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カテゴリ:心房細動:疫学・リスク因子( 263 )

日本における心房細動患者の脳梗塞発症率は比較的低いが,高リスクほど脳梗塞,頭蓋内出血とも上昇:JAHA誌


- 日本のレセプトデータベース会社(JMDC)のデータを分析
- 心房細動,75歳未満,抗凝固薬服用なしの9733例。2.5年追跡
- 虚血性脳卒中:0.58%/年
- 全出血:1.17%/年
- CHA2DS2-VAScスコア別年間虚血性脳卒中:低リスク(男性0,女性1)=0.18%,中リスク(男性1,女性2)=0.44%,高リスク(男性≧2,女性≧3)=1.29%(P<0.001 for trend)
- CHA2DS2-VAScスコア別年間全出血:低リスク=0.51%,中リスク1.28%,高リスク=2.02%(P<0.001 for trend)
- 結論:CHA2DS2-VAScスコア高リスク例では,虚血性脳卒中,出血リスクは高い
日本における心房細動患者の脳梗塞発症率は比較的低いが,高リスクほど脳梗塞,頭蓋内出血とも上昇:JAHA誌_a0119856_07315538.png
### 日本のレセプトデータベースからの分析。貴重な報告です。アウトカムは入院時の診断に基づいています。全出血とは頭蓋内出血,消化管出血,他の非外傷性出血を含みます。

CHA2DS2-VAScスコア別の年間脳梗塞発症率は,低リスクで0-0.95%,中リスクで0.10-6.6%,高リスクで2.4-6.2%との報告が蓄積されています(本文discussionより)。

日本では代表的3試験のpooled解析があり,その中でオーバーオールの脳梗塞発症率は真剣データベースが0.95%, J‐RHYTHM レジストリが1.39%,FUSHIMI AFレジストリが1.64%でした。本分析では0.58%と最小です。

総じて日本脳梗塞発症率は欧米より低いと言えます。高リスク例でも年間1.29%です。しかも,グラフを見ますと高リスク例の頭蓋内出血は4-5%と抗凝固薬を服用しない場合でも高いことがわかります。こうした集団に欧米データをベースにした適応で良いのか,考えさせられます。。

ただしレセプトベースであり,何より75歳以上は含まれていませんので,そこのデータがぜひ欲しいところです。

日本における心房細動患者の脳梗塞発症率は比較的低いが,高リスクほど脳梗塞,頭蓋内出血とも上昇:JAHA誌_a0119856_07151067.jpg



by dobashinaika | 2020-03-03 07:33 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

アルコール常用者の禁酒は心房細動再発を有意に減少させる:NEJM誌


背景:アルコール過飲が心房細動罹患率や心筋リモデリングに影響することが知られているが,心房細動二次予防における禁酒の効果については明らかではない

方法:
・オーストラリアの多施設(6施設),前向き,オープンラベル,無作為化比較試験
・1日10ドリンク以上(1ドリンク=純アルコール12g)飲酒例対象
・発作性または持続性心房細動,ベースラインは洞調律
・禁酒群,飲酒継続群に割付
・主要評価項目:心房細動再発(ブランキング期間2週間後),全心房細動負担(心房細動継続時間の比)。6ヶ月追跡

結果:
1)140人,男性85%,平均62+/-9歳,禁酒群70例,継続群70例

2)禁酒群の飲酒減少量:週16.8ドリンク→2,1ドリンク,減少率87.5%

3)継続ぐんの飲酒減少量:週16.4→13.2ドリンク,減少率19.5%

4)再発率:禁酒群37/70(53%),継続群51/70(73%)

5)再発までの期間:禁酒群が継続群により長期(ハザード比0.55,95%CI0.36−0.84,P=0.005)

6)6ヶ月間の心房細動継続時間:禁酒群で有意に低下(中間継続時間率0.5%vs. 1.2%)

結論:心房細動を持つアルコール常用者において禁酒は心房細動再発を減少させた
アルコール常用者の禁酒は心房細動再発を有意に減少させる:NEJM誌_a0119856_07254578.jpg

### アルコールが心房細動に悪影響であることは確立されています。以前のブログでも1日1ドリンク程度で罹患率が上昇するという発表がありました。https://dobashin.exblog.jp/20005788/
1日1ドリンク増えるごとに8%心房細動が増えるとの報告もあります。J Am Coll Cardiol 2014;64:281-289.

