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カテゴリ:心房細動診療:根本原理( 62 )

心房細動におけるリスクマネジメントの重要性と危険性

3日間更新しなかったのにはわけがありまして、6月1日に東京で「プライマリ・ケアからみた心房細動のリスクマネジメント」という演題名で主に循環器専門医の医師の前で講演することになっていたからです。専門医を前にしてプライマリ・ケア医の立場で話をするというのは結構プレッシャーでして、なんとなくアウェイ感を感じながらスライド作りをしたので、時間がかかりブログを怠っていたという次第です。

今回のテーマ、リスクマネジメントは最近ブログやネット上でたびたび触れておりますので、こちらなどを参照していただければ幸いですが、今回は[心房細動のリスクマネジメントモデル]を提出させていただきました。

骨子はこんな感じです。

【心房細動でなぜリスクマネジメント?】
・ 心房細動はcommon diseaseとよく言われるが、他のコモンな疾患とはちょっと違う点がある。
・ 1)コモンというには、抗凝固薬にしてもカテーテルアブレーションにしてもあまりにハイリスクハイリターン
例)ワルファリンの致死的出血のNNHは54。脳梗塞のNNTは38

・ 2)他のコモンにもまして、さまざまなリスクが複合して心房細動を成立させている一方、心房細動それ自体が脳梗塞や心不全のリスク因子となっている。しかも心房細動の予後は脳梗塞、心不全などより腎不全、COPD、がんなどにより強く規定されるかもしれない。
http://dobashin.exblog.jp/17196337/

・ 3)長い経過の中で治療オプションが豊富であり重大な意思決定場面が連続する
・ これらから導かれるのは、他のコモンにもまして、「リスクマネジメント」の視点が大事だということ(もちろん生活習慣病予防の時代で、どんな疾患もこの視点は大事だが)

【心房細動のリスクマネジメントモデル】
心房細動におけるリスクマネジメントの重要性と危険性_a0119856_8395379.png

・ 1.リスク評価 2.リスクコミュニケーション 3.意思決定 4.リスクヘッジ、の4ステップを提出

・ 1.リスク評価;心房細動のリスク評価法は、既に確立されている。すなわちCHADS2スコアまたはCHA2DS2-VAScスコア。最近R2CHADS2スコアやQstrokeが出ているが、プライマリ・ケアにはなじみにくい
・ リスク評価はこうしたスコア評価=生物学的評価のほかに患者さんの「心房細動」あるいは[抗凝固薬][アブレーション]に対する解釈モデルを聞き出し、患者さん自身がリスクをどう捉えているのかまで評価することが大切。つまり心理社会学的評価も大切

・ 2.リスクコミュニケーション:解釈モデルを聞いた上で、患者さんが心房細動をどう捉えているのか、知識ニーズは何か、不安な点は何か、生活や仕事のどの点に影響があるのかなどを把握し、患者さんにとっての優先順位を優先してよく話し合いたい。この際、以下の3点を心がける
  ①治療のゴール=脳梗塞にならないということをしっかり示す
  ②リスクベネフィットを提示する。提示の仕方は患者さんのリテラシー(ニューメラシー=数値理解力)が関与しなかなかに難しい
  ③リスクを減らす方法を提示する

・ 3.意思決定:意思決定は最も難しい作業。この際、「各オプションの禁忌]を踏まえた上で「クリニカルエビデンス」「患者の好み」「医師の専門性]のEBMの3要素を総合的に考えるフレームワークが参考になる
心房細動におけるリスクマネジメントの重要性と危険性_a0119856_8425268.jpg

(例:プラザキサを選択する場合の意思決定フレームワーク)
・ 3要素はカテゴリーミスマッチなので、本来的には総合して考えることはできないが、それでもその場で最適解を求めなければならない(それが医療)

・ 4.リスクヘッジ:意思決定をし、例えば抗凝固療法を開始したあとでも、出血リスクをできるだけ減らす解く努力は常に必要。特に血圧管理は大事。今後超高齢者の心房細動管理が最大の問題となるが、その際もいかに出血リスクを減らしながら、血栓塞栓症を予防していくかが最大のミッションとなる。

