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カテゴリ:不整脈全般( 12 )

症状がない不整脈をどうすべきか:欧州不整脈学会による無症候性不整脈の管理に関するコンセンサス文書 #CardioJapan

欧州不整脈学会(EHRA)から無症候性不整脈の管理に関するコンセンサスが出ています。


これまた膨大ですが,
‘Should do this’  「すべき」
‘May do this’     「してもよい」
‘Do not do this’    「してはいけない」
の3カテゴリーで分けているのも非常にフレンドリー

<無症候性心房期外収縮,非持続性心房頻拍>
・高頻度(>500回/日)心房期外収縮にたいしての長時間モニタリング:「すべき」(Expert consensus )

・高頻度心房期外収縮に対するリスク因子(高血圧,体重管理,睡眠時無呼吸)の管理と器質的心疾患の評価:
「すべき」(Expert consensus )

・短時間心房細動それ自体は抗凝固薬の適応ではない。高頻度(>500/日または20回未満のショートラン)では抗凝固開始を考えても良い:「してもよい」(Expert consensus )

・心房細動が記録さていない,低〜中等度心房期外収縮への抗凝固療法:「すべきでない」(Expert consensus )

<無症候性早期症候群(WPW含む)>
・間欠性デルタ波または電気生理学的検査で高リスクを示さないケースへのアブレーションなしのフォローアップ:「すべき」

・リスク層別化のための電気生理学的検査。高リスク例(副伝導路の不応期<240ms,早期興奮性心房細動あり,複数副伝導路)へのカテーテルアブレーション:「すべき」

・高強度またはプロのスポーツ選手,職業リスクの高い人へのアブレーション:「してもよい」

・アブレーションおよび無症候性を治療しないことのリスクを受容することに関する患者,家族との詳細な話し合い:「すべき」

<心房高頻度エピソード:AHRE(非持続性心房細動)>
(デバイス記録で最短5分,>心房レート180bpm,または少なくとも30秒の心房細動)
・AHREありは,なしに比べて脳卒中の高リスクと考える:「すべき」

・抗凝固薬投与までのさらなる詳細な検討(抗凝固薬の有効性は不明なので):「すべき」

・一部のCHA2DS2-VAScスコア>2の患者への抗凝固療法:「してもよい」

・AHREのみへの抗凝固療法:「すべきでない」

<無症候性心房細動>
・脳卒中リスクスコアに基づく無症候性心房細動の抗凝固療法(症候性同様):「すべき」

・高リスク(CHA2DS2-VAScスコア≧2)のスクリーニング:「してもよい」(Expert opinion )

・生活スタイルの変容:「すべき」

・真に無症候性か,あるいは心房細動に関連する何らかの症状があるのかを区別するための除細動:「してもよ
い」

・頻脈性心筋症予防のためのレートコントロール:「すべき」

・詳細なIC後の患者の好みに基づく限定的なアブレーション:「してもよい」(Expert opinion )

図はEHRAから以前も出ている心房細動患者へのABCパスウェイです。
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<心室期外収縮>
・高頻度の心室期外収縮(>500/日)を持つ患者の専門医への紹介(器質的心疾患,電気的異常同定のため):「すべき」

・非常に高頻度な心室期外収縮(>1日20%)への高密度なフォローアップ(突然死や心血管死の指標なので):「してもよい」

・頻脈性心筋症を合併した心室期外収縮への治療:「すべき」(Expert consensus )

・予後改善のための基礎心疾患の治療:「すべき」(Expert consensus )