本論文はオーストラリア発ですので1ドリンク=純アルコール12gとなっています。12gは5%ビールで300cc,日本酒0.6合程度ですね。禁酒対象者は1日10ドリンクですから5−6合は飲む人ということになります。完全禁酒率は61%ということですので,同意をとったとはいえいかに禁酒が困難かが伺われます。またこれだけの試験デザインを遂行するのは大変だったと思われます。

この論文では禁酒群は同時に体重減少(3.7kg)と血圧低下も認めており,禁酒による複合的な効果も考えられます。

アルコールが心房細動管理の重要な修飾因子であることはこの治験からも強く支持されるものと思われます。ただし,editorialでも指摘されているようにサンプルサイズが小さく,またベースラインの心房細動継続時間が2%と低いのが気になります。もっとシビアな例でも禁酒すれば心房筋のリモデリングが防止できるのか。また完全禁酒ではなく,程々にしてもリスクは減るのか。6ヶ月以上の追跡ではどうか。など新たな課題も尽きません。



by dobashinaika | 2020-01-10 07:28 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

日本の心房細動患者の死因の半分以上は非心臓死。脳卒中は6.5%:伏見AFレジストリより


目的:現在の実臨床において,心房細動患者の死因と関連する因子を明らかにする

方法:
・伏見AFレジストリーにおいて,2016年11月までに評価できた4045例の死因および心血管/非心血管因子について検討

結果:
1)平均73.6 ± 10.9歳。平均CHA2DS2-VAScスコア3.38 ± 1.69

2)抗凝固薬処方:55%。平均追跡期間1105日

3)死亡705人(5.5%/年),心血管死180(全死亡の26%),非心血管死381(54%),原因不明144(20%)

4)死因の内訳:心不全(14.5%),悪性腫瘍(23.1%),感染症/敗血症(17.3%),

5)脳卒中による死亡は6.5%のみ

6)感染症/敗血症と原因不明が,高齢になるほど増加

7)心臓死の最大のリスク因子は心不全の既往(HR2.42,95%CI:1.66-3.54 ; P < 0.001)

8)非心臓死の最大のリスク因子は貧血 (HR 2.84, 95% CI 2.22–3.65; P < 0.001)
日本の心房細動患者の死因の半分以上は非心臓死。脳卒中は6.5%:伏見AFレジストリより_a0119856_07192765.png

結論:日本の地域ベースの心房細動コホートにおいては,心血管死は主に脳卒中ではなく心不全に関連していた。非心血管死(悪性腫瘍,感染症/敗血症)が死因の半分以上を占め,年齢とともに増加した。臨床的なリスク因子は心血管と非心血管とで異なっていた。

### 大変貴重な報告です。
これまでのAFFIRM試験やNOACの大規模試験,あるいは各種登録試験でも,心房細動を持つ人の死因は約1/3が心血管死で残りが非心血管死または不明でした。今回の伏見のデータはそれらよりなお心血管死の割合は少なく全体の1/4程度です。

しかも脳卒中は6.5%(虚血性4.8%,出血性1.7%)です。ちなみにネットで平成30年の厚労省による「人口動態統計月報年計(概数)の概況 」によると75-80歳までの人の死因は,脳血管疾患が第3位で7.7%です。伏見では55%に抗凝固薬が入っており,一概に比較はできませんが大幅には違わないようです。

そして心不全がやはり死因としては大きい。これも実感です。高齢者の心房細動にHFpEFが併存する症例は急増しています。

近年ますます高齢者,あるいは90歳以上の超高齢者,そして在宅診療の患者さんの抗凝固薬をどうするかという問題が切実になっています。

こうした報告を見ると,高齢者の場合心房細動だからといって抗凝固薬という直線的思考は通用しない,あるいは,心房細動そのものが果たして「リスク」なのだろうかという感が強いです。

