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カテゴリ:心房細動:アップストリーム治療( 33 )

脂質低下療法は心房細動の生命予後を改善する〜AFFIRM試験post hoc解析より〜

心房細動は、心房の筋肉の炎症が原因の一つである、と前のブログでも述べましたが、炎症を抑える薬の代表選手にコレステロールを抑える薬である「スタチン」があります。スタチンが心房細動の発症や再発を抑えると言う報告はありますが、それが心房細動患者さんの寿命(生命予後)まで改善するかどうかは不明でした。
心房細動最大のトピックであるAFFIRM試験を後から解析し、スタチンと心房細動の生命予後の関係を検討した報告が出されました(Am J Cardiol 2010; 105: 1768-1772).

背景)脂質低下療法(スタチンの使用等)はある特定の集団(心筋梗塞など)の死亡率を減らす。その上不整脈を抑える作用があり、心房細動の発症や再発を抑えることが知られている。しかし生命予後の改善まで検討した報告はない。

方法)心房細動の試験中最大のものの一つである4060例を対象としたAFFIRM試験を後付け解析した。AFFIRM試験でスタチンが投与された913例とされなかった3147例の間で、全死亡、心血管死、脳梗塞につきを比較した。別の解析として、死亡、心室頻拍、心室細動、心停止、脳梗塞、大出血、全身塞栓症、肺塞栓、心筋梗塞をまとめてひとつの解析ポイント(複合エンドポイント)とした。

結果)スタチン群はより若く、より他の心臓病薬を服用していたが、心血管の罹患率も高かった。多変量解析により脂質低下療法は、全死亡を減らし(23%減少)、心血管死(29%減少)、脳梗塞(44%減少)、複合エンドポイント(19%減少)をそれぞれを減らした。

結論)死亡率や心血管事故の減少は心房細動例で脂質低下療法を行った例に多く見られた。

###もちろん、あとからの解析であり、いろいろなバイアスがかかっていますが、一応多変量解析を行っており、いろいろなバイアスは排除されていると考えられまし。いろいろな合併症の中でも脳梗塞が一番減っていることが注目されます。AFFIRM試験は持続性心房細動や心疾患を持つ人が多い試験ですが、比較的軽症が多い日本のJ-Rhythm試験でも同様の検討が待たれます。
by dobashinaika | 2010-07-05 23:49 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

レニンアンジオテンシン系の抑制による心房細動予防のメタ解析

心房細動の一番大本もある原因は何でしょうか?それは心房が筋肉でできるているからです。というと禅問答のようですが、若い人の全く障害のない筋肉は筋肉繊維の束(筋肉は筋肉細胞が束状に集まって、細長い繊維を作っています)がまっすぐで電気もスムーズに流れます。ところが、様々な原因でその筋肉の配列に乱れが起きたり、間に電気を通さない組織(線維組織)が入り込んだりすると電気にも乱れがおきますこれが心房細動です。このようなよけいな組織が入り込まないようにする薬として、血圧の薬であるアンギオテンシン変換酵素阻害薬あるいはアンギオテンシン受容体拮抗薬(以下ACE/ARB)が注目されてきました。実際数年前までは、効果があるとするデータが次々と発表され、大変な期待が寄せられたものです。しかしながらここ数年その効果に否定的なデータも出され、結論は出ていないままになっていました。今回、これまで出た数々の論文をまとめて分析した、メタ解析の結果が発表されました。(J Am Coll Cardiol 2010;55:2299-2307).

目的)ACE/ARBの心房細動抑制に関する臨床試験データを概観する

背景)これまでの結果は、各研究で一定でない。

結果)計87,048人を扱った23の無作為割り付け試験(ACE/ARBを飲んだ人とそうでない人を無作為に分けて結果を比較する)を解析した。元々心房細動がない人の新たな心房細動発症を対象にした試験は、高血圧患者対象が6試験、心筋梗塞対象が2、心不全対象が3だった。一方心房細動を持っている人の再発を調べた試験は、心房細動を(電気ショックなどで)元に戻して(除細動)からの再発を調べたのが8試験、薬による再発予防患者を対象としたのが4試験であった。
全体としてACE/ARBは、それを飲んでない人に比べ33%心房細動を抑制した。しかし各試験の間で、その対象などにはばらつきがあった。新たな心房細動発症を調べた解析では、心不全、高血圧、左心室の肥大がある患者で有効性が認められたが、心筋梗塞後の患者では有効ではなかった。心房細動の再発を調べた解析では、抗不整脈薬を飲んでいる患者で、よりACE/ARBが有効だった。全体として、除細動後の患者で45%、抗不整脈薬服用中の患者で63%も再発が抑制され、新規の発症よりも効果が大であった。