<心室頻拍>
・無症候性非持続性心室頻拍に対する十分な評価(基礎心疾患,虚血,電気的異常)
「すべき」

・急性冠症候群ではない,LVEF<35%の持続性心室頻拍へのICD:「すべき」

・LVEF>40%の非持続性心室頻拍における基礎心疾患治療の最適化(特別な抗不整脈治療は必要なし):「すべき」

<頻脈誘発性心筋症>
・他の要因(心筋梗塞,弁膜症,高血圧,アルコール,薬剤性,ストレス性など)の除外:「すべき」

・心不全,心房細動(レートコントロール)の薬物療法:「すべき」

・持続性or反復性心房/心室性不整脈へのアブレーション:「してもよい」

<無症候性徐脈>
・無症候性の重症徐脈 or 6秒以上の心停止を認める失神患者への診断と治療:「すべき」

・完全に無症候性の徐脈への治療:「すべきでない」

<患者の視点>
・状況理解,可能な治療法,疾患の見通し,考えうるアウトカムに関する患者,家族への教育:「すべき」
・疾患と治療についての情報をハートケアチームから何度も,あるいは新しい戦略が導入されるときに伝えること:「すべき」
・治療に対する患者の意向と意思決定への参画:「すべき」

### これまたEHRAからの詳細で親切なコンセンサスの提示です。
無症候性の不整脈をどうするか,現場では悩むことも多いですが,3段階に分けて明確に教えてくれます。

高頻度の短時間心房細動もCHA2DS2-VAScスコア2点以上なら抗凝固療法考えても良いとなっていて,ASSERT試験の治験に基づくものと思われますが,ちょっと攻めすぎの感もあります。Expert consensus も多いですね。

しかしながら現場の参考には大いになります。

$$$ 本日は仙台,桜に雪です。
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by dobashinaika | 2019-04-12 00:37 | 不整脈全般 | Comments(0)

南山堂の雑誌「治療」3月号特集「救急じゃない心電図」が発売されました。

私が編集幹事を担当させていただきました,南山堂の雑誌「治療」3月号特集「救急じゃない心電図」が発売されました。

自分で言うのもなんですが拾い読みするだけでもすごい勉強になりました。
いまさら心電図?という疑問に少しでも答えられれば幸いです。
序文はあいからわずAIネタです。
今月はもう1つ担当した雑誌が出ますのでよろしくお願いいたします。
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序文「今月の視点」及び巻末の「心に残った言葉」を引用させていただきます。

来るべきAI時代,にもかかわらず心電図を読む「意味」とは?
 1903年,オランダの生理学者Willem Einthovenは,心臓の電気活動を記録することに成功し1924年ノーベル賞を受賞しました。当時の心電図はすでに現在と変わらない正確さでしたが,その時点では単なる「曲線」にしか過ぎませんでした。それに「意味」を与えたのが,田原淳博士による刺激伝導系の解明でした。解剖学的研究により,単なる波の一つ一つが意味を持つようになったのです。
 心電図はその後の研究により,「心臓疾患」というさまざまな意味も持つことがわかりました。未だに循環器疾患の基本的ツールとして揺るぎないのは,その簡便さとそれに比して多くの意味を私たちに教えてくれるからです。ごく最近まで私たちはこの単なる「曲線」から様々な意味を読み取るべく勉強したのでした。
 今,そうした勉強をしなくてもその意味を人間よりも正確に教えてくれる先生が出現しようとしています。そう,AI(人工知能)です。すでに開発が進んでいる通り,近い将来心電図の読影は恐ろしい正確さでAIが行ってくれるでしょう。その時私たちの出番はなくなるのでしょうか。
 いや,そんなことはないでしょう。AIが教えてくれるのはあくまで心電図という電気信号が発する意味です。特に救急の場ではなく十分時間が与えられている場合,その意味が,患者さんの「全身状態」という文脈の中でどのような別の意味に変換されるのか。さらには心電図の意味が,その患者さんの生活世界という文脈の中にどのような新しい意味を持つのか。AIが与えた意味を,さらに大きな文脈の中の意味に変換することが重要になると思われます,それはAIにはできない,そしてそれこそがこれからの医師に求められることかもしれません。文脈の中の心電図の意味,本企画がそんな事を考えるきっかけになれば幸いです。
出典(雑誌「治療」2019年3月号「今月の視点」より)

