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カテゴリ:抗凝固療法:ワーファリン( 69 )

日本人の至適ワーファリン管理強度はどのくらいか:J-RHYTHMレジストリーから:JC誌

Warfarin anticoagulation intensity in Japanese nonvalvular atrial fibrillation patients: A J-RHYTHM Registry analysis
Takeshi Yamashita et al
J Cardiol (2014), http://dx.doi.org/10.1016/j.jjcc.2014.07.013


疑問:日本人の至適PT-INRレベルはどのくらいか

方法:
・J-RHYTHMレジストリーのワルファリン服用患者
・2年間追跡
・虚血性脳卒中/全身性塞栓症あるいは頭蓋内出血発症時または直近のINRを比較

結果:
1)虚血性脳卒中/全身性塞栓症97例、頭蓋内出血49例

2)虚血性脳卒中/全身性塞栓症とINRの関係は西洋の報告と同じ傾向

3)頭蓋内出血はINR0.5分だけ左に移動(=より0.5低いレベルで出血が少ない)

結論:適正な抗凝固強度を確立するための基本的データ。日本の非弁膜症性心房細動患者の治療域は西洋よりも狭い可能性有り。

### 山下先生の論文。
いちおうログインが必要な論文なのでグラフは出せないのですが、大変興味深い傾向が認められます。

塞栓症の方はINR2.1くらいが最低値です。INR1.8~2.0を1とすると2.0〜2.2のオッズ比が0.383で最低で、次が2.2〜2.4で0.546とこのあたりが最も塞栓が低いことが示されています。1.6〜1.8だとオッズ比1.038でやや増加します。

1.4くらいになると3〜6倍とかなり危険になりますが、2.4以上でも減り続けることはなく、オッズ比1前後かやや高いくらいとなっています。つまりINRが3以上でも2.1くらいよりは塞栓症リスクが減ることはないようです。

一方出血の方はINRが低ければ低いほど頻度が少ないことが示されており、やはり従来言われているようにINRが主に出血のリスクであり、塞栓症のリスク予測としては捉えられないことがわかるかと思います。

塞栓症のほうでは2.0〜2.2くらいが最低のようで、これは年齢によらないという解析ですので、高齢者で1.6〜1.8くらいでよしとしているのは甘いのかもしれません。

また出血はINR2.2くらいから急速に増えますので、ベストは2.0〜2.2くらいということになるでしょう。このデータからは。やはり2.0を目指すことが良いように思えます。

限界は観察研究、年齢、CHADS2スコアなど、プライマリ・ケアセッティングよりやや若く軽症例、追跡2年程度などですね。




写真はいつもの散歩道。赤いアスファルト敷なので赤道と呼ばれています。ちょうど良い歩行者専用道路で散歩の常連の方とよく出会います。
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今日の野良猫。野良猫は、家飼いの猫より、みな精悍な顔つきですね。やせているせいもありますが。
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by dobashinaika | 2014-10-15 21:50 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

SSRIはワルファリンによる出血を増加させるか:AJC誌

AmJ Cardiol オンライン版

Effect of Selective Serotonin Reuptake Inhibitors on Bleeding Risk in Patients with Atrial Fibrillation Taking WarfarinGene R. Quinn et al
doi:10.1016/j.amjcard.2014.05.037


疑問:SSRIはワルファリンの出血を増加させるか

P:ATRIA研究13559人のうちワルファリンのフォローアップのできた9186人

E:SSRI

C:三環系抗うつ薬

O:大出血による入院:既存の出血リスクとINR3以上の時間で補正

結果:
1)大出血:461出血/32888人年
SSRI使用:45出血
三環系抗うつ薬:12出血
どちらも服用なし:404出血

2)大出血率:SSRI2.32%/人年 vs. 三環系1.30%/人年:p<0.001

3)三環系と服薬なし(1.30%)では有意差なし

4)補正後大出血リスク(対無投薬)
SSRI:RR 1.41, 1.04-1.92, p-0.03
三環系: RR 0.82, 0.46-1.46. P=0.50

結論:
SSRIはワルファリン服用患者の大出血リスクを高めた。抗うつ薬選択には注意が必要。

### SSRIがそれ自体出血リスクを高めるという観察研究はけっこうあります。さらにNSIADや抗血小板薬の併用でさらにリスクが増すとの報告もあります。
ビタミンK阻害薬の報告あり、以下の報告では消化管出血以外の出血が増えたとのことです。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=18227365