###同様の解析は2005年にも同じ雑誌で発表されましたが、今回はその後に、効果がないとする論文がいくつか出たことを受けての解析だと思われます。ですが、今回の論文は一応それでも全体としてACE/ARBの心房細動への効果はあり、と結論されています。しかしながら、まだまだ結論づけるのは早そうです。論文の中でも述べられていますが、解析の対象となった試験の多くは、心房細動を主要な検討項目として最初から設定していません。つまり最初から心房細動が起きるかどうか調べると決めずに、後からそういえば心房細動はあったのだろうか、と振り返って調べられているものがあるのです。そのような研究では調べ方も年1回心電図を取るだけであったりしています。そもそも心房細動があったかどうかを心電図だけで判定するのには限界があり、電話伝送などの方法を用いないと発作が見逃されたりします。
そうした限界をできるだけ排除して、はじめから心房細動のみを標的として行われたGISSI-AFという試験ではACE/ARBの効果は全く証明されませんでした。
心房細動は、多種多様な疾患です。それは時間的に進行するため、どのくらい進行した段階で、つまり発作性の段階か、持続性の段階かによって、どんな治療が効果的なのかが変化するからです。同様に今度は同じ進行度の患者さんでもその背景、例えば高血圧があるかないか、心不全があるかないかでも違ってきます。心房細動治療はこの時間軸と空間軸との両方から考えなければうまくとらえることができません。その意味で、いわゆる前向き試験がより多く行われ、もっと解析されるべきでしょう。
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by dobashinaika | 2010-05-21 23:13 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

高血圧患者ではカルシウム拮抗薬に比べ、ACE阻害薬やARB,ベータ遮断薬が、心房細動を抑制する

心房細動の予防に、血圧の薬であるアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が有効であることが知られてきています。しかしながら今までのデータは、ある程度心臓に疾患があった方についてや、一度心房細動を発症してからの再発予防に関してのものでした。一番、我々開業医が知りたいのは、比較的軽い高血圧の方に、どの薬を処方すれば心房細動の発症が少ないか、ということです。この疑問への参考となる論文が内科雑誌Annals of Internal Medcine 1月19日号に掲載されています。

EBMの基本であるPECOTに従って読み進めます。

P)患者:イギリスの家庭医のデータベースに登録されている高血圧患者で1種類の降圧薬を処方されている人

E)介入事項:心房細動を発症した患者4661人(1998年から2008年までの間に初めて心房細動の心電図を記録できた人)

C)比較対照:年齢、性別ほかを上記の患者とマッチさせた高血圧患者18642人

O)結果:カルシウム拮抗薬服用者の心房細動発症率を1とするとACEIは0.75 [95%信頼区間, 0.65 - 0.87]、ARBは0.71 [95%信頼区間0.57 - 0.89]、ベータ遮断薬 0.78 [95%信頼区間, 0.67 - 0.92]だった。
T)試験のタイプ:症例対照研究

###この結果からは、カルシウム拮抗薬より他の薬を飲んだほうが約20~30%、心房細動の発症が抑えられると読めます。特に今まで有効とされてきたACEIやARBと、ベータ遮断薬が同等の効果であった点が注目されます。
しかしながらこれは、心房細動患者さんとそうでない人をあらかじめ選んでおいて、その人たちを後から調査して飲んでいる薬の多い少ないを比べた研究です。このような研究は後ろ向き研究といって、さまざまなバイアスが混入しているかもしれません。たとえば、心房細動は心電図に記録されなければ診断できませんが、心電図の記録回数は、まちまちであり、ACEIなど、効くと考えられている薬を飲んでいた人は、医師も心電図を頻繁にとったのかもしれません。また肝心の血圧がどの程度であったかというデータがこの論文には書いてありません。

けれども、軽い患者さんで長く降圧薬を使うとき、カルシウム拮抗薬よりはACEI,ARBの方がやや有利であることを示唆する論文ではあります。
今後同じような対象での、時に日本人を対象とした前向きの試験の結果(J-RHYTHM IIという試験がすでに終了しています)が待たれます。

論文のまとめ(英文)
by dobashinaika | 2010-01-31 23:47 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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