「なぜ意思決定支援なのか?欲望決定支援でなぜいけないのか?」
 2018年9月23日、超満員の東京大学駒場キャンパス大教室で行われたシンポジウム「オープンダイアローグと中動態の世界」において哲学者の國分功一郎さんの講演で語られたのがこの言葉で、FBやツイッターでも大いに話題となりました。
 インフォームドコンセントの名の下に、結局は患者さんに意思決定の責任を押し付けてはいないか。良心的な医師なら誰しもこう思うことがあるのではないでしょうか。國分さんはそうした意思決定は「冷たいもの」であり、より熱い「欲望」に患者さんが自ら気付くことを支援せよと訴えます。
 実際、患者さんの欲望は複雑です。「脳梗塞にはなりたくない、でも美味しいものは食べたい」。こうした単純でない欲望を良い方向に形成していくための支援はすごく難しいように思います。でもだからといって本当の欲望かもわからない「意思」を仕立て上げ責任を押し付けるような支援はしたくない。この言葉は臨床家に、膝打ちをさせながらも重い宿題を背負わせる。そんな提言かもしれません。
出典(雑誌「治療」2019年3月号「編集幹事の先生に聞く心に残った言葉」より)



by dobashinaika | 2019-03-02 22:28 | 不整脈全般 | Comments(0)

2017年版失神患者の評価と管理に関するガイドライン(米国):JACC誌


2017年版の失神に関するAHA/ACC/HRSガイドラインです。
ACCのメルマガで13項目にまとめてくれています。

1.失神患者は詳細な問診と身体診察を行うべきである(推奨度 I)

2.失神患者の初期評価には,12誘導心電図が有用である(I)
原因と短期及び長期リスクの評価も勧められる(I)

3.重篤な臨床症状を呈し,失神が特定の要因と関連ある場合は入院での検査治療が勧められる (I)

4,ルーチンで包括的な検査の有効性はない(III,効果なし)
心疾患が疑われなければルーチンの心臓画像診断は勧められない(III,利益なし)
巣症状を呈しない場合の頚動脈画像検査は勧められない(III 利益なし)

5,血管迷走神経失神が最もコモンである。薬物療法の効果は中等度。診断と予後についての患者教育が勧められる(I)

6.40歳以上で繰り返す迷走神経失神ででは,デュアルチャンバーペーシングが勧められることがある(IIb)
β遮断薬は小児の迷走神経失神には勧められない(III,利益なし)

7.起立性低血圧が疑われる失神では,神経学的コンディッション,脱水,薬物の影響を考える
急速な補液が,推奨される(I)
低血圧の原因となる薬物の中止や減量が,ある患者には有効である(IIa)

8.徐脈,頻脈,器質的心疾患に伴う失神は,ガイドラインどおりの管理治療が勧められる(I)

9.ブルガダ型心電図や反射関連の失神で他のリスク因子のない場合,植込み型除細動器(ICD)は勧められない(III,利益なし)

10.QT延長症候群,不整脈による失神が疑われ,禁忌がない場合はβ遮断薬が第一選択である (I)
β遮断薬服用中あるいは服用できない例での失神にはICDが勧められる (IIa)

11,カテコールアミン感受性多形性心室頻拍 (CPVT)では,運動制限が勧められる (I)。
CPVTやストレス誘発性失神は,内因性刺激のないβ遮断薬が勧められる (I)

12.電気生理学的検査は不整脈が原因の限られた失神患者には有用である (IIa)

13.運動選手の失神の場合,運動再開に先立って心血管系の精査が勧められる (I)
肥大型心筋症,CPVT,QT延長症候群(タイプ I),不整脈原性右室異形成のある失神患者の競技への参加は,専門家の評価なしでは勧められない (III,害)

### 検査前確率が検査の意思決定を左右することを再確認

$$$ 仙台はようやく梅が見頃です。
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by dobashinaika | 2017-03-21 19:07 | 不整脈全般 | Comments(0)

