしくは少なかった。静脈血栓塞栓症リスクは減らした。

Disclosures:なし

### 一緒にまとまっているClinical Perspectiveが親切です。
What Is New?
・がんの状態と脳卒中/全身性塞栓症,大出血,死亡は関係ない
・NOACは,ワルファリンにくらべ,脳卒中/全身性塞栓症,大出血は同等もしくは減少,静脈血栓塞栓症は減少させた
・がんのあるなしにかかわらず,上記の関係は同じ

What Are the Clinical Implications?
・がん合併心房細動例では,脳卒中予防の点でNOACは少なくともワルファリンより劣ることはない。

がんのステータスとイベント発症率は関係ないのですね。メタ解析ならではの結果なのでしょうか。NOACのほうが概ねワルファリンより良好ですが,予想された結果ではあります。

とはいえ,用量設定や併用薬剤については不明で手探りな点が多く,慎重に使うことには変わりありません。

$$$ すわん君。不整脈心電学会で頑張ってました。
がん合併心房細動例では,脳卒中予防の点でNOACは少なくともワルファリンより劣ることはない:JAHA誌_a0119856_07304949.jpg

by dobashinaika | 2019-07-30 07:32 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

今,抗凝固療法で何がわかっていないのかー不整脈におけるknowledge gapsを明らかにする:EP誌


欧州不整脈学会(EHRA)から,不整脈分野で未だに不明な事項,いわゆるknowledge gaps に関する詳細な検討が発表されています。

膨大ですが,私たちの診療基盤に多くの示唆を与える内容と思われます。

本日は「脳塞栓予防,抗凝固療法:戦略とリスク層別化」

【リスク層別化】
・広く認められ,シンプルなものとしてCHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコアあり
・低,中,高リスクに分類
・どのスコアも予測能は中等度(ハイリスク群のc-統計量は0.63)
・スコアの組み合わせをしても0.65
・バイオマーカー(血液,尿,画像)を加えても0.7未満
・多くのバイオマーカーに関する試験が行われているが高リスク群および低リスク群への適応が妥当かは不明
・既存のスコアは新リスク因子(肥満,睡眠時無呼吸,境界型高血圧,腎障害)は考慮されていない
・心エコーの各種因子の評価については限定的で一致を見ていない
・リウマチ製弁膜症,機械弁をのぞいた弁膜症の評価は一定しない
・知識の空白には,CHA2DS2-VAScスコア0点のリスク,1点の人の多様性,追加リスクの評価や数値化の困難さなども含まれる

【抗凝固戦略】
・脳卒中予防はNOACの登場で変化した。
・NOACはVKAよりも有効,安全で簡便
・観察研究からは,よく管理されたワルファリン治療(TTR>75%)はNOACとほぼ同等の有効性だが,重篤な出血はNOAC のほうが低い
・著明な弁膜症,腎障害(腎移植含む)におけるNOAC使用については不明
・薬理学的指標による小規模試験は進行中だがRCTなし
・RCTは皆CrCL<30(アピキサバンは<25)
・脳卒中後早期,あるいは頭蓋内出血進行中の患者に対するNOAC使用は証明されていない
・NOACのRCTからは頭蓋内出血既往例は除外されている
・特殊なタイプの心房粗動,心房頻拍については不明
・新しい治療オプションとしてXI因子阻害薬,テカファリンに関するRCTが進行中

【左心耳閉鎖術(LAAO)】
・LAAO vs, NOACのデータはなし
・LAAO後アスピリン投与が行われているが十分確立されていない
・現在表にあるトライアルの他に以下のトライアルが進行中
1) LAAO vs. NOAC
2) WATCHMAN)vs. リバーロキサバン
3) LAAO vs. エドキサバン(パイロット試験)
4) LAAO後の最適な抗血小板薬治療(SAFE-LAAC)
5) 複雑冠動脈病変へのDES挿入後患者におけるLAAO vs. 抗血栓薬
6) 頭蓋内出血後抗凝固薬回避(A3ICH)
7) AMPLATZER™ Amulet™による左心耳閉鎖(Amulet IDE)
・以上にもかかわらず,左心耳と脳卒中の関係性は依然として評価されていない
・左心耳の解剖,血栓形成,LAAO後の内皮リモデリング,血栓マーカーのインパクトについては不明

### よりシンプルにまとめます。
<リスク評価>
・CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコアの予測能はそれほど高くない
・各種バイオマーカー,新リスク因子,心エコーの指標の評価一定しない
・各スコアの低リスク例への適応は不確か

