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カテゴリ:抗凝固療法:ワーファリン( 69 )

ワルファリン投与早期は非投与例より脳卒中リスクが高い可能性:EHJの症例対照研究より

European Heart Journal 12月18日付オンライン版より

Initiation of warfarin in patients with atrial fibrillation: early effects on ischaemic strokesEur Heart J (2013)
doi: 10.1093/eurheartj/eht499

【疑問】リアルワールドでワーファリン導入早期の脳梗塞リスク増加はどのくらい?

O:脳卒中発症率(ワルファリン開始からの期間別:30日未満,31−90日,90日超)

Case:脳卒中発症者
Control:脳卒中非発症者:年齢,性別,診断日,診断日からの時間をケース1例につき10の対照例でマッチング
(P:the UK Clinical Practice Research Datalink における心房細動コホート70,766人(1993〜2008年))

E/C:ワルファリン服薬/非服薬

【結果】
1)投与30日以内の脳卒中発症率:ワルファリン投与群のRR1.71 (95%CI 1.39~2.12)

2)投与31〜90日:RR0.50(0.34~0.75)

3)投与90日超:RR0.55(0.50〜0.61)

【結論】ワルファリン服薬群患者では30日以内の脳梗塞発症リスクは、非服薬群に比べ有意に多かった。このことは治療初期の一過性過凝固状態を示唆する。さらなる研究必要

### ほんの2〜3年前までワルファリンの添付文書には「成人初回20〜40mgを経口投与し、、、、」と堂々と書いてあったのです。今にして思うと信じられない気がします。でも私が医者になりたての頃は、発症時期不明の持続性心房細動は、入院の上、初日に10mg、2日目に5mg、3日に3mg、、、というように急速飽和を必ず行っていました。あの当時、入院して数日目に脳塞栓を発症した患者さんがおられたことを今でも思い出します。

機序としてよく知られているように、内因性の凝固阻止因子であるプロテインC、プロテインSはビタミンK依存性であり、ビタミンK依存性凝固因子より半減期が短いので、ワルファリン投与初期にはこちらのほうが先に抑制され、脳塞栓が増える可能性があると説明されています。

ROCET AFもARISTOTLEも試験終了後NOACからワルファリンに切り替える際にオーバーラップ期間が短かったため切替時にstrokeが増加したことは有名ですね。

コホート内症例対照研究ですので、交絡因子を全て補正することはできず、またワルファリンの管理状況も様々だと思われますので因果関係を軽々に論じることは慎むべきですが、従来の仮説を大規模コホートで検証する試みとし捉えたいと思います。
by dobashinaika | 2013-12-20 22:47 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

ゲノム薬理(遺伝薬理)はワルファリンの用量設定に役立つのか?

11月22日のブログで紹介した遺伝子ガイドvs従来の臨床指標ガイドのワーファリン管理アルゴリズムの論文ですが、NEJMでは同じ日にもう2つの同様形式の論文が掲載されていました。

EU-PACT試験ですが、ワーファリンと、同じビタミンK阻害薬のアセノクマロールの用量管理に関する2論文です。

1つは、
A Randomized Trial of Genotype-Guided Dosing of Warfarin
DOI: 10.1056/NEJMoa1311386


・一次アウトカム:ワーファリンのTTR(開始12週)
・455例
・【結果】TTR:遺伝子ガイド群67.4% vs.臨床指標群60.3% (P<0.001)

もうひとつは
A Randomized Trial of Genotype-Guided Dosing of Acenocoumarol and PhenprocoumonDOI: 10.1056/NEJMoa1311388

・一次アウトカム:アセノクマロールのTTR(開始12週)
・548例
・【結果】TTR;遺伝子ガイド群62.3% vs. 臨床指標群61.4%(有意差なし)

このように最初の試験では有意差あり、後の方は有意差なしでした。

前回紹介したCOAG試験では遺伝子ガイド群45.2% vs. 臨床指標群45.4%で有意差なしでした。

この差は、アルゴリズムの違いから生じるものと思われますし、薬の導入時を比較した点も、管理の難しい時期であるだけに比較を難しくした側面は考慮すべきかもしれません。

しかし以下のEditorが指摘しているように、最初のワーファリン対象のEU-PACT試験でも実はTTRは67%と60%の差であり、莫大な差は生じていないとも取ることができます。

