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カテゴリ:心房細動:アブレーション( 89 )

磁性ナノ粒子による心房細動関連の自律神経ブロック

雑誌Circulation12月6日付け電子版からの論文です。

背景:4つの心臓神経叢のアブレーションが心房細動を抑えることがこれまで報告されている。

方法:磁性ナノ粒子が神経細胞に取り込まれることを応用し、神経に毒性のあるNIPA-Mという物質を磁性ナノ粒子に運ばせて23頭のイヌの心房の右前と右下の神経叢に注入した。高頻度の電気刺激に対する心拍数の反応を見ることで神経叢の働きを評価した。

結果
1)右前神経叢に注入した磁性ナノ粒子は、洞調律拍数を遅くさせる反応を抑え、低電位成分を増加させた。
2)磁性ナノ粒子を冠動脈内に注入すると右下神経叢の働きは抑えられるが、右前神経叢は抑えられなかった。
3)磁性ナノ粒子を染めるプルシアンブルー染色は、右下神経叢にのみ集積され、右前には集まらなかった。

結論
神経毒性物質NIPA-Mを運ぶ磁性ナノ粒子は心房の右下神経叢に取り込まれ、自室神経機能を低下させた。この新しい薬物投与システムは、血管内注入により、標的を決めて自律神経をブロックさせるのに有効である。

###心房細動の分野にも、ナノテクノロジーが応用されつつあることを感じさせます。まだ実験段階ですが、焼かずに薬で心房細動を根治させる可能性を示唆する論文です。
by dobashinaika | 2010-12-11 06:45 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

心房細動のカテーテルアブレーション中の脳塞栓症

雑誌Circurlation10月26日号より

心房細動のカテーテルアブレーションを行った232人のうち手術中に脳塞栓を起こしたのは1人(0.4%)しかいなかったが、手術後の脳MRIを行うと33人(14%)に症状に現れない脳塞栓の所見が見つかった。高年齢、高血圧、糖尿病、脳梗塞の既往、永続性心房細動などは脳塞栓と関係なかった。活性化凝固時間(血液が固まるまでの時間)と、手術中に心房細動を正常リズムに戻したかどうか(それをしなかった人の2.75倍ある)が脳塞栓の有る無しに関係していた。

まとめ:心房細動のカテーテルアブレーション中に脳塞栓を起こすリスクは低いが、手術後MRIを行うと症状に出ない脳塞栓が14%の人に見つかる。凝固時間と正常洞調律に戻すことが脳塞栓と関係している

###心房細動のカテーテルアブレーションの合併症の一つに脳塞栓症がありますが、実際は手術中必ずヘパリンという血液を固まりにくくする薬剤を点滴しながら行うので、その危険性は低いと言えます。しかし中には目に見えない脳塞栓は起きている場合もあるという論文です。しかし凝固時間をきちんと計りながら行えば少ないということもこの論文から推測できます。また手術中には心房細動を無理に正常リズムに戻さないで手術を行うことも勧められるかもしれません。
by dobashinaika | 2010-11-14 10:03 | 心房細動:アブレーション

左心耳〜これまで見逃されてきた心房細動の始まりの部位〜

だいぶ更新をサボっておりました。ご多分に漏れず、夏の疲れが出た様です。
本日から当院は5日間お休みをいただきますが、ブログははりきって更新して行きたいと思います!!

さてちょっと前ですが、心房細動のアブレーションにとって見逃せない論文がありましたので、紹介します。

心房細動は、左心房にある肺静脈の入り口から出る不整脈(期外収縮)から始まることが多いといわれていますが、それ以外から始まることもあります。その中でも左心耳と呼ばれる左心房の中で袋状になっている部分から始まることが報告されました。(Circulation. 2010;122:109-118)

背景)左心耳は心房細動の最初の場所としてはあまり注目されていなかった。

方法と結果)再発のため2回目のアブレーションを施行した987人(発作性29%、非発作性71%)の心房細動患者を登録した。266人(27%)の人で左心耳からの期外収縮が認められた。987人中86人(8.7%)の人は左心耳からの期外収縮が唯一の心房細動の発生源であった。左心耳を全くアブレーションしない人たち(グループ1)、左心耳のある場所だけアブレーションした人たち(グループ2)、左心耳丸ごと他の組織から隔離焼灼した人たち(グループ3)に分けて12ヶ月間追跡したところ、グループ1の人は74%の人が再発し、他のグループ2(68%)やグループ3(15%)に比べて有意に多かった。