その機序としてはSSRIですので、血小板内のセロトニン濃度をも低下される→セロトニンによる血小板凝集促進作用が抑制されるためですが、ワルファリンとの相互作用としては、当然CYP2C9を阻害するため、作用が増強されることがあります。

ちょっと調べたところでは、CYP2C9代謝に影響あるのは、フルオキセチン(プリザック、日本未承認)、フルボキサミン(デプロメール)、セルトラリン(ジェイゾロフト)がありますが、添付文書では、パロキセチン(パキシル)、デプロメールだけ記載があるようです。

この報告はSSRIとワルファリンの関係を評価した中では最大のものと思われ、各種補正もしてあり一定の参考になるものと思われます。1,4倍出血を増やすとなると、今までよりさらに注意が必要かもしれません。
by dobashinaika | 2014-06-18 18:20 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

PT-INRの迅速検査はワルファリン管理を改善させる:Circulation J誌

Circulation J 4月8日オンライン版より

Introduction of Point-of-Care Testing in Japanese Outpatient Clinics Is Associated With Improvement in Time in Therapeutic Range in Anticoagulant-Treated Patients
Okuyama Y et al
http://dx.doi.org/10.1253/circj.CJ-13-1256


【背景】ワルファリは心房細動患者の脳卒中リスクを減らすが、中等〜高度のTTR管理が要求される。PT-INRのポイントオブケア(POC)検査はワルファリン服用患者のTTRを改善させるという仮説を立てた。

【方法・結果】
・PT-INRのPOC検査を提供できる8外来クリニックが参加
・POC検査導入前後最低12ヶ月間ワルファリンを内服した連続148例対象
・POC導入前後のTTRを比較

・POC導入後のTTRは、導入前に比べ有意に高い:51.9%±33.0% vs. 69.3%±26.3%;P<0.0001
・TTR改善度は、POC導入前のTTRが低い(70%未満)患者で統計学的にあきらか。
・POC導入後、INR目標値を超えた時間は変わらなかった:3.7%±10.6% vs. 3.3%±6.3%, P=0.7322
・POC導入後、INR目標値を下回った時間は明らかに改善された:44.4%±34.4% vs. 27.4%±27.6%, P<0.0001

【結論】POC検査の導入はTTR改善と相関する。特にINR目標域を下回る時間が減少する。

### 尊敬する大阪大学の奥山先生の論文です。INR管理におけるコアグチェックの有効性を示した非常に臨床に役に立つ論文と思います。

当院でもコアグチェックを使用していますが、採血後約1分でINRが測定できます。

これを使うと、使用前に比べTTRが平均52%から69%に改善し、とくにアンダードーズの期間が短縮した。というのが主所見です。

この理由として奥山先生は、
1)医師がワルファリン用量を調節しやすい。INR測定の間隔が約10日間程度短くなるため
2)その場で結果が出ることによる、ワルファリン服薬への理解の向上と服薬アドヒアランスの改善
を挙げられています。

私もこの推察のとおりと思います。
当院でも開業当初の2〜3年、検査会社に外注する形でINR測定を行っておりました。
採血結果は早くても翌日午後に伝票として届けれられていました。
当院では、当時、もしINRが至適レベルであれば患者さんには連絡しない。
上回ったら、翌日夕方に患者さんに電話をして、ワルファリンを0.5mg程度減らすように指示し、
下回っていたら、予備に渡しておいた0.5mg製剤を追加して飲むように指示していました。

こうすると、上回った場合、例えば3.5mg出していた方が3mgに減らすときは良いのですが、3mgを2.5mgに減らすときは1mgをご自分で割っていただくが、別に前もって0.5mgも処方してそちらに切り替える、あるいは3mgと2mgを隔日で交互に飲んでもらう、というようにしました。

下回った場合は、前もって0.5mgを出しておいて、そちらを追加してもらうようにしていました。

このやり方は、十分理解力のある方でないと服用量を誤る可能性があります。また、上回った場合は電話を必ずしていましたが、下回った場合、たとえば70歳以上で1.4〜1.5くらいだったら、電話をしないでそのままのこともありました。やはり下回った場合、どこかで出血は回避できるとの妙な安心感から、電話をつい怠ってしまうことがあったように思います。