少なくとも、わざわざ遺伝子検索をして、細かなアルゴリズムに当てはめてまでのベネフィトはないようにも思われます。
Do Pharmacogenetics Have a Role in the Dosing of Vitamin K Antagonists?Bruce Furie, M.D.
November 19, 2013DOI: 10.1056/NEJMe1313682


やはり各種臨床指標、前数回のINRから導かれるさじ加減のようなものがより重要である、あるいは少なくとも有用性は限定的であることが判明したと考えて良いと思われます。

かなりゲノム研究が進んでいるワルファリンでさえこうですので、例えば、降圧薬とか糖尿病薬とか、服薬前に遺伝子的評価をしてその効果と安全性を察知して投薬計画を建てるといったことは、まだ相当先なのかと思わせる一連の論文だったように思います。
by dobashinaika | 2013-11-25 22:53 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

ワルファリンの「遺伝子的管理」は「さじ加減」に勝てない?:NEJM誌より(COAG試験)

NEJM 11月19日付オンライン版より

A Pharmacogenetic versus a Clinical Algorithm for Warfarin DosingDOI: 10.1056/NEJMoa1310669

【疑問】ワルファリンの用量調節は遺伝子ガイドによるものと、臨床的アルゴリズムによるもののどちらがより良いか?

P:米国18施設からの登録研究。ワルファリン服用者;INR2.0〜3.0目標

E:CYP2C9とVKORC1のジェノタイプ+臨床的変数のアルゴリズムによる用量設定

C:臨床的変数のみによる用量設定

0:一次エンドポイント=TTR、二次エンドポイント=INR4以上、大出血、血栓塞栓症

T:無作為割付。6ヶ月追跡


【結果】
1)4週間でのTTR:ジェノタイプ群45.2% VS. 臨床ガイド群45.4% (P=0.91)

2)ワルファリン1日1mg以上においてもそれ以下の群でも、両群間で差はなし

3)2つのストラテジーと人種とに交互作用あり:黒人は臨床ガイド優位、非黒人はジェノタイプ優位

4)INR4以上の割合、出血、血栓塞栓症は両群間で差なし
a0119856_23585625.png


【結論】ワルファリンのジェノタイプガイド用量設定は最初の4週における抗凝固管理を改善させない。

### ワルファリンはビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)を抑制してビタミンk依存性凝固因子産生を抑制し、CYP2C9で分解されます。これらには遺伝子多型があり、それらの有無がワルファリンの用量調節に左右すると言われています。

こうした要素と年齢、人種、BMI、糖尿病、喫煙その他の臨床因子を組みあせてワルファリンの用量と決める方法と臨床因子のみで決める方法とでTTRに差があるのかを見た論文です。
で、本論文は遺伝子の要素を加味してもワルファリン管理には影響しないという結果でした。

ところがほぼ同様の研究が同時掲載されていますが、こちらはなんと遺伝子ガイドの方が管理が良かったという正反対の結果になっています
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1311386

この差の由来は、用量設定を決めるアルゴリズムにあると思われます。
ワルファリンの用量は、この補足にあるように、遺伝子多型のある場合それにいろいろな係数をかけた関数式で決定されます。
http://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa1310669/suppl_file/nejmoa1310669_appendix.pdf

この係数の設定などで用量が大きく変わってしまうものと思われます。各臨床因子の中には過去数回のINRも含まれており、「さじ加減」的要素も含まれています。

本論文はTTRは40%台とか、4週間でしか比較していないとかで、やや実臨床に即していない傾向が感じられます。それにしても、かなり研究されていると思われるワルファリンのジェノタイプを使用してすら、「さじ加減」には勝てないということは。。。。

我々の臨床的”勘”は侮れないということでしょうか?
これだからワルファリンから離れられないのですねえ。
やっぱり数ある薬の中でも、毎回の検査結果を見ながらちょっとずつ量を変えることが出来る薬なんて、これくらいしかありませんので。
その”薬師”的味わいも含めて好きなんですけどねー。ワルファリン。決してワルくないです。

こちらのブログも参照を
http://dobashin.exblog.jp/16487585/
by dobashinaika | 2013-11-22 23:55 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

「女性」と「心不全」は日本人のワルファリン管理不良に関連あり:T/R誌より

Thrombosis Research 11月号より

Patient Factors against Stable Control of Warfarin Therapy for Japanese Non-valvular Atrial Fibrillation PatientsThrombosis ResearchVolume 132, Issue 5 , Pages 537-542, November 2013

【疑問】日本人においてワルファリンコントロールを妨げる因子はなにか?