結論)再発する心房細動の27%の人は、左心耳からの不整脈が原因だった。左心耳を(アブレーションにより)隔離することが心房細動をなくすことにつながった。

人間の心臓の上の部屋、心房にはなぜか犬の耳のような形をした袋状の心耳という構造物があって、心房細動の人の血栓の温床となります。神様のいたずらのようなものですが、これが心房細動の再発にも絡んでいたとなると、まさに左心耳憎し、といえるかもしれません。ともあれ、まだ新しい知見ですので、今後の検証が必要かと思われます、
by dobashinaika | 2010-08-12 22:46 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

心房細動アブレーションの結果とその後のQOL改善とには関係がある

ちょっと前の論文になります恐縮ですが、心房細動治療において重要な報告ですので掲載します。
カテーテルアブレーションが成功すれば、その後抗不整脈薬から解放されたり、発作がなくなるため、生活の質いわゆるQOLが改善すると予想されます。アブレーション後2年間という長期にわたるQOL改善につき研究した報告が出ました。(J Am Coll Cardiol, 2010; 55:2308-2316)


目的)心房細動に対するアブレーションの効果と、QOL、それに2年間の心房細動の特有の症状との関係を調べた

背景)アブレーションの第一の目的はQOLの向上だが、この効果を長期的に検討されてはいない。

方法)アブレーションを受けた502人の患者の再発、QOL、症状を追跡した。

結果)
1)332人を2年間追跡したところ、72%の人が抗不整脈薬不要となり、15%の人が抗不整脈薬により(アブレーション前より)心房細動が抑えられるようになった。13%は心房細動が再発した。
2)QOLを表す点数(SF36)は医学的点数(58.8点→76.2点)、精神的要素(65.3点→79.8点)ともにアブレーション後に増加した。アブレーション後のQOLはアブレーションの結果に依存しており、再発例では点数が下がった(12.1点→9.7点)。これらの点数は、抗不整脈薬が全く不要になった群、抗不整脈薬でコントロール良好となった群、再発群の3群の間では統計学的な差はなかった。
3)しかし心房細動特有のQOL評価を103人に行ったところ、抗不整脈薬が全く不要となった群は、抗不整脈薬でコントロール良好となった群は再発群に比べ、点数が明らかに高かった。
4)QOL改善を制限する要素としては、最初からQOLが高いこと、肥満、ワーファリン服用があげられた。
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結論)アブレーション後2年間のQOLは、再発するしないに関わらず改善された。心房細動特有のQOL評価は、アブレーションの結果をより鋭敏に反映していた。

###全く抗不整脈薬がいらなくなった例は、やはりそうでない例や再発例に比べ生活の質に改善が見られるというのはある意味当然の結果と言えます。しかしながらこの論文の大切な点は、そうしたアブレーションの結果以外の要因、つまりワーファリンを飲んでいるかどうか、元々それほど不満を持っていない、そして肥満と言った要素があるとQOL改善の妨げになるということを指摘した点です。ワーファリン服用は様々な点で生活の質を低めることがここでも再認識させられます。現在アブレーション後にワーファリンをやめてよいとの報告も見られており(当ブログ2月18日)、今後注目されます。
by dobashinaika | 2010-06-30 00:15 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

ワーファリンと特殊カテーテルは心房細動アブレーションの合併症としての脳梗塞を減らす

カテーテルアブレーションには脳梗塞という合併症がまれではありますが、存在します。今回それを防ぐ方法についてのかなり大規模な研究が報告されました(Circulation. 2010;121:2550-2556)。

背景)心房細動のカテーテルアブレーションには、脳卒中の合併が1%~5%の頻度でみられる。この合併率を前向きに調査し、アブレーション前後での抗凝固療法とオープンイリゲーションカテーテル(注1)がこの脳梗塞を減らせるかを検討した。

方法と結果)同じカテーテルの方法と抗凝固療法を行っているアメリカの大きな9つの医療機関を選定し、患者さん6454人を以下の3つのグループに分けた。
グループ1)先端が8mmのカテーテル使用。ワーファリンなし。2488例
グループ2)イリゲーションカテーテル、ワーファリンなし。1348例
グループ3)イリゲーションカテーテル、ワーファリンあり。2618例
 アブレーション前後の脳梗塞や一過性脳虚血発作の頻度はグループ1が27例1.1%、グループ2が12例0.9%であった。発作性ではない例やCHADS2スコア(注2)の高い例が多かったにもかかわらず、グループ3で脳卒中を起こした人は一人もいなかった。その他の合併症、大出血や心嚢液はどのグループも同じ頻度であった。