コアグチェックではこの億劫感が解消されますので、下回った時間が顕著に改善されたのだと思います。

TTR69%まで改善できればもう少しでNOACも要らないレベルになりそうですね。

コアグチェックは、指先からも採血でき、当院では患者さんに好評です。しかし最大の問題は検査キットのコストですね。
これが高いゆえに導入していないクリニックも数多いと思います。安くなればもっともっと普及するように思います。
by dobashinaika | 2014-04-25 23:47 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

腎不全合併心房細動患者の脳卒中と出血のバランス:EHJ誌

EHJ 4月9日オンライン版により

Balancing stroke and bleeding risks in patients with atrial fibrillation and renal failure: the Swedish Atrial Fibrillation Cohort study
Eur Heart J (2014)doi:10.1093/eurheartj/ehu139Leif Friberg et al


【疑問】心房細動の脳卒中リスクに腎機能はどう関係するのか?

P:スウェーデンの心房細動患者登録研究で2005年から2010年までに登録された307,351例

E:腎不全:ICD-10でN19-17(=腎不全)のカテゴリー、血液透析、腹膜透析、腎移植

C;腎不全なし

O;脳卒中(虚血性、出血性)、死亡

【結果】
1)腎不全13,435人

2)虚血性脳卒中:心房細動を伴う腎不全患者に多い:腎不全例3.9% vs. 非腎不全例2.9%:HR1.02 (0.95-1.10)

3)腎不全にCHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアを追加しても脳卒中予測能の改善なし

4)腎不全は頭蓋内出血の独立リスク因子:HR1.27 (1.09-1.49)

5)多くの腎不全患者はワルファリンの利益大きい。出血高リスクにもかかわらず

6)虚血性あるいは出血性脳卒中、死亡に関する複合エンドポイントの発症率はワルファリン使用例で、非使用例より低い:HR0.76 (0.72-0.80)

【結論】心房細動と腎不全を併せ持つ患者は、治療閾値の高低にかかわらずそうでない他の心房細動患者に推奨されているのと同様の治療から最も利益を受ける。腎不全に他のスコアリングを加味しても、脳卒中予測能は不変

### 以前の報告同様、腎不全は虚血、出血両方のリスクを高めるが、より出血リスクの方のハザード比が大きいようです。
http://dobashin.exblog.jp/15985901/

またCHADS2スコアなどの脳卒中予測スコアに腎不全を加えても予測能が上がらないとすることも以前の報告に類似があります。
http://dobashin.exblog.jp/17798313/

他の出血リスク、例えば抗血小板薬併用や重症高血圧などでなければなるべく使うようにというメッセージかと思います。

一番のlimitationは腎不全の診断ですね。カルテベースで、eGFRは用いていないとの記載があります。
by dobashinaika | 2014-04-16 23:11 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

超高齢者におけるワルファリンのネットクリニカルベネフィット:Circ A/E誌

Circulation A/Eより

Net Clinical Benefit of Warfarin Therapy in Very Elderly Chinese Patients with Atrial Fibrillation
doi: 10.1161/CIRCEP.113.000858


【疑問】超高齢者のワルファリン治療におけるネットクリニカルベネフィットは?

P:80歳以上の非弁膜症性心房細動2,339人(中国人)

E:ワルファリン

C:抗凝固療法なし

O:複合エンドポイント:虚血性脳卒中による入院あるいは死亡:平均追跡2.2年

【結果】
1)主要エンドポイント発症:1861人、79.6% ワルファリン群66.9%、非抗凝固療法群80.8%;HR: 0.53, 95% CI:0.48-0.58, p<0.001

2)死亡率:ワルファリン群:HR: 0.40, 95%CI: 0.37-0.45,p<0.0001

3)虚血性脳卒中:ワルファリン群:HR: 0.64, 95%CI: 0.54-0.77,p<0.0001

4)ネットクリニカルベネフィット:虚血性脳卒中510に対し頭蓋内出血42

5)非抗凝固療法群年間虚血性脳卒中発症率:11.3%、頭蓋内出血発症率:0.6%
ワルファリン群年間虚血性脳卒中発症率:7.1%、頭蓋内出血発症率:1,1%

6)ネットクリニカルベネフィットはすべての高齢者においてワルファリンがより良好

7)脳卒中と頭蓋内出血の高リスク例においてネットクリニカルベネフィットが最も良い

8)高リスク例においてはワルファリンは、非抗凝固療法群にくらべ7.2〜8.0イベント/人年少ない

【結論】超高齢者では、ワルファリン治療は低い死亡率よ虚血性脳卒中率、ネットクリニカルベネフィットに関連していた。

### 高齢者でもワルファリンのネットクリニカルベネフィットは良好ということで、これまでの各種報告に沿った内容ですね。TTRは気になるところです。あとアドヒアランスや転倒リスクなども。全文に当たれれば調べてみます。

ただ、エンドポイント発症が79.6%って、いくら80歳以上でも多すぎないでしょうか?これも本文にあたってみたくなる点のひとつです。
by dobashinaika | 2014-03-11 00:12 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