<抗凝固戦略>
・著明な弁膜症,腎障害,脳卒中後早期,頭蓋内出血後,心房頻拍などへのNOAC使用については不明

<LAAO>
・LAAOがNOACより有効か,安全かのデータなし
・LAAO後のアスピリンは十分確立されていない
・左心耳と脳卒中の(厳密な)関係性は解明されていない
今,抗凝固療法で何がわかっていないのかー不整脈におけるknowledge gapsを明らかにする:EP誌_a0119856_06412702.png

### はっきり言ってこの記事はかなり素晴らしいです。

今何が「わかっている」のか,ビジネスにも絡むことでありさんざん喧伝されていますが,一方「何がわかっていないのか」をあきらかにすることは疎かになりがちです。というか,しかしながらというか,わからないことをか明らかにしてそこを解明していくことこそ科学の基本姿勢でもあります(そしてそれも資本主義の精神に実はマッチしているわけですが)。

しかしこうしてみると,現在はっきりと分かっていることは実は驚くほど少ないということがわかります。今知りたいことの多くは「限定的知識」でしかない感じですねえ。

でも極論すればどんな知識も「限定的」であり相対的であり,しかしその中で少しでもその限定の範囲を広げ深めていくことが医学であると思われますので,だからこそこうしたまとめが重要と言えます。

他の不整脈については後日紹介します。

$$$ 往診後立ち寄った近所の公園。満開です。
今,抗凝固療法で何がわかっていないのかー不整脈におけるknowledge gapsを明らかにする:EP誌_a0119856_06294955.jpg


by dobashinaika | 2019-04-10 06:44 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心臓病学2018〜この1年〜心房細動の抗凝固療法:EHJ誌より


EHJの不整脈この1年,今回は抗凝固療法のトピックです。以下に箇条書します。表題等は私によるものです。

<ガイドライン関係>
・EHRA実践ガイドがアップデートされた。

<除細動時の抗凝固療法>
・EMANATE 試験
 ・脳卒中/全身性塞栓症:非常に低リスク:除細動時アピキサバンvs, ビタミンK阻害薬(VKA)+ヘパリン=0/753, vs. 6/747
・大出血:同等で低リスク
・ X-Vert 試験(リバーロキサバン),Ensure-AF試験(エドキサバン),RE-LY試験(ダビガトラン)も同様の結果

これらの所見をまとめると,除除細を安全に行うにはNOACを(VKA同様)必要条件とすることが示されたと言える。

<アブレーション時の抗凝固療法>
・AXAFA試験
・アピキサバン,ワルファリンともアブレーション時中止しない場合の虚血/出血出血イベントは低率(6.9% vs. 7.3%)
・MRIによる無症候性脳梗塞も両群で同等
・TIAの2例はアピキサバン群

・BRUISE CONTROL-2試験
・NOAC非中止群(最終服用から12時間以内の手術),中止群とも出血/虚血イベントは低率

<認知症と抗凝固薬>
・スウェーデン国内大規模登録研究
・444,106例の心房細動,認知症なし
・抗凝固薬内服例は非内服例に比べ29%認知症発症が減少(150万人年)
・厳密な試験ではないが,抗凝固療法が認知証を減らすという仮説を支持する

<抗凝固薬展望>
・NOACは,RCTとリアルワールドデータに基づき,心房細動における脳卒中予防管理に革命をもたらした
・こうしたデータを読み解くときは,どういったタイプのデータソースがどのタイプのリサーチクエスチョンに答えられるのか,どこに価値を置くべきかに注意すべき
・NOACの登場は,明白な効果をもたらしたのだろうか?
英国の国内データでは心房細動有病率は1.29%→1.71%(2006年→2016年)に増加
・心房細動関連脳卒中は100,000人あたり80/週(2006年)→98/週(2011年)→86/週(2016年)と減少:
・CHA2DS2-VAScスコア2点以上の人への抗凝固薬は48.0%→78.6%に増加
・抗血小板薬は42.9%→16.1%に減少
・これらのデータはガイドライン,大量の啓蒙活動を含むNOACの紹介が,ハードクリニカルエンドポイントの減少とパラレルであることを示している
・一方でこの論文の筆者は,もし抗凝固薬処方が2009年レベルで留まっていたとしたら,2015/2016年には4068例多く脳卒中が起きていただろうと推測する
・「心疾患の負担を減らす」という,ESCのミッションの大きな成功例である
心臓病学2018〜この1年〜心房細動の抗凝固療法:EHJ誌より_a0119856_08474449.png