発作性上室頻拍の止め方:2015年ACC/AHA/HRSガイドラインより:JACC誌

ACC/AHA/HRSから上室頻拍の管理に関する新しいガイドラインがでています。開業してからあまりお目にかかりませんが,それでも時に頻拍に出くわすとやや緊張します。
このへんでおさらいの意味で,急性期治療につきまとめてみます。

2015 ACC/AHA/HRS Guideline for the Management of Adult Patients With Supraventricular Tachycardia
A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society
Richard L. Page et al
J Am Coll Cardiol. 2015;():. doi:10.1016/j.jacc.2015.08.856


まずは「上室頻拍(SVT)の定義」
・「頻拍」とは心房 and/or 心室拍数>100bpm
・SVT:ヒス束より上位が関与する頻拍
・inappropriate sinus tachycardia(不適切な洞性頻拍),心房頻拍(単一起源,多起源),マクロリエントリー心房頻拍(心房粗動),接合部性頻拍,AVNRT(房室結節リエントリー性頻拍),副伝導路の関与するリエントリー性頻拍

<発作性上室頻拍の定義>
・規則正しく速い頻拍。突然発症停止
・AVNRT,AVRT(房室リエントリー性頻拍),心房頻拍

<機序のわからない規則正しいSVTの急性期治療>
迷走神経操作 and/or アデノシン静注

効果ない場合,行えない場合

血行動態安定

はい)β遮断薬,ジルチアゼム,ベラパミル静注→効果なし→カルディオバージョン
いいえ)カルディオバージョン

<迷走神経操作について:推奨度I,エビデンスレベルB-R>
・迷走神経操作(バルザルバ手技,頚動脈洞マッサージ)の迅速な施行はSVT停止の第一選択
・仰臥位で行う
・房室結節の関与しない頻拍には無効
・バルサルバ手技:ゴールドスタンダードな方法なし。一般には喉頭蓋を閉じての10〜30秒の息ごらえは胸痛内圧30〜40mmHG増加に相当
・頸動脈洞マッサージ:聴診による血管雑音のないことを確かめる。右または左の頸動脈を5〜10秒一定の圧力で押す
・他の方法:ダイビング反射(冷たい氷や濡れタオルを顔につける。検査室で回を10度の水に浸す
・148例の検討では,バルサルバ手技が頸動脈洞マッサージよりも効果的。複数主義による停止率27.7%
・眼球圧迫は危険でありすべきでない

<アデノシン静注:推奨度I,エビデンスレベルB-R>
・AVRT,AVNRTに対する停止率は78〜96%
・副作用として胸部不快感,息切れ,顔面紅潮などがあるが,超短時間作動なので,重篤なものはまれ
・心房粗動,心房頻拍との鑑別にも有用:アデノシンがこれらを止めることはまれ
・近位部からの急速静注+生食フラッシュが勧められる
・静注中は心電図を連続して取ることで診断にもつながる

<血行動態不安定時のカルディオバージョン:推奨度I,エビデンスレベルB-NR>
・迷走神経操作が失敗し,血行動態不安定であれば,速やかにカルディオバージョンを施行すべき

<血行動態安定時のカルディオバージョン:推奨度I,エビデンスレベルB-NR>
・SVT停止には極めて効果的
・全身鎮静あるいは麻酔下
・薬物静注で80〜98%は止まるとしても,まれに止まらないことがあるので,カルディオバージョンが必要な場合もある

<ジルチアゼム,ベラパミル静注:推奨度II-a,エビデンスレベルB-R>
・停止率:64〜98%
・あくまで血行動態安定時
・低血圧を招くことがあるので,20分程度の緩徐な静注が良い
・心室頻拍と早期興奮を伴う心房細動には禁忌
・β遮断薬が不適あるいはアデノシンで再発を繰り替えす場合にも有用
・収縮期心不全には不適

<β遮断薬静注:推奨度II-a,エビデンスレベルB-NR>
・エビデンスは限定的
・エスモロールとジルチアゼムではジルチアゼムが優る
・しかしながら,β遮断薬は安全で血行動態安定例での使用はリーズナブル