P:ワルファリン服用中の非弁膜症性心房細動患者163人

E/C:各種因子

O:TTR ( time in therapeutic range)

【結果】
1)TTR(日本のガイドラインに基づく):69.7±25.1%(全体); 49.6±24.8% (<70) and 77.8±20.3%,(≥70)

2)70歳未満も1.6〜2.6を至適範囲として再計算した場合のTTR:79.5±20.1%

3)TTR低値(再計算後)との関連因子:低身長、血清クレアチニン高値、低クレアチニンクリアラ
ンス、女性、うっ血性心不全(各P<0.05)

4)多変量解 解析後の関連因子;女性、心不全 (各p<0.05, p<0.01,).

5)CYP2C)とVKORC1はワーファリンの容量と関連あり。TTRとは関連なし

【結論】日本で実際によく使われている範囲のPT-INR値で評価した場合、TTRは良好に管理されており、女性とうっ血性心不全はTTR管理不良に明らかな影響があった

###  日本(九州)のグループからの報告です。
まずやはり70歳未満でもINR1.6~2.6 を目指している実態が浮かび上がっています。

次に興味深いのは女性とTTR不良に関連があることです。CHA2DS2-VAScスコアに「女性」が入っていることが思い起こされますが、理由ははっきりわかっていないと思います。
以前読んだスウェーデンやカナダのコホート研究では高齢者やCHADS2スコア2点以上の場合に「女性」も脳塞栓のリスク因子となりうることが示唆されています。
http://dobashin.exblog.jp/15489568/
http://dobashin.exblog.jp/15370480/

今回の検討はワーファリン管理の両不良の検討ですので、やや違いますがやはりhormonalな反応の違いなどがあるのかもしれません。
個人的には年齢、腎機能などがTTRと関連しているように感じていましたが、そうでもないようです。
by dobashinaika | 2013-10-30 19:32 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

患者教育によりワーファリンの管理は有意に改善する

PLoS One. 9月9日付けオンライン板より

Educational Intervention Improves Anticoagulation Control in Atrial Fibrillation Patients: The TREAT Randomised Trial doi: 10.1371/journal.pone.0074037

【疑問】患者教育でTTRは良くなるか?

P;ワーファリンナイーブ患者97人

E:理論に基づいた教育介入を行った患者:インタービューとフォーカスグループ。グループセッションは1−6人の患者で、DVD、ブックレット、自己モニター日記、ワークシートを使用

C:通常のケア

O:TTR(一次)、知識、QOL、不安・抑うつ、医療への信頼、病気の見通し

T;無作為割付

【結果】
1)介入群:46例、年齢72.0歳、男67.4%、対照群:51例、73.7歳、男62.7.%

2)TTR :介入群76,2%vs. 対照群71.3% ;p=0.035、12ヶ月後も同じ傾向

3)知識;両群とも、有意に増加。両群間で差はない

4)6ヶ月後の知識スコアはTTRを予測しうる(r=0.245;p=0.04)

5)一般的な害と過量投与に関する理解力などに関する患者のスコアは、心房細動に対する抗凝固療法の必要性の認識と同様、TTRを予測する因子である

【結論】理論に基づいた教育介入は、ワーファリン開始患者の6ヶ月後のTTRを明らかに改善した。有害事象は、ワーファリンの必要性への理解や、副作用に対する懸念の払拭により減少する可能性がある。心房細動の患者に対する教育的準備を改善させることは、効果と安全性を高めるために不可欠。

### 教育によりTTRが76%にもなるとはすごいですね。ただ通常の説明でもTTR70%程度で結構いいようです。TTR79%で、ダビガトラン150と同等の有効性を持つと言われていますので、教育をがっちりやれば、ワーファリンでもOKという感じでしょうか。70歳以上の目標INRが低めな日本だともっとTTRが良くなる可能性もありますし。

ただ教育でTTRが良くなるということは、教育しないと飲み忘れ、飲みまちがい、併用薬剤や食べ物の影響がかなりあるということを意味します。TTRがこれほど変化するくらい、アドヒアランスが教育で改善するのでしょうか?それとも元々良くないのか?