【結論】最終的に、こうしたリスクマネジメントの先に見えてくる最終ゴールは「何が問題なのか」「何がゴールなのか」「患者、医療者お互いの役割は何か」について共通の理解基盤を発見すること(finding common ground)であって、患者さんの生命予後やQOLと言ったアウトカム改善はcommon groundが形成されれば二次的に成立していく。

という感じで、最後PCCM (patient centered clinical method)にまで言及する壮大な(笑)ストーリーになっています。

ここまでまとめてスライドにするのに、結構時間を食ってしまいました。まあ現時点では心房細動診療モデルとしてまあまあかと自賛しているのですが・・

それでですね。ここまではいわば表ネタでして、ホントはリスクマネジメント思想の持つ落とし穴というか、確率的病因論の持つ危うさにも言及しようと思ったのですが、さすがにそこまで勉強会の場で言うこともないと思って控えました。

それはたとえば、リスク評価の時、CHADS2スコアなら「高血圧」や「糖尿病」など計測可能なリスクだけを「リスク因子」として扱うことのあやうさです。脳塞栓症に関係するリスク因子は他にもいっぱいあります。しかし、だからと言って最近出たQstrokeのように18項目にも及ぶ危険因子を設定すればそれで足りるという問題ではありません。たとえば、[低所得][教育環境]「家庭環境」こういった社会的因子はリスクスコアには組み入れられないのが通常です。組み入れられている研究ももちろんありますが、ガイドラインやスコアリング化の段になるとまず顕在化されません。一般に各種疾患で認定されてスコアリング化される危険因子は、医療者や患者の責任に帰結できるような生物学的因子(高血圧、糖尿病、喫煙、肥満など)に限られるわけです。つまりリスクを「モノ」として扱う、特に当事者の健康問題としてのみ扱うことのできるように変換されたのがいわゆるリスク因子なのです。そのセレクションはだいぶ恣意的です。

現在病因論として広く認知されている、いわゆる確率論的病因論では、リスクを確率として扱うため、数値化されやすいリスクしか問題にされないという危うさを含むわけです。数値化されていない、あるいは数値化の難しいリスクに関してはとりあげられません。そのリスクが完全に排除された時、そういう新たな生体環境になった時にまた新たに別のリスク因子が出現するかもしれません。今のところそうした未知の因子についてはランダマイズという方法で克服していますが、各種RCTの追跡期間は大体5年程度です。超高齢化社会下での新たなリスク因子出現といった問題に対応出来ません。

ということで、長々書きましたが、「リスクマネジメント」という言葉を使う場合は、要するにマネジメントしやすいリスクにしか目が向けられない。もっと言えば、我々はリスクの囲い込みをしているにすぎないということを、根底に気づいていてリスクマネジメントをすべきである。というようなことを裏のリスク論として、訴えたいと思うわけです。これをスライドなどにして、心房細動の勉強会で言及するのはさすがにKYだったのでしませんでしたが、いつかそんな話が出来る機会があればと思います。
by dobashinaika | 2013-06-02 23:12 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動に対する知識レベルを問う11の質問

International Journal of Cardiology 1月のオンライン版より

The atrial fibrillation knowledge scale: Development, validation and results
doi:10.1016/j.ijcard.2012.12.047


【疑問】心房細動に関する知識を問うテストの妥当性,信頼性はどうか?

P:オランダのマーストリヒト大学の医療センターに登録された心房細動患者(18歳以上、既存の処方薬なし)712人
・外来フォロー1年後に以下のような11項目からなる質問票を送付し、2週間後の外来までに答えてもらう

E:介入群:心房細動一般および治療、生活習慣に関する教育を行う。30分間。3、6、12ヶ月後

C:対照群:教育なし。初回20分、以後10分

O:このスケールの妥当性、感度、信頼性を統計学的に検証

〈心房細動知識スケール〉
1.心房細動の引き金となるものは何ですか?
a) 植物、動物、ハウスダストに対するアレルギー
b) アルコール、カフェイン、香辛料
c) 騒音、大きな音