もちろん脳梗塞→身体機能低下という面で大きなリスクですが,抗凝固薬による新たな出血も増えるし総死亡はあまり減らさない,(というか競合リスクのため脳卒中より死亡が早いので本当のところはわからない?)となると抗凝固薬にそれほどこだわることはないのかもしれません。

関連ブログはこちら

$$$ 勾当台公園も色づいてきました
日本の心房細動患者の死因の半分以上は非心臓死。脳卒中は6.5%:伏見AFレジストリより_a0119856_07211670.jpg

by dobashinaika | 2019-11-11 07:22 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

患者が自覚する心房細動のきっかけはアルコール,カフェイン,運動,睡眠不足の順:Heart Rhythm誌


疑問:患者自身が自覚している心房細動のトリガー(引き金)は何か?

方法:
・症候性,発作性心房細動
・ the Health eHeart Study およびWebサイトthe patient-centered advocacy organization StopAfib.orgから患者リクルート
・AFトリガーに付きアンケート

結果:
1)1295人中957人(74%)でトリガーの申告あり

2)これらのトリガーはトリガーのない人に比べると
「心不全」と比べてオッズ比は71%低い(OR 0.29; 95%CI0.14–0.60; P = .001)
「家族歴」と比べてオッズ比は2倍(OR 2.04 95%CI 1.21–3.47; P = .008)

3)トリガーとしては:アルコール(35%),カフェイン(28%),運動(23%),睡眠不足(21%)

4)若年者,女性,家族歴のある人のほうが多様なトリガーを有した

5)平均2つ(interquartile range 1–3)のトリガーを有した

6)女性,ヒスパニック,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,家族歴はトリガーの数と相関した

7)迷走神経調節性のトリガーは,一人の人で多く見られる稀有項にあった

結論:患者が申告するトリガーの多くは修飾可能であり,介入することで心房細動の予防や減少につながる可能性あり。遺伝情報や一般的なリスク因子など,患者のタイプ(とトリガーとの)関係を明らかにすることは,有意義な研究課題である。

### 心房細動の原因や背景の研究は多いですが,発作のトリガーについての探索はあまりないので興味深いです。やはりアルコールは多いですね。日常では運動後の心房細動もよく見られます。

やはり若年者はなにかのきっかけ。具体的に迷走神経緊張の変化でなる場合が多いと思われます。反対に高齢者ですとトリガーなしあるいは感じないで起こるということでしょうか。こうしたトリガーのそのまた背景に何があるのか,探るのは面白そうです。

$$$ 今日のニャンコ
患者が自覚する心房細動のきっかけはアルコール,カフェイン,運動,睡眠不足の順:Heart Rhythm誌_a0119856_06523109.jpg


by dobashinaika | 2019-07-04 06:53 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)/大動脈弁置換術後の心房細動新規発症率は50%


目的:TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)やAVR(外科的大動脈弁置換術)後の新規発症心房細動の頻度と予後を検討

方法:
・対象:米国のNationwide Inpatient Sample(NIS)登録者で TAVIまたはAVR施行患者
・主要評価項目=新規発症心房細動(入院中発症を除く)。副次評価項目=入院,死亡率(心房細動発症/非発症ごと)
・ニューヨーク州の入院患者データベースと発症率を比較

結果:
1)TAVI48715人(平均81,3歳),AVR122765人(平均67.8歳)

2)新規発症心房細動:TAVI50.4%,AVR50.1%

3)新規発症心房細動例は非発症例に比べ,入院死亡率が高い(TAVI: odds ratio, 1.57; 95% CI, 1.21-2.04; and AVR: odds ratio, 1.3
6; 95% CI, 1.08-1.70)

4)ニューヨーク州の入院患者データベースにおいては新規発症はTAVI14.1%,AVR30.6%

結論:大規模国民登録研究において,TAVI/AVR後のかなりの心房細動新規発症負担が観察された。TAVI/AVR施行者は,一般入院患者に比べ心房細動新規発症率が高かった。