医師の決めたワーファリン投与量が、最もTTRを左右するようにも思いますが。平均年齢72歳というところが絶妙という気もします。よりご高齢での方ですと、教育がどの程度有効かはまた違う結果が出るようにも思います、
by dobashinaika | 2013-09-18 19:04 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

ワーファリン管理と脳塞栓後の障害度との関係

Stroke 8月20日付オンライン版より

Intensity of Anticoagulation and Clinical Outcomes in Acute Cardioembolic Stroke
The Fukuoka Stroke Registry
doi: 10.1161/ STROKEAHA.113.002523

【疑問】INR管理状況で、脳塞栓のアウトカムは変わるか?

P;ワーファリン服薬下にもかかわらず心原性脳塞栓を起こした602例:Fukuoka Stroke Registry

E/C:入院時INR:<1.50 (n=411)、1.50〜1.99 (n=146)、2.00≦ (n=45)の3群

O:神経学的障害(入院時):National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS)≥1または身体機能低下(退院時):modified Rankin scale (mRS) 4–6

【結果】
1)入院時INRが高いほど、NIHSS, mRSとも良好

2)重症な神経学的障害;INRと反比例:1.50〜1.99(対1.50未満オッズ比0.66)2,0≦(オッズ比0.41)

3)身体機能低下はINR2.0囲繞では少ない:オッズ比0.20

【結論】
INR2以上は、急性心原性脳塞栓後の良好なアウトカムと関係あり

### 九州大学中心の登録研究。アブストラクトだけですみません。INRが低いと血栓の大きさも大きいので、大きな梗塞を作ると解釈してよいのでしょうか。
しかし非常に興味深い論文ではあります。

1割以下の頻度ですがINR2以上でも脳塞栓をきたすことにも注目です。

個人的にはINR低値の方はやはり高齢者が多かったのか、INR2以上の方で心原性脳塞栓を起こす場合は他のどのような因子が絡んでいるのか(血圧など)知りたいところです。全文読んだらアップします。
by dobashinaika | 2013-08-23 18:53 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

心不全はワーファリン管理に最も関連ある因子:Am J cardiol誌より

American Journal of Cardiology 6月24日付オンライン版より

Impact of Co-morbidities and Patient Characteristics on International Normalized Ratio Control Over Time in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation
doi:10.1016/j.amjcard.2013.04.013

【疑問】ワーファリンのコントロールに影響をあたえるものは何か?

P:12ヶ月以上ワーファリンを服用中で、通院期間60日以内の非弁膜症性心房細動患者23,425人(平均74.8歳、84.8%が65歳以上)。2006〜2010年までの追跡研究

E/C:各種合併症(CHADS2スコア2点以上=higherCHADS2)

O:TTR55%未満=lowerTTR

【結果】
1)合併症:高血圧41.7%。糖尿病24.1%、心不全11.7%。脳卒中の既往11.1%

2)平均TTR67.3 ± 14.4%、lowerTTRは18.6%

3)Lower TTRを規定する因子:心不全(オッス比1.41)、糖尿病(1.28)、脳卒中の既往(1.15)

4)Higher CHADS2はlower TTRと関係あり(オッズ比 1.11, 95% CI 1.04 to 1.18; p <0.001)

【結論】心不全はlower TTRと最も関係あり。次が糖尿病と脳卒中の既往このような患者への抗凝固療法には注意が必要

### 確かに心不全の患者さんはINRが上下することが多いです。腎機能も低下していますし、また腸管からのワーファリンの吸収や食事量が一定しないことが予想されます。

ただ、日常外来では特に循環器専門でない限り心不全の患者さんはそう多くはありません。当院でTTRが落ち着かない患者さんの多くは、やはり高齢者の方です(今回の検討では年齢は影響していないでようですが)。他の薬を沢山飲んでいる、認知機能が低下している、、、そうした因子も影響があるものと思われます。