2.心房細動の薬を正しく飲むことはなぜ大切なのですか?
a) 医師が私にそう望むから
b) 不整脈が重症になるのを防ぐため
c) 心臓発作や突然死の可能性を避けるため

3.心房細動が患者さんの症状なしに見つかった場合、その患者さんは直ちに病院を受診すべきである。
a) 正しい
b) 正しくない
c) 不明

4.心房細動とは何ですか?
a) 心臓が体全体に十分な血液を供給できない心臓病
b) 心臓の中で血栓を生じる血液病
c) 人望の電気的以上により心臓が早く、不規則に収縮する病気

5.なぜ心房細動のある種の患者さんは抗凝固薬を処方されるのですか?
a) 脳卒中の原因となる血栓リスクを予防するため
b) 全身への血流をより早めるため
c) 全身の水分貯留(たまること)を予防するため

6.なぜ抗凝固薬を飲んでいる人はアルコールを飲むことに注意が必要なのですか?
a) アルコールは水分を体にとで貯めることで、血液が薄まってしまうから
b) アルコールが心臓への血液の流れを遅くし血管の中を詰まらせるから
c) アルコールが他の薬二影響し血圧を固まらせるように働くため

7.心房細動とはまれな現象ですか?
a) はい
b) いいえ
c) 不明

8.心房細動を自覚していない場合は、特に危険性がありますか?
a) はい
b) いいえ
c) 不明

9.運動について心房細動患者さんにとって正しいのはどれですか?
a) 正常の心臓の活動を保ちためには安静が大事である
b) 慢性心房細動の患者さんはフルタイム労働はできない
c) その人のできる範囲で通常の運動は大切である

10.どの状態が正しいですか?
a) 心房細動は心臓発作を引き起こすので生命の危機を脅かす
b) 心房細動は全く無害である
c) 心房細動は正しい医療を受けていれば無害である

11.抗凝固センターの役割は何ですか?
a) 血液凝固をモニターし服用する薬の数を決める
b) 不整脈があるかどうかを確認する 
c) 患者さんは抗凝固薬服用を継続すべきか否かを判断する

【結果】
1)回答率:529/712、74.3%

2)表面的および内容妥当性:24人の循環器専門看護師および2人の循環器専門医による質問の層別化についてのコメントなし

3)構成概念妥当性:因子分析において構成概念妥当性を確認

4)信頼性:529人の対象における内的な一貫性を示すCronbach's α=0.58

5)感度:新規発症時と1年後のスコアには改善あり(7.08点→7.98点)

【結論】
このツールは妥当性があり、心房細動患者の知識レベルの評価が可能だった。患者教育において重要なツールとなりうる

### 私の最も興味ある分野である患者さんの知識ニーズの把握に関する論文です。1月にさらっと読んで、後でじっくり読もうと思って延び延びになっていました。

改めて読んでみると、やや食い足りないというか不満があります。第一に、論文がこの11項目テストの妥当性信頼性の検証目的なので仕方ありませんが、このテスト結果の差が、塞栓症や出血などの臨床的アウトカムとどう関係するかという最も知りたいところの検討ではない点です。

もう1点、質問項目が果たして適切かどうか?たとえば質問2ですが、多分抗不整脈薬について問うていると思いますが(それもはっきり明記されていない)、「不整脈の重症化を防ぐため」というのは適切な表現かどうか。また質問10で正しい治療を受けていればはたして”harmless”といえるか(そもそも正しい=“right”治療とは何か)。

まあ突っ込めばキリがありませんが、当院で治療の始めに心房細動の知識ニーズを質問すると、多くは心房細動が今後どうなるのか、薬の副作用は何かという質問が多いのです。また患者さんはやはり抗凝固薬に対する不安を口にすることが多いため、皮下出血などの小出血時にどうするか、薬の飲み合わせや飲み方の質問などもあった方が良いような気もします。

しかしながら、このような心房細動に関する知識レベルの評価を検討した研究としては最初であり、まずここから考えるという点でも、高く評価したいと思います。またlimitationのところで述べられているように、患者さんのQOL、不安やうつの評価スケールも同じように必要と思われます。