結論)オープンイリゲーションカテーテルとカテーテル前後のワーファリンによる抗凝固療法の組み合わせは、心嚢液や出血と言った合併症を増加させることなく、脳梗塞のリスクを減らした。

(注1)オープンイリゲーションカテーテル:カテーテルの先端に穴があいていて、そこから組織を焼いている最中に生理食塩水を放出させて、カテーテルが過度に高温になることを防ぐことを目的として作られた。
(注2)CHADS2スコア:ワーファリンをのむべきかどうかの判断基準。心不全、高血圧、75歳を超えている、糖尿病、脳梗塞の既往のそれぞれを1点(脳梗塞のみ2点)とし、日本では2点以上で飲むべき、1点以上でも勧められるとされている。

###日本では、ほとんどの施設でアブレーション前後には必ずワーファリンが使われていると思われますので、その点はアメリカよりきめ細かい管理がされていると思われます。今回の注目はイリゲーションカテーテルです。カテーテルの先端が暖まりすぎるとカテーテルと心臓の筋肉との間に一種のこげ(血液や組織の固まり)ができるので、それを回避するこのカテーテルは安全であると思われます。それを裏付ける結果となりました。
by dobashinaika | 2010-06-21 23:49 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

カテーテルアブレーションvs.抗不整脈薬

カテーテルアブレーションと薬とはどちらが効果的なのか。この疑問を解決すべく多くの研究が発表されていますが、今回それらの研究を総合して解析するいわゆるメタアナリシスが、ヨーロッパの心臓専門誌 European Heart Journalの電子版Eur Heart J 2010;Mar 23:[Epub ahead of print].に発表されました。

研究上の疑問)心房細動の抑制において、カテーテルアブレーションは抗不整脈より効果があるか?

方法)
カテーテルアブレーションと抗不整脈薬の効果を比較した8つの研究と2つの総説を総合的に解析した。

結果)
7つの研究で計763人に直接比較がなされ、カテーテルアブレーションを受けた群383人と抗不整脈群380人であった。心房細動から解放されたのはアブレーション群79%と、抗不整脈群32%に比べ多かった。発作性心房細動だけを対象とした4つん研究では、アブレーション群81%で不整脈が消失したが、抗不整脈薬群では29%であった。アブレーションによる死亡率は0.1%で、最も重い合併症としては心タンポナーデ1.2%、脳塞栓1%、肺静脈狭窄0.6%であった。

結論)
アブレーションは抗不整脈薬に比べ、心房細動の治癒とその後の洞調律維持の点で効果的である。

###Perspective(見通し)の欄で不整脈の大御所、Morady先生がおっしゃっているように、この研究ではアブレーションのやり方が研究ごとに一様ではなく、また心房細動研究に付きまとうところの無症候性の再発に関しても研究ごとに評価法が異なっています。またこれらの研究では、アブレーションを受けた患者は大部分が1種類以上薬を飲んだが効かなかった例が含まれています。しかしアブレーションは80%近くの効果が得られるのに対し、薬だと30%という数字を見せられると、やはりアブレーションは魅力的ではあります。ただし、Morady先生はそれでも第一選択にはならないのだと力説されています。なぜか?やっぱりアブレーションは、とにかくカテーテルを体に入れて治す侵襲的な治療であるということ、施設や先生によって成績が違うこと、の2点がその障壁だと思われます。後者は医者のトレーニングで多少改善されるでしょうが、前者はアブレーションの根本原理だけに。。。
がんのような致死的疾患なら手術は第一選択となりますが、心房細動となると手術的治療は第一には出てこない、というのが現状といえます。もちろん施設や患者さんごとで第一選択となることも十分あります。
by dobashinaika | 2010-04-19 12:04 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

女性は男性に比べて心房細動に対するカテーテルアブレーションの成績が劣る

心房細動は男性に多いことが知られています。カテーテルアブレーションも男性優位の集団のデータが多いのです。女性が比較的多い集団での、男性に比べてのアブレーションの成績に関する比較研究がアメリカの不整脈専門誌Heart Rhythm2月号(Heart Rhythm 2010;7:167-172.) に掲載されました。

論文の背景)多くの心房細動アブレーションの研究は男性優位の集団を対象にしている。女性における成績の検討は少ない。

目的)女性患者の心房細動アブレーションについて評価する。

方法)アメリカの5つの大病院で2005年から2008年までに心房細動のアブレーションを施行された連続3265例を対象とした(女性518例、男性2747例)。アブレーションまでに至る背景やアブレーション成功後2年間追跡しての再発率等を男女で比較した。