<アドヒアランス>
・抗凝固薬のアドヒアランスを増加させるにはどうすればよいか?
・テレメトリーによるフィードバック(ベルギーの48人対象のパイロット試験による)が答えになるかもしれない
・大規模試験で対費用効果も含む有効性はこれからである

### 除細動のときも,アブレーション時も,認知症予防にもNOACがよい,ここ10年でNOACが脳卒中アウトカムの改善に関連したはあきらかだ,,,
そんなところでしょうか。

そうかもしれませんが,であればなおさら抗凝固薬のリスクについてもしっかり語られるべきだと思います。処方が増えた,脳卒中も減った,でもやはり抗凝固薬はNOACであっても怖い薬であることは間違いがない。そこはしっかり抑えておきたいです。

実地臨床では,出血リスクを少しでも減らすような知恵に関するエビデンスや知見が今後,ますますほしい,そういう感じです。



by dobashinaika | 2019-01-16 08:51 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

複数共存疾患を持つ心房細動患者では,いずれの抗凝固薬も脳卒中予防の有効性は同等。しかしダビガトランとリバーロキサバンは死亡率減少と関連:JACCNW誌


疑問:複数共存疾患(multiple chronic conditions :MCC)を持つ心房細動患者におけるNOACのアウトカムは,ワルファリンに比べてどうか?

デザイン,セッティング,対象:
・米国メディケアデータベース
・心房細動新規発症90日以内に抗凝固薬開始
・CHA2DS2-VAScスコア;低リスク(1-3点),中リスク(4-5点),高リスク(6点以上)
・HAS-BLEDスコア:低リスク(0-1点),中リスク(2点),高リスク(3点以上)
・Gagne comorbidity スコア:低リスク(0-2点),中リスク(3-4点),高リスク(5点以上)
・ダビガトラン群(150mgx2),リバーロキサバン群(20mgx1),ワルファリン群でプロペンシティーマッチング
・アウトカム:脳卒中,大出血,死亡

結果:
1)ダビガトラン群:21979例,平均75.8歳,女性51.1%
リバーロキサバン群:23117例,平均75.8歳,女性49.9%
ワルファリン群;10175例,平均78.5歳,女性57.3%

2)脳卒中(マッチング後):3群で有意差なし

3)ダビガトラン(対ワルファリン):
・低MCCリスクにおいて大出血を有意に減少(HR0.62; 95% CI, 0.47-0.83; P < .001; )
・中,高リスクでも同様

4)リバーロキサバン(対ワルファリン):
・大出血;ワルファリンと同等。ダビガトラン群より中,高リスクで有意に増加 (HR, 1.24; 95% CI, 1.04-1.48; P = .02 and HR, 1.28; 95% CI, 1.05-1.56; P = .01, respectively)

5)ダビガトラン群とリバーロキサバン群は,全MCCリスクを通じてワルファリン群より全死亡は有意に減少(HR0.52-0.84)
複数共存疾患を持つ心房細動患者では,いずれの抗凝固薬も脳卒中予防の有効性は同等。しかしダビガトランとリバーロキサバンは死亡率減少と関連:JACCNW誌_a0119856_06140822.png

結論:複数共存疾患を持つ心房細動患者では,いずれの抗凝固薬も脳卒中予防の有効性は同等。しかしダビガトランとリバーロキサバンは死亡率減少と関連

### 最近,抗凝固薬投与で最も大切なことは,本論文で取り上げているような「多疾患共存(あるいは併存)状態」の人が非常に多くなっている,という認識だと思われます。抗凝固薬はますます高齢者に投与され,そうした方は高血圧,糖尿病,心不全をはじめ,CKD,フレイル,認知症等々,数多くの共存疾患を抱えています。そうした中での抗凝固薬がどのようなインパクトなのかを知ることこそ,求められるものではないかと痛感します。

細かく見ると,リバーロキサバンは,中,高リスク例で大出血のうち特に消化管リスクがダビガトランやワルファリンに比べ増加し,とくに開始30日以内で増加しているようです。特に投与開始時に注意が必要かもしれません,

共存疾患のリスクの程度を表すGagne comorbidity scoreは私も初めて知りましたが,以下のサイトをご参照ください。

$$$ 今日のニャンコ
複数共存疾患を持つ心房細動患者では,いずれの抗凝固薬も脳卒中予防の有効性は同等。しかしダビガトランとリバーロキサバンは死亡率減少と関連:JACCNW誌_a0119856_06151502.jpg

by dobashinaika | 2018-10-23 06:16 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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