心房細動合併心筋梗塞例に対するワルファリン投与:JAMA

JAMA 3月5日号より

Warfarin, Kidney Dysfunction, and Outcomes Following Acute Myocardial Infarction in Patients With Atrial Fibrillation
Juan Jesús Carrero et al
JAMA. 2014;311(9):919-928. doi:10.1001/jama.2014.1334.


【疑問】腎機能低下例は、心筋梗塞のワルファリンによるアウトカムに影響するのか?

P;心房細動合併急性心筋梗塞生存者連続登録24,317人:スウェーデン。eGFR別に層別化

E:ワルファリン使用

C:ワルファリン非使用

O:1)複合エンドポイント:死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中による再入院 2)出血:出血性脳卒中、消化管出血による再入院。貧血につながる出血 3)退院1年以内の上記2結果のいずれか

T:コホート研究:SWEDEHEART登録:2003〜2010年

【結果】
1)退院時ワルファリン使用者は21.8%。CKD(eGFR60未満)は51.7%

2)一次エンドポイント:eGFRにかかわらずワルファリン使用者は非使用者よりリスク低い:eGFR60以上でハザード比0.73(0.65−0.81)

3)出血イベント:eGFRにかかわらすワルファリン使用者と非使用者でリスク同等:eGFR60以上でハザード比1.10(0.86−1.41)

4)一次と出血の集合アウトカム:eGFRによらずワルファリン使用者で低い:eGFR60以上でハザード比0.76(0.69-0,84)

【結論】ワルファリン治療は、心房細動合併心筋梗塞例において退院1年後の複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、脳梗塞)を減らし、出血は増やさず。この結果は腎機能に影響されない。

### RELYでもROCKET AFでも、ワルファリン群においてさえ腎機能低下に伴い出血リスクは増えたというデータが有るのですが、この登録研究ではあまり影響しないようです。iNRの管理状況がよかったからでしょうか?それとも非使用者でも出血イベントが多かったためか。全文にあたってみます。

同じスウェーデンからの報告では、特に高齢者で腎機能低下例では出血が多いようです
http://dobashin.exblog.jp/17265498/

抗血小板薬の併用状況も知りたいところです。

この結果からは、急性心筋梗塞患者が退院時に心房細動を合併していたら、腎機能低下をあまり気にすることなくワルファリンは必ず処方を考慮するという方向性が導かれますね。
あくまで観察研究ですが。
by dobashinaika | 2014-03-06 19:35 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

経食道エコーで血栓がないことを確認したら心房細動にはアスピリンでも良いのでは?;Heart誌

Heart 1月31日オンライン版より

Aspirin versus vitamin K antagonist treatment guided by transoesophageal echocardiography in patients with atrial fibrillation: a pilot study
Heart doi:10.1136/heartjnl-2013-305017


【疑問】経食道エコーで血栓がないことを確認したらアスピリンでも良いのでは?

P:中等度リスクの非弁膜症性心房細動238例:経食道心エコーで心房内、大動脈内に血栓がないことを確認

E:アスピリン

C:ビタミンK阻害薬

O:主要アウトカム:脳卒中+大出血+末梢塞栓+全死亡

【結果】
1)平均CHA2DS2-VAScスコア2.1点、平均1.6年追跡

2)主要アウトカム:アスピリン3.2% vs. VKA6.1% :p<0.0001(非劣性)

【結論】
この予備調査で、経食道心エコーが発作性心房細動の脳卒中リスク最評価に有用である可能性が示唆された。大規模試験が必要

### 大変興味深いですね。中リスク例では経食道心エコーで血栓なしならアスピリンでOKという結論です。
主要アウトカムのうち、何が効いていたのか、知りたいところです。

日本でアスピリンがだめとなったJAST試験は、CHADS2スコア1点くらいの低リスク対象でした。CHA2DS2-VAScスコア2点なので、同等のリスクくらいかと思われます。