当院では抗凝固薬を処方するにあたっての患者さんの(心房細動に対する)解釈、(医療への)期待、感情、(日常生活や仕事への)影響の4項目(=解釈モデル)を聞くことにしています。
これは非常に有効であると思います。この論文の知識レベルとセッットで聞くとより有効と思います。
日経メディカルオンラインの連載をご参照ください。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/odakura/201206/525418.html
by dobashinaika | 2013-04-07 00:08 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

「心房細動10大ニュース」「リスクマネジメントの視点で見る心房細動診療」書きました

ケアネットに、「2012年度心房細動10大ニュース」および「リスクマネジメントの視点で見る心房細動診療」について書きました。
本日全部発表となっています。
http://www.carenet.com/

結構リキ入れて書いたつもりですので、もしよろしければご笑覧下さい。
この企画はKey Note Lecture、症例検討会、Q&A、香坂俊先生の動画などかなり勉強になる内容盛り沢山です。

無料登録が必要となります。
by dobashinaika | 2013-03-25 19:57 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

2012年心房細動関連論文ベスト5+α

今年も恒例の「今年の心房細動関連論文ベスト5」をお届けいたします。
じつは、すでにNikkei Medical Cadetto2012年冬号の「2012冬論文コレクション」で同様記事を掲載させていただいておりますが、同誌では一部昨年の論文も含まれておりますので若干手を加えてみたいと思います。
選択基準は,いつも通り「自分の診療において行動変容を促されたか」です。

第5位:抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン.日本消化器内視鏡学会雑誌
Vol. 54 (2012) No. 7 p. 2075-2102
7月に出た、日本消化器内視鏡学会の抗血栓薬服用者に対する内視鏡のガイドライン。ワーファリン休薬なしで生検は可能としたところが画期的でした。既に仙台市内の大きな病院の消化器科からは、ガイドライン通りにします旨の案内が届いています。ヘパリンブリッジや、2回胃カメラを受ける必要がないことは、患者さんにとって福音ですが、一方、エビデンズレベル、推奨レベルとも低く、コンセンサス重視のガイドラインであることはふまえるべきです。

第4位:Dabigatran in Clinical Practice for Atrial Fibrillation With Special Reference to Activated Partial Thromboplastin Time.
山下先生のグループのダビガトランにおけるaPTTチェックの妥当性を検証した論文。これによって、ダビガトランの使い方に一応一定の安心を持つことができました。今後の知の集積の礎になる知見と思います。

第3位:The value of the CHA2DS2-VASc score for refining stroke risk stratification in patients with atrial fibrillation with a CHADS2 score 0–1: A nationwide cohort study. Thrombosis and Haemostasis 2012: 107/6 (June) 1172-1179
コペンハーゲンのグループの大規模コホート研究。ESCガイドラインのネタ。CHA2DS2-VAScスコアの低スコアの取り扱いを比較的明確に示した論文です。個人的には60代後半女性というだけでワーファリンを出すのは未だに気後れする気もしますけれども。例えば65歳と、74歳ではかなり違うかとも思いますが.そこはスコアリングの限界ということで理解しています。

第2位:Nurse-led care vs. usual care for patients with atrial fibrillation: results of a randomized trial of integrated chronic care vs. routine clinical care in ambulatory patients with atrial fibrillation. Eur Heart J (2012) 33 (21): 2692-2699.
看護師主導ケアによるワーファリン管理で、心血管イベントなどアウトカムが改善したという研究.これほんとそうですよね。結局チャズだCHA2DS2だバスクだリライだなんだと言ったって、きちんと飲むこと、きちんと生活習慣病を管理することをしてなんぼですので。それも多職種共同でしないといけません.これからは。

第1位:2012 focused update of the ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
An update of the 2010 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
Developed with the special contribution of the European Heart Rhythm Association
Eur Heart J (2012) 33 (21): 2719-2747.