結果)女性は男性より①高齢(59歳 vs. 56歳)、②発作性心房細動が少ない(46% vs. 56%)、③アブレーション前の抗不整脈服薬数が多い(4剤vs.2剤)、④診断からアブレーションまでの時間が長い(6.5年vs.4.9年)、⑤アブレーション失敗率が高い(32% vs. 23%)、⑥肺静脈以外からの興奮が多い(50.4% vs. 16.3%)、⑦血管合併症が多い(2.1% vs. 0.9%)。


結論)心房細動アブレーションを受ける男性は女性の5倍多いが、女性のほうがその成功率は低い。原因としては肺静脈以外からの興奮が多く、発作性心房細動が少なく、心房細動の病悩期間が長いことが挙げられる。

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###論文の筆者は、女性のほうが男性より、診断を受けてからアブレーションに至るまでの期間が長く、そのため高齢となり、心房細動がやや進行してから受けるため成功率が低いのではないかと考察ししています。なぜ女性がアブレーションまでの期間が長いかについては、女性のほうが心房細動の症状を訴えない、アブレーションのような侵襲的な治療を嫌う、医師が男性である、子育ての問題、などを挙げています。確かに女性のほうが大掛かりな検査、治療は慎重になりやすい傾向は日本も同じだと思われます。同様の研究が日本でなされた場合の結果が大変興味深いと思います。やはりアブレーションは受けるなら、早めにということですね。

論文はこちら
by dobashinaika | 2010-03-09 00:20 | 心房細動:アブレーション

カテーテルアブレーション成功後はワーファリンを服用なくてもよいかもしれない。

ワーファリンは、心房細動治療に不可欠な薬ですが、納豆が食べられなくなったり、毎月採血が必要だったりと、何かと厄介な薬です。一方カテーテルアブレーションは心房細動の根本治療であり(場合によりますが)、アブレーションで完治すれば、ワーファリンは飲まなくてもよいのでは、と期待する方も多いと思います。アブレーション成功後にワーファリンを飲むべきかどうなのかについての論文が、アメリカの心臓専門誌Journal of American College of Cardiologyの2月23日号(J Am Coll Cardiol 2010 55: 735-743)に掲載されました。

P:患者)カテーテルアブレーションで肺静脈の隔離術に成功した心房細動患者3355人。

E:介入)アブレーション後、ワーファリンを飲まなくなった人2692人(男79%,平均57歳).CHADS2スコア*1点が27%、2点以上が13%)

C:対照)アブレーション後もワーファリンを飲んでいる人663人(男70%、平均59歳)。CHADS2スコア1点が37%、2点以上が39%

O:結果)脳梗塞の出現頻度

T:研究の種類)無作為割り付けでない後ろ向き研究

結果)約28カ月(薬飲まない人)および24カ月(薬飲んだ人)の観察期間のうち、脳梗塞は薬を飲まない患者の2人、0.07%、薬を飲んだ患者の3人、0.45%で見られたが、統計学的に有意な差ではなかった。薬を飲まない患者でCHADS2スコア2以上の人の脳梗塞は一人もいなかった。大出血は薬を飲んだ患者のほうで多くみられた(0.04% vs. 2%).

*:CHADS2スコア:心房細動患者で脳梗塞の危険を点数で表したもの。心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳梗塞の既往(これのみ2点)をそれぞれ1点とし、2点以上はワーファリンの適応がある。

###これまで、カテーテルアブレーション成功後にワーファリンをやめるべきかについての結論は出ていません。患者を飲む群と飲まない群で無作為に割りつけた大規模な試験がないためです。この試験もおそらく主治医などの方針により飲む、飲まないが決定された後で、振り返って脳梗塞がどちらが多かったかを調べています。このような方法だと、脳梗塞になりやすそうな患者は、ワーファリンを飲む群に入る可能性があり(この研究でもその傾向あり)、ワーファリンを飲む群のほうが脳梗塞が多くなる危険性をはらんでいます。

また。統計的に差はつきませんでしたが、ワーファリンを飲まない群のほうが脳梗塞が多くなっていました。これまでのいろいろな学会の声明文などもワーファリンはやめないほうがよいという論調が多くを占めています。なぜ、アブレーションが成功して、心房細動がなくなってもワーファリンをやめないほうがよいのでしょうか?それは、アブレーション成功と思われていても20%~30%の確率で再発があり、多くが無症状で再発するからです。知らないうちに心房細動が再発しているのに、ワーファリンを飲まないから脳梗塞になる、という理屈です。