ただしこの集団で経食道心エコーで血栓が認められた例がどのくらいいるのかも勘案する必要がありますし、やはりメカニズムから言って抗血小板薬が左心耳血栓予防に効く可能性は薄いと思いますので、もう少しデータがないと今の日本のガイドラインは覆せないと思われます。
by dobashinaika | 2014-02-10 00:09 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

透析患者へのワルファリン使用は脳卒中リスクを低下させず出血は増やす:Circulation

Circulation 1月22日 オンライン版より

Warfarin Use and the Risk for Stroke and Bleeding in Patients with Atrial Fibrillation Undergoing Dialysisdoi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.113.004777

【疑問】透析施行中の心房細動患者におけるワルファリンと脳卒中及び出血リスクの関係は?

P:カナダ、ケベック州とオンタリオ州で心房細動のために入院した65歳以上の患者(204,210人)のうち透析施行例1,626人(1998年〜2007年);後ろ向きコホート

E:ワルファリン使用例

C:ワルファリン非使用例

O:ワルファリン使用(退院30日以内)による脳卒中と出血の有無

【結果】
1)ワルファリン処方率46%:ワルファリン処方例で非処方例に比べ心不全、糖尿病が多く、先行出血は少ない

2)ワルファリン使用と脳卒中リスクは関連なし(ハザード比1.14;0.78〜1.67)

3)ワルファリン使用例で出血多い(ハザード比1.44:1.13〜1.85)

4)Propensityスコアで補正しても同様結果

【結論】
今回の結果からは、透析施行中の心房細動患者におけるワルファリン使用は脳卒中リスクを減らさず、出血リスクを高めた。

### 透析患者における抗凝固療法のリスク/ベネフィットについては、いいエビデンスがありません。
重症患者さんですので無作為割付は難しい面があるからでしょう。

その辺のことは以前ブログでも取り上げたレビューに詳しいです。
http://dobashin.exblog.jp/12326439/

この研究も後ろ向きコホートですので、バイアスはいっぱいです。
そもそもCHADS2スコア、HAS-BLEDスコアが不明です。非使用例でCHADS2スコアが低く、いきおいHAS-BLEDスコアが低いので出血がより少なかったのかもしれません。

INR管理状況も不明です。

ただし、後ろ向きながらこれまでこのくらいの規模のコホート研究はなかったように思います。
各種ガイドラインな土にも記載はないようです。YpToDateではCHADS2スコア2点以上で一応ワルファリンが推奨となっていたかと思いますが、その推奨にある示唆を与える研究かもしれません。
by dobashinaika | 2014-01-29 23:56 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

抗菌薬に関わらず上気道感染はワーファリンの作用を増強させる;米保険会社データベースより:JAMAIM

JAMA Intern Med 1月20日付オンライン版より

Warfarin Interactions With Antibiotics in the Ambulatory Care Setting doi:10.1001/jamainternmed.2013.13957


【疑問】抗菌薬はワーファリン管理にどのように影響するのか?

P:コロラド州のカイザー保険加入者で2005年1月〜2011年3月までにワルファリンを投与された患者

E:抗菌薬投与:5857例48.8%

C:健常でワルファリンのみ(stable control):5579例46.5%、上気道感染ありで抗菌薬なし(sick control):570例4.7%

O:INR5.0以上の患者の割合。登録日前の最後のINR測定とフォローアップINR間の変化

T;後ろ向きコホート

【結果】
1)平均68.3歳。心房細動44.4%

2)INR5.0以上の割合:抗菌薬群3.2%、sick control 2.6%、stable control 1.2%
抗菌薬vs stable;P<0.001, sick vs stable;P<0.017, 抗菌薬vs sick; P=0.44

3)がんの診断、ベースラインINRの上昇、女性はINR5.0以上の予測因子

4)抗菌薬群の中で、ワーファリン代謝に干渉するものはINR5.0以上の大きなリスク

【結論】
急性上気道感染は、抗菌薬使用の有無にかかわらず抗凝固作用過多のリスクを増加させる。抗菌薬もリスクではあるが、それまでワーファリン管理が安定している患者においては、抗菌薬投与あるいは上気道感染がINRを増させることにはならない。