### SVTは,心室内変行伝導を伴う場合を除き,基本的に幅の狭い(120msec未満)QRSで規則正しい頻拍症です。そうした頻拍を見た場合,まず迷走神経操作を試みる。成功率は27%程度ながらこれで止まれば注射はいりません。

しかし一般的には止まらないことが多いので静注となります。専門医時代はアデノシンを躊躇なく使っていましたが,町医者としては患者さんに苦痛を与えることは忍びなくまた結構緊張するため,ほとんどベラパミルの静注を行っています。

当院では1Aを生食20CCにといて,まず半分を5分程度で静注し,その後数分観察,止まらなければもう5分かけて残りを入れます。血行動態が安定した若い人は5分で全部入れても良いと思われます。これで30分程度観察すると90%は止まると思われます。それでも止まらない場合は紹介します。

静注する前に血圧,心不全の有無を十分把握することが必須です。

$$$本日の夕焼け。怖いくらいに燃え盛りました。
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by dobashinaika | 2015-10-10 22:34 | 不整脈全般 | Comments(0)

長期間宇宙飛行と不整脈:Journal of Arrhythmia誌

Journal of Arrhythmia Volume 30, Issue 3 , Pages 139-149, June 2014
Cardiac arrhythmias during long-duration spaceflights
Tagayasu Anzai et al


1.イントロ

2.歴史

2.1 アポロ計画
・2人:心室期外収縮、心房期外収縮。1人は低カリウムが原因

2.2 スカイラブ計画
・いくつか報告あり、多くは心室期外収縮
・下半身陰圧訓練中の心室期外収縮ショートランや心房期外収縮の報告あり
・一人に宇宙遊泳中に多源性心室期外収縮

2.3 MIR計画(ロシア)
・一人で心室頻拍14連発(215/分)が認められた:K, Ca異常が原因の可能性
・75の不整脈と23の伝導傷害が報告された

2.4 スペースシャトル計画
・14人中9人で宇宙遊泳中に不整脈あり;電解質異常が原因の可能性

3.宇宙飛行の心臓への影響
・重力の体液への影響:極微重力は体液が頭部に変位し、離陸後すぐに心拡大や心拍出量が増大
・ドイツのミッションでは離陸10日後、左室重量が12%減少
・STS-107ミッションでは離陸直後に心拍出量が29%増加
・地球帰還後血液量が10−20%低下し起立性低血圧が増加との報告あり

4.長期宇宙飛行時の心血管問題の可能性

4.1 QT延長あるいは他の心電図変化
・MRIとISS(国際宇宙ステーション)のミッション中、24%でQTcが0.45以上に延長
徐脈、クルーの服用する薬剤(抗菌薬、抗うつ薬、ベラパミル、プロプラノロールなど)、自律神経異常などが原因
・Microvolt T-wave alternates(MTWA:T波交代現象)
9−16日間の頭部ティルトダウン試験では17−42%にMTWAが出現

4.2 放射線
・56Feイオン0.1−0.2Gy暴露で15ヶ月後のマウスの冠動脈変性を認めた実験あり
・40歳男性が、火星での往復1000日のミッションを担った場合の放射線暴露による超過死亡リスクは1.3〜13%

4.3 精神的ストレス
・大地震、9.11事件での心疾患死やICD作動率増加の報告あり

4.4 低カリウム
・アポロ計画ではクルーの低カリウムが認められた
・長期飛行による尿中カリウムの増加→筋萎縮、不適切摂取
・ISSミッションでは1日3.2gのカリウム摂取

5. 長期飛行中の致死性不整脈の可能性
・The 2004 NASA Bioastronautics Critical Path Roadmapでは宇宙飛行の第一の心血管リスクとして重症不整脈と心血管機能低下が規定されている
・短期〜中期飛行での致死性不整脈リスクは年間1%