月並みな結果ですが、やはりESCのガイドラインです.65歳以上では皆脈を取れ、CHA2DS2-VAScスコア0点は抗凝固療法をするな。アスピリンはもう要らない。。。非常に明快でストレートなメッセージです。新規抗凝固薬礼賛なのは気になりますが、リアルワールドをガイドラインは牽引する,そんなパワーを感じました。

この他にも
抗凝固薬は高齢者の転倒リスクを増加させないとの研究
左心耳の形状と脳塞栓率の関係を検討した研究
大規模コホートでリズムコントロールの優位性を示した研究
心房細動カテーテルアブレーション6年間の長期追跡研究
ジギタリスが予後悪化に関連ありとするAFFIRMのサブ解析

等が印象に残りました。
今年は、新規抗凝固薬が2種類となり、それなりに知の集積がなされてきつつも、いまだ過渡期であることを皆が改めて実感してきた時代の前半、くらいの位置づけなのかという感じです。私としては、今後次の2つのことが心房細動治療のミッションになって行く気がしています。
1.無症候性(患者医療者ともに認知していない)あるいは“隠れ“(患者は認知しているが医療者に認知されていない)心房細動へのアプローチ研究
2.80歳以上高齢者への抗凝固療法

特に2は、最近再三ブログで述べていますが、今後数年でとてつもなく増える超高齢者のことを考えないでどうする、という思いがあります。この層をカバーし得る新規抗凝固薬は出てくるのでしょうか?やっぱりワーファリンは生き残るのでしょうか?

と問題提起しつつ、今年も一応締めとさせていただきます(あしたも論文紹介するかもしれませんがw)。個人的にはオンラインサイトの連載、雑誌の抗凝固療法の企画、web講演会、教科書等の執筆等々公に露出する機会が増えましたが、じぶんとしては、本ブログでだいたいコンスタントに1日1000アクセス以上いただけるようになったことが最もうれしいことです。ずれていることも多々書き散らしたかと思いますが、今後とも皆様、ご批判ご愛顧のほどなにとぞよろしくお願い申し上げます。
by dobashinaika | 2012-12-27 22:42 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門」第2回がアップされました。

日経メディカルオンラインに連載させていただいております「プライマリケア医のための心房細動入門」の第2回が本日よりアップされております。


今回のテーマは「初診の心房細動患者、まずどんな情報を集めるべき?」です。
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/series/odakura/


ご参考いただければ幸いです。

なお全文を読むには登録(無料)が必要です。
by dobashinaika | 2012-05-07 08:18 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動患者の予後を改善する看護師主導ケアの内容(続報)

先日ご紹介して、ツイッターその他でも反響のありました「心房細動患者における看護師主導ケア」について論文の詳細を読みましたので紹介します。

Nurse-led care vs. usual care for patients with atrial fibrillation: results of a randomized trial of integrated chronic care vs. routine clinical care in ambulatory patients with atrial fibrillation

【看護師主導ケアとは】
・患者への問診を取り、病態生理と症状、合併症、診断結果、治療オプションを説明
・専用ソフト「CardioConsult AF」を用いて心房細動の包括的管理と合併症につき案内する
・このソフトは個々の患者の症状、心房細動のタイプ、脳卒中リスクに基づいて患者プロファイルを特定し、より適切な管理法を提案する
・リスムコントロールとレートコントロール、厳格な抗凝固管理を含む予防的血管治療などを患者に教える
・最後に医師の総括を得て診断治療が保証される
・ナースケアは最後の30分に設定されている
・3,6,12ヶ月後とその後6ヶ月に1回
・患者はナースに必要に応じて電話などでコンタクトが取れる
・患者はこの間心理的サポートと教育を受ける

【通常ケア】
・医師のみ、初回20分、次回から10分

【サロゲート】
・初回診察後の適切な抗凝固療法(看護師ケアvs. 通常ケア);99%vs,83%
・甲状腺機能検査:91%vs.54%
・適切なレートコントロール(症状なしの人にしない):95%vs.85%
・禁忌の患者に抗不整脈薬を処方しない:87%vs.82%
・永続性心房細動に処方しない:97%vs.92%
・心不全についての知識レベルスコアは看護師主導ケアで大
心房細動患者の予後を改善する看護師主導ケアの内容(続報)_a0119856_23484647.jpg