### もちろん,こうした外科的治療を受ける患者さんは,それだけハイリスク例なので心房細動発症頻度も高いという選択バイアスはあります。

ただし,50%で発症というのはかなり高率ですね。発症した人のほうが予後が悪いとのことですので,重症者のメルクマールとして考えると良いと思われます。

$$$ 今日のニャンコ
経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)/大動脈弁置換術後の心房細動新規発症率は50%_a0119856_07171767.jpg


by dobashinaika | 2019-06-26 07:18 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

心房細動低リスクの人において抗凝固薬内服は認知症リスクを低下させる;登録研究:EHJ誌から


P:スウェーデンの国民登録研究。2006−2014年に心房細動と登録された患者,CHA2DS2-VAScスコア>1,女性とカウントされない人,以前に認知症または頭蓋内出血の診断を受けている人を除く

E:抗凝固薬 (OAC)使用あり

C:なし

O:認知症の発症

T:後ろ向きコホート

結果:
1)除外後対象患者数91,254例,OAC使用43%

2)OAC使用は補正後の認知症発症リスクを低下させた (HR, 0.62 95% CI, 0.48-081)

3)認知症リスク低下のベネフィトははCHA2DS2-VAScスコア1点(若年者)で見られた

4)OACと虚血性脳卒中や頭蓋内出血とは関係なし

5)OAC使用は複合エンドポイント(認知症,虚血性脳卒中,頭蓋内出血)を低下 (HR, 0.8-8; 95% CI, 0.77-1.00)

6)複合エンドポイントは65歳以上ではOACの利益は少ない。

7)複合エンドポイントはVKAとOACで有意差なし

結論:OACを服用する低リスク心房細動患者の認知症リスクは,非服用者に比べて低い。

### 抗凝固薬が認知症予防に関連ありという趣旨の論文が増えてきましたが,本論文はCHA2DS2-VAScスコア2点未満という,本来抗凝固薬の適応でない人を対象としていることが注目されます。

従来の報告だと,高リスクの人も含まれるため,認知症リスクの高い(と医師が感じた)人がOACを服用する可能性もあるわけで,65歳前からの内服だとその選択バイアスは低くなります。

とはいえRCTではありませんので因果関係を言うのは慎みたいです。しかし認知症のRCTは困難ではありますね。

心房細動と認知症の総説はこちら

広瀬川河畔にたたずむ
心房細動低リスクの人において抗凝固薬内服は認知症リスクを低下させる;登録研究:EHJ誌から_a0119856_07225003.jpg

by dobashinaika | 2019-05-31 07:23 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

炭水化物制限と心房細動発症は関連あり:ACC報告より


目的:低炭水化物と心房細動の関係

方法:
・ARICスタディ(NIH監修)。約14000例の22年に渡る追跡中,約1900例の心房細動新規発症
・66項目の食品に付きアンケート
・炭水化物摂取率(総カコリー摂取量にしめる割合)を44.8%未満,44.8-52.4%,52.4&以上の3群に分ける

結果:
1)低炭水化物摂取群は,中間群にくらべ心房細動発症率が18%増
2)高摂取群に比べ16%増

結論:低炭水化物は心房細動新規発症に関連した。

### たまにの出没ですみません。
近々行われるACCの先取り紹介です。
炭水化物制限で心房細動が増える理由として,1)炭水化物制限に伴い野菜や果物,穀物などの抗酸化物質の摂取も少なくなる。2)脂肪,タンパク質摂取が相対的に増える,などが挙げられています。

因果関係はもちろん論じられませんが,やはり炭水化物の過度な制限はよろしくないようですね。

$$$ 遅れましたがひな祭りでスイーツしました報告です。
炭水化物制限と心房細動発症は関連あり:ACC報告より_a0119856_23101287.jpg

by dobashinaika | 2019-03-12 23:10 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

心房細動が新たに見つかった人は,心血管死のリスクが相対的に高い:GARFIELD-AFレジストリ


疑問:心房細動診断後12ヶ月における早期のイベントリスクはなにか?