まだ未知の因子があるような気がします。以下ご参照下さい。
http://dobashin.exblog.jp/16103073/


とはいえ、やはり心不全患者さんのワーファリン管理には通常より神経を使うことは教訓と思われます。
by dobashinaika | 2013-07-02 14:57 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

臨床上の意思決定とは、所詮不可能,にもかかわらず不可避な営み:ワーファリンの患者満足度研究より

Journal of Investigative Medicine 3月21日オンライン版より

Patient Satisfaction With Warfarin- and Non-Warfarin-Containing Thromboprophylaxis Regimens for Atrial Fibrillation.
doi: 10.231/JIM.0b013e31828df1bf


【疑問】心房細動脳塞栓予防においてワーファリン服用が患者満足度に同影響を及ぼすか?

【方法】
・ 横断研究
・ 2010年7月から2011年8月までに心房細動があり脳塞栓予防療法を受けた患者対象
・ ワーファリン群65人、非ワーファリン群15人
・ 抗凝固治療スケール(Anti-Clot Treatment Scale (ACTS)による満足度を調査

【結果】
1)17の質問中6つの患者が受ける身体活動制限やダイエット上の制限、不便な感じ、欲求不満、負担に関する質問スコア:ワーファリン群の方がよくない(P<0.05)

2)ACTSの平均負担スコア:非ワーファリン群の方が負担が少ない(P=0.003)

3)ACTSのベネフィットスコア:有意差なし

【結論】ワーファリン服用患者は、血栓予防に関する感情という点で、非ワーファリン群に比べよい感情は持っていない。ワーリンについての制限や負担感はより大きい。

### 非ワーファリン群には時期的に見て、新規抗凝固薬は少ないように思われます。おそらくアスピリンが多いのでしょうか?アウトカムを患者の身体制限、や感情的負担に設定した場合は、当然の結果とも言えます。より出血リスクが大きい。食事や採血の制限がある。他のどの経口薬よりも制約感があるのがワーファリンです。

その制約感、負担感に対し、NOACは当然勝るはずですが、それは医者側の論理だけにすぎないかもしれません。ワーファリンの「負担感」は出血リスクそのものに対する根源的な不安に由来するとことが大きいと思われるからです。

NOACはエビデンス的に確かに頭蓋内出血がワーファリンより明らかに少ない訳ですが、ゼロではありません。

ワーファリンの制約感、負担感に勝るだけのエビデンス的優位があるか。医者の論理では明らかに利がありますが、患者側から見ると頭蓋内出血がワーファリンより70%減るからと言ってゼロにはならず、やっぱりけがや転倒に対して十分な注意が必要なことには代わりはありません。

そもそもエビデンスという科学的あるいは数値的カテゴリーと「負担感」という感情的カテゴリーを比較すること自体に不可能性が存在します。

よくエビデンスと患者の好み(と医者の専門性)を総合的に考えて意思決定せよと言われますし、私も好んで使うフレーズですが、考えてみればエビデンス、患者さんの好み、専門性って3つとも全くカテゴリー概念、あるいは次元の違うものですよね。それを比較しながら総合的に判断しろと。しかも患者と医者とで話し合ってやれと.それって、本来実現不可能な行為じゃないでしょうか?

ことほど左様に意思決定という行為は、統合することが元来不可能なカテゴリーレベル(次元)の違う概念をいろいろと考えこねくり回しながら、最後の最後には何かしらの論理の飛躍を不可避なものとして成立するというきわめて矛盾に満ちた行為であろうと思います。

不可能だからと言って、でも避けられないー。それが人生だと言えばそれまでですが、不可能ながらも最適解を見つける鋭意努力こそが人生とも言えるわけで、それこそがEBMの真髄だとも言えるのだと思います。

所詮エビデンスだからと言って、リアルワールドとは違うからと言ってハナから取り合わない,という態度は不誠実です。少しでもリアルワールドに近付けるよう、経験を積む、登録データを集積する、現時点で最適な患者さんを考えて使っていく。。。。そうした行為が医療者、特に専門医に求められます。

と、あらら。。。。何のことを言っているのかわからなくなってしまいました。ってNOACのことを言いたかったのですが。ちょっとワーファリンとNOACのことについて考えるところがあったのですが、つい暴走して支離滅裂になってしまいました(笑)。明日もう少しリファインして書きます。

このスコアの中に「出血への根源的な負担感」がどの程度盛り込まれているのか、興味深い点です。
by dobashinaika | 2013-04-01 23:18 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(2)

ワルファリンによる大出血は年間2%程度:システマティックレビューより

Europace 2月13日付けオンライン版より

Major bleeding in patients with atrial fibrillation receiving vitamin K antagonists: a systematic review of randomized and observational studies
Europace (2013)doi: 10.1093/europace/eut001



【疑問】ビタミンK 阻害薬(VKA)服薬中の心房細動患者の大出血はどのくらいの頻度か?