6. 非致死性不整脈

6.1 心房細動
・心房細動を含む上室頻拍はISSでの医学的不適合条件として考慮される
・同年代の若年者に比べ、宇宙飛行士は心房細動有病率が高い
・NASAのコホート研究では2001年から100人中5人が心房性不整脈のアブレーションを受けた
・環境の変化、運動訓練などの関与

6.2 心室期外収縮
・アポロ計画では多数のVPCの報告があったがミッション中止例はなし

7. スクリーニング
・身体診察、心電図、ホルター、血液検査、心エコー、トレッドミル、冠動脈カルシウムスコアなど

8. 長期飛行のために将来的に可能性のある心臓検査
8.1 
8.2 遺伝子検査
・LQRS, Brugada, ARVC, 心房細動

8.3 画像診断
・MDCT, MRI:日本の宇宙飛行士は 2008−2009年参加の際、320列MDCTを受けている

9. 現在飛行中に施工可能な治療
・宇宙飛行士は、飛行18ヶ月前以内に40−70時間の医学的トレーニングを受ける
・その後の学習効果は不明
・NASAにはCHeCSと呼ばれる医学組織があり、飛行士の健康管理を行っている

9.1 アドバンストライフサポートパック
・AED,気道確保、緊急手術、経口薬、静注、血圧計などあり

10.致死性不整脈の院内治療(省略)

11.ISS治療と病院内治療の違い
・極微重力下では生理食塩水バックの空気が消えないで残るので、血圧計カフを巻いて絞りだす必要あり
・CO2ディテクターが使えないので、古典的な方法での挿管となり、食道挿管になってしまう
・ISS内ではエピネフリン、リドカイン、アトロピンの3剤しか使えない
・ISS内では通常の胸部圧迫法心臓マッサージはできないので、Evetts–Russomano method が用いられる
・自動心臓マッサージが有効だろう

12. 今後の対策
・致死性不整脈診断のための遠隔医療システム
JAXAが開発中。地球から宇宙飛行士の心音や心電図を診ることができ、その上で指示を出せる
新システムの電子聴診器が有用
・過度の被曝からの防御
酸化ストレス防止のためのビタミンE,C,Aなどの摂取は必要
しかし宇宙船内では、果物や野菜の長期保存は無理
船内での栽培が考えられるが、水の確保が困難
放射線シールドの開発が期待される
・オメガ3不飽和脂肪酸摂取
・カリウム、マグネシウムの適正摂取

13. 結論
長期飛行にはたくさんの障害がある。クルーは将来、ISSでは経験したこのとのないような多くの医学的問題に出会うであろう。不整脈は将来克服すべき最大の医学的課題のひとつ。遺伝的不整脈は致死的であり、将来遺伝子検査が火星への飛行前に加わる可能性あり。新しい薬剤やデバイスがより重要。人類は宇宙の新しい地平を切り開き、新しい技術や設備、医学的治療を開発し、新しい地平に適応するよう運命づけられていると信じる。

### 七夕の日にふさわしい話題を取り上げてみました。

非常に面白かったので、全部まとめてしまいました。かなり端折ったり、意訳もありますので、ご注意ください。
様々なファクターが絡んでいることに驚きます。100人中5人の宇宙飛行士が心房性不整脈のカテーテルアブレーションを受けているのですねー。

火星まで行くのに、1.3〜13%の死亡リスク増加とは、考えさせられますね。

宇宙船内での心臓マッサージも難しいそうで、とにかく大変な環境です。
今後、宇宙飛行士の方々を見る目が変わりそうです。
by dobashinaika | 2014-07-07 21:49 | 不整脈全般 | Comments(0)

超高齢者の心房細動管理などなど

休みの日なので、というわけでもないですが、ちょっとだけ宣伝を

CardioVascular Contemporary(メディシンラトル社)というとってもおしゃれな雑誌に「超高齢者の心房細動管理」という題名で拙文を寄せました。
ガイドラインには80歳以上の心房細動に対する抗凝固療法のことなど、さらっとしか触れていませんが、実はリアルワールドでは、80歳以上で通院して来られる心房細動の実に多いのです。これプライマリケア医皆の実感だと思います。
http://cvc-journal.com/index.html
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今後この傾向はますます強くなると思われます。おそらく5年後、いや3年後には間違いなく抗凝固療法の主問題となるだろうと思っています。