方法:
・GARFIEFLD-AFレジストリーの解析
・心房細動の診断後最初の12ヶ月における死亡,脳卒中/全身性塞栓症,大出血のリスクを分析
・52014人,前向き解析,2010−2016年

結果:
1)死亡:2140人(4.3/100人年)。うち13.5%(6.8/100人年)は最初の1ヶ月

2)脳卒中/全身性塞栓症:1.3%。2.3%は最初の1ヶ月

3)大出血:0,8%。1.5%は最初の1ヶ月

4)最初の死亡率上昇に最も寄与しているのは心血管死:

5)早期死亡原因;心不全,突然/目撃者のない死亡,急性冠症候群,感染/敗血症,呼吸不全

6)年齢,心不全,以前の脳卒中,肝硬変の既往,血管疾患,中〜高度の腎臓病,糖尿病,北米やラテンアメリカ在住は早期死亡の高リスク

7)ヨーロッパ,アジア在住は低リスクの指標

結論:新規に診断された心房細動においては,診断後の早期死亡,特に心血管死のリスクが高い。これに対しては包括的ケアが重要であり,臨床家は早期死亡の警告サインを見逃してはならない

### 心房細動と診断されてから1年以内に亡くなる人は4.3%で,そのうちの多くが心不全や突然死,急性冠症候群とのことです。結構多いですね。

心房細動のある方に心不全が新たに合併すると予後が悪くなることは,よく知られています。

心房細動が見つかったら,最低限心機能のチェック,冠危険因子のチェックをして,その後も早期サインを見逃さない。そうしたいものです。

$$$ 今日のニャンコ
心房細動が新たに見つかった人は,心血管死のリスクが相対的に高い:GARFIELD-AFレジストリ_a0119856_07114744.jpg

by dobashinaika | 2018-12-13 07:12 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

心房細動の登録研究において評価すべき20の項目:Heart Rhythm誌

米国のHeart Rhythm Societyから,心房細動の登録研究で評価すべき項目とその定義に関して研究(提案)がなされています。

Harmonized Outcome Measures for Use in Atrial Fibrillation Patient Registries and Clinical Practice: Endorsed by the Heart Rhythm Society Board of Trustees.Heart Rhythm. 2018 Nov 15. pii: S1547-5271(18)30948-2. doi: 10.1016/j.hrthm.2018.09.021.


米国のthe Agency for Healthcare Research and Quality (AHRQ:米国保健福祉省)とFDA,国立医療図書館のコラボにより作成されたThe Outcome Measures Framework (OMF)に基づいて,生存,臨床応答,イベント,患者報告アウトカム,資源活用の5カテゴリーごとに 評価すべきアウトカムが抽出されました。

20の研究が対象となり,スポンサーが承諾した13研究について解析されました。

解析対象の登録研究は以下です。これまでの代表的なレジストリーが並んでいます。
AFCare
TARGET
Get With The Guidelines—Afib
GARFIELD-AF
GLORIA-AF
LAAO Registry
CDRN Cohort
PINNACLE
GOLD AF
EWOLUTION
TREAT-AF
Reveal LINQ

最小限の評価項目は以下です。
1. 生存
1)全死亡
2)心血管死:突然死,心筋梗塞,不安定狭心症,他の冠動脈疾患,血管死(脳卒中,動脈塞栓,肺塞栓,大動脈瘤破裂,大動脈解離),心不全,不整脈
3)手技関連死:手技30日以内のすべての死亡または手技に引き続いての入院中の死亡。手技による合併症やその治療によるものを含む

2.臨床応答
1)再発:カテーテルアブレーションや薬物療法中に30秒以上持続した心房細動/粗動/頻拍。アブレーション後3ヶ月以内のブランキングピリオド内の発生はアブレーション不成功とは考えない
2)進行:発作性(7日以内)から持続性への進展
3)血栓塞栓症(持続性):脳卒中,TIA,全身性塞栓症

3.重要なイベント
1)脳卒中
2)TIA
3)全身性塞栓症
4)大出血(12ヶ月間,周術期を含まない)
5)心嚢出血(手技後30日以内をふくむ)
6)心筋梗塞
7)心筋梗塞(アブレーション合併症)
8)心不全
9)手技による他の合併症:永続的な障害,死亡,介入治療が必要なもの,入院(30日以内,48時間以上),再発(アブ後,薬物投与後)