しかし本研究では、ワーファリンによる出血の危険性も考慮すると、ワーファリンをやめてもよいかもしれないという期待を抱かせる結果となっています。この問題に関しては、もう少し研究を積み重ねる必要があるかもしれません。

論文のまとめはこちら

今号のJournal of American College of Cardiologyは心房細動の論文が集中して掲載されていますので、順次まとめていく予定です。
by dobashinaika | 2010-02-18 22:04 | 心房細動:アブレーション

治りにくい発作性心房細動の症状改善には、抗不整脈薬よりカテーテルアブレーションが優れている。

発作性心房細動は、実は薬で起きないようにすることが大変難しい薬です。心房細動を抑える薬(抗不整脈薬)が1年間発作をゼロにする確率はせいぜい50%くらいといわれています。一方、カテーテルアブレーション(焼灼術)はこうした薬よりも再発率の点で格段に良いことが示されています。このことをさらに実証する研究がアメリカ医師会雑誌JAMA2010年1月27日号に掲載されました。

P) 6か月以内に3回以上の発作性心房細動を起こし、1種類以上の抗不整脈薬が効かなかった患者。30日以上発作が続く人、18歳以下の人、心不全患者(左室駆出分画40%未満)、以前にカテーテルアブレーションを受けた人などは除いた。

E) カテーテルアブレーションを受ける

C) 今まで飲んだことのない抗不整脈薬を飲む

O) 9か月以内の症状のある心房細動の再発を調査した。約3カ月ごとの診察や症状が出た場合心電図を電話伝送して確認するなどの方法をとった。またカテーテルを受けた人では、もう1度カテーテルをしたかどうか、再発予防の薬を変更したかどうかも調査した。薬を飲む人では、薬を変更したかどうかを調査した。それぞれのグループで上記のことが起こるまでの時間を比較した。

T) ランダム化比較試験(カテーテルになるか薬を飲むかは無作為に割りつけられた)

結果)カテーテルアブレーション群では66%の人で、上記の出来事が9か月以内に起こらなかったのに対し、薬群では16%の人しか再発や薬変更がなかった(ハザード比0.30; 95% 信頼区間, 0.19-0.47; P < .001)。症状が消失する人の割合や、心房細動が再発しない人の割合も同様の結果であった。
なお、患者さんの平均年齢は55,7歳、心房細動にかかっている期間は平均5.7年、それまで飲んでいた薬は平均1.3剤であった。

また副作用として、カテーテルアブレーションでは5例に合併症(4.9%、心のう液、肺水腫、肺炎、血管の合併症、心不全)がおきた。薬群では2例に重大な別の不整脈、3例に薬剤を中止すべき副作用が出た。

###カテーテルアブレーションのほうが、薬をずっと飲むよりも、発作性心房細動の症状や再発を抑えることは、これまで  いくつかの研究で報告されています。今回の研究は、心房細動の再発を電話伝送で確認するなど、これまでより厳密な方法を用いて、これらの研究をより確かにするものです。

論文を読むとき、大切なポイントの一つに、どんな人に適応できるということがあります。心房細動と一口に言っても、高齢者の方、発作の少ない方、薬を飲んだことのない方などその特徴は人それぞれでしょう。この論文は、55歳前後で、5年間心房細動を自覚しており(半年に3回くらい発作あり)、薬を1.3剤くらい飲んでも効かない、心不全はない、というような患者さんを想定しての結果だということをまず押さえてください。

この論文の問題点としては、9ヶ月くらいしかフォローしていない、症例数が少ない、カテーテルアブレーションの方法が一定でない、などがありますが、それを考慮したうえで、これまでの研究を合わせて検討しますと、やはり症状の改善には、カテーテルアブレーションのほうが有効であると言えるかもしれません。

しかしながら、もう一度繰り返しますが、こうした効果はあくまで病脳期間が5年くらいで発作が時々起り、50代くらいの人に当てはまるものであり、これよりも長い期間症状のある人や、高齢の人では必ずしも当てはまらないと思われます。

薬か手術か、という選択は医療現場で常に悩ましい問題です。いつの場合でも医療行為は、
(それをすることで得られる利益)>(それをすることでおこるリスク)
の場合に選択されます。カテーテル手術は、大変少ない頻度とはいえ重大な合併症がおこるリスクがあり、それに加え体に管が入ることの抵抗感、が加味され、上の式の右項が大きく感じられるため、なかなか簡単には意思決定できない問題をはらんでいます。

論文(英文)はこちら
by dobashinaika | 2010-02-04 00:04 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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