何しろエビデンスがない。しかし現場では対応しなければならない。その辺のことをちょっと書いております.書店では手に入りにくいですが、もし御興味ある方は入手していただければ幸いです。

あわせて、最近出版されました不整脈の専門書「不整脈概論 専門医になるためのエッセンシャルブック」(メジカルビュー社)という専門書で「心房細動の病態、病因」についても書かせていただいております。

長らく病院の現場を離れており、こうした基礎的な教科書を書けるような知識も見識もないのですが、これまでの年輪の蓄積だけをたよりに書いております。

こちらはちょっとというか、かなり高額ですので、不整脈の専門知識を深めたいという方、よろしければアクセスしてみてください。
http://www.medicalview.co.jp/catalog/ISBN4-7583-1404-7.html#mokuji
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by dobashinaika | 2013-02-11 22:19 | 不整脈全般 | Comments(0)

安静時または運動負荷心電図による心血管イベントスクリーニングに関するシステマティックレビュー

Annals of Internal Medicineより

Screening Asymptomatic Adults With Resting or Exercise
Electrocardiography: A Review of the Evidence for the
U.S. Preventive Services Task Force
Ann Intern Med. 2011;155:375-385.


無症候の成人における安静時、運動負荷時心電図スクリーニングに関するUS preventive service task forceのシステマティックレビューです

・無症候の成人を対象とした安静時または運動負荷心電図のスクリーニングに関するRCTまたは前向きコホート研究を,主にMEDLINEとCochrane Libraryから抽出した

・スクリーングの有無により臨床的アウトカムあるいはスクリーニング後の治療を評価した研究はない
・安静時あるいは運動負荷心電図でのリスク評価(低、中、高)が、従来からのリスク評価のみと比べてどの程度正確かに関する研究はない
・63の前向きコホート研究において、従来からの危険因子補正後の心血管イベント予測因子として安静時あるいは運動負荷心電図の異常が評価された
・安静時心電図異常(ST-T異常、左室肥大、脚ブロッック、左軸偏位)、運動負荷心電図異常(ST低下、目標心拍数への不到達、心拍数回復異常、運動耐用能低下)はリスク上昇に関係していた(pooled hazard ratio estimates, 1.4 to 2.1)
・(検査の)害についてのエビデンスは限定的だが、直接的害は最小(安静時)または小さい(運動負荷)と考えられた
・心電図検査後のインターベンションの害についての研究はない
・運動負荷心電図後の冠動脈造影施行率は0.6~2.9%

結論:安静時、運動負荷時心電図の異常は引き続く心血管イベントのリスク増に関連していた(従来からの因子補正後も)。しかしながらこのことに関する臨床的意義は不明確

###心電図スクリーニングが心血管アウトカムに影響を与えるというエビデンスはないのだそうです。安静時STT変化などの所見があればリスク因子としての意義はある,すなわち特異度には一定の信頼性はあるが、スクリーニングテストとしての感度は不明ということかもしれません。特に安静時心電図ではSTT変化がないからと言って虚血性心疾患の否定には全くなりませんね。システマティックレビューは、エビデンスがないということをわれわれに教えてくれることがよくありますね。
by dobashinaika | 2011-09-21 21:38 | 不整脈全般 | Comments(0)

小児の不整脈診断にオムロン携帯型心電計は有用: Europaceより

Europace 9月号より

First experience of monitoring with cardiac event recorder electrocardiography Omron system in childhood population for sporadic, potentially arrhythmia-related symptoms
Europace (2011) 13 (9): 1335-1339.