###看護師主導ケアにより、ガイドライン遵守アドヒアランスが良くなり、主要アウトカムが改善することがわかります。

上記ナースの仕事は、日本での医師の仕事とほぼ同等であり、非常に専門性の高い内容と思われます。Nurse Practitionerと医師の境界線がよく話題になりますが、ナースが上記のように専門的に問診と患者教育を行い、医師が補完統括するダブルケアあるいはマルチプルケアの体制、つまり、多数回の違う職種によりケアを重層化されていくことが、アウトカムを高めるのであり、線引き問題に帰すべきものではないと思います。

それにしてもこの「CardioConsult AF」というソフトの日本語版、欲しいですね。

それからこういったpatient-centeredな論文をメジャー医学雑誌に掲載するところはさすが欧州心臓学会だと思います。
by dobashinaika | 2012-04-12 23:57 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

看護師主導ケアは心房細動患者の予後を改善させる:Eur Heart J誌より

European Heart Journal 3月27日オンライン版より

Nurse-led care vs. usual care for patients with atrial fibrillation: results of a randomized trial of integrated chronic care vs. routine clinical care in ambulatory patients with atrial fibrillation

心房細動の外来患者に対する看護師主導ケアと通常のケアを比較した無作為割り付け研究

P:外来心房細動患者712名

E:看護師主導ケア356名=ガイドラインに基づき、循環器専門医が監修した統合ソフトウエアを用いたもの

C:通常のケア356名

O:心血管イベント、心血管死(一次エンドポイント)、ガイドラインの順守

T:22か月追跡

結果:
1)ガイドライン順守は看護師ケア群で有意に高い

2)一次エンドポイント:看護師主導群14.3% vs. 通常群20.8%[ハザード比: 0.65; 0.45–0.93; P= 0.017]

3)心血管死:看護師主導群1.1% vs. 通常群3.9%[ハザード比: 0.28; 0.09–0.85; P= 0.025]

4)心血管疾患による入院:看護師主導群13.5% vs. 通常群19.1%[ハザード比: 0.66; 0.46–0.96; P= 0.029].

結論:看護師主導ケアは、循環器専門医による通常のケアより入院率、生存率においてすぐれていた。

###こういう研究は素晴らしいと思います。ナース主導ケアでおそらく、ワーファリン服用アドヒアランスや血圧管理が向上したためと思われます。当院でも同様の研究を以前発表していますが、心血管イベントの様な主要アウトカムまでは変化がありませんでした。一方ワーファリンによる小出血や患者満足度は向上ました。

すぐに全文を入手して、INR管理の状況その他サロゲートマーカーについても知りたいと思います。また実際どういうケアをしたのか詳細がわかったら、またアップいたします。

医学論文、学会発表、医学雑誌の記事に至るまで薬物療法に関する医学的言説をながめると、薬理作用とカプランマイヤーエビデンスの蓄積に膨大なエネルギーが費やされているわけですが、こういったいわばこっち側(医療者側)の事情にいくら多くの時間労力を費やしても、患者さんが薬を飲んでくれなければ、それまでのディスカッションはむなしいものとなります。たくさんの品物を並べても、お客さんが入らないお店と同じように。

膨大なる薬理+エビの知識をどう患者行動に結びつけるか、にわれわれはもっとエネルギーを配分してもよいのではないかと、こうした研究を見るにつけ思います。
by dobashinaika | 2012-04-10 16:26 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

日経メディカルオンラインで、「プライマリケア医のための心房細動入門」の連載が始まりました。

今月から、日経メディカルオンラインで連載を始めさせていただくことになりました。
テーマは「プライマリケア医のための心房細動入門」です。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/odakura/201204/524190.html
(全文を読むには会員登録が必要です)

あくまでプライマリケアの立場から、心房細動という古くて新しい病気を捉え直したいと思って書くことにしました。

現在、心房細動がコモンディジーズとして捉え直されるようになってきていますが、抗凝固療法に限らず、この病気の、病態生理における「とっつきにくいイメージ(不整脈全般が持っていますが)」や全体としてなんとなく「怖いイメージ」が、プライマリケア医の中に密かに存在するのも事実です。