4.患者報告
1)QOL:AFEQTなどを用いた心房細動に特異的なツール使用
2)一般的なQOL

5.資源活用
1)全入院
2)特定の入院:心不全,脳卒中,出血,心房細動,再アブレーション,周術期合併3症,他の心血管系原因
3)心房細動あるいが合併症による治療:就労不可,緊急受診,薬剤コスト

### 登録研究では,上記20のポイントを押さえましょう,あるいは押さえているか確認ということです。

$$$ 1週間前の仙台,勾当台公園。今はもう冬支度です。
心房細動の登録研究において評価すべき20の項目:Heart Rhythm誌_a0119856_07133139.jpg

by dobashinaika | 2018-11-22 07:19 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)

心房細動は発作性から持続性に移行するときにイベントリスクが上昇する:Stroke誌

Paroxysmal to Sustained AF and Increased Adverse Events

Stroke. 2018;0:STROKEAHA.118.021396


臨床上の疑問:発作性から持続性への進行は心房細動患者の有害事象にどのようなインパクトがあるのか?

方法:
・FUSHIMI AFレジストリ
・4045例(発作性1974例,持続性2070例)
・心房細動の進行と有害事象の関係を解析
・平均追跡期間:1105日

結果:
1)発作性→持続性への進行例:252例(4.22/100人年)

2)進行例は,進行しない例,および期間を通じて持続性だった例に比べに比べ脳卒中/全身性塞栓症リスクが明らかに増大(対非進行例 aHR:4.10, 95%CI:1.95-8.24, P=P<0.001)(対長期持続例aHR:2.20, 95%CI:1.11-4.00, P=0.025)

3)進行したあとのイベント率は,長期持続例と同じ (aHR, 1.54; 95% CI, 0.78-2.75, P=0.201)

4)心不全入院についても同様の結果:
対非進行例 (aHR,2.0; 95% CI,1.55-4.52, P<0.001)
対長期持続例 (aHR, 1.81; 95% CI, 1.08-2.88, P=0.026)

結論:心房細動の(タイプの)進行は臨床的な有害事象と関連する。有害事象のリスクは発作性から持続例に移行するとき一過性に上昇し,長期持続化すると減少する。

### 先日共著者の赤尾先生に,このペーパーのことをお聞きして久々に興奮いたしました(笑)。心房細動は発作性から持続性に移行するときにイベントが多い。このことは実は私も前々から薄々感じておりまして,持続化して1年以内くらいで脳卒中になる人が多いとは実感していたのですが,こうしてしっかりしたデータが出てきてやっぱりなあ(やられたなあw)という感じです。

ただし機序としては,たとえば発作が頻回となると左心耳血栓が形成されやすくなるわけですが,洞調律に戻る頻度も増えるのでこのとき左心房がスタンニングから動き出して血栓が飛ぶ頻度も増える,といったことも考えられるわけです。しかしACCのメールマガジンのコメントにもありますように,心房細動の進行と有害事象の進行に共通の病態生理があるためと考えることもできます。

「進行例」の定義は大事ですが,本文が入手できておりませんので明らかになったらまたご紹介します。

いずれにせよ観察研究ですので,因果律を当てはめることはこのままではできません。

ですが,この事実が真実に近いならば,持続化しそうな一歩手前でアブレーションをすることは合理的とも言えますので,その意味で大変貴重な報告と思われます。

※Progressionは進行と訳しましたが,進展などの用語もあるかと思われます。

※追記(2018/10/04):全文を確認したところ,"paroxysmal""persistent""permanent"の定義はESCガイドライン2016に従っています。
また,”Progression of AF”の定義は対的期間中にparoxysmalから"susutained(persistent or permanent)"への変化,です。
”peri-progression period"はparoxysmalからsustainedへ変化するときの1年間,とされています。

$$$ 大阪行ってきました。48年ぶり太陽の塔の内部に潜入しました。感動しました。
心房細動は発作性から持続性に移行するときにイベントリスクが上昇する:Stroke誌_a0119856_22234956.jpg

by dobashinaika | 2018-09-20 22:27 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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