不整脈に関連した症状を持つ小児におけるオムロン携帯型心電計モニターの診断効果に関する検討

・4~16歳(平均9.7歳)までの動悸症状を持つ小児30人を対象
・心電図、心エコー、24時間ホルター心電図で異常なし。2人に前失神状態の既往あり
・動悸の平均回数は過去3カ月で13.2±8.3回

・30人全員で、診断に有用な記録がなされた
・4人で発作性上室頻拍が見つかりカテーテルアブレーションを受けた
・他の26人は洞性頻拍だった
・2人は上室頻拍に伴う前失神のエピソードがあった
・ホルター心電図で診断できた者はいなかった

結論:小児において携帯心電計は高い診断性能を持った。小児は日常生活下でこのシステムを使う簡便さを楽しんでいた。この研究では動悸を持つすべての患者において診断につながるイベントが記録された。

###おもちゃ感覚で記録する子供の姿が目に浮かびます。そうしたモチベーションや、あまり人目を気にしないだろうことも診断精度の向上につながっているかもしれません。ただし心室期外収縮のような短時間のエピソードにはもちろん限界はあり、ホルターとの使い分けが大切です。
同心電計は、おとなで動悸があり、特にCHADS2スコアの高い人の心房細動を見つけるデバイスとしても今後活躍が期待されると思います。

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by dobashinaika | 2011-09-12 16:40 | 不整脈全般 | Comments(0)

「動悸」に関するEuropean Heart Rhythm Associationの総説です

「動悸患者のマネジメント」に関するEuropean Heart Rhythm Associationのposition statementが出ています。

Management of patients with palpitations: a position paper from the European Heart Rhythm Association

長いですが、大変よくまとまって書いてありプライマリケアにも有用です。
今回はご紹介だけ。あとで時間があったらまとめてみます。
by dobashinaika | 2011-06-30 18:11 | 不整脈全般 | Comments(0)

動悸時心電図記録のない患者に対する電気生理学的検査の価値:American Journal of Cardiologyより

American Journal of Cardiology 5月1日号より

Diagnostic and Prognostic Value of Electrophysiologic Study in Patients With Nondocumented Palpitations

・ 心電図に記録されていない動悸症状のある患者における、心臓電気生理学的検査(EPS)の有用性につき検討

・ ¬動悸時心電図記録がなく、(12誘導で)心電図異常のない患者172名にEPSを施行
・ 5分以上の症状持続が56%、突然発症が99%、突然停止が65%、頚部での動悸症状が36%
・ EPSで異常なしは86例50%
・ 房室結節リエントリー性頻拍43例、正旋回性房室リエントリー性頻拍9例、非持続性心房頻拍または心房細動34例
・ 長時間持続、突然停止、頚部の動悸はEPSでの陽性所見およびリエントリー性頻拍を予測し得た(p <0.001)
・ 心房頻拍および細動の誘発は50歳以上あるいは器質的心疾患の有無と関係していた(p <0.001)
・ 平均53ヶ月の追跡で、EPSで陰性所見だった患者の92%は症状が消失した
・ 心房頻拍および細動が誘発された患者の32%でしか、症状の消失は見られなかった
・ 動悸の再発は器質的心疾患を持つ者または50歳以上で多かった(p <0.001)

結論:心電図記録のない動悸患者の50%においてEPSで頻拍が誘発された。長時間持続、突然発症、頚部の動悸、器質的心疾患、50歳以上はEPSでの誘発およびその後の再発を予測しえた。これらの因子はEPSやアブレーションの適応を決める一助となる。

###EPSで誘発されるかどうかは、症状をどれだけ頻拍由来と捉えるかにかっています。一番問題なのは洞性頻拍で、多くの洞性頻拍は突然発症の形をとることが多く、長時間持続することもまれではないため、突然停止、頚部の動悸と言った症状は確かに有用かもしれません。問診等により検査前確率を高めることが、不必要な侵襲的検査をさける方法であることはEPSも冠動脈造影も(これができていない!)変わりありません。
by dobashinaika | 2011-04-20 19:55 | 不整脈全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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