こうした状況にあっては、エキスパートとプライマリとの橋渡し役、あるいは一種のtranslation作業が必要であるとかねがね考えておりました。

大変おこがましい限りですが、僭越ながら、その作業の一貫として、こちらのブログは、日々流れさる新着論文の濁流を少しでもせき止める作業、新連載はせき止めた流れをカテゴリー分けして清流にする作業と位置づけようと思います。

このような場を与えていただいたことを光栄に思い、今後月1ペースくらいで連載させていただくつもりですので、何卒ご笑覧の上、ご意見をいただければ幸いに存じます。

あと、もうひとつの重要な作業、医師→患者へのtranslation作業も、今後していけたらいいとも思っています。

追伸;上記作業、エキスパートープライマリでも、患者ー医師でも”translation”というより”collaboration”といういべき(あるいはそう目指すべき)かもですね。
by dobashinaika | 2012-04-05 16:57 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

当院における取り組みを論文にしました「患者ナラティブを重視した診療所での心房細動外来診療 」

「心電図」Vol31, No.2より

患者ナラティブを重視した診療所での心房細動外来診療
―傾聴と支援を主眼とする外来の実践を通して―
心電図,2011;31:127 〜 133


昨年、大分で開催された第27回日本心電学会学術集会シンポジウムで発表した内容の拙文です。学会ホームページに掲載されているのでリンクを貼らさせていただきました。

よく60分も外来にかけられないとお叱りを受けますが、最近はスタッフも慣れてきてかなり時間短縮ができるようになっています。
心理カウンセリングでも良く言われることですが、初回にじっくり時間をかけると、後がスムーズであると言うのが基本コンセプトです。

ご笑覧いただければ幸いに存じます。
by dobashinaika | 2011-09-04 23:02 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動とともに生きるー心房細動の患者さんには心理教育プログラムの開発が必要

Journal of Cardivascular Nursing 1月21日付けオンライン版からです。
Living With Atrial Fibrillation: A Qualitative Study.

背景、目的:心房細動は脳卒中、心筋症、QOL低下に関連して社会的な健康問題となっている。身体機能や精神活動に支障を来すことは知られているが、それらの元をなす患者の体験(談)についてはあまり知られていない。心房細動とともに生きるという患者の体験(談)に対する理解は、質的記述研究におけるQOL改善への介入研究の基礎となると考えられる、

方法:
・ 対照:繰り返す症候性心房細動を持つ7人の女性と8人の男性。平均59.8歳
・ オープンエンドインタビューを施行
・ 質的記述的方法でデータを解析

結果:
1)繰り返す心房細動を生きるという経験や心房細動がどのようにQOLを損ねるかという観点からデータがカテゴライズされた。
2)カテゴリーは以下の7項目からなる:(1)症状の意味の発見(2)わからない(教えてくれない)、支えがないという感覚(3)転換点(4)心房細動をやり過ごす操縦法(5)予測できないそして身体機能を制限させる症状の管理(6)精神的苦痛(7)治療への希望のために緩和されたことによる心房細動との折り合い付け
3)参加者は、医療者等による診断と、(医療者が)彼らの心配を最小限にすることとの間にはディレイがあると感じていた。
4)参加者は、心房細動の特性や自己管理についてカウンセリングを受けてはいなかった。

結論:心房細動の精神的負担への対処は欠落していた。心房細動の症状の認識を高めたり、早めの評価と治療を促したりするような介入が必要であった。心房細動の特性を患者さんや家族に教え、自己管理をガイドし、精神的負担を軽減するような心理教育的プログラムの開発と試行が必要である。

###まさに当院で実践している心房細動外来(第27回日本心電学会学術集会シンポジウム発表)の精神に同調する研究です。7つのカテゴリーはどれも心房細動患者さんにとっての切実な体験から引き出されたもので、「転換点」「心房細動度の折り合い付け(調停または共存)」など、診察室の日々の診療の中で患者さんの言葉から繰り出されて来るものだと思います。
“Living with atrial fibrillation”,この題名もいいですね。
by dobashinaika | 2011-01-26 21:50 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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治療 2015年 04 月号 [雑誌]

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