### 抗菌薬使用の有無にかかわらずワーファリン管理には感染症それ自体が影響するとのことです。

一般にマクロライド系やアゾール系抗菌薬はINRを増加させることが知られています。
しかし私自身は、外来で単なる上気道感染に抗菌薬を使うことはほとんどありませんので、抗菌薬で1INRが変動したという経験は殆ど無いというのが実感です。

今回の論文では抗菌薬に関係なく感染そのものが良くないといいう結論ですが、本当なのかなという気がします。
感染症→脱水→腎機能低下→INR増強などの機序が思い浮かびますが。

一番の限界として保険会社のデータベースである点です。上気道感染と言ってもどの程度のものなのか、脱水をきたすような重症なものから単なるかぜまで様々と思われます。また後ろ向きコホートですから、交絡因子多数です。

また抗菌薬で何を使ったかも気になるところです。
ワーファリンと抗菌薬の併用については以下のブログに大変詳しい考察があります。
http://syuichiao.blogspot.jp/2012/12/blog-post.html

まあ上気道感染時はINR管理に注意、特に抗菌薬使用時には更に注意という警告として受け止めておきたいですね。
NOACでさえ、抗菌薬の併用注意はありますので私としては、上気道感染症であれば安易にクラリスなど処方しないことをまず肝に銘じたいです。

上記ブログではアゾール系、セフェム、ST合剤のオッズ比が高いとの報告が紹介されていますが、プライマリケアセッティングでセフェムは殆ど使わないし、アゾール系も無理して使う場面も少ないです。膀胱炎でバクタは重宝しますが、まあ3日間処方ですし。

どうしても使用せざるをえない時はINRをややこまめにモニターしつつペニシリン系などで切り抜けるというスタンスでやっています。
by dobashinaika | 2014-01-24 23:54 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

消化管出血後の抗凝固薬はいつから再開すべきか?;AJC誌より

Am J Cardiol 11月25日号オンライン版より

Restarting Anticoagulation and Outcomes After Major Gastrointestinal Bleeding in Atrial Fibrillation.

【疑問】消化管出血後,いつから抗凝固療法を再開すべきか

【方法】
・抗凝固療法施行下にもかかわらず消化管出血をきたした症例の後ろ向きコホート(2005〜2010年)
・1329例;平均76歳,女性45%

【結果】
1)ワルファリンが再開されたのは663例49.1%

2)ワルファリン再開は血栓塞栓症減少と関連あり:ハザード比0.71,95CI0.54-0.93.p=0.01

3)ワルファリン再開は死亡率減少と関連あり:ハザード比0.67,0.56-0.81,p<0.0001

4)ワルファリン再開は消化管出血再発とは無関係

5)出血7日後のワルファリン再開は,30日後の再開に比べ消化管出血リスク上昇とは無関係かつ,死亡率,血栓塞栓症減少とは関連あり

【結論】消化管出血7日後の再開は,消化管出血を再発することなく死亡率と血栓塞栓症減少に関連した

###このような報告は非常に貴重です。なぜなら,ワーファリン飲んでて消化管出血が起きたら,その後ワーファリンをどうするか本当に困るからです。再開して良いのか,再開するとしたらいつからが良いのか?全く先人のデータがなかったら,雲をつかむような話だからです。

EBMというのは,このように薬は続けたい,で副作用も怖いというようなジレンマ的状況に一つの光明を与えるようなものでなければなりません。出血しました→さて,その後ワーファリンを再開するべきかどうか。迷いに迷いますが,いずれは決めなければればならない難題です。臨床の現場はこのように二律背反的な一見判断不可能な問題にも関わらず,どちらかに決めなければならないという不可避的な問題の連続です。そこにわずかながらでも道筋をつけてくれるのがエビデンスなのだろうと思います。

同様の研究は以下を参照ください。
http://dobashin.exblog.jp/16227361/

こうした問いを発すると,より細かい問い,例えばINRをいくつにすべきか,低めにしたほうが良いか,輸血を必要とするような場合でも早期再開が良いのか,上部と下部では違うのか,といった問いが次々と出てきます。そうした問題設定の増殖がEBMのもう一つの特徴であり醍醐味であるように思います。

ただし後ろ向きコホートの限界には注意が必要。再開しなかった例が半数ですが,より出血が重篤かもしれず,両群間での背景因子に差がある可能性もあるので。
by dobashinaika | 2013-12-25 23:40 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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