【方法】
・ 1960~2012年までのVKA服用心房細動患者の大出血リスクを評価したRCTおよび観察研究を検索
・ 16RCT,31観察研究
・ 61,563人年(RCT)、484,241人年(観察研究)フォロー

【結果】
1)平均大出血頻度(RCT):2.1/100人年(0.9-3.4)

2)平均大出血頻度(観察研究):2.0/100人年(0.2-7.6)

3)このような出血に関するエビデンスや報告は管理パターンの変化とともに増えつつある

4)死亡率の比較は観察研究とRCTでは適切でない

【結論】平均大出血頻度はRCTと観察研究で同様。出血率に幅があることは、VKAによる標準ケアに大きなばらつきがあり、研究ごと、データ粗^ルゴトに方法論的な際があることを反映している。

### ワヅファリンの大出血に関するシステマティックレビューです。
最近の大試験でのワルファリンによる大出血率は以下の通りです。
RE-LY:3.57%(ダビガトラン150mg3.32%、110mg2.87%)
ROCKET-AF:3.4%(リバーロキサバン3.6%)
ARISTOTLE:3.09%(アピキサバン2.13%)

大出血の定義は試験ごとに異なるので、一概には言えませんが、最近はISTH大出血基準に従う者が多いようです。以下を参照ください。
http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/focus-af_anticoag/tool/keyword/i_n.html

ワーファリンの脳卒中/全身性出血の予防率が4.5%100人年と言われていますので、まあ、的確に使っていればベネフィットがリスクを上回るという訳です。

一応ワーファリンは年間2〜3%の大出血(頭蓋内出血は0.6%くらい)と覚えるとよいと思います.
by dobashinaika | 2013-02-20 23:43 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

ワルファリン服用患者の腎機能低下は大出血と関係があり、血栓塞栓症とは無関係

Thrombosis Research 1月23日付けオンライン版より

Estimated glomerular filtration rate is associated with major bleeding complications but not thromboembolic events, in anticoagulated patients taking warfarin
http://dx.doi.org/10.1016/j.thromres.2013.01.006

【疑問】ワルファリン管理良好例において、GFRは出血や塞栓のリスク因子となるか?

P:スウェーデンのSkåne University Hospitalの抗凝固療法センターで2008年に抗凝固薬を処方された登録患者3536人(2875治療年)

E/C:eGFR別

O:大出血、動脈あるいは静脈血栓

結果:
1)出血イベント=2.6/100治療年。血栓イベント=1.8/100治療年

2)平均TTR74.5%

3)大出血は年齢、INR>3.0であった時間の割合に関係

4)GFR30未満は特に高齢者で出血イベントと関係があった

5)GFRは血栓塞栓イベントとは無関係
a0119856_23182737.jpg


結論:良好にワルファリンが管理された群では腎機能が正常であれば大出血リスクは低い。良好な管理にも関わらず、重症腎機能低下者の年間大出血リスクは高い。

### この論文を待つまでもなく、RE-LY試験やROCKET-AF試験でもワルファリン群における大出血は腎機能と関連があることが示されていますね。腎代謝でもないワルファリンがなぜ?との疑問は当然起こります。

もともと腎機能(eGFR)は動脈硬化の指標と考えれば、腎機能低下は出血リスクと関連あると思われますが、具体的には腎機能低下によるCYP活性の低下やワルファリンのタンンパ結合率の変化で、ワルファリンの血中濃度が上昇するためとも言われていますね。

腎機能低下が効きすぎの方に作用するということです。そういえば腎機能はCHADS2スコアにもCHA2DS2-VAScスコアにも入っていませんが、HAS-BLEDスコアには入っていますね。
by dobashinaika | 2013-02-04 23:20 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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